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TOPICS

徒然日誌


2018.12.28(金)【出会いを大切に】(金子登志雄)

 本年最後の徒然です。今年もお世話になりました。

 鈴木さんによると、日本登記法学会の初代理事長は九州大学の七戸(しちの
へ)君になったとか(18日付本欄)。大学ゼミ(民法専攻の新田敏ゼミ)の
10期後輩ですから、「君」といわせてもらいました。ただし、OB会ですれ
違ったことは何度かありましたが、言葉を交わしたことはありません。専門分
野が違うので、彼も私のことを知らないでしょう。

 私の学生時代のまともな思い出といえば、この新田ゼミだけです。ゼミでは
毎週、先生から出されていた課題(事例問題)に対して回答論文のレポートを
提出する義務があり、2回連続して休むと放逐されるルールでしたので、サボ
るわけにもいきませんでした。

 このゼミで鍛えられなければ、その後、法律で生計を立てたいとは思わなか
ったでしょうから、新田先生との出会いは、私の人生に大きく影響したことに
なります。まさに恩師です。

 当社の会長で公認会計士の飯島との出会いも私の人生の転機になりました。
昭和61年に彼が経営する経営コンサルタント会社の法務担当者に就職して以
来、M&A手続への関与や著作の機会を与えられ、思ってもいなかった私の能
力を引き出してもらいました。

 皆様にも、この人との出会いがなければ今日がなかったと思える人が幾人か
はいらっしゃることでしょう。

 高齢者になった私は、私と出会った人が金子と出会ってよかったと数年後や
数十年後に思ってもらえるようになりたいと思うようになりました。

 今年も素敵な出会いが多々ありましたが、来年もさらによき出会いがあるか
と楽しみです。来年は1月7日から本欄を再開いたします。よいお年を。


2018.12.27(木)【本年の成績】(金子登志雄)

 いよいよ年末ですが、皆様の今年はいかがでしたか。私は次の状態でした。

 司法書士………某顧客に特需があり、よい年でした。
 執筆業務………上記トピックスのとおり改訂版を含め3冊の出版ですから、
       例年並でしょうか。来年出版の立花さんの合同会社本の監修に
       関われた点は、よい勉強になりました。
 会社役員………当社は順調に成長しました。
 健康状態………相変わらずヘビースモーカーでいます。
 
 よいことばかりではありません。十分に含み益のあった長期保有中の虎の子
の上場株式が10年ぶり程度に大きな資本欠損状態に陥ってしまいました(含
み損ですが)。トランプさんによる米中貿易摩擦などの世界経済秩序の破壊が
原因です。安倍政権により株式投資に向けられた皆様の年金も相当目減りした
はずですから、私だけの問題ではありません。

 以上のとおり、個人的には、こちらがよければ、あちらが立たずでしたが、
全て好調では明日が怖いので、丁度よいのかもしれません。

 数年前であれば、上記にセミナー講師業務を加えていたと思いますが、私も
大御所の年齢になったためか、研修担当者の方が依頼しにくいようで、ここ数
年は年4回程度です。出不精の私には、丁度よい回数です。

 司法書士業務のうち私の周囲で変わってきたと感じたのは、旧商法時代も知
らない若い世代でも商業登記中心で活躍する司法書士が出てきたことでしょう
か。種類株式、新株予約権、組織再編などの質問を受ける機会が増えました。

 医者に外科、内科……とあるように、都市部では司法書士も不動産科、会社
法人科、成年後見科……と専門分化が進んでいます。地方では何でも揃うコン
ビニエンス・ストア型司法書士になるしかないでしょうが、何でも一人で完結
しようとせずに、あるいは分からないからと受託を拒否せずに、都市部の専門
型司法書士と提携して顧客ニーズに応える方向に進むことでしょう。


2018.12.26(水)【私もジェンダー問題を】(金子登志雄)

 酒井さんの投稿を受けて、私もジェンダー(性差別)問題を取り上げます。

 憲法14条には「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、
社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別さ
れない」と「性別」についても規定されていますが、相違するものを相違する
ように扱うのは合理的差別といって許容範囲だとされています。

 しかし、その判断は非常に難しいといえます。電車の女性専用車両などは、
「男と豚は乗車禁止」のようで差別を感じる人もいますし、登記の旧姓併記も、
結婚しているかどうかの公表のようで、私には若干の抵抗があります。

 会社の同僚(男性)などと話していますと、食事の際に「男はいいね。黙っ
て座れば食事が出てくると思い込んでいるんのだから」などと母親や奥様から
嫌味を口にされることもあるようですが、これも役割差別とすると食事を作れ
ない男はどう生きたらよいのでしょうか。

 某女性がよく口にするのは「西欧のテレビでは、中高年の女性がニュースな
どで前面に出て活躍しており、シワも隠さないのに、日本では、かわいさを最
重要にしており女性を飾り物扱いにしている。女性自身もかわいさを強調する
髪型や服装をし、ぶりっ子になって政治的意見などは決していうことがない。
これでは女性の地位向上はほど遠い」というものです。

 モデルのローラさんが辺野古移設反対の署名を呼び掛けた程度で、バッシン
グが起こるのが日本社会ですが、彼女のように、女性自身が積極的に発言し頑
張ってくれないと、ジェンダー問題も永久に解決しません。安倍さんのバック
にいる日本会議の実体は戦前回帰の国粋主義というよりも、「オンナ子供は黙
っておれ」という日本の伝統と文化(?)を守ろうとしているオッサン達の集
まりだといわれていますが、与党の国会議員のオバサン達も多数加わっており、
夫婦別姓や女系天皇に反対しています。

 アベトモの元記者から準強姦の被害を被ったと実名で告発した伊藤詩織さん
に対して、枕営業して成功しなかった腹いせだと同じ女性がからかって国際的
な顰蹙を買ったこともありました。気の毒に伊藤さんは日本では平穏な生活は
無理と判断し生活の拠点をイギリスにおいています。

 イギリス、ドイツ、インド、セイロン、フィリピン、韓国………のように、
日本でも女性がトップになる日がいつやってくるのでしょうか。ジェンダー問
題は国の民主主義度と深い相関関係があります。

 お時間がありましたら、下記の動画もどうぞ。反対派の妨害でみられないよ
うになっていたら、「映像'18 バッシング~その発信源の背後に何が~」で検
索してください。
     https://www.youtube.com/watch?v=pj2qqTPIo90



2018.12.25(火)【役員の員数欠如】(金子登志雄)

 (今日・明日は鈴木さん・酒井さんの担当日ですが、お二人には年末休暇を
とってもらいましたので、管理人の私が担当します)。

 先週のゴーン氏の再逮捕には真底驚きました。「昔特高、今特捜」といわれ
ていますが、ここまで無茶をするとは………。
    http://agora-web.jp/archives/2036281.html

 さて、今月は監査等委員会設置会社への移行の登記を終了させました。当社
を含めて3度目であり、移行の定款変更案から総会招集通知案なども私一人で
原案を作成しました。

 聞くところによると、大手組織に依頼すると、うん百万円の報酬だそうです。
個人事業主の私は、そのわずか数分の1しか請求していませんが、大手組織よ
りはベターな内容である自信があります。

 これをみて、私に依頼したいという上場会社がいくつも出てきてほしいもの
ですが、各社とも、証券代行の信託銀行、証券会社、あるいは顧問法律事務所
や司法書士事務所とのしがらみ(?)がありますので、これで仕事が来ること
は、まずありません。

 監査等委員会設置会社に移行する際に、監査等委員である取締役を3名しか
選任せず、補欠を選任しないこともありますが、もし、1人でも効力発生前に
死亡したら(就任を辞退した場合などを含む)、面倒なことになります。

 未上場会社であれば株主総会の修正動議(候補者変更)で対応することも可
能でしょうが、上場会社では議決権行使書が修正案に反対としてカウントされ
るため、議決権の過半数を握るオーナー株主でもいない限り困難でしょう。

 こういう場合は監査等委員会設置会社への移行の効力は生じているが、監査
等委員の員数不足で登記することができない状況のため、改めて選任のための
臨時株主総会を招集し、その後に登記するしかありません。それを避けるには、
予備要員である補欠を選任しておくことです。

 ところで、話は変わりますが、この3連休中に何とホワイトハウスから私に
メールが入りました。貴方もやってみませんか。
   https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/361226


2018.12.21(金)【分割型吸収分割(人的分割)】(東京・古山陽介)

 今回は実務ネタに戻ります。

 いわゆる分割型吸収分割における剰余金の配当については、会社法第234
条の端数処理の手続きの対象ではございません。条文を読めば一目瞭然なので
すが、これは、先日、会社分割の依頼に際して論点になったものであります。

 合併や株式交換の際、合併(交換)対価に端数が生じてその合計数が1(株)
を超えた場合には、相当する数の株式(1に満たない端数は切り捨て)につい
ては、競売もしくは裁判所の許可を得て売却(任意売却)をすることになりま
す。

 ただ、会社分割については、分割対価は、分割型分割であったとしても、い
ったんは吸収分割会社に対して交付されます。

 分割型吸収分割の分割対価(吸収分割承継会社株式)の流れは、一度、吸収
分割会社に対して交付された吸収分割承継会社株式を剰余金の配当によって、
吸収分割会社の株主に対して交付する手順となっています。

 この配当によって端数が生じる場合には、会社法施行規則第178条におい
て、株主に対して交付する財産の合計額の5%を限度として金銭を交付するこ
とが認められています。
 
 税務には、このワンクッション(吸収分割会社が交付を受ける)という考え
はなく、直接、吸収分割会社の株主が対価を取得するという取り扱いで、かつ、
少額であっても金銭を交付することは適格性に影響が生じる可能性があるみた
いで、この考え方の違いから、端数処理の方法が論点となりました。
 
 結局、この案件は、合併や株式交換のときと同じように、会社分割の前提と
して株式分割もしくは株式の無償割当てによって端数が生じないように手続き
を行うことになりました。

 本欄は、司法書士以外の方々も多く閲覧されているということで、会社分割
の手続きを検討する場合には、この点についても改めて注意していただければ
と思いまして、書いてみました。


2018.12.20(木)【西南戦争と仙台】(仙台・立花宏)

 私の事務所から徒歩15分くらいのところに、経ケ峯公園というところがあ
ります。仙台の人間でも、その名を使う方は少なく、伊達政宗の霊廟「瑞鳳殿」
があるところといった方がわかりやすいかもしれません。仙台駅からバスに乗
れば10分くらいの場所ですが、街の中心部に近いとは思えないほど落ち着い
た静かな場所です。独立して事務所を構えたばかりの頃、時間には少し余裕が
ありましたので、たまに散歩に行ったりしていました。

 「瑞鳳殿」の入り口の少し手前のところに、ある案内板があり、いつも気に
かかっていました。表題はたしか、「鹿児島県人七士の墓」だったと思います。
お恥ずかしいことに、気にかかってはいても、そのままよく読まずに「瑞鳳殿」
に向かってしまい、これまで、その内容はほとんど読んだことがありませんで
した。

 先日、NHKの大河ドラマ「西郷どん」の最終回を見ていて、ふとその案内
板のことを思い出し、仕事があいた時間にふらっと散歩に行ってみました。と
いうのも、たしか、その案内板には、「西南戦争」という言葉があったような
気がしたからです。「西南戦争」は九州で起こったものだという意識があった
ので、考えてみると、「西南戦争」に関連した鹿児島県の方のお墓が仙台にあ
ることが、不思議に思えてきたのです。

 目指した場所に到着し、その案内板の内容を読むと、大雑把にいえば、次の
ようなことが書いてありました。

 「西南戦争で官軍に投降した西郷軍は、国事犯として全国に護送され、宮城
県にも305人が収容された。国事犯達はみずから願い出て、宮城県内で開墾
作業や築港工事に従事し、明治初期の宮城県の開発に大きな役割を果たした。
獄中で病死した方がこの地に葬られた。みちのく宮城鹿児島県人会」

 戦いに敗れ、遠い東北の地に送られた方々の思いはどのようなものだったの
でしょうか。しかも、仙台藩は鹿児島藩とは、戊辰戦争で敵味方の関係だった
はずです。きっと不安が大きかったはずです。

 当時、どのように処遇されたのかは、わかりません。ただ、監獄係の水野重
教という方が、温暖の地から北国に来て寒いだろうと温かい着物や足袋をはか
せるよう、内務省に掛け合い実現したという逸話もあるようです。

 このお話しを聞き、個人的には、ほっとしたような気持になりました。戦い
が終わればノーサイド。国事犯として収容されていたからといって、決して、
冷遇されてばかりではなかったと信じたいと思います。

 自分が生まれてからずっと住んできた仙台に、そのような歴史があったこと
を全く知りませんでした。今度の年末年始は少し時間をとって、郷土の歴史を
勉強してみようと思いました。

 (参考資料)
  石澤友隆著『仙台を探訪する55話 -政宗さんは美男子でやさ男』
  (河北新報出版センター)


2018.12.19(水)【ジェンダー再び】(藤沢・酒井恒雄)

 前回、ジェンダーに関する投稿をしましたが、諮らずしてタイムリーなネタ
になってしまいました。再び、順天堂大学医学部の不適切入試に関する問題が
取り上げられ、女子を一律に減点した理由として、「コミュニケーション能力
が高いため補正した」という学校側の説明が波紋を呼んでいるようです。

 あるニュース番組では、「男だから」「女だから」といった基準で物事を考
えてしまうことを、無意識の差別であると説明していました。一つの例として、
焼き肉屋さんの「お一人様大歓迎」という看板の是非が問われていました。

 店主は、「女性は一人では入店しづらいだろう」と思って、その看板を作成
したと説明していましたが、それも差別の考えに繋がるのだとか。

 「女性は焼き肉屋には行きたいと思っても、一人では行けない」という発想
がダメなのだそうです。気遣いのつもりが差別として捉えられかねないという、
なかなか難しい問題が潜んでいるようです。

 一昔前?の恋愛ドラマには、重い荷物を抱えて歩いている女性に、「持ちま
しょうか?」と男性が声をかけ、荷物を持ってくれた男性に対し、女性が好意
を抱き、やがて恋愛に発展して行くといった王道のストーリーがありました。
しかし、無意識の差別という考えでは、このストーリーもNGとなってしまい
そうです。

 男性は、「女性だから重い荷物はさぞかし大変だろう」「荷物をもってあげ
たら男らしいと思ってくれるだろう」と考えてはならず、女性は、「女性なん
だから誰か荷物を持ってくれてもいいんじゃない?」「どこかに荷物を持って
くれる男らしい人はいないのかしら?」と、考えてはいけないことになりそう
です。

 こんなことを考えていては、恋愛の駆け引きも出来なくなりそうで、ちょっ
と心配になってしまいます。もっとも、現実では、そんなシチュエーションは
皆無かと思いますので、意味のない心配です。そもそも、見ず知らずの男性に
荷物を持ちましょうかと言われたら、「そのまま奪って逃げるつもりだろ?」
と警戒するだけかもしれません。この先、現実の世界はともかく、空想の世界
でも、「素敵な出会い」は減ってしまいそうで、なんとなく寂しい感じもしま
す・・・・・。


2018.12.18(火)【日本登記法学会】(東京・鈴木龍介)

 これまでも何度かご紹介させていただきました「日本登記法研究会」の第3
回研究大会が去る12月8日(土)に開催され、約120名の方々にご参加い
ただきました。

 ちなみに、概要は以下のとおりで、豪華なラインナップでした。
○動産・債権譲渡登記関係(午前)
  テーマ「動産・債権譲渡登記の未来」
  報告① 白石  大氏(早稲田大学大学院法務研究科教授)
  報告② 小野 絵里氏(司法書士)
  総括  池田 真朗氏(武蔵野大学法学部教授)
○「日本登記法研究会」通常総会
○不動産登記関係(午後)
  テーマ「不動産登記の真正の担保」
  報告① 七戸 克彦氏(九州大学大学院法学研究院教授)
  報告② 植木 克明氏(司法書士)
  報告③ 原田 克明氏(土地家屋調査士)
  総括  鎌田  薫氏(前早稲田大学総長)
〇 全体総括  道垣内 弘人氏(東京大学大学院法学政治学研究科教授) 

 運営サイドといたしましては、大会を無事終えることができたことに、この
場を借りまして参加者ならびに関係者の皆様に御礼申し上げます。なお、各報
告の詳細については、「月刊登記情報」(金融財政事情研究会)などに掲載が
予定されておりますので、そちらもご参照いただければと思います。

 そして特筆すべきは、午前と午後の報告の間で行われました通常総会におき
まして、「日本登記法学会」に改組し、晴れて“学会”となりました。なお、
初代理事長には七戸克彦九州大学大学院法学研究院教授が就任され、私も理事
の末席に名を連ねることになりました。
  
 ということで、今後とも「日本登記法学会」へのご理解とご支援を賜ります
ようお願いいたします。また、是非ともご入会を検討いただけますと幸いです。
     http://www.toukihou.jp/
   (まだ、リニューアルできてませんが・・・)


2018.12.17(月)【経験こそ財産】(金子登志雄)

 先週、鈴木さんが日本組織内司法書士協会及びその著『司法書士目線で答え
る会社の法務実務』をご紹介くださいましたので、購入しようかなと思ってい
ましたら、著者のお一人から贈呈されました。ありがたいことです。

 まだ一部分しか読んでいないため、内容についてのコメントはできませんが、
我々独立自営の司法書士の目線と組織内司法書士のそれとの相違に興味を持っ
ています。環境も立場も現場感覚も大きく相違するため、決して同じ目線では
ないと思います。現に、同じ組織内でも、会社の社風によって法律文書に流儀
があり、議事録の作り方や定款の定め方だけでなく、「及び・又は」派か「お
よび・または」派かなどまで様々ですし、石橋を叩いて渡る他社との横並びの
安全重視派か、適法性に問題がなければ独自方式にチャレンジする派かといっ
た相違もあります。

 組織内司法書士の方のうち、部下を持ち重責を担っている方は、個人事業主
の私よりは他人の生活に影響力のある立場で、やりがいがあると思いますが、
逆に幹部になればなるほど精神的疲労も大きいことと推測します。疲れました
ら、ぜひ独立開業してください。独立すると組織の責任が個人の責任となり、
明日の生活保障もありませんが、嫌な上司や生意気な部下、満員電車のストレ
スからは解放されます。同職の仲間ができますので孤独感はありません。

 組織内司法書士の経験は独立開業後に企業法務に明るい司法書士としての評
判につながりますので、若い司法書士の方は、一度は経験してみるのもよいで
しょう。いずれは、鈴木さんのように、上場会社の社外役員や大学教員をも兼
営する司法書士を目指してみるのはいかがでしょうか。何事も経験です。

 なお、脱サラ司法書士立花さんの疑似体験に基づく合同会社本(私は監修で
関与)は初校段階であり、来年1月後半か2月初旬の出版になります。もし、
合同会社に社員が加入したら、業務執行社員になる場合とならない場合、出資
金が資本金に計上される場合とされない場合……、こういうシミュレーション
による疑似体験がよい勉強になったと彼は話しています。頭の中だけの疑似体
験よりも、文章化までした疑似体験は実体験により近く、このような経験に裏
打ちされたコンサルほど強いものはありません。経験こそ我々の財産です。


2018.12.14(金)【攻守逆転】(金子登志雄)

 今日のネタは何にしようかと思っていましたら、何と今日は赤穂浪士の吉良
邸討ち入りの日じゃないですか(旧暦ですが)。墓のある東京都港区の泉岳寺
では毎年「義士祭」が行われますが、イベントの1つとして見学するのもよい
でしょう。京都と同じく東京にはこういう歴史的観光地がすぐ近くにあります。

 この事件に関する私の見方は、前にも何度か書きましたが、癇癪持ちの主君
が責任を取らされただけなのに、被害者の吉良を逆恨みして、真夜中に徒党を
組んで押し込み強盗も同然に吉良邸に侵入し、無抵抗の老人を惨殺した集団殺
人事件に過ぎないというものです。「義士」や「忠臣」と英雄に祭り上げるこ
とは私にはできません。

 ところが、ネット時代の今日、最近は、敵役の吉良や悪役の将軍綱吉がいか
に名君だったかという史実に基づく論評を目にする機会が増えました。攻守が
逆転したのでしょうか。

 とくに犬公方として悪評の綱吉は、儒学を中心とした倫理観を重んじ、それ
までは刀の切れ味を試すための辻斬りとか(あの水戸黄門も経験者です)、度
胸試しに町民を斬り捨て御免にする武士も少なくなかったのに、綱吉時代あた
りから生命を大事にする時代に変わったとか、景気もよくし天下泰平で町民文
化の花が開いた元禄時代を作ったとか………。15人の徳川将軍の中で、最も
優れた人だと評価する外国人の歴史学者もユーチューブでみたことがあります。

 商業登記の世界で攻守逆転といえば、旧商法230条の2に「総会は本法又
は定款に定むる事項に限り決議を為すことを得」と明らかに規定されていたの
に、定款で代表取締役を総会で定めることを登記実務で認めていませんでした。
また、旧商法273条3項に「定款を以て任期の満了前に退任したる監査役の
補欠として選任せられたる監査役の任期を退任したる監査役の任期の満了すべ
き時迄と為すことを妨げず」とあるのに、監査役1名のときは、この規定が適
用されないという不思議な解釈を登記実務が採用していました。

 周知のとおり、会社法以後は攻守逆転しましたが、単に常識的で正常な解釈
がなされたというだけの話です。自分の頭で考えることを重視していれば、旧
商法時代でも、登記実務の運用はおかしいことに気づくことができました。裸
の王様を笑った子供のような真実を見抜く純粋な感覚こそが貴重です。

 いまだに攻守逆転をはかれていないのが、例の期限付解散です。早期に正常
な解釈に軌道修正してもらいたいものですが、最近は規制緩和への反動が出て
きましたので、時間がかかりそうです。


2018.12.13(木)【マラソンの話】(東京・古山陽介)

 ついつい忙しくなってくると投稿がサボりがちになってしまうことを反省し
ています。

 何度か趣味でありますマラソンのネタを書いていますが、10月になるとマラ
ソンシーズンとなり、自分も10月と11月に、水戸とつくばでそれぞれフルマラ
ソンを走ってきました。

 都道府県魅力度ランキングでは、最下位の茨城県ですが、茨城には大きなマ
ラソン大会がいくつもあり、関東のランナーにとっては魅力的な県の一つだと
思います。

 11月末のつくばマラソンでは、目標としていた3時間半以内でのゴールを達
成することができました。3時間半をギリギリ切るくらいのタイムが、おそら
く、自分にとっては自己流の練習で出せる限界のタイムだろうと思っていたの
で、この目標をクリアできたことにすごく満足してしまい、ここ2週間ほど走
るモチベーションがなくなっていました。

 12月にもなったので、先週末、自宅で事務所の経理関係の事務作業をしてい
て、今年の売上を見ながら、来年も頑張ろうと思ったとき、なぜかマラソンも
マイペースで継続して頑張ってみようという気持ちとあとどのくらい記録を伸
ばすことができるのだろうかチャレンジしたい気持ちがじわじわと湧いてきま
した。

 フルマラソンは、やはり練習量がモノを言います。ですので、練習時間や量
が限られた環境でしかも自己流となると、チームやクラブに所属している人よ
りも記録はそう簡単には伸びません。

 それでも、周りに振り回されず、マイペースで地味に続けていくことは、商
業登記もそうですが、自分の性分に合ってるような気がするので、これからも
身体に大きな負担をかけない程度に気長に走り続けようと思うのでした。



2018.12.12(水)【ジェンダーフリー】(藤沢・酒井恒雄)

 以前、徒然日誌に、プリキュアの話を書きました。

 女の子向けの(・・・という表現も間違いかもしれません。)人気アニメで、
娘が小さかった頃には、プリキュアのテレビを一緒に観たり、映画館に行った
りしていました。

 もう何年もプリキュアとは接点がないのですが、ニュース記事を読んで、今
でもシリーズが続いており、現在放送されているシリーズの作品テーマが、子
供を守るお母さん、子育てと仕事の両立だと知って、実にリアルな設定で驚い
たと書いたと思います。

 そんなプリキュアですが、ついに男の子が登場したそうです。

 職場での休憩中、隣の机でネットニュースを見ていたスタッフが、そのこと
を教えてくれました。しかし、昔から主人公を助ける男の子がいて、その子も
変身した姿で、悪を倒すなんていう設定はあったと思います。それがどうした
の?という感じで、スタッフが開いているPCの画面を見ると、そこには可愛
いプリキュアの衣装に身を包んだ男の子の姿がありました・・・・・。

 製作者談によれば、「男の子がプリキュアになれない理由はない。」「なり
たい姿は人によって違い、性別は関係ない。」という、ジェンダーフリーの考
えをそのまま表現したのだそうです。どこまで斬新なのかと驚かされましたが、
そもそもプリキュアは、シリーズが始まった当初から、「男らしさ」「女らし
さ」という言葉を使わず、ジェンダーを意識していたものなのだとか。

 私は、魔法を使わず素手で悪者を倒しているヒロインの姿を見て、男が弱く
なり、どんどん女が強くなっている世相を反映しているといった趣旨の投稿も
したと思います。

 しかし、その根底にジェンダーフリーの考えがあったと知り、思わず唸って
しまいました・・・・・。なかなか奥が深いです。



2018.12.11(火)新刊【『司法書士目線で答える会社の法務実務』】
                          (東京・鈴木龍介)

 「日本組織内司法書士協会」(=同協会)という組織をご存知でしょうか。

 同協会は、組織―司法書士事務所以外の企業や官庁―に所属する司法書士
(司法書士有資格者を含みます。以下に同じです。)で構成され、組織の中で
司法書士が活躍することを目的に2013年に設立された組織です。メンバーの多
くは、企業の法務部門に従事し、登記をはじめとする司法書士の本来業務を含
むケースもあるかもしれませんが、メインとしてはそれ以外の法務実務に携わ
っています。
  https://inhouseshihoshoshi.jimdo.com/

 このたび、同協会を著者とする『司法書士目線で答える会社の法務実務』と
いう書籍が日本加除出版より刊行されました。
  https://www.kajo.co.jp/book/40741000001.html

 本書は、司法書士が得意とする会社法や商業登記以外の本書のまえがきでい
う“周辺分野”が充実しているとともに、執筆者の多くが上場会社に所属して
いることもあり、司法書士にとってブラックボックス的なところでもある上場
会社ならではの取扱い等が具体的に解説されている点は類書がなく、貴重かな
と思います。

 ところで、近年、組織内弁護士は完全に市民権を得て、数多くの弁護士が組
織内で活動・活躍していることはよく知られているところです。一方で、組織
内司法書士についてはというと、業法的にも正面からは認められていないとい
う現状があります(ここでは詳細には触れませんが、いろいろとクリアしなけ
ればならないことがあるのも一応は承知しているつもりではあります。)。

 個人的には、一定の制約はあるにしても、多様な価値観のもとに多くの選択
肢を認める社会がよい社会なのではないかと思っています。少し話はずれます
が、いわゆる「働き方改革」の1つとしてあげられる副業のススメなども、そ
の流れの1つであると理解しています。

 司法書士でいえば、司法書士として個人で事務所を営むのも、法人事務所に
所属するのも、そして企業で働くのも個々の裁量であって、極力、規制せず許
容する方向になればよいかなと思っています。



2018.12.10(月)【登記と日付】(金子登志雄)

 先週は他人のことは眼中にないトランプさんのせいで世界中の株価が暴落す
るは、日本の国会は言論の府でなくなるは、個人的にも風邪を引くはでよいこ
との少ない1週間でした。

 風邪については幸い熱もなく軽症ですが、咳が少々あったため、同居してい
る会社の同僚に移してはいけないと、金曜日は出社を控えました――正しくは、
出勤する必要に迫られた仕事もなかったのでサボったというべきですが………。

 こういう時、本来なら仕事にも支障が生じるのでしょうが、商業登記は取引
への立ち合いもなく、来客の予定もなければ、事務所にも行かずに自宅のパソ
コンでも仕事をできるので実に便利です。金曜日も自宅でケアレスミスの補正
の対応や、メールでの司法書士からの質問に応えていました。

 仕事が趣味の人間ですから、自宅にいても仕事のことが、ふと気になります。
今回気になったのは、6日に登記申請した案件につき、委任状の日付は顧客が
記載した12月3日のままにし、株主リストの日付は何も考えずに登記申請日
の12月6日にしたが、大丈夫だろうかということです。

 いかがですか。全添付書面が揃っていないのに、登記申請の依頼を受けたよ
うな形になりますが、12月3日に登記申請の委任を受け、12月6日に添付
書面を渡されたということもありますので、何の問題もないのですが、一瞬、
気になりました。

 もっと気になるのは12月10日に電子申請する登記の電子署名を9日以前
にした場合です。同じことは、定款作成日及び定款認証日が10日なのに電子
署名を9日以前の日にしていた場合です。

 これらも実務上は問題なく受理されています。10日が到来することを条件
に電子署名を事前にしておいたという解釈でしょうか。

 地方の某公証役場では、定款作成日と電子証明した日が一致しないと困ると
いう対応をするようですが、電子署名した日までは証明対象になっていないは
ずですから、その対応は行き過ぎでしょう。

 つまらないことを気にしすぎだとは思わないでください。隅々まで気になる
ことが実力向上につながると信じていますので。


2018.12.07(金)【外国人雇用】(金子登志雄)

 5日は東京司法書士協同組合の忘年会でした。忘年会場の近くの駅で降りた
のですが、道に迷ってしまい、コンビニに飛び込んで、10代か20代前半の
女性店員に「このまま進めば〇〇交差点でよいのか」と聞きましたところ、そ
の返事は「分からない」でした。

 怪訝な顔をして、その店員を見つめましたら、「日本人ではないのでよく分
からない」といわれてしまいました。店員が3人いましたが、全員とも日本人
ではないということでした。中国人かベトナム人でしょうか、日本人風の顔立
ちで流暢な日本語でしたので、完全に日本人と思い込んでしまいました。

 応対が洗練されており、好印象でしたが、彼女達のアルバイト料は日本人と
同じなのか気になりました。土木建築や工場などと相違し、日本人と同じだと
は思うのですが………。

 入管法の改正で外国人労働者を大量に受け入れ賃金の点で奴隷のように扱え
ば、自動的に日本人労働者の賃金も下がり、今以上に連合などの組合に加入し
ている正社員の上級労働者と不正規の下級労働者に分断されることは間違いな
いでしょう。昔の土佐藩の上士と下士みたいに極端な身分差別が進みそうです。

 こういう下層階級は、政治に不満を持っても、反政府にはならず、精神のバ
ランスを保つために差別対象者を求め、自分達の不幸は外国人のせいだと思い、
外国人排斥の右寄り思想に染まる傾向があります。それを煽る人も出てきます
し、今でもこの傾向が顕著です。

 外国人差別をしない業種はプロスポーツと芸能ですが、先日見に行ったラグ
ビーの日本対ニュージランド戦では日本側の選手も相当数が外国人でした。大
相撲の世界では外国人関取が多数です。

 プロスポーツと同様に外国人と日本人を平等に扱い競わせたほうがハングリ
ーな彼ら・彼女らが出世し、企業業績にも貢献するでしょうから、外国人=安
い労働力確保の考え方では、恨みを買うだけで何もよいことはないでしょう。

 当事務所も仕事が大量にあれば、日本人でも外国人でも雇いたいものですが、
1人でも暇を持て余している事務所ですから、雇用には全く貢献できません。
日産自動車だけで15万人の従業員の雇用の責任を負っていたゴーンさんは、
大した罪でもないのに、暖房もない拘置所で冬を越すのでしょうか。


2018.12.06(木)【定款認証手続の変更~実質的支配者~】
                          
(仙台・立花宏)

 本欄でも、11月12日(月)に金子先生、11月15日(木)には古山先生が事前
に取り上げていらっしゃいましたが、11月30日(金)から定款認証手続が変更
になりました。現場の実務はスムーズに運用されているのでしょうか。

 設立する株式会社、一般社団法人、一般財団法人についての実質的支配者が
誰か、そして、その実質的支配者が暴力団員等に該当するかどうかを申告する
というだけですので、それほど大きな変更ではないようにも思えます。ただ、
場合によっては難しさを感じる場合もあるように思います。たとえば、次のよ
うなケースはどうでしょう。

《事例》
 ある株式会社が 100%出資して、完全子会社(株式会社)を設立する。親会
社となる株式会社の株主はA、B、Cの3名で、当該親会社となる株式会社へ
の出資(議決権)割合はそれぞれ50%、30%、20%である。なお、親会社とな
る株式会社は上場会社等、実質的支配者を判断するうえで自然人とみなされる
法人ではない。

 まず、親会社となる株式会社は設立する完全子会社の議決権を 100%保有す
ることになりますが、自然人ではないため、実質的支配者には該当しません。
そうすると親会社となる株式会社の株主が、完全子会社の株式を間接保有して
いるといえるかどうかを検討することになります。親会社となる株式会社に議
決権割合が50%を超える株主がいれば、当該株主が完全子会社を実質的に支配
していると考えることになります。しかし、今回のケースでは、親会社となる
株式会社の議決権を最も多く保有しているAでも50%の割合しか保有しておら
ずこれに該当しません。よって、親会社となる株式会社の株主は実質的支配者
には該当しないということになります。

 今回のケースでは、親会社等の株主等を検討するだけでは足りず、出資比率
以外の融資、取引その他の関係を通じて、完全子会社の事業活動に支配的な影
響力を有する自然人がいるかどうかを検討することになります(注)。そして
さらに、これに該当する自然人がいない場合は、完全子会社を代表し、その業
務を執行するべき自然人が実質的支配者に該当することになります。

 とても複雑な検討が必要だと感じます。さらに、申告する場合にどのような
書類が必要になるかも判断が難しいように思います。通常の場合に必要となる
書類に加え、親会社となる株式会社に50%を超える株主がいないことを示すた
めに、当該会社の株主名簿等(コピーで可と思われます)も必要になると思わ
れます。そして、取引要件等に該当する場合には、それを示すための書類も必
要になると思われますし、代表者要件で申告する場合には、取引要件に該当し
ないことを示す書類と、代表者要件に該当することを示すための書類が必要に
なると考えるのでしょうか。

 代表者要件に該当することを示すための書類はそれほど問題とはならないと
思われますが、取引要件等の該当、非該当については、どのような書類が必要
となるのでしょうか。幸か不幸か、私自身は、まだ、そのようなケースに対応
した経験がないため、実務でどのように扱われているのかがわかりません。

 こうした実質的支配者への該当性の判断が難しいケースがあるほかに、暴力
団員等への該当性の審査で疑義が生じた場合(日本公証人連合会様の暴力団員
等のデータベースに実質的支配者と同姓同名の方がいた場合等)には、認証ま
で時間がかかる場合もあるようです。そうしたこともふまえ、定款認証案件は、
これまでよりも早めに公証役場と打ち合わせを開始した方がよいでしょう。

 今回の定款認証手続の変更は、条文だけをみればそれほど大きな改正とは言
えないのかもしれませんが、公証人の先生や司法書士等の実務家、そしてなに
より、定款認証手続の利用者にとっては、悩ましいことが少なくない改正だっ
たように思います。

 注)通常、50%の議決権を保有していれば、現実的にはその方が実質的支配
者であることが多いのだろうと思います。この場合、保有議決権割合での判断
では該当しないと判断されたとしても、その他の要件で実質的支配者に該当す
ると判断されることになると考えられます。


2018.12.05(水)【プロの姿勢】(藤沢・酒井恒雄)

 先日、とあるバンドのライブを観てきました。

 このバンドのリーダーは、世界的に人気があるバンド(アイアン・メイデン)
のベーシストでもあります。日本にも多くのファンがいて、来日する際には、
数万人を収容する会場も満員御礼になります。バンドとしても、個人としても
人気があります。

 人気があるとはいえ、音楽のジャンルがハードロック、へヴィーメタルなの
で、誰もが知っている人という感じではないと思いますが、分かりやすく言う
と、ビートルズのポール・マッカートニーみたいな存在の人です。

 そんな彼が、人気を博しているバンドとは別のメンバーを引き連れて、来日
することになりました。ただ、あまり宣伝もしなかったせいでしょうか、そん
なスゴイ人がやってくるというのに、会場に集まった観客は、御世辞にも多い
とは言えないものでした。

 キャパシティ1,000人くらいの小さな会場であったにも関わらず、見渡
したところ、会場の3割くらいしか観客がいませんでした。正直、ガラガラで
す。沢田研二なら確実に仕事を放棄して帰っている状況です・・・・・。

 こんな状況を見て、どれだけやる気を無くしてしまうだろうか?と心配をし
ました。しかし、それは、私の失礼な思い込みでした。彼は、終始いつも通り
の演奏スタイルで、私が知っている、あの数万人の観客を相手に演奏している
姿そのものでした。不機嫌な顔もしていませんでしたし、手抜きをしている様
子も全くありませんでした。

 そんな姿にプロの真髄を見たようで、ものすごく感激しました。セミナー等
で登壇したとき、受講者数が少なかったり、居眠りをしている人が目に入ると、
とたんにテンションが下がってしまう自分とは大違いです。

 もっとも、私の場合は、受講者数が少ないことや、居眠りをする人がいるこ
とは、全て自分の実力がないことの鏡写しですので、今回の件とは事情が違い
ます。しかし、純粋にプロの姿勢として刺激を受けたのは確かです。久しぶり
に人の姿を見て、カッコいい!と思いました。


2018.12.04(火)【相続法改正 その11~施行日】(東京・鈴木龍介)

 以前、連載的に取り上げました、いわゆる相続法改正についてですが、この
たび施行日が決定されました。結果として、以下のとおりの4段階施行となり、
先行して成立した、いわゆる債権法改正を施行ベースとしては追い抜くかたち
になります。

 基本的には、平成31(2019)年7月1日(月)の施行になります。

 それに先立ちまして、自筆証書遺言の方式緩和-一部非自書化の許容-に関
する規定の部分が平成31(2019)年1月13日(日)から施行されます。

 配偶者居住権に関する規定の部分については、あらたな権利の創設に伴い所
要の準備のため、平成32(2020)年4月1日(水)からの施行となりま
す。

 そして民法ではありませんが関連の「法務局における遺言書の保管等に関す
る法律」については、法務局の体制整備のため、なんか半端な感じがしますが、
平成32(2020)年7月10日(金)から施行ということになります。

 ということで、ここからギアを入れ替えて本格的な準備に入る必要があるか
と思います。
 
 ついでになりますが「ジュリスト No.1526」2018年12月号に拙稿が掲載
されました。ご一読いただき、ご批評などいただけますと幸いです。

【特集】相続法改正と実務
「司法書士実務の視点から―不動産登記に関する論点を中心に」
     http://www.yuhikaku.co.jp/jurist



2018.12.03(月)【相続放棄が、くつがえる?
】(島根・根来川弘充)

 先般、相続登記の依頼を受けました。

 事件の概要は、「昭和50年になくなった父の名義の不動産一筆を、依頼者
自身の名義にしてほしい」というものです。

 その依頼者は、昭和50年の時点では成人したばかりで、その当時、母(平
成10年ごろ死亡)が主になって司法書士に依頼をして、母と妹の相続放棄を
経て、当時10筆以上の宅地・田畑の相続登記をすでにしていました。

 「今般、新たに一筆、父の名義の不動産が出たので、相続登記をしたい」と
いう事情がありました。

 依頼者以外の他の法定相続人が「相続放棄」をしたというのであれば、その
当時作成された証明書等の書面があるはずなのですが、残念ながらそれらの資
料が一切お持ちではありませんでした。

 法務局も、登記申請の添付書類保存期間を経過し、裁判所に照会をかけてい
ただいたのですが、一切わかりません。

 結局、相続放棄の事実を確認することができなかった以上、改めて遺産分割
の手続で相続登記を行いました。

 民法では、相続放棄は、法定相続人でなかったことになります。わかりやす
くいえば、相続財産については、親子の関係すら無かったと同視される強い手
続です。

 幸い、法定相続人間は、仲が良かったので、問題はなかったのですが、何か
疑問を感じた業務でした。  


2018.11.30(金)【官報公告を閲覧しておこう】(金子登志雄)

 神崎満治郎先生主宰の商業登記倶楽部の実務相談室に、某法務局に相談した
ら減資公告の期間満了日が土曜日だと民法142条により休日扱いされ平日の
月曜日まで満了日が延びるといわれたが、金子先生の本年5月31日の徒然日
誌【期間満了日が土曜日】では平日扱いとなっているが、どうなのかという質
問がありました。

 さて、皆さん、1月1日を効力発生日とする減資や合併で昨日や本日に公告
した場合は期間満了日が12月29日(土曜日)や12月31日になりますが、
これらの日が休日扱いされると、期間満了日は2日あるいは4日(東京法務局
見解で詳細は本年2月15日の【1月2・3日は休日か】をご覧ください)に
なり、登記が受理されなくなりますが、もし、こういう公告で登記を委任され
ましたら、どう対応なさいますか。

 ちなみに民事訴訟法95条3項には、「期間の末日が日曜日、土曜日、国民
の祝日に関する法律に規定する休日、1月2日、1月3日又は12月29日か
ら12月31日までの日に当たるときは、期間は、その翌日に満了する」とあ
ります。

 結論からいいますと、民訴法は控訴期間につき控訴人の利益のための規定で
あり、債権者異議申述期間には適用されません。異議があれば土曜日でも12
月29日以下でも郵便が配達されますし、電話で異議を出したしたことも記録
に残せます(この点で東京法務局見解には反対です)。

 ところが、口で反論しても休日扱いだと思い込んでいる登記所の説得は容易
ではありません。こういう場合は、百聞は一見に如かずで実例をいくつか示す
ことです。上記の法務局にも、実例を示して再考を求めたところ受理すると訂
正してもらえたとの報告がありました。

 そこで、期間満了日は12月29日から31日の場合の実例も保存しておき
ましょう。例えば、下記の左下2つの枠組公告のうち、静岡市の会社がそうで
すし、茨城県の会社は期間満了日が12月29日だけでなく、その日は土曜日
です。

https://kanpou.npb.go.jp/20181129/20181129g00261/20181129g002610055f.html


2018.11.29(木)【夷派の暴走か?】(金子登志雄)

 だいぶ雲行きが変化してきましたので、引き続きゴーン事件を取り上げます
が、どうもルノー支配の排除の一環としてのゴーン氏追い落としであり、それ
に軽率に便乗してしまった検察の暴走(いつものことですが)の疑いが高まっ
てまいりました。詳細は、末尾のサイトをご覧ください。ゴーンバッシングの
空気の中で専門家として堂々と反論を出す細野氏はすごい方だと思いました。

 これまでの報道では、彼がいかに吝嗇で強欲かという人格攻撃ばかりですが、
その風(印象操作)は日産側や検察が流したものでしょう。外堀を埋めようと
いう魂胆でしょうが、それが事実としても強欲は犯罪ではありませんし、現時
点では、逮捕容疑とも無関係です。17億円の損失の付け替えも本人は否定し
ていますし、事実としても会社が了解した結果であり時効も完成済みです。

 成功者の落ちぶれは無関係な大衆にとって無上の快楽だとはいえ、強欲と犯
罪行為を区別しないのは、私には大金持ちに対する嫉妬による集団リンチとし
か感じられません。

 ネットのコメントによると、ルノーは日産の43%を保有し、日産はルノー
の15%を保有しているので、日産がルノーから独立するためには、ルノーの
株を買い増しし25%以上にすれば、日産におけるルノーの議決権行使を排除
できると、したり顔で解説しているものがありました。
 
 しかし、日本の会社法では、子会社が実質親会社の株式を取得するのを禁じ
ています。仮にフランスの法律では許容していても、法律的には会社は株主の
ものであって、委任を受けた日本人経営者のものではありませんから、保身目
当ての株主に対する背信行為というべきでしょう。こういう冷静さを欠いた日
本びいきのコメントは、ガラパゴス国の偏狭な攘夷論として、グローバル時代
の現在では通用しません。

 そもそも有価証券報告書は会社が提出するものであり、その記載内容をゴー
ン氏一人で変更できるものではありません。仮に、ゴーン氏の指示によるもの
だとしても、担当者は上司や西川社長に報告していたはずです。日産には内部
監査室も存在します。西川社長以下は被害者ではありません。

 政治家の政治資金規正法による悪質な不実記載には地検特捜部が全く動かな
いのに、本件に飛びついてしまったのは、なぜでしょうか。特捜部だけの判断
によるとは思えませんから、国策捜査説も出てきました。引き続き注視します。

 (有報に詳しい公認会計士細野祐二氏のコメント/現代ビジネス)
     https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58626
 (最近のマスコミ報道についてのリテラ記事)
     https://lite-ra.com/2018/11/post-4394.html


2018.11.28(水)【商業登記業務とその行方】(藤沢・酒井恒雄)

 今年、司法書士の年次研修の受講対象者となりましたので、東京の立教大学
で受講してきました。

 蔦の絡まるチャペル……ではなく、蔦の絡まる本館(モリス館)を見上げな
がら教室へ向かいましたが、歴史の重みと芸術を融合させたような姿に、しば
らく見入ってしまいました。ちなみに立教大学は創立100周年のようです。

 さて、研修にはグループワークがあったのですが、各自の自己紹介で、業務
歴も言うこととなり、改めて数えたところ、なんと私は業務歴20周年でした。

 司法書士として20年のキャリアと言えば、相当なベテランのようにも見え
ますが、新人研修のときに司法書士の先輩に言われた、「10年経ってやっと
一人前。そこからがスタートだよ。」という言葉を思い出し、色々とやってき
たように思えて、まだまだ、これからなのだなぁと思った次第です。

 キャリアと言えば、こんな面白いことが本に書いてありました。スタンフォ
ード大学のジョン・D・クランボルツという教授の調査結果なのですが、キャ
リアの歩みを決定付けた出来事の8割は、自分で考えて、自分の意志で選択し
たものではなく、偶発的な出来事なのだそうです。

 おそらく膨大な数の人にインタビューをした結果なのでしょうが、私も偶発
的な出来事によってこの道を進んできたという、8割の人のグループに入るよ
うです。

 その経緯は過去の投稿(2016.10.26)に書いた通りですが、受験時代は商法
(当時)が大嫌いでしたし、開業してもあまり好きではなかった商業登記を、
まさか主力業務とすることになろうとは思ってもいませんでした。

 ちなみに、良いキャリアを積むためには、好奇心、持続性、柔軟性、楽観性、
冒険心が大切なのだそうです。よく覚えておきたいと思います。


2018.11.27(火)【特例有限会社の位置づけ】(東京・鈴木龍介)

 特例有限会社の裁判例(鳥取地判平成29年9月15日金融法務事情2080号839頁)
を検討する機会がありまして、特例有限会社の位置づけについて考えてみまし
た。

 まず、前提の整理ということで、会社法施行により有限会社制度は廃止にな
りましたが、会社法施行前に成立した有限会社は株式会社の特例として存続す
るとされ、これが特例有限会社ということになります。

 特例有限会社は、基本的には通常の株式会社に関する規律にしたがうことに
なりますが、その特則を「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」
(=整備法)で規定しています。
 
 本裁判例では、その特別決議の要件が問題になったわけですが、特例有限会
社の原型ともいえる旧有限会社の規定は以下のとおりでした。

<(旧)有限会社法48条> 
1 前条ノ決議ハ総社員ノ半数以上ニシテ総社員ノ議決権ノ4分ノ3以上ヲ有ス
 ル者ノ同意ヲ以テ之ヲ為ス
2 前項ノ規定ノ適用ニ付テハ【議決権ヲ行使スルコトヲ得ザル社員ハ之ヲ総
 社員ノ数ニ、其ノ行使スルコトヲ得ザル議決権ハ之ヲ議決権ノ数ニ算入セズ】

 そして特例有限会社の前提ともいえる通常の株式会社の規定は以下のとおり
です。

<会社法309条2項>
  前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会に
 おいて【議決権を行使することができる株主】の議決権の過半数(3分の1
 以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が
 出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2(これを上回る割合を定款で
 定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければ
 ならない。~以下、略~
 
 最後に特例有限会社の規定は以下のとおりです。
<整備法14条3項>
  特例有限会社の株主総会の決議については、会社法第309条第2項中
 「当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半
 数(3分の1以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を
 有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2」とあるのは、
 「【総株主の半数以上】(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、
 その割合以上)であって、【当該株主の議決権の4分の3】」とする。

 3つの規定-特別決議要件-を比較してみると、旧有限会社と通常の株式会
社では「議決権行使できる株主」となっていますが、特例有限会社では「議決
権行使できる株主」に限られていません。というより、本来、特例有限会社は
旧有限会社の規定を踏襲するのが普通であるのに、あえて、それを除外したわ
けです。

 なぜ、そのような除外をしたかを疑問に思ったわけでして、会社法制定時の
立案担当者もこのあたりの事情の説明はしていないようです。ちなみに、本裁
判例でも、特例有限会社に通常の株式会社と異なる規制を設けることについて
は、あくまで立法政策であり、それを否定するところではないと述べています。

 会社法では、有限会社を廃止したわけですが、一方で、その当時は株式会社
より有限会社の方が数も多く、世論等を踏まえると時限を決めて株式会社への
移行を強制するという措置も取りづらかったことは想像できます。その結果、
誕生したのが、会社法における「鬼っ子」ともいえる特例有限会社ということ
になるではないでしょうか。

 特例有限会社は早くなくしたい、かといってあからさまに冷遇するわけにも
いかない。そこで、わかりづらいところで差異を設けて、特例有限会社は実は
使い勝手が悪いんだという仕掛けをしたというのは、うがった見方すぎるでし
ょうか。 

<参考文献>
・松本真「会社法施行前後における法律問題をめぐる諸問題(中)」
 商事法務1756号14頁
・郡谷大輔編著『中小会社・有限会社の新・会社法』
 (商事法務、2006年)188頁


2018.11.26(月)【日産ゴーン事件雑感】(金子登志雄)

 先週から除夜の鐘かと思うほどゴーン、ゴーンと全国に鳴り響いています。
与党不利の入管法改正審議等から世間の目を逸らせるスピン説や、米国とフラ
ンスの代理戦争説もありますが、それはともかく、社会現象、司法、会社法の
面などで、よい教材だと思いましたので、この事件を取り上げてみました。

1.日本国内の報道姿勢について
 日産自動車の救世主・カリスマ経営者とまで祭り上げておきながら、一転し
て石を投げはじめた報道姿勢には、空しいものを感じました。現段階では推定
無罪だという原則論を持ち出すまでもなく、ゴーン氏側の反論を待ってから論
評しても遅くはないでしょう(一緒に逮捕されたケリー代表は、ゴーン氏から
は何の指示も受けていない。他の取締役や弁護士、会計士とも協議して行った
ことだと供述しているとか)。

 年棒が高い点の非難も欧米のプロスポーツ選手と比べれば安いものですし、
ベルサイユ宮殿での私的な結婚式にまでケチをつけるのは、行き過ぎでしょう。

2.地検特捜部の手法について 
 羽田での映像ですが、任意同行で逮捕令状もないのに、あのように飛行機内
に立ち入る権限があるのかというのが最初の疑問でした。たまたまテレビカメ
ラが羽田にいたわけではありません。特捜部が報道機関に事前に連絡しており、
「正義の味方=特捜部、相手は巨悪」という宣伝かつ世論誘導のいつもの手で
す。いまでは、巨悪扱いされた側が多数の著作等を残しており、旧態依然とし
た特捜部のマスコミ操作術、シナリオありきで本人周辺への圧力と執行猶予に
なるからという虚偽自白誘導の取調べ手法などがすっかり知れ渡っています。

 特捜部の記者会見によると有価証券の虚偽記載は形式犯ではなく投資家を騙
す重大犯罪だということですが、粉飾決算までは至っていないようですし、よ
り重大な行政官庁の国会をも騙し虚偽の歴史を作る文書改ざん行為には何の行
動も起こさず、その政治的偏向ぶりを正さない限り説得力が弱いと感じました。
 
3.事件経緯の異様性
 今回の事件で異様なのは、仮に可決が無理でも取締役会で会長の不正を糾弾
し、大株主や警察に通報するという正規のルートを踏まずに、いきなり特捜部
を動かしたことでしょうか。司法取引を求めたためかもしれませんが、独裁者
ゴーン・シーザーに対する西川(さいかわ)ブルータスによるクーデターでは
ないかと欧米マスコミからみられているのも仕方ありません。日本人的感覚か
らしても、お世話になった方を背中から撃つような行為に感じてしまった方も
多いことでしょう。

 ネットには逆に悪徳外国勢から日本側経営陣が日本企業を防衛したかのよう
な支持の論調もありましたが、ルノーなくして日産の現在はなく、その持株比
率は43%以上(外国勢全体で62%以上)ですから、日産はすでに完全な外
資系企業です。また、在日外国人からは最近流行りの外国人排斥の1つという
感覚を持たれているようですから、この論調には気をつけたいものです。

4.残された経営陣の責任
 仮に現経営陣が何も知らなかったとしても、その自浄能力の欠如、自主解決
の放棄は極めて残念です。日本企業のコンプライアンスへの信頼を大きく損な
いました。

 また、現時点の容疑では刑事事件になるほどの大事件とは思えません。今後、
背任や脱税に進むのかもしれませんが、それでも執行猶予で終わり、実刑には
ならない範囲だと予測しています。にもかかわらず、国際問題に発展したどこ
ろか、年棒5億円の西川社長以下の経営陣にも賠償責任追及を自ら招くような
ことを社内で全くはからずにしたのか理解することができません。

 事前相談もされなかった監査役や社外役員、監査法人は晴天の霹靂だったこ
とでしょう。この方々には私は同情的です。東芝、スルガ銀行、日産といずれ
もEY新日本有限責任監査法人でしたが、不運が続くものです。

5.人質司法について
 案の定、中世並といわている日本の司法の前近代化ぶりが西洋諸国に広く知
れ渡ってしまいました。
 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181123-00000048-asahi-soci

 あの愛すべきキャラの籠池老夫妻は、証拠隠滅の恐れもないのに10か月も
拘束されましたが、国際的著名人のゴーン氏には、それができるでしょうか。
できないなら、これも不公平です。ちなみに、ゴーン氏はレバノン人でブラジ
ル育ち、フランスで活躍の三重国籍のため、各大使館も拘置所で面会をしてい
る(又は、する)ようです。

6.最後に
 幸いにもゴーン代表らの解任にはルノー側の取締役(2名)も賛同し、日仏
の確執は今のところ回避されました。今後、後任代表取締役の人事、来年6月
の定時株主総会(取締役改選)と続きますので、予断を許しませんが、いずれ
にせよ、15万人の従業員や多数の下請けの生活のためにも、現経営陣には、
この難局を早期かつ円満に収束する努力をしてほしいものです。


2018.11.22(木)【懐かしのカレー】(仙台・立花宏)

 懐かしい味がしました。
 当時はこれを食べて空腹を満たし,将来に希望を抱いていたのだと,昔の記
憶がよみがえってくるようでした。

 それは,先日,地元の新聞を読んでいたときに目にとまったある記事を読ん
でのことでした。内容は,あるカレーのレトルト食品が発売されたところ,想
定していた以上の人気がでて,一時,売り切れ状態になったという記事でした。
しばらくして,ようやく売り切れ状態が解消されたと聞き,購入してみたので
す。

 そのカレーは,私が卒業した大学にあった学生食堂のカレーの味を,大学生
協さんが再現してレトルト食品として発売したのだそうです。その学生食堂は,
10年ほど前に,営業していた建物が取り壊されたのにあわせて,歴史の幕を閉
じたのだそうです。

 その学生食堂が入っていたのはプレハブの建物で,私が通っていたころには
すでにだいぶ老朽化していました。大学の中には他にも食堂があり,どの食堂
もつつましい雰囲気でしたが,その学生食堂はその中でもとびぬけて質素なイ
メージがありました。価格設定が良心的で,私も他の食堂よりも利用する頻度
が高かったように思います。どのようなメニューがあったのかはもう思い出せ
ませんが,カレーだけは,なぜか印象に残っています。良心的なメニューの中
でも,特にお財布に優しく,ボリュームもあり,よくお世話になったからでし
ょう。記憶違いでなければ,価格は私が通っていた当時で,普通盛が 200円弱
だったように思います。

 そのカレーを再現して発売されたレトルト食品が想定以上に売れたというこ
とは,私と同じように,学生時代,そのカレーにお世話になった方がたくさん
いたのでしょう。そして,学生時代,私と同じように,そのカレーで空腹を満
たし,将来に希望を抱いていたのかもしれません。

 ところで,購入したレトルトカレーですが,レトルト食品のカレーとしては,
安いものではありません。ただ,その売上の一部は,大学の基金に寄附される
ようです。基金は大学の設備の保全のほか,奨学金にも利用されるようです。
このカレーの味は,昔の学生にとっても,今の学生にとっても,希望の味とい
えるのかもしれません。

 懐かしい気持ちにさせていただくだけでなく,ほんの少しでもなにかのお役
に立つのであれば,また,購入しようと思いました。将来を担う学生の皆さん
には,将来に希望を抱ける環境で,ご自身の研究に励んでいただきたいと思い
ます。


2018.11.21(水)【商業登記業務とその行方】(藤沢・酒井恒雄)

 先週の投稿の続きとして書こう思っていたことが、鈴木龍介先生が投稿され
た商業登記の未来とリンクする内容でした。今回は、そのこと書いてみたいと
思います。

 私はホームページを作成する代わりに、某世界的IT企業のサービスを利用
することにした訳ですが、その出来映えは十分すぎるものでした。

 ページへのアクセス数や検索の経路といった情報も得られ、簡単な顧客獲得
の分析までしてくれます。また、ホームページの負の効果とされる、更新がス
トップしている情報発信やブログ等についても、しばら放置したままにしてお
くと、そろそろ更新せよとメッセージが送られてきます。これらのサービスは
全部無料です。

 もちろん、こういったサービスを有料で提供している業者もありますが、世
界的に有名な企業が無料でサービスを提供していますから、世の中の流れとし
ては、こういったサービスは、すでに対価を要求されるものではないという認
識が広がりつつあるのではないかと思います。

 このようなサービスの対価に関する認識の変化は、司法書士の登記業務とオ
ーバーラップしている気がしてなりませんでした。登記申請の書式例や添付書
類の見本は、インターネット上でいくらでも手に入れることができます。法務
局の相談でも、手続きの方法や内容について丁寧に教えてくれます。これらは
全部無料でできることなので、登記は自分でやるものであり、登記申請を代理
するサービスは、対価が発生するサービスではないと考える人が、徐々に増え
つつあるように思います。

 鈴木先生が予想されるように、いずれ商業登記が業務として成り立たなくな
るのかもしれません。ちょっと暗い気持ちになりそうですが、見方を変えれば
良い流れなのかもしれません。

 そもそも登記は最終仕上げであって、登記申請(完了)に行き着くまでのプ
ロセスに対して、より多くの時間と労力を費やしているのが実情かと思います。
司法書士は登記申請の代理人ですが、この「登記申請の代理人」という言葉が、
実際のサービスの内容に覆いを被せてしまっている感もあるかと思います。

 今は、登記という結果に対して対価が支払われている感じになっていますが、
これからは、費やした時間と労力に対応した対価を得られるようになるのかも
しれません。

 登記という独占業務が無くなる不安があるかもしれませんが、おそらく登記
業務自体が無くなる頃には、とっくに登記は独占業務ではなくなっていると思
います。

 では、商業登記業務に背を向けていいのかと言えば、そうではないと思いま
す。規制緩和の荒波を乗り越え、登記業務が無くなっても必要とされる専門家
であるためには、「経験」が重要になってくると思います。独占業務である今
のうちに、なるべく多くの登記業務を受託し、登記に至るまでのプロセスをよ
り多く経験しておけば、将来的にはそれが強みとして残り、他者との差別化に
繋がるものと私は考えています。

 結果的に、「専門家と呼べる人って、ほとんど司法書士じゃない?」と言わ
れるようになればいいのだと思っていますが、皆さんはどう思われますか?


2018.11.20(火)【『詳細 登記六法 平成31年版』】(東京・鈴木龍介)

 早いもので、毎年の六法が発刊される時期になりました。つい先日になりま
すが、私が編集代表の末席として関与しております、金融財政事情研究会の
『詳細 登記六法 平成31年版』が発刊されました。

 最近は、法令も「法令データ提供システム」等で検索することが多くなって
きたのですが、私の年代はやはり、紙の六法は手放せません。この六法は、い
わゆる専門六法でして、業界としても是非、今後も存続できればと思っていま
す。

 編集者の悩みとしては、このところ重要法令の大きな改正が目白押しであり、
また、あらたに出された判決や登記先例を掲載するということで、年々ページ
数が増加せざるをえないことです。

 以下、本年度版の特徴をご紹介いたしますので、よろしくお願いいたします。
* 債権法改正(平成29年法律第44号)と相続法改正(平成30年法律 第72号)
 に対応。別冊に債権法改正反映後の民法条文と相続法改正の新旧対照条文を
 収録。
* 商法の全文がひらがなによる口語体に(平成30年5月25日公布の 『商法及
 び国際海上物品運送法の一部を改正する法律』に対応)。
* 『所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法』および『法務局
 における遺言書の保管等に関する法律』を追加収録。

<きんざいストア>
   https://store.kinzai.jp/public/item/book/B/13288/
<Amazon>
   https://is.gd/ptmfCi


2018.11.19(月)【イミグラント雑感】
(金子登志雄)

 先週の続きですが、イミグラントは英語でemigrantとネットにあり、これで
「イミ……」とは本当かなと思い、さらに調べましたら、immigrant もありま
した。前者は国外への移民、後者は国内への移民のことで納得できました。

 移民といえば米国、難民といえばヨーロッパですが、西洋ではローマ帝国の
時代から他国(特に異教徒国家)を侵略し、征服した民族を道路舗装や、連れ
帰って奴隷として使っていましたし、バイキングの歴史もありますから、異民
族との交流も移民にも抵抗が少ないといえます。肌色の相違である人種問題も
最近の欧米映画では非白人が主役や準主役になっています。

 アジア大陸の蒙古帝国も他国を侵略しましたが、一神教の西欧諸国と相違し
宗教にも寛大で、有能な異国人を要人として登用しましたし、シルクロードを
通じてイスラム商人などが大活躍し貿易も文化交流も盛んでした。中国も漢民
族と周辺民族との抗争・交流の歴史でした。清王朝も漢民族ではありません。

 これに対して島国である日本は早くから統一され一民族だとされ(厳密には
違いますが)、私を含めて異国・異民族との交流に全く慣れていません。明治
以降も植民地に日本語教育を強制し、宗教どころか言語までを奪うなど、恨み
を買う支配を実行しました。

 こういう島国日本でも、ただいま、経済界の要請で労働力不足を補うため、
異国民の受け入れが議論されていますが、うまく行くのでしょうか。

 「安い」労働力を求めているのが真意ですから、結局のところ、恨まれる結
果になるのではないかと危惧しています。現に、土木建築の技能実習生として
日本に学びに来たのに、日本人が嫌がる福島の放射能汚染作業に駆り出され、
危険手当までピンハネされている悲惨な事例が少なくありません。騙されたこ
とに気づいても借金して日本に来たため簡単に辞められず、帰国後に放射能で
病気になっても訴えることはないだろうという狡猾な計算でしょうが、明日の
徴用工問題に発展しかねません。

 一方、逆のemigrantですが、人口の多い中国では労働力が余っているため、
労働者を使い捨てにするところが多いのですが、経済力の発達した現在では、
日本の技術者を高給で雇い、労働力に頼らない生産に向かう企業が増えてきた
ようです。欧米人同様に中国人も技術を習得すると高給を求めてすぐに転職し
てしまうので、その対策でもあります。設備や機械は疲れを知らず不平もいい
ません。これで中国の経済力の飛躍的な発展は今後も維持されそうで、米国を
追い抜くのも時間の問題でしょう。

 いずれは大陸にある朝鮮半島も統一され、ヨーロッパまでの鉄道網ができて、
東アジアの経済力が飛躍的に発展するでしょうから、近隣の大陸国とは上手に
付き合っておくのが日本のためだと思いますが、愚かにも明治以降の日本人優
越論(裏側に日本人被害者論)がここ数年で急速に勢いを増していますから、
日本は置いてきぼりを食うことになりかねません。日本の将来のためにも、労
働力や移民の受け入れの前に、歴史認識を含めた環境整備が必要でしょう。


2018.11.16(金)【デジタルイミグラント】(金子登志雄)

 11月10日の土曜日は、毎年恒例の大学ゼミ(民法専攻)のOB会に参加
してきました。

 毎回、OBの一人が40分程度の講義をするのですが、今回はソーシャルメ
ディアに詳しい金井高志弁護士でした。下記の著作をお読みの方もいらっしゃ
るかと思います。私より10年以上も後輩ですが、事務所が近いので、近所の
他の法律職のOBともども一緒に食事をしたこともあります。
      https://is.gd/H5tJvx

 その講義の中で、デジタルイミグラントという単語を教えてもらいました。
生まれたときからITの環境下で育ったデジタルネイティブに対して、古い世
代をデジタルイミグラント(イミグラントは移民という意味)というようです。

 念のため、ネットでみましたら、正確にはIT普及以前に生まれたが、IT
を身につけようとしている世代をいうようですから、IT音痴の私や酒井さん
はアナログネイティブから抜け出せていないようです。

 このホームページも本欄も私の身内に外注しており、私は何もできません。
ツイッターもフェイスブックも無縁であり、トランプさんの域にも達していま
せん(云々や背後を誤読するどこかの首相よりは詳しいと思っていますが)。

 勉強すればよいじゃないかとよくいわれますが、酒井さん同様に勉強しなく
とも何とかなっていますし、他の司法書士をみても、私と大差ない人ばかりな
ので、焦りはありません。

 大学教師もなさっている金井弁護士によると、最近は長文のレポートですら、
スマホで書く学生もおり、こういうのをスマホネイティブというのだそうです。
こういう人材が多くなると、そのうち取締役会のスマホ会議などもでてきそう
です(スピーカー機能を使えばいまでもできますね。取締役が数人なら数分割
の画像で会議ができるアプリも、どこかにあるかもしれません)。

 ITの発達は庶民の生活習慣まで変えていますから、われわれ士業も、チョ
ンマゲを落としてザン切り頭にしなければならない日は近いようです。


2018.11.15(木)【定款認証手続き変更についての所感】(東京・古山陽介)

 11月8日の立花先生、11月12日の金子先生に続きまして、私もこの話
題について触れたいと思います。

 自分のところにも普段から付き合いのある公証人の先生から、改正に関する
案内をいただき、また、11月12日に東京司法書士会において本テーマに関
する研修がありまして、一通り手続き詳細を把握したうえで、具体的な書類で
あったり不明点を整理して、上記付き合いのある公証人に現在照会をかけてい
るところであります。

 以下、この変更について、あくまでも私が個人的に感じたことを書かせてい
ただきます。(長文につきご了承ください。)

 (1)まずは、金子先生と同様に、わざわざ「該当」にチェックすることな
ど皆無であるはずなのに、ここにチェックをさせる意味はどこにあるのかとい
うのが率直なところであります。
 公証人のデータベースで照会をかけるのであれば、定款に記載された発起人
について、定款の事前確認時に一律に照会をかけて、疑わしい場合に、別途対
応を講ずることでもいいような気がします。
 特に株式会社における「実質的支配者となるべき者の該当事由」③(一般社
団・一般財の場合は②)については、結局のところ公証人に個別事情を照会か
けて対応をしなければならなくなりそうで、公証人の判断によるところが大き
くなるものと思われますので、当然のことながら時間がかかる場合も出てきま
す。

 (2)また、設立する会社の実質的支配者に該当する者が、データベースに
リストアップされた個人(団体)と同姓同名の場合には、リストアップされて
いる者とは違うことを説明しなければならないみたいです。
 この説明でも公証人の疑念が晴れなければ、さらに時間がかかるようですの
で、手続きが長期化することにもなりそうです。

 (3)個人的には、未上場企業が子会社を設立する場合に準備する書類につ
いては、しばらくの間、落ち着くまでは多少の混乱があると思います。
 発起人となる未上場企業の株主構成を依頼時にヒアリングする必要が出てき
ますし、発起人の会社の筆頭株主が法人である場合には、更にその会社の株主
構成までヒアリングしなければなりませんので、クライアントへの説明も含め
て、やや手間になるのではないでしょうか。

 (4)最後に、最も懸念している点としましては、単純なケース以外の場合
において、公証人によって求める書類等の対応が異なることが想定されること
であります。
 現時点においても、定款の認証までの手続きが公証役場によって統一されて
いないことは、各都道府県で定款認証手続きを行ったことがある司法書士であ
れば感じているところだと思います。
 今回の改正が加わることによって、更に手続きが公証役場によって異なるよ
うなことになりますと、公証役場ごとに対応することが増えてしまいますので、
クライアントから依頼を受ける立場としましては、これを機に、手続きがほぼ
統一されることを期待したいところではります。

 その他にも改正の資料を読んでいて感じることはありますが、以上が私の個
人的な所感でございました。

 改正については、対応するのが面倒と感じるよりも、改めてあれこれ考える
ことができるよい機会であると思います。


2018.11.14(水)【ホームページ】(藤沢・酒井恒雄)

 私は、開業以来、事務所のホームページを作成していませんでした。仕事の
依頼は、紹介や口コミでよいと考え、これと言ってホームページを作成する理
由が見当たらなかったからです。格好をつけて言うと、宣伝をしていないのに
予約で一杯の、知る人ぞ知る名店みたいな感じになりたいと思っていました。

 しかし、理想ばかり言っていられなくなりました。まず、予約が一杯どころ
か、空席も目立つような状況になっているという問題があります?が、もう一
つ問題が発生しました。今の場所に事務所を移転してから、来所の際にお客さ
んが迷うことが多くなってしまったのです。

 前の場所では、窓一面に大きく事務所名の表示をしていたのですが、今の場
所は、窓が道路に面しておらず、郵便受けと扉の横に事務所の表示をしている
のみです。看板を出せる場所がありません。

 度々、お客さんから「行き方や外観が分かるホームページ等はないのですか
?」と尋ねられるようになりましたので、今更ながら作成の必要性を感じたの
でした。

 ところが、この手の作業に詳しくない私は、ホームページを作るためにドメ
インの取得が必要であることすら知らず、継続的な維持の方法も業者によって
様々なので、どうしたものかと途方に暮れてしまいした。

 そんな折、こういった分野に詳しい友人と会う機会があったので、ナイス・
タイミングとばかりに、この件について相談してみました。私が、ホームペー
ジを作る動機と理由を告げると、作成する必要はないだろうとの返答でした。

 ではどうしたらいいのかと尋ねたところ、某IT企業のサービス機能を利用
すれば、ホームページと同じようなものが無料で作れるので、それで十分では
ないかと教えてもらいました。私は、集客が目的というより、道案内とか自己
紹介のような感じで作成したかったので、そのようなサービスがあれば御の字
です。結局、その某IT企業のサービスを利用することにしました。

 とういうことで、未だホームページがないという時代遅れ感がある状態なの
か、時代の最先端を行っている状態なのかよく分かりませんが、とりあえずの
対策は出来たような感じになりました。


2018.11.13(火)【商業登記の未来~その2~】(東京・鈴木龍介)

 1回空いてしまいましたが、「商業登記の未来」の続編です。今回は少し各
論的なところになりますが、前回同様に妄想、夢想ということでお許しくださ
い。

 まず、登記事項についてですが、会社であれば会社法において知りたい事項
と知らせたくない事項との調整が図られているものというようにとらえていま
す。

 では、登記事項が今後どうなっていくかを考えてみると、最も保守的かつ安
易なのは、現状どおり会社法等で要・不要をコントロールするというものです。

 もう1つは、最低限必要な事項のみ法律で定め、それ以外の事項は会社の任
意にするというものです。こうなると登記が会社の情報発信ツール、すなわち、
知らせたい事項を知らせることができるというインセンティブが生まれるとい
うことになります。

 次に登記簿の仕組みについてですが、一覧性を重視した現行を維持するとい
うものと、検索・抽出がフリーな、いわゆるファイリングシステムというもの
が考えられそうです。こちらの方が現代(近未来)にはマッチしていて便利な
よう気がします。

 続いて、登記申請の方法ですが、インターネットによる真の本人申請-司法
書士の代理申請ではない-がスタンダードになるかもしれません。そのために
は添付書類の廃止(もしくはミニマム化)や作業等の簡素化は必要になるでし
ょう。一方で登記申請と他の行政手続等とが連動し、かつ登記がその起点の手
続ということになれば登記のポジションも安泰かなと思います。

 そして、商業登記所の位置づけですが、国家が運営するか民間に移行するか
という問題もさることながら、これは現状でも全国で1か所あれば足りるよう
な気がします。登記所での審査が形式的なチェックだけを行うのであれば一種
のデータセンターとしての保守管理さえきちんとできていればよいということ
になりそうです。他方で、商業登記所を一種の企業のよろず相談センターとし、
あわせて登記の事務等を行うという位置づけも考えられるかもしれません。

 最後に商業登記への司法書士の関与について考えてみたいと思いますが、仮
に現行の仕組みが維持されたとしても単純作業的業務は減少することは否めま
せん、また、手続のミニマム化や簡素化が進めば、商業登記が業務として成り
立たず、この分野からの事実上撤退ということは十分あり得そうです。ただ、
商業登記の業務はなくとも企業法務の専門家としてのニーズはあると思います
ので、そこに活路を見出すなんてところがベストシナリオでしょうか。

 ということで、今度は少し「企業法務の未来」について考えてみて、いずれ
機会を見て徒然したいと思います。


2018.11.12(月)【定款認証手続の変更】(金子登志雄)

 11月30日から定款認証手続が少々変わることについては、11月8日の
本欄で立花さんが説明していましたが、9日の金曜日には、行き付けの公証役
場から「変更についてはご存知か」という電話が入りました。

 もちろん「知っています」と答えましたが、知らない司法書士が多いとのこ
とで、電話連絡しているとのことでした。確かに、情報源として役立つ京都の
司法書士内藤先生のブログなどを閲覧しているような商業登記中心の司法書士
でないと知らないこともあるでしょう。初耳の方は下記をご覧ください。

  https://www.hokura-office.com/teikan/

 上記で実質的支配者は自然人だといいながら、上場会社等は自然人扱いされ
ています。「等」については説明がないのですが、電話をくださった公証人と
の会話では、上場会社が子会社を設立する際は上場会社が実質支配者だが、未
上場会社が子会社を設立する際は、その未上場会社のオーナーが該当するよう
ですから、上場会社「等」の「等」は昔の店頭登録など上場会社に準じたもの
のことだと思います。

 しかし、いつも思うのですが、定款認証にあたり、暴力団員などと名乗るは
ずもなく、100%が非該当にチェックするはずですから、何の意味があるの
かと思ってます。また真に暴力団員であったら、他人に会社を設立させ、その
会社を買収する方法を採用することでしょう。きっと世間に対する法務行政の
「対策はしています」という免罪符又は言い訳でしょうが、設立時代表取締役
に誓約書を書かせることで十分だと思いますが、いかがでしょうか。

 なお、11月30日はシステムの変更で公証役場も混乱するであろうから、
この日の認証は避けてほしいそうです。


2018.11.09(金)【国家ファーストはファシズム?】(金子登志雄)

 米国の中間選挙が終わりました。今後の世界の行く末を占う意味で、トランプ
流政治がどの程度評価されているのかと強い関心を持ってみていました。

 トランプさんの登場は、既成秩序や既成権益をぶち壊したという意味ではプラ
ス評価でしょうが、何事においても仮想敵を作りツイッター等のSNSでヘイト
紛いに口汚く罵り、国民に恐怖を煽り、自国・自国民の優越性を説き、冷静な批
判には左翼のフェイク(虚偽)だと攻撃し事実さえ無視する非知性で品を欠いた
排外主義はいただけません。

 インターネット時代のプロパガンダ式政治手法(マイケル・ムーア監督のいう
「21世紀型ファシズム」の台頭)ですが、これは世界的傾向であり、日本の安
倍政権もトランプさん以上に実に巧妙に取り巻きがネットや報道機関を活用して
いますが、その結果は、国民を熱烈支持者と熱烈批判者に感情論で分断し、強い
指導者を求める大衆は後者を非国民と罵倒し、いつか来た道に戻りつつあります。

 中間選挙の結果は、予想どおりで上院は共和党、下院は民主党というネジレを
産み出しましたし(権力の分断は民主主義的にはよいことです)、民主党からは
同性愛者やイスラム教徒までが当選しましたので、米国の民主主義は依然として
健在のようです(ただし、米国は昔から国外ではひどいことをしても、国内では
民主的でした)。

 ただ、この結果は、トランプさんの痛手になったかは不明ですし、排外主義の
米国ファースト主義(自分だけよければよい。他国や他国民、弱者の不幸は関係
ない自己責任で切り捨てよ)と他国との協調路線(自由貿易含む)とのさらなる
分断(対立)を促進したともいえますので、日本及び日本周辺にとって、油断で
きません。確実なことは仮想敵の中国脅威が煽られ、米国の軍備を大量に購入さ
せられることでしょう。中東と東アジアの不安定は米国産業の利益です。

 日本の貿易相手国の1位と2位は米国と中国であり、ほぼ同額です。両国の板
挟みになり日本経済のかじ取りが非常に難しくなりますが、国策(?)の米国追
随方針を維持しても、トランプさんへの追随だけは、将来に禍根を残すため避け
てほしいものです。
 
 関心が強かったためか、久々に政治ネタにしてしまいましたが、先日は司法書
士試験の合格発表があったようですね。本年の司法書士試験合格者の平均年齢は、
38.77歳だそうです。
   http://www.moj.go.jp/content/001272183.pdf

 これをみると、40代でも若手、50代は中堅、60代以上がベテランといっ
てもよさそうで、司法書士の世界は職人のそれに近いようです。明日の生活保障
はありませんが、高齢化社会にあって、70代でも現役であることが不思議でな
い職業を選んで、ほんとによかったと思っています。


2018.11.08(木)【公証人法施行規則の改正】(仙台・立花宏)

 ご承知の方も多いと思いますが,11月30日から改正公証人法施行規則
(以下,「規則」という。)が施行されます。

 改正内容は,株式会社並びに一般社団法人及び一般財団法人の設立にあたり,
公証人の先生より定款の認証を受ける場合,当該法人の実質的支配者(注)の
氏名,住居及び生年月日と当該者が暴力団員や国際テロリストに該当するかど
うかを申告するというものです(規則13条の4)。

 改正(追加)された条文の内容はシンプルなものですが,実際にこれに基づ
く実務が始まると,いろいろ迷う場面も出てくるかもしれません。個人的には,
実務にどのような影響があるのかをまだ把握しきれておりませんが,今後,司
法書士会等における説明会も実施されるでしょうから,そうした場で情報を収
集していきたいと考えております。

 なお,施行されるのが11月30日からですから,今,受任している設立の
案件や,今後,ご相談をいただく設立の案件については,この規則13条の4
の適用の有無も念頭に置きながら対応していかなければならないでしょう。た
とえば,12月初旬に設立予定の法人がある場合には,定款認証の時期がいつ
になるのかについて,スケジュール管理が大切になってきます。

 なお,公証役場等のホームページでは,既に制度の概要の資料を公開してい
るところもあります。その資料によると,この制度による申告した場合に,希
望すれば「申告受理証明書」を発行してくださるようです。成立した法人が金
融機関等と取引を開始するにあたり,当該金融機関等から,実質的支配者及び
その者が暴力団員等に該当しないことの申告を求めらた際に利用すること等を
想定しているようです。

 この「申告受理証明書」の利用を検討する場合は,11月30日以降に定款
認証をするスケジュールを組むということも考えられるでしょう。

 今,受任している設立の案件や,今後,ご相談をいただく設立の案件につい
ては,依頼者の皆さまに,そうした点も説明しながらの対応が必要なのかもし
れません。

(注)犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成19年法律第22号)4条1
  項4号に規定する者。


2018.11.07(水)【おやじギャグ】(藤沢・酒井恒雄)

 数年前から、つい、おやじギャグを言ってしまうようになりました。
例えば、作成方法に問題のある取締役会議事録が手元に来たとき、「なんか、
決議内容が明確でないよね。ヤッカイ(役会)だけにヤッカイ(厄介)だな。」
と、補助者に向かって言ってしまいます。聞かされる補助者は、アハハと口で
は言いつつ、いつも目が笑っていません。そんな反応も何故か楽しんでしまっ
ている自分がいます。

 朝の身支度をしているときは、テレビを点けっ放しにしている場合が多いの
ですが、先日、ふいに、おやじギャクについて取り上げた番組が始まり、準備
をそっちのけで見入ってしまいました。

 なぜ、中年男性はおやじギャクを言うのかという理由を探るものでしたが、
その結論は、脳の機能が低下しているからなのだそうです。ちょっとショック
でした。

 人間の脳内には莫大な数の言葉がデーターとして蓄積されていますが、ある
言葉が情報として脳に到達すると、脳内では即座にそれに関連・類似する言葉
を脳内データーと結びつける作業が行われるのだそうです。

 年を重ねるにつれ、言葉の結びつきのバリエーションが増えて、誰でもギャ
グを言う基礎が出来上がるのだそうですが、女性があまりギャクを言わないの
は、考え方が現実的であるからなのだそうです。番組でも挙げていた例ですが、
「バナナ」という言葉が脳に到達すると、男性なら「そんなバカな→そんなバ
ナナ」といった連想をしがちなのですが、女性は「バナナ→家にバナナは買っ
てあったかしら?」という連想になる場合が多いのだそうです。

 では、男性なら年齢に関係なくギャグを言ってもおかしくないのでは?とい
う話になりますが、ここが若い人と中年の差が出るところです。

 若い人は、頭の中ではくだらないことを連想しても、それを脳の前頭葉の働
きで口に出さないように制御することができるのだそうです。ところが、中年
になると、前頭葉の機能が低下して制御が効かなくなってしまい、つい口に出
してしまうのだそうです。

 なるほど、たしかに熟考せずに、反射的に言葉を発してしまう感じですので、
それが笑えないギャグに繋がるのですね。アンチエイジングのために、これか
らは、おやじギャクを言わない努力をするという課題も追加しようかと思いま
す・・・・・。


2018.11.06(火)【日本登記法研究会 第3回研究大会】(東京・鈴木龍介)

 今週は、「商業登記の未来」の続きの予定でしたが、1つ告知をはさませて
いただきます。

 以前もご紹介させていただきました「日本登記法研究会」の第3回研究大会
が平成30年12月8日(土)10:00~東京・四谷の司法書士会館で開催
されます。

 同大会の概要は以下のとおりですが、先着順(定員100名)となっており
ますので、お早めにお申し込みください。
   http://www.toukihou.jp/pdf/entry181208.pdf

 あわせて、これを機会に、同会への入会を検討いただければと思います。ち
なみに、今のところ、入会金や会費はありません。
 入会申込書は以下からダウンロードできます。
   http://www.toukihou.jp/pdf/entry.pdf

日時:平成30年12月8日(土)10:00~17:30(開場 9:30)
会場:日司連ホール
  (東京都新宿区四谷本塩町4番37号/司法書士会館地下1階)
共催:日本登記法研究会、
   日本司法書士会連合会、日本土地家屋調査士会連合会
後援:法務省
内容:○動産・債権譲渡登記関係(午前)
    テーマ「動産・債権譲渡登記の未来」
    報告① 白石 大氏(早稲田大学大学院法務研究科教授)
    報告② 小野 絵里氏(司法書士)
   ○「日本登記法研究会」定時総会
   ○不動産登記関係(午後)
    テーマ「不動産登記の真正の担保」
    報告① 七戸 克彦氏(九州大学大学院法学研究院教授)
    報告② 植木 克明氏(司法書士)
    報告③ 原田 克明氏(土地家屋調査士)
定員:100名(要事前申込・先着順)
参加料:1,000円程度(資料代として。当日会場で申し受けます。)
終了後、懇親会を行います(懇親会費6,000円程度)。

 同大会の定時総会において「日本登記法研究会」から「日本登記法学会」に
移行する予定です。


2018.11.05(月)【住所と場所】(金子登志雄)

 シリアの反体制グループ、いや身代金商売の無法者集団に3年4か月も拘束
されていた安田さんの記者会見記事を読みました。さすがに逞しい方ですね。
通常人だったら、とっくに気が変になっていたことでしょう。

 ネットや報道では自己責任だとのバッシングが多いようですが、詳細な事情
が不明の間は評価を控えるべきなのに、大多数が反撃の来ない安全地帯からの
無責任な評価をしており、情けない思いです。人の生死に関して軽すぎます。
報道で事情を知った気分になるのでしょうが、報道自体も報道機関や編集部の
主観が基準になるため、参考意見に過ぎません。物事の判断の主役は貴方自身
であり、評価することによって貴方自身が試されています。

 さて、本欄ネタ切れのため、酒井さんと古山さんの投稿の派生問題をテーマ
にしてみました。

 会社の成立年月日につき、「仏滅」の場合は、私も顧客に必ず確認しますが、
仏滅が6日に1回も来るのは多すぎますよね。しかも仏教とは全く関係ないの
に「仏滅」とは仏教界が気の毒です。

 最近の若い人は、結婚式を仏滅にする人も多く(会場の確保が楽ですから)、
仏罰やタタリがあったとは聞いていませんので、気にしないのが一番です。キ
リスト教で忌み嫌う13日金曜日も、国によって日や曜日が異なります。仏滅
については、私は、仏様が不吉を撲滅する日と解釈しています。

 酒井さんのテーマですが、会社の住所を「藤沢1-1-1」にしてよいのは、
登記申請人が「当社の住所はここです」と示したものが会社の住所だからです。
代表取締役の住所につき印鑑証明書が「藤沢1丁目1番1号」になっていても、
申請基準ですから「藤沢1-1-1」で差し支えありません。印鑑証明書の添
付は印鑑照合のためであり(本人確認証明書以降は「氏名」照合の機能も有す
るようになりました)、住所の証明のためではないからです。その証拠に代表
権付与の場合は印鑑証明書の添付さえ不要です。ただ、添付した印鑑証明書の
住所と場所が一致しない場合は、申請内容と添付書面に齟齬があり却下となる
ため、その場合は、印鑑証明書取得後住所が変わっているなどの説明が必要に
なります。

 ところで、会社法4条には「会社の住所は、その本店の所在地にあるものと
する」とあるのに、会社法911条3項では「本店の所在場所」を登記せよと
あります。

 会社の住所と本店の所在場所はどこが違うのかと迷ったことはありませんか。
これは深い意味はなく、発起人、代表取締役、会社など「人(法人)」を主語
にする場合は住所といい、人のうち、〇〇については場所というだけのことで
す。募集株式の払込みは、銀行等の法人に対してするのではなく、銀行等は払
込みの取扱いの場所でしかないため、そこにある会社の預金口座に入金すれば
よいわけです。


2018.11.02(金)【プロバイダー契約の解除について】
                         (島根・根来川弘充)

 昨今、法律相談を受ける中で、インターネットでのトラブルが増えてきてい
ると実感します。中でもプロバイダー契約は、少々問題を感じています。とい
うのも、他の契約とセットになっているケースが多いからです。

 以下、先日受けた相談です。

「端末のタブレットをテレビショッピングで購入した。」
「インターネット契約をすれば、本体はほぼ無償で提供を受けられた。」
「商品が届いたが、気に入らなかったので解約を申し入れたところ、『端末本
体はクーリングオフができるが、ネット契約はできない』と言われた。」

というものです。

 たいていの方は、テレビショッピングで宣伝している業者と契約をすれば、
解約もその業者と考えるのではないでしょうか。

 しかし、業者側の言い分は、

「プロバイダーとの契約は別なので、そちらの解約は、プロバイダーと直接し
てほしい。」

というものなのです。

 このように、主として宣伝している業者とは、ちがう業者との契約を視聴者
が簡単にできてしまうということに、私は大きな問題があると思っています。

 私としては、宣伝した業者が『代理』で契約をしたのと見た目に違いがない
のだから、同等の法規制を受けるべきだと思うのです。

 ちなみにプロバイダー契約は、電子通信事業法の適用を受けます。平成28
年に改正されて、「契約書面の交付を受けてから8日以内に解約ができる。」
ようになっていますので、皆様に知っていただけたらと思います。


2018.11.01(木)【会社成立年月日】(東京・古山陽介)

 不動産の決済が大安に集中するように、会社の設立日についても大安を希望
されるクライアントが多かったりします。大安等の日柄については、気にしな
い人は全く気にしないですし、拘る人はとことん拘ります。

 けっこう前ですが、上場企業のクライアントで、子会社設立の依頼を受けた
際に、登記の前日になって設立日を変更したいという連絡を受けたこともあり
ます。その理由が、役員の一人から「日が良くない」という意見が出たためと
いうことでした。リリースを出していたので、法務の方々がてんやわんやにな
っていた記憶があります。

 また、有限会社から株式会社への商号変更だったり、持分会社から株式会社
への組織変更の依頼の際にも、会社成立年月日に影響はないか、新しい登記簿
にもきちんと当初の設立年月日が記載されるかといった質問を受けたりします。

 起業される方にとっては、起業という新しい門出の日でありますし、代々承
継されてきた会社にとっては、創業日は特別な重みがあります。

 その記念すべき設立日を来年の5月1日に希望する方はけっこう多いみたい
です。10月15日の立花先生の記事にもありましたが、私のところにも数件
問い合わせがありました。

 休日になりそうな雰囲気が漂っていて、クライアントとのお酒の席でも、年
末年始の休暇のことよりも早くも来年のGW10連休の話題が出ています。現時
点では最終調整段階ということですので、近々正式発表があるのでしょう。

 そういえば、まだ届いていませんが、そろそろ届くと思われる来年度の司法
書士手帳は5月1日を休日としているのでしょうか。


2018.10.31(水)【本店の表記】(藤沢・酒井恒雄)

 商業登記の本店の表記についてですが、たまにハイフンで記載されているも
のを見かけます。例えば「神奈川県藤沢市藤沢1-1-1」といった具合です。

 司法書士が登記申請の代理をする場合には、「神奈川県藤沢市藤沢一丁目1
番1号」と登記するのが通常かと思いますので、ハイフン表示の会社は、悪く
言ってしまえば、適当に作った感があって、あまり良い印象を与えるものでは
ないなと思っていました。

 ところが、先日、本店移転登記の依頼を受けた際に、新しい本店の表示はハ
イフンにして欲しいと言われました。事情を聞くと、金融機関や公的機関への
提出書類等に会社の本店を記載する際、簡略してハイフンで記載すると、謄本
通りの記載にせよと言われるのが面倒だとのこと。それなら謄本上の記載もハ
イフンにしてしまえということで、あえてハイフン表示で登記して欲しいとの
ことでした。

 なるほど、たしかに書類の提出先によっては、一字一句、謄本どおりに記載
せよと、細かいことを要求されることがあります。

 なかなか自分が代理人となって、ハイフン表示で本店移転登記を申請するの
は抵抗がありましたが、依頼人の要望も理解できますので、言われたとおりに
申請をしました。

 完了した謄本を見て、公示する表示方法としても、体裁としても、やはりし
っくりこないのは、司法書士ならではの感覚なのでしょうか。一般の人が見た
ら、別に何とも思わないのかもしれませんね・・・・・。


2018.10.30(火)【商業登記の未来】(東京・鈴木龍介)

 ちょっとした照会がありまして、今回は、日本の商業登記の未来について徒
然なるままに考えてみました。特に根拠とかはない思いつきで各論点の整合性
も無視しています。ですから、妄想、夢想に近いので、軽く読み飛ばしていた
だければと思います。ちなみに未来というのは、おおよそ20年くらい先を想
定しています(人生100年時代といわれていますので、私もまだ現役だった
りして・・・)。

 まず、日本の社会全般の前提としては、ITが進化、AIが浸透するととも
に、超高齢化と人口の減少ひいては会社の減少というところでしょうか。これ
らは想定より急速に進行するかもしれませんが・・・

 さて、本題ということで、まず商業登記制度が存続しているかですが、多分、
存在はしていると思っています。ただ、そのあり方は変貌している可能性があ
るかなということで、以下の3つの方向性を考えてみました。
 最も保守的かつ楽観的なのは、おおむね現状維持というものです。ただ、登
記するインセンティブや必要性に疑問符が付くような気がします。
 次に革新的かつ希望的なものなのは、会社・企業のインフォメーションセン
ター化するというもので、EDINET等他の情報と融合し、会社・企業情報
のプラットフォームとなり、各種情報のハブになるというイメージです。これ
はかなり魅力的なものですが、省庁をまたぐ抜本的な見直しになるので相当に
ハードルは高そうです。
 3つ目は少し現実的なものということで、会社等の実在証明機能を中心に置
くもので、たとえば、会社の商号・本店・代表者(+株主)については厳格な
審査を行い、仮に虚偽や登記懈怠については厳罰に処すとともに、年次報告を
義務付け、当該会社の存在と基本的な情報の真実性は確保するというものです。
情報があふれる今日、信頼性の高い情報の価値は高く、相応のニーズはあるの
ではないでしょうか。 

 次に商業登記の法的な効力について考えてみたいと思います。一応、法的な
効力は必要であるというのが前提です。現在は、公示力というものが中心であ
り、これは一体どういう場面で威力を発揮するか、よくわかりません。仮に登
記を確認することなく取引をして不測の損害を負ったと場合には保護されない
というところまでいけばまだしも、そこまで強い効力は認めていないと思われ
ます(そもそも、登記の真実性の担保は弱いですし・・・)。

 そこで、効力を形成力中心にするというのはどうでしょう。現行も設立等、
登記に形成力を与えているものもありますが、あくまで特則的な扱いです。そ
れを転換し、たとえば商号の変更決議が成立したとしても登記をするまでには
商号の変更の効力を有しないというものです。そうなれば登記の法的効力は非
常に大きいものになりますし、ある意味、わかりやすい仕組みということにな
るかなと思ったりします。

 続いて、登記の真実性の担保についてですが、先ほど述べたとおり情報は確
からしさが命ということを踏まえますと、現行のシステムは中途半端といわざ
るを得ません。そこで、真実性を向上するための方策として、いわゆる事前規
制型というのが考えられます。これは、現行の制度を前提としながら添付書面
を充実させるとともに審査を強化するというものです。いわゆる重装備の高負
荷により真実性を担保するというものです。もう1つは、いわゆる事後処罰型
というものです。これは、添付書類はほとんどなし、審査も本当の意味での形
式のみとし、ただし、虚偽等があった場合には相当な罰を与えることで真実性
を担保するというものです。イメージとしては金融商品取引法の有価証券報告
書等です。

 各論的なことも少し考えてみたのですが、長くなってしまったので次回に回
したいと思います。


201810.29(月)【代表権の制限と不存在】
(金子登志雄)

 会社法308条2項に「自己株式については、議決権を有しない」とありま
すが、正しくは議決権は存在するが行使制限状態にあるというべきでしょう。
自己株式が処分されれば、無から有の突然変異で存在するようになるのではな
く、単に行使制限が撤廃されただけです。

 さて、会社法の施行前は、取締役には①「原則として取締役と代表取締役の
地位が一体化した有限会社の取締役(各自代表制下の取締役)」と、②「取締
役と代表取締役は別々の地位とされた商法の株式会社の取締役」の2種類が存
在しましたが、前者のうちで、定款の定めに基づく取締役の互選で代表取締役
を定めた場合は、便宜、②型に準じて解釈されていました。

 しかし、旧有限会社法と旧商法を統合した現行会社法の下の取締役モデルは、
旧有限会社型に一本化され(その後に新設された監査等委員である取締役を除
く)、全ての取締役は原則として会社を代表し(各自代表制)、取締役のうち
で「株式会社を代表する取締役」が代表取締役だとされました(47条)。

 したがって、現在では取締役会設置会社の取締役も潜在的には代表権限を持
った取締役として選任されたことになりますが、まだ違和感を覚える方も多い
ことでしょう。その理由は、代表取締役の選定機関にあります。再度、場合分
けして説明しますと、次のとおりです。

----------------------------------------------------------------------
(1)代表取締役直接選定方式(旧・代表権制限型、旧・地位一体型)
 非取締役会設置会社において定款又は株主総会でAを【その都度・個別に】
「代表取締役である取締役」として選定したり、既存の取締役Bに対して同様
に(以後は制限しないと)決議した場合です。ここでは、取締役と代表取締役
の選任機関が同一とされ、Bを代表取締役に選定することは潜在化していた代
表権を回復(顕在化)しただけだから、代表取締役としての就任承諾は不要だ
と解されています。この(1)の解釈は、会社法の施行前後で変わりません。

(2)代表取締役間接選定方式(旧・代表権不存在型、旧・地位分離型)
 代表権を法律又は定款で【制度的に・恒常的に】制限している取締役会設置
会社と定款の定めに基づく取締役の互選で代表取締役を定めた場合です。
 ここでは取締役は定款又は株主総会で選任されても、代表取締役は取締役会
や取締役の互選で選定されます。そのため、従来は、最初から代表権の存在し
ない取締役として選任され、取締役会や取締役の互選で新たに代表権を追加す
る委任契約の申込みをすることになるから、代表取締役には就任承諾が必要だ
とされてきました。
 しかし、会社法では取締役は全て代表権付ですから、この場合も、代表権回
復の決議の一種だというべきでしょう。ただ、(1)と相違して、代表権の回
復を決定する機関が定款や株主総会ではないため、新たな委任類似契約が想定
されるため、代表取締役に就任承諾が必要だとされています。会社法立案担当
者の葉玉論文(商事法務1778号4頁以下)も、ほぼ同様の説明です。
----------------------------------------------------------------------

 定款から取締役会や互選規定を廃止すると、全ての取締役が代表取締役にな
りますが、これを従来の見解(現・登記実務)では、あたかも新権限を追加し
たかのごとく「代表権付与」と名付け、新たに委任契約したわけではなく、定
款変更に基づく法律効果だからという理由で就任承諾が不要だと説明します。

 しかし、代表取締役には義務や責任が伴うのに、代表権の追加を強制する解
釈には無理があります。代表権付与という用語を用いても、その実質は、もと
もと存在した代表権が回復したとみれば、就任承諾の不要につき自然に理解す
ることができます。

 また、各自代表の会社が定款変更で取締役会を設置すると、取締役に存在し
ていたはずの代表権が突然に消滅したとみるのもおかしな話です。やはり代表
権に定款で制限が課せられたとみるべきでしょう。

 ややこしい話になりましたが、最終結論は同じですから、実務家は最も分か
りやすい地位一体型と地位分離型に分ける従来の見解で解釈しておけば十分で
す。私も著作ではそうすることが少なくありません。

 にもかかわらず、なぜ、こんなことを取り上げたかといいますと、立花本の
合同会社の執筆をお手伝いしている際に、株式会社同様に各自代表制の支配す
る持分会社の定款に「業務執行社員の互選による代表社員を定める」とあった
場合に、立花・幸先さんとの間で、上記(1)(2)のどちらだという議論に
なったためです。これによって代表社員の就任承諾の要否に差が生じます。

 業務執行社員は定款で定められ、その上さらに「社員の同意」以外の方法で
ある「業務執行者の互選」で代表社員を定めるのだからと、上記(2)と同じ
く間接選定方式だとみれば、代表社員に就任承諾が必要になります。商業登記
法には規定がありませんが、登記の基本通達は、この立場です。

 しかし、定款内容は「業務執行者」の互選ではなく「業務執行【社員】」の
互選です。社員が直接経営する仕組みの持分会社にあっては、支配人ですら社
員が選任することになっていますから(591条2項)、もっと重要な代表社
員についても社員が直接定めることを重視した解釈をすべきです。

 そこで、定款で「出資の価額が金100万円以上の社員の互選により代表社
員を定める」とした場合と同じく、「業務執行社員の互選」を「業務執行社員
という代表社員選定同意権を制限されない社員の互選によって直接に代表者を
定める」という意味に理解し、直接選定方式の1つであり、代表社員の就任承
諾は不要だと考えました。業務執行社員は代表権付が原則であり、代表権を回
復させただけだからです。互選は過半数の同意という意味ですから、間接選定
に限った用語ではありません。

 登記実務とは相違する見解になりましたが、議論参加者全員一致の意見であ
り、就任承諾を要する旨の規定がない商業登記法には適合しています。

 立花本には、こういう新しい視点がたっぷり書いてあります。もう原稿を会
社法本の出版では定評のある中央経済社に渡したようですから、私も出版が楽
しみです。来年の出版になるそうです。


2018.10.26(金)【コーヒーの木】(仙台・立花宏)

 先日,いつもの行っているコーヒーショップで,コーヒー豆を購入したとこ
ろ,コーヒーの木の苗をいただきました。なんでも,今年は開店15周年にな
るそうで,その記念品だそうです。

 そのお店は私の事務所の近所にあります。決して,仙台の街の中心部ではな
く,むしろ住宅地に近いところにあるため,地域密着型のお店といえるのかも
しれません。コーヒー豆を購入すると,その場で焙煎し,好みの粗さに挽いて
くれます。手間を惜しまない丁寧な仕事から,地域の皆さんに受け入れられ,
今ではその地域になくてはならないお店になったといえるでしょう。

 開店する際には,創業者にはきっと希望や確固たる信念,そして思いがあっ
たことでしょう。それらが見事な花を咲かせ,現在は見事に結実した状態なの
だろうと思います。

 いただいたコーヒーの木は,小さな植木鉢に植えられていましたが,ときど
き水をやって,育てていたところ,植木鉢の下の穴から根がはみ出してきてし
まいました。あわてて,ワンサイズ大きい植木鉢を購入してきて,植え替えを
しました。

 ただ,その後,インターネットで育て方を調べてみると,植え替えは夏から
秋にかけてに行う方がよく,今の時期はタイミングとしてはぎりぎりだったよ
うです。

 育てる方が未熟のため,無事,育ってくれるのかどうか不安ですが,順調に
育てば,3年くらいで実がなるのだそうです。はじめて知りましたが,コーヒ
ーの実は食べられるのだそうで,甘い味がするとのことでした。それを味わう
ことができるよう,がんばってみようと思います。
 
 ところで,先日,金子先生が本徒然日誌のコーナーで,現在,執筆中の私の
本のことを紹介してくださいました。金子先生にご指導を賜り,広島の幸先裕
明先生からも,たくさんのご助力をいただきながら,少しずつ前に進んでおり
ます。テーマは合同会社です。

 前述のコーヒーの木よりは早く,花を咲かせることができそうです。内容も,
金子先生,幸先先生のご指導のおかげで,充実したものとなりそうです。

 冒頭でご紹介したコーヒーショップのように,長く,皆さまにご利用いただ
ける本になってくれることを夢見ながら,無事に実を結ぶよう,最後の仕上げ
にとりかかっております。



2018.10.25(木)【明治維新150年と今後の150年】(金子登志雄)

 酒井さん、一緒にお店を引き継ぎたいものですね。私、皿洗いならできます
けど。

 後継者問題はほんとに難しいです。一人事務所の当事務所も後継者を見つけ
て共同事務所にし、事業の永続性をはかりたいのですが、まだ後継者もパート
ナーも見つかっていません。

 さて、先日の23日は明治150年でした。おめでたいことかどうかは、東
日本、とくに東北の民には疑問でしょう。さんざん西の官軍に先祖が悲惨な目
にあわされましたから………。戦中の満州開拓団も同じでしょう。

 徳川時代は封建社会とはいえ、秩序が保たれ、それなりに平和な社会でした。
海外侵略はしていません。明治以降になり、西欧列強の真似をしたのか海外へ
の侵略を重ねましたが、真似した時期が遅すぎて、諸外国からいまだに非難の
的です。

 明治維新のよかった点は士農工商の身分制がなくなったことや急速な近代化
を果たせたことですが、身分制については、下級武士が明治維新の原動力にな
ったことが大きいと思っています。武士から刀を取り上げた廃刀令は、武士に
プライドを捨てよということですから、大変な抵抗がありました。米国ではい
まだに銃規制ができていませんから、日本の中央集権化の一環でした。

 急速な近代化・西欧化は偉大な功績であることは間違いないところですが、
ここ数年の「日本すごい」というテレビ番組には、少々辟易しています。蔑視
していた(?)はずの中国や韓国が急速に近代化し、成長期を過ぎ高齢化・成
熟社会になった日本人の焦りの裏返しかもしれませんが、その「日本すごい」
の同調圧力が、いつしか「日本=為政者」に変換され、NHKはじめマスコミ
も任務である権力批判をしなくなり、インターネットでも為政者批判に対して
非国民呼ばわりの炎上傾向が増えてきました。オリンピックなど無駄だ、やめ
てしまえも、言い出しにくい雰囲気です。

 幸い、われわれ独立自営業者は同調圧力とは、やや遠い存在ですが、学校や
会社という集団生活を送っている方は、仲間外れを避けて、自分の意見を表に
出さない生き方がますます増えているようです。これでは世界に対抗すること
のできる人材は育ちません。

 明治150年で、経済や生活インフラの近代化は十分に果たしても、少数意
見の尊重、法治国家、司法の独立など社会生活の近代化は、まだまだ近代化途
上であることも併せて認識しておきたいものです。

 やや話がずれますが、皆様のところにアマゾン等から頻繁にメールが入りま
せんか。私のところには、会社法本の案内メールが頻繁に入ります。こうして
私の興味の対象も住所も年齢もみなネット業者に知られてしまい、プライバシ
ーなどない社会が進行しています。これが権力や大企業に利用されます。今後
150年の基本的人権の尊重は、ネットとの対応が重要になります。


2018.10.24(水)【後継者問題】
(藤沢・酒井恒雄)

 今年も残すところ約2か月です。私の事務所では、組織再編の案件が多い年
は解散に関する案件が少なく、解散に関する案件が多い年は組織再編の案件が
少ないという、仕事の傾向があります。何故か、一年を通じて、両方の案件を
平均的に受託するということがありません。

 今年は、春頃まで会社分割や合併が続いたので、組織再編の仕事が多い年に
なると予想しました。しかし予想は外れて、解散の登記の受託件数が多い年と
なりました。組織再編に関しては、年内処理を目指すには日程的に足りないく
らいの時期になりましたので、いきなり受託件数が増えることはないでしょう。

 一方、解散については、まだ問い合わせがチラホラ来ていますので、いくつ
かは受託することになるかもしれません。いずれにせよ、解散登記が多い年と
いう結果には変わりがなさそうです。

 解散についてですが、内容としては、後継者がいない飲食店の解散が目立ち
ました。これが全国的な傾向なのか、たまたま受託した案件に偏りがあったの
かは分かりません。

 数十年に渡って営業していたお店で、店主が高齢あるいは病気になり、体力
的に続けることが困難になったので廃業するというケースが複数ありました。
決して、売上が落ちての解散ということではなく、お客さんに惜しまれながら
閉店するお店が多かったようです。現に、清算結了の際には、残余財産はそれ
なりにある場合が多かったです。

 身近なところでも、お店の売却の話しがありました。私もたまに行く魚料理
の美味しいお店なのですが、年々、外国人観光客の来店者数が増えて、店主が
体力的に不安を抱えているとのことでした。近隣のホテルが宿泊者に紹介して
くれるそうで、ありがたいことだが、正直キツイとのことでした。

 なんとも勿体無い話しです。気持ち的には、私が手伝います!と言いたいと
ころでしたが、残念ながら料理の腕前もなく、魚を捌く技術も持ち合わせてい
ません。

 全国的な有名店等であれば、修行を希望する料理人も後を絶たないと思いま
すが、地域の隠れた名店のようなところは、後継者探しは相当難しいようです。


2018.10.23(火)【日本私法学会】(東京・鈴木龍介)

 10月13日(土)と14日(日)の両日、「日本私法学会 第82回大会」
が開催され、私も参加しました。

 日本私法学会(=私法学会)は、法律系の学会では最大規模で、民商法系の
研究者が中心の任意団体です(一応、私も会員です。)。
           http://japl.jp/

 年1回の大会は、私法学会の一大(唯一?)イベントで、会場は東西の主要
大学が持ち回るという形式で開催されています。ちなみに、今年の大会の会場
は東北大学でした。初めて伺いましたが、交通も至便で仙台駅から地下鉄に乗
って10分くらい、駅と大学が直結されています。キャンパスも広々として綺
麗でした。

 今回の大会では、メインのイベントであるシンポジウムや報告ではありませ
んでしたが、少人数制のワークショップで商業登記が取り上げられました。こ
れは、結構、画期的なことかと思います。

 具体的には、「商業登記の現代的意義-会社手続の適正性担保機能の視点か
ら」というテーマで、舩津浩司同志社大学教授の報告をベースに、意見交換等
のディスカッションをするというものです。

 以下、本ワークショップの案内文になりますが、商業登記制度の今後を考え
るという観点で有意義でした。

「会社法の実務を行う上で無視できないものとして、商業登記手続があります。
会社法のいかなる学説も、商業登記が関係する限り登記所によって受容されな
ければ実務的には受け入れられないことから、登記所による会社法の解釈は、
会社法実務の内容そのものを規定するものであると言っても過言ではありませ
ん。また、登記所(登記官)による登記の受理・却下決定を通じて、事前に形
式上適法な手続のみが商業登記に反映されることから、機能的には、登記官は
商業登記の受理・却下決定を通じて会社法の適正な運用を確保するゲートキー
パーとしての役割を担っていると考えることができます。

 他方で、会社法の適正な運用を確保する制度としては、商業登記の受理・却
下判断という事前的規制のみならず、事後的な方策、具体的には裁判所による
会社の行為の効力の否定や利害関係者の個別的な利益保護の主張(株式買取請
求や損害賠償請求)等を通じて一定程度確保しうるとも考えられます。それに
もかかわらず、近時会社法の制定等によって充実したとされる事後的救済手段
と、事前規制としてなお残る商業登記の規律との関係は、これまであまり整理
されていないように思われます。また、最近では、特に会社設立時における定
款認証を通じた公証人のゲートキーパーの役割が強調されるなど、事前規制へ
の揺り戻しの動きも見られます。

 そこで、本ワークショップでは、とりわけ設立、新株発行および合併等の会
社の組織行為に関する手続の適正性の確保に関して商業登記手続が果たす役割
について、手続の適正性を確保する他の代替的メカニズムを踏まえつつ、機能
的な分析を試みるとともに、将来に向けた制度改革の展望を提示する。その際
には、近時急速に進展している会社手続・商業登記(手続)の電子化の影響に
も配慮することで、商業登記の存在意義を再定義しその運用の改善点を提示す
るほか、それを踏まえた会社法の解釈論あるいは立法論の新たな可能性にも言
及したいと考えている。」


2018.10.22(月)【承認と承諾その3】(金子登志雄)

 ネタ切れのため、私もこの話題に参加させていただきます。

 法律解釈では、条文の字句にこだわることが非常に重要であり、古山さんの姿
勢に敬意を表させていただきます。本欄でも、日本語では、定款「を」変更「す
る」というのに、会社法では、定款「の」変更「をする」というが、これは「定
款の変更」で1語と捉えたためだろうなどと書いてきました。

 さて、契約は申込みと承諾という相対立する(申込み→←承諾)意思表示の合
致(合意)によって成立します。つまり、承諾するのは契約当事者です。
      
 契約は法律行為の典型例であり、法律行為の構成要素である申込みと承諾のこ
とを「(法律)要件事実」ともいうことは裁判事務をする司法書士はよくお分か
りのことと存じます。要件事実の全部が揃って法律効果が発生します。

 申込みが先で承諾があとが通常ですが、事前承諾があって、申込みがあとにな
ってもかまいません。申込みがなければ契約が成立しないだけで、申込みのある
ことは「条件」ではありません。条件は成立した法律行為の効力を左右するため
に付せられるものです。これが非取締役会設置会社の株主総会で事前に募集株式
の割当てを決議しても、申込みのあることを条件とすると議事録に記載しなくて
も補正事由とすべきではない理由です。

 これに対して、「承認」は契約当事者以外あるいは会社の別の機関がすること
です。株式譲渡契約の会社の承認だけでなく、代表取締役がした募集株式の総数
引受契約や合併契約の承認を代表取締役以外の会社の機関がなす場合も含みます。

 持分会社の持分譲渡契約は譲渡当事者間でしますが、持分会社の内部規律は民
法の組合契約関係であり、持分会社には社員総会など機関といわれるものがあり
ません。

 この結果、株式会社では、「株主対会社」という対立構造が成り立ちますが、
持分会社では「社員=会社」となり、持分の譲渡も会社の承認ではなく、会社法
585条1項に「社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部又
は一部を他人に譲渡することができない」とあるとおり、持分譲渡によって組合
契約の全部又は一部の解消の申込みを他の社員全員になし、他の社員が承諾する
という関係になります。

 ただいま本欄に登場する立花さんが合同会社の本を精力的に執筆中であり、私
もお手伝いしていますが、合同会社を含め持分会社は会社ではなく営利組合その
ものだとつくづく感じています。代表社員も会社との委任契約に基づく外部の役
員ではなく、社員の1人に過ぎません。

 古山さんの問題意識に基づく上記のことも、ちょこっと書き添えるよう立花さ
んに話しておきます。年末あるいは来年の出版になると思いますが、こういう理
論面まで深堀りしたよい本になりそうですよ。ご期待ください。


2018.10.19(金)【承認と承諾その2】(東京・古山陽介)

 昨日の記事について、金子先生から、

 「①契約=承認 ②請求=承認 ③申込み=承諾」

 の側面が強いと感じましたというお話をいただき、改めて、他の条文を確認
してみました。

 前回は、国語的な考え方でまとめてみましたが、条文を整理して考えてみる
と、より明確に各手続のイメージができようになります。

①契約(取引)=承認となっているもの
 ・募集株式(新株予約権)総数引受契約の承認
  (会社法第205条・244条)
 ・利益相反取引の承認(会社法第356条・595条)
 ・事業譲渡契約の承認(会社法第467条)
 ・組織再編に係る契約(計画)の承認
  (会社法第784条・795条・804条)

②請求=承認となっているもの
 ・特別支配株主の売渡請求に対する対象会社の承認
  (会社法第179条の3)

③申込み=承諾となっているもの
 ・自己株式の取得に際しての譲渡の申込みに対する承諾
  (会社法第159条)

 ※なお、例えば会社法第119条第7項に規定がある株式買取請求の「撤回」
に対しても「承諾」が用いられていますが、これは、「撤回(の申込み)」と
いう意味合いで考えればよろしいかと思います。

 また、③については、改正民法第522条第1項に決定的な条文があります。
(契約の成立と方式)
 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」
という。)に対して相手方が承諾したときに成立する。

 こういった切り口で会社法を考えてみると理解度も深まるのではないでしょ
うか。


2018.10.18(木)【承認と承諾】(東京・古山陽介)

 会社法第107条第1号
 譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要すること。

 会社法第585条第1項
 社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部又は一部を他人
に譲渡することができない。

 このように、株式会社の株式の譲渡については「承認」が必要で、持分会社
の持分の譲渡については「承諾」が必要となっています。

 さて、この違いは何か、辞書では次のように解説されています。

 「承認」…正当性を認めて肯定の意志を表明すること。
 「承諾」…相手から頼まれたり説得されたりして、承知したと引き受けるこ
     と。

 また、承認は、承諾よりも、もっと客観性が重視されるとされています。

 イメージするとこんな感じです。

 ~株式の譲渡の場合(取締役会での承認)~
 議長:株主Aさん(取締役ではない)から当社の株式の譲渡承認請求が出て
いるけど、賛成の人は手を挙げてください。
 出席者:異議なし(全員挙手したとします。)
 議長:それでは、全員一致をもって、当社取締役会として承認することにし
ましょう。

 ~持分の譲渡の場合(社員が3名、A、B、Cがいるとします。)~
 Aさん:自分の持分をDさんという人に譲渡したいんだけどいいでしょうか。
 BさんとCさん:いいですよ。

 株式会社の場合、譲渡承認に係る当事者は当該議案に参加できませんので、
譲渡の可否は第三者の判断に委ねることになり、そういった意味で、承諾より
は、客観性が重視されているということになります。

 たまたま同じタイミングで、株式の譲渡関係書類と合同会社の持分譲渡関係
書類を作成していたので、簡単に整理してみました。


2018.10.17(水)【再確認】(藤沢・酒井恒雄)

 先日、会務があって司法書士会館に行った際に、徒然日誌を読んでくれてい
た司法書士の仲間の何人かが、私に話かけて来てくれました。

 ここ数年は株式会社への移行の登記は受託していない(私もですが)とのこ
とで、特例有限会社から株式会社への移行に関連する知識が、相当怪しくなっ
ているという話になりました。

 任期を揃える件のほか、移行後の株式会社が取締役会設置会社である場合の
代表取締役の選定方法や、株主総会議事録に押印すべき印鑑の種類など、うっ
かりミスをしてしまいそうなポイントも多いと、変に盛り上がってしまいまし
た。

 会社法が施行されて約12年が経ちましたので、ここまで来ると、特例有限
会社を株式会社へ移行する必要性を感じることもなくなり、株式会社に移行す
る動機も薄れたとは思います。

 しかし、社長交代のタイミングなどで、ある日突然、移行登記の依頼がある
かもしれません。

 ふと、独自のチェックリストを作成していたことを思い出しだので、後日、
ファイルを探してみました。見つけたチェックリストは、依頼人用と自分用が
あり、自分用には欄外にコメントが書いてありました。

 目的欄の欄外には、移行の際に追加する事業目的はないか?と書いてありま
した。移行のタイミングなら、目的変更についての登録免許税がかかりません
ので、将来的に行う可能性がある目的を追加するのに、絶好のタイミングとも
なります。これについて、依頼人に進言すべきかどうかは賛否両論があるかと
思いますが、改めて、附随する色々なことを思い出す良い機会となりました。


2018.10,16(火)【相続法改正 その10~他法への影響】
                          (東京・鈴木龍介)

 相続法改正シリーズの最終回(たぶん)の10回目は、相続法改正による他
の法律への影響をについて取り上げます。

 民法等の基本的な法律が改正となった場合、実質的もしくは形式的に他の法
律を見直す必要がでてきます。その手当については、いわゆる整備法でなされ
ることが多いのですが、本改正では、他の法律の整備については前回とりあげ
ました経過措置とともに「附則」で定められています。

 具体的には、以下の法律(家事事件手続法は除く)の改正がなされます(附
則13条~30条)。
 ①刑法
 ②抵当証券法
 ③農業協同組合法
 ④農地中間管理事業の推進に関する法律
 ⑤公共用地の取得に関する特別措置法
 ⑥都市再開発法
 ⑦著作権法
 ⑧半導体集積回路の回路配置に関する法律
 ⑨密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律
 ⑩マンションの建替え等の円滑化に関する法律
 ⑪独立行政法人都市再生機構法
 ⑫不動産登記法
 ⑬信託法
 ⑭中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律

 ちなみに⑫不動産登記法は何が改正されるかというと、今回の改正で創設さ
れる配偶者居住権の登記事項に関する条項が1箇条追加となります(改正不動
産登記法81条の2)。今後、不動産登記施行令・不動産登記規則の改正の発
令ならびに通達の発出が見込まれますので、実務家としてはその動向を注視す
る必要があります。

 会社法に改正はありませんが、株式の相続等の実務への影響は小さくないも
のと思われます。


2018.10.15(月)【設立日】(仙台・立花宏)

 「来年の5月1日に会社の設立をしたいと思っているのだけれど,大丈夫か
な」

 現在,進行している仕事の打合せが一段落すると,別件ということで,いつ
も好奇心旺盛なある経営者の方から,こんなご相談をいただきました。

 ずいぶん先の話だと思い,理由をお伺いすると,どうやら,来年の5月1日
から新しい元号に変わるため,それにあわせて会社を設立したいというご意向
のようです。

 「そういえば,現在の元号『平成』は来年の4月30日まででしたね」と応
じつつ,カバンから手帳を取り出し,カレンダーを確認しました。5月1日は
平日のようです。大丈夫だと思いますよ,と口から出かかりました。

 「来年の5月1日は,休日になったりしないでしょうか」

 会社は,設立の登記をすることにより成立することになっています(会社法
第49条,579条)。休日は法務局が閉庁のため,登記を申請することがで
きません。そのため,来年の5月1日が休日になったりすると,その日には会
社を設立することができないということになります。私はそのことを経営者の
方に説明しました。

 「そういえば,休日になるような話を聞いたような気がするな。せっかく新
しい元号になるのに合わせて会社を設立しようと思ったのだけれど・・・」

 経営者の方はスマートフォンを取り出し,休日になるのかどうかを調べ始め
ましたが,それが確定したという情報は見つけることができなかったようです。
 
 「まだ,これから決まるのかもしれない。でも,その方向で動いているよう
だから,難しそうだね。せっかくだから,その日に合わせて会社を設立しよう
と思ったのだけれど。ちなみに,5月1日が休日になると,その前後の日も休
みになり,10連休になるようなことも書いてある」

 まだ,来年のカレンダーについてはそれほど意識していませんでしたが,来
年のゴールデンウィークについては要注意かもしれません。設立等,登記が効
力発生要件になっている業務だけでなく,債権者保護手続が関係する業務があ
る場合には,その期間の計算や満了日について気を付ける必要がありそうです。

 正式に決まるのがいつになるのかはわかりませんが,来年の5月1日は休日
になると想定しつつ,今後の情報に注意しようと思います。



2018.10.12(金)【選定と互選】(金子登志雄)

 本題の前に、当研究会会友の福岡の丸田幸一先生が、下記(『この本を読んで
あなたの人生を逞しく生きてほしい』)を出版いたしましたので、お知らせいた
します。
         https://is.gd/31lUZ8
 
 長い題名ですが、表紙をみると不自然ではないですね。丸田先生がこれまで書
いてきたコラムやブログを集めたものですが、通勤電車の中で気楽に読める書籍
の1つとしてご紹介いたします。

 さて、先週10月5日(金)の投稿の続き(補足)です。

Q:「選定は、会社法上の一定の地位を有する者について、さらに一定の地位を
付与すること」とありましたが、非取締役会設置会社で代表取締役を選定するこ
とは対象者以外の取締役から代表権を剥奪することになるのに、さらに地位を付
与するとは表現上おかしくありませんか。

 ごもっともな意見です。私もこの場合も選定と表現することに当初は強い違和
感がありました。しかし、今は選定とは選別の意味でしかなく、もともと代表権
を有する取締役を株主総会の決議で代表権を残すか剥奪するかと選別するという
意味に過ぎないので、代表権を残すことも地位の付与(残存)と表現してもいい
じゃないかと思っています。「さらに」は未だに違和感がありますが、「改めて
見直す」といった程度に解釈しておきましょう。

Q:選定かどうかの基準は「(一定の地位の)〇〇の中から」と規定されている
ことで、互選は選定の一種だとありましたが、会社法340条4項の「監査役が
二人以上ある場合にあっては、監査役の互選によって定めた監査役」には、「監
査役の中から」と規定されていませんが………。

 そうでした。明らかに「選任者と被選任者が一致」する場合は「〇〇の中から」
を省略することもあるようです。

 そこで、会社法349条3項の「定款、定款の定めに基づく取締役の互選又は
株主総会の決議によって、取締役の中から代表取締役を定めることができる」も
定款の定めに基づく取締役の互選に関しては「取締役の中から」は無意味な余事
記載だが、「定款又は株主総会の決議によって」の部分では意味ある記載になる
ことに気づきました。

 なお「取締役の中から」とは複数の取締役の存在を前提としていますが、決し
て複数の中から一部の適任者を選び出すという意味とは限らず、代表取締役は取
締役でなければならない(取締役以外から選定してはならない)というのが本意
ですから、取締役全員を代表取締役に選定することも可能です。


2018.10.11(木)【非司法書士による登記】(金子登志雄)

 酒井さん、ご報告ありがとうございます。お粗末な結果でしたが、司法書士
が関与していたら辞任・就任にしたことは間違いないでしょう。

 私自身は、非司法書士がしようと、その能力があればかまわないと思ってい
ますが、その能力があるとは到底思えません。登記法は相当特殊ですし、先例
が多く、法律のプロである弁護士でも無理です。

 上場会社や上場予備軍の会社は、信託銀行や証券会社あるいは経営コンサル
タント会社に高額な報酬を支払って、定款変更や合併等について相談していま
すが、彼らは株式や株主総会の運営についてはプロであっても、手続のゴール
である登記のことは素人です。

 なぜ、我々に相談せずに、彼らに相談するかというと、彼らのほうが我々よ
りも権威があると考えられているからです。言い換えれば、総務部の保身です。
我々個人事業主に相談して失敗すると総部部長の責任ですが、権威ある機関に
相談して失敗すると、「あそこに依頼して間違ったのでは仕方ない」となって
総務部長の責任にならないからです。報酬が高額なのも仕事の対価ではなく、
保険料や責任引受けの保証料だからです。

 会社の総務部あるいは法務部が自ら登記している上場会社もありますが、や
はりミスが多いといえます。特に、派生登記を漏らしがちです。株式分割した
のに、新株予約権の変更登記申請を漏らしてしまうとか。

 しかし、最近は司法書士だからといって、商業登記に詳しいとはいえなくな
り、徐々に、司法書士の一部が専門的に扱う仕事に近づいてきました。

 では、司法書士が関与していてもミスが多いのかと思われるでしょうが、そ
れはありません。おかしな言い方ですが、普通の司法書士は、登記の怖さを知
っていますから、複雑な商業登記を敬遠しますし、受託する場合でも、詳しい
司法書士に応援を頼むためです。

 非司法書士は怖さを知りません。知っていても司法書士に質問するわけには
いきません。報酬が安いからといって、そこに依頼することは危険です。その
後始末を何度も経験済みです。


2018.10.10(水)【ご報告】(藤沢・酒井恒雄)

 前回、前々回と、いろいろお騒がせをしてしまった件ですが、真相を教えて
もらうことができました。

 まず、特例有限会社から株式会社への移行の登記手続を行ったのは、司法書
士ではなかったそうです。本人申請(という形式をとって他士業が申請手続に
関わった模様)で登記されたそうです。

 これを聞いた時点で、辞任・就任の手続は踏んでいないと、ほぼ確信しまし
た。

 その後、法務局で確認をしてもらった結果、会社成立の年月日を就任年月日
に記載する登記が遺漏していることが分かったそうです。

 役員の任期は満了していたことになり、選任懈怠となっていたことになりま
す。法務局から回答があった際に、過料対象になるか聞いてみたところ、対象
になると言われたとのこと。

 状況と経緯を教えてくれたAさんは、「法務局のミスなのに、過料がくるな
んて変な話ですよね?」と、言っていましたが、そもそも司法書士に登記の依
頼をしていれば、きちんと移行日から任期が始まる手続をとっていたでしょう
し、仮に、そうしていなかったとしても、完了後の履歴事項を見て登記の遺漏
があることに気付いたはずです。

 どちらかと言えば、本人(と手続に関わった者)に責任があるのでは・・・
という含みを持たせて話しをしつつ、私も早合点で回答してしまったことをお
詫びしておきました。


2018.10.09(火)【相続法改正 その9~経過措置~】(東京・鈴木龍介)

 相続法改正シリーズの9回目は、実務的に重要な経過措置について取り上げ
ます。

 相続法改正に関する経過措置-いつから改正法が適用され、いつまで現行法
が適用されるか-については、改正法の附則に規定されています。

 まず、そもそもいつから改正法が施行されるかということですが、原則的に
は公布の日から1年以内(~平成31(2019)年7月12日)に施行とな
ります。

 ただし、自筆証書遺言の方式緩和の部分については平成31(2019)年
1月13日に施行され、配偶者居住権の部分と「法務局における遺言書の保管
等に関する法律」については公布の日から2年以内(~平成32(2020)
年7月12日)に施行されるという三段階(もしくは四段階)のスケジュール
がとられています(附則1条)。

 次に原則的な経過措置の取扱いですが、施行日前に開始した相続については、
現行法が適用されることになります(附則2条)。

 そして、上記の例外として、以下のとおりの特則が設けられています。

特則①:共同相続における権利の承継の対抗要件
  相続開始が施行日前であっても、改正法899条の2の規定による債務者
 への通知が施行日後になされた場合には改正法が適用されます(附則3条)。

特則②:夫婦間における居住用不動産の遺贈又は贈与
  相続開始が施行日後であっても、改正法903条4項の規定による遺贈や
 贈与が施行日前になされた場合には改正法は適用されません(附則4条)。

特則③:遺産分割前の預貯金債権の行使
  相続開始が施行日前であっても、改正法909条の2の規定による遺産分
 割前の預貯金債権への行使が施行日後になされた場合には改正法が適用され
 ます(附則5条)。

特則④:自筆証書遺言の方式
  相続開始が施行日(平成31年1月31日)後であっても、改正法968
 条2項・3項の規定による自筆証書遺言が施行日前に作成された場合には改
 正法は適用されません(附則6条)。

特則⑤:遺贈義務者の引渡義務等
  改正法998条の規定による遺贈義務者の引渡義務は施行日から改正法が
 適用されますが、施行日前になされた当該義務については改正法は適用され
 ません(附則1条3号・7条1項)。なお、改正法により削除される現行法
 1000条の規定による遺贈義務者への第三者権利消滅の請求が施行日前に
 なされた場合には現行法が適用されます(附則7条2項)。

特則⑥:遺言執行者の権利義務等
  相続開始が施行日前であっても、改正法1007条2項に規定される遺言
 執行者の任期開始の通知と改正法1012条に規定される遺言執行者の権利
 義務については、施行日後に遺言執行者となる者には改正法が適用されます
 (附則8条1項)。

  相続開始が施行日後であっても、改正法1014条2項~4項に規定され
 る特定財産に関する遺言の執行については、当該遺言が施行日前になされた
 ものであれば改正法が適用されません(附則8条2項)。

  相続開始が施行日後であっても、改正法1016条に規定される遺言執行
 者の復任権については、当該遺言が施行日前になされたものであれば改正法
 が適用されません(附則8条3項)。

特則⑦:撤回された遺言の効力
  相続開始が施行日後であっても、改正法1025条ただし書の錯誤による
 撤回が施行日前に行われた場合には、改正法が適用されません(附則9条)。
 
特則⑧:配偶者居住権
  相続開始が施行日後であっても、改正法1028条~1036条の規定に
 よる遺贈による配偶者居住権については、施行日前に遺贈がなされた場合に
 は改正法は適用されません(附則10条)。


2018.10.05(金)【選任、選定、互選】(金子登志雄)

 きんざい登記情報直近号に「『社員』による代表社員の互選の可否」を共著
で投稿しましたが、みていただけたでしょうか。その関係で、投稿後、徒然な
るままに、「選任」、「選定」、「互選」の違いにつき、会社法条文で調べて
みました。

 相澤哲ほか編著『論点解説 新・会社法』38頁(抜粋)によると、「選任
は、会社法上の一定の地位を有しない者にこれを付与することで、選定は、会
社法上の一定の地位を有する者について、さらに一定の地位を付与すること」
だそうです。

 「選任」は、取締役や会計監査人など役員等に用いるだけでなく、支配人そ
の他の重要な使用人についても使います。選任機関は会社の機関に限らず、清
算人のように裁判所が選任することもあります。

 「選定」は、選ばれた者がさらに選ぶ2段階のステップを踏むことが多いの
ですが、必ずしもそうとは限らず、定款や株主総会で直接代表取締役を選ぶ場
合も選定と使いますので、選定かどうかの基準は「(一定の地位の)〇〇の中
から」と規定されていることです。

 つまり、「〇〇の中から」と規定されていても、決して、まず〇〇を選び、
続いて、その〇〇の中から選ぶと2段階のステップを踏むものだけに限らず、
「代表取締役である取締役」や「代表社員である業務執行社員」を1段階で選
ぶ場合も含みます。これは就任承諾書の要否に影響します(前者は必要、後者
は不要が原則)。

 選定は、代表取締役、常勤監査役、指名委員会の委員などが典型例ですが、
会計参与や会計監査人に選任された監査法人が【その社員の中から】担当会計
士(職務を行うべき者)を選ぶことも選定です。持分会社の法人社員が職務執
行者を選ぶことは、一定の地位を有しない者にこれを付与することですから、
これは選任です(598条)。

 選定は人間以外の場合にも使いますから、〇〇を2つ(以上)に選別するこ
とだと理解しておけばよいでしょう。

 「互選」は、この選定の一種であり、選ぶ権限のある者が会議によらずに過
半数の同意によって選ぶ場合に使うようです。監査役会設置会社の常勤監査役
は会議によるものであるため選定ですが、そうでない場合は互選と使います。
会社法340条4項後半に「監査役が二人以上ある場合にあっては、監査役の
【互選】によって定めた監査役」「監査役会が【選定】した監査役」とあると
おりです。

 この互選につき、登記実務は「互選とは選任者と被選任者が一致すること」
という解釈のようですが、そうであれば、会社法349条3項の「定款の定め
に基づく取締役の互選によって、取締役の中から代表取締役を定めることがで
きる」の「取締役の中から」は無意味な余事記載になりますので、私は必ずし
も一致する必要はないと考えています。

 したがって、「持分会社は、定款又は定款の定めに基づく【社員】の互選に
よって、【業務を執行する社員の中から】持分会社を代表する社員を定めるこ
とができる」(599条3項)の互選社員は業務執行社員に限られないし、会
社法47条1項の「【設立時取締役】は、設立しようとする株式会社が監査等
委員会設置会社である場合にあっては、【設立時監査等委員でない設立時取締
役の中から】設立時代表取締役を選定しなければならない」という内容も互選
だと考えています。


2018.10.04(木)【お詫びと訂正2】(金子登志雄)

 酒井さん、私こそチェック漏れをお詫びしなければなりませんが、登記官の
職権登記漏れまでは想像力が及びませんでした。

 基本通達(平成18・3・31民商第782号)の内容は次です。
-----------------------------------------------------------------------
 なお,移行による設立の登記においては,登記官は,職権で,すべての取締
役及び監査役につきその就任年月日を記録するものとする。特例有限会社の取
締役又は監査役が商号の変更の時に退任しない場合には,その就任年月日(会
社成立時から在任する取締役又は監査役にあっては,会社成立の年月日)を移
記し,取締役又は監査役が商号の変更の時に就任した場合には,商号の変更の
年月日を記録しなければならない。
-----------------------------------------------------------------------

 私を含め通常の司法書士は、平成18年設立の有限会社が平成25年に株式
会社に移行したのなら、ほぼ間違いなく、辞任・就任にして、平成35年まで
任期が到来しないようするでしょうから、私も酒井さんと同一状況になったら、
早合点しそうです。

 また、登記記録上は「平成18年に設立した株式会社で、設立以来一度も役
員の変更登記をしておらず」とみえても、移行までに役員全員が交代していて
(例えば平成24年)、任期が満了していない可能性もあります。

 なお、登記記録例(平18・4・26民商第1110衣命通知)239頁を
ご覧ください。取締役が一人の有限会社が株式会社に移行した事例につき、代
表取締役には就任年月日が記載されていませんでした。

 上記基本通達に「すべての取締役及び監査役」としかないことが原因かもし
れませんが、辞任・就任事例の場合は代表取締役にも記載される例が多いこと
を考えると、ちょっと違和感があります。



2018.10.03(水)【お詫びと訂正】(藤沢・酒井恒雄)

 9月26日に掲載した内容に訂正がございます。

 「平成18年に設立した株式会社で、設立以来一度も役員の変更登記をして
おらず、登記記録として平成25年に有限会社から商号変更し、移行したこと
により設立と記録されている場合、非公開会社で定款の役員任期規定は10年
(定時総会終結時)であるなら、まだ役員は任期中である。」と書きましたが、
これは非常に誤解を招く文章でした。もう少し詳しい状況を書きたいと思いま
す。

 私、特例有限会社から株式会社への移行の際に、役員が任期中であるケース
では、そのタイミングで、一旦、辞任をして頂き、再度就任をするという手続
をとり、移行日から任期の起算が出来るように整えておりました。一旦の辞任
・就任を経た場合でも、移行の登記は株式会社移行設立の登記になるため通常
の設立と同じく、登記申請書の役員に関する事項には「就任年月日を記載しま
せん」が、登記の基本通達(平成18・3・31民商第782号)で、登記官
の「職権で移行日に就任した旨の登記がなされる」ことになっております。

 ところが、今回のケースは、役員欄には就任年月日の記載が一切ありません
でした。私は、これを移行と同時に辞任・就任をした際に記載すべき就任年月
日の職権登記が漏れているものと捉えてしまいました。仮に、特例有限会社の
設立時の役員が辞任・就任の手続を踏まず、任期を通算した形で株式会社に移
行する場合でも、基本通達によれば、「職権で会社の設立年月日を就任年月日
に記載する」ことになっております。

 私の思い込みもあり、いまだ任期中と書いてしまいましたが、後者の登記漏
れがあり、任期が満了している可能性もありますので、改めてお詫びと訂正を
させて頂きたいと思います。

 本件は、受託案件ではありませんでしたが、可能であればどちらの記載漏れ
であったのかの真相を教えてもらおうかと思っております。


2018.10.02(火)【相続法改正 その8~相続の効力等に関する見直し~】
                           (東京・鈴木龍介)

 相続法改正シリーズの8回目は、相続の効力等に関する見直しを取り上げま
す。この部分は、相続に関連する登記の効力を再整理し、整合性を図る改正と
位置付けることができるかと思います。

1.共同相続における権利の承継の対抗要件
  相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、
 法定相続分を超える部分については、登記・登録その他の対抗要件を備えな
 ければ、第三者に対抗することができないということになりました(改正法
 899条の2第1項)。

  承継する権利が債権である場合、法定相続分を超えて当該債権を承継した
 共同相続人が当該債権に関する遺言または遺産分割の内容を明らかにして債
 務者にその承継の通知をしたときには、共同相続人の全員が債務者に通知を
 したものとみなし、債務者対抗要件を備えたことになります(改正法899
 条の2第2項)。なお、第三者対抗要件を備えるためには当該通知に確定日
 付が必要になります。

2.相続分の指定がある場合の債権者の権利行使
  被相続人が相続開始の時に有していた債務の債権者は、遺言により相続分
 の指定がされた場合であっても、各共同相続人に対し、法定相続分に応じて
 その権利を行使することができます。ただし、その債権者が共同相続人の1
 人に対し、当該指定相続分に応じた債務の承継を承認したときには、この限
 りではありません(改正法902条の2)。

3.遺言執行者がある場合の相続人の行為の効果等
  遺言執行者がある場合に、その遺言の執行を妨害する行為は無効となりま
 すが、これを善意の第三者に対抗することはできません(改正法1013条
 1項・2項)。なお、これらの規定は、相続人の債権者(相続債権者を含み
 ます。)が相続財産に対して権利行使をすることを妨げません
 (改正法1013条3項)。


2018.10.01(月)【電子公告のアドレス】(金子登志雄)

 土日は台風24号による沖縄の知事選への影響が心配でしたが、投票率は期
日前投票の効果で前回よりわずかに下がっただけで、結果は無党派層の支持の
多い玉城氏の勝利でした。しかし、必ず投票に行く組織票頼みの自民党支持者
の2割、公明党支持者の3分の1が玉城氏に投票したようですから、台風に影
響されるような沖縄県民ではなかったようです。

 さて、最近は、ホームページのアドレスをhttpからhttpsとs付に改める会社
が増えてまいりました。セキュリティー強化策のようです。

 これに伴い、登記されている電子公告のアドレスを s付に改める会社もあり
何社か登記しましたが、ホームページはホームページ、電子公告は電子公告で
すから、改める義務はありません。代表者の決定で変更することができますの
で、何かのついでに変更し、登記すれば十分でしょう。

 ところで、合併公告等を電子公告しますと、下記で開示されます(検索を白
紙にすると全部が表示されます)。
        http://e-koukoku.moj.go.jp/

 ここを開くと、右のほうに「公告アドレス」というものが出てまいります。
長い間、この公告アドレスは登記記録のアドレスと一致するか、同一性を持っ
た内容と思い込んでいましたが、私の勘違いでした。

 電子公告調査会社の電子公告調査結果通知書を見ますと、登記アドレスと公
告アドレスという欄がありました。要するに、前者を開き、即座に後者を閲覧
することができるようになっていれば(例えば、登記アドレスを開くと、そこ
に「電子公告」と案内がある)、それでよいということのようです。


2018.09.28(金)【種類取締役と種類社員】(金子登志雄)

 昨日は、監査等委員会設置会社になって2年目の当社(アクモス株式会社)
の定時株主総会であり、私は無事に監査等委員である取締役に再選され、本人
確認証明書を不要とする身分になれました。

 株主総会の2号議案と3号議案は、次でした。
  第2号議案 取締役(監査等委員である取締役を除く)4名選任の件
  第3号議案 監査等委員である取締役3名選任の件

 表現上何か違和感を感じませんか。何となく取締役のうち「監査等委員であ
る取締役」が原則で、第2号議案の取締役が例外のような印象になります。

 そこで種類株式のように、第2号議案の取締役を「普通取締役」と呼び、監
査等委員である取締役を「種類取締役」扱いにすればよいのにと思うのですが、
いかがでしょうか。

 会社法591条に「業務を執行する社員を定款で定めた場合」とあります。
ところが、持分会社の社員は「定款に別段の定めがある場合を除き、持分会社
の業務を執行する」のです(会590条)。ということは会社法591条は、
「定款で社員を業務執行社員と非業務執行社員に分類したときは」という意味
です。

 この際、会社法591条の見出しを「種類社員」に変え、「持分会社は、定
款の定めにより、社員を普通社員である業務執行社員と、そうでない非業務執
行社員とに区分することができる」とでも規定してくれたら、もっと分かりや
すいことでしょう。

 このように、どちらが原則で、どちらが例外かにつき分かりにくいのも会社
法条文の特徴の1つです。分かりにくいからこそ私の仕事が成り立つのだ、あ
りがたいことだという気持ちもありますが、もう少し分かりやすい内容にでき
ないものかといつも思ってしまいます。 


2018.09.27(木)【ビジネスネーム】(東京・古山陽介)

 芸能人以外でもビジネスネームを使用して活動している人は意外と多くいま
す。私の知人にも数人いますが、ビジネスネームを使用している役員がいる会
社では、会社法手続において支障が生じることがあります。

 ① 新たに選任された役員の氏名が、議事録等の捺印書類と本人確認証明書
  で一致せず、書類を修正してもらうケース。

 ② 設立で、定款認証後に登記だけを依頼された案件で、設立時役員の氏名
  が、本人確認証明書と一致せず、後日、公証人に誤記証明を出してもらっ
  たり、該当部分を再度認証してもらうケース。

 ③ 過去に登記された氏名がビジネスネームであることが判明して、是正す
  るための更正登記の依頼。

 ④ 旧姓のまま登記がされていて、是正するための更正登記であったり、旧
  姓を併記する登記の依頼。

 ⑤ 合併や減資の手続において、クライアントが自身で債権者保護手続を行
  ったケースで、官報公告や催告書の代表者の名義がビジネスネームで行わ
  れていた事例

 自分が依頼を受けた事例は以上ですが、他にもビジネスネーム絡みの問題に
遭遇することはあるかと思います。

 ビジネスネームが浸透していると、社内で本名を知っている人がほとんどい
ないこともあり、上記のような場面で名前が違っている旨を指摘すると、クラ
イアント企業の担当のほうが驚くなんてこともあります。こういう場面に出く
わすのも商業登記ならではかもしれません。


2018.09.26(水)【過ち?】(藤沢・酒井恒雄)

 隣接士業のAさんから、こんな電話がありました。
「平成18年に設立した株式会社で、設立以来一度も役員の変更登記をしてい
ない会社があるのですが、これは役員変更の登記を怠っているということです
よね?」

 これを聞いて、非公開会社であって役員任期が10年(定時総会終結時)で
あったとしても任期は到来していると考えられましたので、「はい。」と答え
ました。

 とりあえず質問だけの電話でしたが、事件の受託の有無は別として、参考ま
でに登記事項証明書と定款をFAXしてくれないかと伝えました。そして、届
いた資料に目を通したところ、実は役員の任期は切れていないことが分かりま
した。

 たしかに、登記事項を上から順に読めば、「平成18年に設立した株式会社
で、設立以来一度も役員の変更登記をしていない会社」でした。しかし、証明
書の2枚目には、登記記録として平成25年に有限会社から商号変更し、移行
したことにより設立と記録されていました・・・。

 ちなみに、非公開会社で定款の役員任期規定は10年(定時総会終結時)で
した。急いでAさんに電話をし、登記を怠っている訳ではない旨を説明しまし
た。

 聞くところによれば、金融機関の担当者から登記(選任)を怠っているとい
う指摘をうけたのだそうです。その金融機関の担当者は、司法書士にも確認を
とったと言っているが、念のため私にも聞いてみようと思って電話したとのこ
とでした。

 登記記録を見れば一目瞭然のことでしたが、口頭だけの受け答えですと陥り
そうな罠です。現に、私も一度は「はい。」と答えてしまいました。きっと、
昭和の時代に設立された会社であったなら、電話口でもピンときたかと思いま
す。

 また、平成18年と聞くと会社法施行の年という記憶が鮮明にありますが、
それゆえ、その年の新規設立の有限会社は無いという、過った連想もしてしま
いました。

 思い返せば、会社法が施行されると有限会社が設立できないので、今のうち
価値のある?有限会社を設立しておくと、後に高く売れるという変な情報が出
回ったことがありました。その影響で、施行日が近づいた頃に、駆け込みで設
立した有限会社も多々あるかと思われます。

 ところで、会社法施行日は4月1日でしたっけ?白々しいと思われる方が多
数でしょうが、私を含め、即答に躊躇する方も少なくないと思いますので、こ
こで再確認してみてはいかがでしょうか?


(注)本内容は誤解を招く部分がありましたので、10月 3日本欄で補足いたし
ます。


2018.09.25(火)【相続法改正 その7~遺留分制度に関する見直し~】
                           (東京・鈴木龍介)

 相続法改正シリーズの7回目は、遺留分制度に関する見直しを取り上げます。
なお、遺留分については、かなり大きな改正といえると思います。そんな関係
もありまして、やや長文になりますが、お許しください、

1.遺留分の帰属と割合
  兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、後記2の遺留分を算定するため
 の財産の価額に、直系尊属のみが相続人である場合には3分の1を、それ以
 外の場合には2分の1を乗じた額を受けるものとされます(改正法1042
 条1項)。なお、相続人が数人ある場合には、上記に対して各自の法定相続
 分を乗じた割合となります(改正法1042条2項)。

2.遺留分算定のための財産の価額
  遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始時に有した財
 産の価額に、後記3の贈与をした財産の価額を加え、債務の額を控除した額
 となります。(改正法1043条1項)。なお、条件付きの権利又は存続期
 間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価によって、その価
 格が定められます(改正法1043条2項)。

3.遺留分算定にあたり算入する贈与の範囲
  遺留分算定にあたり、相続人以外の者への贈与については、相続開始前1
 年間にしたものに限って算入されますが、当事者双方が遺留分権利者に損害
 を加えることを知って贈与をしたときには、1年前にしたものも含まれます
 (改正法1044条1項)。
  相続人に対する贈与については、相続開始前10年間にしたものが算入さ
 れますが、該当する贈与は、あくまで特別受益に関するもの(婚姻もしくは
 養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与)となります
 (改正法1044条3項)。

4.遺留分算定にあたり算入する負担付贈与の取扱い
  遺留分算定にあたり、負担付贈与については、目的の価額から負担の価額
 を控除した額が算入されます( 改正法1045条1項)。
  不相当な対価による有償行為については、当事者双方が遺留分権利者に損
 害を与えることを知ってしたものに限り、当該対価を負担の価額とする負担
 付贈与とみなされます。(改正法1045条2項)。

5.遺留分侵害額の請求
  遺留分権利者は、受遺者又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭
 の支払いを請求することができます(改正法1046条1項)。
  遺留分侵害額は、前記1の遺留分から、遺留分権利者が受けた遺贈額又は
 特別受益となる贈与額を控除し、遺留分権利者が承継する債務を加算して算
 定することになります(改正法1046条2項)。

6.受遺者・受贈者の負担等
  受遺者又は受贈者は、次の①~③に従い、遺贈又は贈与の目的の価額を限
 度として、遺留分侵害額を負担することになります(改正法1047条1項)。
  ①受遺者と受贈者とがいるときには、受遺者が先に負担
  ②受遺者が複数のとき、又は受贈者が複数で贈与が同時にされたものであ
   るときには、その目的の価額の割合に応じて負担
  ③受贈者が複数のときには、後の贈与から順次前の贈与の受贈者が負担

  遺留分侵害額の請求を受けた受遺者又は受贈者は、遺留分権利者承継債務
 を弁済等したしたときには、消滅した債務額を限度として、遺留分権利者に
 対する意思表示により負担する債務を消滅させることができます。なお、弁
 済等によって遺留分権利者に対して取得した求償権は、消滅した債務額を限
 度として消滅することになります(改正法1047条3項)。
  受遺者又は受贈者の無資力によって生じた損失は、遺留分権利者の負担と
 なります(改正法1047条4項)。
  裁判所は、受遺者又は受贈者の請求により、遺留分侵害額債務の全部又は
 一部の支払いについて、相当の期限を許与することができます
(改正法1047条5項)。

7.遺留分侵害額請求権の行使期間
  遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始と遺留分を侵害す
 る贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときには、時
 効により消滅することになります。また、相続開始の時から10年を経過し
 たときも同様です(改正法1048条)。

8.遺留分と代襲相続
  代襲相続人には遺留分は認めないこととされまいした(民法1044条の
 削除)。


2018.09.21(金)【合同会社の業務執行社員が法人である場合の当該法人
         の意思表示の主体】
(仙台・立花宏)

 合同会社においては,社員である法人が業務を執行する社員である場合には,
職務執行者を選任しなければならないとされています(会598条)。法人自
身が業務執行社員としての職務を行うことができないので,具体的に職務を行
うための実体のある自然人を定める必要があるからです。
 
 では,職務執行者を定めた場合,当該法人社員が意思表示を行う場合は,す
べて職務執行者が行うのでしょうか。これは,法人社員が行う意思表示により
異なるとされています。

 社員として行う意思表示は法人の代表者が行い,業務執行社員のみがするこ
とができる意思表示については,職務執行者が行うものとされています(注1)。

 たとえば,定款変更を行う際の総社員の同意(会637条)については,社
員として同意をすることになりますので,法人社員の代表者が行います。一方,
業務執行社員を定款で定めた場合に,業務執行の決定(会591条1項)を行
う場合の業務執行社員の意思表示(会585条2項)は法人社員の職務執行者
が行います。

 「職務執行者という概念は,所有と経営のうち経営面に着目した業務執行社
員に限り認められたもの」(注2)であるので,所有者としての意思表示は代
表者,経営者としての意思表示は職務執行者という区別もできるのかもしれま
せん。

 ところで,前記のとおり定款変更は原則として総社員の同意が必要ですが,
定款に別段の定めをすることができます。たとえば,「定款の変更は,出資の
価額100万円以上の社員全員の同意により行う」と定めた場合は,出資の価
額100万円以上の社員が同意の意思表示をすることになりますが,この場合
の意思表示は法人社員の代表者が行うことになるでしょう。
 
 では,別段の定めとして,「定款の変更は業務を執行する社員全員の同意に
より行う」と定めた場合はどうでしょうか。業務執行社員の意思表示なので職
務執行者と考えるのが自然でしょうか。そう考えると,この定款の定めは,定
款変更を経営担当の意思に委ねたという趣旨になると思われます。

 しかし,内部関係が民法上の組合といえる合同会社の定款を変更することは,
社員間の組合契約を変更することと考えられます。そうすると,会社の意図と
しては,前記定款の定めは,定款変更を業務執行社員(経営担当)に委ねたと
いうよりは,会社の所有者のうち,業務執行権のない社員を除外した“社員”
の同意で定款変更を行うという定めということもあり得るのではないでしょう
か(注3)。この場合は職務執行者ではなく,当該法人社員の代表者が意思表
示をすると考えるのが適切なように思えます。

 合同会社の法人社員の意思表示を誰が行うか,という点については,とても
悩ましく感じるケースがあります。合同会社は,個人的にはまだまだ,わから
ないことが多い会社類型だと感じています

注1)小川秀樹・相澤哲編著『通達準拠 会社法と商業登記』(キンザイ)
  286頁以下
注2)松井信憲著『商業登記ハンドブック 第3版』(商事法務)633頁
注3)業務執行社員以外の社員の同意権を制限したとも考えられる。「業務執
  行権を有しない社員は会社法第637条の定款変更の際の総社員の同意に
  ついての同意権を有しない」という趣旨の定めといえる。


2018.09.20(木)【差益と利益と合併時BS】(金子登志雄)

『事例で学ぶ会社の計算実務』、好調なすべり出しでほっとしています。そこ
から、次の問題を出してみましたが、いかがですか。

Q1:定時株主総会で確定した貸借対照表によると、決算期の3月末日時点で
 利益剰余金が100万円しかありませんでしたが、今期は特需があり、すで
 に2000万円の利益が発生しています。このうち1000万円を資本金に
 振り替えたいのですが、可能ですか。

Q2:今期、外形標準課税対策で資本金9000万円に減資したため9月末日
 には、初めてその他資本剰余金が6000万円計上されます。しかし、資本
 金は切れ目のよい1億円のほうがよいという意見が多いので、減資効力発生
 日の9月末日に、その他資本剰余金から1000万円を資本組入れしたいの
 ですが、可能ですか。

Q3:100%子会社が資本欠損で、このまま合併すると当社の純資産額が減
 少するため合併を控えていましたが、子会社の業績が急回復し、10月末時
 点で貸借対照表を作ったとしたら、合併しても当社の純資産額が減少しない
 ことが確実です。11月1日付けで簡易合併したいのですが、可能ですか。

 Q1は不可でQ2は可です。Q1は損益計算上の「期間利益」であり、定時
株主総会で確定してはじめて期末付で貸借対照表の利益に変わるのに対して、
Q2は損益計算書と無関係で直ちに貸借対照表に反映されるからです。

 これにつき、私は「利益と差益を区別せよ」と著作で説明しています。減資
差益、自己株式処分差益、合併差益(ただし親子合併は除かれます)などは、
直ちに貸借対照表に計上されます。

 とすると、Q3では、期間利益だから簡易合併は無理だということになりそ
うですが、合併では一方が消滅します。つまり合併時点で決算があったのと同
様に貸借対照表が確定したとみなしますので(そうしないと損益計算書上の利
益が宙に浮いてしまいます)、この簡易合併は可能です。

 会社の計算って、クイズみたいで面白いなと思いませんか。なお、私との共
著者である有田賢臣とは、どんな人かと興味を持った東京会の司法書士の方は、
10月1日の港支部セミナーにご参加ください。講師を務めるようですよ。多
忙な10月1日ですから、まだ空きがあるでしょう。


2018.09.19(水)【海外赴任】(藤沢・酒井恒雄)

 先週末は、予定通りお酒を飲みに行きました。日本酒がいいかなとは思った
のですが、結局、私の趣味に走って、クラフトビールのお店に行きました。

 つきあって頂いたお相手は、セコンドたる同業者ではなく、本当にセコンド
についてくれた友人です。この度、海外赴任が決まり、怒濤の送別会の合間を
縫って、時間を作ってくれました。

 本人が希望しての海外赴任なので、これから取り組む仕事やその意気込み、
赴任地の話等を聞いていたら、なんだか羨ましくなってしまいました。

 司法書士の仕事をしている限り、海外勤務という言葉は、ほぼ無縁かと思い
ます。ニーズの話は別として、海外でも相談業務は出来ますし、オンラインで
仕事をすることも不可能ではなさそう?です。ただ、自ら業として行うには、
事務所の設置と、事務所の所在地を管轄する司法書士会への登録が必要になり
ます。

 もしかしたら海外支部や日司連直属になる等、何らか方法があるのかもしれ
ませんが、どのみち、現実的ではないですよね・・・。

 もともとは、組織に縛られることなく、自分のペースと自己責任で仕事をし
たくて独立開業しました。あれから約20年、ずいぶん長い期間、個人事業を
営んできました。会社勤めだった頃が懐かしくもあり、なんとなく、会社で働
く人の家の芝が、自分の家の芝より青く見えてしまう今日この頃です・・・。


2018.09.18(火)【相続法改正 その6~自筆証書遺言書の保管②~】
                           (東京・鈴木龍介)

 相続法改正シリーズの6回目は、前回に続き自筆証書遺言書の保管制度です。

6.遺言書情報の管理
  遺言書保管官は、保管する遺言書情報の管理について、磁気ディスクで調
 製する遺言書保管ファイルに、次に掲げる事項を記録することによって行い
 ます(保管法7条2項)。
  ①遺言書の画像情報
  ②遺言書に記載されている作成年月日、遺言者の氏名・出生年月日・住所
   ・本籍(外国人は国籍)、受遺者と遺言執行人の氏名(名称)・住所
  ③遺言書の保管開始年月日
  ④遺言書が保管されている遺言書保管所の名称・保管番号

7.遺言書保管の申請の撤回
  遺言者は、いつでも遺言書保管申請の撤回をすることができます(保管法
 8条1項)。なお、撤回をするときには、遺言書保管所である法務局に自ら
 出頭して行わなければなりません(保管法8条3項)。
  遺言者が遺言書保管の撤回をしたときには、遺言書保管官は保管している
 遺言書を返還するとともに、遺言書情報を消去しなければなりません(保管
 法8条4項)。

8.遺言書情報証明書の交付等
  遺言者の相続人等の関係者は、遺言者が死亡している場合に限り、保管さ
 れている遺言書について、遺言書保管ファイルに記録されている事項を証明
 した書面(遺言書情報証明書)の交付を請求することができます(保管法9
 条1項)。また、遺言書の閲覧を請求することもできます(保管法9条3項)。
  遺言書保管官は、遺言書情報証明書を交付又は遺言書の閲覧をさせたとき
 には、速やかに遺言書を保管している旨を遺言者の相続人・受遺者・遺言執
 行人に通知することとされています(保管法9条5項)。

9.遺言書保管事実証明書の交付
  誰でも、遺言書保管官に対し、遺言書保管所における遺言書保管の有無等
 に関する事項を証明した書面(遺言書保管事実証明書)の交付を請求するこ
 とができます(保管法10条1項)。

10.遺言書の検認の適用除外
  遺言書保管所に保管されている遺言書については、遺言書の検認の手続
 (民法1004条1項参照)は要しません(保管法11条)。

11.施行
  保管法は、公布の日から2年内(~2020年7月12日)の政令で定め
 る日から施行されます(附則)。


2018.09.14(金)【高望み】(仙台・立花宏)

 先日,どうしても,ある書籍の内容を確認したいと思い,書店に探しに行っ
たのですが,扱っていませんでした。インターネットで検索したところ,出版
元でも品切れになっていました。10年前に出版された本なので,印刷したも
のはすべて販売済になってしまったようです。

 現在,進めている原稿の作成のため,文献を調べていたところ,ある見解が
紹介されていたのですが,その見解が記載されているのが冒頭の書籍だったの
です。

 できれば,原本にあたり,その理由付け等も確認したいと思っていたので,
なんとか,その書籍を見つけたいと思い,インターネットで近所にある大学の
図書館の蔵書検索をしてみました。自分のパソコンから,こうして本を探せる
なんて,便利な世の中になったものです。その結果,幸運にも,目当ての書籍
が所蔵されていることがわかりました。

 出版して世の中に受け入れられた書籍の中には,改訂等を行い,長い間,販
売され続けるものもあります。

 一方,残念ながら,販売が進まず,追加印刷等がなされない書籍もあります。
この状態になると,入手するのが難しくなります。

 もちろん,後者の書籍であっても,価値がなかったというわけではなく,出
版のタイミングや読み手のニーズ等の影響もあるのだろうと思います。今回,
私が探した書籍は後者にあたるのでしょう。

 図書館から,その書籍を借りてきて,該当箇所を読み解きつつ,自分の原稿
の作成を進めながら,ふと思いました。今,私が書いている原稿は,将来,ど
ちらになるのだろうか,と。

 もちろん,前者のように長く売れるような本になってもらえたら,こんなに
幸運なことはありません。しかし,それはなかなか難しいことであることも理
解しているつもりです。

 ただ,今,目の前にある借りてきた書籍のように,10年後も,誰かが資料
として探してくださるような,そんな価値のある内容を持つものにできるよう,
努力しよう。
 
 ちょっと高望みかもしれませんが,そんなことを思いました。



2018.09.13(木)【権利調整条項は、種類株式の内容ではありません】
                          (東京・古山陽介)

 もうだいぶ前にこの論点は、整理されていると思っていましたが、最近また
いくつか問い合わせがありましたので、改めてここで書きたいと思います。

 クライアントが作成する種類株式(優先配当株式)の内容の中に、「株式の
併合又は分割、募集株式の割当を受ける権利等」の項目(以下「権利調整条項」
とします。)が盛り込まれていることがあります。

 この権利調整条項については、旧商法時代には、当然のように登記ができて
いました。平成18年の会社法施行以降もしばらくは法務局から何も指摘を受け
ることなく、権利調整条項についても登記ができていました。

 しかし、平成18年の会社法によって種類株式の内容が詳細に規定されたこと
により、権利調整条項が種類株式の内容ではないことが明らかとなりました。

 種類株式の内容ではないということは、登記事項でもないということですの
で、権利調整条項の登記を認めてくれない法務局が増えてきて、現在では、私
が申請する場合には、権利調整条項を外して登記を行っています。

 この点については、金子先生と富田先生の『募集株式と種類株式の実務〔第
2版〕(中央経済社)』151頁~153頁に詳細が書かれています。

 また、商事法務№2176、45頁にて、残余財産の分配に関する優先株式の定め
として「みなし清算条項」を定款に設けることは可能であるが、種類株式の内
容ではないとする趣旨の記事もあります。


2018.09.12(水)【セコンド】(藤沢・酒井恒雄)

 先週は、私の投稿に金子先生が応えてくださる形で、仕事の現場を、格闘技
のリングに例えての話になりました。

 金子先生が書かれた、共著者のことや、怪我をしない方法を身につけるとい
うことを読んで、ふとセコンドという文字が頭に浮かんできました。

 私は、試合でも仕事でも、かすり傷や打撲は数え切れなく負っていますが
(笑)、大怪我をしたことはありません。怪我の防止には、まずは日頃の鍛錬、
実戦を仮定した練習が大事だと思います。体(脳)の基礎が出来たところで、
いざリングに上がることになりますが、試合が始まるとセコンドの存在が大き
な力になります。

 セコンドはリングサイドから直接アドバイスをくれます。主に他の選手がそ
の役を担ってくれますが、場合によってはコーチがセコンドにつくこともあり
ます。

 リングの上では、自分では冷静でいるつもりでも、相手の動きや戦局が見え
ていないときがあります。そんなとき、セコンドの声が聞こえてきて、危うく
相手の攻撃をかわすことができたり、怪我を負わずに済んだりするのです。

 そんな大事なセコンドですが、仕事では、同期や同業者の仲間達がその役を
担ってくれていると思っています。積極的に意見交換や質問をする場合はもち
ろん、食事会や飲み会の席での雑談でも、目の覚めるような意見があったりと、
どれだけ仕事の助けになってもらったかわかりません。

 キックボクサーも士業も、最終的に闘うのは自分一人ですが、孤独な闘いを
している訳ではありません。そのことは試合でも仕事でも肌身を通じて感じて
います。

 随分とカッコいいことを書きましたが、飲み会に出席する理由を正当化する
思惑が見え隠れしていることも自覚しております(笑)。若干秋の気配も感じ
てきましたので、今週末は日本酒がいいかもしれません・・・・・。


2018.09.11(火)【相続法改正 その5~自筆証書遺言書の保管①~】
                          
(東京・鈴木龍介)

 相続法改正シリーズの5回目は、前回、少し触れました法務局での自筆証書
遺言書の保管制度を取り上げます(分量の関係で2回に分けます。)。

 この制度は民法の特別法の新法である「法務局における遺言書の保管等に関
する法律」(以下、「保管法」といいます。)に規定されています。なお、現
時点では保管法に関する政省令や告示は発令されていません。

1.遺言書保管所
  遺言書保管に関する事務は、告示により法務大臣の指定する法務局が遺言
 書保管所として行います(保管法2条)。

2.遺言書保管官
  遺言書保管所における事務は、遺言書保管官(遺言書保管所である法務局
 に勤務する法務事務官のうち(地方)法務局長が指定する者)が取り扱いま
 す(保管法3条)。

3.遺言書保管の申請
  遺言者は、遺言書保管の申請をすることになりますが(法4条1項)、当
 該申請をする遺言書は、法務省令で定める様式に従って作成した無封のもの
 でなければなりません(保管法4条2項)。
  遺言書保管の申請は、遺言者の住所地もしくは本籍地又は遺言者が所有す
 る不動産の所在地を管轄する法務局である遺言書保管所で行うことになりま
 す(保管法4条3項)。
  遺言者は、自らが遺言保管書所である法務局に出頭し、遺言書と次の事項
 を記載した申請書を提出しなければなりません(保管法4条4項・6項)。
  ①遺言書に記載されている作成年月日
  ②遺言者の氏名・出生年月日・住所・本籍(外国人は国籍)
  ③遺言書に受遺者と遺言執行人の記載があるときには、その氏名(名称)
   ・住所
  ④その他法務省令で定める事項

4.遺言書保管官の本人確認
  遺言書保管官は、遺言書保管の申請があった場合、遺言者である申請人が
 本人であるかの確認をするため、当該申請人を特定するための事項を示す書
 類の提示もしくは提出又はこれらの事項についての説明を求めることになっ
 ています(保管法5条)。

5.遺言書の保管等
  遺言書保管は、遺言書保管官が遺言書保管所である法務局の施設内で行う
 ことになります(保管法6条1項)。
  遺言者は、いつでも保管されている遺言書の閲覧を請求することができま
 す(保管法6条2項)。なお、当該請求をするときには、遺言書保管所であ
 る法務局に自らが出頭して行わなければなりません(保管法6条4項)。
  ~次回に続きます~


2018.09.10(月)【事例で学ぶ会社の計算実務14日発売】(金子登志雄)

 拙著『事例で学ぶ会社法実務【会社の計算編】』の改訂版が表題のように改
題され、かつ会計処理にも税務にも明るい有田氏に再登場していただき、この
14日に中央経済社から発売されます。著者の私ですら、まだ入手していない
のに、アマゾンに出ました。
         https://is.gd/aqC0Nb

 もうすでに旧版を持っているとか、つい最近旧版を買ったばかりだという法
律関係の方はご心配なく。計算規則の大幅な改正があったわけではないので内
容は旧版とほとんど変わっていませんので、そのままご利用ください。

 改訂改題版の特徴は、税理士・会計士さん向けに仕訳例を大量に挿入したこ
とです。この部分はわれわれ法律関係職には、暗号としかみえませんが、会計
人の方には、文章よりもずっと楽に頭に入るようです。つまり、改訂改題版は
会計事務所用にも使えるように修正した販路拡大版です。

 実は、司法書士の掲示板などで、税理士事務所作成の合併契約書だが、会社
計算規則に反していると思うがどうか、期中で期間利益が大きく出たので会社
の顧問税理士が資本組入れを勧めているが、それは不可能と思うがどうかとい
った質問等が少なくないのです。

 街の会計事務所は税制適格には神経を使っても、適法な会計処理や登記には
関心が薄いようですので、何とかして拙著を街の会計事務所にも備えてほしい
と思い、私の信頼する公認会計士・税理士の有田氏に再登場をお願いし、彼の
発案で仕訳例を挿入しました。

 有田氏は独立開業の街の公認会計士・税理士の中では珍しく(??。会計事
務所さんには失礼な表現ですが実情です)、会社の計算に強い先生で、この面
に関しては私の相棒です。法律条文である会社計算規則の読み込みは私の役割
で、彼が企業会計基準の読み込みをしてくれているので、よいコンビだと思っ
ています。年齢は親子ほど相違しますけど………。元々は彼のボス格の茂腹公
認会計士が私のM&A仲間でした。

 http://seesaawiki.jp/w/aritax/d/%C2%E5%C9%BD%BC%D4%CE%AC%CE%F2

 本欄閲覧の皆様、ぜひ、お知り合いの会計事務所にご紹介ください。


2018.09.07(金)【額面株式と最低資本金】(金子登志雄)

 旧商法を知らない司法書士も増えてまいりましたので、1日の鹿児島セミナ
ーでは、以下の話もいたしました。
 
 登記漏れが長期に続いているという内容の質問として、2つのパターンがあ
ります。

 1つは、最近は少なくなりましたが、「会社の定款には譲渡制限が設定され
ているのに、登記記録に記録されていない。今から登記できるか」という質問
です。昭和30年代に設立された会社に多い話です。

 これは私にいわせれば、会社の間違いです。中小企業では定款は会社の根本
規則というよりも、司法書士が勝手に作ったものという意識であり、会社のど
こに保管されているか分からないことが少なくありません。

 この譲渡制限は昭和41年商法改正で認められたものであるため、それ以前
に設立された会社には登記されていないのが正しいのに、その後、昭和50年
代や60年代に、定款が必要になった際に、社内で定款が見つからないため、
法令様式か何かを参考に自社の定款として作成し、そこに譲渡制限規定が存在
したということです。それを今になって、譲渡制限が登記されていないと登記
に文句をいっても仕方ありません。

 もう1つは、税務申告書の別表では、資本金が1000万円で、発行済株数
が2万株になっているのに、登記記録では1万2000株のままだ、平成7年
に利益の資本組入れで400万円増資した際に株式分割で2万株にしたのに、
いまだに株数が登記されていないなどという問題です。

 これも会社の間違いです。この会社は額面株式の額面が500円だったので
しょう。資本金600万円(額面×株数)だったところ、平成2年の商法改正
で最低資本金制度が強制され平成8年3月末までに資本金を1000万円以上
にしなければなりませんでした。

 そこで平成7年に資本組入れして1000万円にしたわけですが、昭和56
年商法改正以後は額面5万円時代となり株式分割でも分割後の1株当たりの純
資産額が5万円以上でないと株式分割ができませんでした。

 それを知らない顧問税理士が「額面×株数」は資本金額に一致しなければな
らないと思い込み、税務申告書の別表に2万株と勝手に書いたものです。これ
も今になって、増加株数が登記されていない、今から更正登記したいといって
も無理な話です。

 若い司法書士の皆様、日本の登記所は優秀です。申請したのに漏らしたなど
ということはまずありません。登記に疑問を持つ前に会社の言い分に疑いを持
つことも忘れないでください。

 ちなみに平成13年10月施行の商法改正で額面株式が廃止されるまでは、
額面株式全盛時代であり、昭和25年商法改正以前に設立された会社は額面が
主に50円、昭和56年改正までは額面500円、以後が5万円でした。


2018.09.06(木)【名コーチ】(金子登志雄)

 9月1日土曜日は、西郷どんの舞台である鹿児島の司法書士会で会社法の講
義でした(研修担当の皆様大変お世話になりました)。

 鹿児島は社員旅行と個人旅行を含めると、もう7、8回めの訪問ですが、い
つ行っても、西郷さんが鹿児島観光に大きな貢献をしていることが分かります。
好き嫌いが激しく独断専行の方のようでしたが、あの太めの風貌が全てを隠し
てしまいます。大久保利通も、きっとあの世で、もっと太っていれば、もう少
し人気者になれたのにと思っているかもしれません。

 さて、講義は名コーチ(昨日の酒井さんの投稿)が務まったかどうかは不明
ですが、書籍には書いていないノウハウも話してきました。何回も呼んでいた
だいた感謝の気持ちです。

 私は自分でも素人相手ではダメコーチですが、司法書士等の法律を分かって
いる人相手では、それなりに名コーチに含めていただけると思っています。決
してパワハラもセクハラもしませんから………。パワハラをする前に、キック
ボクシングで鍛えておかないと、こちらが負けてしまいます。

 ノウハウが貯まったのは、ひとえに顧客やおかしな登記実務のおかげです。
顧客から「なぜ100%子会社同士の合併なのに株数や資本金を増やさなけれ
ばならないのか」と額面株式時代に聞かれたので、「それはそうだ」と思い、
いまでいう無対価合併を考案しました。

 取締役会による代表取締役の予選は予選時と効力発生時の取締役が一致しな
いと不可というおかしな登記実務のおかげで、「じゃあ、株主総会で代表取締
役を予選すれば、文句ないだろう」と別の手を考えました。

 執筆も共著にすることが多いのは、共著者から私見に関して様々質問を受け
るため、それが新たな発見や私見の深化につながるからです。

 このように、実戦では、顧客や登記所、他の司法書士が最良の教師になって、
われわれを鍛えてくれます。そのためにも、まずはリングに上がらなければだ
めです。上手に逃げる手もリングに上がってこそ学べます。酒井さんも負けて
も怪我をしない方法を身に着けているようです。

 かつての日本軍のような万歳攻撃は論外ですが、竹刀ではなく真剣での実戦
に参加して腕を磨きましょう。チェストー!です(薩摩示現流の掛け声で、ご
ちゃごちゃ迷わずに行けーといった意味のようです)。


2018.09.05(水)【練習の成果】(藤沢・酒井恒雄)

 久しぶりにキックボクシングの試合に出てきました。今回、あまり練習時間
がとれなかったので、最低限の対策だけで試合に臨んだのですが、案の定、負
けてしまいました。

 リングに上がると、独特の雰囲気と緊張感がありますし、相手は恐ろしい眼
つきでこちらに向かってきます。そんな状況ですと、思うように体も動きませ
ん。

 特殊な環境下でとっさに出る動作は、日頃の練習で反復して体に覚え込ませ
たことだけとコーチに教わりました。まさにそのとおりで、今回は十分に体に
覚え込ませることが出来なかったので、思うように動けませんでした。

 もっとも、これはキックボクシングに限ったことではありません。司法書士
試験もそうでした。受験生時代は、もう一生こんなに勉強することはないだろ
うというくらい勉強をしました。一生懸命、反復して勉強しましたので、最終
的には試験問題を読んで反射的に回答が出るくらいに、体(脳)が仕上がって
いたと思います(笑)。

 今や、勉強をしたきりで終わっていることは、錆が発生して相当動きが鈍く
なっている感があります。ただ、相談者から質問があったときに、詳細な内容
の即答はできなくとも、大体の回答ができるのは、よほど深く体(脳)に染み
込ませた成果なのでしょう。

 ちなみに、商業登記分野の業務では、実戦(実際の受託)をしつつ、ずっと
練習(知識の習得)もしていますので、かなりいい動きが出来ていると思いま
す(笑)。

 商業登記分野が好きで、勉強は続けているものの、いざ受託となると尻込み
をしてしまうという方もいらっしゃると聞きます。実戦は、なかなか怖いもの
ですが、練習の成果は必ず現れます。金子先生という名コーチもいらっしゃる
ので、どうか、自信を持って臨んで欲しいと思います。


2018.09.04(火)【相続法改正 その4~遺言制度に関する見直し~】
                           (東京・鈴木龍介)

 相続法改正シリーズの4回目は、遺言制度に関する見直し(自筆証書遺言の
保管制度を除く。)を取り上げます。

1.自筆証書遺言の方式の緩和
 自筆証書遺言と一体化した相続財産の目録を添付する場合には、その目録に
ついては、自書することを要しません。ただし、遺言者は、目録の毎ページに
署名押印しなければなりません(改正法968条2項)。

 自筆証書遺言の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを
変更した旨を付記して、署名し、かつ、その変更の箇所に印を押さなければ、
その効力を生じません(改正法968条3項)。

2.遺贈義務者の引渡義務等
 遺贈義務者は、遺贈の目的である物又は権利を、相続開始時(その後に当該
物又は権利について遺贈の目的として特定した場合には、その特定をした時)
の状態で引き渡し、又は移転する義務を負います(改正法998条)。

3.遺言執行者の権限の明確化
 遺言執行者は、任務を開始したときには、遅滞なく、遺言の内容を相続人に
通知しなければなりません(改正法1007条2項)。

 遺言執行者は、遺言の内容を実現するために、相続財産の管理その他遺言の
執行に必要な一切の行為をする権利義務を有します(改正法1012条1項)。

 遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことがで
きます(改正法1012条2項)。

 遺言執行者は、遺産分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同
相続人の1人又は数人に承継させる旨の遺言(=特定財産承継遺言)があった
ときには、当該相続人が対抗要件を備えるために必要な行為をすることができ
ます(改正法1014条2項)。

 遺言執行者は、特定財産承継遺言に関する財産が預貯金債権である場合には、
預貯金の払戻しの請求・解約の申入れをすることができます。ただし、解約の
申入れについては、その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場
合に限ります(改正法1014条3項)。 

 遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、
相続人に対して直接にその効力を生じます(改正法1015条)。

 遺言執行者は、遺言者が別段の意思表示をしたときを除き、自己の責任で第
三者にその任務を行わせることができます(改正法1016条1項)。なお、
第三者に任務を行わせることについてやむを得ない事由があるときには、遺言
執行者は、相続人に対し、選任と監督に関しての責任のみを負います(改正法
1016条2項)。


2018.09.03(月)【コンビニ発行の印鑑証明書】(島根・根来川弘充)

 現在、マイナンバーカードを所有した方は、コンビニ等で、印鑑証明書を取
得することができます。ただ、市区町村が発行したものでないので、同一の扱
いではありません。

 つまり、司法書士が、登記の依頼を受けて、その書面を預かったとき、申請
する前にそれが市区町村発行と、同等なものか、別途確認する作業が必要にな
ります。

 その確認作業を簡単にいいますと、受取った書面を、特定のファイル化をし、
インターネット上で確認をすることと、受取った書面にある特殊加工が、正式
なものであるか判断することです。

 いずれにしても、対応できる機械が必要になります。登記のオンライン化が
はじまり、いままで新たに機械や消耗品を導入したケースが多々ありました。
しかし、いまでは使えないものも出てきています。

 国民の利便性向上のために、省庁の電子化が求められる中で、専門家への負
担が生じていることを、皆様に少しでも知っていただけたらと思います。


2018.08.31(金)【登記すべき事項の1行文字数】(東京・古山陽介)

 商業登記における登記すべき事項について、1行あたりの文字数が項目(エ
リア)によって異なっていることにお気づきですか?

1.21文字改行エリア
 ①商号
 ②本店
 ③公告をする方法
 ④役員に関する事項(資格・住所・氏名)
 ⑤発行可能株式総数
 ⑥発行済株式の総数(並びに種類及び数)
 ⑦資本金の額

2.34文字改行エリア
 ①新株予約権の数
 ②新株予約権の目的たる株式の種類及び数又はその算定方法
 ③募集新株予約権の払込金額若しくはその算定方法又は払込を要しないとす
  る旨
 ④新株予約権を行使することができる期間
 ⑤新株予約権の行使の条件
 ⑥会社が新株予約権を取得することができる事由及び取得の条件
 ⑦発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容

3.35文字改行エリア
 ①目的
 ②株式の譲渡制限に関する規定
 ③取締役等の会社に対する責任の免除に関する規定
 ④非業務執行取締役等の会社に対する責任の制限に関する規定
 ⑤登記記録に関する事項
 ⑥吸収合併
 ⑦吸収分割

4.36文字改行エリア
 ①新株予約権の名称

 以上のような区分になっています。

 法務局によっては、禁則処理であったり、うまく調整して改行の処理を行っ
てくれたりしますが、基本的には、申請人側にて指定しなければ、上記の文字
数で改行の処理がさなされます。
 特に、種類株式や新株予約権に関する登記の際には、登記すべき事項の改行
に注意しなければ、完了後の謄本が読みにくい場合があります。


2018.08.30(木)【商業登記と民法】(金子登志雄)

 本欄で鈴木さんが民法改正の解説をしてくださっていますが、司法書士会で
も、この関係のセミナーが増えてきました。

 ところが、情けないことに、会社法・商業登記に特化している私は、読んで
も記憶に残りません。民法を確認することがほとんどないためです。

 なぜ、商業登記で民法を開くことが少ないかというと、民法は個人法理で会
社法は団体法理だからであり、会社法の範囲で問題解決することが多いため、
母法の民法に戻ることがほとんどないためです。

 しかし、会社法の背景には母法の民法が厳然として存在し続けます。株式の
発行は株式引受契約ですし、役員の選任は委任契約です。発起人の決定や、持
分会社の意思決定は、組合型の合意と考えられます。持分会社の定款は組合契
約書そのものともいえます。

 合同会社甲の社員がABCであれば、甲の定款は社団の規約という側面より
もABCの組合契約書(合意書)に近いため、その定款には、当事者としてA
BCが記載されています。だから、団体でありながら社員名簿が存在しません。

 ここで、Aが持分の全部をDに譲渡するには、BCの承諾が必要だとされて
いますが(585条1項)、この譲渡を承認してくれというAの申込みとBC
の承諾は、単なる譲渡承認だけの効果にとどまらず、社員全員の意思の合致と
して組合契約(定款)変更(Aを定款から削除)の効果とDの加入の承諾とい
う社員BCの組合契約(定款)変更の効果があると考えるのか、譲渡承認は譲
渡承認、定款変更は定款変更とそれぞれ別に考えるのかという解釈問題があり
ます。

 後説だと譲渡してしまい出資者でなくなったAにも定款変更の同意権限が残
っているというおかしな論理になりますし、会社法585条3項に「持分の譲
渡に伴い定款の変更を生ずるときは」とあるとおり、持分の全部譲渡自体に、
社員であることをやめたいので定款から削除してほしいというAの意思とBC
の承諾という定款変更の意思表示が含まれているという前説が穏当だと思って
います。

 つまり、定款変更等の「総社員の同意」には、社員全員(ABC)があるこ
とに賛成する場合(同方向の一致)だけでなく、A自身のことにBCが賛成す
る相対立する意思の合致も含むというべきでしょう。

 Dの加入については、新たにBCDで組合契約を締結したと考えれば、Dも
定款変更当事者ですが、BCが組織する組合型の社団にDが加入すると考えれ
ば社員候補のDは定款変更当事者から除外されます。除外されても、加入の効
果として定款変更がなされます(法文上は定款変更が先で加入の効果が後だと
されていますが、実質は同時で大差ありません)。

 どうも、民法の表面的部分は商業登記に不要でも、民法の意思表示や契約に
関する深い理解は絶対に必要だといえます。その意味で、民法を知らずして会
社法を語るなかれです。

 前に書きましたが、非取締役会設置会社の株主総会で募集株式発行の決議と
甲への割当てを決議する際は「甲の申込みがあることを条件とする」と議事録
に記載しないと補正になるという見解は、民法を知らずして商業登記を論ずる
ものでした(条件は法律行為の効力要件なのに、この段階ではまだ法律行為が
未成立のため条件というべきではありません)。


2018.08.29(水)【業界】
(藤沢・酒井恒雄)

 先日、打ち合わせの場で「業界紙」の話になりました。

 業界紙とは、その業界に関する出来事や話題を取材し、それをその業界の為
に報道することを目的として発行される新聞(雑誌)と定義されているようで
す。その殆どは、一般の人が知ることは少なく、しかし、その業界に関わって
いる人であれば、知らない人はいないというものではないかと思われます。

 例えば、美容関連であれば、WWDビューティという有力な業界紙があるの
だそうです。通称は「ダブダブ」と呼ぶそうで、そこに掲載される情報は、こ
の先の流行を左右するくらいの影響力があるそうです。「それ、ダブダブに載
っていたやつ?」と通称を使って話せば、お!こいつやるな?と思われること
間違いないそうですよ・・・・・。

 ちなみに「先生の業界にも、いわゆる業界紙があるのですか」と聞かれまし
たが、ちょっと考え込んでしまいました。

 自分が活動している業界は、司法書士業界であることに間違いないのですが、
会報以外の業界紙というと思い当たるものがありません。頭に浮かんだのは、
月刊登記情報や登記研究でした。これは、正しくは業界紙ではなく専門誌なの
でしょう。

 しかし、実際に行う業務から考えると、登記業務、裁判業務、財産管理業務
等、各業務の専門誌はいくつか思い浮かんできます。そもそも「業界」なので
すから、業務ごとに業界が成り立っているはずです。そう考えると司法書士業
界という言葉は非常に分かりにくいものです。相変わらず、司法書士って何を
する人?という質問が多いのも納得です。果たして、自分は一体何処の業界人
になるのだろうかと、あれこれ考えてしまいました・・・・・。



2018.08.28(火)【相続法改正 その3~遺産分割等に関する見直し~】
                           (東京・鈴木龍介)

 相続法改正シリーズの3回目は、遺産分割等に関する見直しを取り上げます。

1.夫婦間での居住用不動産の遺贈・贈与
 婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、居
住用建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときには、当該被相続人は、
その遺贈又は贈与について民法903条1項の規定(特別受益者の相続分)を
適用しない旨の意思を表示したものと推定されます(改正法903条4項)。

2.遺産分割前の預貯金
 各共同相続人は、遺産である預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の3分
の1に当該共同相続人の法定相続分を乗じた額(同一の金融機関に複数の口座
を有している場合には、標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額
その他の事情を勘案して金融機関ごとに法務省令で定める額を限度とする。)
について、単独でその権利を行使することができます。この場合、当該権利の
行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割により
これを取得したものとみなされます(改正法909条の2)。

3.遺産の一部分割
 共同相続人は、民法908条(遺産分割の禁止)の規定により被相続人が遺
言で禁じた場合を除き、いつでも、遺産の全部又は一部を協議により分割する
ことができます(改正法907条1項)。
 遺産分割について、共同相続人間に協議が調わないとき又は協議をすること
ができないときには、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所
に請求することができます(改正法907条2項)。

4.遺産分割前の財産処分と遺産の範囲
 遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、
その全員の同意(処分者は除く。)により、処分された財産が遺産分割時に遺
産として存在するものとみなすことができます(改正法906条の2)。


2018.08.27(月)【債権者保護手続が終了した日】(金子登志雄)

 24日(金曜日)の立花さんの投稿には考えさせられました。内容について
は全面的に賛成ですが、なぜ、債権者保護「手続の終了した日」が期間満了日
の翌日になるのかという疑問が消えませんでした。

 私は著作で「終わりの日」と「始まりの日」は区別すべきで、例えば、事業
会社時代が終わる「存続期間の満了による解散」については、事業会社が終わ
る日を期間満了日付で登記すべきであり(登記実務は満了日の翌日付)、旧商
法時代の減資のように、債権者保護手続期間が満了して、減少後の資本金が始
まる場合は期間満了日の翌日付で登記すべきだと説いています。つまり、終わ
る日を登記する場合と始まりの日を登記する場合は区別せよと説いています。

 こういう私見からは、会社法627条6項の「資本金の額の減少は、………
【手続が終了した日に、その効力を生ずる】」は、実に誤解を招きやすい表現
だなと感じましたので、土曜日に謎解きをしてみました。解説書など、あるは
ずがありません。

 まず、会社法を検索してみましたが、面白い事実を発見しました。例えば、
会社法912条1項1号の新設合併の登記すべき期間ですが、同号ハやニの株
主向け等の公告では「公告をした日から二十日を【経過した日】」とあるのに、
債権者保護手続のホでは「第八百十条の規定による【手続が終了した日】」と
あります(その他にもありますので検索してみてください)。

 前者は20日間の満了日の翌日のことなのに、債権者保護については期間満
了日そのものと解釈すると、ハニとホで矛盾した規定になってしまいます。

 さらに調べましたところ、債権者保護に関する旧商法100条6項に、催告
代用の電子公告は「公告に定むる期間を【経過する日】迄為すことを要す」と
あるではありませんか。

 そこで、ハタと気づきました。株主向け公告は「20日前までに」「1か月
前までに(会219条)」という条文表現で固定期間ですが、債権者保護手続
だけは、旧商法時代から「1か月を下ることを得ず」といった会社が定めた任
意期間です。

 この「下ることを得ず」とは「以上」という意味ですが(例:発行済株式の
総数は発行可能株式総数の四分の一を下ることができない)、手続の期間で使
う場合は、まるまるその期間を満たす必要がありますから、期間満了日の24
時を示してはならず、翌日の午前0時を意味しないといけないということでし
ょう。すなわり、「〇〇期間を下ることを得ず」(つまり、債権者保護手続)
に限り、「手続の終了の日」とは期間の満了日のことではなく「手続の終了の
効果が生じた日(定めた期間が経過した日)」を表すようです。

 立花さんのおかげで新発見をすることができました。御礼申し上げます。

 なお、上記だからといって、存続期間の満了による解散は、清算会社として
効力の発生した日ではなく、事業会社としての解散日を登記すべきだという私
見に変化はありません。解散は事業会社の登記事項だからです。


2018.08.24(金)【合同会社の資本金の額の減少の効力が生ずる日】
                            (仙台・立花宏)

 合同会社の資本金の額の減少について,会社法第627条第6項には,「前
各号の手続(注:債権者の異議申述手続のこと)が終了した日に,その効力を
生ずる」と規定されています。
 
 ある合同会社で,200万円であった資本金を100万円に減少をするため,
債権者が異議を申し述べる期間を8月31日までとして公告及び催告を行った
として、債権者が異議を申し立てることもなく8月31日が経過した場合,資
本金の額の減少の効力発生日はいつになるでしょうか。

 異議申立期間は8月31日に満了したため,手続が終了した日として,8月
31日が効力発生日のようにも思えます。

 しかし,結論としては,9月1日が効力発生日になると考えます。おそらく,
実務でも9月1日と扱われているでしょう。債権者異議申述期間の満了日は8
月31日ですが,8月31日24時まではこの期間内であり,9月1日0時に
目的が達成されたという理由です。つまり、手続の終了したのがいつかと考え
ると悩ましいですが,この会社の資本金の額は8月31日までは200万円だ
ったが,9月1日から100万円になったと考えるわけです。

 ところで,前記の手続において,たとえば8月31日にある債権者が異議を
述べたため,9月3日に当該債権者に弁済をした場合は,資本金の額の減少の
効力はいつ発生することになるでしょう。

 わたし自身は経験がないのですが,この場合は9月3日ということになるの
ではないかと思います。会社法第827条6項の「前各号の手続」の中には,
「異議を申し述べた債権者に対し,弁済すること」(同条第5項)も含まれて
いるからです。よって,異議が債権者異議申述期間内になされ,その期間後に
弁済した場合,その弁済により,必要な手続が終了し,資本金の額の効力が生
ずることになると思われるからです。

 株式会社の資本金の額の減少の場合は,会社が効力発生日を定め,それまで
に必要な手続(債権者異議申述手続において異議を述べた債権者への弁済等を
含む)が終了していないと,その効力が生じないとされているのとは異なる定
め方をしているように思います。

 同じ会社法に規定されている同じような手続で,なぜ,このように異なる定
め方をしたのか,不思議な感じがしますが,何か理由があるのかもしれません。


2018.08.23(木)【東京の夏を考える】(東京・古山陽介)

 お盆の時季も特に夏休みがあるわけではなく毎日事務所に出ました。電話や
メールが普段よりは少なくなっているので、落ち着いて仕事ができ、記事を作
成する余裕もあって、快適な一週間でしたが、自分も育成選手から3軍、2軍、
1軍と金子監督に認められるようにネタを仕入れて投稿数を増やしていかなけ
ればと、別の意味で汗をかく夏でした。

 今年の夏は酷暑続きで、天気予報のニュースでも「外での運動は控えましょ
う。」とアナウンスされていて、ランニングを趣味にする自分も日中に外で走
るのを控え、室内でのトレッドミルを使ってのランニングが多くなっています。
たまに夜外で走っていても皇居周辺で脱水症状を起こしているランナーも見受
けられ、本当に危険な暑さだと感じています。

 そんな中、2年後の夏に東京五輪が開催されます。連日の記録的暑さを伝え
るニュースと一緒にオリンピックの暑さ対策に関する話題が報じられたりして
いますが、これだけ暑くなると中途半端な対策では、どれも結果的には雀の涙
程度の効果しか得られないのではないでしょうか。しかも、オリンピックのた
めだけにサマータイム制度の導入を検討されているようですが、そこまでして、
市民の生活リズムを変えさせることの意義がなんなのか、自分には理解できま
せん。

 スポーツはするのはもちろんのこと、観戦するのも大好きですし、オリンピ
ックも子供の頃から競技に関係なく夜更かししてテレビ観戦するほど楽しみで
はありますが、生活が蔑ろにされてオリンピックにのみ照準が当てられている
現在の風潮には違和感を覚えてしまいます。

 ニュースで「外での運動は控えましょう。」と注意喚起しておきながら、暑
さの中でのオリンピック競技の危険性については、暑さ対策の報道によってな
んとなく曖昧にされて、むしろ日本人はこの暑さに慣れているからメダルのチ
ャンスだなんて煽っている様を異様に感じるのは自分だけでしょうか。

 暑さ対策は、オリンピックのためだけの小手先のやり方ではなく、普段の都
市生活に浸透するような方法でなければ、成果は表れないのではないかと思っ
てしまいます。

 こんな天邪鬼な性格ではありますが、東京五輪はまたとない機会ですので、
何かしらの競技は観戦したいと考えていますし、事務所の近所がマラソンコー
スですので、沿道で観戦するつもりでいます。


2018.08.22(水)【クラフトビール】(藤沢・酒井恒雄)

 先週の一週間は、出勤していたものの、殆ど事務所の電話が鳴ることもなく、
徒然日誌の投稿もお休みを頂いたので(笑)、まったりと過ごしておりました。
更に、今週も昨日まで夏期休暇をとりましたので、現在、なかなか仕事をする
気になれない状態です。エンジンがかかるには、少し時間がかかりそうです。

 時間がかかるといえば、ワインは、樽で時間をかけて熟成させるお酒だとい
うことはご存じだと思いますが、ビールも樽で熟成させるものがあることをご
存じでしょうか。

 樽で寝かせたビールは、通称バーレイワイン(麦のワイン)と言われていま
す。アルコール度数も10%以上あるものが多いので、一般的なビールのよう
にゴクゴクと飲むものではありません。味も濃厚で甘味があって、なかなか複
雑な味がします。

 日本には、バーレイワインを製造している酒蔵は少ないのですが、いわゆる
クラフトビールを製造する小さな酒蔵は多数あります。現在、クラフトビール
のブームが訪れているようで、売れ行きが好調のようです。

 一時期は大手メーカーの発泡酒に押されて、どこも経営が苦しかったようで
すが、データーによれば、日本のクラフトビールのメーカーの約6割が増収に
なっているそうです。ただし、残りの4割は赤字転落や赤字が拡大していると
のことで、いわゆる勝ち組と負け組の差が広がりつつもあるようです。

 日本のクラフトビールも美味しいですが、カリフォルニアのクラフトビール
も美味しいです。カリフォルニアはクラフトビールのメッカで、多くの酒蔵が
ある地です。なんとなく大雑把な味のビールを連想するかもしれませんが、飲
んでビックリ!その繊細な作りには非常に驚かされます。正直に言いますと、
アメリカ人の舌は鈍感だという偏見があったのですが、クラフトビールのおか
げで、そんな失礼な偏見はなくなりました。

 ブームを受けて、街中にも日本や海外のクラフトビールを扱う店が増えまし
たし、一見、カメラ専門店であるかのようなネーミングの家電量販店でも、酒
類コーナーに沢山の種類のクラフトビールが並んでいます。ワインよりも、メ
ーカーや銘柄の味の違いが分かりやすいので、それほど舌に神経を集中させな
くても、銘柄の個性を楽しむことができます。


2018.08.21(火)【相続法改正 その2~短期配偶者居住権~】
                           (東京・鈴木龍介)

 前回につづき改正相続法(特集?)ということで、今回は、前回の「配偶者
(長期)居住権」に続き、「短期配偶者居住権」を取り上げます。

1.意義等
 被相続人の配偶者は、相続開始時に無償で居住していた相続財産である建物
(=居住建物)について、一定の期間、無償で使用する権利(=配偶者短期居
住権)を有します(改正法1037条1項)。

2.存続期間
 配偶者短期居住権の存続期間は、①遺産分割で居住建物の帰属が確定した日
又は②相続開始の時から6か月を経過する日のいずれか遅い日までです(改正
法1037条1項1号)。また、居住建物の取得者は、前記の場合を除き、配
偶者短期居住権の消滅を請求することができますが(改正法1037条3項)、
その場合でも、当該請求の日から6か月の間は配偶者短期居住権は消滅するこ
となく、存続します(改正法1037条1項2号)。

3.登記
 配偶者短期居住権は、配偶者(長期)居住権と異なり(改正法1031条1
項参照)、登記をすることはできません。

4.使用等
 配偶者は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使
用をしなければなりません(改正法1038条1項)。なお、使用することは
できますが、収益することまでは認められません。また、配偶者は、居住建物
の取得者の承諾がなければ、第三者に居住建物の使用をさせることはできませ
ん( 改正法1038条2項)。
 
5.権利の消滅等
 配偶者の死亡により短期配偶者居住権は、当然に消滅しますが、配偶者が前
記の使用に関する規定に違反したような場合には、居住建物の取得者は、配偶
者に対する意思表示により配偶者短期居住権を消滅させることができます(改
正法1038条3項)。また、配偶者が居住建物について配偶者(長期)居住
権を取得したときには、配偶者短期居住権は、消滅します(改正法1039条)。
配偶者は、配偶者(長期)居住権を取得した場合を除き、配偶者短期居住権が
消滅したときには、居住建物を居住建物取得者に返還しなければなりません
(改正法1040条1項)。

6.使用貸借・賃貸借・配偶者(長期)居住権の規定の準用
 使用貸借における期間満了等による使用貸借の終了の規定(債権法改正後
597条3項)・損害賠償及び費用の償還についての期間の制限の規定(債権
法改正後600条)、賃借権における賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了
の規定(債権法改正後616条の2)、配偶者(長期)居住権における譲渡不
可の規定(改正法1032条2項)・居住建物の修繕等に関する規定(改正法
1033条)・居住建物の費用の負担に関する規定(改正法1034条)は、
配偶者短期居住権について準用されます(改正法1041条)。


2018.08.20(月)【アマゾン書評と孫社長】(金子登志雄)

 お盆時期はいかがお過ごしでしたか。私は、事務所には2日だけ出ましたが、
主として自宅で9月の講義レジュメの作成や当社(アクモス)の定時株主総会
(9月下旬開催)の招集通知チェック等の時間に充てました。今回は2年任期
の監査等委員取締役として私も改選対象です。

 当社が上場した平成8年頃までは司法書士が上場会社の役員というだけで珍
しがられたものですが、その後、マザーズなどでIT系を中心に新興企業が続
々と登場し、その辺の世間知らずのお兄ちゃんのような人まで上場会社の役員
となり、全く尊敬されなくなりました。弁護士と同じく量が増えると価値がな
くなる典型例です。

 さて、拙著は法律の素人の方には不評で、「理論的詰めの甘い実務書」など
とボロクソにアマゾンの読者評で批判されていることは既述しましたが、お盆
で暇でしたので、久々に確認しましたところ、何と本年は連続して3つも5つ
☆評価を賜っていました。次のとおりです。

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1.組織再編の実務〔第2版〕/2018年5月25日
 ネットで探しても、他の組織再編に関する本でもなかったひな形が、ここに
はありました。金子先生、ありがとうございます。

2.事例で学ぶ会社法実務〔全訂版〕/2018年6月24日
 目の前の業務をとにかくこなした後、この本に出会いました。かゆいところ
に手が届く、と言うのでしょうか、業務を進める中で、誰に確認してもどこに
聞いても明確な回答が得られなかったことが、この本を読むことでほとんどク
リアになりました。株式関係の実務担当者必読だと思います。

3.募集株式と種類株式の実務〔第2版〕/2018年8月3日
 実務に即した内容でした。最終的な登記までを見通して株主総会議事録はど
うすべきか、種類株主総会は必要か、株主総会と共催できるか、共催する場合
の通知書や議事録の書き方など、実際に依頼を受けたら悩むであろう箇所が詳
細に説明してあります。種類株式というややこしい内容ですのに、金子先生か
らの説明をテーブルを挟んで拝聴しているような感じを覚えました。
 始めて複数の種類株式発行登記をすることになったため、内心焦っていまし
たが、この本のお陰で問題なく処理することができました。ありがとうござい
ました。
----------------------------------------------------------------------

 上記をみても高評価をくださるのは、法律に関して知識を有する実務家の方
ばかりです。読者層の厚い素人の方にも受け入れられる内容にしないと大量に
売れないのですが、両方から高評価を得るのは無理な話ですし、私にはその才
能がありません。引き続き実務家に評価される本を目指しましょう。

 ところで、お盆休みにみたユーチューブ「孫正義の生い立ち」は実に感動的
でした。下記で検索して、ぜひみてください。①②③のうち、②③は必見です。
彼の生家の住所は「無番地」だそうで、②をみると、アマゾン書評などに一喜
一憂している人間はいかに器が小さいかがよく分かります。
     https://www.youtube.com/?gl=JP&hl=ja


2018.08.10(金)【13-17日は本欄を休みます】(金子登志雄)

 お盆時期が近づくと登記申請中の案件も残り少なくなり、そろそろ夏休みに
せよという声が聞こえてきますので、来週は本欄を休ませていただきます。

 登記所が休みではないので、事務所は休みにしませんが、本欄の掲載その他
を担当している私の身内まで巻き沿いにはできませんので、ご了承ください。

 きっと火曜日担当の鈴木さんも、水曜日担当の酒井さんも、ほっとしている
ことでしょう。毎週1回とはいえ、継続するのは並大抵の苦労ではありません。
お二人とも、いつギブアップするかと思っていましたが、さすがは執筆経験豊
富な稀有な才能をお持ちですから、次から次へとネタを見つけてきてください
ます。

 立花さんも週1の1軍になるのは、まだ早いと月2程度の2軍で頑張ってく
れています。

 さて、8月は10月1日付組織再編の公告時期ですので、早めに公告するよ
うにしてください。さすれば、掲載を確認した後に訂正公告も間に合います。

 今年は9月末日が日曜日ですので、8月30日や31日の公告では期間不足
になりますのでご注意ください。その両日の官報は必見です。きっと間違った
公告が掲載されていることでしょう。

 なお、先日、依頼した官報公告に官報(号外第〇〇号)百六十頁と記載しま
したら一六〇頁と直されました。インターネット版官報をみたら、八十六頁と
「十」が挿入されていましたので問い合わせましたら、数字が三桁以上の場合
はアラビア数字的に漢数字を並べる記載方法にし、二桁数字のときは三文字に
するのだそうです。「ふ~ん」と反応するしかありませんでした。 

 会社法・商業登記のプロを目指す方は、この暇な時期を利用して『事例で学
ぶ会社法実務〔全訂版〕』に目を通し、完全に理解しているQにはA、読んで
内容を理解したQや繰り返し目を通す重要なQにはB、よく分からなかったQ
にはCをつける作業をしてください。1か月後に再度目を通すときはAを読む
必要はありません。そこでBがAに変化していれば、3度目はそれを読み飛ば
せばよく、厚い1冊も薄い1冊になります。3度通読すれば、地元で最も詳し
い司法書士といわれるようになることでしょう。

 それでは、20日にまた本欄でお会いしましょう。


2018.08.09(木)【花火】(仙台・立花宏)

 先日の日曜日の夕方,事務所での仕事が一段落したため,帰り支度をはじめ
た時のことでした。開けていた窓をしめていると,事務所の入っているビルの
向いにある仙台中央警察署からたくさんの制服姿の警察官の方々が出てこられ
るのが見えました。

 何かあったのだろうかと思い,様子を見ていましたが,街へと向かうその姿
は落ち着いた印象で,どうやら緊急事態ではなさそうです。

 そのとき,ふと思い出しました。その日の夜は,東北の夏祭りのひとつであ
る「仙台七夕」の前夜祭。花火大会の開催日でした。仙台で行われる花火大会
の中でも特に規模が大きいため,楽しみにしている方も多く,毎年,街はたく
さんの人出で大混雑となります。特に今年は開催日が日曜日にあたったため,
例年以上の混雑が予想されました。警察官の皆さんはその交通整理等のために
街へと向かったのでしょう。

 華やかで盛大な花火大会の陰では,こうして支えてくださるたくさんの方々
がいるのだと思うと,ありがたい気持ちになりました。

 その日,私が事務所でしていた作業は,8月25日(土)に開催される,
「全国青年司法書士協議会東北ブロック研修会in宮城」に使用するレジュメの
校正でした。

 その研修会では,一般社団法人商業登記倶楽部の主宰者である神﨑満治郎先
生がメインの講義をされます。商業登記に力を入れている司法書士にとっては,
神﨑先生のご講義を直接受講できることは何にも代えがたい夢のような機会で
あり,たくさんの方から参加申し込みがあったようです。

 私はその神﨑先生のご講義のあとに少しだけ,持ち時間をいただきました。
地元会としての出し物を担当せよとのご指示でした。神﨑先生の貴重なご講義
のあとの時間です。はたして,私の役割は何でしょうか。温泉地での研修会で
す。もしかしたら,ご講義のあとの疲れをいやすため,神﨑先生が温泉をお楽
しみなる時間を確保するという使命もあるのかも知れません。

 ただ,神﨑先生が商業登記を知り尽くした商業登記の神様という立場からの
ご講義であるとすれば,私は駆け出しの司法書士の立場から,日ごろ悩み,迷
って実務を行っているその姿をそのままさらけ出すことが役割なのだろうと思
います。お役にたてるようなお話ができるよう,努力する所存です。

 さて,この研修会,実行委員長の田邊先生をはじめ,たくさんの実行委員の
方々が,開催に向け,日夜,努力されています。私も,委員の皆様のメーリン
グリストに入れていただいており,その状況を確認させていただいております。

 受講される方々のため,そして,講師が気持ちよく講義をできるようにする
ため,寝る間も惜しんで準備を進められている様子を,いつも頭が下がる思い
で拝見させていただいております。

 ここ数年,いろいろな研修会で講師を担当させていただくことが増えてきて
いるのですが,自分が講師を務める研修会の準備状況を見せていただくという
機会は初めてかもしれません。貴重な経験だと思っております。

 講師は,花火大会でいえば花火のような役割かもしれません。
 お客様の視線は花火に集中するでしょう。しかし,花火を見る方が気持ちよ
く花火を楽しめるのは,交通整理等をされる警察官の方々のように,目立たな
いけれどそうしたイベントを支えているたくさんの方々がいらっしゃるからだ
と思います。むしろ,そうした方々がいるからこそ,気持ちの良い,素晴らし
い花火大会となるのでしょう。

 私は,今回の研修会という立派なイベントを作り上げ,そしてそれに協力し
てくださっているたくさんの方々のご尽力にお応えするためにも,精一杯,楽
しんでいただける,講義という花火を打ち上げなくてはならないと思いました。



2018.08.08(水)【足が遠のく】(藤沢・酒井恒雄)

 言いたくありませんし、聞きたくもないと思いますが、「暑い!」と言わず
にいられません。

 私は、寒い日よりも暑い日の方が好きなのですが、暑さにも限度というもの
があります。いつもなら、海やプールに行きたいなと思うのですが、そんな気
にもならない今日この頃です。

 海といえば、海水浴客の数が年々減少傾向にあるそうです。特に、若い世代
の海水浴離れが進んでいるそうで、小学生ですら海は嫌だという子が増えてい
るのだそうです。潮で体がベタベタになる、体が砂だらけになる、日焼けをし
たくないというのが、海に行きたくない主な理由らしいです。

 私が子供の頃は、波にもまれ、砂にまみれ、真黒に日焼けしたくて海に行っ
ていました。それが嫌なら、海水浴に行く理由がないことも頷けます。そろそ
ろクラゲも出る時期ですから、なおさら足が遠のくことでしょう。

 足が遠のくといえば、以前、定期的に訪問していたインキュベーション施設
(開業間もない会社や、成長し始めたベンチャー企業等が集まる施設)に、久
しぶりに行ってきました。施設の周辺の風景が大きく変わっており、そのこと
を事務局の方に話すと、「周辺はここ数年変わっていませんから・・・随分と
ご無沙汰なのではないですか?(笑)」と言われてしまいました。たしかに、
相談は電話やメールで済む場合も多く、面談も私の事務所に来てもらうことが
当たり前のようになっていました。

 現場に行って改めて思いましたが、面談だけでは把握できない情報を得るこ
とができますし、経済の潮流といいますか、場の空気感を知ることができます。
執務感覚を鈍らせないためにも、現場に出向く大切さを改めて認識しました。

 「暑さがやわらいできたら、また定期的に来てください。」という事務局の
方の言葉に、「いや、来週から定期的に伺いますよ!」と返事をしようと思い
ましたが、ふと窓の外の陽炎が目に入り、「はい、秋頃から再開しましょう・
・・。」と告げて現場を後にしてきました。


2018.08.07(火)【相続法改正 その1~配偶者居住権~】
                           (東京・鈴木龍介)

 ここから何回かに分けて、今回、成立した改正相続法について条文と要綱を
ベースに、重要な論点を整理してみたいと思います。

 1回目は、本改正であらたに誕生した「(長期)配偶者居住権」を取り上げ
ます。

1.意義等
 被相続人の配偶者が相続開始時に居住していた相続財産である建物(=居住
建物)について、遺産分割、遺贈又は遺産分割の審判により居住建物の全部を
無償で使用収益をする権利(=配偶者居住権)を取得することができます(改
正法1028条1項)。

2.存続期間
 配偶者居住権の存続期間は、配偶者が亡くなるまでの間です。ただし、遺産
分割協議、遺言又は遺産分割の審判で別段の定めをしたときには、その定める
ところによります(改正法1030条)。

3.登記
 居住建物の所有者は、配偶者に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせ
る義務を負います(改正法1031条1項)。

4.使用収益等
 配偶者は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使
用収益をしなければなりません。ただし、従前居住の用に供していなかった部
分について、これを居住の用に供することは可能です(改正法1032条1項)。
 配偶者居住権は、譲渡することができません(改正法1032条2項)。配
偶者は、居住建物の所有者の承諾を得なければ、居住建物の増改築や第三者に
居住建物の使用収益をさせることができません(改正法1032条3項)。
 配偶者は、居住建物の使用収益に必要な修繕をすることができます(改正法
1033条1項)。

5.費用の負担
 配偶者は、居住建物の通常の必要費を負担することになります( 改正法
1034条1項)。なお、配偶者が通常の必要費以外の費用を支出した場合に
は、所有者はその費用を償還しなければなりません(改正法1034条2項/
583条2項準用)。

6.居住建物の返還等
 配偶者は、配偶者居住権が消滅したときには、居住建物の返還をしなければ
なりません。ただし、配偶者が居住建物について共有持分を有する場合には、
居住建物の所有者は、配偶者居住権が消滅したことを理由としては、居住建物
の返還を求めることができません(改正法1035条1項)。なお、配偶者が
相続の開始後に附属させた物がある居住建物又は相続の開始後に生じた損傷が
ある居住建物を返還する場合には、使用貸借における借主による収去等の規定
(債権法改正後599条1項・2項)と賃貸借における賃借人の原状回復義務
の規定(債権法改正後621条)が準用されます(改正法1035条2項)。

7.使用貸借・賃貸借の規定の準用
 使用貸借における期間満了等による使用貸借の終了の規定(債権法改正後
597条1項・3項)、損害賠償及び費用の償還の償還についての期間の制限
の規定(債権法改正後600条)と賃貸借における転貸の効果(債権法改正後
613)、賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了の規定(債権法改正後
616条の2)は、配偶者居住権について準用されます(改正法1036条)。


2018.08.06(月)【取締役会への報告を要しないものとされた日】
                             (金子登志雄)

 土日に面白い質問を受けました。会社法372条1項に「取締役、会計参与、
監査役又は会計監査人が取締役(監査役設置会社にあっては、取締役及び監査
役)の全員に対して取締役会に報告すべき事項を通知したときは、当該事項を
取締役会へ報告することを要しない。」とあり、施行規則101条4項2号に
「取締役会への報告を要しないものとされた日」とあるが、この日は通知を発
信した日か、到達した日かという質問です。

 質問者(司法書士)によると、商事法務刊の三井住友信託銀行著『株主総会
・取締役会・監査役会の議事録作成ガイドブック』や桃尾・松尾・難波法律事
務所著『会社法の議事録作成実務』が発信説で記載されていたため、まさかと
思ったようです。

 私も質問者と同意見でしたので、興味深く発信説の根拠を推理してみました。
おそらく、施行規則の「取締役会への報告を要しないものとされた日」を取締
役会への報告を要しない内容だと判断して通知した日と解釈したのだと思いま
す。

 しかし、この「取締役会への報告を要しないものとされた日」は決議を要す
る書面決議の「取締役会の決議があったものとみなされた日」に対応していま
すから、「取締役会への報告があったものとみなされた日」のことで、到達主
義で考えるべきではないでしょうか。

 念のため、書面決議の場合は提案内容を取締役会議事録に記載しますが、提
案日については記載不要です。であれば、報告の場合も通知日を記載するので
はなく、取締役会の成立した日を記載すべきでしょう。

 金曜日の本欄で、株式の発行も契約だと説明しましたが、これと同様に、取
締役会への報告事項につき通知を発信しただけでは契約も合同行為も取締役会
の意思決定も成立しませんので、私も発信説には賛成することができませんで
した。


2018.08.03(金)【株主との契約の変更】(金子登志雄)

 月曜日の本欄で普通株式1000株のうちAさんの持ち株50株を優先株式
に変更するには、Aさんと会社の合意のほか、Aさん以外の普通株主全員の同
意が必要だと書きました。

 この「Aさんと会社の合意」に着目してください。株式の発行は個々の株主
と会社との株式割当契約により株主になるという前提が読み取れます。

 株式の発行が契約だといういうと違和感をお持ちの方もいらっしゃいますが、
法律行為の種類でいえば契約に間違いありません。ですから、ABCへの第三
者割当ては、Aとの契約、Bとの契約、Cとの契約の3つです。株式引受契約
の実行、株式発行契約、株式割当契約………場面ごとにいろいろ表現します。

 契約が成立して株式が発行されるのですが、私はこれにつき、会社の計算の
講義の際は、会社が株式を製造し、それを株主に売るのだと売買契約で思考す
ることを勧めています。

 すなわち、1株5万円で100株を発行するのは、会社が100株を原価ゼ
ロで製造し、1株5万円で株主引受人に売却するのだから、500万円がまる
まる儲けになり、この儲けは資本金と資本準備金に計上されると説いています。
 
 吸収合併の対価が全て新株の場合も原価ゼロで受け入れる消滅会社の正味財
産全部が合併存続会社のまる儲けになり、この儲けの全額が存続会社の株主資
本に配分して計上されるので、この儲けを株主資本等変動額というと説明して
います。

 ここで、では、なぜ、種類株式全部を既存の他種株式に変更する場合は種類
株主総会等の決議で済み、個々に変更契約をしないのかという疑問をお持ちの
方もいらっしゃることでしょう。

 これは個々の株式譲渡契約と制度としての株式交換契約との差と同じであり、
前者は個々の問題ですが、後者は法令による多数決に基づく制度変更です。反
対者は従うか、買取請求し株主契約を解除するしかありません。


2018.08.02(木)【一般社団法人の設立】(島根・根来川弘充)

 私が加入している任意団体が、今年5月に一般社団として法人化をしました。

 私は、設立時の社員兼理事となり、登記は別の司法書士が行ったのですが、
実際の内部の人間として関わった視点と、登記として依頼を受ける視点と違っ
たものとして見えました。

 もっとも、私が依頼をうける際は、同族会社のように、株主間の信頼関係が
強いケースが多いので、事例そのものが違うのですが、まったくの第三者が集
まった団体で協議をしながら、法人化を目指してきたのですが、これには大変
な時間を要したと思います。

 いずれにしても、社員総会や理事会で、様々な意見が出て、それを最大公約
数的に議案が修正されていくところに新鮮さを感じたのかもしれません。

 これから、この法人は、法人目的にしたがった事業計画をその方法もふくめ、
決めていかなければなりません。時間は要すると思いますが、理事として職責
が果たせるよう、誠実に対応したいと思います。



2018.08.01(水)【元号・西暦】(藤沢・酒井恒雄)

 今日から8月ですね。毎年恒例、週末は子供の蝉捕りにつき合わされていま
す。

 昨年の投稿にも書いたかもしれませんが、以前はこの辺りには生息していな
かったクマゼミが人気者になっています。一番よく捕れるのはアブラゼミ(羽
は茶色で胴体は黒色)、次がミンミンゼミ(羽は透明で胴体は緑と黒)で、ク
マゼミ(羽は透明で胴体は黒色で巨大)はなかなか捕獲できないレアものです。

 アブラゼミやミンミンゼミは、鳴き声を頼りに木に近づくと、大体は発見で
きるのですが、クマゼミは、鳴き声は聞こえるものの、その姿を発見すること
ができません。どうやら木にとまっている場所も、ほかのセミたちより高い所
のようです。視力が良くない私には余計に発見しづらいです。

 蝉捕りというと、私は勝手に「昭和感」を覚えてしまうのですが、携帯ゲー
ム機が普及している今の時代であっても、相変わらず子供たちが夢中になれる
遊びのようですから、昭和ならでは・・・ということではないようです。子供
たちが大きくなったときに、それぞれの「平成感」を聞いてみたい気がします。

 平成も、来年の4月には終わります。会社の原始定款の附則には、最初の事
業年度を記載することが多いと思いますが、来年の4月以降に最初の事業年度
が訪れるケースでは、年月日どう記載するか、個性が現れているようです。

 最初の事業年度を平成のままで記載している例、定款作成日も最初の事業年
度も西暦で統一している例、定款作成日は元号で最初の事業年度は西暦という
ハイブリッド型があるようです。

 最初の事業年度で元号が変更になっているのが確実であれば、平成と表記す
るのは正しくない気がします。年月日をすべて西暦表記で統一するとなると、
他の登記申請の添付書類も西暦で統一した方がよいような気がします。

 私は何となく、ハイブリッド型がよいと思っているのですが、一つの定款の
中に、元号と西暦が混在するのはよろしくないという意見もあると思います。
みなさんは、どう思われ、どう対応されているのでしょうか・・・・・・。


2018.07.31(火)【全国司法書士法人連絡協議会】(東京・鈴木龍介)

 全国司法書士法人連絡協議会(法人協)という組織をご存知でしょうか?

 法人協とは、①司法書士法人相互の情報交換の場の提供、②司法書士法人間
の交流の機会の確保、③司法書士法人制度の研究、④司法書士法人に関する制
度の改善の提言を主な目的として活動しています。

 今から7年前の平成23年に任意団体として設立され、平成25年に一般社
団法人に改組されとなりました。私は設立時から理事を務めております。

 現在、正会員である司法書士法人が63(全司法書士法人の約1割)、法人
協の活動に賛同いただいている賛助会員が20社となっています。

 法人協の一大イベントである「全国司法書士法人の集い」が去る7月28日
(土)に日司連ホールで開催されました。台風ということで開催自体が危ぶま
れましたが、約60名の方にご参加いただきました。

 具体的な内容としては、定時総会に続き、PART1として、その動向が注目さ
れている、いわゆる「資格者代理人方式」について会場も交えてディスカッシ
ョンを行いました。PART2では、日ごろの疲れた頭をクールダウンさせる意味
もこめ、金原亭馬治師匠による落語「代書屋」(司法書士のルーツ?)をお楽
しみいただきました。

 ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。そしてお疲れさまでした。

 「集い」のほかにも業務や法人の運営に有益なコンテンツも多数取り揃えて
おりますので、本コーナーをご覧いただいている司法書士法人の方々におかれ
ましては、是非とも入会をご検討いただければと思います。
         http://houjinkyou.com


2018.07.30(月)【出版記念講演会】(金子登志雄)

 金曜日は東京司法書士協同組合主催で『事例で学ぶ会社法実務〔全訂版〕』
の出版記念講演でした。組合編集本の広報の一環ですが、7月下旬の多忙な時
期にもかかわらず、ご参加いただいた方(90名程度)に感謝です。

 おかげさまで、同書は発売後3か月を経過した今日でも、アマゾン会社法本
の売れ行き順位で100番以内をキープしており、全訂版にしてはよく頑張っ
ています。

 毎日、下記をみて一喜一憂しています(株価と同じで上がったり下がったり
です)。
          https://is.gd/YSkCNG

 講演では当然ながら本の内容をメインにしましたが、出版後の新論点につい
て説明いたしました。

 いま普通株式1000株、(配当)優先株式100株を発行している非公開
会社があるとします。この会社の普通株主のうちAさんの50株だけ優先株式
に変更する場合の登記の添付書面につき列挙してください。
 
 Aさんと会社との変更合意書、Aさん以外の普通株主全員の同意書までは、
普通に勉強している方ならお気づきですが、それ以外に、普通株主全員を示し
た株主リストと優先株主の種類株主総会議事録又は定款が必要です。

 株主リストについては、Aは合意で、A以外は同意ですが、普通株主全員の
同意を要する場面であることに変わりがありません。優先株主の種類株主総会
議事録は会社法199条4項の問題です。同条項は株式の発行・処分について
の規定ですが、新しい株主が加わる点で本件も利益状況が同じです。定款で種
類株主総会を不要にしている場合は定款を添付することになります。

 なお、では、普通株式に優先株式と交換できる取得請求権がついている場合
は取得請求の行使の都度、優先株主の種類株主総会が必要かという議論に発展
しそうですが、取得請求は定款に定められた株主の内容であり、定款変更の際
に優先株主も同意していたとみられるため、この場合は除外されると考えます。


2018.07.27(金)【司法書士の生産性】(金子登志雄)

 安部チルドレンの杉田水脈(みお)議員が「LGBTは子供を作らないから
生産性がない」と雑誌に寄稿したことが話題になっていますが、子供のいない
安部総理はどんなお気持ちだったことでしょう。

 かつては某女性議員が生活保護世帯をやり玉にあげましたし、少数派や弱者
に対する攻撃を平気でする人が増え、「思いやり」の「美しい日本」はここ数
年でずいぶんと変わったものです。

 それはともかく、我々の仕事には生産性があるのかと考えてしまいました。
企業サイドからすればコスト要因であり、売上に何の貢献もしていません。

 しかし、某顧客から「おかげさまで先生のアイデアで登記が無事完了し、大
きなコストを小さなコストで済ませることができました」と感謝されたことが
何度かありますので、コスト減という意味では役立っているかもしれません。
 
 また、逆に、我々の仕事は法務スキルの製造販売業であって、十分に生産性
があるではないかと思ったりもしますが、顧客側はそう思っていないでしょう。

 ところで、日司連の掲示板(NSR3)に司法書士報酬アンケケートの投稿
がありましたので、「そういうアンケート結果の公表は高額報酬者に対する営
業妨害だ」という趣旨の投稿をしておきました。

 当事務所は決して高額ではありませんが、タレントのビートたけしさんの出
演料は1時間600万円だというネット投稿や、野球のイチローの時給はいく
らかなどと考えると、この道30年以上の私と、司法書士を開業したばかりの
方と同じ報酬額でよいのかというのも1つの議論のテーマでしょう。

 もっとも、登記の場合は結果が出れば誰が行っても同じですし、高額報酬の
見積もりを出して、「他の司法書士を探します」といわれるのも困りますから、
ついつい相場で請求してしまいます。

 ビートたけしさんは視聴率に貢献し、イチローは勝利に貢献していますが、
私は何に貢献しているのかとついつい自問してしまいました。


2018.07.26(木)【観葉植物】(仙台・立花宏)

 私の事務所には5つの観葉植物があります。2年ほど前,独立開業した際,
お祝いとして頂戴したものです。ありがたいことに,いまでも,5つとも,毎
日元気な顔を見せてくれています。

 先日,思い立って,感謝の気持ちを込めながら,これらの鉢を掃除しました。
5つとも異なる種類の観葉植物です。植物の世話なんてほとんどしたことのな
かった私にとって,当初,そのお世話はなかなか難しく,失敗の連続でした。

 きっと,彼らにとっては,あまり心地よい環境ではなかっただろうと思いま
す。順調に育ってきたものもあれば,枯れそうになってしまい,インターネッ
ト等で情報収集をして必死にお世話をし,なんとか持ち直したものもあります。

 あるものは水が足りなかったのか,なにか元気がないと思ったら,鉢の土が
からからに乾ききっていたことがありました。一方,元気そうだけど,なにか
いつもと違うような・・・,と思い,水をあげたら,鉢から水があふれるほど
になっていて,水のあげすぎということもありました。

 5つとも,水の量やタイミング等が全然別なのだとわかってきたのはつい最
近のことです。だめな世話人のもとで,よく2年間,我慢してくれたと思いま
す。私が彼らの世話をしているというより,彼らが私を育ててくれていたのか
もしれません。

 最近,ふと気づくと,疲れた時や仕事で悩んだ時,彼らの様子をみたり水を
あげたりして,気分転換をしている自分がいます。そうすると,なんとなく,
気持ちが楽になったり,やる気が出てきたりします。

 もしかしたら,贈り主の方達に代わり,私をあたたかく見守り,叱咤激励し,
そして応援してくれているのかもしれません。

 先日,2年前の開業当初,研修講師にお招きいただいた青森県司法書士会様
から再度ご指名をいただき,講師を務めてまいりました。

 受講してくださった皆様は,どのようにお感じになられたのでしょうか。2
年間で少しでも成長した姿をお見せでき、皆様のお役にたてる内容をお話しで
きたのであればよいのですが・・・。
 
 またいつか,もっともっと,成長した姿をお見せできるよう,彼らと一緒に
頑張ろうと思います。ありがとうございました。


2018.07.25(水)【簿外債務】(藤沢・酒井恒雄)

 ここのところ、登記所からの電話で涼は取っていませんが、別のことで背筋
がヒンヤリとしました。

 とある沖縄のリゾートホテルが、民事再生の申請を行ったというニュースが
飛び込んできました。そのホテルには、ちょっとした思い入れがありましたの
で、ホテル名を見たときに、すぐに「あのホテルだ!」と分かりました。

 以前、宿泊したことがあるのですが、部屋からみた海の景色があまりにも美
しかったので、今でも自分のツイッターのホームの背景や、LINEのアイコンに
使用しています。

 それなりに流行っているホテルであったと記憶していますので、民事再生?
と不思議に思ったところ、やはり本業では順調な売り上げがあったようです。
しかし、それを上回る債務があり、このままで行くと事業の存続が危ないと判
断したようで、今回の民事再生の申請に至ったようです。設備投資や他のホテ
ルの買収を行った際の、借入金債務の金額も大きかったようですが、それより
目に留まったのは「簿外負債」という4文字でした。

 詳しい内容は分かりませんが、いくつかのニュース記事を読んで要約します
と、リゾート開発事業を行っていた会社から、ホテル事業を分離して独立をし
た際に、簿外債務を引き継いでしまったようです。

 会社分割の手法を利用したと推測しますが、金融債務の割合に争いがあった
とか、分割会社(記事では旧親会社と表現されていますが、おそらく分割会社
のことだろうと思います。)の関係者の株式保有に関する訴訟を抱えていると
書かれていました。

 M&A案件では、一番陥りたくない状況ですよね。綿密な準備作業を経ても
こういう結果になってしまったのか、それとも詰めが甘かったところがあった
のか・・・・・。いろいろと想像してしまいますが、「簿外債務」という言葉
を見ると、他人事ながらゾッとしてしまいます。


2018.07.24(火)【所有者不明土地措置法】(東京・鈴木龍介)

 社会問題化している所有者不明土地への対応の一環として、去る平成30年
6月6日に「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」(平成
30年法律49号)が成立し、同年6月13日に公布されました。施行日は現
時点では未定ですが、公布の日から6か月以内とされていることから年内には
施行されることになります。

 まず、同法の特徴としてあげられるのは、国土交通省と法務省の共同所管に
なっており、国家的な施策という位置づけといえるかも知れません。

 その目的としては、所有者不明土地が増加することを踏まえ、国土の適正か
つ合理的な利用に寄与することとされています。

 ちなみに、同法で定義される「所有者不明土地」とは、“相当な努力が払わ
れたと認められるものとして政令で定める方法により探索を行ってもなおその
所有者の全部又は一部を確知することができない一筆の土地”です。

 もう少し具体的なところを見てみますと、同法には大きく3つの柱の対策が
講じられています。

 1つ目は、所有者不明土地を円滑に利用するためのものとして、①公共事情
における所有者不明土地の所有権取得の合理化・円滑化を図るための仕組み、
②学校・病院等の用地として所有者不明土地に利用権を設定できる仕組みが規
定されています。

 2つ目は、所有者の探索を合理化するためのものとして、①行政機関が所有
者の探索のために必要な公的情報を利用できる仕組み、②登記官が長期間の相
続登記未了土地について、その旨を登記簿に記録するという仕組みが規定され
ています。

 3つ目は、所有者不明土地を適切に管理するためのものとして、市区町村長
等が必要に応じて相続財産管理人等の選任の請求をすることができるという民
法の特則となる仕組みが規定されています。

 その他に登記関連で特筆すべき点として、登記官は一定の相続登記未了土地
の所有権の登記名義人となり得る者に対して、相続登記の申請をするよう勧告
することができるという仕組みも規定されています(当該相続登記申請には登
録免許税の特例が設けられています)。


2018.07.23(月)【猛暑お見舞い】(金子登志雄)

 地球はどうなってしまったのでしょうか。毎日毎日、猛烈な蒸し暑さで外も
歩けません。

 蒸し暑さのため駅から自宅まで歩くのも辛いので、たまにはタクシーで帰ろ
うかと思っても、駅のタクシー乗り場は雨の日と同じく長い行列ができていま
す。こういう光景は初めてです。

 インターネット情報によると、あまりの暑さに蚊も動けないようですから、
我々人間が動けないのは当然でしょう。

 私の子供時代はエアコンもクーラーも冷蔵庫もない時代でしたが、今のよう
な35度などという日もなかったため、うちわや扇風機で何とかしのげました。
スイカは井戸に吊るして冷やしました(水道もない田舎で育ちました)。

 日中は川に行き魚とりに夢中でしたし、夜は蚊帳を吊り、その中で家族みん
なで眠りましたが、蚊帳は涼しさを感じたものでした。

 ところで、こんな猛暑なのに、オリンピックのマラソン競技をして大丈夫な
のでしょうか。その対策として、午前7時スタートにしたようですが、そのた
めには午前4時か5時には起床して準備していなければならないでしょうから、
別の体調管理が必要であり、番狂わせの結果になる予感がします。

 こんな猛暑でも、司法書士は、登記所から電話が来ると、一瞬背筋が涼しく
なりますが、中には涼しさを超えて冷や汗という司法書士も多いことでしょう。
商業登記で冷や汗をかいたら、商業登記駆け込み寺の当事務所を頼ってくださ
い。冷や汗を止め、背筋が快適に涼しくなるアドバイスをいたしますので。


2018.07.20(金)【情報管理社会】(金子登志雄)

 A県の会社がB県、C県、D県の子会社に7月2日付で吸収分割しましたが、
D県の処理が遅いので、電話してみました。

 どうも、分割会社のAが登記中なので、それが終わるのを待っていたようで
す(Aが登記中なのは、BやCから2分の2申請が回っていたからです)。そ
こで、数年前から、Aが登記中であっても、現在はAの内容をD登記所でも確
認できるはずだと伝えましたら、その日に終わりにしてくれました。

 便利な時代になったものですが、ネット機能の発達は喜ぶべきことだけでは
ありません。例えば、登記所の審査でミスを見過ごして登記が完了すると、更
正登記が必須になるという不便さが生じました。

 先日、パソコンで映画「スノーデン」をみました。例の内部告発者の米国人
で現在ロシアに亡命しているパソコンオタクです(米国からみると不都合な国
家機密の窃盗犯・漏洩犯でしょうか)。

 有名なオリバー・ストーン監督の映画かどうかは分かりませんでしたが、現
在は、テロリストが携帯電話を使った瞬間に、その位置をキャッチして爆弾攻
撃をするのは朝飯前で(別人が使うとその人が被害者になります)、これが現
在の戦争でありテロ対策のようです。

 スノーデンは、横田基地で米国家安全保障局(NSA)に勤務していました
が、犯罪予防を超えて日本社会の我々の携帯電話さえ盗聴していたことを暴露
していました。今や、米国に逆らうと、一瞬にして日本全土が真っ暗闇にされ
てしまうようです。
     https://is.gd/sGBel2

 まさかと思うでしょうが、グッド・ワイフという米国の女性弁護士映画でも
夫の州知事家族全員の電話やパソコンを政府機関らしきところが盗聴している
場面が頻繁に出てきましたから、米国では、国家の情報収集には罪の意識が低
いようです。あのオバマさんですら、スノーデンを犯罪者扱いしていました。

 この点ではトランプさんの登場は歓迎でした。前政権まではイデオロギー重
視でロシア、中国、北朝鮮、イスラムという異文化を敵扱いし、盛んに盗聴を
含む諜報活動をしていましたが、トランプさんはイデオロギーなどどうでもい
い、米国を儲けさせてくれればよいというビジネスマンですから、北の将軍様
とも握手することができたわけです。

 最近の日本のネットでは、英国BBCの「日本の秘められた恥」という伊藤
詩織さんを扱ったドキュメンタリーが話題でしたが、すぐに視聴不能にされま
した。豪雨被害中及びオウム死刑の前日の赤坂自民亭の宴会についてもBBC
ニュースを視聴できません。政権に近い筋が組織的に不都合なネットを監視し
削除しているとしか思えません。
 https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-44638987

 誠にネット社会は便利であると同時に負の側面も想像以上に大きいものです。
こういう監視あるいは管理された報道に基づく情報社会では洗脳された愚かな
民ばかりで真の民主主義は成り立たないのではないかとも感じました。


2018.07.19(木)【会計監査人の登記】
(東京・古山陽介)

 先週の金曜日に、定時総会関連の登記申請がひと段落し、勝手に総括すると、
今年の個人的なトレンドは、会計監査人関連の登記でした。

 ここ数週間で申請した会計監査人に関する登記は次の8パターンになりまし
た。

1.会社法第338条第2項に基づく会計監査人の重任
 →最もオーソドックスなパターンで、特に会計監査人に変更が生じない会社

2.上記重任+会計監査人の名称変更
 →金子先生も先日投稿されていました新日本監査法人を会計監査人とする会
  社

3.会計監査人を置く旨の定めの設定に伴う会計監査人の就任
 →上場準備の会社で、定款変更により会計監査人設置会社となったことに伴
  い、会計監査人を選任した会社

4.会計監査人を置く旨の定めの廃止に伴う会計監査人の退任
 →大会社の適用を受けなくなったことに伴い、定款変更で会計監査人を置く
  旨を廃止した会社

5.会計監査人の退任及び就任(いわゆる交代)
 →変更後の会計監査人を別の監査法人にする会社もあれば、個人の公認会計
  士に変更する会社もありました。

6.会計監査人の辞任
 →任期満了時に次期の契約更新を監査法人側から拒否され、辞任届を提出し
  てもらった会社

7.会計監査人の退任
 →会計監査人側から上記6のような書類が提出されないため、会社側から会
  計監査人の不再任の決議を行い手続を行った会社

8.会計監査人の就任
 →上記6と7の会社で、後日、新たに監査法人と監査契約を締結し、臨時株
  主総会において選任を行った会社

 以上のように、会計監査人の変更であっても、この短期間でこれだけのパタ
ーンに出くわし、改めて、6月開催の定時総会時期は、役員変更登記の奥深さ
を実感するのでした。


2018.07.18(水)【定足数】(藤沢・酒井恒雄)

 先週、金子先生が株主総会の定足数に関する投稿をされていました。

 その中で、役員の選任に関する特則普通決議(会社法341条)のことを書
かれていましたが、私も定款の添付を失念して補正になった経験があります。

 株式会社の定款には、9割と言っても過言ではないほど、役員選任に関する
株主総会決議の定足数について、「定款の別段の定め」があるのではないかと
思います。

 ただ、私の経験では、この特則が発動することは稀で、議決権を有する株主
の過半数以上が出席している場合が殆どです。取締役や監査役の選任について、
定款の添付が必要であるという認識は、頭の隅っこに追いやられています。

 定足数といえば、特例有限会社の特別決議の要件を読み誤ったことがありま
した。ご存じのとおり、特例有限会社の特別決議は、「出席株主の議決権数」
ではなく「出席株主の数」で定足数を判断します(整備法14条3項)。

 つい、出席株主の議決権数に気を取られて、出席株主の数が不足しているこ
とに気付かなかったのです。

 言い訳をするなら、株式会社に関する依頼が立て続けにあった中に、ひょっ
こりと現れた特例有限会社の依頼でした。議事録の表題は株主総会議事録です
し、出席株主の記載方法も株式会社の場合と変わらないので、見事にスルーし
てしまいました。

 結局、登記申請の直前に気付いたのですが、議事録を受け取った時点で指摘
することができず、なんとも申し訳ない気持ちで、決議の取り直しが必要であ
ることを依頼人に説明したことを覚えています。


2018.07.17(火)【相続法改正のアウトライン】(東京・鈴木龍介)

 前回、触れました相続法改正の続報+αです。

 今回の相続法改正-正式には「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法
律」(平成30年法律第72号)が7月6日に成立し、7月13日に公布とな
りました。施行日はこれから政令によって決定されますが、3段階施行となり
ます。また、あわせて自筆証書遺言を法務局で保管する制度に関する「法務局
における遺言書の保管等に関する法律」(平成30年法律第73号)が同時に
成立・公布されました。

 あらたな相続法の主な改正項目ですが、「法律案要綱」を紐解いてみますと、
以下のとおりです。

一 配偶者の居住の権利
 1 配偶者居住権
 2 配偶者短期居住権
二 遺産分割等に関する見直し
 1 婚姻期間が二十年以上の夫婦間における居住用不動産の遺贈又は贈与
 2 遺産の分割前における預貯金債権の行使
 3 遺産の一部分割
 4 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲
三 遺言制度に関する見直し
 1 自筆証書遺言の方式の緩和
 2 遺贈義務者の引渡義務等
 3 遺言執行者の権限の明確化
四 遺留分制度の見直し
 1 遺留分の帰属及びその割合
 2 遺留分を算定するための財産の価額
 3 遺留分を算定するための財産の価額に算入する贈与の範囲
 4 負担付贈与がされた場合における遺留分を算定するための財産の価額
   に算入する贈与の価額等
 5 遺留分侵害額の請求
 6 受遺者又は受贈者の負担額
 7 遺留分侵害額請求権の期間の制限
 8 その他
五 相続の効力等に関する見直し
 1 共同相続における権利の承継の対抗要件
 2 相続分の指定がある場合の債権者の権利の行使
 3 遺言執行者がある場合における相続人の行為の効果等
六 特別の寄与
七 その他

 相続法改正については(も)、自分自身できちんと整理ができていないので、
本コーナーを使わせていただき、少しネジ巻いて勉強しようと思います。


2018.07.13(金)【法定多数の賛成を得た】(金子登志雄)

 次は、ある1単元100株の上場会社の昨年の定時株主総会議事録の抜粋で
すが(ABC………は本欄で付したものです)、一部を変更したものです。 
---------------------------------------------------------------------
 A 基準日現在の発行済株式の総数     1021万5400株
 B この議決権を有する総株主数            4316名
 C この議決権の総数               9万6983個
 D 本日出席株主数(議決権行使書を含む)        970名
 E この議決権の個数               4万5716個
---------------------------------------------------------------------

 発行済株式総数(A)を1単元の100で除した数よりもCの数値が少ない
のは、上場会社では市場買取や単元未満株式の買取請求などで自己株式数が多
いためですが、いちいち自己株式〇〇株、相互持合株式〇〇株などとは記載し
ません(法務省HPの中小企業の書式には記載されていますが必要的記載事項
ではありません)。

 上記をみるとDがBの半分にも達しませんが、上場会社ではこれが普通です。
議決権行使書を送付しない一般株主が圧倒的多数だからです。

 問題はCとEの比較です。上記をみると過半数の定足数を満たしていません。
これでは定款変更決議や役員選任決議が可決しませんから、定款を添付して定
足数がCの3分の1以上になっていることを証明しなければなりません。

 定足数を満たしていない可能性まで想定していなかったため、これを見過ご
して補正になったことが過去に1度ありましたが、今年も同じ過ちをしてしま
いました。登記所さんは、こういう部分を実によくみているものです。習性に
なっているのでしょうか。
 
 議決内容については、株主が多数の上場会社では満場一致の決議ということ
がありませんので、議案ごとに「過半数の賛成を得た」あるいは「出席議決権
の3分の2以上の賛成を得た」などと記載するのが通常です。ここの部分は私
も慎重にチェックしていますが、意外に神経を使うところです。

 ところが、その慎重なチェックを不要とする記載例が某著名上場会社で登場
しました。何と全ての議案につき「法定多数の賛成を得た」でした。「特別決
議の要件を満たす賛成を得た」という表現は知っていましたが、こんな便利な
表現は初めてでした。

 問い合わせたところ今年から使い始めたそうです。こんな便利な表現は真似
しないと損ですから、6月決算の当社(アクモス)でも、9月の定時株主総会
議事録で、さっそく真似してみるつもりです。きっと数年後には全国に普及し
ていることでしょう。


2018.07.12(木)【議事録の保存期間】(仙台・立花宏)

 「株主総会議事録や取締役会議事録は,10年経ったものは廃棄してよいで
しょうか」, いつも会社の登記をご依頼いただいているお客様から,こんなご
相談をいただきました。

 どうやら,保管するスペースに限りがあるため,PDF等の電子データにし
て保管しようと考えたようです。さて,どう回答すべきでしょうか。

 たとえば,会計帳簿や計算書類等であれば,会社法上,保存期間は10年と
定められています(会社法432条2項,435条4項)。また,計算書類等
は,一定の期間,本店や支店に備え置き,株主や債権者は閲覧等をすることが
できるとされています(会社法442条)。
 
 では,株主総会議事録や取締役会議事録に保存期間はあるでしょうか。

 会社法の条文上は,一定の備え置きや,一定の方あるいは場合に閲覧等をさ
せる義務があることは定められていますが(会社法318条,371条),保
存期間は定められていません。

 これをどう考えるかですが,会社が存続する限り,保存義務がある(※),
あるいは,合理的理由があれば廃棄可能だが,備置期間経過後も当然には廃棄
することはできない(※)という見解が主流のようです。一方で,保存期間は
10年と解してよいという見解もあるようです(※)。

 いろいろな見解があるようですが,実務家である司法書士の立場からいえば,
備置期間が経過したとしても,廃棄をされるのはお避けいただいた方がありが
たいと考えております(あくまでも私見です)。

 めったにないことだとは思いますが,10年以上前の株主総会議事録や取締
役会議事録に記載されている内容だけでなく,その原本が登記手続等に必要と
なることもありえるからです。

 たとえば,この会社(取締役設置会社)が,他の会社と共同して合同会社
(合弁会社)を設立し,代表権のない業務執行社員となっていたとします。そ
して,10年以上経過後,この会社が代表社員に就任したとします。この場合,
この会社の職務執行者を登記する必要があります(会914条8号,915条)。
その登記をする際,選任を証する書面として,登記実務上,取締役会議事録を
添付する必要があるとされているのです。

 この取締役会議事録はいつの議事録でしょうか。
 法人は業務執行社員となった際に職務執行者を選任する必要がありますので
(会社法598条),原則として10年以上前に業務執行社員となったときに
選任手続をした取締役会議事録ということになるのだと思います。

 極端な一例ではありますが,そのようなに,過去の議事録が手続に必要とな
ることもあり得ますので,議事録はデータだけではなく,原本の保管をお願い
できればと思います。

(※)参考文献
岩原紳作編『7 会社法コンメンタール 機関[1]』(商事法務)307頁
落合誠一編『8 会社法コンメンタール 機関[2]』(商事法務)322頁以下
奥島孝康・落合誠一・浜田道代編『新基本法コンメンタール会社法2【第2版】』
56頁


2018.07.11(水)【振り仮名】(藤沢・酒井恒雄)

 商業・法人登記の申請書(申請情報)に、申請人の商号又は名称の振り仮名
の記載が必要になってから、約4か月が経ちました。

 私は、未だにうっかりと振り仮名の記載を忘れてしまいます。特に、人によ
って読み方が変わるとは思えない商号や名称は、記載を忘れる確率が高いです。

 例えば、株式会社めぐみ(架空の会社です。)の商号は、誰が読んでも「メ
グミ」です。そんな場合には、すっかりフリガナのことなんて忘れてしまいま
す。

 ところで、私は、この振り仮名の記載が必要になったおかげ?で、とある会
社さんの商号の正しい読み方を、初めて知ることになりました。

 株式会社大春(架空の商号にしてあります。)という会社がありました。そ
の会社は「オオハル」と読むものと思っていました。何故なら、担当の税理士
さんも「オオハルさん」と呼んでいたからです。また、会社に電話した際にも
「オオハルさんのお電話でしょうか?」と尋ねると、「はい、そうです。」と
返事があったからです。

 しかし、手続きの改正で、登記をするときに振り仮名の記載が必要となった
ことを伝えた際に、正式な読み方は「ダイハル」だということが分かりました。

 読み方を間違えていたことを謝罪したところ、通じればどっちでもいいので、
「オオハル」でも「ダイハル」でも、好きなように呼んでもらっていいとのこ
と。誤認がどうこうという話は端に置いておいて、なんとも大らかな対応に、
社長や会社自身の余裕を感じました。実際、この会社はずっと黒字経営のよう
です・・・・・。


2018.07.10(火)【最近の民事法制の動向】(東京・鈴木龍介)

 このところ、私たちの業務にも関係の深い法改正等が目白押しです。という
ことで、自分の備忘と整理も兼ねまして、最近の民事法制の動向(改正や検討)
を概観(細かいところは、機会を見つけて別途ということで)しておきたいと
思います。

 まず民法ですが、債権関係については成立し、平成32年4月1日から施行で
す。成年年齢関係(20歳→18歳)についても成立し、平成34年4月1日か
ら施行です。

 さらに相続関係については今国会の会期が延長され、7月6日に成立しまし
た(施行日は未定)。また、特別養子関係については法制審議会での検討が開
始されています。そして、物権関係も改正の動きがあるとの噂を耳にします。

 次に会社法ですが、法制審議会での改正の論点整理的な中間試案に対しての
パブコメも終え、要綱のとりまとめに向けての議論がなされており、今年度中
には法務大臣への要綱の答申がなされそうな感じです。

 また、上場会社の企業統治指針である「コーポレートガバナンス・コード」
が本年6月1日に改訂されました。なお、商法ですが、運送・海商法制の現代
化を図るとともに、表記を平仮名・口語体とする改正が成立しています(施行
日は未定)。ちなみに、これで、いわゆる六法がすべて現代語化されたことに
なります。

 その他ですが、社会問題化している所有者不明土地問題の対応に資するもの
として、「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」が成立し、
来年の6月までには施行されます。また、戸籍法と民事執行法については、法
制審議会での検討が進行中です。


2018.07.09(月)【災害対策】(金子登志雄)

 中国地方を中心に豪雨被害に遭われた方にお見舞い申し上げます。岡山や広
島の知り合いの司法書士の方々は無事だったのでしょうか。

 わが政権も「美しい国」とか「日本を守る」と言っているのですから、軍事
の防衛問題よりも確実に押し寄せる災害の防衛対策に予算を使ってほしいもの
です。中には人災といえる部分も多いはずです。川の氾濫など、甲斐の信玄公
の時代でもあるまいしと思いました。

 司法書士にとって身近な問題では、設立登記などを受託していた場合に、こ
ういう災害が生じた場合の救済措置はあるのでしょうか。

 災害そのものではありませんが、先日、りそな銀行で電子納付を含む電子振
込が6時間程度できなかったことがあり、あせりました。幸い、午後1時ころ
には復旧しコトなきを得ましたが、もし、3月31日など重要な日の午後全部
にこれが生じたら、債務不履行など多くの支障を生じたのではないかと気にな
りました。

 PCに詳しくない私はバックアップなどしていませんが、設立登記などが多
い場合(例えば、この7月2日がそうでした)には、2つのPCに電子申請準
備書類を保管し、1つが壊れても、もう1つで対応することができるようにし
ています。PCの故障は可能性としては比較的高いからです。

 家の鍵も財布も常に予備を持っており、こういう面では慎重ですし、自分の
身に何かあったら、ESGの仲間にすぐにフォローしてもらい、顧客に迷惑を
かけないようにしていますが、1人事務所の司法書士の皆様はいかがですか。


2018.07.06(金)【1日天下】(金子登志雄)

 6月も過ぎ3月決算会社の定時株主総会も終わり商業登記業務の書き入れ時
も一段落いたしました。

 顧客数の多い司法書士は今でも多忙でしょうが、私が昼食もとれないほど多
忙だったのは7月2日のたった1日だけでした。設立や会社分割もあったため、
その日の申請が集中したためです。

 定時総会時期の6月下旬そのものは、そう多忙ではありませんでした。上場
会社は総会招集通知が公開されていますので、それをみて申請書案を早くから
作っていましたし、未公開会社の議事録もメールの添付ファイルで案の段階か
ら送付されてチェックを依頼されていましたので、同じく申請書案を事前に作
っていたため、緊急事態が生じなかったからです。

 この時感じたのは、やはり役員の任期が登記記録からは判明しない面倒さで
した。旧商法時代は「就任後2年」と決まっていたため、登記記録だけで判断
することができたのに、現在は、各社マチマチですし、登記記録からは「選任
時」が分からないことです。3月決算会社で4月1日就任と登記記録にあって
も、3月30日以前の選任と3月31日以降の選任かによって、1年の任期の
差が生じてしまいます。

 7月2日時点の申請で、最も神経を使ったのは登記内容そのものよりも管轄
でした。登記内容のミスであれば補正で挽回することができますが、管轄相違
だけは救いようがありません。特に、設立や新設分割ではこちらで管轄先を選
択しなければなりませんし、組織再編のように連件申請の場合は経由先管轄を
選ばねばならないため、何度も確認しました。

 仕事が趣味の私としては、昼食もとれないほど多忙であることは充実した日
であり喜びの日です。また、こういう日が到来しないかなと思っていますが、
せめて、年に3日は欲しいところです。


2018.07.05(木)【添付書面の基準日】(金子登志雄)

 7月1日(日曜日)に東京都千代田区の新日本有限責任監査法人がEY新日
本有限責任監査法法人と名称変更し、2日の月曜日に登記申請されましたが、
登記の完了は夕方ぎりぎりでした。

 同監査法人を会計監査人としている全国の会社の登記に影響するためか、通
常は、こういう名称変更登記は申請日の午前中の早い時期に終わります。

 私も同法人を会計監査人とする登記依頼を受けていたため、名称変更登記の
完了を待っていたのですが、午前中に終わらなかったため、同法人を管轄する
東京法務局に午後2時ころ電話してみました。

 電話を受けた職員の話では「登記事項が名称変更だけではないため、すぐに
は終わらないようだから、かまわずに先に会計監査人変更登記を申請してほし
い」とのことでした。

 もちろん、そうしましたが、もし、「新日本」がこの名称変更登記を7月3
日に申請したら、7月2日に会計監査人の名称変更登記の添付書面欄の次をど
う判断するのでしょうか。
 
  会計監査人の資格証明書     
   添付省略(会社法人等番号 0100-05-005059)

 7月2日に登記官が調査しても。上記の法人等番号では名称変更のことが何
も分かりません。3日以降に審査すれば、それが分かります。

 2日申請の登記の添付書面で2日に審査したら名称変更の事実を判断できな
いのなら、この登記は却下しなくてよいのでしょうか。

 しかし、2日の申請で、印鑑証明書が添付書面になっているとして、これを
添付漏れしてしまい、3日に印鑑証明書を取得して添付すれば登記は無事に受
理されます。

 つまり、添付書面が揃っているかどうかは申請時基準ではなく審査時基準で
運用されています。これとの平仄からすれば、「新日本」の名称変更登記が3
日以降になされても2日に会計監査人名称変更登記を申請しても大丈夫そうで
すね。



2018.07.04(水)【詐欺メール】(藤沢・酒井恒雄)

 先日、明らかに詐欺と分かるメールと、一見、詐欺とは分からない2通のメ
ールが届きました。明らかに詐欺と分かるものは、外国語を翻訳ソフトで日本
語に直訳したような文章で、「あなたは、それを買います。ここから申込みま
す。」といったような、日本語自体がおかしいものでした。

 見るからに怪しいので、これで引っかかる人がいるのだろうか?と思いつつ、
イラッとしながら変なところをクリックしないように削除しました。

 一見、詐欺とは分からないメールには、まんまと引っかかりそうになりまし
た。私は、たまに海外のショッピングサイトで買い物をするのですが、そのメ
ールの差出人はショッピングサイトの運営会社でした。

 そこには、商品代金の支払い方法が記載されていました。たしかに、数日前
に商品を購入していましたので、何かの不具合で、決済が未了になったのかな
?と思いつつメールを読んでいました。

 もう一度冒頭に戻ったところで、これが詐欺であることに気づきました。メ
ールの外観は、ショッピングサイトが正式に発信する文章とレイアウトが全く
同じでした。本物と同じショッピングサイトのロゴマークも入っています。差
出人のアドレスも正式なものと似たような感じです。

 詐欺と気づいたのは、私の宛名でした。宛名が、私のメールアドレスそのも
のになっていたのです。そのショッピングサイトを利用するときは、登録した
IDを利用しています。

 正式なメールであれば、宛名がIDになっているはずでした。どういう仕組
みで、アドレス情報が漏れて、更にショッピングサイトを利用したことが分か
ったのかは不明です。うっかり自分のカード情報等を相手に知らせてしまうと
ころでした。感心している場合ではありませんが、実に巧妙に出来ていました。
皆様もお気を付けください。


2018.07.03(火)【社外役員の登記の歴史】(東京・鈴木龍介)

 今回は、予告しましたとおり「社外役員の登記の歴史」を取り上げてみたい
と思います。

 社外役員のうち、最初に商業登記に登場したのは「社外取締役」です。これ
は、平成13年の商法改正(平成13年法律149号/平成14年10月1日
施行)において、定款の定めに基づく社外取締役の責任限定契約に関する規定
(以下、「責任限定規定」といいます。)ならびに責任限定規定の登記が創設
された時で、責任限定規定の対象である社外取締役を明らかにすることを目的
にしたものでした。

 ただし、責任限定規定を設けていることを要件としなかったため、社外取締
役に該当する者のすべてが登記の対象となり、おおよそ責任限定規定と縁のな
いような中小企業でも社外取締役の登記をすることとなりました。

 なお、平成14年の商法改正(平成14年法律44号/平成15年4月1日
施行)で導入された委員会等設置会社(現「指名委員会等設置会社」)と重要
財産員会(現「特別取締役の議決の定め」)制度を採用する会社については、
社外取締役の選任が要件とされていましたが、すべての社外取締役がすでに登
記事項となっていた関係で格別に社外取締役の登記を求める必要はありません
でした。

 その後の会社法制定時に、社外取締役の登記は、社外取締役の存在が前提と
なる制度を採用している会社のみが行うということになりました。具体的には、
①委員会設置会社(現「指名委員会等設置会社」)、②特別取締役の議決の定
めを設けた会社、③責任限定規定を設けた会社です。そこに、平成26年の会
社法改正(平成26年法律91号/平成27年5月1日施行)で導入された監
査等委員会設置会社についても社外取締役の存在が前提であることから、社外
取締役の登記が義務づけられました。

 「社外監査役」の登記については、会社法制定時に初めて登場します。これ
は、責任限定規定の対象が社外監査役に広げた関係と、半数以上の社外監査役
が要件となる監査役会設置会社である旨が登記事項に加わったことによります。

 一方、平成26年の会社法改正で責任限定規定の対象が社外取締役から非業
務執行取締役に、社外監査役から監査役に拡大されたことから、責任限定規定
に関する社外取締役・社外監査役の登記は廃止となりました。

 現在、法制審議会で審議中の会社法改正において、公開・大会社かつ有価証
券報告書提出会社に社外取締役を置くことを義務付けるかが検討されています
が、仮にこれが採用された場合には、当該会社に社外取締役の登記が必要とい
うことになるかもしれません。


2018.07.02(月)【人口減少とAI】
(島根・根来川弘充)

 「今のお仕事のほとんどが、AIに変わって、どんどん無くなるらしいよ。」
小学生の子供が、ふと私に話してきました。

 生産業だけでなく、サービス業まで、AIが人間の仕事をとっていく時代は、
そう遠くないそうです。

 人口3万人ちょっとの私が住む町でも、もちろんコンビニがあるのですが、
深夜に行くと、60代以上の方をよく見かけます。AIのおかげで、これらの
方の負担が無くなるのであれば、それはそれで、歓迎すべきことだと思います。

 これから人口が減少していく日本においては、AIに仕事を任せていくこと
は、時代が求めていることで当然のことではないかと思えてきます。

 一方で、司法書士という仕事も、AIにとって代わられる仕事になるのだそ
うです。

 近年、司法書士試験の受験者が減っているとのことで、人口減少は、もちろ
んあるのでしょうが、おそらくは、司法書士の将来を不安に思う人が多いとい
うことなのかも知れません。

 もし、AIとは、莫大なデータの分析により、合理的な結論を導くものだと
仮定するのであれば、司法書士の仕事は無くなることはないのではないかと、
私は楽観視しています。なぜなら、人間社会は、非合理的なところがたくさん
ありますから。

 7月1日は、本年の司法書士試験の開催日でした。司法書士を目指す方々に
は、是非希望をもっていただきたいと思います。


2018.06.29(金)【定款の作成者は誰か】(金子登志雄)

 昨日、公証役場に行く用事があったので、公証人に「発起人が甲、電子定款
作成及び認証につき司法書士のAとBを連名にして委任状を作成した場合、A
が定款作成を担当し公証役場に電子申請し、それを代理人のBが公証役場を訪
問し認証手続することに何の問題もないと考えるが、どうか」と聞いてみまし
た。

 すなわち、私の思考は、定款作成者(本人)は発起人の甲、Aは委任を受け
て作成代理をしただけ、Bは委任を受けて認証代理をしただけだというもので
す。

 ところが、公証人は「定款作成者であるAが電子申請したのだから、作成者
であるAがBに別途委任しないと認証は困難だ」という見解でした。作成者は
発起人甲ではなくA自身と捉えているようです。

 そこで気が付いたのですが、紙定款と電子定款については、実務上、作成者
概念が異なるようです。公証人法をみても、紙定款の場合は発起人甲の押印に
つき、代理人が「発起人の押印を(代理して)自認」するのに対し、電子定款
の場合は「電子署名者(又は代理人)が電子署名を自認」することになってい
ます。

 そうすると、他の地での電子定款で現地の司法書士Cに対しAが委任するの
は復代理とはいえなくなりそうです。

 なぜなら、電子定款の作成者が司法書士Aだとしたら、CはAの直接の代理
人であって、本人である発起人甲の代理人ではないことになるからです。Cも
Aの電子署名を自認するのであって、発起人の押印を自認するわけではありま
せん。

 この場合、Aの電子署名をCが代理して自認するなら、発起人の委任状への
押印については誰も自認しなくてよいのでしょうか。

 ということで、連名の委任状だけで一人が作成者、残りが公証役場に訪問す
るのは現実の実務では困難のようですが、定款の代理権については、まだまだ
不明な点が多いようです。


2018.06.28(木)【法人である労働組合の合併解散】(金子登志雄)

 きたる10月1日にA上場会社の子会社であるB社とC社が合併します。

 Cは私の登記の顧客ですが解散消滅する側であるため、合併登記の依頼が私
に来るかどうかは不明です。

 そんなとき、Cの総務部の紹介でC労働組合(法人)の解散登記の依頼が舞
い込みました。

 労組どころか会社以外の法人の登記は私のところにはめったに来ませんし、
知識もないのですが、引き受けた以上は責任をもって対応しなければなりませ
ん。あわてて、知り合いの司法書士らに声をかけましたら、だいぶ資料が集ま
り、今後の見通しがつきほっとしました。

 以下は勉強の成果です。

1.C社の合併解散に伴い、C労組も消滅するか。
 別法人ですから、しません。合併会社Bの第2組合として存続することも可
能です。

2.労組の合併はどうするのか。
 労組法を含め合併についての規定がありません。C労組が解散し組合員と財
産をB労組が承継することになります。

3.解散は総会の特別決議か、組合員全員の同意か。
 規約で解散事由を定めた場合を除き、労組法で組合員の4分の3以上の多数
の賛成となっていますが、多くの労組で「総会決議+無記名投票で4分の3以
上の同意=解散決議」と定めているようです。 

4.C労組が所有して保養所などの不動産の移転登記はどうなるか。
 ここまでは全く考えていませんでしたが。これについては、きんざい「登記
情報」587号8頁以下の須藤司法書士の論文をご覧ください。共通支配下関
係にない合併における労組の合同をも深く経験済みのようで、電話で貴重なア
ドバイスを賜りました。



2018.06.27(水)【連結決算?】(藤沢・酒井恒雄)

 ある税理士さんから、連結決算をする場合、会社法上何か手続きが必要かと
いう質問を受けました。さてこの質問には何と答えたらよいでしょうか。

 「連結決算」と言われて、始めは連結計算書類の作成のことかな?と思いま
した。しかし、その税理士さんの顧問先は、殆どが中小規模の非公開の株式会
社でした。

 連結計算書類を作成するのであれば、会計監査人の設置が必要になります。
もちろん、中小規模の非公開の株式会社であっても、監査役設置会社であれば
任意に会計監査人を置くこともできます。しかし、実例は殆どないのではない
かと思われます。

 おそらく連結納税のこと言っているのだろうと考え、念のため事情を聞いた
ところ、やはり連結納税のことでした。

 連結納税制度は、グループ会社を一つの事業体とみなして、一括して法人税
を納税する制度です。グループ法人税制と異なり、届出をしない限り連結納税
の対象にはなりません。税務署に対する届出だけですので、直接的に会社法上
の手続きや登記が必要になることはないと思われますが、改めてグループ会社
全体の役員構成を見直す機会になるかもしれません。グループ会社の役員構成
を再確認しますと、親会社の監査役が子会社の取締役を兼任している場合もあ
ります。誰も気付かずに、ずっと兼任状態になっている場合もありますので、
もしかしたら会社法上の手続きが必要かもしれないと、答えた方がいいかもし
れません。


2018.06.26(火)【社外役員の歴史】(東京・鈴木龍介)

 去る6月1日に改訂された上場会社の企業統治指針である「コーポレートガ
バナンス・コード」においても重要な位置を占める社外役員(社外取締役・社
外監査役)ですが、商法(含む監査特例法/以下、同じ)・会社法ではどのよ
うな変遷をたどってきたのでしょうか。

 どなたかがおっしゃっていましたが、“歴史を学ばない者に未来を語る資格
はない”ということで、今回は「社外役員の歴史」を紐解いてみたいと思いま
す(個人的に歴史好きということもありますが)。

 社外役員のうち、最初に制度化されたのは「社外監査役」です。それまでの
商法では、株式会社のガバナンスの仕組みとして、取締役会が取締役の職務執
行を監督するとともに、監査役が取締役の職務執行を監査するという仕組みを
採用しており、監査役に対しては、当該会社・子会社の業務執行を担当しない
立場から、取締役の職務執行に違法性がないかどうかを厳格に監査することが
期待されていました。

 しかしながら、終身雇用制の中では、監査役も従業員から登用されるのが一
般的であり、経営陣との間で事実上の上下関係が形成されてしまい、厳格な監
査を実施するには限界があるということで、経営陣と独立した立場で意見を述
べることができる社外監査役を導入すべきであるという論調が強くなってきま
した。

 それを受け、平成5年の商法改正(平成5年法律62号/平成5年10月1
日施行)で大会社に対して監査役会の設置が義務付けられるとともに社外監査
役1人以上の選任が求められることとなりました。その後の平成13年の商法
改正(平成13年法律149号/平成14年10月1日施行)で監査役会の半
数以上を社外監査役とすることが義務づけられ、今日に至ります。

 一方、「社外取締役」が商法に初めて登場したのは、平成13年の商法改正
(平成13年法律149号/平成14年10月1日施行)で定款の定めに基づ
く社外取締役の責任限定契約が創設された時です(現行法では、その対象は社
外取締役から非業務執行取締役に拡大されています。)。

 その後、平成14年の商法改正(平成14年法律44号/平成15年4月1
日施行)で導入された委員会等設置会社(現行法では指名委員会等設置会社)
において3つの委員会(指名・報酬・監査)の構成メンバーの過半数を社外取
締役とすることが義務づけられ、また、同改正で導入された重要財産員会(現
行法では特別取締役の議決の定め)制度を採用する会社において社外取締役の
選任が要件とされました。

 さらに、平成26年の会社法改正(平成26年法律91号/平成27年5月
1日施行)で監査等委員会設置会社というあらたな機関設計が制度化され、監
査等委員会の構成員である取締役の過半数を社外取締役とすることが義務づけ
られました。なお、同改正において、有価証券報告書を提出する公開・大会社
が社外取締役を選任しない場合には、社外取締役を置かないことが相当である
理由を開示することが求められることになりました。

 社外役員の登記の変遷にも触れたかったのですが、少々長くなってしまいま
したので、そちらについては、次の機会に回したいと思います。


2018.06.25(月)【定款の作成と認証】(金子登志雄)

 他の地の公証役場(最近は、公式には公証「人」役場といわないようですの
で、本日より改めます)で定款認証手続をするに際し、復代理人が現地のA司
法書士とします。

1.某地の公証役場から、作成代理人は金子で、Aは認証代理人だといわれま
 した。正しいでしょうか。

 いわれた時は、一瞬、「貴方には認証代理権がない」といわれたような気が
して「まさか」とは思いましたが、落ち着いて考えると、私もAも認証代理権
を有するという意味であれば、公証人は正しいことになります。
 「復代理人は、………本人を代表する」(民法107条)のであって、Aは
私の代理人ではありません。私は復代理人を選任しただけです。

 復代理人方式にせず、委任状に私とAを連記した各自代理方式の委任状にし
たほうが楽だと思うのですが、一般的ではないようです。

2.某地の公証役場では定款作成日と電子署名日が一致していることを求めて
 いるとAから聞きましたが、これについてどう思いますか。

 確かに定款の作成は要式行為ですが、ここまで現実と遊離した運用にする必
要があるのでしょうか。
 第1に、翌日に誤字脱字の存在に気づいたら、また作成日を直さねばなりま
せん(作成者で誤記証明書でも作りましょうか)。
 第2に、書面定款では押印した日が不明のため、バランスを欠きます。
 第3に、定款に記載した作成日が24日で、電子署名日が25日なら、内容
を書面に落とした日が24日で、署名した25日に定款が正式に完成したと解
釈すれば済み、書面作成日の訂正まで要求するのは、法律解釈としても硬直的
すぎます。そこまで硬直的なら作成日を記載しないで電子署名するが、それを
認証してくれるのでしょうか(拒否はできないでしょう)。

 なお、私の知る限り、全国のほとんどの公証役場では、こういう無茶をいい
ませんので、ご安心を。

3.某地の公証役場では電子申請した日に認証に訪問しないといけないといわ
 れました。どう対応しますか。

 これに対しては、復代理人の都合を確認しない限り無理であり、他の公証役
場では、そういう運用をしていないとクレームを申し上げましたら、公証人に
確認せずに事務の方の段階で「分かりました」といわれました。だったら、最
初から無茶をいわなければよいのに………。

 その他、認証定款を保管するCD等の持参を要求するところ、サービスして
くれるところ、さまざまであり、人事異動の多い登記所と相違し、公証役場は
全国一律の運用とは相違した部分が多々ありました。
 郷に入れば郷に従えとはいいますが、もう少し一般化した運用にしてほしい
ものです。


2018.06.22(金)【公証人役場とメール】(金子登志雄)

 昨日の立花さんの投稿ですが、私の執筆も完全に同様であり、何度も見返し、
何度も書き直します。これは文豪も同じですから、気にすべきことではありま
せん。当然のことです。

 さて、全国8か所で定款認証を経験しました。千葉県や茨城県は東京に近い
公証人役場まで自ら足を運びましたが、遠方は地元の司法書士(A司法書士と
する)に復代理をお願いしました。

 復委任状を作成するのは面倒なので、発起人からの委任状に代理人として私
とAを連記すれば委任状も1枚で済み、作成は私で、認証手続はAが担当する
ということでよいはずですが、こういう代理人を数名記載した委任状に公証人
役場は不慣れなようです。

 そこで仕方なく復委任状を作成しましたが、メールのない時代は、ここに私
の個人実印を押し印鑑証明書を添付していましたが、今はメールのある公証人
役場も多く、復委任状に電子署名し、それをメールの添付ファイルで送れば済
むので本当に楽になりました。

 定款内容のチェック依頼ももちろんメールの添付ファイルであり、一時代前
のファクシミリではありません。

 と思い、メールの普及率を下記で確認しました。
    http://www.koshonin.gr.jp/list

 あれれ・・・です。大阪と京都を含め、主要公証人役場にもメールがないと
ころが少なくありませんでした。今回の設立は、自ら訪問したところを除くと、
全てメールの存在するところで助かりましたけど。

 なお、私が行き付けの東京の某公証人役場では定款チェック依頼でメールす
ると、30分以内に電話が来ますが、今回の地方都市の公証人役場では、2時
間経っても3時間経っても返事のないところのほうが多かったといえます。地
方の公証人は遺言などで外出が多いのかもしれませんが、事務員の方からでも、
「〇〇までお待ちください」があってもよいのにと思いました。

 その他、地域によってローカルルールも少なくありませんでしたが、これは
別の機会にします。


2018.06.21(木)【計画性がなくて・・・】(仙台・立花宏)

 最近,自分の計画性のなさに苦笑する経験をしました。
 それは,研修会で使用するレジュメを作成したときのことでした。

 どのようなテーマにするかはお任せいただいており,担当の方と打合せをし
たところ,こちらから提案させていただいた内容で進めさせていただくことで
了承いただきました。

 1時間というやや短めの講義時間です。ぎゅっと内容の詰まったものにした
いと思いました。日程はまだ4か月ほど先であり,時間に余裕があったのです
が,早速,レジュメの作成に取りかかりました。実は,提案させていただいた
時点で,テーマだけでなく,内容についてもある程度イメージを膨らませてい
たのです。そのイメージが新鮮なうちに料理(レジュメ作成)をしてしまおう
という意気込みでした。

 イメージができていたためでしょう。レジュメは2,3日という,私として
は比較的早い期間で構成を固めることができ,さらに,一通り校正するところ
まで終えることができました。仕上げは少し時間をおいて,第三者の気持ちに
なって行おうと思い,それから1週間,完成したと思われるレジュメを机の隅
に寝かせておきました。

 一週間ほどして,レジュメを見直すと,「ここはわかりにくいな」とか,
「ここは問題を作成して,解答を考えていただくようにした方が興味をもって
いただけそうだ」等,いろいろ工夫できそうな点を見つけ,結局,かなりの部
分を修正することになりました。

 そして,それに加え,もうひとつ内容を加えたいと思い始めました。当初、
あるひとつの想定事例を解説していく予定だったのですが,別の想定事例も加
えたいという欲張りな気持ちがでてきたのです。

 結局,内容の追加も含め,レジュメを大改造することになってしまいました。
完成したレジュメは,仕上作業の前に,再度,1週間ほど寝かせることにしま
した。

 さて,それから1週間程が経ち,あらためてレジュメを校正しました。これ
で完成したと思い,事務所の中で講義の予行演習をしてみました。すると,ま
た問題が生じました。内容を追加した分,レジュメを簡素化したので予定時間
におさまると思っていたのですが,説明を始めるとどうしてもいろいろな点に
触れたくなり,時間が超過してしまいます。説明内容を検討し,再度,最初か
ら通してやり直してみましたが,時間内におさめるのは難しそうです。

 結局,レジュメを再度,作成し直すことにしました。しかも,当初予定した
想定事例ではなく,あとで追加した想定事例をいかすことにしたため,最初に
作成したレジュメからはまったく違いものとなってしまいました。

 お恥ずかしい話ですが,最初から,もっと内容を吟味し,計画性をもってレ
ジュメを作成していれば、これほどの手間と時間はかからなかったかもしれな
いと反省いたしました。

 ただ,その分,興味をもっていただける充実した内容になったと信じたいと
思います。


2018.06.20(水)【印鑑カードの引き継ぎ】
(藤沢・酒井恒雄)

 前回の話の続きです。

 代表取締役が二人となる株式会社で、従前の代表取締役が登記所に提出して
いる印鑑を、新任の代表取締役が引き継ぐ場合、従前の代表取締役が提出して
いる印鑑を廃止する手続きが必要になると書きました。

 さて、この場合に印鑑カードの引き継ぎは出来るでしょうか? ちなみに、
廃印届について、登記所備置の用紙を利用するのであれば、「印鑑・印鑑カー
ド廃止届出書」という標題の書面を提出することになります。

 この届出書には注記として、「印鑑カードの返納が必要」であること、「印
鑑カードを返納すれば会社実印の押印と代理人が申請する場合の委任状の添付
が省略できる」といったことが書いてあります。

 私の手元にある旧式?の届出書には、「印鑑カードの交付を受けているとき
は、印鑑のみの廃止はできません。」とも書いてあります。この文言を素直に
?読むと、廃印する場合には印鑑カードの廃止もワンセットと読めてしまいま
す。

 しかし、正しい解釈は、「印鑑カードの交付を受けているときは、印鑑を引
き継ぐ申出をした場合を除き、印鑑のみの廃止はできません。」となります。

 誤解が多かったせいでしょうか、今利用されている届出書にはその文言は記
載されていないようです。(ちなみに私は誤解をしました・・・。)。

 商業登記規則第9条の4第3項には、資格喪失の場合のほか、廃印の場合も
印鑑カードの引き継ぎができると明記されています。また同法第9条の5第5
項には、印鑑カードは返納が原則だが、例外として引き継ぐこともできるとさ
れています。結局は、代表取締役の「交替」の場合と同じ扱いなのですね。

 また、印鑑カードを返納すれば会社実印の押印と代理人が申請する場合の委
任状の添付が省略できるという扱いについては、印鑑カードを返納しなくても、
提示(一時的に預ける)すればよいので、結局、印鑑カードの引き継ぎはでき
ることになります。


2018.06.19(火)【法定相続情報証明制度】(東京・鈴木龍介)

 「法定相続情報証明制度」とは、簡単にいいますと、法定相続の関係を証す
る戸籍謄本等の束を法務局でチェックしてもらい、1枚ものの「法定相続情報
一覧図」(=一覧図)という書類となり、各種の相続手続に利用できるという
ものです。つまり、各手続に戸籍謄本等の束の提出(提示)は不要となり、受
け取る側も、あらためてのチェックは要しないということになります。

 本制度は、相続(登記)手続の円滑化を図ることを目的として平成29年5
月に不動産登記規則の改正で創設され、当初は主に不動産の相続登記で利用さ
れていたところ、次第に本制度が普及・浸透してくるにつれ、利用の範囲が拡
大していっています。そんな中で、本年の4月から一覧図に続柄の記載が認め
られる等の様式の見直しが図られ、相続税申告にも利用が可能になりました。

 ちなみに、一覧図は、商業登記申請における役員等の死亡に関する「退任を
したことを証する書面」としても使うことができます。

 一覧図の交付の申出は、相続人本人はもちろんのこと、司法書士・税理士・
行政書士等の専門士業が代理で行うことも可能であり、そのために必要な戸籍
謄本等については、いわゆる職務上請求書を使っての取得もできます。

 司法書士業務という観点では、これまでは、不動産の相続登記申請と同時に
戸籍謄本等の束を添付していたわけですが、万が一それに不備があった場合、
申請の取下げをせざるをえず、とりわけ連件で売買や抵当権の設定の登記があ
るときなどは結構、プレッシャーになります。それが、本制度は登記申請と切
り離して、事前に申出ができますので助かります。また、税理士さんから税務
申告用の戸籍謄本等の取得もあわせてお願いされても、あくまで登記申請用の
ものしか取得できなかったところ、本制度であれば対応が可能です。一覧図に
ついては何枚でも無料で発行してくれますので、2枚請求し、一つを登記申請
用、もう一つを税務申告用とすればいいわけです。くわえて、不動産のない相
続手続においても、司法書士が本制度を利用した法定相続人の確定に関する業
務を行うことができます。おまけに、依頼者に対しても、私文書である相続関
係説明図ではなく法務局の証明のある一覧図を交付することで、ありがたみも
増すのではないでしょうか。

 ということで、個人的には本制度はみんなにとって非常に有用であると思っ
ているのですが、若干心配しているのは法務局の負担です。これまでは登記申
請に関するものだけチェックすればよかったのが、それ以外のものも持ち込ま
れ、本制度が普及すればするほどに事務量が増加することになります。また、
よもやチェックミスがあれば国家賠償ということにもなりかねません。

 詳細につきましては、法務省ホームページ“「法定相続情報証明制度」をに
ついて”をご参照ください。
    http://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00284.html


2018.06.18(月)【個人と法人の名称変更の登記】(金子登志雄)

 金曜日の続きですが、新日本有限責任監査法人を会計監査人とする会社の定
時株主総会が平成30年6月28日に終結し、それを7月2日に登記申請する
には、①6月28日新日本有限責任監査法人の重任、②7月1日EX新日本有
限責任監査法人に名称変更という2つの登記が必要だとされています。

 では、取締役鈴木A子さんが、6月28日に重任、7月1日(日曜日)に田
中A子さんと婚姻により氏が変わった場合に、7月2日に登記するには、そっ
くり同じ方式で、2つの登記をしなければいけないでしょうか。それとも、一
度に「6月28日田中A子重任/7月2日登記」で済ませられるでしょうか。

 ちなみに、婚姻届は日曜日にも受理されます。平日深夜でも大丈夫です。私
は夜の8時過ぎに区役所に提出しました(深夜のため守衛室でした。こんな時
間にと怒られましたが)。

 登記の話に戻りますが、個人の場合には、変更日基準説と登記申請日基準説
の2つがあります。

 前者は、登記は変更日に申請したのと同様に時系列どおりに「6月28日鈴
木重任」「7月2日田中に氏変更」と登記せよというものですが、後者は、登
記は、「現在は田中A子という人が、あの時(6月28日)重任した」とする
ものだという考え方です。

 よく問題となるのは、東京在住の代表取締役が6月28日に重任し、7月1
日に横浜に住所を移転し、7月2日に申請する場合ですが、皆様は、どちらで
登記しますか。

 また、6月28日に東京のBが新代表取締役に就任し、7月1日に横浜に住
所を移転し、7月2日に登記申請する場合には、就任承諾書に横浜市発行の印
鑑証明書を添付することになりますが、この場合にも、東京での住所で就任登
記と横浜への住所移転の2つの登記をしますか。

 この場合、選定議事録に東京住所のBと記載してあった場合は、私も2つの
登記をしますが、こうなると、横浜住所の印鑑証明書は住所の面で本人確認機
能を営まなくなり、当局がいう「非取締役会設置会社の取締役の就任承諾書に
住所が必要だ」という見解の正当性が怪しくなります。

 登記ではありませんが、変更日基準で幼名の「西郷小吉1928年1月23
日出生」と書くよりも、申請日基準で「「西郷隆盛1928年1月23日出生」
と記載したほうが現在の内容を表し公示機能としても優れていると私は思って
いますが、実務は変更日基準でも申請日基準でも書面上の整合性がある限り受
理されています。


2018.06.15(金)【会計監査人の登記】(金子登志雄)

 今年の4月に、新日本有限責任監査法人を会計監査人設置会社にした3月決
算会社から、今月に行われる定時株主総会終結と同時に任期が満了するのかと
の問い合わせを受けました。

 会社法338条によると、会計監査人の任期は「選任後1年以内に終了する
事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする」とあ
り、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のもの」は平成31年3月
31日までのものですから、今回は任期満了しません。

 続いて「では、会計監査人については一切の登記は不要と考えてよろしいで
すか」という質問がありました。

 いかがですか。

 カンのよい方は上記に、わざわざ「新日本有限責任監査法人」と記載したこ
とで、同監査法人に何かあったのかなと気づいたことでしょう。そのとおりで
す。次をみてください。
    https://www.shinnihon.or.jp/
  
 新日本有限責任監査法人が7月1日に「EX新日本有限責任監査法人」と名
称変更するため、この登記が必要です。

 数年前までは登記で大騒ぎしていたのに、今年は全く話題になりません。そ
のため、上記のようなものがあるのに、私の勘違いかと半信半疑になってしま
うくらいです。

 会計監査人変更登記をなさる方は、ご注意ください。


2018.06.14(木)【アマゾンと存在証明】(金子登志雄)

 鈴木さんの投稿にありましたが『商業・法人登記360問』(テイハン)が
なぜアマゾンに載らないのか、よく分かりません。掲載されたら、本欄横の回
転盤に載せようと待っているのですが、流通の仕組みが違うのかもしれません。

 アマゾンの流通ルートがどうなっているのか知りませんが、注文すれば翌々
日あたりには届き、送料無料ですから、ライバルは真っ青でしょう。すでに法
律本を置かない本屋さんも増えました。大きな本屋さんでも置いてない本がア
マゾンでは注文できますから、場所をとらないネットの世界は優位ですね。

 書店では売っていなくても、アマゾンの会社法本のランキング100位(下
記)で、我々の本の人気度が分かるので、よくみています。
         https://is.gd/VM0e2c

 江頭、神田という著名学者の本が常時上位に位置していますが、100位ま
でに1,2冊であるのに対し、私が関与した本は4,5冊ありますので、量で
は何とか勝っているなと、つまらない点を喜んでいます。

 喜んでいるというより安心したというべきでしょう。というのは、いつの日
かアマゾン・ランキングには全く掲載されない日が到来し、どこかで「あの人
は今」と話題にされるのではないかという恐れがあります。

 それを払しょくするためにも、本欄や雑誌への投稿で存在をアピールし続け
なければなりません。日司連の掲示板にもたまに登場し、「元気ですよ」とア
ピールしています。


2018.06.13(水)【印鑑の届出】(藤沢・酒井恒雄)

 代表取締役が一人だった株式会社に、もう一人の代表取締役置くという、いわ
ゆる二人代表の会社に変更するという依頼が、偶然に重なりました。

 二人代表とする理由は、取引先との関係、金融機関の保証問題、現代表の気持
ちの切り替え期間など、色々な問題が絡み合っていましたが、両社とも、現代表
が子に事業承継をするための、第一歩目の作業という点では共通していました。

 ただし、登記所への印鑑の提出方法は同じではありませんでした。いわゆる
「会社実印の提出」ですが、一方は、現代表は引き続き会社実印を提出したまま
で、次期代表も新たに会社実印の提出をするというものでした。

 もう一方は、現代表が提出している会社実印を、次期代表が引き継ぐというも
のでした。前者の会社実印の提出方法は、新たに印鑑届書の提出をするだけです。

 しかし、後者の場合には、現在提出している会社実印の廃印の手続きが必要に
なります。私はうっかり両者とも印鑑届書だけを準備していたのですが、前者の
依頼人から、「二人が同じ印鑑を届け出ることは出来ないのですよね?」と尋ね
られ、その回答をした瞬間に、廃印の手続きを思い出しました。あの質問がなけ
れば、うっかり後者も印鑑届書のみ提出してしまうところでした。

 会社実印の引き継ぎがある場面では、現代表が代表取締役の地位を退く場合が
ほとんどなので、引き継ぎ=自動的に廃印という思い込みもありました。本年4
月13日付の徒然日誌で、金子先生が触れられていた事例と同じだったにも関わ
らず、危うくミスをするところでした・・・・・。


2018.06.12(火)【『商業・法人登記360問』発刊】
(東京・鈴木龍介)

 本コーナーで以前に金子さんと立花さんも取り上げられていましたが、この
たびテイハンから『商業・法人登記360問』(=本書)が発刊されましたの
で、編著者の一人としてご紹介させていただきます。

 本書は、2009年に刊行された『商業・法人登記300問』(=300問)
の後継として全面改訂をしたものです(装丁のカラーリングもブルーからピン
クに変わり、目にも鮮やかです。)。

 まず、書名のとおりQ&Aの数が300から360に増えています。これは
主に法令等の改正や新たな論点に対応したことによるものです。結果、頁数は
519ページから601ページに増えました(価格も4,715円(税別)か
ら5,400円(税別)と若干アップしましたが・・・)。さらに、300問
の各Q&Aをベースに所要の修正や<追補>というかたちでの加筆を行ってい
ます。

 編著者の3人は変わりませんが、著者(編著者を除く。)は300問が総勢
15人であったところ、本書では3人(新メンバーが2人)ということもあっ
てか全体の統一感はとれているように思います。

 あらためて本書を手に取ってみますと、300問と同様に、実務上の論点を
網羅しつつ、それぞれが基本的にQ(設問)・A(解答)・解説というかたち
でコンパクトにまとまっているので(短いもので半ページ、長いものでも3ペ
ージ程度)、手前味噌ですが、普段の業務においても使い勝手はよいのではな
いでしょうか。

 仕組みはよくわかりませんが、本書はAmazonに新刊として通常のアップは
なされないようです。ということで、ご購入等は、以下のテイハンのホームペ
ージからお願いいたします。
http://www.teihan.co.jp/new/newtitle1804.htm


2018.06.11(月)【上場会社の株主総会招集通知】(金子登志雄)

 6月になって、まだ11日めだというのに、勉強のため、送られてきた3月
決算会社の定時株主総会招集通知を10社分もみせてもらう機会がありました。
株主総会の日は6月下旬だというのに、最近は早期に招集通知を発送する例が
増えています。

 株主総会招集通知は小冊子になっており、前半が事業報告で後半が議案の参
考書類で構成されるのが通常ですが、ここ数年の傾向は、議案が前半で事業報
告が後半という会社が増えています。

 決議事項のほとんどが、「第1号議案/剰余金処分の件」、「第2号議案/
取締役〇名選任の件」でしたが、10社中の2社ほどが会社法459条を根拠
に取締役会決議で剰余金処分を決定しており、剰余金処分議案がありませんで
した。その代わり、期末配当金領収証(配当金引換券で郵便局など指定された
金融機関で現金に変えられます)が入っていました。

 これ猫ばばにはなりません。現在は株主でなくとも、基準日現在の株主であ
れば、正当な権利です。しかし、さすがに議決権行使には躊躇してしまうこと
でしょう(こういう議決権を行使しない株主が多いため、株主総会の特別決議
の定足数を定款で3分の1まで下げられるようになったのであり、定足数に苦
労していない未上場会社では定款に定めるべきではありません)。

 役員選任議案については、受け取った招集通知の全部が「〇名選任の件」で
「〇人選任の件」というのはありませんでした。会社法では「一人、二人」な
のに、総会招集通知では「1名、2名」です。

 なぜ、こんなことにこだわったかといいますと、著作で「1人」と書くと、
出版社から「一人」と校正されることが多いのです。「1日」は「一日」と直
されることがまずありません。

 そんな経験から、「補欠監査役1名選任の件」という総会招集通知をみると、
1名はよくて、なぜ1人はいけないのかと思ってしまいます。

 ちなみに、会計監査人の場合は「会計監査人選任の件」で「会計監査人1名
選任の件」とはしません。会計監査人が法人であることが多いためか、会計監
査人はほとんどが1社だからかは不明です。

 慣例とはいえ、突き詰めると、「なぜ?」が多いものです。


2018.06.08(金)【4月1日就任者の任期計算】(金子登志雄)

 今週は面白い任期問題に遭遇しました。

 定款の任期規定は「取締役の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度の
うち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする」とあるのみで、
増員取締役や補欠取締役についての任期短縮規定はありません。
 
 これを前提に登記事項証明書には次のようにありました(仮定事例です)。

  取締役甲 平成29年5月29日重任
  取締役乙 平成29年5月29日重任
  取締役丙 平成29年4月 1日就任
  取締役丁 平成30年4月 1日就任

 3月決算会社ですが、本年5月30日開催の定時株主総会の取締役改選議案
には、「本総会終結と同時に取締役全員の任期が満了するので」とありました。

 こんなことがあり得るのでしょうか。3月31日選任なら、増員取締役らし
き丁は任期満了していないことになりますので、会社が任期計算を間違ったの
ではないかと思ってしまいました。

 会社に問い合わせましたところ、丙は平成29年3月31日選任でしたが、
丁は平成30年3月30日選任でした。

 会社の任期計算は正しく、私はすっかり忘れていましたが、私が4月に登記
をした際に「丁も今年の定時総会で任期満了しますので、ご注意を」と話して
いたようです。

 3月決算会社で4月1日就任とあれば、皆さんも4月1日選任か、3月31
日選任と思い込んでしまいませんか。そうでないこともあると想像力を働かさ
ねばならないことを反省させてくれた事案でした。


2018.06.07(木)【解散から清算結了までの期間】(仙台・立花宏)

 先日,金子先生が当コラム(2018.5.31(木))で,期間満了日が土曜日に当
たった場合の取扱いについてを採り上げていらっしゃいました。

 私自身は,幸か不幸か,そうしたギリギリの期間を設定した債権者への異議
申述手続は関与したことがなかったため,期間満了日が土曜日だった場合につ
いては,これまであまり意識したことがありませんでした。金子先生がコラム
や著書で,こうした様々な注意喚起してくださるおかげで,まるで自分が経験
したような疑似体験をすることができることを本当にありがたく思っておりま
す。

 ところで、ちょうど,金子先生が前記の話題をコラムに書かれていたころ,
株式会社の解散についてのご相談がありました。内容は,「6月29日に株主総
会を開催して解散を決議する予定なのだけれど,最短で清算結了はいつ頃にす
ることができるでしょうか」というものでした。

 会社の状況を伺うと,もう事業は行っていないため,債務は代表者からの借
入金だけ,めぼしい財産もほとんど残っていないということでした。代表者か
らの債務については免除を受ける予定で,清算手続はあまり時間もかからない
ようです。

 清算手続には2か月の債権申出期間があり(会社法第499条)、最低でも2か
月間は清算結了をすることができませんが(昭和33・3・18民事甲第572号民事
局長心得通達),解散後,解散公告が官報に速やかに掲載になるよう,事前に
手配しておけば,最短期間で清算結了をすることができそうです。

 解散公告を6月30日に官報に掲載すれば,2か月の期間は7月1日から計算
して8月31日に満了するはずです。ただ,そこで,金子先生のコラムを思い出
しました。「8月31日は何曜日だろう」。カレンダーを見てみると金曜日なの
で,どうやら期間満了には影響なさそうです。相談者には最短で9月1日と回
答しようと思いました。

 しかし,そこで、前記の金子先生のコラムでは,6月30日が土曜日であるこ
とが採り上げられ,期間満了日の論点の解説がされていたことに思い至りまし
た。

 そうすると,解散公告は6月30日には掲載できないはずです。土曜日には官
報は発行されないからです(※)。また,7月1日も日曜日ですから,官報は
発行されません。解散公告を掲載できるのは早くても7月2日(月)となり,
2か月の期間満了日は9月2日になりそうだと考えました。 

 念のため、カレンダーを確認すると,なんと,9月2日は日曜日でした。そ
のため、9月2日には期間が満了しません。結果として,9月3日(月)に期
間が満了し,清算結了は最短でも9月4日(火)ということになりそうです。

 実際には決算報告承認の株主総会の開催や最後の税務申告等、様々な手続が
あるでしょうから、その日に清算結了ができるかどうかはわかりませんが、理
論上の最短期間について、相談者に伝えることにしました。

 相談者に電話連絡すると,相談者は笑いながらおっしゃいました。
「先生,そんなにタイトなスケジュールでなくてもよいですよ。9月末頃に清
算結了の予定としたいと思います」

 どうやら,相談いただいた方の「最短」という言葉は,そこまで厳密な意味
ではなかったようです。

 ただ,法律上の期間も,現実の問題に当てはめる場合は,いろいろ考えなが
ら計算する必要があるというのが実感できました。実務に使うことはありませ
んでしたが,個人的には,とてもよい経験ができたと思いました。

(※)特別号外等の例外はあるようです。詳しくは官報のホームページをご確
認ください。


2018.06.06(水)【NPOの弱点?】(藤沢・酒井恒雄)

 地域の社会貢献活動をするにあたり、法人の設立を検討中なので相談に乗って
欲しいという依頼がありました。法人の形態はNPO法人とすることで構想が固
まっており、一応、一般社団法人がどんなものか説明を聞いておきたいとのこと
でした。

 大まかな説明をした後、役員の人選についての話になりました。NPO法人は
理事が3人以上、監事が1人以上必要であり、一般社団法人は理事が1人以上い
ればよいと説明しました。

 仮に理事が3人就任したとして、その後、1人が欠けた場合にはどうなるかと
いう話になり、一般社団法人なら定款の理事に関する規定を調整すれば、理事を
補充せずに対応するという選択肢もあるが、NPO法人の場合には理事を補充す
るほかないだろうと答えました。

 そこで、相談者がハッと思い出したような顔になりました。聞くところによれ
ば、相談者は別のNPO法人の理事になっており、以前、理事の辞任を打診した
ことがあるとのこと。すんなり辞めさせてくれるかと思いきや、どうしても後任
者がいないからと留任を懇願されたので困ったのだそうです。

 そんな自分の経験もあり、今後、理事が不足する状況になったとき、対応でき
る選択肢の幅を広くとっておきたいとのことで、法人形態を一般社団法人にする
方向で再考することとなりました。意外とも思えるポイントで設立予定の法人形
態が変更となったのですが、事実、設立して数年後の役員の人選に苦しむNPO
法人も多いようですから、ここは隠れた?重要ポイントかもしれません。


2018.06.05(火)【資格者代理人方式~その2~】(東京・鈴木龍介)

 前回に引き続き「資格者代理人方式」について、取り上げたいと思います。
一応、今現在、私が知りうる情報をもとにしていますことをご了承ください。

 「資格者代理人方式」では、添付書面の原本を登記申請に添付することなく、
PDF化して送信するということになるわけですが、この方式のメリット・デ
メリットを考えてみることにします。

 まず、メリットですが、法務局サイドとしては、保管する書類が相当に減少
することに、省スペース化を図ることができます。これは行政的にはかなりの
コスト削減につながるであろうということは容易に想像できます。

 一方、申請(代理)人である司法書士サイドとしては、いわゆる半ライン申
請の場合、添付情報である書面を別送したり、持参する必要がなくなります。
これはコストを含め、司法書士事務所的には効率化につながることは間違いな
いです。さらに、法務局サイド・司法書士サイドともに、別送等によるタイム
ラグがなくなり、早期に登記が完了するであろうということが推測されます。

 では、デメリットはというと、法務局の審査がPDF化されたもので行われ
ますので、そこで偽造書類を見破ることは極めて困難になります。最近も世間
を騒がせた、いわゆる「地面師」による詐欺事件でも偽造書類が使われたよう
でして、現状は、書類の真偽について司法書士サイドと法務局サイドのダブル
チェックがなされ、こういった犯罪のゲートキーパー的な機能を果たしている
側面があるわけですが、そのあたりが低下することは否めません。

 また、登記後に何らかの問題が生じて書類の真否が問われたような場合、今
のように法務局でその原本を確認等することもできなくなります。そのような
点を踏まえると、登記申請に関与した司法書士が一定期間、原本を保管してお
くということを考えなければならないかもしれません。

 加えて「資格者代理人方式」では、資格者代理人である司法書士等が原本を
確認するのが大前提だと思われますが、たとえば「火急だから」とか、「後で
原本は持っていくから」などと依頼者から言われ、断りきれずに原本を確認す
ることなく、登記申請を行い、トラブルに巻き込まれる司法書士も出てくるか
もしれません。

 「資格者代理人方式」に限らず、何につけメリットだけでなくデメリットが
あるのが普通です。デメリットを強調しすぎてメリットを活かさないというの
では発展や進歩はないということになりますが、「資格者代理人方式」につい
ては、今後の動向を注視していきたいと思います。


2018.06.04(月)【書面により】(金子登志雄)

 今日はベテラン司法書士でも一瞬返答に困る話題にしましょう。次の質問を
受けたときに、どう返答しますか。

Q:簡易合併の公告に「会社法第796条第3項の規定に基づき、この合併に
 反対の株主は、本公告掲載の日から2週間以内に、書面によりその旨をお申
 し出ください。」とあるが、会社法第796条第3項には、どこにも「書面
 により」とは限定していないから、この公告には不備があるのではないか。

 模範解答は、法令では書面に限っていないのはそのとおりだが、会社の事務
処理や後日の紛争を防止するため、「書面でお願いします」という意味であっ
て、書面以外は受け付けないという意味ではないといったところでしょうか。

 ついでに似通ったQを出しましょう。
Q:定款に「株主総会の決議の目的たる事項について、取締役又は株主から提
 案があった場合において、その事項につき議決権を行使することができるす
 べての株主が、書面によってその提案に同意したときは、その提案を可決す
 る旨の株主総会の決議があったものとみなす。」とあるが、電磁的記録の同
 意を否定するもので、不適切ではないか。
 ・・・これも電磁的記録を否定したものとは解釈できないでしょう。

Q:定款に「株主総会は、その総会において議決権を行使することができる株
 主全員の同意があるときは、招集手続を経ずに開催することができる。」と
 あるが、会社法第298条第1項第3号又は第4号に掲げる事項を定めた場
 合を除くと規定しないのは不適切ではないか。
 ・・・通常の場合を規定しただけです。

Q:原始定款に「取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をし
 た場合において、当該提案につき議決に加わることができる取締役の全員が
 書面により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の取締役会
 の決議があったものとみなす。」と定めたところ、公証人から監査役に業務
 監査権限があるのだから「ただし、監査役が異議を述べたときはこの限りで
 ない。」を挿入せよといわれたが、余計なお世話ではないか。
 ・・・公証人の指示は、より正確性を求めただけで、この挿入がなくても法
 律上当然のことですから、定款の無効事由にはならないでしょう。ただし、
 このままでは認証してくれないので、ここは修正に応じざるを得ません。


2018.06.01(金)【メダカと学校】(島根・根来川弘充)

 先日、小学校で観察に使うということで、子供とメダカを捕りに行きました。
私の町では、5月連休あたりが田植えピークで、このころの水路には、たくさ
んの水があります。

 私が小学生だったころは、いたるところで見られていましたから、いまでも
容易に見つかるだろうと思っていたですが、1時間以上、水路を歩いても、ま
ったく見つけることができませんでした。

 田圃をたくさん耕作しておられる方に電話をして、聞いてみたら、ご自宅の
水路にいるということでしたので、さっそく伺いました。水路を底から泥ごと
網で掬うようにして、小一時間、ようやく10匹くらいとることができました。

 「そっとのぞいてみてごらん♪」と歌詞ではあるものの、いまでは、そんな
に簡単に見つけることができる地域はほとんどないのではないでしょうか。小
学校で、しっかり観察して、是非たくさん繁殖させて水路に返してほしいと思
いました。


2018.05.31(木)【期間満了日が土曜日】(金子登志雄)

 1月3日は休日扱いだという東京法務局見解が現れたり(2月15日本欄)、
商事法務直近号(5月5日号、72頁以下の「組織再編と期間計算」)に「基
本的には、土曜日も『休日』に該当するものとして取り扱うのが実務対応とし
ては安全」などと書かれたりで、土曜日を期間満了日にしてしまったが大丈夫
だろうかという不安をお持ちの司法書士も多いことでしょう。

 合併等の組織再編手続については、個人では間違いなく日本で最も数多くの
経験者であるつもりの私も同様であり、頭では100%大丈夫だという確信が
あっても、いざとなると、不慣れな登記所(又は職員)で止められないか、そ
の際はどう対応しようかなどと考えてしまいます。

 こういうときの不安解消策は、実例に限ります。ちょうど、昨日と本日に公
告した分は、1か月の期間満了日が6月30日土曜日になります。

 電子公告では下記がありました。5月30日掲載でも「翌日から異議を」と
あります。
 http://www.teldevice.co.jp/ir/ir_data/koukoku/koukoku180530.pdf

 30日官報にも、いくつか掲載されていました。下記は東京法務局管内の案
件です。
http://kanpou.npb.go.jp/20180530/20180530g00115/20180530g001150126f.html

 31日官報もチェックするつもりですが、これを書いている時点では。まだ
インターネット官報をみられません。きっと、いくつか度胸のある会社がある
ことでしょう。著名企業であったら、保存しておきましょう。


2018.05.30(水)【アメフト騒動】
(藤沢・酒井恒雄)

 私はアメフトのファンなので、何度かアメフトに関する投稿をしていますが、
まさかこんな事態になるとは思ってもいませんでした。

 滅多に報道番組でアメフトに関するニュースは取り上げられませんし、スポ
ーツ・コーナーでさえ紹介されるのは、年始の日本一決定戦くらいでした。
それが、どの報道番組でもトップ・ニュース扱いです。

 ただ、当初はルールを逸脱した行為への批判だったものが、「誰が嘘つきな
のか?」ということが焦点になって、加計学園問題と同系列の話題として取り
上げられている感があり、報道の内容は全く別物になりつつあります。

 こんなことでアメフトが有名になって残念だという、アメフト界の関係者の
談話がありましたが、まさに同感です。

 実は、アメフトの本家である米国のプロリーグ(NFL)でも、同じような
事件が過去にありました。守備選手が相手の攻撃選手に怪我を負せたら、その
守備選手にボーナスが支給されるという制度を、秘密裡に実施していたチーム
があったというものです。

 すべての守備選手が、その悪策に同調していたわけではありませんが、処分
を受けた選手の中には花形選手も含まれていて、衝撃が大きかったことを覚え
ています。

 この事件は、選手側にも金銭のインセンティブがあったので、不正を行う動
機が分かり易かったのですが、今回の事件は、アマチュアの学生選手が何を動
機に、コーチの指示通りに不正なプレーをしたのかと考えると、謎が深まるば
かりです。

 選手は精神的に追い詰められていたようですし、相手を怪我させるよう指示
したとされるコーチも、厳格な上下関係の中、いつの間にか自分自身で考える
ことを止めてしまっていたのかもしれません。組織の外から見れば、行動する
前に、「考えれば分かるはず。」と思ってしまいますが、実際にその組織内に
身を置いたら、アッサリと考えが及ばなくなるかもしれません・・・・・。


2018.05.29(火)【資格者代理人方式】(東京・鈴木龍介)

 「資格者代理人方式」というのをご存知でしょうか? これは仮称かつ略称
ですが、司法書士業界では結構、騒然となっているところです。

 「資格者代理人方式」というのは、不動産登記のオンライン申請をする際に、
申請情報と共に提供する添付情報が書面である場合、その全てをスキャナで読
み取ってPDFにし、資格者代理人(司法書士・土地家屋調査士・弁護士が想
定されているようです)がこれに電子署名をして送信することにより、当該書
面の原本の提出を要しないという、あらたな申請の方式として導入が検討され
ているものです。

 明治時代から続いた、いわゆる原本提出(審査)主義からの脱却であり、我
が国の登記制度における画期的な改正と評価してよいのではないでしょうか。

 仮に「資格者代理人方式」が導入されたとしても現行の登記申請の方式であ
る①紙の申請書による申請(添付情報も書面で提供)、②いわゆる半ライン申
請(添付情報である書面は別送)、③フルオンライン申請(添付情報もオンラ
インで送信)がなくなるわけでなく、4つの方式が併用併走することになるよ
うです。

 「資格者代理人方式」がいつから、どのようなかたちで導入されるかは、現
時点では不透明ですが、今後の動向を注視していきたいと思います。


2018.05.28(月)【嘘と信念の経済学】(金子登志雄)

 土日はすることもなかったので、無料のユーチューブや、最近加入した有料
動画サイトを視聴して時間をつぶしました。

 ユーチューブでは日大アメフト部の加害選手のお詫び記者会見をみましたが、
弱冠20歳で実名や顔も出し、スポーツマンらしい勇気あるりっぱな態度でし
た。よい親に育てられた雰囲気も伝わってきました。

 このお詫び会見をしなくても、現在は、直ぐにインターネットで実名や顔写
真をバラまかれますから、先手を打った点、会見で頭を下げていた時間の長さ
といい、弁護士の指導や戦略(計算)もあったのでしょうが、見事に危機を乗
り越えました。

 これに対して、監督、コーチ、日大は、事態が鎮静化するのを待っていたよ
うですが、事態はさらに悪化するばかりです。日大運動部の学生は就職面接で
話題にされ、とばっちりを受けていることでしょう。

 有料動画サイトでは、相手の弱みを探して脅迫も辞さずに交渉して勝ち続け
るニューヨークの有能弁護士と、その部下で記憶力抜群のニセ弁護士を主役と
したスーツという米国ドラマをみていました。面白いと視聴を勧めてくれる人
があったためです。

 この米国ドラマをみていると、かの国では偽証(嘘)が我々の想像以上に悪
(又は罪)とされていることがよく伝わってきます。悪徳弁護士ですら、偽証
だけはしないようにしていました。

 わが国では、誰がみても嘘をつき続けたことが完全にバレてしまった佐川氏
ですら不起訴になり、思うところを話した籠池氏が10か月も拘束され、権力
側の嘘は見過ごされるアンフェアな社会であることが世界に知れ渡ってしまい
ました。権力側の人間には、嘘は「得」につながるようです。

 ところで、本欄をみている方は昭和43年(1968年)のメキシコオリン
ピックのことは知らない方が多いでしょうが、下記の写真はどこかでみたこと
があると思います。
         https://is.gd/Ybwcc1

 この写真の左側に立つ脇役にもならない白人がその後どうなったかをご存知
ですか。下記にありますが、これをみて、やはり権力とは妥協して生きる道を
選択するか、信念を貫いて天国に行く道を選ぶかを考えるにはよい教材です。
仮に前者でも選挙のときだけは、後者の人であってほしいものです。
     https://www.youtube.com/watch?v=4g89e90B0-Q



2018.05.25(金)【即日起算と翌日起算】(金子登志雄)

 平成27年3月31日選任、同年4月1日就任の監査役は(任期4年で3月
決算会社)、本年6月の定時株主総会の終結と同時に任期満了退任ということ
でよいかという質問を受けました。

 これについては『会社法実務〔全訂版〕』217頁で同様のQAを設けてい
ますが、「選任の3月31日を起算日にして」とか、民法により「翌日の4月
1日を起算日にして」とかいう言い回しをするため、混乱しやすいといえます。
すなわち、「起算日」をどう捉えるかです。

 そこで、起算日を使わないで説明する方法を考えましたが、「ナカ〇〇間」
が最も通じやすいようです。

 しばしば、株主総会の招集通知は株主総会日との間に「ナカ2週間(あるい
は1週間)空けて」という言い回しを使いますが、これを真似て、選任日から
「ナカ4年間」空けるため、平成31年3月31日が4年以内に入るため、本
年は任期満了しないと答えやすくなります。

  招集通知発送日「■■■■ナカ14日■■■■」株主総会開催日
  平成27年3月31日「■■ナカ4年■■」平成31年4月1日

 では、先日の電子公告の日の延長ですが、あえて株主総会招集通知を午前0
時ぴったりに発送したら、即日起算になるのでしょうか。

 私見では、証拠があれば即日起算だが、通常は証拠がなく、招集通知に記載
された発送日に発送されたと推定されるだけだから、午前0時であろうと、民
法140条の原則に従って翌日が起算日でしょう。

 民法140条ただし書の即日起算は、将来の日である「平成〇年〇月〇日か
ら」という場合だと私は考えています。役員任期でいえば、予選の場合だと考
えます。

 では、合併等の効力発生日は将来の日だから、事後開示期間の「効力発生日
から(6か月)」は即日記載でしょうか。しかし、もし、そうであれば、事前
開示期間満了日の「効力発生日まで」と1日ダブってしまいます。

 また、効力発生日の新設分割(登記)を条件にした場合の吸収合併の効力は
午前0時開始とはいえませんし、反対株主の買取請求も株券提出手続の効力も
効力発生日に効力を生じるため、仮に午前0時に開始する場合も、民法140
条ただし書の適用はなされないというのが私の意見です。

 「基準日から3か月」という場合は、基準日がこれから到来する日であって
も、その日の終わりまで名義書換をすればよいわけですから、翌日起算です。

 即日起算か翌日起算かはそう単純ではなく、「午前0時=即日起算」という
単純には考えない方がよいと私は思っています。


2018.05.24(木)【古くからの友人】(仙台・立花宏)

 事務所の私の机の上には,ひとつの電卓があります。他の方がご覧になった
ら,ずいぶん古ぼけた電卓だと思われるのだろうと思います。

 今の電卓のデザインと比べると,質素なデザインとでもいえばよいのでしょ
うか。飾り気のない外見です。質実剛健といいたいところですが,機能も今の
ものとは比べ物にならないくらい劣っているのだろうと思います。

 それもそのはずです。その電卓は,私が社会人になり,はじめての職場に配
属になった日の帰り道に購入したものです。平成の初期,もう25年以上も前
に購入したものということになります。

 配属になった職場は経理関係を担当している部門で,電卓は必須のアイテム
でした。職場の上司から勧められた機種を探して,寮に帰る道すがら,見つけ
た電気店で購入したものです。

 それ以来,会社勤めの間はずっと,私の机に常備して,仕事の友として使い
続けてきました。調子が悪くなったこともあったのですが,あきらめて他の新
しい電卓を購入しようかと思いはじめると,不思議なことに調子を取り戻し,
結局,今でも現役で計算機としての仕事をしてくれています。

 ただ,けっして大切にしてきたとはいえないと思います。誤って床に落とし
てしまったことは1度や2度ではありません。お茶をこぼしてしまったことも
あります。そんな乱暴な扱いにも耐えてくれたタフな友人です。

 思い返すと,私の社会人生活のすべてを知っている唯一の存在といえるのか
もしれません。辛かったこと,苦しかったこと,そして,楽しかったこと,う
れしかったこと。そうしたたくさんの出来事を共にしてきた親友のような存在
といえるでしょう。

 そういえば,最近,出版された『商業・法人登記360問』(テイハン)(※
)にも関わらせていただいたのですが,その友人は,校正作業で,掲載されて
いる貸借対照表の数字がおかしくないかなどの検算にも大活躍してくれました。
校正作業の辛さ,苦しさ,楽しさを知り,そして,今回の出版をうれしく思っ
てくれているかもしれません。

 司法書士になってからは,仕事にその電卓を使うことはあまり多かったはい
えません。それでも,こうして,たまには仕事に活躍してくれますし,それ以
外のときも私の仕事ぶりを眺めるように,机の隅の指定席に鎮座してます。

 きっと,これからも私が引退するまで,私の仕事ぶりを見守り続けてくれる
だろうと信じています。 

  (※)http://www.teihan.co.jp/new/newtitle1804.htm


2018.05.23(水)【ヒロイン②】(藤沢・酒井恒雄)

 以前に、女の子向けのヒロイン・アニメである、「プリキュア・シリーズ」
の話を書きました。まだシリーズが続いており、人気の番組になっているよう
です。

 娘がまだ小さかった頃、映画館のスクリーンに向かって声援を送ることを強
要されたことが、懐かしく思い出されます。

 少し前に、そのプリキュア・シリーズの最新作に関する記事を目にしました。
その内容に驚いたのですが、最新作は、なんとヒロインが「育児」をしながら
敵を倒すのだそうです! しかも、その敵は「ブラック企業」なんだとか。ま
さか士業がヒロイン役に? と思いましたが、ヒロインは中学2年生の女の子
だそうです。

 だとすれば、育児をしつつ闘うという設定には無理があるのでは? と思い
ましたし、さらに、「赤ちゃんの父親は誰?」「未婚の母という設定?」「保
育園に子供を預けて闘うのか?」などと、余計なことが頭に浮かんできました。

 しかし、記事を読み進めるにつれ、物語の設定の仕方に、なるほどと頷いて
しまいました。育てる赤ちゃんは空(天)から舞い降りてきた子なので、とり
あえず親権者の問題はクリアして、変身前のヒロインは育児の知識はないが、
変身後は赤ちゃんを守りながら敵と闘えるということで、育児やブラック企業
に対する告発?は、変身後の大人がするようです。

 また、ヒロインを助ける妖精も登場し、人間の男性の姿に変身して育児を助
けるらしく、イクメンに赤ちゃんを預けられるから安心して闘えるみたいです。

 ちょっと茶化して書いた部分もありますが、この設定に行きついた過程には、
なかなか感心しました。はじめに、「最強のヒロイン」という人物設定があっ
たそうで、「最強の女性とは?」と議論した結果、「赤ちゃんを守る母」に辿
り着いたそうです。

 さらには、複数のヒロインとその家族や仲間を登場させて、母親一人が育児
を負担する「ワンオペ育児」の対局である「支え合う育児」という要素も取り
入れることにしたのだそうです。そんな設定の奥深さに感心する一方、ヒロイ
ンたちは敵と闘って、更に社会問題にも取り組まなければいけないなんて、現
代社会を反映しているとはいえ、なんて過酷なのだろうとも思いました。空想
の世界なら、もう少し楽な生活をさせてあげてもいいような気もしますが、ど
うなのでしょうか・・・・・。


2018.05.22(火)【一般社団・財団法人の実情】(東京・鈴木龍介)

 前回、一般社団法人・一般財団法人(以下、「一般社団法人等」といいます。)
がかなり普及してきたような印象があると書かせていただきましたが、今回は、
一般社団法人等の実情について概観してみたいと思います。

 一般社団法人等は平成20年12月1日からスタートしたわけですが、現在、
どのくらいの数の法人が存在するかというと、一般社団法人は48,549、
一般財団法人は6,973となっています(これには旧民法法人から移行され
たものも含みます)。

 ちなみに株式会社は約205万社、合同会社は約15万社です。なお、以上
のデータは平成30年5月15日現在のもので、国税庁の「法人番号公表サイ
ト」を使って抽出したものですが、このデータベースは中々便利です。

 また、新規の設立については目を転じますと、法務省の登記統計(平成28
年)によれば、一般社団法人は6,075件、一般財団法人は324件となっ
ています。ちなみに株式会社は約9万件、合同会社は約2,300件です。

 累計数・新規設立件数ともに圧倒的に一般社団法人が一般財団法人より多い
理由としては、役員・機関の設計-つまり必要な人の数-がその理由の1つに
あげられると思います。

 一般社団法人の場合、社員1人(設立時は2人)、理事が1人いれば足り、
社員と理事は兼ねられますので最低1人の人間で運営できるということになり
ます。

 片や、一般財団法人の場合、評議員3人(評議員会を構成)、理事3人(理
事会を構成)、監事1人が必要となり、それぞれが兼ねることはできませんの
で、最低7人の人間が運営に関与しなければなりません。

 当事務所では制度がスタートした時から一般社団法人等に積極的に取り組ん
でまいりまして、これまで100法人ほど関与してきました。それを踏まえ、
一般社団法人等の利用のされ方を見てみますと、公益的な事業(たとえば文化
振興)や中間的な事業(たとえば同窓会)を行うためといった本来的といえる
ものは当然、少なくないのですが、中には株式会社と同じような使い方-通常
の営利事業(たとえばコンサル業)-をする例も見られます。

 今後は、法人形態として株式会社や合同会社だけでなく一般社団法人も選択
肢の一つとして提案するケースも増えてくるのではないでしょうか。


2018.05.21(月)【(電子)公告の日】(金子登志雄)

 「公告の日から2週間以内に吸収合併等に反対する旨を存続株式会社等に対
し通知したときは」簡易合併はできないと会社法796条3項にあります。

 では、次の川崎重工の17日付電子公告が仮に午前0時に掲載されたとして、
いつまでに反対を通知しなければならないでしょうか。公告文面には「この会
社分割に反対の株主は、【本公告の日】から2週間以内に、書面によりその旨
をお申し出下さい」とあります。

  http://www.khi.co.jp/ir/public_notice/koukoku20180517.pdf

 官報や新聞の公告と相違し、電子公告なら午前0時開始ということも可能で
あり、その場合は、民法140条ただし書により、即日起算であり5月30日
までだと考える見解が多数です。

 しかし、川崎重工の公告調査期間は18日になっています(公告調査開始日
は下記の検索部分を白紙にすれば全部がでてきます)。
      http://e-koukoku.moj.go.jp/

 したがって、この場合は、公告掲載日が17日午前0時であっても、会社の
意思は翌日の18日起算だとみるべきでしょう。

 以上につき、電子公告が午前0時から掲載されても、株主からは何時に掲載
したのか分からないのだから、原則どおり翌日起算と考えるべきだというのが
私の主張です。

 このことを会社法796条3項の「公告の日」も「午前0時掲載」したこと
を基準にするのは株主への不意打ちだと書きましたら、商事法務直近号(5月
5日号)72頁以下の「組織再編と期間計算」(内田修平弁護士)に捕まって
しまい、多数説の側から批判されてしまいました(全体的には、拙著・拙稿を
参照していただいたようで実にありがたく感謝しております)。
 
 金子説か、内田説か………、実をいうと、双方の想定が相違し、同じ土俵に
立ったものではなさそうです。

 私は公告調査開始日を意識せずに、電子公告を掲載したからといって何時に
掲載したか分からないじゃないかという意識で論述したのに対し、多数説の内
田説は、午前0時開始で公告調査期間も同日になっている明白な場合を想定し
たのではないでしょうか。

 川崎重工が17日午前0時に公告を掲載し、公告調査期間開始日も17日で
あったら明白な基準があるので、私も17日の初日起算に反対しません。17
日午前0時に公告を掲載したが、公告調査開始日が翌日の18日なっていた場
合につき、多数説はどう考えるのでしょうか。


2018.05.18(金)【流行る司法書士】(金子登志雄)

 古山さん、お久しぶりです。商業登記専門で「今年は切れ間なく依頼を頂い
ていて」とは、実に素晴らしく、うらやましい限りです。将来、商業登記中心
で頑張りたいという新人の方には励みになることでしょう。

 開業20年以上も経つのに、私は相変わらず切れ間ばかりですが、幸い、生
活を維持することができる程度の仕事量はありますので、切れ間なく昼寝を楽
しんでいます(ネズミ歳のためか、夜になると議事録案作成などで頑張ってい
ますけど)。

 ところで、司法書士の間では、登記の仕事はベテラン司法書士が独占してお
り、人脈の少ない若手は仕事がなく成年後見にシフトしているという話が多い
のですが、少人数ながら古山さんのように商業登記中心で頑張っている若手も
存在します。

 この差はどこにあるのか、はっきりした理由は分かりませんが、仕事をくれ
る会計事務所やベンチャー企業等のよい顧客に早い段階から恵まれていたかど
うかの差が大きいようです。そこから紹介や口コミで広がっていくようです。

 一般客相手の飲食店であれば、「うまい、安い、早い」の3拍子が揃えば行
列のできるお店になれるのでしょうが、司法書士や弁護士の業務は、そういう
わけにはいきません。

 例えば、こういう事件には弁護士の〇〇先生が最も有能だと知っていても、
ツテがないと「高いのじゃないか。こういう事件にも応じてくれるだろうか。
どういう人柄だろうか」などといった目に見えない不安が多く、いきなり、そ
こに仕事を依頼することはありません。その意味では仕事のパートナー探しに
近いかもしれません。

 それぞれの業種によって方法の差がありますが、司法書士会主催で顧客の多
い司法書士を講師にし、その苦労話の講演があれば、私も参加してみたいもの
です。たぶん、職人タイプの私には無理だと再認識するだけに終わるでしょう
けど。


2018.05.17(木)【起業】(東京・古山陽介)

 忙しさにかまけて投稿をサボっているところで、先日移動中に駅で金子先生
をお見かけしまして、投稿をしなければという思いに駆られました。

 3月末、4月の登記が終わって落ち着くかと思いきや、今年は切れ間なく依
頼を頂いていて、中でも最近は、かなり複雑な組織再編に関する案件依頼やス
キーム作り等の相談が多く、緊張感はありますが、商業登記の醍醐味も味わっ
ている状況です。

 話は変わって、最近、手続の簡素化やワンストップサービス化が話題になっ
ている「設立」ですが、年初から設立登記の案件もけっこうな数を受託してい
ます。

 ほぼ必ずと言っていいほど、依頼時にクライアントから「いつ設立(登記)
できますか?」と聞かれますが、この問いの返答にいつも悩まされます。

 その気になれば翌日でも翌々日でも設立できるし、設立概要が決まらなけれ
ばはじまらないし、書類に印鑑を押すタイミングもあるし、定款も公証人に事
前確認しなければならないし、出資金の払込のタイミングの問題もあるし、会
社の印鑑の作製もあるし、日柄(大安等)を気にされる場合もあるし、と、あ
れこれ考えてしまい、結局、お客さん次第です、という答えになってしまいま
す。

 ですので、自分は設立の依頼時に、設立概要を決めていただくチェックリス
トのシートと依頼時~設立(登記)までの手順シートをクライアントに渡して、
スケジュールをイメージしてもらっています。

 おそらく、現状、設立手続におけるスピードを阻害する要因となっているも
のについては、ある程度クリアされて、手続が容易になるものと思われます。

 設立手続が容易になることはおおいに歓迎ですが、起業を安直に考える人が
更に増えることは必ずしも良いことばかりではないと思ったりもします。

 起業して失敗すること自体は、再チャレンジであったり、経験を活かして転
職する等の道もありますので、悪いことでも何でもありません。

 ただ、容易に設立可能であるがゆえに、設立当初から中身がほとんどがなく、
何をやっているのかもわからないまま、数年で廃業している会社(休眠会社含
む)も多々あり、この先この数が益々増えることも予想できますので、やみく
もに会社の数が増えることだけを手放しで喜んでいいとは思えないのは、自分
だけでしょうか。


2018.05.16(水)【久しぶりの結婚式】(藤沢・酒井恒雄)

 最近、十数年振りに何かがあったというネタが多いのですが、先週末も、十
数年ぶりに結婚式に出席してきました。50歳を過ぎると、お通夜や告別式に
出る機会はあっても、結婚式に出る機会はぐんと減ります。もう少しすると甥
っ子や姪っ子達にもそんな話が持ち上がってくるのかもしれませんが、会社で
部下を抱えている立場にあるわけではないので、本当に久しぶりのことでした。

 結婚式は教会式で行われました。結婚の宣誓のときに牧師あるいは神父が話
す、「病める時も、健やかなる時も、・・・」という言葉には、いろいろバリ
エーションがあるようです。

 今回の式では、「健康な時も、そうでないときも・・・」という表現をして
いました。「病める時も、健やかなる時も」の方が何となく厳かな感じがして
「式」としてはいいのかもしれません。

 しかし、「健康な時も、そうでない時も」と言われた方が、自然に言葉が体
に入り込んでくる感じがして、更には、病んでいるという言葉に囚われること
なく、ちょっと元気がない時にもという広がりを感じますので、なかなか良い
なと感心しました。

 さて、素敵な話で終わりにしよう思ったのですが、宣誓の言葉について検索
しているうち、結婚に関する名言(迷言)をまとめているサイトに辿り着いて
しまい、そこで思わず笑ってしまったので、そのご紹介を。

 「結婚とは、熱病とは逆に、発熱で始まり悪寒で終わる。」

 大喜利のように、ウケを狙って作った言葉だと思いますが、とても上手です
よね。


2018.05.15(火)【一般社団法人等に関する相続税の見直し】
                         
(東京・鈴木龍介)

 一般社団法人・一般財団法人(以下、「一般社団法人等」といいます。)は、
平成18年の一連の公益法人改革において制定された「一般社団法人及び一般
財団法人に関する法律」により誕生し(平成20年12月1日施行)、ここの
ところかなり普及してきたような印象があります。

 一般社団法人等には株式会社の株主のような所有者が存在しません。そのた
め、個人から一般社団法人等に財産を移動することで、相続税を回避するとい
うスキームが散見されるという指摘がありました。つまり、株式会社であれば、
相続の対象となる株式を承継した者に相続税が課されるところ、一般社団法人
等には所有者がおらず課税がなされないということです。

 そのような点を踏まえ、平成30年度の税制改正において、一般社団法人等
に関する相続税の取扱いの見直しがなされました。

 対象となるのは、一般社団法人等の理事(以下、「当該理事」といいます。)
について、①当該理事の相続開始直前において同族(被相続人+その配偶者・
3親等内の親族+特別な関係にある者/以下に同じです。)である理事が理事
の過半数を占めていること、もしくは②当該理事の相続開始前5年以内におい
て同族である理事が理事の過半数を占めていた期間の合計が3年以上であるこ
とのいずれかの要件を満たす、非営利型法人等を除く一般社団法人等(以下、
「特定一般社団法人等」といいます。)です。

 その課税のされ方ですが、当該理事に相続が発生した場合に、その特定一般
社団法人等の純資産額を同族の理事の数(当該理事を含みます。)で等分した
金額を当該理事から特定一般社団法人等が遺贈により取得したものとみなして、
特定一般社団法人等に相続税が課税されるというものです。たとえば、お父さ
んとその長男の2人が理事であって、純資産額が1億円の特定一般社団法人等
について、お父さんが死亡した場合には、法人に5,000万円(1億円÷2)
の遺贈があったものとして法人に相続税がかかるということになります。

 この見直しについては、私自身、勉強が不十分ですが、一般社団法人等の意
思決定をする社員(総会)や評議員(会)ではなく、実質的に法人を支配する
理事に着目し、本来は個人が対象である相続税を法人に対して課して、税逃れ
を防ぐという理解です。


2018.05.14(月)【商業・法人登記360問、17日発売】(金子登志雄)

 好評だったテイハン『商業・法人登記300問』が全面改訂され、360問
に名称変更し、今月17日から発売開始です。
    http://www.teihan.co.jp/new/newtitle1804.htm
 
 読者の方から「先日、中央経済社から『事例で学ぶ会社法実務〔全訂版〕』
を出したばかりじゃないか。また、買えというのか」とお叱りを受けそうです
が、『会社法実務』は会社法かつ私が中心のものですが、『360問』は法人
登記までを含む登記法かつ神崎先生をメインとしたものであり(例によって私
と鈴木龍介さんのグループが補佐)、性格が異なりますので、ご了承ください。

 中央経済社は会計事務所や法律事務所向けに強く、テイハンは登記所や司法
書士事務所向けに強いという特徴の差がありますし、登記所への影響力も登記
所職員が質疑応答に応える「登記研究」という雑誌を出している関係で、テイ
ハンのほうが上でしょう。登記所職員らによる『商業登記書式精義』も、『法
人登記書式精義』もテイハン刊行です。

 この関係で、『300問』の初版第1刷に私が期限付解散は短期間に限らな
いと書きましたら、どこかの登記所が本当にそれでよいのかと法務省に問い合
わせたようで、それが、2週間以上先の期限付解散は認められないという平成
22年11月25日法務省商事課補佐官の事務連絡になりました。キンザイの
「登記情報」に書いた際には何の反応もなかったので、実務の大勢が肯定した
と判断して『300問」に書いたのですが、影響力の差に甘かったようです。

 結果的に私が藪蛇をしたようなものですが、現在でも、この事務連絡は最も
評判の悪い先例になっています。定款変更決議をしていないのに、存続期間の
定めを設定したとみなすことは会社法の建前に反しますし、通達でなく事務連
絡でお茶を濁した対応にも批判がなされています。

 テイハン本はそれだけ登記所に浸透しているというわけですが、我々の親や
祖父母の生年である大正9年創業の「帝国判例法規出版社」の流れを組む老舗
中の老舗ですから、無理からぬことです(ちなみに中央経済社も歴史がありま
すが、戦後の昭和23年創業でした)。  

 インターネット時代で本が売れなくなりましたが、1冊数千円でも、2つや
3つ役立てば(それによって登記申請が円滑に進めば)、十分に採算が合いま
すので、どうぞ、『会社法実務』ともども、ご利用ください(注:アマゾン等
にはまだ登場していません)。


2018.05.11(金)【私の登記申請方法】(金子登志雄)

 商業登記の書き入れ時だった4月も終わり、ヒマになりました。まるで季節
労務者のごとくです。

 4月の登記を総括いたしますと、相変わらず、都内の登記所から「こちらで
直しておくからね」といった小さなミス(誤字脱字の類)はいくつかありまし
たが、幸い、登記所に出頭しなければならないミスはありませんでした。

 近隣の登記所の場合は、補正があっても即座に対応することができる(すぐ
に訪問できる)という無意識の甘えが私にあるようで、まだまだ誤字脱字のな
い完璧な申請をすることができていませんが、皆様の場合は、いかがですか。
近隣と遠方の場合で差はないですか。

 逆に登記申請で誇れる点は、私の申請が比較的に早く終わることです。

 登記申請に際し、添付書面をそのまま添付するだけの方が多いようですが、
私は、鉛筆で、登記事項に関連するところだけに〇で囲んだりして、調査官の
チェックに役立つようにしています。

 定款を添付する際は、鉛筆で「第何条です」と書いておきますし、種類株式
の際は、「ここは株式内容ではない」などとメモすることもよくやっています。

 「会社法何条です」とか「平成〇年〇月〇日民商〇〇号参照」とか根拠を鉛
筆で示したり、長文の場合は、「ご参考まで」とメモ書して資料を添付書面と
は別に差し挟んだりすることもあります。

 こうすることによって調査が早くなりますし、調査官が「この申請人はよく
勉強しているな」と思うのか、比較的早く登記が終わります。

 こういう話を他の司法書士にすると、「そんなことしてよいのか」と思われ
ることが少なくないのですが、ちょうど、増資で預金通帳の写しを添付する際
に、入金部分にマーカーを引いて、分かりやすいようにするのと同じです。

 登記申請は登記所に対するお手紙だと思っています。分かりやすい親切な申
請を心掛けましょう。


2018.05.10(木)【残余財産分配時の端数の扱い】(仙台・立花宏)

 株式会社が解散し,清算手続をすべて終了して残余財産が確定したとします。
株主はA,Bの2名で,所有株式はそれぞれ1株ずつ。そして残余財産は3円
だったとします(事案を簡略化するため,現実的ではないことをご了承くださ
い)。

 さて,残余財産は3円で,A,Bに分配しようとすると,それぞれ1株ずつ
の所有ですので,割り切れません。さて,どのように処理すればよいでしょう
か。

 株式会社の残余財産の分配について,ある下級審判例(東京地裁平成27年
9月7日)があります。

 ある株式会社(非公開会社であり種類株式発行会社ではない)の残余財産分
配時,持株割合とは異なる方法で残余財産の分配が行われたのですが,これが,
残余財産は原則として持株数に応じて分配しなければならないとする会社法第
504条第3項の規定に反しているのではないかが争点のひとつとなりました。

 そのような分配を行う方法として,定款に会社法第109条2項の定め(一
定の権利について,株主ごとに異なる取扱いする定款の定め)を設けるという
方法があります(※1)。この会社は合弁会社と思われますが,当初の株主間
で締結した基本合意書にはその旨を定めていましたが,定款には定めていなか
ったようです。

 この点について裁判所はどのような判断をしたのでしょうか。基本合意書が
当初の株主全員の合意で締結されていることに触れ,次のような判断をしてい
ます。

 「定款変更という形式がとられていなくても,全株主が同意している場合な
どには,定款変更のための特殊決議があったものと同視することができるし,
他に権利を害される株主がいないのであるから,会社法109条2項の趣旨に
反するところはなく,有効であると解すべき」

 かなり特殊な事情があると思いますので,この判断を一般的なものとして解
釈することはできないように思いますが,株主数が少ない非公開株式会社の清
算手続において,残余財産の分配時に各株主の分配額を計算すると端数がでて
しまうときには,この会社法109条2項の規定は利用できるのではないかと
思いました。

 また,仮に株主全員の同意が得られるのであれば,会社法109条2項の定
款の定めをするまでもなく,持株割合と異なる方法で残余財産の分配を行う余
地あるのではないかとも思えました。

 たとえば,株式会社から持分会社に組織変更をする場合に,社員となる株主
について定款で定める出資の価額は,必ずしも,株主平等原則に従う必要はあ
りません。これは,組織変更にあたり,総株主の同意があるからです(※2)。

 これと同様に,残余財産の分配の場面においても株主全員の同意があるので
あれば,必ずしも,株主平等原則に従う必要はないという解釈もできると思い
ます。

 もっとも,会社法504条3項の規定は強行規定で,例外的な扱いをするた
めには,必ず会社法109条2項の定款の定めが必要という見解もあると思い
ます。

 実務において冒頭のような事案に当たった場合,どちらの見解で処理するか。
細かいところですが,こうした点が実務の難しさなのだろうと思いました。

(※1)この定めを定款に設けるには,原則として総株主の半数以上で,総
   株主の議決権の4分の3以上の賛成が必要となります(会309条4項)。
(※2)金子登志雄ほか『事例で学ぶ会社法実務【全訂版】』(中央経済社)
   309頁Q7-1-2


2018.05.09(水)【申請書の訂正方法】(藤沢・酒井恒雄)

 先日、約20年ぶりに、司法書士試験の同期合格の仲間と会合の機会を持ち
ました。新人研修のとき、ずっと一緒に勉強をしていたグループの仲間です。

 当時は、中央研修で2週間の泊まり込み、ブロック研修で1週間の泊まり込
みをしての研修でしたので、ちょっと大袈裟かもしれませんが、同じ釜の飯を
食べた仲間という感覚を持っています。

 私の開業地は神奈川県でしたが、他の皆は東京都で開業しましたので、それ
ぞれ独立開業をしてからは、なかなか会う機会がありませんでした。

 お互い再会するまでは、どれだけ外見が変わってしまったか不安だったとい
う話になりましたが、集まった全員が殆ど変りなく、それぞれの得意分野で活
躍しているようで、良い刺激を受けて帰ってきました。

 そんな折、ゴールデン・ウィーク中の1日を費やして、私物の整理をしてい
たのですが、偶然か必然か、収納部屋の奥の段ボールの中から、受験時代の模
擬試験の解答用紙が出てきました。

 その中に、文字の訂正方法を間違えているために減点されている、書式試験
の答案用紙がありました。当時の書式試験は、文字の訂正方法についても採点
対象になっていました。

 現在、模擬試験においてはどのような扱いになっているか分かりませんが、
本試験の書式問題では、文字の訂正方法については採点対象になっていないと
思います。

 私の受験時代、商業登記の書式については間接法の訂正方法しか認められて
いませんでした。司法書士にしか分からないと思いますので、間接法について
大雑把な説明をしますと、訂正箇所に直線を引いた上で正しい文字を記載し、
用紙上部の余白に「訂正した文字数」を書いたうえで捺印するのが間接法です。

 試験時間の終盤に答案を見直して誤りに気づき、長い字句を訂正する羽目に
なって、慌てて訂正する文字の数を数えていたことを思い出します。ちなみに
「、」や「。」も「字数」にカウントしますので、意外と訂正文字数を誤るこ
ともあるのです。それも試験のうちではありますが、受験時代には随分とイラ
イラさせられたことを思い出しました・・・・・。


2018.05.08(火)【有価証券報告書提出会社】
(東京・鈴木龍介)

 「金融商品取引法」という法律がありますが、これは従来の「証券取引法」
が改正・改称されたもので、現場では「金商法」と略されています(以下、
「金商法」といいます)。

 今回は、前回触れました「有価証券報告書提出会社(=有報提出会社)」に
ついてもう少し掘り下げてみたいと思います。

 有報提出会社とは、おおまかにいうと次に該当する会社ということで(金融
商品取引法24条1項)、必ずしも上場会社に限りません。

 ①上場会社
 ②過去に有価証券届出書の提出を要する募集株式の発行を行った会社
 ③株主数が1,000名以上の会社

 非上場の有報提出会社としては、サントリーホールディングス株式会社(資
本金700億円/従業員数3万人超/子会社に上場会社(=サントリー食品インタ
ーナショナル株式会社)あり)が有名です。

 有価証券報告書自体を作成するのも大変ですが、有報提出会社には、半期報
告書や臨時報告書の作成・提出が義務付けられていますし、金融商品取引法上
の監査を受ける必要があり(金融商品取引法193条2項)、当該会社への負荷も
小さくありません。

 たとえばMBO(マネージメントバイアウト)によって上場を廃止した場合
であっても、当然に有報提出会社でなくなるわけではありませんが、一定の要
件を充たし、かつ管轄財務局長等の承認を受けた場合には、有価証券報告書の
提出義務が免除されます。

 前回も少し紹介しましたが、会社法と金融商品取引法との融合化の一端とし
て有報提出会社が登場する会社法の規定には以下のものがあります。

 ・327条の2(社外取締役を置いていない場合の理由の開示)
 ・440条4項(決算公告義務の免除)
 ・444条3項(連結計算書類の作成義務)
 ・819条4項(外国会社の決算公告義務の免除)


2018.05.07(月)【平成時代】(島根・根来川弘充)

 来年の4月30日は、平成最後の日になります。平成もあと一年を切ること
になりました。

 近代日本の元号が、明治から始まるとして、大正、昭和、平成の中で、平成
が、日本が初めて他国と戦争をすることなく、終える時代になるならば、それ
は、日本の将来にとって、 大変意味のあることに思えます。

 隣国である北朝鮮に、ここ近年は不安を感じていたのですが、この時期に、
国際社会に態度を軟化させたことは、 率直に歓迎したいと思います。

 とは、言いつつも、あまりの急な変化に逆に不安を感じるところもあります。
あと1年、、、では、いけないのですが、とりあえず1年を、無事に過ごせる
ことを祈りたいと思います。


2018.05.02(水)【暦(こよみ)】(藤沢・酒井恒雄)

 今日は、ゴールデン・ウィークの真っただ中と言っていいのでしょうか?

 昨日、今日と休暇をとれば、そういう表現になることは間違いないと思いま
すが、そうでなければ、今週の金曜日、土曜日がゴールデン・ウィークの真っ
ただ中になるのでしょうか? 

 おそらく、名称の単位が「週(ウィーク)」なので、やはり今日が真っただ
中なのでしょうね。休みではないので、なんだか実感が湧きません。

 先週の会話には、「ゴールデン・ウィークの中の仕事の予定は?」という語
句が頻繁に登場していました。尋ねる側でもあり、尋ねられる側でもあったの
ですが、「うちは暦(こよみ)どおりです。」とか「うちはカレンダーどおり
です。」という答えが多かったように思います。

 ところで、この「暦どおり」という言葉と、「カレンダーどおり」という言
葉について、どちらを使った方がいいのかな?と、ふと考えてみました。

 私は、なんとなく「暦どおり」という言葉を使っているのですが、予定を聞
かれた場合には「カレンダーどおり」と言った方が正しいのかもしれません。

 「暦のうえでは夏ですが・・・」という表現もあるように、暦の予定と実際
の結果は合致しないことが多いように思います。なんだか、あいまいな部分が
含まれるという解釈にもなりそうです。そう考えると、日付、曜日、祝日を表
す「カレンダーどおり」とした方が、ビジネス的にはいいような気がします。

 ただし、仕事の様子を見て、場合によっては休暇にしてしまうかもしれない
と考えているなら、「暦どおり」という言葉の方がニュアンスが伝わるのかも
しれません。こんなどうでもいいことを色々と考えていると、休日モードにな
っている頭が徐々に冴えてきたりするのです・・・・・。



2018.05.01(火)【金融商品取引法】(東京・鈴木龍介)

 「金融商品取引法」という法律がありますが、これは従来の「証券取引法」
が改正・改称されたもので、現場では「金商法」と略されています(以下、
「金商法」といいます)。

 金商法は、上場会社の実務に携わるうえでは、会社法とともにケアしなけれ
ばならない法律といえますが、金融商品取引業者に関する規律という側面と、
大規模な公開会社に関する規律という側面があると理解しています。たとえば、
インサイダー取引や株式公開買付(TOB)については、一種実体的規律とい
えますが、会社法ではなく金商法に規定が設けられています。

 会社法は法務省所管の法律ですが、金商法は内閣府(金融庁)所管の法律で
す。そんなことで会社法と金商法で齟齬する部分がありますが、その背景には、
法律としての位置づけや目的が違うとともに、所管省庁が異なるという点もあ
るように思います。

 一方で会社法と金商法が交差しているところも少なくありません。たとえば、
金商法24条に有価証券報告書に関する規定がありますが、会社法ではこの有
価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならない株式会社(以下、「有
報提出会社」といいます)という、公開会社や大会社という会社法における会
社の類型とは別に定義づけをした会社に関する規定を設けています。具体的に
は、会社法440条で有報提出会社の決算公告義務を免除するといったものが
あります。

 ただ、金商法はその省令を含め頻繁に改正されますし、技術的な規定も多く、
理解・把握するのが難しいというのが個人的な印象です。とはいえ、先ほど述
べたとおり、少なくとも上場会社に適用される実体的な規律の部分と、組織再
編や資金調達というコーポレートアクションに関する開示の部分については何
とかついていかねばと思ってます。


2018.04.27(金)【司法書士と大学講師】(金子登志雄)

 鈴木さんは、5つの大学で教えているのですか。驚きました。1つでもすご
いのに5つとは………。

 私にも1つくらいは声がかかってもよさそうですが、その気配さえ全くあり
ません。なぜでしょうか。

 第1は、人脈の問題でしょう。拙著の読者には学者の先生も多いのですが、
彼らは非常勤講師採用の経営側ではありません。

 第2に、ひょっとして、私には、法律の初学徒である大学生向けに講義をす
る才能に欠けていることが著作からみえてしまうことがあるかもしれません。

 鈴木さんとは一緒に講師を務めたことが何度かありますが、受講生が誰であ
っても、分かりやすかった、よかったと評価されるのに対し、私の場合は、法
務テクニックを中心に語る傾向があるためか、非常によかったと全然分からな
かったに2分され、中間がありません。私の代表的著作の1つである次の読者
評にもそれがよく表れています。
          https://is.gd/AnnUsC

 この書評からもお分かりのとおり、これから勉強しようという素人の方から
は全く評価されません。私が司法書士会の新人研修の講師を断ってきた理由で
もあります。

 ふと思ったのですが、著者である私の肩書に目立つように、「〇〇大学法学
部講師」とあったら、読者もきっと「法律を学問として習得したことがないの
ではないか」という辛辣な評価を抑えたことでしょう。私も勉強初期の頃は、
学者本を理解できないと、自分の勉強や知識が足りないと自分のせいにしたも
のでした(高齢者になった現在は、学者本批判に変わりましたが)。

 司法書士は国家試験になってから、世間のイメージもだいぶ改善されました
が、いまだに、司法書士は、大学講師より見せかけの評価が低く、「司法書士
=実務は知っていても学問としての法律は不勉強」というイメージが残ってい
るようです。一面の真理ですが、人それぞれです。法学博士号をお持ちの司法
書士もいます

 しかし、鈴木さんのように大学講師が増えれば、「司法書士=実務にも学問
にも精通」という好意的なイメージが増えることでしょうから、司法書士の大
学講師が増えることは司法書士の地位向上にとって実に素晴らしいことです。
私は適性がありませんが、他の司法書士の方はキャリア・アップのためにも、
積極的に講師を引受けていただきたいものです。


2018.04.26(木)【合同会社の資本金の額の減少と定款上の出資の価額】
                           (仙台・立花宏)

 以前もこのコラムに書きましたが,合同会社の利用が進んでいるようで,平
成18年の会社法施行以来,設立数が順調に増えてきています。設立数が増えて
くるとその他の変更登記手続等も増えているのだろうと推測しますが,私自身
は設立登記に関与した件数と比較すると,あまり合同会社の変更登記には関与
する機会がなかったように思います。

 たとえば,昨年,株式会社の資本金の額の減少の登記手続は数件,関与させ
ていただきましたが,合同会社は1件もありませんでした。というより,これ
まで,合同会社の資本金の額の減少の登記手続はご依頼いただいた記憶があり
ません。株式会社と違い,合同会社の資本金の額を減少できる場合は,損失の
てん補のため(会620条),出資の払戻しのため(会628条),持分の払戻しの
ため(会628条)に限定されており,あまり実行するケースがないのかもしれま
せん。

 ただ,実際にご相談があったら,株式会社の資本金の額の減少以上に神経を
使う部分もあるように思います。というのは,資本金の額の減少ができる場合
が限定されているということのほかに,減少できる資本金の額が限定されてお
り,それぞれのケースで検討が必要ということがあげられます。さらに,持分
の払戻しに伴う場合は資本金の額の減少に関する債権者保護手続(会627条)の
ほかに,会社の剰余金と持分の払戻額との関係で必要となる債権者保護手続
(会635条)も検討が必要で,一定の場合にはその期間も1か月ではなく,2か
月となり,そして,いわゆるダブル公告(官報+定款で定めた公告方法(日刊
新聞紙or電子公告)では足りず,必ず知れたる債権者への個別催告が必要とな
ります。

 添付書類の検討等もあり,株式会社の場合とは別の難しさがあるといえるで
しょう。

 ところで,社員がA,Bの2名で,資本金の額が 200,定款に記載されてい
る出資の価額はA100,B100である合同会社を前提とします。

 この会社で損失のてん補のため,資本金の額を100減少して資本剰余金とし,
全額を利益剰余金に振り替えて損失の処理を行ったとします。この結果,資本
金の額は100(資本剰余金は0)となりました。

 定款上のAとBの出資の価額はそれぞれ100で合計すると200です。このまま
だと登記されている資本金の額100と定款上のA,Bの出資の価額の合計200が
合致しませんが,これは問題ないでしょうか。たとえばA50,B50と定款を変
更する必要があるでしょうか。

 結論として,定款の変更は必要ありません。会社法立案担当者の解説によれ
ば,「出資の払戻しと異なり,これによって,過去の出資の事実自体がなくな
るわけではない。したがって,「損失の処理」が定款に定めている「出資の価
額」自体に影響を与えることはなく,これを減少する必要もないし,損失の処
理により減少した資本剰余金相当額が出資未履行という状態になるわけでもな
い」(別冊商事法務「別冊商事法務300 立案担当者による新会社法関係法務省
令の解説」169頁)としています。

 結果として,登記された資本金の額と定款に記載された出資の価額の合計額
は異なることになります。違和感を感じるかもしれませんが,そもそも,それ
らは必ずしも合致するものではないとも言えます。 

 これも,会社法立案担当者の解説によれば,「出資の価額は社員間で各社員
が持分会社に出資すべきものとして定めた額であるところ,資本金・資本剰余
金は持分会社に対して社員が現に履行した財産の価額の合計にすぎず,出資の
履行時の財産の評価方法等のいかんによっては,定款で定められた出資の価額
とは必ずしも合致しないことになる」(別冊商事法務「別冊商事法務300立案
担当者による新会社法関係法務省令の解説」162頁)からです。

 いろいろな難しさがあるように思いますが,実際にご相談があったら、とて
もやりがいがある分野といえるのかもしれません。


2018.04.25(水)【用語】(藤沢・酒井恒雄)

 こんな電話が架かってきたことがありました。

 「すみません、決算が終わったので、決算手続の代行をしてもらえるでしょ
うか?」

 それを聞き、私は税理士と勘違いされていると思いましたので、「決算手続
の代行といいますと、税務申告のことですね? それであれば税理士に依頼し
てください。私は司法書士なので税務申告の代行は出来ないのです。」と答え
ました。

 すると電話の主はこう答えました。「いや、税務申告は済んでいるので、2
年に1回やる手続の方を代行してもらえないかと・・・。」。

 なるほど、そういうことかと納得しました。依頼人にとっては、決算承認と
役員選任の議案が同じ議事録上に記載されているので、これらはすべて、「決
算手続」というものだという認識だったようです。危うく、依頼を断るところ
でした。

 こんな電話が架かってきたこともありました。

 「今度、うちの取締役が解任になったから登記して。」

 電話の主は、とても明るい口調でした。きっと、ずっと抱えていた問題が解
決し、取締役を解任することで決着がついたのだろうと予想しました。

 念の為、その取締役の解任に至った理由を尋ねでみました。すると、こんな
答えが返ってきました。「理由? もう引退だよ。長年頑張ってくれたから退
職金も出すよ。」。

 なるほど、そういうことかと納得しました。依頼人にとっては、それが自主
的な退社であっても、そうでなくても、役員の任を解かれて退社するのだから
「解任」だという認識だったようです。危うく、解任の議事録を作成するとこ
ろでした。

 「用語」が意味することを、依頼人との間で共有しているとは限りません。
そもそも用語とは、「ある特定の分野で用いられる言葉」なのですから、特殊
なものだという認識を持ちつつ、注意して解釈しないといけませんね・・・・
・・。


2018.04.24(火)【大学で教える~その2~】(東京・鈴木龍介)

 前回の「大学で教える」の続きになりますが、今回は受講者(学生)側から
見て司法書士講師がどうかというところを取り上げてみたいと思います。なお、
想像による希望的観測を含みます。

 まず、専任の講師でない司法書士の授業は、学生にとって新鮮であることは
間違いないでしょう。司法書士に限った話ではないかもしれませんが、外部の
非常勤講師は、基本的に大学の授業に不慣れです。逆にいえば、普段の専任の
大学の先生の授業と違うという意味で、ある種の緊張感が生まれ、学生にとっ
てもマンネリ防止という効果はあるように思います。また、大学の先生を含む
学校関係者以外の“大人(社会人)”に触れる機会という面でも有用有益なと
ころも少なくないように思います(もちろん、アルバイトや就職活動を通じて
“大人”と接することはありますが、その場合とは立ち位置や心持ちが違いま
すので)。

 授業の中味という面では、いわゆる教科書にはない実務をベースにした現場
の話というのは、ほとんど聞いたことがないはずですし、見るもの、聞くもの
初めてということが多いかと思います。特に登記については、民法177条
(不動産物権変動の対抗要件)や会社法908条(商業登記の効力)といった
条文自体は知っていても、登記がどのような場面で、どのように使われている
かという具体的な話というのは司法書士にしかできないものといえますし、今
後、社会に出たときには役に立つ知識であると思います。また、登記を知るこ
とで、これまで今一つ理解できなかった民法や会社法の実体上のルールのイメ
ージが明確になるという効果もあります(私も過去に登記を学んでみて民法や
当時の商法がわかったという経験があります。)。

 多くの学生は、弁護士や税理士に比べ、司法書士という職業のイメージは薄
いように思います。生の司法書士と触れることにより具体的かつ現実的な姿を
知ることができ、とりわけ法学部の学生にとっては将来の進路の1つとなる可
能性もあるのではないでしょうか。


2018.04.23(月)【会社法の中の個別民法】(金子登志雄)

 大学時代は民法ゼミでしたし、民法には人一倍強い自信がありますが、商業
登記では民法を開くことがほとんどありません。会社法や商業登記法の枠内で
解決してしまうからです。

 これではいけないと、土日は、鈴木さんご紹介(4月10日本欄)の『民法
改正ここだけは押さえよう!』をざっと眺めてみました。ポイントがよく整理
されている優れものだったため、短時間で全貌が分かり助かりました。

 さて、民法は個別取引法(個人法)、会社法は個人の集合である集団規律法
です。自由主義国家の基本は「個」ですが(憲法13条)、会社には株主、債
権者、新株予約権者、従業員と多くの利害関係者が存在しますし、社会に対す
る責任もありますから、それらの利害関係を調整するのが会社法です。

 しかし、会社法解釈においても、ちらっと民法が登場することがあります。

 会社法332条によると、取締役の任期は一定の条件で定款で短縮したり伸
長することができますが、その場合でも、「株主総会の決議によって、その任
期を短縮することを妨げない」とあります。

 この結果、取締役としてABCを選任する際に、それぞれの任期を変えるこ
ともできます。これは、会社とAとの委任契約、Bとの委任契約、Cとの委任
契約の3つですから、それぞれ内容を変えられるからです。

 実例はほとんどありませんが、募集株式の発行でも同じです。1株5万円の
払込金額と決めたのに、ある株式申込人だけが1株6万円でよいから出資した
いというのに、それを断る必要はありません。個別の株式引受契約ですから、
民法が登場します(資本金計上額は現実の出資合計額が基準です)。金銭出資
と様々な現物出資が併存した場合は微妙に価値の差が生じるでしょうし、新株
予約権の割当契約を従業員との契約の場合と取締役その他との契約の場合で内
容を変えるのと同様です。集団を規律する制度の内容と個々の債権契約内容は
区別しなければなりません。

(御礼)
 アマゾンによると新著(事例で学ぶ会社法実務)の出足は好調のようで、御
礼申し上げます。著者3名に寄せられた感想では、実務内容が中心であること、
学者とは一線を画した実務の視点での切り口が歓迎されているようです。
           https://is.gd/VM0e2c



2018.04.20(金)【自立解釈の勧め】(金子登志雄)

 全訂版『会社法実務』について著者でもあり最初の読者でもある立花さんが
投稿してくれましたが、幸先さんもご自身のブログで書いてくれましたので、
ご覧ください。
       http://sssh.jp/kosaki/
 
 文章スタイルも着眼点も相違するお二人の参加で、面倒な校正も3人の目で
チェックでき、だいぶ助かりました。

 さて、月曜日に「不動産の現物出資の給付に登記が必要だとする学者見解が
ある」と本欄で批判しましたら、早速、親しいベテラン司法書士から「10年
ほど前に会社から弁護士が払込期日までに登記しないと増資が無効だといって
いるからすぐに登記してくれと急かされて泡を食った経験があります」という
体験談をいただきました。

 これとよく似た例として、会社法319条の書面決議につき、取締役会で議
題を決めなければだめだと顧問弁護士がいっていると会社にいわれた司法書士
が少なくありません。会社法の大家である江頭先生の著書にそうあるからです。

 この江頭見解は江頭一人見解ともいうべき少数説ですが、その顧問弁護士さ
んはそのことを知らず、大家の江頭先生のいうことだからと何の疑問も持たな
かったのでしょう。

 「権威」の見解は尊重しなければなりませんが、法律学者・弁護士・司法書
士は法律解釈のプロなんですから、自分はどう思うかを基本に据えなければい
けないのに、権威を鵜呑みにするのは困ったものです。相撲の世界でいう恩返
しになりません。

 この点で、会社法立案者の相澤氏、葉玉氏、郡谷氏らは、よい面でも悪い面
でも実にすごい人たちでした。旧商法の体系(権威)をことごとく破壊し、会
社法案審議の座長である江頭先生の意見も横に置き、革命的な会社法を作成し
てしまいました。

 その結果、発行価額を払込金額に、譲渡制限を取得制限に変えるなど、もの
の見方さえ逆転させてしまいました。視点の基準点も移動させてしまいました。
合併手続でいえば、これから、あれとこれをしてという現時点を基準にするの
でなく、将来の効力発生日を基準点として、その時点から過去をみて、あれも
これも済んでいればよいという順序を問わないものに変えました。旧商法の体
系に洗脳されていなかった証拠ですから、すごいことです。これで、あたかも
国語の商法を数学の会社法に変えてしまいました。曖昧性の排除や論理性とい
う意味では格段に進歩しました。

 なお、不動産の現物出資に増資前に登記を要するかの論点につき、立花さん
から「(肯定説では)不動産登記をしないと現物出資の効力が生じないことに
なると思いますが、現物出資の効力が生じないと不動産登記はできないのでは
ないでしょうか」と、まるで盾(たて)と矛(ほこ)の故事のような感想をい
ただきました。こういう疑問が瞬時に脳裏に浮かぶように鍛錬することが必要
です。


2018.04.19(木)【疑似実務体験】(仙台・立花宏)

 平成16年に司法書士試験に合格し,補助者として司法書士事務所に勤務しは
じめたのが平成18年,そして司法書士登録したのは平成19年でした。司法書士
登録してからだけでも10年以上過ぎたことになります。あっという間だったと
いう感覚しかありません。

 平成18年から10年間勤務させていただいた事務所では,商業登記だけでも,
比較的いろいろな種類の仕事を経験させていただきました。実務の難しさ,楽
しさを味わう貴重な経験をすることができました。金子先生及びその周辺の先
生と知り合い交流することにより,最先端の司法書士実務とその理論に触れる
機会を与えていただいております。また,地元の仲間同士での勉強会に参加す
る機会もあり,自分の意見を発信する機会が増えました。

 この10年余りの司法書士生活の中で,いろいろな実務論点を経験し,検討し
てきたはずです。いつか,そうした実務論点を自分なりにまとめてみたいと思
っていたのですが,自分に言い訳をして,なかなかそうした機会を作ることが
ありませんでした。

 今回,金子先生からお声がけをいただき,東京司法書士協同組合編『事例で
学ぶ会社法実務【全訂版】』(中央経済社)の出版に関与させていただく機会
を得ました。この本は平成26年に出版された金子先生の著書,東京司法書士協
同組合編『事例で学ぶ会社法実務 設立から再編まで』(中央経済社)を,そ
の後の法令改正や最新の実務論点をあらためて網羅し,全面的に見直した“全
訂版”です。

 平成26年に当初版が出版されたとき,早速購入して目を通し、その内容に驚
かされました。自分がいつかまとめたいと思っていた実務論点は当然のように,
しかもずっと深く理論的に,さらに,圧倒的に詳しく実務に即した解説がなさ
れていました。その内容を目にし,私は自分の理解の浅さを恥じることが多か
ったように思います。そして,さらに,私がまとめようと思っていたことの何
十倍ものたくさんの,しかも最新の実務論点がわかりやすく解説されていたか
らです。このような書籍の出版に関与するのは,私には一生無理だろうと思っ
ておりました。

 そんなところに,金子先生からお声がけをいただき,今回の改訂に参加させ
ていただくチャンスをいただきました。金子先生に、そして、一緒に著者とし
て参加された広島の幸先先生に引っ張っていただくばかりでしたが,おかげさ
まで,今回,出版に関与させていただいたことにより,私は自分ひとりで司法
書士業務を行うことにより経験するはずだった一生分の何十倍もの実務経験を
疑似体験させていただいたように感じます。

 この本をご覧いただくことにより,私と同じような疑似体験ができるものと
確信しております。もちろん,最初から最後までお読みいただくのが一番です
が、いつも手元に置いておき、会社法務・商業登記実務において疑問に感じた
ことがあったときに,さっと手にとり,まずは目次を目で追っていただくとい
う使い方でも、もちろん有益だと思います。きっと,目指す項目が見つかると
思います。

 まだ,商業登記実務の経験が少ない登録から間もない司法書士の方をはじめ,
最新の実務論点を確認したいベテランの先生まで,幅広い層の皆さまにお役に
立つ実務書だと考えております。ぜひ,たくさんの方々にお手にとってご覧い
ただきたいと思っております。


2018.04.18(水)【登録免許税】(藤沢・酒井恒雄)

 登記の依頼を受けるにあたり、当初予定していた方針が、登録免許税の額の
多寡によって変更されてしまうケースがあります。

 典型例の一つは、株式会社の機関設計の変更です。取締役会設置の非公開会
社で3人の取締役がおり、そのうちの1人が辞任あるいは退任することになっ
た場合、以後、取締役は2人体制として取締役会の廃止等をするか、もしくは
取締役1人を補充して引き続き取締役会設置とするか等を検討します。

 依頼人には、選択肢ごとのメリット・デメリットや、想定されるリスクも説
明し、最終的な方針を決めてもらいます。その結果、依頼人が取締役会を廃止
する方針にすると決めた場合において、次に登録免許税と報酬の話をすると、
「そんなにかかるなら考え直したい。」と言われてしまうことが少なくありま
せん。司法書士の皆さんも経験があることと思います。

 株式の譲渡制限の規定の仕方にもよりますが、大体が7万円の登録免許税が
かかるケースになります。中には、「先に登録免許税の額を言ってくれたら色
々頭を悩ませないで済んだのに。」などと言う人もいたりしますが、こちらと
しては、色々考えてから結論を出して欲しいので、先に登録免許税の話はしな
いようにしています。

 管轄外への本店移転だったはずが、登録免許税が6万円かかると説明した後、
管轄内の本店移転に方針変更となったこともありました。もっとも、このケー
スは、いずれの移転先もバーチャル・オフィスだったので、本店としての機能
云々はあまり考えなくてよい場合ではありました。

 先日は、合名会社の種類変更について、当初は合資会社への変更を予定して
いたにも関わらず、登録免許税の額に差があることを説明した途端、合同会社
に変更となりました。

 種類変更をして合資会社の設立をする場合の登録免許税の額は6万円ですが、
そのケースは、種類変更による合同会社の設立の登録免許税は、その最低金額
である3万円で収まるというものでした。こんな場面でも登録免許税がネック
になるのかと思いました。

 報酬額で調整すれば費用総額の差が出なくなるでしょうが、他人が登録免許
税を一部負担するような形になるのも変な話ですよね?登録免許税の額が意思
決定の重要な要素になってはいけないと思いますが、実際にはそういうことが
多く行われています。


2018.04.17(火)【大学で教える】(東京・鈴木龍介)

 今週から、あらたにお引き受けした大学(現在、スポットのもいれると5校
にもなってしまいました・・・)の授業が始まります。ちなみに内容は実務的
な視点を踏まえての民法です

 今回のものは、いわゆる春学期(半期)15回の授業です。もちろん非常勤
講師ですが、毎週同じ曜日、同じ時間に拘束されるというのは結構しんどいも
のです。一応、講師料なるものはいただけますが、まあ採算がとれるというこ
とはなく(大学によって基準等は異なりますが、おしなべて・・・です。)、
それがモチベーションにはなりません。

 では、どうしてやるかということですが、自分なりにいくつか理由はありま
す。まず1つ目は、断れない先(ルート)からの依頼というのがあげられます。
つまり、友人・先輩や何かと世話になっている方からのオファーということで
す。

 2つ目は、弁護士の場合、ロースクールの実務家教員との関係で、相当数の
弁護士が教壇に立っていますが、司法書士の場合、限定的であり(私が知る限
りですが、どのくらいの司法書士がどこの大学でどんなことを教えているかと
いったような調査データはないと思います。)、勝手に司法書士業界の知名度
アップ等々の発展のためと思ってお引き受けしています。

 3つ目としては、“教えることは学ぶこと”ということで、不明確だった部
分がクリアになったり、趣旨や理屈を整理できたりということが少なくありま
せん。とりわけ学生相手ですと、基本的なところから入るケースが多いので、
前提の知識の再確認という点でも収穫があるように思います。

 最後に付け加えるとすると、言い方はあれですが、マンネリ防止でしょうか。
普段の仕事や生活では、大学に行ったり、学生と話したりということはほとん
どないわけで、新鮮といえば新鮮です。

 おまけですが、大学を訪れた際に、学食に行くようにしています。ノスタル
ジーもありますが、学食はその学校の校風というか雰囲気がわかるような気が
します。


2018.04.16(月)【現物出資の給付完了とは】(金子登志雄)

 神崎先生主宰の商業登記倶楽部実務相談室に、要旨で、次のような質問があ
りました。

----------------------------------------------------------------------
 会社法34条1項ただし書には、「ただし、発起人全員の同意があるときは、
登記、登録その他権利の設定又は移転を第三者に対抗するために必要な行為は、
株式会社の成立後にすることを妨げない」とあるが、募集株式の発行時にはこ
のような規定が旧商法時代と相違し存在しなくなった(準用されなくなった)。
これを根拠に不動産の現物出資では登記しないと給付があったとされないとの
見解があるが、どう考えるべきか。
-----------------------------------------------------------------------

 調べましたら、中央経済の『逐条解説会社法⑶』128頁などに、そのよう
な見解が自信たっぷりに書いてありました。学者や弁護士には、こういう見解
もあるのかと少々驚きました。

 私は、18日販売の『会社法実務〔全訂版〕』119頁に「出資の履行ある
いは給付があったといえるためには、権利の移転が終わったと評価される必要
がありますから、不動産や自動車でいえば、所有権移転登記に必要な全書類の
授受がなされ、いつでも会社が登記あるいは登録の申請に臨める状態になった
ことが必要です」と書いたとおり、必ずしも登記までは必要としないという見
解です(きんざい『商業登記コンメンタール』では223頁)。

 さて、若い司法書士の皆さん、貴方の実務能力あるいは感性を試すよい問題
です。どちらが正当だと思いますか。反対説を理由付けで批判してください。
法律解釈は説得学であり、理由を付けて説明できなければ敗北です。

 学者見解に対する不勉強な私の反論は以下のとおりです。 
1.現物出資者がやるべきことを全て終わったのに、給付が終わっていないな
 どという見解は常識に反する。会社が払込期日までに登記しなかったら、給
 付未了とでもいうのか。
2.給付というのは出資者の行為であって、会社の行為を含まない。登記は共
 同申請であり、出資者だけではできないことを分かっているのか。
3.払込期日が日曜日であったり。登記所が休みの12月30日であったら、
 その日に株主になれないとでもいうのか(払込期日に株主になるので事前に
 登記を申請することはできない)。
4.会社法が募集株式の発行で34条1項ただし書の準用をやめたのは、払込
 期日に登記することもできるからであり、その日までに登記しないと給付が
 あったと認めないという趣旨ではない。

 以上です。私が常日頃「自分の頭で考えよ。権威ある学者見解でも、法務省
(の担当者)の見解でも、それらを鵜呑みにするな」といっている意味がお分
かりいただけたでしょうか。現実社会に詳しくない学者本や弁護士本に対して
は批判的な目で読むことが重要です。貴方の頭脳の主人は貴方です。洗脳され
てはなりません。

 なお、株式会社の現物出資で給付があったことを証する書面は登記の添付書
面ではありません。登記せずとも募集株式の登記の受理に影響しません。

  (実務の感性を磨きましょう。18日発売です)
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2018.04.13(金)【代表取締役追加の注意点】(金子登志雄)

 商業登記の書き入れ時である4月も第2週の終わりの日となり、登記所も徐
々に落ち着いてまいりました。

 私も予定仕事だけで考えると暇になりましたが、この時期は、突然に緊急案
件が飛び込んでくることもあり、まだ少々バタバタしております。

 まるで季節労務者です。4月初旬、6月下旬の定時株主総会後、10月初旬
だけでしか繁忙時期がないのですから………。

 もっとも、私以外の商業登記専門司法書士は、顧客数も多く常時多忙のよう
ですから、私だけが季節労務者なのかもしれません。

 さて、取締役ABCD(代表取締役A)で、Aが3月31日に代表取締役の
みを辞任し、4月1日付けでBを代表取締役に選定した場合の忘れてはならな
い注意点を上げてください。取締役会設置会社とします。

 第1に、Aの辞任届には届出印が必要です(商登規則61条8項)。
 第2に、Bを代表取締役に選定した取締役会議事録のAの押印は届出印がベ
  ストです(同6項)。Bの就任承諾書の押印は個人実印です(同5項)。
 第3に、B代表取締役の印鑑届が必要です。

 では、Aが代表取締役のままで社長から会長になり、Bを新代表取締役社長
に選定しAが使用していた社長印をBが使う場合の注意点は何でしょうか。

 意外に知られていませんが、Aにつき廃印届が必要です。Bの社長印届出で
自動的にAにおいて廃印されるわけではありません。一度、補正を経験すれば
決して忘れなくなります。


2018.04.12(木)【持分会社の決議とは】(仙台・立花宏)

 私達司法書士は商業登記の専門家ですから,実体法である会社法についても,
もちろん,日頃から勉強しております。ただ,勉強している範囲は,どちらか
というと,実務でご相談をいただいたりする分野が中心で,実務であまり触れ
ないような内容は手薄になっている場合もあります。そうしたところをカバー
するため,時々,そうした分野の条文を読み込んだりしています。

 先日もそれを行っていたところ,ふと気になる条文がありました。会社法第
859条の持分会社の社員の除名の訴えについての条文です。除名は会社法の
定める持分会社の社員の法定退社事由(会607条1項8号)です。除名の手
続は,対象の社員について一定の事由がある場合に,訴えをもって行います。
そして訴えを起こす前提として,条文上は対象社員以外の「過半数の決議」が
必要となります。

 条文を読んていて,ふと,持分会社における「過半数の決議」とは何だろう
と思いました。決議という言葉は,一般的に合議体において意思決定をした結
果について用いられるものと思います。そうすると,除名の訴えを起こすには,
社員総会のような会議体において決定する必要があるのでしょうか。しかし,
会社法上,持分会社について社員総会という組織は規定されていないはずです。

 日本評論社の『新基本法コンメンタール会社法3【第2版】』を見てみると,
この持分会社の決議に関する判例(最判昭33・5・20)があるようです。
判例によれば,あらかじめ決議事項を通知しなければならないという取締役会
設置会社の株主総会のような手続は必要はないとしています。持分会社の決議
については,会社法(当時は旧商法)に規定がなく,民法の組合の規定を準用
すべき(旧商法68条)であり,その民法の組合について,招集通知のような
規定がないことが理由です。

 また,同コンメンタールによれば,「決議事項に応じて総社員又は過半数の
社員の同意が得られれば決議は成立する」ということのようです。決議の趣旨
や要件は以上のとおりに理解しました。

 ただ,たとえば,会社法590条の業務の決定は「社員の過半数の決定」,
同法595条の利益相反取引の制限については,該当する社員以外の「社員の
過半数の承認」という用語を使用しています。除名についてはなぜ,決議とい
う用語を使用しているのかという点については調べきることができませんでし
た。

 なお,除名については,旧商法第70条でも会社法第859条でも,「社員
の過半数の決議」が要件とされています。しかし,前記の利益相反取引につい
ては,会社法859条では「社員の過半数の承認」となっていますが,旧商法
第75条では「社員の過半数の決議」となっていました。会社法になる際,文
言が変更されたのだろうと思います。

 会社法859条ではあえて「決議」という用語を残したのかもしれません。
そこにはどのような意味があるのか。手元にある資料では調べきれませんでし
た。機会をみて,いろいろな資料に当たってみたいと思います。


2018.04.11(水)【クラスメイトの呼び方】(藤沢・酒井恒雄)

 新学期が始まり、街では小学校に入学したての子供たちをよく見かけます。
新調のランドセルも眩しく、後ろから見るとランドセルだけが歩いているよう
で、なんとも微笑ましく思えます。年をとると、無性に小さい子がかわいいと
思うようになるのは何故なのでしょう? 不思議な現象です。

 我が家の小学生の子は、学年が上がってクラス替えがあり、お目当てだった
先生が担任になっただとか、誰々くんとは別のクラスになってしまったとか、
一喜一憂をしているところです。

 そんな中、「一郎くんとは、また同じクラスだったよ。」という話しが出ま
した。あまり聞いたことのない名前だったので、「あれ?うちの子は、一郎く
んと仲が良かったかな?」と思い、最近はよく遊ぶのかどうかと尋ねてみまし
た。

 すると、あまり一緒には遊ばないし、それほど親しくもないという答えが返
ってきました。それを聞いて何か不思議な感じがしました。

 例えば、同じクラスに「甲野一郎くん」、「乙野花子さん」という子がいた
とします。私の感覚からすると、この子たちをどう呼ぶかといえば、「甲野く
ん」、「乙野さん」という呼び方からスタートして、仲の良い間柄になったら
「一郎くん」とか「花子ちゃん」と呼ぶようになるのが自然の流れだと思って
いました。

 つまり、「氏」で呼ぶか「名」で呼ぶかは、お互いの親密度・距離感に比例
していると思っていたのです。しかし、今は、クラスのみんなが、はじめから
「名」で呼び合うことにしているようです。その方が親しみも出て良いという
理由かと思ったのですが、どうやら3組に1組ともいわれている高離婚率時代
と関係があるようでした。

 思い出せば、私が小学生のときにも同級生の氏が変わったことがありました。
氏が変わった後も、私はずっとその子を旧姓で呼んでいましたが、どうもそれ
が本人には複雑だったようで、私が旧姓で呼ぶと少し暗い顔になっていたよう
に思います。小学生くらいの子供がいる場合であれば、離婚をしても婚姻中の
氏を継続して使用している場合も多いかと思われます。たしかに、氏で呼ぶよ
り名で呼んでおいた方が、デリケートな問題に発展することが避けられるのか
もしれません。仲の良し悪しとは関係がないのですね・・・・・。


2018.04.10(火)【『民法改正ここだけは押さえよう!』刊行】
                           (東京・鈴木龍介)

 今回は宣伝(PR)となりますが、中央経済社より『民法改正ここだけ押さ
えよう』という書籍が発刊されました。これは、日本司法書士会連合会(日司
連)編の債権法の改正に関する第3弾として、私も日司連の民事法改正対策部
のメンバーとして編集・執筆に携わりました。

 同書は2020年4月1日から施行される債権法の改正について、市民の方々に
その内容を理解いただくことを主眼に、身近な法律問題に関連する事項をやさ
しく解説するという内容になっています。Q&A形式を採用し、イラスト満載
の本文91ページのコンパクトサイズです(本体価格は1,100円(税別)です)。

 一般向けの書籍として法律の専門家ではないビジネスマンや学生といった皆
さんを対象にしていますが、司法書士をはじめとするプロの方々でしたら1時
間もあれば読めてしまうと思いますので、債権法の改正のアウトラインをつか
むという点ではお奨めです(手前味噌ですが)。また、そういったプロの方々
がクライアントに説明したり、セミナー等の教材として使っていただくことも
念頭に置いています。

 ご興味・ご関心のある方は、是非とも手にとっていただければ幸いです。
以下、紹介のアドレスです。

    http://www.suzukijimusho.com/books


2018.04.09(月)【青年よ、商業登記に強くなろう】(金子登志雄)

 土日は九州ブロック青年司法書士連絡協議会の業務研修会の講師として福岡
訪問でした。テーマは種類株式でした(幹事の皆様お世話になりました)。
 
 元気いっぱいの青年の皆様ばかりでしたが、中には平成29年度合格者など
も相当数いらっしゃたようで、日司連のNSR3掲示板(司法書士の方は「N
SR3」で検索してください)も、商業登記倶楽部も神崎先生の名も当ESG
のHPもご存じない方もおられ、久々に新鮮(?)な感覚を味合うことができ
ました。

 高名(?)な講師である金子事務所が寂しい1人事務所で自分でコピーもし
ていることも驚きだったようです(悠々自適のマイペースの生活ぶりはうらや
ましがられたようですが)。

 無理もありません。いまは予備校で脇目も振らず予備校本だけで受験するの
が合格の最短コースのようですから、合格したばかりでは、実務知識も実務家
のことも知らないのが当然です。

 その意味では私のクイズ形式の決して予備校では教えない実務家ならではの
講義は新鮮だったようで、講義の休憩時間には質問者が10人以上もいらっし
ゃいました。

 全国の青年司法書士の皆さん、我田引水の宣伝を兼ねて商業登記の実務に強
くなる方法を教えます。

 4月中に次の本がでます。

    https://amzn.to/2JsasfK

 全部で381項目ありますから、これをA(十分に分かっている内容で不要)、
B(読んで頭では理解できたが実務で使えるまでには達していない)、C(十
分には理解できなかった)に分けてください。
 
 Aはもう読む必要はありません。
 Bは2週間後や1か月後に再読し、Aになるまで繰り返し読んでください。
 Cについても同じであり、CがBになり、最終的にAにしてください。

 これで貴方は、同県内で最も会社法及び商業登記に詳しい人材となり、実務
経験も増えれば、いずれは著者の立花さんや幸先さんの背中が見えてくるでし
ょう。



2018.04.06(金)【書面審査主義と直前チェック】(金子登志雄)

 月曜日の続きですが、今日は形式的審査主義(登記審査は書面審査に限定さ
れるという主義)の検討です。

 さて、4月1日付AB合併の登記申請の前に、3月中の役員変更その他につ
きBで4月6日に登記申請する場合、登記の委任状はさすがに4月1日以前に
するでしょうが、株主リスト等の日付を4月6日にしてよいでしょうか。

 これ何の問題もありません。①Bの役員変更等、②Aの合併変更、③Bの合
併消滅という順番で申請しても、①の審査においては、書面上、Bの合併解散
が表れていないため、それを考慮して審査してはいけないからです。

 同一管轄の吸収分割であれば、①Aの吸収分割変更、②Bの吸収分割変更、
③Bの役員変更等の順番でも可です(ただし、3月中に代表者が交代していた
ような場合は、この順番は避けるのがルールでしょう)。

 先日、面白い経験をいたしました。合併登記申請したら登記所より連絡があ
り、直前に住居表示実施による本店住所変更登記が申請されているので、新住
所に改めよという補正指示でした。

 不動産登記でしたら、直前に抵当権でも設定されていないかと調べるでしょ
うが、商業登記ではそこまでしません。私の知らない間に会社で住居表示の登
記をしたようで、時間差で合併登記が遅れてしまいました。

 合併登記申請が先であれば、住居表示の実施が1月や2月であろうと、書面
審査上何の問題もなかったのですが、よい経験でした。電子申請では昔の登記
を再利用することが多いのですが、再利用後に改めて会社検索して現状の内容
にしなければならないと反省した次第です。


2018.04.05(木)【えーひだカンパニー(株) 】(島根・根来川弘充)

 昨年、私はタイトルの会社の株主になりました。

 地域の過疎化に危機感をもった人々が、地元の農産物や加工品を、積極的に
販売して、町を活性化させようと、町の人々や、知り合いの方に声をかけて、
立ち上げた法人です。

 私もその呼びかけに応じ、島根では珍しい募集設立により、議決権無しの株
式に申込みをし、株主として認められました。

 島根県では、奥出雲町という場所が、お米(仁多米)や和牛のブランドとし
て、有名です。

 この地域は、正にこの場所に隣接するところであり、生産する環境も大きな
違いがないので、もう少し、名前が売れても良いと思っています。

 みなさまに是非知っていただきたいと思います。

       http://www.dojyokko.ne.jp/~ikiikihida/


2018.04.04(水)【合同会社の略称】(藤沢:酒井恒雄)

 先日、通販サイトのアマゾンで買い物をしました。一定金額以上の買い物を
すると送料が無料になるため、ついつい、それほど必要ではないものを一緒に
買ってしまいます。

 品物が届いて、ふと送り主の名称を見たとろ、
   「Amazon Japan G.K.」
と書いてありました。

 ぼちぼち合同会社の設立の依頼を受けてはいますが、ここしばらくの間、定
款に商号の英文表記を入れるケースがなかったので、会社の種類の英語での略
称(略称)について注意を向けていませんでした。

 会社法施行後、合同会社の略称は「LLC.」が圧倒的に多かったと記憶し
ています。気になったので少しだけ調べてみたところ、今は前述のアマゾン・
ジャパン合同会社のほかに、合同会社西友が「G.K.」の略称を使用してい
ました。

 ほかに、鞄等で有名なコーチ・ジャパン合同会社が「LLC.」、珍しいと
ころでは、コダック合同会社が「Ltd.」を使用しているようです。それぞ
れの親会社は米国にありますが、日本の合同会社は米国のLLCとは別物なの
で、その区別を明確にしている会社は、LLC.という略称を使用していない
ようです。

 会社法施行後間もない頃の話ですが、合同会社を設立した依頼人から、海外
からの送金を銀行で止められているので、何とかしてくれという連絡が来たこ
とがありました。

 話しによれば、振込先として指定された口座の商号が、依頼人の会社の商号
と異なるので入金できないと、銀行の担当者に言われたとのこと。原因は、末
尾に付されているLLCの3文字も商号本体の一部だと勘違いされてしまった
ことのようでした。

 もともと海外との取引をするために設立した会社でしたので、定款には商号
の英文表記の規定がありました。結局、登記事項証明書と一緒に定款を提示す
ることで、問題は解決しました。その時は、合同会社という類型の会社は、ず
っとマイナーな存在のままで、LLC.という略称もずっと定着しないだろう
と予想していました。ましてや、G.K.なんていう略称は誰も使わないだろ
うと思っていました。予測は全て外れ、合同会社の設立件数は増え続け、G.
K.という略称も主流になりつつあるようです。


2018.04.03(火)【『商業登記ハンドブック』】(東京・鈴木龍介)

 前回は江頭教授の『株式会社法』を取り上げましたが、商業登記関連の書籍
や論稿の執筆に際し参考・引用する文献として外せないのが、松井信憲氏が著
した『商業登記ハンドブック』(商事法務)で、会社法下の商業登記分野にお
いて、非常に高い評価を得ている1冊といえます。

 著者の松井氏は、現在、法務省に新設された法務大臣官房国際課長ですが、
その直前は、商業登記行政のトップともいえる法務省民事局商事課長を務めら
れていました。

 同書は、今から11年前の2007年-会社法制定の1年後-に初版が刊行
されました。松井氏は当時、法務省民事局商事課の局付検事でした。

 現在は第3版が2015年5月に刊行されていますが、平成26年改正会社
法(平成26年法律90号)を踏まえたものになっており、本文ベースで
742ページもの大著になっています。

 私が考えるところの同書の特徴(長所)ですが、1つ目としては、実務家と
りわけ商業登記のプロが知りたい、確認したい事項がほぼカバーされていると
いう点があげられます。

 2つ目としては、記述の根拠となる先例や文献をかなり丁寧に示されている
点があげられます。

 3つ目としては、解釈等に疑義のある部分を明らかにし、著者の私見(理由
付で)を披瀝している点があげられます。

 一点ご注意いただきたいのは、前記のとおり同書は第3版ですが、その第4
刷(2017年8月発行)はそれまでの第3刷から一部、内容が変更になって
いるということです。同じ版では増刷になっても、軽微な誤植の修正は行って
も内容の追加等は行わないのが通常です。

 ちなみに本文ベースでの742ページに変わりはありませんので、行間や改
ページで調整しているようです。具体的な変更内容としては、2016年10
月1日施行の商業登記規則の改正(平成28年法務省令32号)で導入された
「株主リスト」に関する記述が加わっているところです。

 そのほか2017年までに出された判例や先例が盛り込まれています。つま
り、同じ第3版でも該当ページが異なっている場合があるということで、同書
を参考・引用するときには、最新刷のものでページを確認する必要があります。


2018.04.02(月)【合併消滅時刻】(金子登志雄)

 今日は3月決算会社の役員変更や組織再編登記のピークの日です。登記所も
さぞ混雑することでしょう。

 組織再編といえば、吸収合併や吸収分割が典型例ですが、吸収分割会社では
委任状も株主リストも吸収分割会社が作成するのに、合併消滅会社では委任状
は不要で、合併承認総会の株主リストも合併存続会社が作成することにお客様
への説明が必要でした。

 「合併で会社が消滅済みだからです」という説明で、ほとんどのお客様が納
得してくれましたが、説明している私自身には割り切れないものがありました。

 これに関連して、100%親子孫の関係にある東京のA、大阪のB、福岡の
Cが、まず「福岡のCが大阪のBに合併」され、続いて「大阪のBが東京のA
に合併」されるという2段階の合併の際に(合併契約書は1枚とします)、大
阪法務局に申請するBC合併の方法はどうすると思いますか。

 大阪のBは合併消滅しているのに、その名だけで存続会社となれるでしょう
か。こういう案件に平成22年に遭遇したことがありますが、Bが生存してい
るという前提で、ごく通常に合併手続がなされていることを知りました。

 この件につき、拙著『親子兄弟会社の組織再編の実務〔第2版〕』21頁に
書きましたが、4月1日午前0時にBが委任状を作成し、同時にAB合併の効
力が生じBが消滅したと考えれば、何の問題もありません。

 これを敷衍すると、AB合併のBの株主リストも合併効力発生日付であれば、
Bが委任状を作成したと同時に株主リストも作成したと考えればB作成を否定
できないと考えます。同一管轄であれば、登記が完了するまではBの代表者の
届出印も登記所に残っており印鑑照合も可能です(代表者交代の商業登記規則
61条6項参照)。

 というわけで、Bの株主リストの作成者をAの代表取締役に限定するかのご
とき当局の運用は他の場合と整合性がとれているのか疑問ですが、Aの作成が
容易であるため、実務で問題とされることはほとんどないようです。


2018.03.30(金)【日常用語の期限と条件】(金子登志雄)

 佐川喚問はますます疑惑を深めましたが、皆様が佐川氏の立場だったらどう
しますか。現状のままでは生活は安泰かもしれませんが、世間の厳しい目が続
き将来にわたって平穏ではいられないでしょう。例の準強姦疑惑のY氏と同様
に海外に逃亡するしか道はなさそうです。彼の人生は何だったのでしょうか。
もっと生き様を大事にしてほしいものです。

 さて、月曜日の投稿の続きですが、その後もインターネットで調べたり、考
えたりした結果、例えば「4月1日から4月20日まで」という時の長さが有
効期間であり、4月20日が有効期限(締切日)ということに何の問題もなさ
そうです。

 要するに、基準日を始期に置き「いつから」を中心にすると有効期間になり、
基準日を終期に置き「いつまで」を強調すると有効期限と表現するのが一般的
な使用法ということでしょう。

 例えば、印鑑証明書の有効期間は3か月という場合は、印鑑証明書には発行
日しか記載されていないので、期間で表すしかなく、既に購入済みの食品にあ
っては製造日を知っても意味がないため、消費期限(食べてよい期限)や賞味
期限(おいしく食べられる期限)を表示するのだと思いました。

 しかし、この有効期限は必ずしも法令でいう法律行為の附款である期限とは
限りません。その有効期限が到来したからといって、法律行為の効力が発生し
たり、消滅するものとは限らないためです。

 前に、募集株式の第三者割当てで、「〇〇から申込みのあることを条件とす
る」は、法律行為が未成立段階だから法律上の条件とはいえず、単に「〇〇か
ら申込みがないと〇〇との株式引受契約が成立しない」という当たり前の意味
に過ぎず、議事録にこれを記載しないと補正になるという見解は間違いだと主
張しましたが、意外にも基礎の基礎になると専門家も勘違いしやすくなるもの
だと感じました。


2018.03.29(木)【種類株式】(東京・古山陽介)

 以前にも種類株主総会について触れたことはありますが、去年の後半あたり
から、種類株主総会やみなし種類株主総会の決議の要否について検討しなけれ
ばならない事案や相談が格段に増えています。

 金融機関がいわゆる属人的株式を保有している会社まであり、この会社の組
織再編の案件はなかなか緊張感がありました。

 ただ、種類株式を正しく運用していないと思われる会社が多く見受けられ、
特に優先配当については、現在でも、正確に理解されていないように思われま
す。

 金子先生・富田先生の著書「募集株式と種類株式の実務[第2版] 中央経済
社」148頁~150頁で解説されていらっしゃる「限度額」に関する考え方は、士
業の間でもいまだに浸透していません。

 自分の説明で納得してもらえない場合には、上記の3頁をクライアントに提
供させていただき、配当優先の考え方について理解してもらっています。種類
株式の依頼を多く抱える自分にとっては、この書籍はバイブルの1つとなって
います。

 なぜ会社法が改正されて10年以上も経過しているというのに、理解度が低
いのだろうかと不思議に思っていたら、その理由がなんとなくわかるような事
例に遭遇しました。

 既に数年前から配当優先無議決権株式を導入している会社から、普通株式の
一部を配当優先無議決権株式に変更したいという依頼があり、配当優先の現状
等の説明をしてもらったのですが、その会社は、定款で決められた配当優先の
金額や順位に関係なく、適当に普通株式より多い金額(毎年異なる金額)を数
年にわたって配当していたのでした。

 定款の内容や配当についての考え方が誤っていることを指摘したところ、会
社の担当者はもちろんのこと、税務署や会計事務所からも一切指摘や確認をさ
れたことがなく誰も疑問に思ったことがなかったそうです。

 誤りについて誰からも指摘を受けることがなければ、正しいものだと勘違い
していても仕方ありません。このことが、理解度が低くなっている原因の一つ
のように思うのですが、これって別に種類株式の話に限ったことではないです
よね。このご時世、疑問を持つことは、生きていく上で重要な要素であります
からね。

 ちなみに、このクライアントは、きちんと実情に沿った内容に定款変更を行
い、配当についても今期からは定時総会での議案内容を確認することになり、
継続的なお仕事をいただけるようになりました。


2018.03.28(水)【周年記念】(藤沢・酒井恒雄)

 先週の土曜日に、神奈川県司法書士会の新人研修がありました。

 午前中はグループ研修のチューターで約3時間、午後は統括講義の講師で約
2時間30分の講義を担当しました。休憩時間等を除いて、約5時間は喋って
いたと思いますので、長時間の講義に慣れていない私にはハードな一日となり
ました。

 人前で話をするのが久しぶりだったせいか、喉の使い具合(ペース配分)を
誤ったせいか、はたまた花粉症で鼻呼吸があまりできなかったせいか、午後の
講義では、途中から声が擦れてきてしまいました。情けない限りです。

 新人研修では、いつも、会社のライフサイクルの話しと、会社の年齢(創業
年数)の話を織り交ぜています。研修の本番が近付く頃になると、関連する話
題を物色するのが常なのですが、今年は帝国データバンクの記事を見つけまし
た。

 昨年の11月末にリリースされていたものなのですが、2018年に、創業
10年とか100年といった「節目」を迎える企業が、どれくらいあるかを調
査したようです。それによれば、創業から10年刻み(200周年以降は50
年刻み)で500周年まで集計をした結果、今年に節目の「周年記念」を迎え
る企業は、全国に13万9359社あることが判明したそうです。

 その中で一番多いのは「30周年」を迎える企業で、その数は2万4800
社だそうです。全国の司法書士の会員数が約2万2300人ですので、自分自
身の業務歴と並行して、ずっとお付き合いができる企業さんが、1人1社の割
合で存在することになります。

 商業分野の仕事はやらないなんて言ったら、もったいない状況ですよね?
冗談はともかくとして、創業→成長→安定・停滞→下降→再成長または廃業と
いう会社のライフサイクルがあり、同時に相当数の経営課題が発生し、その対
応が繰り返されているはずです。そこには司法書士としてお手伝できることも
沢山あると思われます。手伝って欲しい、一緒にやって欲しいと頼ってもらえ
る存在になれてこそですが、私たちが商業分野で貢献できることは、まだまだ
ありそうです。


2018.03.27(火)【『株式会社法』】
(東京・鈴木龍介)

 このところ、これまでに刊行した会社法・商業登記の書籍の改訂(もしくは
書名を変更したリニューアル)作業に追われています。

 そこで、参考・引用する文献として外せないのが、江頭憲治郎氏(現東京大
学名誉教授)が著した『株式会社法』(有斐閣)です。会社法の研究者のみな
らず企業法務に携わる実務家にとっても必携の1冊となっており、会社法関連
書籍の最大のロングセラー・ベストセラーといっても過言ではありません。

 同書は、今から17年前-旧商法・有限会社法下―の2001年に刊行され
た『株式会社・有限会社法』をベースとするもので、会社法の制定により書名
が『株式会社法』にあらためられました。

 現在は第7版が2017年11月に刊行されていますが、前版である第6版
から本文で10ページほど増えて1010ページの大著になっています。第7
編の“はしがき”によりますと、先般成立した、いわゆる債権法の改正(平成
29年法44号)の会社法への影響と、政府の「成長戦略」の一環と位置付け
られている「コーポレート・ガバナンス改革」についての言及を前版のものに
加筆したということです。

 同書の特徴の1つ目としては、研究者の手によるものではありますが、実務
(家)を意識した株式会社法の体系書である点があげられます。2つ目として
は、これまでの研究等について、その文献を示したうえで網羅されている点が
あげられます。3つ目としては、会社法だけでなく、金融商品取引法・税法・
登記といった会社法の周辺部分についても言及されている点があげられます。
加えて、著者である江頭教授が会社法の第一人者であり、一定の権威があるこ
とが広く認められている点も見逃せません。

 おそらく、現在、法制審議会で検討中の会社法の改正が成立したあかつきに
は、第8版が上梓されることになると思いますが、それに伴う自書の改訂等で
も参照ページの書き換えを要するということなりそうです。


2018.03.26(月)【有効期限と有効期間】(金子登志雄)

 拘束理由(逃亡・証拠隠滅)もないのに口封じに8箇月も拘束され家族との
接見さえ禁止されている籠池さんに国会議員が会えたようです。国政調査権を
裁判所も無視できなかったのでしょうか。それとも裁判所も政権の末期が近い
と判断して政権への忖度は不要と判断したのでしょうか。

 籠池さんは暖房もなく寒さでしもやけだったようですが、元気だったとのこ
とでほっとしました。早く一方の当事者である昭恵さんと同様に、暖かい場所
でうまいものを食べて自由に発言できるようにしてあげたいものです。これは
右か左かの思想とは無関係の人権問題ですから、黙っていることは共犯になっ
たようで私も辛いです。

 さて、現在行っている著作の改訂作業の際に「本人確認証明書に有効期限は
ない」と書きましたら、共著者から「この場合は有効期間という表現のほうが
適切ではないか」と指摘されました。

 商業登記規則36条の2には「申請書に添付すべき登記事項証明書及び登記
所が作成した印鑑の証明書は、その作成後3月以内のものに限る」とあり、こ
の見出しには、「登記事項証明書等の有効期間」とありますので、ここも有効
期間とすべきだとの指摘はもっともです。

 ところが、同じ証明書でありながら、司法書士会員証や手持ちのクレジット
カード(VISA)には、有効期限と明記されていました。

 「期限」は、条件と同じく法律効果が発生したり消滅する原因(法律行為の
附款)とされており、法文上は、償還期限、支払期限など「義務」履行の締切
日として使われる程度で、多くのケースが「期間」を使っています。

 こうしてみると、書面の有効性には、やはり有効期間を使うべきだったかな
と、徒然なるままに考えていましたところ、ハタと気づきました。「期限」は
法律行為の附款でも、「有効期限」という場合は「有効期間満了日」を指す意
味にすぎず、法令上の期限とは限らないと。パスポートには「有効期間満了日」
とあり、これを有効期限と表現することが多いのと同じです。

 結局、有効期間と有効期限は2者択一のものではなく、前者は「時の長さ」
に着目し、後者はその締切日に着目した表現にすぎないことに気づきました。

 本人確認証明書に戻りますと、結果として有効期間でも有効期限でもどちら
でもよさそうです。共著者は「作成日からいつまで」のものに限定されないと
いう「期間」に焦点をあてたため有効期間を主張し、執筆者の私は登記申請日
から遡っていつまでのものに限るとの限定はないと「限界点」を意識しため有
効期限という表現を使ったにすぎませんでした(最終的に修正はしませんでし
た)。

 著作は『事例で学ぶ会社法実務〔全訂版〕』でしたが、論点項目を47%も
増やした実務論点の百科事典であり自信作です。既に大阪での講義で配布した
チラシで予約注文もあり、4月末日までには出版されますので、お楽しみに。
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2018.03.23(金)【作成日と押印日】(金子登志雄)

 3月決算会社が事業年度の期首である4月1日からの役員変更につき、今年
は4月1日が日曜日であるため、各社とも試行錯誤中で、さまざま質問を受け
ています。

 4月1日付で就任承諾書をもらうが、4月2日になって4月1日付あるいは
それ以前の日付での就任承諾書を提出してもらうことでよいのか。

 私の回答は、口頭で4月1日以前に条件付で就任承諾を得ているのなら、そ
の日付での書面の現実の作成日が4月2日になっても、問題ないというもので
す。

 4月1日に就任したのに、本人確認証明書の取得日が4月2日でもよいのか、
印鑑登録していない人が4月2日に印鑑登録して印鑑証明書を取得した場合で
もよいのか。

 私の回答は、本人確認証明書や印鑑証明書は就任承諾日以後に準備したもの
でも問題ない、これが不可なら、2年前に就任して住所を移転した人に旧住所
のものを持って来いということになり不都合だというものです。

 本人確認証明書は登記申請の独立の添付書面であり、就任承諾書の附属書面
ではないから、登記申請日までに準備すればよいと考えるためです。ちょうど
株主リストが登記申請時点の代表取締役が作成し、株主総会時点の代表取締役
とされていないことと同様です。

 3月31日に代表取締役が取締役を辞任して4月1日に新代表取締役を新取
締役を含めて選定する場合に、電子メールで会社法370条の取締役会書面(
?)決議をすることが可能かという質問も少なくありません。

 私の回答は条文では電磁的記録の同意も認めているから電子メールで差し支
えない。ただし、商業登記規則61条6項で個人実印の押印が必要だから、こ
の同意を得た後に作成する取締役会議事録には個人実印を押す必要がある。決
議は4月1日に成立しているので、現実の議事録作成日が4月2日になり、2
日に個人実印を押しても問題ないというものです。

 電子メールで4月1日に同意しておき、4月2日に個人実印を押した4月1
日付の同意書面を提出した場合はどうでしょうか。同意の意思表明としては書
面ではありませんでしたが、同意の意思表示したことを証する書面にはなりま
すので(正確には電磁的記録で同意したことを証明する書面)、これも認めら
れると考えます。

 以上については異論もありそうですが、意思表示や決議が合法的になされて
いれば、その事実証明文書である書面作成日や押印日は後日になってもよいと
いうべきです。そうでなければ実務は回りません。取締役会議事録を開催日に
作成することは困難ですし、登記申請でも書面に不備があれば後日の追完で受
理され、申請時点での完璧性を求めていません。


2018.03.22(木)【昼食メニュー】(仙台・立花宏)

 最近,羽生善治竜王が国民栄誉賞を受賞したり,藤井聡太さんが最年少で棋
戦で優勝し,中学生で6段に昇段したりと,将棋界に注目が集まっています。
にわか将棋ファンの私は,先日,東京に行く用事があった際,将棋会館のある
千駄ヶ谷まで足を延ばし,藤井6段が対局の際の昼食に注文したというメニュ
ーを食べに某蕎麦店に行ってきてしまいました。

 藤井6段は将棋のプロですが,将棋のプロというのは日本将棋連盟でどうい
う立場なのでしょうか。気になって調べてみました。

 日本将棋連盟は公益社団法人です。公表されている定款を見たところ,プロ
の4段以上の棋士は正会員という立場で,この正会員が一般社団法人及び一般
財団法人に関する法律上の社員ということのようです。社員は,法人の意思決
定機関である社員総会の構成員です。将棋のプロになるということは,単に将
棋が強いということだけではなく,公益社団法人日本将棋連盟の意思決定にも
参加するということになります。ただ,藤井6段は未成年,しかも中学生です。
どのような形で社員として社員総会等に関与しているのでしょうか。その情報
を見つけることができませんでしたが、これはこれで興味深いところです。

 なお,公表されている正会員名簿をみたところ,日本将棋連盟の正会員は昨
年3月31日時点で,234名だったようです。

 職業柄,興味がわいたので,日本将棋連盟の定款をみてみたところ,第14条
第2項に、「10分の1以上の議決権を有する正会員は,総会の目的である事項
及び招集の理由を示して,総会の招集を請求することができる」という規定が
ありました。これは一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第37条の規定
をうけたものです。

 しかし,一般社団法人の場合,原則として,社員の議決権は一人1議決権で
す。正会員は234名ですので,ひとりで10分の1以上の議決権を有する正会員は
存在しないということになります。そうすると,先ほどの規定が適用される余
地はないのでしょうか。

 総会招集権は,必ずしも社員がひとりで請求する必要はなく,共同して行う
ことができます。よって,日本将棋連盟の場合は,24名の正会員が共同すれば,
要件をクリアし,総会の招集を請求することができるということになります(
昨年3月31日の場合)。

 棋士の方達が注文された食事のメニューを真似して食べるということばかり
でなく,法人の定款や運営等の情報を見てみると,いろいろ勉強になると思い
ました。

 ちなみに,このブログを執筆していた日に,将棋のあるタイトル戦が実施さ
れていて,インターネット中継をやっていました。対局者の昼食はオムライス
等と親子丼でした。なんだか,無性にオムライスと親子丼が食べたくなりまし
た。


2018.03.20(火)【債権法改正のシンポジウム】(東京・鈴木龍介)

 今回は、今週の土曜日(3月24日)に開催される債権法改正のシンポジウ
ムのご案内(紹介)です。

 詳細は以下のとおりですが、第2部のパネルディスカッションでは私も登壇
(コーディネイター)します。ご関心のある方は是非ともご参加ください。司
法書士以外の皆様のご参加も歓迎です。

シンポジウム「債権法改正と不動産取引-売買と担保を中心に-」

 「民法の一部を改正する法律」(債権法改正)が昨年6月2日に公布され、
平成32(2020)年4月1日から施行されることが決定いたしました。債
権法改正は債権法分野における120年ぶりの抜本的な改正であり、多方面で
影響がでてくると思われます。とりわけ不動産は国民にとって重要な財産であ
り、不動産取引に関係するルールの見直しも少なくありません。

 そこで、今般、「債権法改正と不動産取引-売買と担保を中心に-」という
テーマで以下のとおりシンポジウムを開催することといたしました。当シンポ
ジウムは、司法書士をはじめ金融機関、宅地建物取引業者や研究者の方々を対
象に、債権法改正における不動産取引に関する論点を整理し、今後の実務上の
対応等の一助となることを企図したものですので、是非ご参加ください。

主催:日本司法書士会連合会
日時:平成30年3月24日(土)13:00~17:00
場所:日司連ホール(東京都新宿区四谷本塩町4-37)
定員:100名(先着順)
参加費:無料
内容:
第1部:基調講演 「(仮)契約法における合意の意義
            ~売主の担保責任と金銭消費貸借を中心に~」
  石田剛氏(一橋大学大学院法学研究科教授)

第2部:パネルディスカッション
   「不動産取引の実務はこう変わる!? 債権法改正の影響と対応」

 パネラー:石田剛氏
      井上博史氏(三菱東京UFJ銀行 法務部 総括・国内法務グループ)
      初瀬智彦氏(司法書士)
      望月治彦氏(三井不動産 総務部 法務グループ)
 コーディネーター:鈴木龍介氏(司法書士)

 本シンポジウムに参加を希望される方は、以下のホームページから参加申込
書をダウンロードいただき、日本司法書士会連合会 事務局・事業部企画第一
課までFAX(03-3359-4175)にてお申込みください。なお、定
員になり次第締め切らせていただきます。
  http://www.shiho-shoshi.or.jp/
           (問い合わせ先)
             日本司法書士会連合会 事務局・事業部企画第一課
            TEL 03-3359-4171(代表)


2018.03.19(月)【久々の大阪】(金子登志雄)

 土日は大阪に行ってまいりました。近畿司法書士会連合会主催の会社法セミ
ナーでの講師を務めるためです。

 大阪を中心とする近畿地方には優秀な司法書士が多いため、私が講師を務め
るまでもないのですが、講義の主要テーマが「会社の計算」であったため、そ
れであればと引き受けました。

 テーマがテーマだけに参加者は少ないと予想していましたが、土曜日にもか
かわらず200名弱の方にお集まりいただきました。幹事の皆様に御礼申し上
げます。

 せっかく呼んでいただきましたので、何とか受講生の方々を5時間の講義の
間、眠らせないようにと、分かりやすく話すことを心掛けましたが、損益計算
書を通さない一種の資本取引の利益は「差益」といい、損益計算書の「(純)
利益」とは区別せよという説明は成功したようです。

 例えば、甲が100%子会社の乙を吸収合併しても、この利益(抱き合わせ
株式消滅益)は損益計算書上の利益だから、決算が確定するまでは貸借対照表
に計上されないから資本組入れすることはできないが、甲が兄弟会社の丙を会
社計算規則36条により合併したときは、丙の利益剰余金を甲が引き継ぎ、こ
れは合併差益として直ちに甲の貸借対照表に計上されるから、資本組入れする
ことができると説明しました。

 講義後は、幹事の皆様と懇親会でしたが、神戸の鈴木浩巳さんや京都の内藤
卓さんとは、10年以上ぶりでの再会であり、旧交を温めあい、楽しく、かつ
有意義な大阪行きでした。改めて、幹事の皆様、ありがとうございました。


2018.03.16(金)【日曜日に代表者交代】(金子登志雄)

 花粉症の時期ですが、皆様はいかがですか。私は、無縁だと思っていました
が、数年前から軽い症状が出ており、目薬を必携しています。

 原因を知りたくて医者にかかったら、それを知ってもアレルギーだから一生
治らないといわれ、原因追及の気がないようなので、それ以来、あきらめてい
ます。今の時期に目がかゆいのはスギ花粉だとベテラン(?)からいわれまし
たので、スギが原因ということにしておきましょう。

 さて、3月決算の上場会社の子会社から、代表取締役が3月31日に取締役
を辞任し、後任取締役を3月中の臨時株主総会で選任し、4月1日から新しい
代表取締役にする事案につき、いくつか相談を受けています。今年の4月1日
は日曜日であるため、代表取締役を3月中に予選したいが、登記所が認めない
傾向にあるので困っているという例のよくある話です。

 拙著を読んでいる方なら、株主は1名だから、3月中に行う後任取締役選任
の株主総会で定款を変更し付則で選定すればよい(会社法29条方式)、ある
いは付則に「4月1日からの代表取締役は株主総会で選定することができる」
と定め、株主総会で選定すればよい(会社法295条2項方式)と分かるので
すが、上場会社の子会社では定款変更は稟議事項であり、そう簡単には行かな
いのです。また、これらの便法は我々プロには容易な方法と感じるのですが、
そう思わない総務担当者も少なくありません。

 ある会社は日曜出勤するようですが、それをしない会社は日曜日に書面決議
をするところが多いといえます。個人実印を押して印鑑証明書を添付するため、
我々には何と面倒なと感じてしまいますが、サラリーマン世界では、その程度
のことは面倒な部類に入らないのでしょう。子会社ですから、社外役員がいな
いため、総務担当者も準備にそう苦労していないようです。

 私も無理に金子式便法は勧めていませんが、数通の印鑑証明書を預かるのは、
やや荷が重いなとは感じています。


2018.03.15(木)【慣れこそ重要
(金子登志雄)

 土日から愛用のノートPC(パナソニックのレッツノート)の調子がよくな
いため、新PCを購入しました。4月2日の組織再編の登記準備中に故障でも
したら困りますので、いまから安心・安全の体制整備です。

 これで、私も人並みに、ウインドウズ8.1から10に変わりましたが、P
Cは商売道具ですから、行ったお店にあった4種類のうち最も高価なものを購
入しました。機能の全部がついていると錯覚したためです。

 しかし徐々に分かったことは、8.1を購入したときはワードもエクセルも
インターネット接続のワイマックスも内蔵されていたのに、今はほとんどが内
蔵されておらず、インターネットでダウンロードする仕組みが中心のようで、
私には手に負えず、初期設定も業者に依頼しました。

 事務所に行きPCを開いたら、できるはずのタッチパネル機能が働きません。
スマホと同様に指で画面を大きくしたり小さくする機能です。お客様相談室に
電話したら、その機種はその機能がついていませんという冷たい返事でした。

 また、私にはよくわかりませんが、インターネットがエクスプローラーでな
くエッジとかいうものになっており、画面も操作もいつもと違います。慣れ親
しんだウインドウズ・ライブメールも使えません。

 ということで、ここ2日間ほとんど仕事にならず、司法書士ソフトのリーガ
ルさんや社内のPC巧者の助力を得ながら、PCと格闘中です。慣れるまでに
数週間はかかりそうです。

 昔、文章書きは一太郎というソフトを使っていましたがワードが標準となり
ワードに切り替えた際も、表が動くことにイライラしたものですが、いまでは
ワードの便利さに慣れました。その経験があるため、今度も慣れるまではひた
すら忍耐です。

 皆様が苦手とする会社の計算も同じですよ。1週間は我慢して集中的に学べ
ば得意科目になります。PC操作よりは、はるかに楽です。17日土曜日は、
会社の計算の講義で大阪に行きますが、今日の話からはじまりそうです。


2018.03.14(水)【ホワイトデー】(藤沢・酒井恒雄)

 今日はホワイトデーですね。バレンタインで貰ったチョコのお返しをする日
であるということは以前と変わりませんが、その中身は変化が起きているよう
です。

 バレンタインといえば、女性から男性へチョコレートを渡すという構図が頭
にあるのですが、現状は違うようです。誰が仕掛けたのか分かりませんが、い
つの間にかバレンタインに「友チョコ」なるものが登場しました。

 初めて聞いたときは、非常に違和感がありましたが、まんまとそれが定着し
たようで、本来のバレンタインの風景よりも、女性同士でチョコレートやお菓
子を交換し合う風景が主流となる勢いです。

 もっとも、「年に一度の女性から男性へ告白する日」なんていうシチュエー
ションが時代錯誤なのでしょう。いわゆる草食系男子が多い昨今、男性から女
性に告白することが減り、女性から男性に告白するのが普通のような感じにな
っているようです。そんな変化を反映して、今日も女性同士でチョコやお菓子
を交換し合う風景が多く見られることと思います。

 草食系とは直接関係がないかもしれませんが、あまりお酒を飲まない男性、
特に男子大学生が増えているようです。

 私は学生達とお酒を飲む機会がわりとあるのですが、実際、ウーロン茶やア
ルコール度数の低いカクテル等を飲んでいるは男子学生達で、焼酎や日本酒を
飲んでいるのは女子学生達です。

 何故、あまりお酒を飲まないのかと男子学生に聞いたことがあるのですが、
飲めないのではなく、酔っぱらった自分を想像するとカッコ悪いので、あまり
飲みたくないと言っていました。周りの何人かの男子が頷いていましたので、
特別におかしな考えではないようです。男子の中身も変化が起きているのでし
ょうか・・・・・。



2018.03.13(火)【定款の認証】(東京・鈴木龍介)

 このところ、「定款の認証」が少々騒がしくなってきているようです。

 そもそも定款とは会社等の法人の根本となる最高内部規律です。この定款で
すが、株式会社や一般社団法人の通常の設立時の原始定款には、公証人の認証
が効力要件です。

 そして、株式会社であれば本店所在地の公証人が認証しなければならないと
いう一種の管轄があります(東京都千代田区を本店とする株式会社を設立する
場合には東京の公証人(正確には東京法務局所属)の認証です。)。

 ちなみに、株式会社の原始定款の認証は、今の会社法の前身である商法が明
治時代に制定されたときからあった制度ではありません。昭和13年商法改正
(昭和15(1940)年1月1日施行)で導入され、これによって、それ以前に
比較し設立に関するトラブルが相当程度、減ったという評価がなされているよ
うです。

 この定款の認証手続ですが、政府が主導する政策会議において、法人の設立
手続を円滑かつスピーディーに行うという観点から認証手続を廃止するという
ことについて検討がなされているようです。また、同様の趣旨から管轄をなく
し、日本全国どこの公証人でも認証を可能とすることについても検討がなされ
ているようです。

 参考:首相官邸・政策会議「法人設立手続オンライン・ワンストップ化検討
   会(第5回)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/hojinsetsuritsu/dai5/siryou.html

 一方、法務省の研究会において、株式会社の定款の認証時に会社の実質的支
配者が反社会的勢力でないことを公証人に申告させることが検討されています。
趣旨としては、これにより株式会社の不正使用の防止を図りたいということの
ようです。

 こちらは、現行の定款の認証制度を維持したうえで別の観点で活用しようと
いうものといえます。法務大臣もこの件の談話を発表しておりますので、法制
化される可能性は高いように思います。

 参考:法務省「株式会社の不正使用防止のための公証人の活用に関する研究
   会」
  http://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00050.html

 実務家にとって利便性があがることや不正が抑制されることは歓迎するとこ
ろですが、それによってあらたな問題が生じたり、過度の負担が強いられるこ
とは容認できません。

 ということで、たとえば、資格者代理人特例法式ではないですが、弁護士や
司法書士が定款の作成を代理したときには、認証を省略することができるとい
うのはどうでしょう。あわせて、当該資格者が反社会的勢力のチェック等を行
えば一石二鳥かな、なんて考えたりますが、決して自分たちの職域を拡大・確
保するという趣旨ではありませんので、念のため。


2018.03.12(月)【トカゲの尻尾と青い鳥】(金子登志雄)

 一挙に政局が流動化してきました。北朝鮮問題では北と米国の急接近で安倍
日本は梯子を外されてしまいました。国内問題では森友問題の佐川国税庁長官
が辞任しました。

 全ては、佐川財務省の責任にされるのか、追い打ちをかけるように、佐川氏
は減給と懲戒処分も受けたようですが、資料の書換えを担当した末端も処分が
避けられないでしょう。文書変造罪の可能性もあります(1人はお気の毒に死
を選んだようですが)。
 
 組織あるいは上司あるいは自己の生活を守るために泥をかぶったのに、いつ
も最後はトカゲの尻尾切りです。しかし、仮にそうであっても同情はしません。
結局は、自身の保身のためにしたのですから、冷たいようですが自業自得です。

 この点、前川文科省前事務次官は、実にりっぱでした。「貧困と教育」に関
する関心から発した出会い系バーがよいを政権べったりの読売新聞の一面で口
封じのためにスキャンダル報道されてもひるまず 信念を貫き、未だにボランテ
ィアで夜間中学の先生を継続しているなんて尊敬に値します。
         https://friday.kodansha.ne.jp/event/102823

 急に下世話な話になりますが、嫌な上司もいない独立業の我々は気楽なもの
ですね。親分の身代わりに刑務所に行く必要もありません。

 その代わり、他の民間職業と同様に全て自己責任です。生活に窮しても誰も
守ってくれませんし、重い責任を一身で引き受けなければなりません。

 昔、上場会社の会社分割で、登記が予定時期に無事に終わらないと入札か何
かの手続に間に合わず、数億円の得べかりし利益に影響するが、その際は責任
を取ってくれるかと冗談半分にいわれましたが、我々の仕事にはそういう怖い
側面があります。

 今月は久々に怖い難しい仕事がいくつかありますが、重圧であると同時に、
やりがいがあります。やりがいを求めて官僚になった佐川・前川氏は無念な結
果だったでしょうが、自分の意思で動ける我々は、いくつになっても青い鳥を
探し続けることができます。この感謝の気持ちを夜間の法律学校でもあれば、
ボランティア講師を引き受けるのですが、ありませんかね。



2018.03.09(金)【カタカナ用語の氾濫】(金子登志雄)

 昨日の立花さんの投稿をみて、なぜ、日本の行政機関あるいはエリートは、
カタカナ用語ばかり使うのかと思った方も少なくないでしょう。

 私も、一般化されてきたワンストップならともかく、たかだか設立登記の手
続を迅速化する程度のことを「ファストトラック」という必要はないじゃない
かと思いました(原義は「優先道路」?)。
             https://is.gd/kPbwH8

 米国留学帰りの弁護士も、やたらとカタカナ用語を使いますが、口が商売の
弁護士なら、日本語を大事にし相手に通じる言語を使えといつも腹立たしく思
っています。

 テレビで若手芸人がやたら「シュール」と使うのも気になってネットで調べ
たことがありました。非現実的といった意味のようです。

 話を戻しまして、物書きの端くれである私は、フリガナ商号問題に関連して
「ファースト」ではなく「ファスト」という表記に関心を持ちました。どうも
前者はイギリス語であり、後者は米語のようです。

 どうせ、何かを優先させるなら、電車の優先席と同様に、カタカナ言語が通
じない年寄り優先の思いやりファストトラック化を図ってほしいものです。

 ちなみに、日本は自由な国で日本人は新聞やテレビの報道で時事問題に正し
い知識を持っていると思い込んでいる方にはショックなニュースが昨日ありま
した。土日にでもみてください。
         https://news.yahoo.co.jp/pickup/6274705
         http://ecodb.net/ranking/pfi.html



2018.03.08(木)【激しい変化】(仙台・立花宏)

 先日,金子先生が紹介されていらっしゃいましたが,3月12日から商業・法
人登記の申請書に商号・法人名のフリガナを記載することになりました。

 また,鈴木龍介先生が会社法改正の中間試案についての解説をされていまし
た。その他にも,内閣府におかれている日本経済再生本部という会議体では,
会社設立手続についての検討(オンライン・ワンストップ化)が進められてい
るようです(※)。

 最近の商業・法人登記を取り巻く環境はとても変化が激しいように感じます。

 フリガナ記載が始まる3月12日には,商業登記分野でもうひとつの変更があ
ります。会社の設立登記のファストトラック化です。

 これは,私達,申請をする側がなにかをするというものではなく,法務局内
部で,会社設立登記があった場合,これを優先的に処理するというものです。
原則として申請の受付日(オンライン申請の場合は添付書面が到達した日)の
翌日から起算して3(執務)日以内に登記を完了するものとされています。申
請件数の増える時期(4月,6月及び7月)は3日以内に完了することが難し
い場合もあり得ますが,この場合でも,できる限り速やかに登記を完了するよ
うに努めるものとされています。

 なお,この設立登記には,新設合併,新設分割及び株式移転によるものを含
むとされています。

 登記が早く完了することは申請する側にとってはありがたいことですが,法
務局の調査官の方々にとっては大変なこともあるだろうと思います。単に優先
的に処理するということだけではないからです。

 会社は同一の所在場所に同一の商号・法人名は登記できませんから,他に申
請されている登記内容等を確認し,それに抵触しないことを確認した上で優先
的に処理するものとされています。通達にはあっさりと書いてありましたが,
現場の方々にとって,これはとても大変なことなのではないでしょうか。

 また,この変更に関連して,私はもうひとつ意識したことがありました。設
立登記がファストトラック化される会社の種類が,株式会社と合同会社となっ
ていたことです。

 会社の種類はその2つのほか,合資会社,合名会社があります。合同会社は
平成18年の会社法施行の際に設けられた会社類型ですから,他の会社類型より
も歴史はずっと浅いということになります。それにもかかわらず,株式会社と
並んでファストトラック化の対象とされたのは,合同会社の利用が進んでいる
からと思われます。

 合同会社の設立件数は年々増加してます。平成29年の年間の統計は出ていま
せんが,法務省の登記統計の月別の資料をみて1月~12月までの設立件数を合
算してみたところ,株式会社は年間9万1千社程,合同会社は2万7千社程だ
ったようです。設立件数だけでいえば,株式会社の設立件数の3分の1に迫っ
てきています。

 合資会社,合名会社の平成29年の設立件数が,ぞれぞれ,約60件,100件
(※2)ということを考えると,新しい会社類型である合同会社が,会社類型
の中でも重要なものとなってきたと言えるのだろうと思います。これも激しい
変化といえるでしょう。

 私達司法書士は,会社の登記を通じて,会社の法務のお手伝いをさせていた
だいております。こうした激しい変化に対応できるよう,日々,勉強していき
たいと思います。

(※1)詳細は,内閣府のホームページの「主な本部・会議体」をご覧いただ
   ければと存じます。
(※2)月別データの合算の数字。


2018.03.07(水)【続・法人の役員と司法書士】(藤沢・酒井恒雄)

 司法書士と法人役員についてです。インフルエンザで倒れたときに短文で投
稿したきりで、その後は連続ものの投稿をしてしまいましたので、話を蒸し返
すような形になることをご了承ください。

 私なりに感じている、法人(主に営利会社の場合)の役員になるメリットは、
自身の業務の深みが増し、依頼人との距離が縮まるということです。

 私たち司法書士は、うっかりすると会社法と登記法の世界に閉じこもってし
まいがちです。もちろん、その世界のスペシャリストですから、誰よりもその
世界に精通していれば、それで良いのかもしれません。依頼人もそのつもりで、
登記以外のことについて相談することは考えていない場合もあろうかと思いま
す。

 ただ、そうなると、私たちは依頼人にとって決して身近な存在ではなく、手
続きが必要なときだけ接触する、ちょっと遠い存在となってしまいます。私自
身、この距離感が開業以来ずっと気になっているところです。

 役員として会社との関わりを持ちますと、生の事業活動の世界を覗きに行け
ますから、事業に対する理解も深まります。役員会議の場で話される、市場や
業界に関する情報、今後の予想等に関する議論は、大いに勉強になります。組
織内の問題が話題になることもありますので、私たちが得意なリスク対応業務
にもフィードバックさせることができます。

 役員会議の場や事業現場等で得た貴重な経験は、他の依頼人との会話も豊か
なものにしてくれます。ニュースや新聞で得る情報とは一味違う話題(もちろ
ん機密は他言しませんが)で盛り上がると、依頼人との距離がグッと縮まりま
す。多様な会社があり、多様な事業を行っていますが、競争する市場が重なっ
ていたり、隣接していたりします。業界が全く違うように思えても、意外と共
通の話題となることが多いようです。

 一方、デメリットと言いますか、なかなか大変だなぁと思う点は、良い意味
で空気が読めない人になる必要があるということです。役員会議がいい調子で
進み、さて終わりましょうかという雰囲気になっている中でも、これで終わっ
ていいのか?と思ったら、「あのスミマセン、ちょっとお聞きしていいですか
?」と、自分が気になったことを切り出さなければなりません。議場は、「お
い、なんだよ話がまとまりかけたところで・・・。」という雰囲気になる場合
もありますし、他の役員方から冷たい視線を送られてくることもあります。し
かし、そこは自身の役割と責任を思い出さなければなりません。

 何回も会議を重ねてきますと、他の役員の方々とも仲良くなりますので、こ
ういった雰囲気に耐えるのはちょっと辛いところがあります・・・・・。

 もっとも、会社の規模や性格(事業展開の仕方)、社長の人格等によっても、
会議の環境はかなり違うと思いますので、自分から言い出さなくとも、積極的
に意見を求められる場合もあろうかと思います。多少のストレスは避けられま
せんが、大いに司法書士としての経験やスキルを生かせると思いますので、役
員就任のオファーがあった際には、前向きに考えてみてはいかがでしょうか。


2018.03.06(火)【会社法の改正・中間試案~登記関係~】(東京・鈴木龍介)

 今週も会社法の改正について取り上げたいと思います。

 今回は、商業登記関連の改正提案の具体的な内容について、中間試案と法務
省による補足説明の該当部分を紹介します(少し長くなってしまい申し訳あり
ません。)。

新株予約権に関する登記
<中間試案>
【A案】
 会社法第238条第1項第2号及び第3号に掲げる事項(同法第911条第
3項第12号ニ参照)は登記することを要しないものとする。

【B案】
 募集新株予約権について会社法第238条第1項第3号に掲げる事項を定め
たときは,同号の払込金額を登記しなければならないものとする。ただし,同
号に掲げる事項として払込金額の算定方法を定めた場合において,登記の申請
の時までに募集新株予約権の払込金額が確定していないときは,当該算定方法
を登記しなければならないものとする。

<補足説明>
 試案第3の4は,新株予約権に関する登記事項のうち会社法第238条第1
項第2号及び第3号に掲げる事項の登記に関する見直しに関するものである。

 現行法においては,新株予約権を発行した株式会社は,新株予約権の登記を
する必要があり,その登記事項は,(ⅰ)新株予約権の数,(ⅱ)新株予約権の内
容のうち一定の事項(新株予約権の目的である株式数,行使期間等)及び行使
条件,(ⅲ)払込金額又はその算定方法(いわゆる発行価額)等とされている
(会社法第911条第3項第12号)。新株予約権の登記については,実務上,
払込金額の算定方法につきブラック・ショールズ・モデルに関する詳細かつ抽
象的な数式等の登記を要するなど,全般的に煩雑で申請人の負担となっており,
また,登記事項を一般的な公示にふさわしいものに限るべきであるという指摘
等がされている。

 部会においては,新株予約権の払込金額は,資本金の額に直接的に影響を与
えるものでもなく,会社法第238条第1項第2号及び第3号に掲げる事項を
新株予約権の発行の段階から登記事項として公示することは不要ではないかと
いう指摘や,本来的には払込金額のみを登記事項とすれば十分であるという指
摘等があったが,他方で,登記事項とすることにより利害関係者が比較的容易
にその内容を見ることができるという利点があるという指摘もされている。

 そこで,このような指摘を踏まえ,試案第3の4においては,会社法第23
8条第1項第2号及び第3号に掲げる事項(同法第911条第3項第12号ニ)
は登記することを要しないものとするA案と,募集新株予約権について同法第
238条第1項第3号に掲げる事項を定めたときは,同号の払込金額を登記し
なければならないものとし,例外的に,同号に掲げる事項として払込金額の算
定方法を定めた場合において,登記の申請の時までに募集新株予約権の払込金
額が確定していないときは,当該算定方法を登記しなければならないものとす
るB案の2案を掲げている。

株式会社の代表者の住所が記載された登記事項証明書
<中間試案>
 登記簿に記載されている事項(株式会社の代表取締役又は代表執行役の住所
を除く。)が記載された登記事項証明書については,何人も,その交付を請求
することができるものとし,当該住所が記載された登記事項証明書については,
当該住所の確認について利害関係を有する者に限り,その交付を請求すること
ができるものとする。

(注)インターネットを利用して登記情報を取得する場合における当該住所の
取扱いについても所要の措置を講ずることを検討するものとする。

<補足説明>
 試案第3の5において,登記簿に記載されている事項(株式会社の代表取締
役又は代表執行役(以下「代表者」という。)の住所を除く。)が記載された
登記事項証明書については,何人も,その交付を請求することができるものと
し,当該住所が記載された登記事項証明書については,当該住所の確認につい
て利害関係を有する者に限り,その交付を請求することができるものとしてい
る。

 現行法においては,代表者の住所が登記事項とされ(会社法第911条第3
項第14号,第23号ハ),何人も当該住所が記載された登記事項証明書の交
付を請求できることとされている(商業登記法第10条第1項)。部会におい
ては,個人情報保護の観点から,当該住所を登記事項から削除し,又はその閲
覧を制限することが妥当ではないかという指摘がされている。

 もっとも,代表者の住所については,(ⅰ)代表者を特定するための情報とし
て重要であること,(ⅱ)民事訴訟法上の裁判管轄の決定及び送達の場面におい
て,法人に営業所がないときは重要な役割を果たすこと(同法第4条第4項,
第103条第1項)などの意義が認められる。

 そこで,試案第3の5においては,代表者の住所は登記事項としつつも,当
該住所が記載された登記事項証明書の交付を一定程度制限するため,登記簿に
記載されている事項(代表者の住所を除く。)が記載された登記事項証明書に
ついては,何人も,その交付を請求することができるものとするが,当該住所
が記載された登記事項証明書については,当該住所の確認について「利害関係」
を有する者に限り,その交付を請求することができるものとしている。そして,
「利害関係」とは,登記簿の附属書類の閲覧について利害関係を有する者がそ
の閲覧を請求することができるものとする登記簿の附属書類の閲覧の制度(商
業登記法第11条の2)と同様に,事実上の利害関係では足りず,法律上の利
害関係を有することが必要であると考えられる。もっとも,具体的にいかなる
範囲で「利害関係」が認められるかについては,代表者のプライバシーの保護
の要請と代表者の住所が記載された登記事項証明書の交付を受ける必要性を考
慮して総合的に検討すべきであり,例えば,株式会社の債権者がその債権を行
使するに際して当該住所を確認する必要がある場合においては,「利害関係」
を認めることができると考えられるが,なお検討する必要がある。

 なお,代表者の住所を含む登記情報については,インターネットを利用して
取得することができることとされている。しかし,試案第3の5のような規律
の見直しをする場合には,インターネット上で取得することができる登記情報
から当該住所についての情報を除くなど,所要の措置を講ずることについて検
討する必要が生ずる。そのため,試案第3の5の(注)においては,これにつ
いて検討するものとしている。_

会社の支店の所在地における登記の廃止
<中間試案>
 会社法第930条から第932条までを削除するものとする。

<補足説明>
 試案第3の6においては,支店の所在地における登記(会社法第930条か
ら第932条まで)を廃止するものとしている。

 現行法においては,会社は,本店の所在地において登記をするほか,支店の
所在地においても,(ⅰ)商号,(ⅱ)本店の所在場所,(ⅲ)支店(その所在地を
管轄する登記所の管轄区域内にあるものに限る。)の所在場所(会社法第93
0条第2項各号)の登記をしなければならないこととされている。これは,支
店のみと取引をする者が本店の所在場所を正確に把握していない場合があり得
ることを前提として,支店の所在地を管轄する登記所において検索すればその
本店を調査できるという仕組みを構築するものであった。

 しかし,インターネットの広く普及した現在においては,会社の探索は一般
に容易となっており,登記情報提供サービスにおいて,会社法人等番号(商業
登記法第7条)を利用して会社の本店を探索することもできるようになってい
る。実際にも,会社の支店の所在地における登記について登記事項証明書の交
付請求がされる例は,ほとんどないようである。

 そこで,試案第3の6においては,登記申請義務を負う会社の負担軽減等の
観点から,会社の支店の所在地における登記を廃止するものとしている。

 ちなみに、中間試案については意見募集(パブリックコメント)が平成30
年4月13日(金)までの間で実施されます。

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=300080164&Mode=0



2018.03.05(月)【商号に振り仮名】(金子登志雄)

 金曜日の続きですが、「振り仮名株式会社」とあったら、商号のフリガナの
部分に、ふりかな、ふりがな、フリカナ、フリガナのうち、どれにすればよい
のでしょうか

 下記にありました。平仮名は不可で、片仮名限定のようです。フリ「カ」ナ
か、フリ「ガ」ナかは申請人が選ぶことになります。

      http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00109.html     

 「いろは株式会社」にも「イロハ」とするのでしょう。Home株式会社は、
ホウムではなくホームで、法務株式会社はホウムでしょうか。

 では、片仮名商号の「イロハホールディングス株式会社」にも、イロハホー
ルディングスとわざわざ片仮名を記載しないといけないのでしょうか。ここだ
け例外にはならないでしょうが、違和感があります。

 上場会社のNTTドコモは、エヌティティドコモかエヌティーティードコモ
か、KDDI株式会社は、ケイディディアイか、ケイディーディーアイか、ケ
イではなくケーか……、総務法務担当者でも、うっかり答えられないでしょう。
このために、わざわざ取締役会を開くところもありそうです。

 上場会社の日本水産や日本道路は、英文商号からするとニッポンのようでし
たが(道路はドウロ? ドーロ?)、日本M&Aセンターはニホンでした。日
本ハム株式会社は英文商号からは不明でした。もっとも、英文商号と振り仮名
は別問題です。新日鐵住金の英文商号は、NIPPON STEEL……です。
商号の振り仮名と英文商号は別問題ということです。

 私の顧客に、N-ABC株式会社がありますが(仮称です)、エヌ-エイビ
ーシーでよいのでしょうか。ハイフンは片仮名ではないため、ナカテンと同様
に用いることができず、エヌエイビーシー(かエヌエービーシー)とするよう
です。エヌ、エイビーシーはいけないのでしょうか。

 しばらく混乱が続くでしょうが、ローマ字商号のときのように疑問が生じる
余地のないほど分かりやすい具体例付の説明がほしいものです。


2018.03.02(金)【変化の激しい商業登記】(金子登志雄)

 本欄で法務省の人事異動が早すぎて商業登記に詳しい人が少なくなっている
と嘆いてまいりましたが、商業登記に詳しい『商業登記ハンドブック』の著者
である松井信憲氏が昨年4月に商事課長に着いたことについては、明るい話題
の1つでした。

 しかし、何と、松井氏もこの4月1日にご栄転だそうです。これでは幹部公
務員も、まるで、監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社の取締役並の
任期です。

 任期1年は株主総会のコントロールの強化だといわれていますが、現実社会
の実態は株主総会ではなく社長が取締役を指名しているため、社長の権限強化
であり、独裁の許容だと私は批判的ですが、当の本人も任期1年では落ち着い
て仕事ができないでしょう。仕事を覚え始めた途端に配置転換です。

 一方、商業登記自体も激しく動いています。近々に登記申請書の商号にフリ
ガナが必要になりました。
   http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00109.html

 すでに通達が出たということで、私も司法書士仲間から入手しましたが、ま
だ私の疑問は解決していません。

 例えば、「日本M&A株式会社」というものがあったとして、「ニホンエム
アンドエイ」というフリガナで申請し、次の登記申請の際に「ニッポンエムア
ンドエー」で申請したら、どうなるのでしょうか。後者が正しい場合はどうな
のか、最初は前者のつもりだったか、気が変わって今後は後者にしたいという
場合はどうなのか、フリガナの変更は認められるのか、いまだ不明です。

 日本語の特徴は、1つの文字がいろいろ読めることです。それが文化です。
ざおうさん、ざおうざん、両方あってもよいじゃないですか。女性天皇も夫婦
別姓も認めないがちがち保守の自民党の国会議員さんたちは、こういう表音文
字化的な動きには何の関心も示さないのも不思議です。


2018.03.01(木)【マイナンバーの管理 】(島根・根来川弘充)

 マイナンバー制度がはじまってから、私は、報酬を受けた法人または、その
依頼先の税理士の方から、「マイナンバーカードか、その通知書と免許証写し
をいただきたい。」という連絡をたびたび受けます。

 これは、マイナンバー法により、マイナンバーの提供を受ける際には、法人
に、本人確認義務が課せられているためです。

 一方で、マイナンバーの取得については、その目的、方法、管理には、法律
の規定があり、違反すると刑事罰が科せられます。

 つまり、法人に厳しい義務が課せられているから、私たちは、安心してマイ
ナンバーを開示できるという理論なのですが、どうも私は、抵抗を感じてしま
います。

 そもそも、マイナンバーは行政が発行しているものです。税務(行政へ)の
手続きであるなら、行政内で情報共有をすれば良いのではないかと思うのです。

 「罰則まで設けて管理をしなさい」と私たちに義務をつけておきながら、そ
の流通をより広げる仕組みをつくるということは、むしろ、危険を大きくして
いるとしか思えません。

 マイナンバー制度は、まだ、はじまったばかりで、今後、どのような危険が
あるものか不明です。だからこそ、より慎重な管理が必要と思います。

 ちなみに、私は、お願いされた法人の皆様には、「法制度に不備があると考
えるので、開示をひかえていること」と、「照会あれば、税務署に直接開示す
ることをお伝えして、必要であれば、それを記載した書面を提出させていただ
くこと」で対応しています。

 私の対応で、法人にご迷惑がかかることはないと確認はしていますので、法
人の皆様、ご理解のほど、よろしくお願いします。


2018.02.28(水)【スーパーボウル③】(藤沢・酒井恒雄)

 スーパーボウルの試合会場では、優勝をしたときに選手たちが身に着ける
「チャンピオン」の文字が入ったTシャツや帽子が予め用意されています。他
のスポーツの優勝決定戦でも、同じことが行われていることがあると思います。

 準備段階では勝者が判明していませんので、決勝を戦うどちらのチームにも、
優勝記念グッズが用意されています。そして、残念ながら敗者となってしまっ
たチームの優勝記念グッズは、お蔵入りとなってしまいます。

 昔、米国の通信販売サイトで企画された、優勝記念グッズの予約販売に申込
みをしたことがありました。申込みをしたチームが勝った場合には、Tシャツ、
帽子、DVD、パンフレットのセットが送られてくることになっていました。

 申込みをしたチームが負けた場合には、注文が自動キャンセルさせると書い
てありました。しかし、これは私が一部読み間違いをしていたようでした。そ
の年は、私が応援していたチームは負けてしましました。実は、このとき負け
たのはイーグルスで、勝ったのはペイトリオッツでした。

 さて、応援していたチームが負けたので、優勝記念グッズの予約申込みをし
たことなんどすっかりと忘れていた頃、海外から大きな段ボールの箱が届きま
した。

 「はて?これは何ぞや?」と箱を空けてみたところ、中には無造作に一冊の
パンフレットが入っていました。そこで私は初めて状況を理解しました。購入
申し込みをした優勝記念グッズのうち、自動的にキャンセルになるのは、市場
に出回ることが無くなった敗者のチームに関するグッズで、勝敗に関係なく販
売されるパンフレットについてはキャンセルにならなかったのです。

 キャンセルにならなかったのは仕方がないとして、雑誌一冊ほどのサイズの
パンフレットを、わざわざ大きな段ボールに入れて送ってくる神経が理解でき
ませんでした。

 ガラガラの箱の中にパンフレットだけ入っていると、余計に敗北感が身に沁
みます。嫌がらせか!と思いましたが、冷静に観察してみると、箱の大きさは、
ちょうどTシャツや帽子等の優勝グッズ一式が入るサイズでした。おそらく、
この企画で用意した配送用の段ボールは1種類だけだったのでしょう。配送コ
ストを考えない大雑把な商売のやり方に、呆れるしかありませんでした。ちょ
うど10年くらい前の話ですが、スーパーボウルが終わると、いつもこの経験
を思い出します。<おわり>



2018.02.27(火)【会社法の改正】(東京・鈴木龍介)

 会社法は、平成17年に制定され(平成17年法律86号/平成18年5月1日施行)、
平成26年に一度、改正がなされましたが(平成26年法律91号/平成27年5月1日
施行)、現在、また改正についての本格的な検討がなされているのはご存じで
しょうか。

 法務大臣の諮問機関である法制審議会の会社法制(企業統治等関係)部会で
平成29年4月から議論が開始し、今般、中間試案というかたちで公表、それに
ついてのパブリックコメントがまもなく開始ということになると思われます。

    http://www.moj.go.jp/content/001250065.pdf

 今回の改正の大枠としては、上場企業を含む大企業を対象としたものと評価
してよいかと思います。

 具体的には株主総会に関するものとしては株主総会資料の電子提供と株主提
案権の濫用防止措置があげられ、役員に関するものとしては柔軟な役員報酬の
仕組みと社外取締役の義務化があげられます。その他としては社債に関するル
ールの実務との整合や子会社化のための株式交付(一種の組織再編?)があげ
られます。

 商業登記関連に目を転じてみますと以下の事項が改正の俎上に上っています

  ① 新株予約権の登記事項の簡素化
  ② 代表取締役等の住所の公示の制限
  ③ 支店登記の廃止

 今後は、中間試案に関するパブリックコメントの内容等を踏まえ、法制審議
会で改正の要綱を取りまとめ、来年の通常国会には法案として上程される(?)
と思われます。

 とりあえず、今回は速報的なお知らせという感じで取りあげてみましたが、
私を含め企業法務に携わる者にとっては、今後の動向は要チェック、というこ
とになります。


2018.02.26(月)【心の置き場所】(金子登志雄)

 金曜日の本欄の投稿者は私だったのに一時的に鈴木さんと表示されており、
失礼いたしました。閲覧者数名の方から指摘されてしまいました(念のため、
本欄は外注であり、私には直せませんので、今後もありましたら、すぐに直せ
ないことをご了承ください)。

 鈴木さんの投稿を下書にしたためですが、私の補正で最も多い事例です。過
去には、定時株主総会議事録の監査報告者である監査役の名前が登記簿にない
人になっているとか、登記申請書でいえば、代表取締役の住所が違うとか(変
更前の申請書を下書にしたため)、たまにやってしまいます。

 重要部分に細心の注意を払っている反動みたいなものですが、沢庵和尚の有
名な言葉「心をどこに置こうぞ」(どこにも置いてはいけない。そこに気を取
られるから)の心境に達するのは、凡人の私には無理なようです(沢庵和尚だ
って出来ないから、こういう戒めを言葉にしたに相違ありませんが)。

 土日は補正ではなく著書(改訂版)の校正三昧でした。もう10年以上も著
作作業をしていますが、面白いもので出版社の校正担当者にも個性があります。
改訂前には何も指摘されなかった文章なのに、担当者が変わると校正コメント
が入ることもよくあります。

 この「……なのに」を「であるのに」に直されたりもしますので、「国語の
本じゃないのだから、些末なことを直すな」とカリカリしたり、誤字を見つけ
てもらい「ああ有り難い」と思ったり、「住み分け」を「棲み分け」に直され、
前者ではいけないのかと考えたり……、心の置き場所が定まらない日々でした。
しばらく、この状態が続きます。



2018.02.23(金)【社外役員と司法書士】(金子登志雄)

 確定申告時期ですが、収入の少ないフリーター時代が長かったため、納税で
きる身分にあることを喜んできた私ですが、さすがに今年は喜んで納税する気
にはなれません。あの佐川君のせいです。

 先週の金曜日は納税一揆のデモに参加したかったのですが、残念ながら急用
ができてしまいました。
   https://mainichi.jp/movie/video/?id=5734948970001

 さて、鈴木さんが終了したようなので、今回は、私が社外役員と司法書士の
問題を取り上げてみます。

 メリットは、社会勉強になることです。個人事業の司法書士業務とは全くの
別世界が味わえるでしょう。

 会社はピラミッド型の縦社会組織です。業種により軍隊調から共同事務所的
組織までさまざまですが、多くの場合がワンマン社長であって、取締役はイエ
スマンに過ぎません。これも一概に否定すべきではないと思っています。民主
主義よりも営利追及の効率性を最優先にする組織だからです。

 ワンマン社長の某社に社外役員2名が加わったので、少しは改善されるかな
と思ってみていましたが、全く効果がありませんでした。社長から指名されて
社外役員になったのですから、期待するほうが無理だったのかもしれません。

 もし社外役員になるなら、その会社の社長と相性が合うことと、業務が分か
ることを基準にすべきでしょう。現実の社外役員は会議では何も発しない方が
大多数です。業界の専門用語が飛び交い、会議の内容も分からず、居眠りする
しかないのかもしれません(これも苦痛です)。

 公認会計士の社外役員は数字が分かりますし、監査の関係でさまざまな業種
をみていますので居眠りせずに済みますが、弁護士は居眠り型です。その点、
司法書士はグループ再編や定時総会、諸規定の改廃についての議題であれば居
眠りせずに済むだけ、まだマシかもしれません。

 私も司法書士ソフト会社とか不動産関連業、運送業、ホテル、レストラン、
食品や生活用品の販売業なら、何とか社外役員を務められると思っていますが、
製造業や最近増えたIT専門やゲームソフトであったら会議で居眠りしてしま
うので、頼まれても断るしかありません。
 
 上場会社の場合、社外役員は取締役会への出席率が事業報告に記載されます
(施行規則124条1項4号)。出席率が悪いと、定時株主総会で株主から理
由を問いただされるでしょう。また、「〇〇の件について社外役員の〇〇さん
のご意見を尋ねたい」と、きつい質問が出されるかもしれません。

 というわけで社会勉強にはなりますが、決して精神的には楽ではありません。
ただ、上場が容易になったせいか、最近の上場会社の役員は、そのへんのお兄
さんと変わらない方も増えましたので気おくれせずに、若い司法書士の皆さん
は、率先してストレスの世界を味わいましょう。



2018.02.22(木)【解散と履歴書】(仙台・立花宏)

 先日、ある会社の担当者の方と、株式会社の解散登記手続についての打合せ
をしていました。事情があり、3月末で会社を解散するという内容です。3月
上旬に株主総会を開催し、解散と清算人選任の決議をする予定にしているとの
ことでした。

 その内容をお聞きし、頭をよぎったのは、解散日までの期間が2週間を超え
る期限付解散決議は、会社の存続期間を定めたものとして存続期間を登記した
上で、解散登記をしなければならないという登記実務の取扱いです(平成22年
11月25日土手補佐官事務連絡)。そうすると、登録免許税の負担が大きくなる
こともありますが、解散日が会社の想定と異なってしまうのではないかと思わ
れました。

 たとえば、3月17日開催の株主総会で、3月31日付で解散すると決議した場
合は、平成30年3月31日株主総会の決議により解散と登記されることになりま
す。

 一方、3月16日に株主総会を開催し、3月31日付で解散すると決議した場合、
まず、存続期間として、平成30年3月31日までと登記し、その上で、平成30年
4月1日存続期間の満了により解散と登記することになります。登記実務上、
存続期間を定めた場合、存続期間の翌日が解散日となると扱われているからで
す(神﨑満治郎ほか『論点解説 商業登記法コンメンタール』(きんざい)290
頁)。さらに、解散日がずれるだけでなく、清算事務年度もずれることになり
ます(会社法494条1項)。

 その旨を説明すると、「へぇー、そうなんですか」と驚きながら、会社の担
当者様は、いたずらっぽく笑い、意外なことをおっしゃいました。

 「じゃあ、今後、僕の履歴書に経歴を書く時、その解散する会社の役員だっ
た期間は何月何日までと書けばよいのですかね」

 その担当者様は、親会社から解散する子会社に出向し、取締役になっていら
っしゃったのです。解散すると、会社は清算株式会社となり、取締役はその地
位を失うことになります。取締役の退任日は、存続期間の満了した3月31日ま
ででしょうか。それとも、解散日である4月1日でしょうか。

 解散の日という意味では間違いなく前者ですが、解散済みといえるのは4月
1日0時からですから、後者の回答もあながち捨てきれないような気もしてき
ました。解散した場合の取締役の登記は職権抹消されるので、退任日を意識し
たことがありませんでした。どう返事してよいのかと迷い、考えてから、改め
てご連絡を申し上げる旨をお伝えしました。

 するとそのご担当者様は、笑いながら、「冗談ですよ。100%子会社ですし、
株主総会の開催日は調整できると思います。決議の省略も検討できますし」と
おっしゃいました。

 どうやら、私がよほど深刻な顔でもしていたのか、肩の力を抜かせようとし
てくださったようです。私は、ほっとしながらも、まだまだ、顧客との対応に
慣れていないことを実感させられました。


2018.02.21(水)【スーパーボウル②】(藤沢・酒井恒雄)

 プロ・フットボール(アメフト)の全米チャンピオン決定戦である、スーパ
ーボウルは、出場チームのホーム(本拠地)でもアウェイ(敵地)でもない場
所で開催されます。

 ちなみにアメフトの英文スペルは American Footballであり、スーパーボウ
ルは Super Bowl と書きますので、これをカタカナ表記にしますと「ボール」
と「ボウル」の違いが発生します。

 実際には、スーパーボウルの開催地は数年先まで決まっています。なので、
その年に勝ち上がったチームが開催地をホームとするチームであれば、ホーム
・ゲームになる可能性があります。

 しかし、スーパーボウルの歴史上、一度もそのようなケースになったことは
ありません。なんとも不思議なものです。今年の開催地はミネソタ州のミネア
ポリスでした。出場チームは、ニュージャージー州ニューイングランドのペイ
トリオッツと、ペンシルバニア州フィラデルフィアのイーグルスで、両チーム
とも本拠地は開催地とは同じくらいの距離に位置しています。

 こんなこと書いていますが、以前も書きましたとおり、私はアメリカに行っ
たことがありません・・・。そういったニュートラルな地で行われた試合にも
関わらず、ペイトリオッツにはブーイング、イーグルスには大声援があったよ
うです。

 イーグルスは前評判でも相当不利でしたし、ペイトリオッツは何度も優勝経
験があるので、判官贔屓(ホウガンビイキ、あるいは、ハンガンビイキ=「弱
者に同情して応援する感情」)があったようです。判官贔屓は日本人ならでは
の感情かと思っていましたので、これには驚きました。もっとも、ペイトリオ
ッツのオーナーはトランプ大統領擁護派である等、別の複雑な事情もありまし
たので、純粋な判官贔屓がどれくらいあったのかは不明です・・・・・。
                              <つづく>


2018.02.20(火)【法人の役員と司法書士~その3~】(東京・鈴木龍介)

 先週、予告しましたとおり、今週も【法人の役員と司法書士】です(これで
最後にするつもりです。)。

 今回は、司法書士サイドから見ての法人の役員ということで、そのメリット
とデメリットについて考えてみたいと思います。

 まず、司法書士が法人の役員となるメリットですが、その法人の業務などを
通して司法書士業務以外に触れることで多くのあらたな知識を得ることができ
ます。これが結果として、司法書士業務にフィードバックできることも少なく
ないように思います。たとえば、社会福祉法人の評議員になることで、そこで
見聞きした知見が後見業務の身上監護の面で役立つといったイメージです。

 司法書士業務では知り合うことができないような人たちと知り合うことがで
きるのもメリットの1つです。不動産の取引など単発になりがちな司法書士業
務と違い、ある程度の期間、密な関係を築くことができます。とりわけ地域の
非営利法人の役員の場合、地元の名士の方々が名を連ねていますので、そのよ
うな縁で司法書士業務に良い影響(ブランディングや人脈等々)やあらたな仕
事がもたらされるなんてこともあるかもしれません(それだけを狙ってという
のはどうかと思いますが・・・)。

 副産物的ではありますが、法人の役員として、いくばくかの収入を得られる
なんていうこともメリットとしてあげてもよいかもしれません。非営利の公益
型の法人の場合には、実働等と見合わないことが多いですが、定期的な実入り
ということにはなります。

 逆に、司法書士が法人の役員となるデメリットですが、役員として法的責任
を負うということがあげられます。専門家として一般より重い責任を問われる
可能性もありますし、道義的な責任を追及されることも念頭にかなければなり
ません。

 非常勤の役員であれば会議などの物理的な時間の拘束はそれほどでもありま
せんが、準備や検討に、それなりの時間を費やすことは十分、想定され、司法
書士業務に影響が出ないとも限りません。

 役員を務めている法人からの司法書士業務の依頼については、注意が必要で
す。たとえば、不動産登記において、売主が当該法人であったような場合で、
売主と買主の双方代理することは利益相反となる可能性が高いと思われます。

 一方で、商業・法人登記については、単独の報告的ということで、そのよう
な関係に立つことはありませんが、独立性が求められる社外役員の場合には、
仮に多額の報酬を得たようなケースでは問題になるかもしれません。

 いずれにしても、法人の役員に就任する前には、このあたりのデメリットも
きちんと把握し検証しておくべきでしょう。

 最後に、司法書士が法人の役員になるための前提条件は、未知のものに挑戦
しようとする好奇心と、ちょっとした勇気かなと思います。

 ということで、法人の関係者のみなさま、もし役員のなり手をお探しのよう
でしたら司法書士に声をかけてみてはいかがでしょう。


2018.02.19(月)【意味不明登記】(金子登志雄)

 種類株式や新株予約権付社債など難解な登記になると、登記所も十分に対応
できないのか、「大弁護士事務所の作成ですね。(反論されると面倒だから)、
まぁ、いいか」で受理してしまうのではないでしょうか。

 それにしても、弁護士作はわざと分かりにくくしているのかとしか思えない
内容が少なくありません。

 次は某上場会社の登記記録から抜粋したものですが、意味が分かりますか。
----------------------------------------------------------------------
新株予約権1個の行使の目的となる株式は、発行会社の普通株式0.9株及
びA種優先株式1株(以下併せて「単位株式」という。)とする。
 本新株予約権の行使に際して交付される単位株式数は次のとおりとする。

         本社債の発行価額の総額+利息相当額
  単位株式数= ──────────────────
             転換価額
----------------------------------------------------------------------

 仮に分子が1億円で分母が1万円だとしますと、単位株式数は1万株になり
ますが、この場合、新株予約権の目的となる普通株式とA種優先株式は、それ
ぞれ何株でしょうか。

 もちろん、私には分かりません。管轄登記所も分からないまま受理したので
しょう。しかし、商業登記のプロを自認している限り、「分からない」は私の
恥ですから、意味合いを探ってみました。

 はじめは、「併せて単位株式」という文章に引きずられて、単位株式数は普
通株式とA種優先株式の合計数だと思いましたので、1万株を0.9対1.0
に配分してみましたが、発行済株式数の増数に合いませんでした。

 最終的に計算が合ったのは、1万株×0.9=9000株が普通株式の増数
で、1万株×1=1万株がA種優先株式の増数でした。

 なぜ、ごく普通に、「新株予約権1個の行使の目的となる株式の種類は普通
株式とA種優先株式とし、普通株式については、次の算式で計算された単位株
式数に0.9を乗じた数とし、A種優先株式については、単位株式数と同数と
する」と、分かりやすく書かないのでしょうか。

 まさか、分かりやすくすると、権威がなくなり、報酬を請求にしにくくなる
という理由ではないと思いますが、私自身は、こういう分かりにくい内容はプ
ロして恥ずかしいことだと思っています。

 弁護士が訳の分からない難しい文章を作成すると、さすがは優秀な先生だと
評価され、司法書士が難しい文章を作成すると、無能扱いされて次から仕事が
来ないという世間の風潮も困ったものですが、われわれも、裸の王様に対して
は、おかしいぞと批判する純粋な目を持ちたいものです。



2018.02.16(金)【取引しない慣習】(金子登志雄)

 今日は別の話題にする予定でしたが、昨日の1月2日・3日は休日かという
点につき、わが業界で最も有名な司法書士ブログにコメントが載っていると聞
かされ、さっそく閲覧しました。内藤さんのブログです。

  http://blog.goo.ne.jp/tks-naito/e/2c722a39dc7a13c750f095bf5f0cd814

 そこに、――東京法務局商業登記研究会編「商業法人登記速報集」330頁
であり、「国民生活の実態を考慮すれば,1月2日・3日は民法142条にい
う「休日」に該当すると考えられる」ことが理由付けとされていた――とあり
ましたが、その内容につき全く知りませんでした。

 アマゾンによると日本法令から旧商法時代の平成8年2月に出版された本の
ようです。皆さん、ご存知でしたか。そういう本の名前は聞いたことがあるが、
内容までは……というのが私を含め大多数の司法書士でしょう。

 しかし、法令の不知は登記申請人の責任ですが、官報公告を扱う印刷局を含
めて誰も知らない東京法務局見解に対する不知は登記申請人の責任にならない
でしょう。現に、それ以降も1月2日や3日を期間満了日とする登記は東京法
務局管内を含めて、いくつも受理されてきたはずです。

 非常に残念なのは、最高裁は控訴人の利益のために1月2日・3日は休日だ
としたのに、東京法務局は逆に登記申請人の不利益のために1月2日・3日は
休日だという見解を出したことです。判旨の悪用としか思えません。

 ところで、民法142条「期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律に
規定する休日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある
場合に限り、期間は、その翌日に満了する」の「取引をしない慣習」の意味で
すが、学生時代から、何の取引をいうのかと疑問に思っていました。水曜日が
定休日のデパートは、水曜日が休日で、水曜日に合併に異議ありといってはい
けないのでしょうか。

 しかし、今は債権者異議申述の手続でいえば、「異議の効力を認めてはいけ
ない慣習」のことだと思っています。登記申請期間の2週間でいえば「登記申
請してはいけない慣習」のことです。

 登記申請できないのに1月2日や3日で2週間が終了したから、過料に処す
というのは許されませんが(この関係では控訴期間と同様に休日です)、債権
者の異議であったら、その日に効力を生じさせることに何の不都合があるので
しょうか。

 公告した会社は1月2日までに異議が届くかと待機しているわけですし、債
権者のほうも期限は1月2日と思って行動しているとみるのが通常ではないで
しょうか。相手会社が1月4日から営業開始でも、1月2日までに異議を出さ
ないといけないと思って行動しているわけで、まだ4日までに2日余裕がある
などと債権者は考えていないでしょう。異議はメールでもできるのです。
 
 万人に明確な基準であるカレンダーどおりの運用に戻ることを求めます。



2018.02.15(木)【1月2・3日は休日か】(金子登志雄)

 2月は4月1日付吸収合併などで債権者異議申述公告がなされる時期ですが、
さて、皆さん、昨年12月1日(金曜日)に資本金の額の減少などにつき債権
者異議申述公告を出したとすると、この公告期間の満了日はいつでしょうか。

 商業登記に詳しいベテラン司法書士も、勉強家の司法書士試験受験生も全員
が迷わず、1月2日と答えることでしょう。債権者異議の手続に関する休日な
どの取扱いはカレンダーどおりだというのが、大昔からの定説であり、登記の
運用だったからです。官報公告の実務もこれでした。

 ところが、2月8日の東京司法書士会千代田支部のセミナーにおける東京法
務局登記官の講義によりますと、1月2日・3日は休日扱いだそうです(この
結果、1月4日を効力発生日にすると、却下になります)。

 根拠は昭和33年6月2日最高裁判決だそうです。
 http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/894/052894_hanrei.pdf

 しかし、この判決は裁判の控訴期間についてのものであって、債権者申述期
間の計算には影響がないとされてきたはずです。

 この裁判例があったので、次の改正がなされ
 http://nomenclator.la.coocan.jp/ip/jsup/minsom/s63-093.htm

 現行民事訴訟法95条3項の「期間の末日が日曜日、土曜日、国民の祝日に
関する法律に規定する休日、1月2日、1月3日又は12月29日から12月
31日までの日に当たるときは、期間は、その翌日に満了する」につながった
のであり、これは我々よりも受験生のほうが詳しいでしょう。

 実に不思議に思うのは、こういう新見解・新解釈が登場しても、東京法務局
内や法務省商事課で、「その解釈は従来の運用と相違する」と、どなたも指摘
しなかったのかということです。

 きっと東京法務局も法務省も人事異動が激しいため、昔からの運用につき詳
しい方がいなくなったのでしょう。本人確認証明書や株主リストの解釈や運用
にもそれを強く感じていましたが、まさか、債権者異議申述期間まで従来の運
用と異なる見解が登場するとは想像もいたしませんでした。

 この運用は東京法務局だけのローカルルールなのかは未だ不明ですが、セミ
ナー終了後には、早速、土曜日を期間満了日にしたが大丈夫だろうという不安
の声が出ていました。

 土曜日はともかく、12月29日から31日は大丈夫でしょうか。従来のル
ールを変更するなら、法務省商事課により全国に向けて発信し、周知期間を置
いてからにしていただかないと、いたずらに民間を不安にさせるだけです。

 なお、代表取締役の就任承諾書や辞任届に住所は不要であると明言していた
だきました。これは従来の伝統的な運用どおりであり、最近の一部の運用を否
定するものであり朗報でした。プラスマイナスでいうとプラスの多い有意義な
講義でした。


2018.02.14(水)【スーパーボウル①】(藤沢・酒井恒雄)

 先週の2月5日(現地は4日)に、アメリカン・フットボール(プロ)の全
米チャンピオンを決める、スーパーボウルが開催されました。

 ここのところ毎年、日本時間の朝8時からテレビの生中継があります。じっ
くり生放送を楽しみたいところですが、自己責任でいかようにも仕事の調整が
できるとはいえ、なかなか休暇をとるという決心もつきません。

 例年、録画をしておき、出勤時間ギリギリまでテレビを付けて、後ろ髪を引
かれる思いで家を後にしています。

 この日も録画をして家を出ました。その日は、早く仕事を切り上げ、早めに
食事も済ませ、さぁお酒を飲みながら試合を楽しもうと思った段階で、尋常で
はない寒気を感じたので、結局、ノンアルコールで、ソファーで毛布に包まり
ながら観戦することにしました。(このとき既にインフルエンザに罹っていた
ようで、翌日に発症しました・・・。)

 どんなスポーツでもそうだと思いますが、レギュラーシーズンの試合、トー
ナメント戦、チャンピオンシップへと、その試合の勝利の重みが増してくるに
つれ、いわゆる「神ってる」プレーが増えてきます。今回のスーパーボウルも
素晴らしい試合で、何度も神っているシーンがありました。人の集中力は凄い
と感心します。

 優勝したのは、フィラデルフィア・イーグルスというチームで、なんと57
年振りの優勝でした。以前から応援しているチームなので嬉しいです。対戦相
手は、昨年を含めて過去に5回も優勝している、ニューイングランド・ペイト
リオッツというチームでした。

 イーグルスは、司令塔であるクォーターバック(QB)がトーナメント戦に
入る前に負傷したので、控えのQBがその後の試合とスーパーボウルを戦いま
した。

 以前、責任が重いと書いたキッカーは、ルーキーが勤めました。技量、経験
では相手チームが上回っており、イーグルスはアンダードッグ(かませ犬)と
言われていましたが、見事なチーム力で勝利を収めました。悪寒の影響とは関
係なく?、観ていて体が震えた試合でした・・・。
                              <つづく>


2018.02.13(火)【法人の役員と司法書士~その2~】(東京・鈴木龍介)

 酒井先生、体調を崩されている中、先週の投稿【法人の役員と司法書士】へ
のレスポンスありがとうございます。

 ということで、引き続き「法人の役員と司法書士」について、もう少し突っ
込んで考えてみようと思いますが、どのあたりが法人の役員として司法書士が
適任であるのかということです。ちなみに、ここでいう「法人」とは会社だけ
ではなく各種の法人も念頭に置いています。また、「役員」とは非常勤である、
社外取締役等の外部の役員を想定しています。

 まず、法人の外部の役員となると、理事会等の会議体への出席のために一定
の時間の拘束を受けることになります。その頻度や所要時間はそれぞれの法人
によって差異はあると思われますが、月1回開催、1回あたり2~3時間が一
般的でしょうか。そのような、あらかじめ決められた日程・時間帯であれば、
いわゆる自営業者である司法書士は、会社員等と比較すると「融通性」という
観点でマルということになると思います。

 法人の外部の役員の主な役割としては、業務執行者から独立した立場で法人
のガバナンスを効かせることであって、これは社長等の業務執行者の暴走を阻
止し、適正な事業活動が行われることに貢献するという理解です。

 多くの場合、司法書士は、法人と経済的にも精神的にも独立していると評価
できますので、「独立性」という観点でマルということになると思います。

 また、法人の外部の役員には経営へのアドバイス機能を求められることがあ
りますが、民法や会社法といった実体法を前提に、登記や裁判事務といった法
務の手続に精通している司法書士は、法律のプロとして「専門性」という観点
でマルということになると思います。これについては、コンプライアンスとい
う点でも効果があるといえるでしょう。

 さらに、司法書士は、不動産取引や相続といった案件を通して多様な経験値
をもっており、法人を取り巻く諸々の事象についても冷静な目でとらえること
ができますので、「客観性」という観点でもマルということになりそうです。

 加えて、司法書士は、国家資格者であり業法上も守秘義務を課せられている
という点での「安心感」というのも見逃せません。

 以上のことから、個人差はあるものの、司法書士が法人の外部役員の担い手
としての資格は十分にあるといってよいでしょう。

 次回は、司法書士の側から見る「法人の役員」について、考えてみたいと思
います。ということでもう少しお付き合いください。


2018.02.09(金)【いつのまにか2月】(東京・古山陽介)

 初投稿が2月になってしまいましたが、本年もどうぞ宜しくお願いします。

 例年1月は、最初の1週間を超えると、わりと落ち着いてくるのですが、今
年は嬉しい悲鳴と言いますか、依頼が殺到していて、なかなか落ち着かない日
々が続いています。

 依頼時には、手続きの実行が難しいのではと感じることも、できる方法を試
行錯誤しながら一つずつ論点を潰して、手順の道筋を立て、書類を作成して、
登記まで持ち込む。

 業務では当たり前のことが、家庭でも最近感じることがあります。家では、
もうすぐ2歳になるやんちゃな娘に翻弄されているのですが、遊んでいるとき、
着替えのとき、何かをお願いするとき等色んな場面で「できない」といって諦
めようとします。

 まだ小さいので仕方ないのですが、そんなときは、上手くできる方向に仕向
けてみたり、どうすればできるかを考えてもらうように仕向けてみたりと、あ
の手この手で出来るように促します。

 できたときには子供はもちろんですが親である自分も嬉しいものです。

 できるという経験の積み重ねが自分の血となり肉となるのは、どんな場面で
も同じであることに改めて気づかされました。

 次回以降は、ここ数ヶ月の実務の雑感をいくつか投稿する予定でいます。さ
ぼり癖を治さなければいけないと反省しております。



2018.02.08(木)【ざおうざん? ざおうさん?】(仙台・立花宏)

 先日,テレビを見ていたら,宮城県と山形県にまたがる蔵王山の噴火警報レ
ベルを引き上げるというニュースを流していました。蔵王山は,温泉やスキー
場,牧場等もあり,宮城や山形の人々にとってはとても親しみのある山です。
私も,何度も訪れたことがあり,とても心配なニュースでした。

 ところで,この情報は全国に流れたのだろうと思いますが,そのニュースで
は,この蔵王山をどのように読んでいたでしょうか。実は,私はあまり意識し
たことがなかったのですが,どう読むかは地域等によって違いがあるそうです。

 昭和の初めころ,国土地理院に,“ざおうざん”で登録されたそうで,一応,
公式にはこの読み方をされることが多いようです。しかし,特に山形の方たち
は“ざおうさん”と呼ぶ方が多いそうで,この読み方を正式なものとしてほし
いという要望も多いのだそうです。

 インターネットを検索してみたら,今後,国土地理院の登録について,両方
の読み方を併記したらどうかという提案もあるようです。地元の方でも,地域
によって“ざおうざん”と呼ぶ方“ざおうさん”と呼ぶ方がいらっしゃり,ど
ちらが間違いというわけではないでしょうから,少なくとも,普段は慣れ親し
んだ方で呼べばよいのだろうと思います。

 漢字というのは,複数の読み方をするものが多いですし,なかなか難しいも
のだと思いました。

 ところで,会社の商号や呼称も漢字やアルファベット(ローマ字)の場合が
多いですが,はじめて見る会社の商号や呼称は,思い込みで間違えて読んだり,
覚えたりしてしまうことがあります。

 そういえば,有名企業のCanon さんも,会社のホームページをみると,キヤ
ノン株式会社となっています。若いころ,私は正式名称もキャノンさんだと思
っていたのですが,誰かから,「正式にはキヤノンだと思うよ」と言われては
じめて意識したことがあったように思います。

 今年の3月12日から,商業・法人登記の申請をする場合,申請書に,商号
・法人名のフリガナを記載する欄が設けられるようです。このフリガナの情報
は,登記簿に記載されるものではなく,国税庁の法人番号公表サイトを通じて
公表されるようです(※)。

 登記の申請書の記載事項を定めている商業登記法が改正されるわけではない
ようですので,記載がない場合に補正が求められるのかどうか,また,仮に,
間違えた内容を登録してしまった場合にどうなるのかなど,まだ,わからない
こともありますが,こうした情報が公表されるようになることは,個人的には
とても望ましいことではないかと思いました。
(※)公表は4月2日から。



2018.02.07(水)【司法書士の社外役員】(藤沢・酒井恒雄)

 自分の体調管理の甘さから、インフルエンザB型に罹ってしまいました。熱
はそれほど高くないのですが、頭痛と鼻水が酷いです。

 今日、徒然日誌の原稿を書こうと思っていたのですが、PCの画面や字を見
るのが辛いので、金子先生に明日の原稿が送れない旨のメールをしたところで
す。

 しかし、昨日の鈴木龍介先生の投稿を読みまして、どうしても伝えたくなっ
たので短いながら投稿させて頂きます。

 私も、司法書士は外部役員に向いていると思っています。

 手前味噌ですが、商業登記業務等を通じて、様々な会社さんとお付き合いを
して行くうちに、会社や組織に対する視野が広がっていることに気付いたりし
ます。事業活動におけるリスクに対する嗅覚も、司法書士は優れているのでは
ないか? とも思っています。

 私も社外役員を務めているのですが、実務ならではの悩みがあります。意見
交換をしあえる仲間がいたら、心強いだろうなと思っています。そのうち司法
書士で外部役員をされている方々と、会合を持てたらいいなぁと思っておりま
す。



2018.02.06(火))【法人の役員と司法書士】(東京・鈴木龍介)

 会社などの法人は、それ自体が意思決定や業務執行をすることはできません
ので、実際に職務を行ったり、監査や監督をするための機関である役員が必要
になります。

 とりわけ、近年、注目されているのが外部の役員-株式会社では社外取締役
や社外監査役-です。現在、法制審議会で展開されている会社法改正の議論の
中でも上場会社等に社外取締役の設置を義務付けるかどうかということについ
て、平成26年改正に続き、検討されています。

 一方で、上場会社以外では外部の役員を置く意味はないのでしょうか?
 中小企業であってもガバナンスは必要であり、社外役員が有用な場合もある
と思います。また、財団型の非営利法人-たとえば一般財団法人や社会福祉法
人-では、外部の人間を前提とした評議員を置かなければなりませんし、公益
型の非営利法人-たとえば公益社団法人やNPO法人-では、理事の中に親族
等の利害関係のない人間が必要になります。

 では、その外部の役員の担い手はどうかというと、上場会社については、会
社法で社外取締役の義務化はなされていないものの、コーポレートガバナンス
・コードの制定・運用開始により、にわかに社外役員(特に社外取締役)に対
するニーズが高まり、需要と供給がマッチしていないように思います。

 そのような背景の中で4~5社の社外役員を務めている方もいます。ちなみ
に、私もかつて上場会社2社の社外役員を務めていたことがありますが(現在
は1社です。)、本業を持つ身としては2社が限界かなと思っています。

 上場会社以外の場合、状況はもっと厳しいのではないでしょうか。つまり、
外部の役員のなり手が足りないということです。一定の外部の役員を確保しな
ければならない非営利法人の場合であって、いわゆる大都市圏以外の地域では、
特に深刻であるとの話も耳にします。

 そこで、外部の役員として司法書士はどうでしょうか? 私自身、2つの非
営利法人で理事を務めていますが、個人差はあるにせよ意外(?)に適任であ
るような気がしています。中小企業のオーナーや非営利法人の関係者のみなさ
ん、いかがでしょう? また、司法書士の方々はどうお考えになりますか?


2018.02.05(月)【互選又は株主総会の決議により】(金子登志雄)

 登記申請に添付した非取締役会設置会社の定款に「当会社に取締役を複数名
置く場合には、取締役の互選により、又は株主総会により代表取締役1名以上
を定める」とあったため、某登記所より、この定めは有効なのか、先例がある
のか、定款認証で肯定された例はあるのかと質問を受けました。

 登記事項とは無関係な部分で補正ではありませんでしたが、はじめてみた内
容だったのか、個人的に確認したかったようです。

 「取締役の互選によって定めることができる」とう意味だから問題ない、会
社法立案者の葉玉ブログでも肯定しているし、松井ハンドブックでも認めてい
ると説明しましたが、松井本は、定款で「互選で定める」と断定した限り総会
では選定できないという内容で、もろに肯定したものではなかったこと、私の
説明が、互選で定められるのなら、そこまで達しない「互選で定めることもで
きる」も、株主総会と互選の中間領域だから、当然に認められるといった定款
自治の方向からの説明であったため、十分に真意が伝わらなかったようです。

 そこで、その後も、こういう分かりきったことをどう説明したら通じるのか
と考えていましたが、会社法349条3項の「株式会社(取締役会設置会社を
除く。)は、定款、定款の定めに基づく取締役の互選又は株主総会の決議によ
って、取締役の中から代表取締役を定めることができる」を抜粋しただけだと
説明するのが最も通じやすいかなと考えました。

 会社法349条3項は、非取締役会設置会社の代表取締役は、「①株主総会、
②定款、③定款の定めに基づく互選」のいずれかの方法で定めることができる
という意味であって、①②③のいずれかに固定しなければならないというもの
ではありません。現に、定款に③の規定が定められているのに、②の定款の附
則で定めることが頻繁になされています。したがって、「互選で定めることが
できる」も「定めることもできる」も「互選又は株主総会の決議により定める」
も当然に肯定されます。

 非取締役会設置会社の株主総会は万能の決議機関であるため、「又は株主総
会の決議により」は一見して余事記載のようにみえますが、「互選又は株主総
会の決議により定めることができる」なら余事記載ですが「定める」にした場
合は、これを挿入しておかないと、松井本の解説のとおり株主総会では選定で
きないことになるため、余事記載にはなりません。


2018.02.02(金)【資本金等増加限度額と株主資本等変動額】(金子登志雄)

 今年も1か月が経過し、寒い2月になりました。逃亡も証拠隠滅のおそれも
なく拘束する理由が全くないのに、あの籠池老夫妻はまだ出してもらっていま
せん。もう半年にもなります。権力に逆らうとこうなるという見せしめのよう
で、もう一方の当事者である昭恵さんとの落差を考えてしまいます。

 さて、会社法用語は慣れないと難しいものです。旧商法の「発行する株式の
総数」は会社法では「発行可能株式総数」となりました。

 この「(発行)する」とは、「することのできる」と読み替えてください。

 公開会社の定義の「その発行【する】全部又は一部の株式の内容として譲渡
による………」も、種類株式発行会社の「内容の異なる2以上の種類の株式を
発行【する】株式会社」も、株券発行会社の「株券を発行【する】旨の定款の
定めがある株式会社」も実際に発行しているかどうかを問わず、発行すること
ができるようになっていれば、それで定義を満たします。

 「する」→「することができる」→「可能」ですから「発行可能株式総数」
と用語が変わったわけですが、旧商法の「配当限度額」は「分配可能額」にな
りました。自己株式取得原資をも含むからです。

 増資をすると原則として「資本金と資本準備金」が増えます。この合計額、
すなわち出資額を「資本金等増加限度額」といいますが、合併等の場合は、そ
の他資本剰余金や利益剰余金にも影響することがあるため、より広く「株主資
本等変動額」といいます。

 株主資本等増加限度額と名づけなかった理由は、合計でマイナスになる場合
もあるからです。

 ここで勉強家の方は、親会社が子会社に債務超過事業を出資した場合のよう
に、増資の場合でもマイナスがあるのに、なぜ「資本金等増加限度額」とし、
「資本金等変動額」にしなかったのかと疑問を持つことでしょう。

 この回答は計算規則14条1項本文に「零未満である場合にあっては、零」
とあります。



2018.02.01(木)【平成30年の仕事はじめ】(島根・根来川弘充)

 平成30年が明けましたが、不本意ながら、正月からインフルエンザにかか
ってしまい、仕事できるまで約半月近く必要でした。

 しかし、病にかかるのは、私だけでなく、私が後見人として関わっている方
の中で、年始から入院を余儀なくされた方も出てきました。

 確かに急激な天候の変化もあったかもしれませんが、思い出せば、昨年も入
院された方が数名おられました。

 年をまたぐということは、単なる時間の経過でなく、何かしら身体に何か影
響を与えることなのかも知れません。

 昨年の私は、まだ元気だったのですが、今年は、病気になってしまったので、
入院手続をするに際し、関係者の方に迷惑をかけることになってしまいました。

 年始のスタートがうまく切れないと、この一年が大変不安になります。

 初詣のおみくじは、吉だったので悪くはないと思うのですが、いろいろ用心
しておきたいと思います。


2018.01.31(水)【引越し完了】(藤沢・酒井恒雄)

 事務所の引越しが終わりました。

 案の定、電話もインターネットも、すんなりとは繋がり「ません」でした。
嫌な予感はしていたのです・・・・・。

 通信会社の担当者によれば、電話・インターネットの開通工事は、通信機器
(ルーター)のコードを一本繋ぐだけなので簡単に出来る、そして、現場に工
員は行かず、遠隔操作で工事を行うのが主流とのことでした。

 費用も安く済むとのことですし、何となく自分で作業することを薦めている
感じでしたので、遠隔操作で開通工事を行う方法を選択しました。しかし、費
用を安く済ませるということは、その分、自己責任となることが増えると考え
るのが素直かと思います。一瞬、嫌な予感がしました。

 実際に作業を行ったところ、確かに機器自体はコードを一本繋ぐだけの作業
だったのですが、新環境になったことに伴う初期化や、電話番号とFAX番号
の割り振りの作業等も必要でした。

 ITに詳しい方であれば、それは当然の作業だと思われるかもしれませんが、
私は、「コードを一本繋げるだけ」で、今まで通りに使えると考えていました。
なかなか回線が繋がらず、担当者の説明不足だとして文句を言うべきか、はた
また自分がリスク・テイクした結果だとして受け入れるべきかと、悶々とした
雰囲気を漂わせていたところ、複合機の搬入のために来ていたエンジニアの方
が察してくださり、私の作業を手伝ってくれました。本当に有り難かったです。

 その後、無事に電話もインターネットも繋がり、電子署名やオンライン申請
も無事に出来ることが確認できました。とりあえず一安心です。


2018.01.30(火)【函館 初往訪】
(東京・鈴木龍介)

 先週末は、函館司法書士会(=函館会)の研修の講師ということで、はじめ
て北海道の函館(江戸時代は「箱館」と表記されていたようです。)に行って
まいりました。

 今回の研修のテーマは、本コーナーで何度も取り上げています「債権法改正」
で、日本司法書士会連合会からの派遣です。函館会は総勢39名という最も人
数の少ない司法書士会ですが(カバーするエリアは相当広いですが・・・)、
本研修には30名近く参加されていましたので、東京などの大きな司法書士会
では考えられない出席率です。

 企業向けのセミナーや大学の授業でお話をする機会は結構あるのですが、司
法書士向けの研修等の講師というのは意外に(?)多くありません。今年度で
いうと函館会が2つめです。

 地方(この言い方どうかと思いますが、よい言葉が思いつかないのでお許し
ください。)の司法書士会での研修講師の楽しみは、地方の司法書士の方々と
の交流(東京とは違った見方や意見を聞くことができます)とそれぞれの土地
の旨いものでしょうか。

 函館会でも研修終了後に、研修担当の方々を中心に懇親会を催していただき
ました。地元でも評判の居酒屋さんでしたが、さすが北海道・函館ということ
で新鮮な魚介類がふんだんに出てきました。箱うに(箱に入っている塩水うに)、
活いか、生ガキ等々、北海道の地酒とともに堪能させていただきました。

 中でも驚いたのはホッケ(漢字で書くと「𩸽」)の刺身です。ホッケは焼い
たものしか食べたことがなかったのですが、刺身で食べられるというのは足の
早い魚でも鮮度を保つことができる地元ならではの逸品でした。もうひとつ、
函館は温泉のメッカということで、宿泊は温泉付きのホテルにしました。露天
ありの源泉かけ流しの塩水(海水)で、粉雪舞う中、とても暖まりました。

 ということで、研修の中身や講義のクオリティはさておき、有意義な初函館
でした。

 最後に函館会の先生方のご厚情にあらためて御礼申し上げます。


2018.01.29(月)【総社員の同意その2】(金子登志雄)

 25日の立花さんの「総社員の同意」ですが、退社予定者は総社員に含まれ
ないという見解があるとは驚きでした。寝ぼけているのかと思いました(年取
ると口が悪くなりますね)。

 学者や勉強家の実務家に多いタイプですが、大量の書籍を読み、この論点に
は、甲説と乙説があって、争点はこれで………という先入観に囚われて、その
範囲内の思考に落ち込むと、こういう信じがたい見解になります。

 われら不勉強家(?)は大量の本を読みませんから、それに影響されず、ご
く普通に常識や社会通念で考え、総社員という限り、全員のことだと考えます。

 不勉強で努力嫌いの私は、読書は少ない代わりに、条文だけで熱心に考えま
す。この条文とあの条文の相互の関係はどうかという思考もしますから、格好
よくいえば、森をみずに木しかみない勉強家とは相違する着眼をします。

 本件に関しても、法定退社の607条だけで考えずに、全く関係なさそうな
641条との関連で思考します。
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(法定退社)
第607条 社員は、………の場合のほか、次に掲げる事由によって退社する。
  一 定款で定めた事由の発生
  二 総社員の同意
  三 死亡
  四 合併(略)  以下略

(解散の事由)
第641条 持分会社は、次に掲げる事由によって解散する。
  一 定款で定めた存続期間の満了
  二 定款で定めた解散の事由の発生
  三 総社員の同意
  四 社員が欠けたこと。
  五 合併(合併により当該持分会社が消滅する場合に限る。)  以下略
----------------------------------------------------------------------

 いかがですか。定款で定めた存続期間の満了も定款で定めた解散事由の1つ
ですから、607条と641条は、瓜二つの関係にあると思いませんか。

 これは持分会社の社員の法定退社を「会社の部分解散」と会社法が捉えてい
るためでしょう。

 であれば、両規定にある総社員の同意とは退社予定者を含んだ総社員の同意
であることが明らかです。

 持分会社の実質は民法上の組合であり、組合「契約」とされていますが、契
約にも種々あり、相対立した意思表示の合致(申込みと承諾の合致)だけでな
く、あるテーマ(議題)に全員が同意する同方向に向けられた意思の合致(合
同行為ということが多い)もあります。合同行為で社員Aさんを含む全員でA
の退社につき同意するのも総社員の同意の1つであり、立花さんの解説のとお
りです。


2018.01.26(金)【会社数】(金子登志雄)

 直近の商事法務に掲載されている松井信憲商事課長の投稿によると、現状の
会社数は、次だそうです。

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 平成28年末現在における清算中の会社を除く現存会社数は約363万社で
あり、前年同期の約358万社に比べて、約4万8000社増加している。
 会社の種類別にみると、
 株式会社が約181万社(約5万3000社増)、
 特例有限会社が約159万社(約2万5000社減)、
 合同会社が約12万8000社(約2万1000社増)、
 合資会社が約7万9000社(微減)、
 合名会社が約1万8000社(微減)
となっている。合同会社の数は、従前は毎年約1万社ずつ増加していたが、近
年は毎年2~3万社近く増加しており、その利用が進んでいることがうかがわ
れる。
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 特例有限会社の減少はおそらく株式会社への移行でしょうから、株式会社の
純増は約3万、合同会社を含め毎年5万社程度が誕生しているということでし
ょうか。

 企業業績も向上し日経平均株価も高騰していますが、現実には、企業が儲か
っているだけで、庶民は少しも豊かになっていません。正規社員も減少し、実
質賃金は下がり、庶民の犠牲の上に立つ大企業や金持ち優遇策の結果ですが、
企業も内部留保に務め儲けを外に出していません。

 それにもかかわらず、会社数が増大している理由を知りたいところですが、
こればかりは、法務局にも調べようがありません。合同会社数の増大は、おそ
らく、資産家による税金対策のための資産管理会社としての設立でしょう。私
も何件か手掛けたことがありますが、いずれも税金対策と思われる案件でした。

 さて、上記のうち、10年に1度以上登記する会社が220万社程度とみる
と、現在の司法書士数は全国で2万2495人ですから、1人100社です。
新設5万社で計算すると1人2社です。

 会社法。商業登記専門の当事務所なら、顧客数はこの数倍あってもおかしく
ありませんが、この10年で100社扱ったかどうかは怪しいものです。新設
会社数はかろうじて平均値の数倍ですが、自慢できる数ではありません。

 だからこそ、当事務所は、知名度があっても、同業者から羨望の対象にもな
らず、愛される事務所でいられる面もありますが、少々情けない思いです。い
ったい誰が独占しているのでしょうか。


2018.01.25(木)【総社員の同意】(仙台・立花宏)

 先日,知り合いから問い合わせをいただきました。内容は「総社員の同意」
による退社(一般法人法(※1)29条2号)についてでした。

 「総社員の同意」となっているけれど,その総社員には退社する社員は含ま
れないよね,という疑問でした。どうやら,「総社員の同意」は,他の社員全
員が同意すれば,ある社員の意思と無関係に当該社員を退社させることができ
る制度と考えているようでした。

 会社法に規定される持分会社にも「総社員の同意」による退社の制度があり
ますので,会社法のコンメンタール(岡島孝康・落合誠一・浜田道代編『新基
本法コンメンタール会社法3第2版』日本評論社33頁)を見てみました。

 詳細は同書をご覧いただきたいと思いますが,含まれるとする見解と含まれ
ないとする見解があるようです。ただし、含まれないという見解も,退社する
社員の意思と無関係に,他の社員全員の同意のみで特定の社員を退社させるこ
とができるとしているわけではありません。

 持分会社の社員には,任意退社の制度があります(会社法 606条)。この制
度は、原則として,事業年度の終了の時に退社することができ,6か月前まで
に予告が必要というものです。

 「総社員の同意」は,この要件を満たさなくても(会社に不利な時期でも),
他の社員の同意により,ある社員の退社の申出を容認することができるといっ
た場面等が想定されているようです。

 一般社団法人の場合はどうでしょう。一般社団法人では,持分会社と違い,
社員は、原則として“いつでも”退社できます。そうすると,定款で退社の時
期等を制限していない限り,退社に総社員(他の社員全員)の同意が必要な事
態は想定できません。一般社団法人の「総社員の同意」による退社の制度は,
持分会社とは違うものなのでしょうか。

 一般社団法人の「総社員の同意」による退社の制度は,正当な事由がなくて
も除名できる制度という見解もあるようです。

 しかし,法律は異なっても,同じ用語を使用しているのですから、意味が異
なるとは思えません。ある社員の意思と無関係に当該社員を退社させる制度で
はないと思います。

 「法定退社事由の『総社員の同意』は,共同事業を営もうとする全員の共同
契約の一部解除という『全員の決定』という視点から規定し」(※2)たもの
であり,退社する社員の意思を除外しては成立しないと考えました。

 「任意退社」(一般法人法28条)は,社員からの一方的な共同契約の解除,
「除名」(一般法人法30条)は法人からの一方的な共同契約の解除を規定した
ものであり,双方からの共同契約の合意解除を規定したものが「総社員の同意」
なのではないでしょうか。

 また,「除名」の制度(一般法人法30条)は別に規定があり,この場合は,
当該社員に弁明の機会を与える必要がありますし、除名した旨を通知しなけれ
ば当該社員に対抗できません。一方,「総社員の同意」(一般法人法29条)に
は,そうした手続は規定されていません。このことからも,「総社員の同意」
は「除名」とは異なる制度であると思いました。

(※1)一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
(※2)神﨑満治郎・金子登志雄・鈴木龍介編著『論点解説 商業登記法コン
    メンタール』(きんざい)381頁以下


2018.01.24(水)【これもデジタルデバイド?】(藤沢・酒井恒雄)

 只今、事務所の移転作業の真っ最中です。

 先日、電話会社に引越しの連絡をしたのですが、プロバイダーには別途連絡
をしてくれと言われました。はてな?と思い、再度聞き直したところ、通信回
線の利用契約とプロバイダーの利用契約の相手が、別系列の会社であるとのこ
とでした。

 そこで、一連の作業をどう進めるのがベストなのかと担当者に尋ねてみまし
た。

 引越しを機に、新事務所に最適な通信環境となる回線利用契約に変更するの
がベスト、その場合、現在のプロバイダーだと対応できないので、現在のプロ
バイダーとの契約解除と、対応可能な新規のプロバイダーとの契約締結がマス
ト。

 ただし、現在のプロバイダーの契約を解除すると現在のメールアドレスも使
用できなくなるので、引き続きメールアドレスを使用する契約を現在のプロバ
イダーと締結するのがベスト、もし、引っ越し後も現在の通信環境と同じでい
いなら、現在のプロバイダーも対応できるプランがあるので、新規のプロバイ
ダーとの契約は不要だが、現在のプロバイダーへプラン変更の連絡はマスト、
だとのこと・・・・・。

 あ~なるほど! と言えたら良かったのですが、私にはなかなか理解できま
せんでした。

 これが、いわゆるデジタルデバイド(IT格差)なのか? と思ったのです
が、単に通信会社同士の諸事情のせいで、話しが複雑になっているだけのよう
にも思えました。

 どうなのでしょうか? 話が理解できない自分に焦りましたが、どんな通信
環境で仕事をしているのか把握していなかった自分にも焦りました・・・・。


2018.01.23(火)【元号】
(東京・鈴木龍介)

 前回、予告(?)しましたとおり、今回は「元号」について取り上げたいと
思います。いろいろ調べたりしていたら長いものになってしまいました。

 そもそも元号とは、特定の時代(期間)に対してつけられる称号(呼び名)
のことで、かつては中国や朝鮮などでも用いられていましたが、今は日本だけ
のようです。

 元号については、元号法(昭和54年法43号)なる法律があります、たっ
たの2項(2箇条ではありません(ただし、附則は除きます。)。)で、内容
は以下のとおりです。

 1項 元号は、政令で定める。
 2項 元号は、皇位の承継があった場合に限り改める。

 元号法は昭和54年の制定ですから、この法律に基づいて元号があらためら
れたのは、現在の元号である「平成」だけということになります。

 そして、皇位の承継は今上(きんじょう)天皇(=在位中の天皇の呼称)が
崩御された時でしたが、今回は今上天皇が生前退位し、皇位が承継されること
が決まっており、その承継の時に元号法の規定に基づき元号があらためられま
す(一世一元の制=1人の天皇に1つの元号)。具体的には平成31年4月
30日までが「平成」で、翌日の5月1日からが新元号ということになります。

 これまでは元号があらたまる時期というのは、当然のことながら未定でした
ので、新元号も事前に発表されることはありませんでした。今回の場合、新元
号となる時期が決まっていることもあり、国民生活に大きな影響を与えないよ
うにするため、事前に発表することになったようです。一説には今年の秋口に
も発表などという声も聞こえてきます。

 発表後は新元号に関する商号や商標の争奪戦が繰りひろげられることが予想
されます。ちなみに大学は、その名前に元号を冠している例が多く、たとえば
「明治大学」、「大正大学」、「昭和大学」。「(帝京)平成(国際)大学」
とあります(明治の前の元号である慶應(義塾)大学もそうですね)。

 法令については、施行日等は和暦である元号で表記されますが、たとえば本
コーナーで何度か取り上げている、いわゆる債権法改正の施行日は平成32年
4月1日です。でも、実際には平成32年はないわけです。やむを得ませんが、
少し違和感もあって、論稿などには和暦と西暦を併記したりしています。

 登記については、元号法の制定時に発出された登記先例(昭和54年7月5
日民三3884号・民四依命通知)により和暦である元号を用いることになっ
ています。

 ちなみに会社や法人は存続期間を定めた場合、和暦で登記することになりま
すが、3年後の4月1日を存続期間とした場合には、「平成33年4月1日」
と登記され、仮に新元号が発表された後であっても、平成31年5月1日以前
の申請については、あくまで期限付新原号なので「平成」で登記されることに
なります。

 ところで、新天皇が即位されると国民の祝日である天皇誕生日はどういう取
扱いになるのでしょうか。今上天皇の誕生日(12月23日)は、当面、祝日
ではなくなり、次の天皇陛下となる現皇太子徳仁親王の誕生日(2月23日)
が天皇誕生日として祝日になるようです。

 ちなみに第2次次世界大戦前の天皇誕生日は「天長節」と呼ばれ、祝日でし
た。また、これまでの天皇誕生日は、明治天皇が文化の日(11月3日/以前
は「明治節」)、昭和天皇が昭和の日(4月29日/以前は「みどりの日」)
として祝日となっています。


2018.01,22(月)【選任懈怠中の解散・会社継続】
(金子登志雄)

 商業登記倶楽部の実務相談室で、選任懈怠中の会社の解散や会社継続に関す
る質問が増えてきましたので、土日に、想定問答を作り真剣に取り組んでみま
した。選任懈怠のない会社の解散しか取り扱ったことがなく問題意識が薄かっ
たためです。

 難問でした。共著のある立花・幸先司法書士にも意見を聴いて、やっと少し
まとまってきましたが、まだ途中経過です。

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 取締役ABC(代表取締役A)、監査役Dの甲社(取締役会設置会社・監査
役設置会社)の登記記録をみると、全員が平成17年6月28日に重任という
登記がなされており、定款をみると、3月末決算で、取締役は2年、監査役は
4年の法定任期どおりだったとします。また、平成17年6月以降、役員の改
選決議はしていないもの(登記懈怠はなく選任懈怠のみ)とします。
----------------------------------------------------------------------

 甲社で平成29年12月(下記②時期)に株主総会で解散決議をしたところ、
取締役Cから同時に辞任表明がなされました。清算人選任決議はなされていま
せん。

 会 社→→→→事業会社→→→→→→→|②→→清算会社→→→
 取締役→→→|①……権利義務者……→|→→→清算人→→→→
 監査役→→→→→|①…権利義務者…→|→任期なし監査役→→

 さて、取締役ABCの①時点の退任登記が必要でしょうか。

【否定説】
 昭和49年11月15日民四5938号依命通知に、権利義務取締役も法定
清算人になるとあるし、登記懈怠は登記しなければならないが、選任懈怠は登
記不要とも読める。また、会社継続に関する下記の法務局HPでも、法定清算
人の登記の前提に取締役の退任の登記をしていない。これが登記実務であり、
法定清算人制度は前任取締役(権利義務者を含む)につき申請により抹消する
のではなく、商業登記規則72条により、登記官が職権で朱抹するものだ。
   http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001189039.pdf

【肯定説】
 株主総会の決議で清算人を選任したときは、権利義務取締役の退任登記の環
境が揃ったとして退任登記しながら、法定清算人制度を採用したというだけで、
退任登記が不要になるとは思えない。退任登記と法定清算人制度は両立するの
であり、上記昭和49年依命通知も、退任登記が不要になるとまでは記載して
いない。同通知が必要だとする取締役の変更登記には選任懈怠も含むというべ
きであり、法務局HPは退任登記を漏らしただけだ。

 私見は肯定説であり、商業登記規則72条により、登記官が職権で朱抹する
のは任期中の取締役に限られると思っています。

 次の問題は取締役Cも法定清算人になるのかということですが(これは幸先
司法書士からの問題提起です)、清算会社になると清算人は1人でもよくなり
ますから、Cについては法定清算人にならないと考えます。

 最後に、監査役Dですが、解散しても監査役設置会社は継続しますから、解
散によってDの任期満了退任の登記の環境が整備されたとはいえません。権利
義務者のまま解散後も監査役を継続し、後任が選任されれば、上記の表の①の
ときに任期満了退任となります。上記否定説の発想で、権利義務監査役が解散
によって任期の定めのない監査役に変身したと考えることは困難です(注)。

 以上については、みなし解散後の会社継続で、よく問題になりますので、下
記をご検討ください(私は批判的な意見であることは前記しました)。
   http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html#1-26

(注)公開会社又は大会社の監査等委員会設置会社の監査等委員である取締役
が選任懈怠中に解散すると、この監査等委員は監査役になります(477条5
項)。この場合は、監査役設置会社が継続したわけでもないため、解散と同時
に監査等委員である取締役の任期満了退任の登記が必要だと考えます。



2018.01.19(金)【みなし解散の日】(金子登志雄)

 きんざい『商業登記法コンメンタール』294頁に、会社法472条の休眠
会社のみなし解散の件で「最後の登記から12年を経過したら、その後所定の
手続を経て、登記官の職権により2か月の公告期間の満了の日を原因日付とし
て『会社状態区』に『平成○年○月○日会社法第472条第1の規定により解
散』という登記がなされる」と書きました。

 これにつき、一般社団の事例ですが、法務省のホームページには、原因日は
公告期間満了の日の翌日としているので、改めなくてよいかとの問い合わせを
受けました。確かに、下記には「平成29年12月12日(火)までに、『ま
だ事業を廃止していない』旨の届出がなく、かつ、登記の申請もなかった休眠
会社・休眠一般法人については、平成29年12月13日(水)付けで解散し
たものとみなされ、登記官が職権で解散の登記をします」とあります。

   http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00083.html

 どう思いますか。

 拙著や拙論文を熟読している方にはお分かりでしょうが、法務省は伝統的に
「期間満了の日」を「翌日」にしているためです。会社法472条には「その
2箇月の期間の満了の時に、解散したものとみなす」とありますから、コンメ
ンタールの記載は会社法条文に忠実であり、正しい記載です。

 法務省見解に対しては、コンメンタール291頁で、次のように批判してお
きました。
----------------------------------------------------------------------
 取締役等の重任の登記のように「終了と開始」による変更の登記の際には、
開始の日を基準にするが、株主総会の決議による解散や退任の登記など開始が
ない終了のみの登記は、終了日をもって登記してきたはずだが(会915条2
項・3項も同様)、存続期間の満了や新株予約権の行使期間の満了については、
この原則に反して翌日付で登記されている。いずれ改められることを希望する。
-----------------------------------------------------------------------

 解散の日というのは事業法人終了日(期間の満了日)のことであって、清算
法人の開始日(清算事務年度開始日)のことではありません。言い換えれば、
法務省の記載は解散とみなされた日を登記しているのではなく、清算会社開始
の日を登記していることになります。

 平成29年12月末日までの期間の満了の時に解散したものとみなすとあれ
ば、「平成29年12月31日解散」とすべきであり、「平成30年1月1日
解散」とすべきではありません。平成29年までは未成年で平成30年から成
人だとしたら、平成30年1月1日に未成年終了ではなく、その日は成人の開
始の日です。

 会社法494条に解散の日の翌日から清算事務年度が開始するとありますか
ら、法務省見解では、期間満了日が12月31日だとすると、翌年の1月2日
から清算事務年度が開始してしまいます。

 税務申告で税理士が困っているため、「いずれ改められることを希望する」
とコンメンタールに記載したわけですが、伝統の壁は強固であり、改まる日は
いつになることやら。



2018.01.18(木)【みなし解散のみなし監査役】(金子登志雄)

 神崎先生主宰の商業登記倶楽部の実務相談室に「みなし解散」の質問が続い
ていました。会社継続の相談です。

 さて、取締役ABC(代表取締役A)、監査役Dの取締役会設置会社・監査
役設置会社が休眠会社のみなし解散(会社法472条)になると、事業継続を
前提とする取締役も取締役会も商業登記規則72条により、抹消されて、取締
役の権利義務者だったABCは、法定清算人ABC(代表清算人A)に代わり、
監査役の権利義務者だった監査役は、任期のない監査役に変わります。この会
社は依然として監査役設置会社とされたままです。

 しかし、登記簿には監査役しか登記されていませんから、会社継続の際は法
定清算人の登記をし、任期のない監査役から任期のある監査役に変わるDは任
期満了退任の登記がなされ、会社継続後の役員に交代します。

 以上を前提に、取締役ABC(代表取締役A)、監査等委員である取締役D
EFの監査等委員会設置会社(公開会社又は大会社を前提)が、みなし解散す
ると会社法477条5項によりDEFは監査役に変わります。清算会社になる
と、監査等委員会という機関設計は認められず、商業登記規則72条で監査等
委員会設置会社も、ABCもDEFも抹消され、監査役設置会社に変わるわけ
ですが、法定清算人も、監査役設置会社である旨も監査役DEFも職権で登記
されることはありません。抹消だけがなされます。

 ここで疑問を覚えたのが、この会社を継続する際に、いったんは監査役の設
置を決議し、DEFを監査役として登記しなければならないのかです。

 この点については解説文献もなさそうです。おそらく、会社継続の際は、必
須機関の法定清算人ABC(代表清算人A)だけ登記し、監査役設置会社も監
査役DEFも登記しないで済むのであろうと予想しました。

 監査役設置会社になる旨の決議をしていないのですから、登記は困難ですし、
仮に会社継続後の機関構成が取締役会設置会社・監査役設置会社であっても、
監査役の設定日が会社継続の日ですから、職権解散時から会社継続時までの間
の監査役DEFの登記根拠が見当たりません。

 同じことは監査役「会」設置会社がみなし解散し、会社を継続する際は、会
社法477条3項により、いったんは清算人「会」設置を登記しなければなら
ないのかという問題にも通じます。これも、会社の継続の際は、清算人会の設
置をスルーするのだと予想しました。

 監査役会設置会社や監査等委員設置会社がみなし解散される例は現実にはな
いでしょうから、以上は、机上の問答ですが、こういうごく希なケースでも、
基本通達や登記記録例にはあってもよさそうにと思いました。

 それにしても、登記されない監査役というものが存在する私の解釈はいかが
ですか。異論・反論をお待ちしております。


2018.01.17(水)【今年は?】(藤沢・酒井恒雄)

 皆様、明けましておめでとうございます。遅い新年の御挨拶となりました。

 ちなみに我が家は未だ初詣に行っておりません。子供が小さかったとき、無
理に混雑している場所に連れ出して、怪我でもさせたら良くないということで、
人出が少なくなった頃に初詣に行っていました。

 いつの間にか、それが我が家の定番となり、毎年1月の中旬頃に初詣に行く
ことになっています。登記申請ではありませんが、元旦から遅くとも2週間以
内に初詣に行かなければならないのでは?と思っていましたが、調べたところ
によりますと、節分の日までにお参りに行けばいいのだそうです。

 年初めには、この一年間はどういったカテゴリ―の仕事が多そうだろうか?
と予測をしてみたりします。

 偶然が続いているだけかもしれませんが、私の場合、例年1月に問い合わせ
が多かった案件が、その年を通しても件数的に多い傾向にあります。昨年は解
散の問い合わせが多く、実際に解散・清算結了の仕事の割合が多かった年でし
た。

 そして、何故か解散・清算結了が多い年は、組織再編関連の仕事が殆どない
年になります。この傾向も当たっており、昨年は強制的な?合資会社の種類変
更等を除き、純粋な組織再編はたったの2件でした。今年は組織再編に関する
問い合わせが多いので、どうやら組織再編のお仕事を沢山?させて頂ける年に
なりそうです。

 昨年一年間のブランクによる知識の劣化が懸念されますので、金子先生の書
籍を読み返して、頭にかかった靄(もや)を追い払っているところです。



2018.01.16(火)【年号~西暦と和暦~】
(東京・鈴木龍介)

 今年、初めての投稿です。本年もどうぞよろしくお願いします。

 今回は新年の話題にふさわしい(?)「年号」について取り上げてみたいと
思います。

 議事録や契約書には年月日を記載するわけですが、日本の場合は西暦と和暦
の2つの表記方法があります。つまり、2018年とするか、平成30年とす
るかということです。

 議事録等については、西暦と和暦のいずれを用いても構いませんが、登記の
世界-登記簿-では和暦で表記されます(調べていませんが、おそらく国内向
けの行政の文書は和暦表記だと思います。)。

 ちなみに、西暦で記載された議事録を添付した登記申請も問題なく受理され
ますが、登記をする際には和暦に引き直することになります。

 最近、特にこの年号の記載に関する質問が多くなった感じがしますが、やは
り背景としては新元号問題が大きいのかな思います。要は現天皇陛下の退位に
伴い来年の4月30日で現在の「平成」が終わり、5月1日からあらたな元号
になるというものです。

 そのあたりを踏まえて、年号をどう記載するのが妥当なのかという問い合わ
せですが、「これまでどおり和暦のままでもよいと思いますが、「気になるよ
うでしたら和暦と西暦の両者を併記-平成30(2018)年-してはいかが
ですか」的な回答をしています(法律的な正解はないですし、お好みでよいと
思っています。)。

 ただ、この和暦と西暦を併記した場合、紙面がかなりうるさい感じになるの
は否めません。

 一方で現場実務的には、年初はこの「年号」に注意する必要があります。何
気なく平成29年とか2017年と書いたり打ったりしがちです。恥ずかしな
がら、過去にこれで登記申請の補正になったことがありまして、自戒を込めま
しての注意喚起です。

 今回の「年号」の話題を書いていて、「元号」も面白そうなので、次回(来
週)は「元号」について取り上げたいと思います。


2018.01.15(月)【定款の空振り規定】(金子登志雄)

 存在・不存在と有効・無効また無益無効・違法(有害)無効は区別しなけれ
ばなりません。例えば、従業員に割り当てた新株予約権がその従業員の退職に
よって行使することができなくなっても行使することができないだけで、原則
として存在はします。消滅まではしていません。はずれ馬券も価値がないだけ
で馬券としては存在していますし、賞味期限切れの飲料も飲めないだけで存在
はしています。別の使い道があるかもしれません。

 会社法308条2項に「株式会社は、自己株式については、議決権を有しな
い」とありますが、これも正しくは議決権は存在するが、行使はできないと考
えるべきでしょう。

 新保さんのブログ(司法書士のオシゴト)に、無意味な端株原簿代理人が定
款に定められている間は登記上も廃止の登記ができないということが掲載され
ていましたが、これも定款には存在し無益無効だが、存在までは否定されない
ので登記も定款から廃止しない限り受理することができないという意味です。
いつか法令の改正で端株が復活するかもしれません。

 こういう存在までは否定されない規定を空振り規定といいます。

 したがって、監査役会設置会社が監査等委員会設置会社に移行しても、定款
に社外監査役の責任限定の規定を削除漏れしていたら、やはり、登記はそのま
まです。ひょっとして、そのうち監査等委員会を廃止して監査役会設置会社に
戻るかもしれません。

 よく問題とされるのが、取締役会を廃止したり解散を決議したのに、株式の
譲渡制限規定の「取締役会の承認を要する」を定款上そのままにした場合です
が、これも取締役会という部分が空振りして効力を有しないだけで、規定とし
ては存在しています。

 近い将来に取締役会を再設置したり、取締役会設置会社への会社の継続を決
議するかもしれませんので、常に定款変更義務があるとまではいえないでしょ
う。定款変更義務をいうなら、解散した場合に、定款の事業目的こそ清算目的
に変更すべきであり、これをそのままに譲渡制限部分だけ定款変更せよという
見解には賛同しかねます。


2018.01.12(金)【役員の退任と定款添付の要否】(金子登志雄)

 商業登記規則61条1項に「定款の定め又は裁判所の許可がなければ登記す
べき事項につき無効又は取消しの原因が存することとなる申請については、申
請書に、定款又は裁判所の許可書を添付しなければならない」とあります。

 この規定を根拠に、定款の添付の要否が問題になることが少なくありません。
『事例で学ぶ会社法実務』の改訂作業の際も、あちこちで質問がありました。
今日はその中から、役員の退任と定款の添付の要否を取り上げましょう。

 1.辞任するとき、任期中であることを証明するため定款の添付が必要か。

 不要です。規則61条1項の定款の添付は「裁判所の許可書」と同等のもの
ですから、「辞任に定款の許可がいる」といわれたら、誰でも、まさかと思う
ことでしょう。また、任期中でなかったら、任期満了で退任済みなわけで、そ
れを任期中がどうか疑義があるから、辞任を認めないというのは、違法な登記
を残存させよというのに等しい結果になります。

 登記簿に役員として登載されている限り、任期中だという適法な推定が働い
ていると考えない限り、商業登記の存在意義がありません。取引の都度、任期
中の代表取締役であることを証明せよ、登記簿など信用できん、というのと同
じことです。

 2.議事録に「本総会終結をもって任期満了退任」と記載されていれば、こ
れをもって、退任を証する書面として扱われますが、「取締役Aは退任したの
で後任を………」程度の記載では、退任日を証明するため定款の添付が必要で
はないか。

 これはそのとおりです。ただし、商業登記法54条4項の退任を証する書面
として定款の添付が要求されるのであって、規則61条1項が根拠ではありま
せん。退任に許可などいるわけがないからです。

 というわけで、規則61条1項が根拠ではないため、定款の全文ではなく抜
粋でよいはずですが、著作に書こうと思って、先例を探してみましたが、みつ
かりませんでした。当然すぎるから、質問もなかったのでしょうか。


2018.01.11(木)【各自代表】(金子登志雄)

 会社法349条1項と2項に次のようにあります。
 1 取締役は、株式会社を代表する。ただし、他に代表取締役その他株式会
  社を代表する者を定めた場合は、この限りでない。
 2 前項本文の取締役が2人以上ある場合には、取締役は、各自、株式会社
  を代表する。

 では、代表取締役A、取締役Bの会社でBが辞任したとき、Aは1項本文の
各自代表になったといえるでしょうか。また、Aが辞任し、定款が取締役1人
を許容しているとき、Bに代表権付与が付与され、各自代表になったといえる
でしょうか。

 実は上記のような説明がよくなされています。しかし、私が著者で1種類の
株式しか発行していないのに普通株式というのはおかしい、工業高校や商業高
校があるから普通高校があるのだと書いたのと同様に、取締役が1人なら比較
対象がないのですから、「各自」代表というのは日本語としておかしいですね。

 そこで、今度の改訂版で「1人代表」と表現してみようと思いましたが、取
締役が1人しかおらず、比較対象もいないのに「代表」というのも誤解を招き
そうだなと思いやめました。

 この「代表」は会社の代表という意味で複数の取締役の代表という意味では
ありませんから、純法律的にはおかしくありませんが、平取締役もいないのに
代表とはどういうわけだといわれてしまいそうです。

 いまのところ「1人取締役体制」というのが最も実態に合っていると思いま
すが、面白味もなく、これでは流行りませんね。何かよい命名はありませんか。


2018.01.10(水)【仮想通貨】(島根・根来川弘充)

 皆様あけまして、おめでとうございます。

 昨年末にかけて、仮想通貨の価値が急に上がりました。今、すこし落ち着い
たようですが、それでも、当初の価値からは、ほど遠いものだと思います。

 まったくといっていいほど、無縁な私にとっては、「仮想」といわれる自体
で、一歩引いた目で見てしまいます。


 また、昔、「通貨」について、文献を調べたことがあるのですが、「通貨」
とは、流通や蓄財の手段であり、代替となる品の価値を示すものになっても、
それ自体、価値が無い物である、という趣旨の事が書いてあったと記憶してい
ます。

 価値のないものに、価値がついていくことは、まさにバブルであり、時代を
こえて、同じ事を繰り返しているようにも、思えてしまいます。

 年始にあたり、仮想通貨による詐欺事件が出てこないことを祈念したいと思
います。


2018.01.09(火)【本年も業務執行司法書士】(金子登志雄)

 遅くなりましたが、新年おめでとうございます。本日より、本欄を再開しま
すので、よろしくお願いします。

 年末年始は、それこそ眠っている時間以外の全てを、著書の改訂版に時間を
費やしていました。年末のNHK紅白も年初の初詣も、一切無関係にパソコン
とにらめっこしていました。

 改訂版は、東京司法書士協同組合編の『事例で学ぶ会社法実務〔設立から再
編まで〕』ですが、3年以上前の出版のため株主リストも本人確認証明書も入
っていないので、その後の論点を加筆し、旧論点を見直すためです。

 純粋の新著には意欲がわきますが、改訂版のような見直し作業は疲れるだけ
なので、いつも執筆にご協力をいただいている立花・幸先さんに丸投げして楽
をしたかったのですが、既に383頁もあり、これに新論点が加わると400
頁をはるかに超えるため、慌てて、既存の部分の一部をカットしたり、余白の
行を詰めたりと、空き領域の拡大に勢力を費やしていました。

 ここまでは楽な作業でしたが、この結果、図表が2つの頁に分裂するなどの
2次災害(?)が、あちこちで発生したため、このまま立花さん達にバトンタ
ッチするのは申し訳なく、私の仕事の美学にも反しますので、行数調整のため
数行の論点を新項目に加えたり、補足コメントなどを挿入しはじめましたら、
あれも必要だ、これも必要だで、とうとう、全面的に深入りしてしまいました。

 しかし、その甲斐あって、項目は3人で45%も増やしたのに、増頁は10
頁程度に抑えることができました。大成功でした。

 本年最初の出版になると思いますが、既存のものをお持ちの方も「全訂版」
にご期待ください。

 本年も、会社では監視役の監査等委員ですが、こと司法書士業務と執筆業務
では、業務執行司法書士で頑張ります。


過去徒然

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