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こんにちはESG法務研究会です

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ESG法務研究会は、合併再編等会社法手続の実績は最大級!

TOPICS


1.最近の出版は次のとおりです。いずれも実務書であり、画像は本HPの左
 側の回転板あるいはアマゾン等で、ご確認ください。
 (1)『募集株式と種類株式の実務〔第2版〕』…………2014年5月発売
 (2)『親子兄弟会社の組織再編の実務〔第2版〕』……2014年7月発売
 (3)『「会社法」法令集〔第11版〕』…………………2015年3月発売
 (4)『「会社法」法令集〔机上版〕』……………………2015年5月発売
 (5)『改正会社法と商業登記の最新実務論点』…………2015年11月発売
 (6)『会社法務書式集〔第2版〕』………………………2016年3月発売
 (7)『組織再編の手続〔第2版〕』………………………2016年7月発売
 (8)『論点解説/商業登記法コンメンタール』…………2017年2月発売
  (9) 『商業登記実務から見た中小企業の株主総会・取締役会』
                       …………2017年4月発売
  (10)『総務・法務担当者のための会社法入門』…………2017年10月発売
 (11)『事例で学ぶ会社法実務【全訂版】』………………2018年4月発売
  (12) 『商業・法人登記360問』……‥‥‥‥‥………2018年5月発売
  (13)『事例で学ぶ会社の計算実務』………………………2018年9月発売
  (14)『商業登記実務から見た合同会社の運営と理論』…2019年2月発売

徒然日誌


2019.08.09(金)【当事者主権時代への最初の一歩か】(金子登志雄)

 元祖・車椅子議員である八代英太氏(元郵政相)によると「銀座でひっくり
返った時、(中略)、私の車いすを起こそうとした人はいなかった。なぜなら、
触ったことがないから。そんな中、私を抱きかかえて車いすに乗せてくれたの
は外国人観光客だった」とのことです。

 私がその場にいても同じだったと思います。日本社会では「普通でないこと
(異質性や多様性)」に対して慣れる訓練がなされていないからです。学校に
身体障碍者がいれば先生の負担も考えて養護学級に隔離しますし、欧米の学級
のようにさまざまな人種の子がいることもありません。異国人にも、障碍者に
も、車椅子にも慣れていないから、突然の出来事に、どう対応してよいのか分
からなくなります。

 このたび参院議員になった重度障碍者の舩後・木村さんの主張は「我々のこ
とを我々抜きで勝手に決めるな」(障害者権利条約のスローガン)ということ
かと思いますが、健常者が思う憐み?の福祉と障碍者自身の「普通の人間」と
して扱われたいという人間の尊厳に基づく福祉とは全く異なることを気づかせ
てくれました(岩手県から当選した横沢氏も車椅子です)。

 パラリンピックの開催が近い好機が味方したとはいえ、健常者が30年かか
って意識改革し整備することを重度障碍者を国会議員に送ることで、一挙に前
進であり、生産性という最近の価値基準に対して強烈な反撃になったわけです
から、山本太郎という男は本当にすごい人です。

 知識よりもモノの見方・考え方・捉え方あるいは発想や戦略に関心の強い私
にとっては、いま最も注目の人です。イデオロギーよりも生活者や人間の尊厳
に視点を置いていること、知名度よりも当事者であることを重視していること、
その他、経済政策や原発問題などまで、商業マスコミによって刷り込まれた既
成概念や我々の思い込みに反省を突き付けており、ただただ驚くばかりです。
とくに、2世・3世議員ばかりの形骸化した民主主義に「当事者主権」を打ち
出して風穴を開けようとする切り口は実に見事でした。

 また、新自由主義経済政策による格差社会の急速な進展で、下層階級に追い
やられても努力不足だ能力不足だ自己責任だと精神面でも圧迫され続けてきた
人々に対し、「あなたは存在するだけで価値がある。あなたの生活が苦しいの
はあなたの責任ではない」と希望を持たせる演説も新鮮であり、こういう救世
主タイプの政治家の登場は日本では珍しいのではないでしょうか。今後、急速
に支持が拡大すると同時に反対派からの猛烈なネガティブ・キャンペーンも増
えることでしょう。

 ぜひ、お盆休みにでも、彼の意見に賛成か反対かとは無関係に、彼のモノの
見方・考え方・捉え方や、難しいことを平易に語る説明の仕方を参考にしてく
ださい。新しい時代(れいわ)に新しく選ばれた(新選組)司法書士を目指す
方には、きっとよいヒントがあることでしょう。

 (街頭記者会見:「アプリをインストール」をクリックして数分後です)
  https://www.pscp.tv/w/1BdxYAwrPkoxX
 (文章:長周新聞)
  https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/12617
 
 ※来週一週間は本欄をお休みにします。19日にお会いしましょう。


2019.08.08(木)【合同会社の設立手続における本店所在場所の決定】
                            (仙台・立花宏)

 私達司法書士は商業登記の専門家ですから、会社の設立登記手続をご依頼い
ただくことが少なくありません。自分自身のことを考えると、ご依頼いただく
設立手続の中で、合同会社の割合が高くなってきています。私の方から合同会
社という会社形態を推薦しているわけではなく、お客様の方から合同会社をご
指定される場合がほとんどです。社会の中でも合同会社の知名度があがってい
るのかもしれません。

 ところで、次の事例についてはどう考えることになるでしょうか。
(事例1)
 社員A、B、C、そのうち定款で業務執行社員をA、Bとする合同会社を設
立する。本店所在地につき、定款には最小行政区画までを定めておいたので、
具体的な所在場所を定める必要があるが、どのような手続が必要か。

 株式会社の設立の場合を考えると、事例のような場合は、発起人の過半数の
一致により決定することになります。それと同様に考えると、合同会社の場合
においても、社員の過半数の一致により定めるようにも思えます。しかし、合
同会社の設立手続の場合、本店の具体的な所在場所の決定は、業務執行社員の
過半数の一致により行うものとされています(注1)。

 株式会社の場合は、設立過程における業務執行等の決定を行う者については、
会社法施行前の商法では取締役(会)と解釈されていましたが、会社法では、
設立時取締役の権限は法律または定款に定められた事項に限られるものとされ、
本店所在場所の決定等は発起人が行うものと整理されました(注2)。

 一方、合同会社については、設立過程においても業務執行等の決定は業務執
行社員に権限があるものと解釈され、業務執行社員を定めた場合には、設立過
程における業務執行の決定は当該業務執行社員が行うということでしょうか。

 では、次の事例はどうでしょうか。
(事例2)
 前問のケースで、業務執行社員A,Bがともに法人であった場合、設立時の
具体的な本店所在場所の決定の意思表示をするのは、A、Bの職務執行者でよ
いか。

 設立時の具体的な本店所在場所の決定が業務執行社員の権限だとすると、登
記実務の言葉をお借りすれば、合同会社の社員の行為のうち業務執行社員のみ
がすることができるもの整理できるため、業務執行社員が法人である場合には
職務執行者が意思表示を行うようにも思われます。しかし、合同会社成立前に
は、「登記申請行為に関するものを除き、業務執行社員となる法人につき選任
される職務執行者には何ら権限がない」(注3)ものとされ、登記実務上、事
例の場合の意思表示は、法人の代表者が行うものとされています。

 株式会社場合、設立過程における具体的な本店所在場所等の業務執行の決定
は原則として発起人が行うとされ、発起人の議決権の過半数によるとされてい
ます(平18・3・31民商第782号通達)。そして、設立時より一部の株
式について完全無議決権株式を発行する種類株式発行会社である場合、当該完
全無議決権株式については、発起人は前記の決定についての議決権を行使でき
ないものと考えられます(注4)。

 合同会社も同様で、会社成立後の業務執行の決定と異なり、設立過程におけ
る業務執行の決定は、株式会社の発起人ともいえる合同会社の社員(となろう
とする者)という立場で行うということなのでしょう。そして、定款で業務執
行社員を定めた場合には、業務を執行しない社員は完全無議決権株式のみを有
することとなる発起人と同様、設立過程の業務執行の決定には参加できないと
いうことだと思います。そのため、この場合の意思表示は(業務執行権を有す
る)“社員”の立場で行うのであり、法人の場合はその代表者が行うと解釈さ
れているのだろうと考えました。

 注1、3)松井信憲著『商業登記ハンドブック第3版』
  (商事法務) 616頁以下。
 注2)「旬刊商事法務」No.1738 13頁。
 注4)幸先裕明著「種類株式発行会社の発起設立における発起人の議決権に
   ついて」
  (「月刊登記情報」690号(金融財政事情研究会)4頁以下)


2019.08.07(水)【駄菓子屋の災難】(藤沢・酒井恒雄)

 先日、国税庁から、「消費税の軽減税率制度に対応した経理・申告ガイド」
なるものが送られてきました。司法書士業務の売り上げについては、軽減税率
の対象にはならないので、厄介な手続とは無縁だと勘違いしていました。しか
し、食料品を経費計上する際には経理処理が面倒になることを今更ながら知っ
て、うんざりしている状況です。

 ちょっと前の話ですが、軽減税率に関する現場の混乱ぶりがニュースで紹介
されていました。舞台は駄菓子屋でした。「一体資産」なるものの定義を巡っ
て、問題が発生しているようです。一体資産とは、例えば、宝箱のようなケー
スにラムネ菓子が入っているような商品のことです。軽減税率の適用対象のお
菓子(食料品)と、軽減税率の対象とならない宝箱(玩具)が一体となってい
るような商品です。

 一体資産は、原則、軽減税率の適用対象外となりますが、販売価額(税抜き)
が1万円以下で、その資産の食品から構成されている部分の価額の占める割合
として、合理的な方法により計算した割合が3分の2以上のものは、全体が軽
減税率(8%)の適用対象となります。

 駄菓子には、お菓子を食べた後に、おもちゃとして遊べる部分がメインにな
っているものも少なくありません。例で挙げたラムネ菓子入りの宝箱のような
商品は、ケースは豪華に出来ていて、入っているラムネ菓子は2~3粒という
場合も多いです。こういった商品は、おそらく軽減税率の対象から外れてしま
うのでしょう。

 ちなみに、実際に問題となったのはコンパス(方位磁石)付のお菓子だった
ようです。国税側と協議をした結果、軽減税率の対象にならず、税率10%だ
と回答されたのだそうです。「合理的な方法による計算」がされたのでしょう
ね・・・・・。

 この他にも判断が難しい商品もあるようで、駄菓子屋の店先に並ぶ商品は、
軽減率対象商品と軽減率非対象商品の見本市のような感じになってしまいそう
です。駄菓子屋にとっては災難としか言いようがありません・・・・・。



2019.08.06(火)【盛会! 第9回全国の司法書士法人の集い】
                           (東京・鈴木龍介)

 以前、こちらでもご紹介させていただきました一般社団法人全国司法書士法
人連絡協議会(法人協)の「第9回 全国の司法書士法人の集い」が8月3日
(土曜日)に四谷の日司連ホールで開催されました。

 猛暑にもかかわらず、法人協会員・関係者・来賓を含め、総勢80余名の方
に参加いただき、盛会で終えることができました(その後の懇親会にも65名
の方に参加いただきました)。ご参加いただいた皆様には、この場を借りまし
て、あらためて御礼申し上げます。

 法人協の集いでは、一般社団法人としての、いわゆる定時社員総会も併せて
行っているのですが、今年は役員の改選期にあたりまして、理事も大幅に入れ
替わり、若返りをしました。一応、エリア(地域)・ジェンダー(性別)・エ
イジ(年代)のバランスがとれたメンバー構成かなと思っています。

 そして、総会後の理事会におきまして、私が、図らずも、柄にもなく理事長
を拝命することになってしまいました。前任の山田理事長と比べるまでもなく、
軽量・軽薄化は否めませんが、関係各位のご協力とご支援をお願いする次第で
す。

 また、組織の常ではありますが、数は力ということから会員増強に努めるこ
とになります。つきましては、これをお読みの司法書士法人の皆様には是非と
もご入会の検討をいただけるとうれしいです。入会の申込み等は、法人協のH
P(http://houjinkyou.com/)をご参照ください。

 この集いの内容等につきましては、金融財政事情研究会(法人協の賛助会員)
発刊の「月刊登記情報」に掲載される予定(11月号)ですので、こちらもご
覧いただければと思います。


2019.08.05(月)【司法書士の将来】(島根・根来川弘充)

 先月はじめには、年に1回の司法書士試験がありました。現在、都道府県に
試験会場があるのですが、来年から、約3分の1になり、およそ管区法務局毎
になるそうです(島根の場合は広島とのこと)。

 一時期(平成20年代)2万5000人を越えていた受験生も、今や2万人
を切っています。受験地が減れば、受験者数も大幅に減り、来年は1万人を越
えれば良い方かもしれません。

 法定相続情報証明制度も始まり、法務局が直接利用者へのサービスを拡大し
ました。一方で、インターネット上では、会社の登記申請を手助けするソフト
が出ているとのことです。

 時代の流れから、避けてはとおれない道だと思います。とはいえ、私自身、
まったく悲観していません。

 依頼者のニーズを、さらに追求することで、より幅広い仕事が出来ていると
実感しているからです。たとえば、相続登記のケースですが、依頼者を通じて、
他の相続人にどのような文書をだせば、前向きな話に進んでいくのか。うまく
いったときは、「書士」としての喜びをとても実感できます。司法書士でしか
できない業務は、まだまだたくさんあります!

 今年受験された皆様へ
 もし失敗してもあきらめず、是非、来年も目指してください!!!


2019.08.02(金)【「辞任」という概念】(金子登志雄)

 立花さんの26日(金)の本欄投稿では、会社法591条4項に「業務を執
行する社員を定款で定めた場合には、その業務を執行する社員は、正当な事由
がなければ、辞任することができない」とあることに触れていました。

 これ、本来の「辞任」といえるのでしょうか。辞任とは就任した地位を辞す
ることですが、持分会社の社員は本来的に業務執行権を有するとされているの
で(590条1項)、「業務を執行する社員を定款で定めた場合」は他の社員
の業務執行権を制限し特定人に集中させたもので選任・委任行為はないと解釈
されているからです。

 同じことは「取締役は、各自、株式会社を代表する」(349条2項)のに
株主総会の承認があれば代表取締役の辞任が認められる場合にもいえます。辞
任とは単独行為なのに、相手の承認がいるのはおかしいじゃないかというわけ
ですが、結局のところ、これらの辞任は、純粋な意味の辞任ではなく、単に現
状の職務を辞するという意味に過ぎないと思われます。

 面白いのは、後者(代表取締役)の場合の登記原因は「辞任」であり添付書
面として株主総会議事録が必要ですが、前者の業務執行社員の場合の登記原因
は「業務執行権喪失」であって「辞任」ではありません。制限された権利の回
復の登記についても前者は「就任」であって後者は「業務執行権付与」です。

 前者についても「代表権喪失」「代表権付与」とすれば統一がとれるように
も思いましたが、なぜそうしないのでしょうか。2つ理由を考えました。

 1つは、権利の付与・喪失は会社法以降の用語であり、旧商法・旧有限会社
法時代にはなかったから、代表取締役については伝統的に「辞任・就任」を使
う慣例だから。

 いま1つは、代表取締役は「代表取締役である取締役」であって、もともと
選任された地位の内部で代表権付かどうかの問題であるのに対し、業務執行社
員は社員そのものであり、社員権の制限の問題です。例えていえば、株主を普
通株主と議決権制限(種類)株主に分けたようなもので、選任・就任とは鼻か
ら無関係だから。

 たぶん、後者でしょう。


2019.08.01(木)【ニッパチ】(金子登志雄)

 NHKから国民を守る党はさっそく特技の無節操ぶりを発揮しはじめました。
戦争発言の丸山議員を迎えたのはともかく、立花孝志代表の「自民党がスクラ
ンブル放送を認めるなら憲法改正に賛成する」との発言は看過できませんでし
た。同党に投票した人はそこまで白紙委任しているとは思えません。政界の劣
化は国民の政治意識の投影(鏡)とはいえ、政界が吉本化してきた感がします。

 さて、仕事閑散期の8月に入りました。2月と8月は「ニッパチ」といって
一般的に売上が減少する月だとされていますが、当事務所でも同じです。昨年
でいえば、情けないことに出勤日数のほうが受託件数よりも上回っていました。

 我ながら、よくこれで生活できるなと感心してしまいますが、商業登記専門
の当事務所では顧客の多くが3月決算のため、役員変更登記の多い4月1日前
後、10月1日前後、定時株主総会終結後の6月下旬から7月初旬に仕事が集
中してしまいますので、8月としてはこんなものです。

 先日お会いした、ブログ「司法書士のオシゴト」で知られる新保司法書士に
「どうしてブログを更新できないほどいつも多忙でいられるのか(羨ましい限
りだ)」とお尋ねしましたところ、書き入れ時以外でも組織再編などの仕事が
あるのと仕事が早くないからといわれてしまいました。

 ご謙遜でしょうが、大手事務所ですから、外資系などの3月決算以外の顧客
が多いことも大きな要因でしょう。個人的な感触ですが外資系又は上場予備軍
の顧客の多い事務所は、季節に影響されず仕事の依頼があるようです(本欄に
登場する古山さんは後者に近いと推測しています)。

 いままで季節変動のない多忙な事務所を羨ましく思ってきましたが、逆に考
えると、書き入れ時以外はのんびりしている当事務所のほうが新保さん達から
みれば、よほど羨ましい存在かもしれないと考え直しました。何よりも、自由
気ままな「長屋の浪人生活」を天職と思っている私には今の状態が丁度よいの
かもしれません。課題は無趣味の私には暇の過ごし方が分からないことです。


2019.07.31(水)【大らかさ】(藤沢・酒井恒雄)

 先週、義理の父が亡くなりました。食道癌が見つかり、手術をすれば数年は
寿命が延びたかもしれませんが、手術も、放射線治療等も行わないという本人
の強い希望で、症状を緩和するだけの処置をして、最後は穏やかに息を引き取
りました。

 後で見つかった、かなり前に書いたと思われる遺言書にも、癌になった場合
は一切の治療は不要、延命措置はするなと書かれており、ぶれない意志があっ
たようです。

 葬儀は、住所地の行政機関が紹介してくれた業者に頼んだのですが、真言宗
のお寺を借りて、浄土真宗の住職がお経をあげに来るという、ハイブリッドな
ものでした。

 日本人は宗教を重んじないとか、信仰心が薄いとか批判をされることもあり
ますが、私は、こういう大らかな宗教観を持つ日本の文化が好きです。

 文化というよりも、誰に対しても門戸を開き、宗派間の激しい対立が続いて
いるということもない、仏教自身の大らかさが好きなのかもしれません。変な
言い方かもしれませんが、細かいことは気にしないというスタンスに、色々な
意味で救われる気がします。

 ふと、某人気ロックバンドの曲の、「そう、信じる者しか救わない、せこい
神様を拝むよりは、僕とずっといっしょにいる方が・・・」という歌詞が思い
出されたりもしました。

 誤解のないように書きますが、決して特定の宗教を批判したり、特定の宗教
を擁護する趣旨ではありません。私は、漠然と神様の存在を信じていますが、
その神様の姿をイメージすることができません。正確に言うと、その時々で神
様のイメージが違います。そんな奴が、勝手に感じたことを書いたと御理解い
ただければと思います。


2019.07.30(火)【戦後商法のあゆみ⑰ 昭和56年改正~その4~】
                           (東京・鈴木龍介)

 今回は「戦後商法のあゆみ」の17回目として、昭和56年商法改正の続き
(さいご)です。

3.商業登記に関する規律等
(2)株式会社と登記
② 機関・役員制度の見直し
a)株主総会の瑕疵への対応
 株主総会の決議等に瑕疵があった場合の救済措置について、整理がなされた。
具体的には、定款に違反する決議や特別利害関係人による議決権行使にかかる
不当決議については決議取消事由に該当することとされた(昭和56年改正商
法247条1項2号・同項3号・430条2項)。

 また、決議不存在確認の訴えが明文化され(昭和56年改正商法252条)、
決議取消し・無効確認とともに決議不存在確認の判決が確定したときには、裁
判所が登記を嘱託することとされた(非訟手続法139条7号)。

b)役員の欠格事由の新設
 株式会社の取締役・監査役・清算人について、あらたに次のとおりの欠格事
由が設けられた(昭和56年改正商法254条ノ2各号)。
 ⅰ)禁治産者・準禁治産者
 ⅱ)破産者で復権を得ていない者
 ⅲ)商法等の犯歴者(執行猶予中の者を含む。)
 ⅳ)商法等以外の犯歴者(禁固以上の刑/執行猶予中の者は含まない。)
 
c)大会社要件の見直しと大会社の監査役
 大会社の要件について、資本金額が5億円以上とされていたところ、負債が
200億円以上であることが追加された(昭和56年改正監査特例法1条)。
つまり大会社は資本金が5億円以上もしくは負債が200億円以上の会社であ
り、小会社は資本金が1億円以下もしくは負債が200億円未満の会社という
ことになる。

 大会社の監査役について、複数名(2名以上)でなければならないとすると
ともに、常勤監査役の設置の義務付けがなされた(昭和56年改正監査特例法
18条1項・2項)。

d)会計監査人に関する規律の整備
 会計監査人の選任について、取締役会の決議によるとされていたところ、株
主総会の普通決議で行うこととされた(昭和56年改正監査特例法3条1項)。

 会計監査人の任期について、それまで定めがなかったところ、就任後1年以
内の最終の決算期に関する定時総会の終結の時までとされるとともに、同総会
で別段の決議がなされなかったときには、再任されたものとみなすこととされ
た(昭和56年改正監査特例法5条の2第1項・2項)。

③ 新株発行制度の見直し
a)通常の新株発行
 通常の新株発行により増加する資本の額について、原則は発行する株式発行
価額の総額であるところ((昭和56年改正商法284条の2第1項)、株式
発行価額の2分の1以内の額で、かつ額面株式は券面額、無額面株式は5万円
を超過する部分を資本の額に組み入れないことができるとされた(昭和56年
改正商法284条の2第2項)。

b)準備金の資本組入による新株発行
 1株あたりの純資産額が5万円未満とならないときに限り、準備金の資本組
入れによる新株発行ができることとされた(昭和56年改正商法293条ノ3
第2項後段)。

c)抱き合わせ増資による新株発行
 これまでの額面株式の発行に際し、発行価額のうち券面額を超過する額を資
本に組み入れたものがあるときは、その組入額を発行価額に一部に充当し、残
余を引受人に払い込ませる方式により新株発行ができることとされた(昭和
56年改正商法280条ノ9ノ2第1項前段)。

④ 新株引受権社債の新設
 会社は新株引受権社債の発行ができることとなり、新株引受権の譲渡や行使
による新株の発行等に関する規律が設けられた(昭和56年改正商法348条
3項)。新株引受権社債を発行したときには、その内容が登記事項とされた
(昭和56年改正商法341条ノ15)。

~参考文献等~
 ・横山亘『会社法制定までの商法改正に伴う登記実務の変遷』
  (日本法令、2012年)30頁~138頁
 ・秋坂朝則『商法改正の変遷とその要点(新訂版)』
  (一橋出版、2006年)82頁~98頁
 ・北沢正啓「会社法根本改正の計画とその一部実現―昭和56年の改正―」
  浜田道代編『日本会社法の歴史的展開』
  (商事法務、1999年)426頁~477頁
 ・藤田勝利「昭和56年商法改正」倉沢庸一郎=奥島孝康編『昭和商法学史』
  (日本評論社、1996年)65頁~89頁
 ・法務省民事局民事法務研究会編『商業登記法等改正経過法令集』
  (商事法務、1994年)165頁~174頁
 ・味村治ほか「座談会 戦後の会社法改正事情(下)」
   商事法務No.1231(1990年)8頁~21頁


2019.07.29(月)【額面株式時代の秘密の商売】(金子登志雄)

 23日(火)の鈴木さんの投稿を読んだと思いますが、平成13年10月施
行の金庫株改正で無額面株式に一本化される前は、額面株式に非ずんば株式に
非ずという額面株式全盛時代でした。大雑把にいうと昭和25年以前の設立が
額面50円、以後が額面500円、昭和56年改正以降が額面5万円でした。
額面株式には「額面×株数≦資本金」というルールがあり、中小企業では、ほ
とんどが「=」でした。

 当然ながら平成時代になっても、額面5万円会社がほとんどであり、上場会
社のように歴史のある古い会社だけが額面50円(額面500円もあり)で、
1単位1000株にし、これが取引単位になりました。1単位あたりだと5万
円になりますが、新聞の株式欄では1株あたりの値段で記載されました。株価
が50円を割ると、額面割れといい、ダメ会社と評価されました。

 上場を目指す額面5万円会社は休眠中の額面50円会社を買収し子会社とし、
上場前にそこと合併し、額面50円、1単位1000株に変更して上場してい
ました。新聞にのる株価が額面5万円の1株あたりでは不利だったことと、額
面50円が上場会社の資格のようなイメージがあったためです。

 その結果、休眠中の額面50円会社はピークで1000万円くらいの価値が
あり、M&Aコンサル会社の私のところにも証券会社から「額面50円会社の
売り物はないか」とよく電話があったものです。

 そこで私は、額面50円会社を作れないかと考え、試しに休業中だった当社
の額面5万円を50円に変更し登記申請してみました。公告方法などが変更で
きるのに額面が変更できないわけがないと思ったわけです。当時はそれが可能
だと思う人は一人もいなかったので、東京法務局も驚いたようで、いろいろ調
べてくださり、何と受理されました。

 しかし、一度でも額面5万円になった会社は単位株制度を採用することがで
きず、額面50円にしても上場の受け皿には使えませんので、最終的には休眠
中の額面500円会社を買って、それを額面50円会社に作り替えました。予
想どおり、仕入れ値の倍以上で売れました。

 さて、額面500円、発行済株式の総数2000株、資本金100万円の会
社を額面50円にしても「50円×2000株」は10万円ですから、偽物の
額面50円と思われてしまいます。そこで「額面50円×株数=資本金」に作
り替えるため金子はどういう手段を採用したでしょうか。株式分割は分割後の
1株純資産が5万円ありませんので不可です。無償割当ても当時はありません。

 裏道の低廉価格発行の増資を利用しました(株主は私一人ですから有利発行
にはなりません)。20万円を増資して資本金120万円・額面50円だと発
行済株式の総数は2万4000株ですから、2万2000株の発行です。増資
額20万円÷2万2000は9.09…ですから、1株9円と10円の増資に
します。額面割れ発行は禁じられていましたので、定款変更で無額面株式も発
行できるようにし、1株9円でX株、10円でY株とすると、次の連立方程式
を解けばよいことになります。
   ①X+Y=2万2000  ②9X+10Y=20万
 
 X=2万、Y=2000になります。当時は授権枠は4倍制限でしたので、
毎日、授権枠の拡大と、1株9円と10円の増資を繰り返し、最終的に資本金
120万円、株数2万4000株にし、最後は定款変更で額面株式のみの会社
にしました。当時は和紙の登記簿でしたが、この経緯が分からないように上手
に工作し、最初から額面50円会社にみえるようにし、完成です。

 当時、某証券会社が無額面株式による額面割れの低廉発行を繰り返し、すご
い方法として新聞種にもなりましたが、そのはるか前から私は実行していまし
たが、このノウハウだけは門外不出の絶対秘密にしていました。まだ私が司法
書士になる(平成8年12月)前の話です。しかし、実に残念なことに、平成
13年金庫株改正で額面株式が廃止され、この方法の意味がなくなりましたの
で、拙著『これが新商法だ・これが新登記だ』で公表したという次第です。

 このように額面株式時代から無額面株式を利用したテクニックを駆使してい
ましたから、その後の商法の相次ぐ改正、会社法の制定は、私にとってやっと
「オレの時代が来た」と同じでしたので、その波にうまく乗れました。

 ついでながら、額面株式全盛時代でも無額面株式を発行することもできるよ
うに定款を変更して、合併や株式交換で無額面株式の発行にすれば、増加資本
金額をゼロにできました。したがって、これは会社法の成果ではありません。


2019.07.26(金)【業務執行社員の辞任と他の社員の業務執行権】
                           (仙台・立花宏)

 7月20日(土)は、午前中、地元宮城県司法書士会の研修会で講師を務め
させていただいた後、午後は福島県司法書士会でも講師を務めさせていただき
ました。ご参加いただきました両会の皆様はこの場をお借りいたしまして御礼
申し上げます。また、1日に2つの研修会というのは初めての経験で、とても
緊張しましたが、両会の研修担当者の方をはじめ、役員の皆さまから様々なご
配慮・ご協力をいただき、無事、役目を終えることができました。心より感謝
を申し上げます。

 さて、午後の福島県司法書士会様の研修内容は「合同会社」がテーマでした。
これまでの研究の成果を発表させていただいたのですが、最後の質疑の時間に、
ご参加いただいた会員の方から、貴重なご質問をいただきました。その場では、
その時点での私見をお話したのですが、あらためて検討を加えた結果、結論は
間違っていないように思いました。せっかくですので、この場でその論点を、
若干アレンジした事例をもとに記述してみたいと思います(福島県司法書士会
様には結果をお知らせいたしました。)。

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想定事例
 社員がABCの3名、定款で業務執行社員及び代表社員をAと定めている合
同会社において、正当な事由によりAが業務執行社員を辞任した(会社法59
1条4項)。この場合、業務執行社員及び代表社員に関する定款の定めは効力
を失うと考えられるが、その結果、会社法590条1項及び599条1項によ
り、各自業務執行、各自代表となり、ABC全員が業務執行社員及び代表社員
となるのか。
----------------------------------------------------------------------

 これに関連する先例として、平成20年11月21日民商3036号商事課
長回答があります。その要旨は、「社員がABCの3名、業務執行社員がAの
合同会社において、業務執行社員Aに任期を定めている場合に、Aの任期満了
後、業務執行社員の指定がされなかった場合には、ABC全員が業務執行権を
有することとなる」というものです。

 持分会社の業務執行社員についての定款の定めは、当該業務執行社員以外の
社員の業務執行権を制限するものです。任期の規定は、その業務執行権の制限
される期間を定めたものといえ、任期満了後に特に業務執行社員を指定しなか
った場合には、この制限が解除され、原則に戻り、各自業務執行権を有するこ
ととなるからです。

 では、想定事例の場合にも同様の考えてよいでしょうか。Aが業務執行社員
を辞任すると、業務執行社員ではなくなりますから、Aを業務執行社員とする
定款の規定は効力を失い、他の社員を業務執行社員とする規定はありませんか
ら、前記任期満了の場合と同様、社員全員が業務執行権を有することとなるよ
うにも思えます。

 しかし、Aを業務執行社員と指定することは、A以外の社員の業務執行権を
制限することであり、Aの一方的意思表示による辞任により、他の社員の業務
執行権の制限が解除されると考えるのは、社員にとって想定外といえるように
思えます。前記任期満了の場合は、社員の意思でA以外の社員の業務執行権の
制限期間を設定したのであり、その満了により業務執行権の制限が解除される
のは社員にとって想定内といえ、この2つのケースを同様に考えることはでき
ないように思いました。

 「登記研究」646号117頁以下に、有限会社において代表取締役が定め
らると、他の取締役の代表権が制限され、当該代表取締役が死亡その他の事由
により退任した場合でも、他の取締役が当然に会社を代表することにはならな
いという見解が紹介されています。定款または社員総会の決議で代表権のない
取締役とされた者が、定款の変更または社員総会の決議によらずに代表権を取
得する余地はないと考えられるからというのがその理由です。

 合同会社の業務執行社員の辞任の場合も同様に考えられるのではないかと思
いました。合同会社において、定款で定められた業務執行社員が辞任したいと
考えた場合、本来はその旨を他の社員に伝え、他の社員全員に同意してもらい、
定款変更をすることで対応することが必要でしょう。しかし、業務執行社員の
自由を過度に束縛しないために、会社法では、特に正当な事由がある場合に業
務執行社員の一方的意思表示により辞任を可能とする規定を設けました。

 この辞任の場合には、定款の変更という社員の意思によりませんから、他の
社員の業務執行権の制限が当然に解除されるものではないと考えました。

 よって、私見ではありますが、この会社において、業務執行社員及び代表社
員の変更登記を行うには、前記「登記研究」の論考の有限会社の代表取締役の
退任の場合と同様、後任の業務執行社員(代表社員)を定める(あるいは、業
務執行社員の定めを廃止して各自業務執行(各自代表)の会社とする総社員の
同意を行う)必要があるものと考えます。


2019.07.25(木)【N国とは?】(金子登志雄)

 7月8日に全国で一斉に申請した登記でまだ終わっていないところがありま
す。関東地方では遅いので有名なあの法務局ですが、他の法務局では、例えば
取締役1名の辞任など簡単な登記は直ぐに終わるのですが、この法務局は難易
度とは無関係に遅いので困ったものです。もっとも、ここが直ぐに終わると、
申請中の案件がゼロになり、わびしい気分になりますから、私の精神衛生面で
はよいようです。

 さて、会社法以外の話題ですが、皆さんは、N国と聞いて何のことか直ぐに
お分かりですか。一瞬、どこの国の略称かと思ってしまいますが、今度の参院
選で1人だけ当選した「NHKから国民を守る党」のことです。代表の立花孝
志氏は元NHK職員で、受信料不払い運動の中心人物であり、インターネット
の世界では有名人です。

 最近、地方議会で議席を持てるようになってきたのは知っていましたが、め
ちゃくちゃというか実にユニークな党で、立候補者や当選者には極右も極左も
おり、受信料以外に関する政策などどうでもいいという徹底ぶりです。裁判も
お得意で、イラネッチケーというNHKだけ視聴できない仕組みを取りつけた
場合やワンセグ携帯問題で裁判を起こしましたが、全て敗訴しています。それ
でも全くめげていません。

 これでも当選してしまうのは、税金にも等しいNHKの受信料はおかしいと
思っている方や、山本太郎氏が記者会見でNHKの某番組を名指ししてその政
治的偏向ぶりを批判したように、その報道姿勢に怒っている方が多いというこ
とでしょうが、まさか国会議員にまで当選することになるとは想定外でした。
立花氏ご本人も驚きだったようです。ちなみに比例代表での得票率は2%にも
達し、政党要件をも満たしました(山本れいわは4.55%、山本太郎一人で
99万票強でした)。
 
 契約の意思が全くないのにテレビを買っただけで受信料を支払う義務が生じ
るのは、確かに納得することができません。実は私も若い頃は信念に基づき受
信料の支払いを拒否していました。本田勝一氏と同じです。
     https://is.gd/u7atNS

 集金人から、自宅マンションのドアをバンバン叩かれ、「正しいことをして
ください」とご近所に聞こえるように大声で叫ばれても、「裁判してくださっ
て結構です」と拒否を貫いていたのですが、家の中で幼い子供が恐怖にふるえ
ている姿をみて、これは教育上まずいと思い、やむなく銀行口座から自動引き
落としにし、それを取り止めるのも面倒で、現在に至っています。私はテレビ
をほとんどみませんが、家族はそうではないので仕方ありません。

 既成政党では決してできない第4の権力であるマスコミをも敵にして頑張る
N国や山本「れいわ新選組」が議席を得たことで、NHKでの党首討論などの
視聴率がぐっと上がることでしょう。私もみてみたいです。その結果、ネット
では「犬HK」とまで揶揄されている姿勢に少しでも変化が生じてくることを
期待してしまいます。


2019.07.24(水)【マネロン問題?】(藤沢・酒井恒雄)

 先日、べィさん(仮名)という外国人の方が代表社員となる、合同会社の設
立登記を受託しました。

 べィさんは、日本ですでに個人事業を行っており、印鑑登録もしていました。
印鑑証明書には英字で氏名が記載されており、カタカナで読み仮名も記載され
ていました。代表社員の氏名(業務執行社員、取締役等も同じですが)は、英
字で登記をすることができませんので、カタカナ表記に直して登記をします。

 今回、印鑑証明書記載の読み仮名どおりに登記をしたのですが、問題が発生
してしまいました。会社設立後、金融機関にて法人名義の口座を開設しようと
した際に、その開設を拒否されてしまったのです。

 聞くところによれば、個人事業を行っていたとき、税務申告等を行う際に提
出していた書類に、名前を「べイ」(イが大文字)と記載していたようで、代
表社員である「べィ」(イが小文字)さんと、個人事業を行っていたベイさん
は一致しないと判断から、日本における業務の実績がないと判断せざるを得な
いということで、審査が通らないと言われてしまったそうです。ちなみに、個
人事業を行っていた際の本人の住所地と、会社の本店住所は同じです。

 マネーロンダリングに関しては、厳しい対応がされている昨今ではあります
が、この話を聞いて、金融機関が必要以上に守りの姿勢になって、萎縮してい
るとしか思えませんでした。もっとも、印鑑証明書上に記載される読み仮名は、
あくまで参考のためですから、私が依頼人にもっと注意深く、どのように登記
するか聞いておくべきだったかもしれません。

 結局、別の金融機関に口座開設の申し込みをすることになりましたが、そこ
でも同じことを言われる可能性もあるとのことで、納得がいかない部分もあり
ますが、事業活動に支障が出る方が困るので、氏名の更正登記をしたのでした。


2019.07.23(火)【戦後商法のあゆみ⑯ 昭和56年改正~その3~】
                           (東京・鈴木龍介)

 今回は「戦後商法のあゆみ」の16回目として、昭和56年商法改正の続き
です。

3.商業登記に関する規律等
(2)株式会社と登記
 昭和56年改正商法において、改正等された株式会社の登記と密接に関係す
る主な規律は、次のとおりである。

① 株式制度の見直し
a)設立時の額面金額等
 会社設立に際して発行する額面株式1株の金額と無額面株式1株の発行価額
について、5万円以上とされた(昭和56年改正商法166条2項・168条
の3)。なお、それにあわせ、原始定款には、無額面株式を発行するときの最
低発行額の記載は要しないこととされた。

 会社設立時の資本の額について、会社設立の際に発行する株式発行価額の総
額であるのが原則のところ(昭和56年改正商法284条の2第1項)、株式
発行価額の2分の1以内の額で、かつ額面株式は券面額、無額面株式は5万円
を超過する部分を資本の額に組み入れないことができるとされた(昭和56年
改正商法284条の2第2項)。

b)設立後の額面金額等
 会社設立後に発行される額面株式1株の金額について、5万円以上とする制
限が削除された(昭和56年改正前商法202条2項参照)。

c)額面・無額面株式の相互転換
 額面株式と無額面株式について、取締役会の決議により相互に転換すること
ができるとされた(昭和56年改正商法213条1項)。

d)株式併合の制限
 株式併合について、最終の貸借対象における現存する純資産額を発行済株式
の総数で除した額が5万円未満であるときには、その額を5万円以上とするた
めに株主総会の特別決議によってすることができるとされた(昭和56年改正
商法293条ノ3第1項)。

e)株式分割の制限
 株式分割について、1株あたりの最終の貸借対象における現存する純資産額
が5万円以上となる場合に限りすることができるとされた(昭和56年改正商
法293条ノ4第2項・293条ノ3第1項後段)。

f)端株制度の新設
 新株発行・株式併合・株式分割により記名株式につき1株の100分の1の
整数倍にあたる端数が生じたときには、その端数を残存するかたちとする端株
として、端株原簿に記載することとされた(昭和56年改正商法230条ノ2
第1項)。なお、は端株制度の導入により、登記事項でもある発行済株式の総
数について、小数点以下第2位までの数が生じする場合があることとなった。

 会社は、定款の定めにより端株原簿名義書換代理人を設けることができるこ
ととなり(昭和56年改正商法230条ノ2第2項/206条2項準用)、そ
れが登記事項とされた(株式名義書換代理人の登記を類推適用)。

g)単位株制度の新設
 一定数の株式を一単位とし、それに満たない数の単位未満株式には議決権の
行使を認めないとする単位株制度について、株式併合による株式単位の引上げ
に対応するまでの暫定的な措置として設けられた(昭和56年改正商法附則
15条~21条)。

 一単位の株式の数は、強制適用である上場会社は5万円を額面株式1株の金
額で除した数または定款で定めた数によることとされ、任意採用である非上場
会社は5万円を額面株式1株の金額で除した数以上または5万円を1株あたり
の純資産額で除した数以上を定款で定めた数とされた。

 単位株の適用がある会社については、一単位の株式の数が登記事項とされた
(昭和56年改正商法附則17条1項)。


2019.07.22(月)【不思議な日本社会】(金子登志雄)

 昨日の日中のネットの話題は、闇営業問題の宮迫氏らの謝罪会見一色でした。
そんな大ニュースとは思えないのですが、視聴者の興味が劣化しているのでし
ょうか。

 この問題とは直接の関係はありませんが、日本では芸能人やスポーツ選手な
どの有名人が政治的発言をすると、途端に大バッシングがはじまりますが、ア
メリカでは反対です。なぜ、こういう差があるのかと思っていましたら、下記
の記事がネットに載っていました。

https://news.finance.yahoo.co.jp/detail/20190720-00292614-toyo-column

 ここに、アメリカでは「自分の人気、つまり個人的利益を重視して社会のた
めに重要なことを言わないでおくというのは、自己中心的で視野が狭いように
見えるし、政治のことを知らない、関心がないというのは『自分は頭が悪い』
と言っているようなものである」とあり、なるほど、さすがは偉大な国(?)
アメリカ国民だと思いました。

 これに対して日本では「従順でよい子だ。かわいい子だ」が評価基準のよう
であり、政治的発言をするのは生意気だ、何も知らない癖にと上から目線で芸
能人等を評価してしまう傾向があるようです。

 この差を考えてみましたが、アメリカは2大政党で政権交代が始終行われま
すし、州が違えば別の国といえるほど地方分権にもなっていますので、自由な
発言を可能とする社会環境が整備されているのに対し、長期にわたり権力が集
中してきた日本では、周りの空気を読んで発言するのが大人だとされ、自由な
発言を許さない環境にあることが最大の理由ではないかと考えました。

 だからこそ、私は「人間の本性=性悪説」に立つ自由主義の立場から、「真
に自由を愛するなら、権力を集中させずバランスを考えよ」といっているので
すが、今度の参院選挙の結果はどうなったのでしょうか。投票率が相当悪かっ
たようですから、選挙結果は他人ごと意識の方が多いのでしょうか。


2019.07.19(金)【初体験登記】(金子登志雄)

 7月第3週の最後の平日ともなると、6月定時株主総会後の登記多忙時期も
ピークが過ぎました。ただし、梅雨と同じく、まだ晴れません。遅い登記所に
申請した案件がまだ完了していないためです。
 
 私的な意味で今年のこの時期で特筆すべきは、私もやっと指名委員会等設置
会社の登記を経験することができました。本を書いている関係で内容について
は十分に知っており、登記実例も調べてパソコンに保存中でしたが、経験した
のははじめてでした。

 ちなみに、指名委員会等設置会社は日立グループを中心に全国で70社強し
か存在しませんから、この登記を経験した司法書士は都市部を中心に30人程
度でしょう。未経験のほうが自然です。

 はじめての経験でいうと、定款の作成や株主総会招集通知の面からみると、
監査等委員会設置会社よりもずっと簡単で楽でした。取締役が1種類しかいな
いため、株主総会議案も定款の変更議案だけで済むからです。監査等委員会設
置会社では2種類の取締役がいますから、2種類の取締役の報酬改定議案や補
欠監査等委員である取締役の選任議案が加わります。

 登記の面からみると、指名委員会等のほうが圧倒的に面倒でした。重任取締
役が執行役を兼ねる場合でも、執行役としての本人確認証明書が必要ですし、
一般的に執行役のほうが取締役より多人数となり、その本人確認証明書の取得
が結構たいへんになるからです。外国人がいたり旧姓併記も生じるでしょう。

 指名委員会等設置会社では代表取締役が不在で代表執行役が会社を代表する
ことになりますが、面白いことに、報酬委員とか監査委員は取締役が就任する
ため「選定」ですが、執行役は取締役会による「選任」です。代表執行役は執
行役の中から定めるため「選定」ですが、選定機関は同じ取締役会です。各自
代表制ではないため執行役と代表執行役は一体の地位ではなく、執行役と代表
執行役という2つの地位になります。執行役の互選によって代表執行役を選定
することはできません。執行役は株主総会で選ばれた地位ではないため、そこ
までは任せられないということでしょう。 
 
 このように、指名委員会等設置会社の方向から、選任とは何か、選定とは何
か等々が実感として勉強になりましたので、よい経験をさせてもらいました。
 
 さて、日曜日の参院選挙には必ず行きましょう。そうすれば数年後に、あの
ときの投票は大失敗だったなどという感想を持てます。何もしないで社会が悪
いと批評する人間よりは、経験して反省する人のほうがましだと思っています。


2019.07.18(木)【ある選挙ライブ中継】(金子登志雄)

 もうすぐ参院選挙だというのに、少しも盛り上がりませんね。テレビも忖度
しているのか話題に取り上げません。支持政党なしの浮動票には選挙に行かず
に寝ていてほしいのでしょうか。これに対して、自由なネット空間では密かに
バトルが行われているのか、話題になった記事や動画を閲覧しようとすると、
すぐにパソコンがフリーズしてしまいます。反対勢力がプロを使って組織的に
閲覧を妨害しているのでしょう。いまはそういう時代になりました。

 さて、13日の土曜日は出かけた渋谷から帰ろうとしたら、たまたまハチ公
前広場で、話題の集団「れいわ新選組」が選挙演説中でした。ナマでみられる
絶好のチャンスと思い、聴衆の一人になりました。
 
 ちょうどロック歌手の佐藤タイジさんという方が応援に来ていたためか、野
外ロックコンサートのような盛り上がりで、ロックに無関心な私には場違いな
ところに来てしまった感がありましたが、重度障がい者のふなごさんや木村さ
んが雨上がりの中で車椅子で熱弁をふるっているのに、健常者の私が逃げ帰る
わけにもまいりません。各候補者の演説の持ち時間が2分しかなかったようで、
それが退屈を感じさせなかったため、とうとう最後まで聞いてしまいました。

 山本太郎氏は何と政権を取りに行くと演説しました。ふつうなら大ホラ吹き
というべきでしょうが、次の選挙、次の次の選挙まで見据えた確かな戦略のう
えに立つものを感じさせ、冷笑する聴衆はいないどころか、この閉塞感を打破
する救世主にも感じさせる迫力がありました。

 候補者の蓮池透さんは福島原発の故・吉田所長と東京電力で同期だそうで、
彼個人を英雄視しフクシマを終わらせるななどと原発専門家として廃棄を強く
主張していました。北朝鮮に対し圧力一辺倒の拉致被害者の会の中で、その方
針を批判し孤立し退会させられた方だけあって信念の人を感じました。

 私の目当ては、「平和と福祉を標榜しながら、実際には真逆のことをしてい
る公明党をつぶせ」と叫ぶ東京選挙区で立候補中の沖縄創価学会の野原さんで
した。「昭和54年に創価学会は現執行部にハイジャックされた」と演説して
いました。その時、池田氏が実権を奪われて名誉会長に祭り上げられ、創価学
会が変質したということでした。

 東京選挙区には公明党山口代表が立候補中です。当初は巨象に立ち向かう無
謀なアリと思われていたのに、最近はアリから一匹狼並みに評価が上がりまし
たが、ネット評価と実際の結果は違いますので、どうなりますやら。

 残念ながら、私は都民ではないので、このガチンコ勝負は外野席から見物す
るしかありませんが、全国津々浦々、こういう周囲の空気を読まずに本気で勝
負する候補者ばかりでしたら、マスコミも取り上げざるを得ず、投票率も飛躍
的に上がることでしょうから、それを狙った山本太郎氏の戦略には脱帽です。
      https://www.youtube.com/watch?v=wI7cfgsH7AQ


2019.07.17(水)【株券の廃止】(藤沢・酒井恒雄)

 先日、株券発行会社を、株券不発行会社に変更したいとの依頼がありました。

 株券発行会社を、株券不発行会社にするためには、原則として株券の提供公
告と各株主への通知が必要となります。ただし、株主全員から株券不所持の申
出がされている場合には、株主に対する通知のみでも足ります。また、会社法
になってからは、非公開会社であれば、株主の請求があるまでは、株券を発行
しなくてよいということになっています。

 株券廃止の手続を進めるにあたり、どういった手続が必要になるか、依頼と
の確認作業が必要になります。今回の依頼人の会社は、株主全員から株券不所
持の申出がされており、全株券が銀行の貸金庫に保管されていました。そして、
株券にはきちんと譲渡の経緯が示された裏書がされており、毎年のように株式
の譲渡が行われているようでしたが、必ず株券の交付と株券不所持の申出を受
けているとの説明を受けました。

 法に則っているというだけで、当たり前だという話ではあるのですが、きち
んと手続を理解して管理されていることに、思わず感動してしまいました。

 株券発行会社であるのに、株券の交付をせずに株式を譲渡して、当たり前の
ように株主名簿を書き換えてしまっている会社が多いのが実状です。株券発行
会社における、株券の交付がない株式の譲渡は無効ですから、厳格に法を適用
したとき(という言い方も変なのですが・・・)に、どんな混乱が起きるのか
と想像すると恐ろしい状況です。

 そんな感じで、株券不発行の手続をする際には、株主名簿を見る度に、無効
な譲渡を遡って行くとどうなるのかと、余計な気を揉むことも多いのですが、
久しぶりに、何の憂慮もせず手続を進められた案件でした。


2019.07.16(火)【戦後商法のあゆみ⑮ 昭和56年改正~その2~】
                           (東京・鈴木龍介)
 今回は「戦後商法のあゆみ」の15回目として、昭和56年商法改正の続き
です。

2.概要
 商法部会は、7論点のうち審議を終えた株式と機関の部分と、間もなく審議
を終えるところであった計算・公開の部分についての立法化を図ることとした。
加えて、経済界から要望が強かった新株引受権社債に関する検討を行い、昭和
55(1980)年12月に要綱案を確定した。これを受けた法制審議会は、
昭和56(1981)年1月に要綱案のとおりの要綱を決定し、法務大臣に答
申した。

 政府は、要綱に基づく法案を、昭和56(1981)年3月に国会(第94
回・常会)に提出し、同年6月に原案どおり「商法等の一部を改正する法律」
(昭和56年6月9日法律74号/以下、「昭和56年改正商法」もしくは
「昭和56年改正監査特例法」という。)が成立した。

 なお、早期実現が強く望まれていた新株引受権社債に関する規律(「第2編
 会社」、「第4章 株式会社」、「第5節 社債」に第4款を追加)につい
ては、同年10月1日から施行され、その他の部分については翌昭和57
(1982)年10月1日から施行された。

 昭和56年改正商法は、当初の目論見よりはその範囲は縮小したものの、企
業不祥事の続発により批判を浴びていた大企業の運営を適正化することを念頭
に置きつつ、株式、機関、計算・公開の制度についての、昭和25年改正商法
以来の株式会社法制の大きな見直しであったといえよう。

 なお、同法と同時に制定された「商法等の一部を改正するが法律の施行に伴
う関係法律の整理等に関する法律」(昭和56年6月9日法律75号)により
50にも及ぶ法律について、字句や条文の修正等の整備がなされたことからも、
昭和56年改正商法が大改正であったということがうかがえる。

 また、昭和56年改正商法は重要な具体的な規律を法務省令に委任しており、
これらについても商法部会で審議を行ったうえで、従来の「計算規則」を「株
式会社の貸借対照表、損益計算書、営業報告書及び附属明細書に関する規則」
(昭和57年4月24日法務省令25号)に改めるとともに、あらたに「大会
社に関する監査報告書に関する規則」(昭和57年4月24日法務省令26号)
と「大会社の株主総会の招集通知に添付すべき参考書類等に関する規則」(昭
和57年4月24日法務省令27号)が制定された。 

3.商業登記に関する規律等
(1)概説
 昭和56年改正商法における商業登記制度に関する見直し事項としては、法
定清算人の就任にかかる登記期間が解散の日から3週間以内とされていたとこ
ろ、他の登記と平仄をあわせ2週間以内とされた(昭和56年改正商法123
条1項・同項を準用する147条・430条1項)。

 また、昭和25年の商法改正以来据え置かれていた、登記懈怠をはじめとす
るか過料の上限額が30万円から100万円に引き上げられた(昭和56年改
正商法498条柱書)。

 なお、昭和56年改正商法と時期を同じくして改正された商業登記法(昭和
57年4月23日法律32号)によって商号の仮登記制度のバリエーションが
拡充された。

 昭和56年改正商法にかかる基本通達(施行日にあわせて2つ)と位置付け
られるものとして、「商法等の一部を改正する法律等の施行に伴う登記事務の
取扱いについて」(昭和56・9・7民四5477号通達/先例集Ⅵ214頁
~232頁)および「商法等の一部を改正する法律等の施行に伴う登記事務の
取扱いについて」(昭和57・6・29民四4455号通達/先例集Ⅵ251
頁~290頁)が発出された。



2019.07.12(金)【子会社である合同会社の解散】(金子登志雄)

 火曜日は先週に予告したとおり、権力におもねない真の記者魂を持った東京
新聞の望月衣塑子記者の講演を聞いてきました。大量の時事問題(民主主義の
危機問題)につき裏話を含め次から次へと立ったまま早口で機関銃のように説
明してくれ、実に密度の濃い素晴らしい内容でした。

 かなり自由に発言していましたが、彼女が産経新聞や読売新聞あるいはNH
Kだったら、間違いなく、とっくに飛ばされているか、クビになっていたこと
でしょう。中日新聞系の東京新聞にはまだ自由が残っているようです。

 講演会は盛況でしたが、残念だったのは聴衆の年代が高いことでした。若い
人は現状に対して、どう思っているのでしょうか。若い人や浮動票の堀り越こ
しに、いま若い山本太郎さんが猛烈に頑張っていますが、大手マスコミの意図
的無視にどこまで対抗することができるのか、ネットの力をはかる意味でも今
度の参院選は注目です。

 さて、いつもの話題ですが、株式会社P(代表取締役A)の100%子会社
として合同会社Sがあったとします。定款には「業務執行社員及び代表社員は
株式会社P」、登記記録には「代表社員P、職務執行者B」とあります。

 P社は、子会社S社を解散させ、自社の経理部長Cを清算人に選任すること
にしました。S社の解散と清算人選任の決定書を作成してください。

 簡単じゃないか、総社員であるP一社の決定書で「①本日をもって解散する。
②清算人はCとする」とし、Pの代表取締役Aが記名押印するだけじゃないか
と思いませんでしたか。コトはそう簡単ではないのです。

 同業者から質問されました――会社法647条1項3号には、「業務を執行
する社員を定款で定めた場合にあっては、その社員の過半数の同意によって」
清算人を定めよとあるので、P社の決定で清算人を定めたいのだが、小川ほか
『通達準拠/会社法と商業登記』286頁には「持分会杜の社員の行為のうち
業務執行社員のみがすることができるものについては、その職務執行者が行う」
とあるので、清算人の選任については、職務執行者Bが記名押印しなければな
らないため、解散の決定はP社、清算人の選任は職務執行者Bという2種類の
決定書が必要になるのか――。

 定款表現につき盲点でした。私も設立手続を依頼されたら、解散・清算人選
任のことまで考えずに、自然人社員が1名のときと同様に、法人社員一社でも
「業務執行社員及び代表社員は株式会社〇〇」と定款に定めてしまいそうです。

 立花合同会社本をお読みの方はお分かりのとおり、私見は業務執行行為とは
いえない重要な人事問題である代表社員の選任権限は業務執行「社員」に帰属
するのであって、業務執行行為担当の職務執行者には帰属しないというもので
す。清算人についても同様に考えていますが、現状の実務は、通達準拠方式で
しょうから、何らかの対応を考えなければなりません。
 
 総社員の決定書から社員1名であることが分かり、P社が定款で定めた業務
執行社員かどうかは登記所からは不明のため、代表取締役Aだけの押印で黙っ
て申請すれば受理されるでしょうが、姑息な方法は採るべきではありません。

 正面突破の正攻法で行くなら、先にこの定款規定を削除して定款不添付にす
るか、新たに定款の附則に清算人Pと定めるかなど、いろいろが方策が考えら
れますので、あとは皆様にお任せしましょう。

 私としては、清算人の選任も職務執行者の権限だとする見解にはこういう部
分にも悪影響していることを知ってほしいとの思いから、ネタとして取り上げ
た次第です。



2019.07.11(木)【「株式会社」と「合同会社」の比較】(仙台・立花宏)

 少し、大層な題名になってしまったかもしれません。
 先日、「株式会社」と「持分会社」の会社法の章立てを比較してみました。
参考までに、以下の通りです。

    「株式会社」        「持分会社」
    第1章 設立        第1章 設立
    第2章 株式        第2章 社員
    第3章 新株予約権
    第4章 機関        第3章 管理
                  第4章 社員の加入及び退社
    第5章 計算等       第5章 計算等
    第6章 定款の変更     第6章 定款の変更
    第7章 事業の譲渡等   
    第8章 解散        第7章 解散
    第9章 清算        第8章 清算

 個人的に大きな違いだと思ったのは、「株式会社」の第4章が「機関」とな
っているのに対し、対応する「持分会社」の第3章が「管理」となっているこ
とでした。

 その違いを意識しながら、松井信憲著「商業登記ハンドブック第3版」(商
事法務)602頁をみたところ、次のような記載がありました。

 「株式会社の設立手続では、①発起人による定款の作成、②公証人による定
款の認証、③社員の確定、④財産的基礎の確立、⑤機関の具備、⑥設立時取締
役等による設立の調査、⑦設立登記申請という手続が必要となる(略)が、こ
れに対し、持分会社の設立手続では、社員は定款に記載された人的信頼関係で
結ばれたものに限られ、利害関係人は多くはなく、原則として各社員が業務執
行権を有することから、上記手続のうち②③⑤⑥を必要としない」

 「機関」についての意味については、コンメンタール等の文献をご参照いた
だければと思いますが、株式会社は、所有と経営が分離した形態の法人である
ため、実際に意思決定を行う「機関」や業務を執行する「機関」等を定める必
要があるのでしょう。

 一方、持分会社も法人ではありますが、所有と経営が一致している、内部的
には組合的な形態です。社員自身が意思決定を行い、業務執行(や代表行為)
を行うのが原則であるため、株式会社のような様々な「機関」を設ける必要は
ないというのが会社法の意図なのではないでしょうか。

 仮に業務執行社員(や代表社員)を定めたとしても、それは株式会社と同じ
ような業務執行(や代表)「機関」ではなく、社員同士で、それぞれの役割分
担(業務執行担当者、代表権を行使する担当者)を定めたということであり、
そうした意味で「管理」という言葉で用いているのではないかと思いました。

 法律の章立ても、なんらかの意図をもって作られているはずです。その章立
てを比較してみることにより、いろいろなことを考えるきっかけになるのだと
感じました。


2019.07.10(水)【初の広報部】(藤沢・酒井恒雄)

 私が所属する神奈川県司法書士会では、会長をはじめ、執行部の体制が一新
しました。各部の各委員会のメンバーも新しい顔ぶれとなり、徐々に活動が開
始されつつあります。

 今期、私は広報部の広報委員会と、企画部の企業法務支援委員会の委員を兼
任することとなりました。いわゆる多重会務者です。はじめに企画部への所属
が決まっていましたので、広報部からの委員就任のお誘いがあったときは、お
断りをするつもりでした。

 しかし、今期の広報部の方針について説明を受けて、その意思を変えました。
広報活動は、司法書士の存在を認知してもらうこと、司法書士の業務内容を知
ってもらうことが第一かと思いますが、その際に働きかける相手は、顧客とな
り得る個人や法人等です。

 しかし、他にも働きかけるべき相手がいます。それは、将来司法書士となり
得る学生達です。年々、司法書士試験の受験者数が減少していることはご存じ
かと思います。受験者数の減少の理由は、労働市場の動向も大きく影響してい
ますが、資格士業に魅力を感じないという学生が増えていることも関係がある
と言われています。

 司法書士会として優秀な人材を確保するために、将来の司法書士候補にも目
を向けるべきだと常々思っていたのですが、今期の広報部は、大学等にも積極
的に広報活動を行うとのことでしたので、二つ返事で就任を承諾しました。

 既に私の頭の中には構想(妄想?)があり、こんな仕事の種類があって、こ
んな書類を作ったりしますという話しではなく、こんな事件があって、何が問
題で、結局どうなったと、ワクワク、ドキドキ(こういう表現は不適切かもし
れませんが・・・)するような話しを学生達にしてみたいと思っています。

 自分が学生の立場なら、そういう話を聞きたいですから・・・。これから具
体的なコンテンツを考えなければなりませんが、ある程度は興味を持っていた
という学生達はもちろん、まったく興味をもっていなかった学生達を巻き込め
たらいいなと、勝手に思ったりしています。


2019.07.09(火)【戦後商法のあゆみ⑭ 昭和56年改正~その1~】
                           (東京・鈴木龍介)

 少し間が空きましたが、「戦後商法のあゆみ」を再開します。その14回目
は、昭和56年商法改正を取り上げます。結構な大改正ということもあり長く
なりますので、何回かに分けてアップします。

1.背景等
 昭和49年改正商法の国会での審議の過程で、衆議院・参議院の各法務委員
会において、昭和25年以来行われた商法改正の齟齬や問題を解消するための
抜本的な見直しの検討を要請する附帯決議がなされた。

 そこで、法制審議会・商法部会(以下、「商法部会」という。)は昭和49
(1974)年9月に、株式会社法制の全般的な見直しを行うことを基本方針
として、審議を開始した。

 一方で、それと歩調を合わせるかたちで、法務省民事局参事官室(以下、
「参事官室」という。)は、昭和50(1975)年6月に「会社法改正に関
する問題点」を公表し、各界に意見を求めることとなった。

 ちなみに、そこで取り上げられたのは以下の7つの問題点(以下、「7論点」
という。)であるが、相当に広範囲なものであり、株式会社法制の全面的な改
正を念頭に置いたものであったことがうかがえる。
   ① 会社の社会的責任
   ② 株主総会制度の改善
   ③ 取締役・取締役会制度の改善
   ④ 株式制度の改善
   ⑤ 計算・公開制度
   ⑥ 企業結合・合併・分割制度
   ⑦ 最低資本金制度と会社区分

 商法部会では、前述の7論点に関しての意見照会の結果を踏まえ、順次審議
を行い、それを受けたかたちで、参事官室は、昭和52(1977)年5月に
「株式制度に関する改正試案」を、昭和53(1977)年12月に「株式会
社の機関に関する改正試案」を、昭和54(1978)年12月に「株式会社
の計算・公開に関する改正試案」を公表した。

 そのような状況下で、商法部会ならびに参事官室は7論点について、順次改
正試案を公表し、意見照会を行ったうえで、株式会社法制の全面改正の要綱案
を取りまとめることを想定していた。

 しかしながら、昭和51(1976)年に、いわゆるロッキード事件をはじ
めとする航空機疑惑が発覚したことから、企業の非行防止等に関する見直しを
行うべきであるという社会的要請に対して早急に応えるべく、全面改正の基本
方針を変更し、部分的に早期の立法化を図ることとした。

 この時代の日本は、昭和53(1978)年に日中友好条約が調印され、中
国との国交が回復した。経済面では、いわゆる高度経済成長期を終えたものの、
輸出の増大による国際収支の大幅な黒字を背景に、安定的な成長が始まった頃
であった。世界に目を転じると、1975年に第1回主要先進国首脳会議(ラ
ンブイエ(フランス)・サミット)が開催された。また、中東地域で多くの紛
争等が勃発し(1979年にイラン革命、1980年にイラン・イラク戦争)、
第2次オイルショックを招いた。


2019.07.08(月)【心をどこに置こうぞ】(金子登志雄)

 ネットで注目の山本太郎氏の演説を聞いてみましたが、日本の将来に対する
切実な危機感のためか、生命がけの気迫さえ感じました。これほど話題なのに、
なぜマスコミが無視するのか、あるいは冷笑して扱うのか実に不思議でしたが、
マスコミの超大スポンサーである創価学会に対する忖度が原因だと思い当たり
ました。東京地方区では、公明党の山口代表に向けて反公明党・沖縄創価学会
のれいわ新選組野原氏が挑みます。これではマスコミも板挟みですね。

 さて、メールした直後に送信トレイでそのメールを確認すると、誤字脱字や
削除漏れに気づくことが多いと思います。この徒然原稿でも、掲載担当の身内
に毎回のように修正送信をしています。これと同様に、登記の電子申請でも申
請直後にミスに気づくことが少なくありません。先日も「宏」を「浩」で申請
してしまいました。

 まだ登記所による審査が始まっていないのですから、当方で校正することが
できればよいのですが、それは現状のシステムではできません。取り下げて再
申請するまでもないので、仕方なく登記所に電話して「受付番号何番ですが、
これこれを間違いましたので、よろしく」と伝言するしかありません。登記所
も慣れているようで、実に親切です。

 これで済めばよいのですが、最近は顧客から受領書の代わりに「受付のお知
らせ」を送ってくれといわれるケースが多く、当方の初動ミスがバレてしまい
ます。我々の感覚では慣れ親しんだ(?)ケアレスミスの類でも、顧客は重大
なミスと思う傾向があり、困ってしまいます。昔銀行の上司に言われました。
「金子、銀行とは待たせるところだとお客を教育せい」。そうなんです。優秀
な司法書士ほど、簡単な仕事だと思うので、ケアレスミスが多いのです。

 宮本武蔵に登場する沢庵和尚の有名な言葉に「心をどこに置こうぞ」という
ものがあります。どこかに心を置くと、それに気を取られるから、どこにも心
を置いてはいけないという内容です。

 確かに、登記事項に心を置くと添付書面でミスし、添付書面に心を置くと別
の部分でミスするものです。されど、どこにも心を置かないと、我々凡人は全
部の箇所でミスしかねません。仕事を失い沢庵しか食えない生活になります。

 不思議なもので、ご近所の登記所案件だと、気が楽なのか、どこにも心を置
いていない達人の心境になれるのかミスが少なく、遠方の地方案件も慎重にな
るせいかミスがなく、中間地点の登記所案件でミスしやすい傾向があります。

 今後は、お詫びしなくて済むように、心を「受付のお知らせ」を要求してく
る顧客案件に置き、慎重に対応しようと決めました。


2019.07.05(金)【驚かす才能】
(金子登志雄)

 韓国・板門店でのトランプ・金正恩会談には驚きました。このお二人は世界
中を驚かす才能(スター性?)に特別に優れているようです(脅かす才能には
ほとほと困ったものですが)。

 トランプさんのツイッターから急遽会談が始まったかのように当事者も話し、
報道でもそう説明されていますが、国の首脳の動きで、それはあり得ないでし
ょう。黒子役に徹した韓国の文大統領を含め、用意周到な極秘の下準備がなさ
れていたのは間違いないと思っています。

 事前に北を訪問していた中国の周近平主席あたりは知っていたのではないか
と私は予想していますが、残念ながら、またもや日本は耳打ちさえされず蚊帳
の外でした。せっかく安倍さんがG20の議長として「外交の安倍」を日本国
民に浸透させ参院選になだれ込もうとしていたのに、トランプさんに冷水をか
けられてしまいました。困った友人(?)です。

 日本国内で人を驚かす才能は最近のネット上では元俳優で市民運動家でもあ
った山本太郎さんが筆頭のようです。れいわ新選組の候補者をみてください。
   https://www.reiwa-shinsengumi.com/vote/#voteId02

 上記のうち拉致問題の蓮池さんと、沖縄知事選挙の際に有名になった沖縄創
価学会の野原さんについては知っていましたが、その他の方は全く知りません
でした。タレント候補とは相違し各業界の実務家でホンモノというイメージが
ありますね。彼の眼の付けどころには驚きました(候補者2番目の品のいいお
ばさんは男性だそうですが気が付きましたか)。

 れいわ新選組への寄付が2億円を超えましたし、山本さんが新宿駅で演説す
ると1000人は集まるようです。かつてブームを起こした細川・日本新党の
再来かとまでいわれていますが、大手マスコミからは完全無視(忖度による意
図的?)されていますので、結果は分かりません。

 いま私が関心を持ってみているのは山本さん以外に望月衣塑子記者です。い
ま話題の映画『新聞記者』の原作者です。
     https://shimbunkisha.jp/

 彼女の顔までは知りませんでしたが、7月9日に日司連ホールに来るようで
すから、講演を聞いてみようと思っています(東京は実に便利で地方の方に申
し訳ない気がします)。
     https://shihoushoshi-kenppou.jimdo.com/

 ということで、今日は、会社法の話題に触れるスペースが取れませんでした。
それだけ世の中の変化が激しいということですので、ご了承ください。 


2019.07.04(木)【高齢化社会と自動車事故】(島根・根来川弘充)

 高齢化社会は、いまにはじまったことではないのですが、今年は特に、痛ま
しい事故が発生しています。

 地方では、移動手段として自動車は生活に不可欠です。高齢者が、被害者で
はなく、加害者として取り上げられるニュースは、これからもっと増えるので
はないかと危惧します。

 事故防止のために安全装置が注目をあつめていますが、ふと、「なぜ、制限
速度以上のスピードを出す能力が必要なのだろう?」と疑問に思えてしまいま
した。

 自動車専用道路や高速道路をつかわなければ、一般道路はおそらく60キロ
制限だと思います。起伏があるため、自動車の能力として60キロ以上出せる
能力が必要だとしても、メーターとしては、制限速度以上のものはいらないの
ではないかと思うのです。(越えたら警告音でよいと思います。)

 しかし、そのようなことをもし、法律化した場合、きっと、自動車の魅力が
一気に低下してしまうのでしょう。車好な私としては、まったく関心がなくな
ってしまう気がします。

 自動車の改良とは別に、個々の能力に左右されない、安心して安全な移動手
段が開発されることを期待したいと思います。


2019.07.03(水)【チケット事情】(藤沢・酒井恒雄)

 先月、チケット不正転売禁止法が施行されました。正式には、「特定興業入
場券の不正転売の禁止等による興業入場券の適正な流通の確保に関する法律」
と、最近流行りの長~い法律名となっています。

 近年、インターネットサイト等で、コンサートや演劇チケットの個人間売買
やオークションが盛んに行なわれています。やむを得ずコンサートに行けなく
なって、定価や定価以下で取引をするという場合のほか、はじめから定価より
高額な転売を目的としてチケットを購入するケースも増えて、純粋にコンサー
トに行きたいと思っている人にチケットが回らなかったり、売買の際に金銭ト
ラブルが起きる等、様々な問題が発生していました。

 また、会場付近に必ず出没する、いわゆる「ダフ屋」と呼ばれる転売屋も、
条例等で規制はされていたものの、相変わらず出没しているという状況でした。
不正転売禁止法の影響なのかは分かりませんが、法施行後に行われたコンサー
トの会場付近には、一人もダフ屋を見かけることはありませんでした。

 ちなみに、違反時には1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、また
はその併科となっています。

 法で不正転売を規制する動きと平行して、不正転売を防止する仕組みの構築
も進みつつあります。そのひとつが電子チケットです。つい先日、私も初めて
電子チケットなるものを購入しました。

 簡単に仕組みを説明しますと、まずはスマホのアプリを通じてチケットを購
入します。購入して発券すると、アプリ内にチケットが表示されます。ただ、
これだけでは入場することが出来ません。入場時には、チケットに表示される
QRコードを読みとってもらう必要があるのですが、そのコードは、コンサー
トの開場時間の直前まで表示されない仕組みになっています。これなら転売を
する余地がほぼありません。良く考えられています。

 しかし、難点もあるようです。まずは、入場時にスマホの電池が切れてしま
うとチケットが表示できません。これは、携帯用の充電器でなんとかできそう
ですが、スマホが故障してしまった場合にはお手上げのようです。私も、コン
サート会場に行くまでに、スマホを落として壊さないようにと、いつも以上に
慎重になって行動をしていました。

 もっとも、従来の紙ベースのチケットであっても、紛失するリスクはあるの
ですから、何をそんなにドキドキしていたのかと言われれば、新しい仕組みに
ついて行けているかどうかが不安だったのだろうと思います。結局、トラブル
なく入場することが出来て、コンサートを楽しんで来ました。



2019.07.02(火)【今国会での民事法の成立】(東京・鈴木龍介)

 令和最初の国会(通常・198回)が6月26日に閉会となりましたが、本
国会では54本法律が成立しました。その中で法務省が所管、成立した民事法
について、自分の備忘を兼ねアップさせていただきます(漏れているのがある
かも)。

(1)民事執行法等の改正(令和元年法律2号)
 施行期日は,公布の日(令和元年5月17日)から1年を超えない範囲内に
おいて政令で定める日
 「民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関
する法律の一部を改正する法律について」
   http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00247.html

(2)変則型登記解消特例法の制定(令和元年法律15号)
 原則施行期日は,公布の日(令和元年5月24日)から6月以内の政令で定
める日
 「表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律(令和元年法
律第15号)について
   http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000027.html

(3)戸籍法の改正(令和元年法律17号)
 施行期日は,公布の日から起算して20日を経過した日(令和元年6月20
日)
 「戸籍法の一部を改正する法律について 」
   http://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00082.html

(4)民法(特別養子縁組制度関係)の改正(令和元年法律34号)
 施行期日は,公布の日(令和元年6月14日)から起算して1年を超えない
範囲内において政令で定める日
 「民法等の一部を改正する法律(特別養子関係)について」
   http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00248.html

 なお、会社法の改正については、今国会での提出は見送られましたので、秋
の臨時国会以降ということになります。


2019.07.01(月)【社員と会社との一体型と分離型】(金子登志雄)

 いま話題沸騰の『官邸ポリス』を読んでみました。安倍政権を支えるために、
自ら率先して裏工作を担当する警察官僚による情報組織を取り上げた本ですが、
モリカケも伊藤詩織さん事件も前川文科省次官事件も全部登場します。日大ア
メフト部などスポーツ会のパワハラがマスコミに繰り返し登場したのも、政権
批判から目を逸らすための彼らの工作だったなどとありました。

 著者自身も元警察官僚らしく政府寄りでしたから(野党などへの見方はひど
く偏見に満ちていました)、警察内部で別の派閥に属していた方でしょうか。

 「国家はオレで持つ」という超エリート意識(著者にも感じました)のなせ
る業かもしれませんが、正義だと信じて権力悪を実行する人間は本当にタチが
悪いといえます。政権を支えるために不都合の隠ぺい工作や政敵のスキャンダ
ル探しまで税金を使って活動することが警察の職務であるわけがありません。
この暑い盛りに、背筋を寒くするには最適な本でした。 
          https://is.gd/s35pCw

 さて、いつもの暑苦しい話題に戻りますが、「登記情報」直近号4頁以下に、
立花さんの「合同会社の社員の退社に伴う持分の払戻しについて」の論考が掲
載されています。資本金の額の減少と持分の払戻しに関する債権者保護手続の
関係が実に分かりやすく書いてありますので、ぜひ、ご覧ください。

 これを読んで、取締役と代表取締役との関係を地位一体型と分離型で説明す
るのと同様に、社員と会社との一体型と分離型という説明も分かりやすいだろ
うと思いました。

 株式会社は、「株主と会社との分離型」ですから、株主であることをやめる
には株式の譲渡が原則であり、会社に払戻しを請求することができません。ま
た、例えば株主Aの持株比率が10%だとしても、資本金の額1000万円中
の100万円はAの分だとはいいません。

 これに対して、「社員と会社が一体型」の合同会社では、持分を譲渡しよう
にも購入してくれる人も見つからず、会社もおかしな社員が加わっては困りま
すから、会社財産の払戻しを肯定せざるを得ません。

 持分会社は、共同事務所型の寄り合い所帯です。Aの貸借対照表、Bのそれ、
Cのそれが独自性を持ったままで寄り集まって糊付けされたのが持分会社の貸
借対照表です。だから、合同会社の資本金の額1000万円のうちAの貸借対
照表に計上されていた100万円はAの資本金の額だといえます。Aが退社し
た際に、この100万円の減資手続の要否が問題になる理由です。

 立花論考にもありましたが、こんな面倒なことをせずに、実際には他の社員
が退社員の持分を譲り受けて済ませているのでしょうが、退社原因が「死亡」
となると、そういうわけにはまいりません。面倒この上ない手続を始めるか、
相続人が払戻請求権を出資し社員になるかのいずれかであり、相続人からの他
の社員への持分譲渡はその後の問題です。

 定款に定めれば、持分相続も認められますが、相続人が希望すればとか他の
社員が同意すれば相続も可という解釈もなされています。これは当然に生じる
相続に条件を付けたのではなく、定款規定の効力発生に条件を付けたと解釈せ
ざるを得ませんが、希望表明も同意も相続後になされるので、遡及効を認めて
よいのかという疑問も生じます。

 社員が複数存在する場合は、定款に相続規定がなくとも払戻請求権の現物出
資による任意加入で十分に対応できるのではないでしょうか。


2019.06.28(金)【最近の状況】(金子登志雄)

 ネットでは吉本芸人の闇営業バッシング一色のようです。まるで重大犯罪を
犯したかのような報道ぶりやネット世論に怖いものを感じていますが、皆様は
いかがですか。

 一番ほっとしているのは、ロシアとの戦争発言をした議員さんかもしれませ
ん。これでやっと、マスコミの矛先が別に向いたと喜んでいることでしょう。
安倍さんも同じです。与党不利の年金問題から目をそらしてもらい、これで参
院選は安心だと計算しているかもしれません。

 さて、定時株主総会の開催が多い6月下旬も平日でいうと今日が最後です。
ただいま株主総会議事録などを作成中なのか、就任承諾書や本人確認証明書の
取得に手間取っているのか、登記依頼を受けたのは定時株主総会を開催した顧
客の半分か、それ以下といった状況です。

 株主総会議事録の作成者ですが、松井ハンドブックでは旧商法の影響か、出
席した取締役に限定していますが、現状の実務では、その株主総会で選任され、
総会終結後に就任承諾した取締役でも全く問題なく受理されており、もうこの
議論は収束したといってもよさそうです。

 また、地方にある子会社では、取締役の一部が親会社の所在する東京にいる
ため株主総会でもテレビ会議が増えました。安価で使いやすいテレビ会議シス
テムが増えたためのようです。さすがに、スマホのスピーカー音声を使った電
話会議はまだみていません。

 司法書士から私への質問は、外国人役員のことが増えました。住民票が横文
字なのに漢字表記(韓国人や中国人)で登記することができるのか、イギリス
人でイギリス以外に居住する場合、本人確認証明書は居住国の官憲への宣誓供
述書でよいのかなどです。

 あいにくこういう方面は未経験で詳しいとはいえないため、その都度、自分
で調べたり、詳しい司法書士に電話問い合わせして返答していますが、そうい
う詳しい人と知り合いでいられてほっとしています。



2019.06.27(木)【西暦表記と雑感】(金子登志雄)

 令和から2か月近く経ましたが、慣れましたか。私はまだ混乱中です。5月
決算の事業年度は「平成30年6月1日から令和元年5月31日まで」よりも
「2018年6月1日から2019年5月31日まで」のほうがしっくり来ます。

 そのためか今年の株主総会の招集通知は、西暦表記が増えた印象です。前々
から西暦表記だったのかまでは調べていませんが、私も議事録案や委任状等で
は、令和よりも西暦にすることが増えました。

 登記は元号表記ですが、新株予約権の行使期間などでは西暦表記が認められ
ていますから、たぶん、元号表記の義務は登記原因年月日のところまでで、登
記事項の内容には及ばないのでしょう。事業年度や期間を表す際は西暦表記の
ほうが分かりやすいといえます。

 逆に過去の出来事は、平成や昭和でいわれないとぴんと来ません。元号でい
われると、わが身に何が起こった年かと照らし合わせられますが、西暦だとこ
れができません。もっとも、60年安保とか70年安保といわれると、ああ小
学校何年生だった、大学生だったとすぐにいえますから、これも慣れでしょう。

 ついでながら、現在の西暦(グレゴリオ暦)の基礎(前身)は、ユリウス暦
といい、ユリウス・カエサル(Julius Caesar)という人が作ったのですが、こ
の方は誰だか分かりますか。歴史上の超有名人です。

 Julius Caesar を英語読みしてください。そう、あのジュリアス・シーザー
です。7月のジュライ(July)は、この人の名前から来ています。独裁的権力
を握ったシーザーは、ご存知のとおり、最後は、目をかけていたブルータスに
倒されました。

 日産自動車の株主総会が25日に終わりましたが、最後はシーザーに近い運
命を辿ったゴーンさんは、いまどうしているのでしょうか。米国で入院予定だ
ったのに「重要な取締役会があるから、どうしても来日してほしい」といわれ
て病気を押して日本に来た瞬間に逮捕されたケリーさんともどもその後が気に
なっているのですが、狙われた身でゴーン氏ら側からの反論情報が出しにくい
ようで、状況がみえなってしまいました。


2019.06.26(水)【支店の登記記録】(藤沢・酒井恒雄)

 先週(6月17日)に古山先生が、支店に関する登記について投稿されてい
ましたが、ちょうど私も、支店登記に関連してネタとなりそうな経験をしたと
ころでした。

 支店の登記がされている会社が管轄外に本店を移転したのですが、本店の移
転先は、その支店所在地を管轄する法務局でした。この会社は、理由があって
支店を残すことにしたようです。

 支店を残すとしても、新本店所在地と支店所在地が同管轄になった場合には、
従前の支店の登記記録は、商業登記規則65条4項によって閉鎖されることに
なります。

 数か月後、この会社は支店を廃止することになりました。そして、私がその
登記を受託することになりました。すると、事前調査の過程で、支店の登記記
録が閉鎖されていないことが分かりました。

 調べてみると、この会社が商号変更をした際に、支店における変更登記をし
ていなかったことが分かりました。

 本店移転登記をする前に、支店における商号変更登記を経ておく必要があっ
たと考えられ、これは厄介なことになったと思いました。しかし、よく考える
と、閉鎖される(されるべき)登記記録にあえて変更を反映させる必要がある
のか?という疑問も湧いてきました。

 結局、法務局に問い合わせをしたのですが、登記記録を閉鎖しておきますと
のことで話は終わりました。ただし、登記懈怠についての過料通知は発せられ
るだろうとのことで、こういったケースにつき、商業登記ハンドブックにも記
載があるとのことでした。読んでみると、登記記録に不合致があった場合でも、
同一会社と判断された場合には救済的に処理し、支店の登記記録を閉鎖すると
いう旨の実務上の扱いが記載されていました。商業登記ハンドブックの守備範
囲の広さに改めて感心し、きちんと調べてから質問すべきだったと反省し、い
ずれ、このような混乱もなくなるのだろうなぁとも思った、そんな経験でした。


2019.06.25(火)【『与信管理入門(新版)』発刊】(東京・鈴木龍介)

 このたび、金融財政事情研究会から『与信管理入門(新版)-実務に活かせ
る55のポイント』(=本書)が発刊されました。ちなみに、私の本年そして
令和での、はじめての著書になります(今年は雑誌への寄稿は多いのですが、
書籍刊行は少なそうです)。そこで、著者の一人として本書を紹介させていた
だきます(共著者は弁護士と企業における審査関係の実務家です。)。

 本書は、2014年に刊行された『与信管理入門―実務に活かせる50のポ
イント』の増補改訂版でして、債権法改正、私的整理・廃業・M&A、動産・
債権譲渡担保、海外与信管理などをあらたに加え、その後の法令改正や経済・
社会情勢の変化を織り込みました。

 以下の10章、全55の項目で構成されています。
 第1章 与信管理業務と倒産
 第2章 取引内容・条件のチェック
 第3章 信用情報の収集・活用
 第4章 定性情報の分析
 第5章 決算書の分析
 第6章 契約に関する基礎知識
 第7章 債権保全に関する基礎知識
 第8章 与信判定
 第9章 緊急時対応に関する基礎知識
 第10章 海外与信管理の基礎知識

 本書のテーマである「与信管理」は、企業の規模や業種にかかわらず、普遍
的なテーマであり、与信管理に不備不調があると大きな損害が発生しかねませ
ん。そして、与信管理のノウハウは、ベンチャー企業等を中心に、自社が取引
先からどの程度の信用を供与が受けられるか―取引開始や投融資―をコントロ
ールする、いわゆる“受信マネージメント”という観点でも有用です。また、
M&Aや事業再生の場面でも応用することができる知見も少なくないと思いま
す。

 本書は分量的、内容的、価格的にも「与信管理」の入門書としてはお手頃か
なと思いますので、是非よろしくお願いします。
        http://www.suzukijimusho.com/books



2019.06.24(月)【執行役と代表執行役】(金子登志雄)

 指名委員会等設置会社は全国で70社程度ですから、ほとんどの司法書士は
無関係です。したがって、指名委員会等設置会社には代表取締役というものが
存在しないことも知らない方も多いことでしょう。

 ところが、最近は、神崎先生が主宰する商業登記倶楽部の質問コーナーに、
指名委員会等設置会社のことまで質問が来るようになりました。日産自動車や
三菱自動車が指名委員会等設置会社に移行することを表明していますので、流
行りなのでしょうか。

 指名委員会等設置会社では、株主総会で取締役を選任し、取締役会で指名委
員や監査委員、報酬委員を「選定」しますが(400条2項)、執行役につい
ては「選任」になります(402条2項)。

 この違いお分かりでしょうか。委員は取締役でなければならないが、執行役
は取締役に限られないからです。前者は取締役に新権限を付与する選定だが、
後者は第1次的選抜で2度目ではないということです。

 ところが、執行役は「選任」なのに、代表執行役は「選定」です。各自代表
制度で剥奪型選定でしょうか、執行役の互選による付与型選定でしょうか。

 420条1項には「取締役会は、執行役の中から代表執行役を選定しなけれ
ばならない。この場合において、執行役が一人のときは、その者が代表執行役
に選定されたものとする」とあります。

 すなわち、執行役は本来的に代表権がないが(一人のときも選定みなしであ
り各自代表ではありません)、取締役会で代表権を追加する付与型選定の仕組
みでした。選任も選定も同じ取締役会ですが付与型選定で、しかも執行役の互
選によるという規定はありません。

 したがって、非取締役会設置会社では「代表取締役である取締役」といえて
も、指名委員会等設置会社では「代表執行役である執行役」という表現は不適
切で、執行役兼代表執行役という2つの地位というべきでしょうか。


2019.06.21(金)【非業務執行取締役と非業務執行社員】(金子登志雄)

 昨日の立花投稿には、感心してしまいました。①業務執行と②業務執行の決
定と③代表者の選定とは相違するのではないかという問題意識がなければ書け
ない内容だからです。こういうことは学者の文献にも触れられていませんので、
よく気が付いたものです。同じことを私はストレートにご説明しましょう。

1.「業務執行」と「業務執行の決定」について

 【非業務執行取締役】
 非取締役会設置会社でも定款で取締役を業務執行取締役と非業務執行取締役
とに分類することができるが(348条1項)、非業務執行取締役も業務執行
機関の一員である取締役である限りは業務執行の決定には参加しなければなら
ない(同条2項)。これは、取締役会設置会社の場合でも同じである。

 【非業務執行社員】
 上記に対して非業務執行社員は業務執行の決定にも参加することができない
(591条1項)。所有と経営が一体の持分会社にあっては、業務執行権は社
員権自体に属し、その制限は株式会社でいえば、業務執行の決定について議決
権を制限された種類株主を定めたのと同じことである。ただし、業務執行の決
定でも支配人の選任権限までは原則として制限することができない(591条
2項)。重要な人事問題だからであろう。

2.「業務執行の決定」と「代表者の選定」

 業務執行の決定とは定款で定める事業目的達成のための事業活動の決定であ
り、その担い手役員を定める人事問題は含まれない。最重要人事の役員の選任
権は本来的に企業所有者の権限であり、定款で定めない限り、純業務執行機関
の権限にはできない。取締役会で代表取締役を定めるようになっているため、
この点は勘違いされやすいが、取締役会自体が定款の定めに基づくことに留意
すべきである。

 上記の結果、次のようになる。 

1.株式会社は、定款の定めに基づく取締役の互選によって、取締役の中から
 代表取締役を定めることができる(349条3項)。定款で、業務執行機関
 の権限に委任し業務執行の決定に準じさせ、かつ「決定」の問題だから、前
 段の取締役には非業務執行取締役が当然に含まれる。

2.持分会社は、定款の定めに基づく社員の互選によって、業務を執行する社
 員の中から持分会社を代表する社員を定めることができるが(599条3項)、
 代表社員の選任権限の問題であって業務執行権の決定権限のそれではないか
 ら、前段の社員には非業務執行社員が当然に含まれる。
  仮に定款で「業務執行社員の互選で代表社員を定める」と規定しても、そ
 れは代表社員選任権制限「社員」(種類社員?)を定めただけで、社員から
 離れた業務執行機関の権限に委ねたわけではない。

 以上ですが、簡単にいうと、業務執行取締役と非業務執行取締役は代表取締
役を含む業務執行に従事する取締役は誰かという経営者問題で、業務執行社員
と非業務執行社員は業務執行の決定権限のある社員は誰かという社員(企業所
有者)問題であり、代表社員選定問題とは別だということです。


2019.06.20(木)【「取締役」の互選と「社員」の互選】(仙台・立花宏)

 「代表取締役は取締役の互選により定める」旨の規定がある非取締役会設置
会社である株式会社であることを前提とします。この会社の定款には、取締役
の業務執行権についての会社法第348条第1項の別段の定めがあり、当該規
定に基づき、この会社には業務執行権のある取締役A、Bと業務執行権のない
取締役Cがいるものとします。

 さて、この会社において、定款の規定に基づき、A、B及びCの互選により、
業務執行権のない取締役Cを代表取締役と定めることはできるでしょうか。

 代表取締役は対外的及び対内的な業務執行権を有する立場です。定款の別段
の定めにより取締役Cは、株主の意思により業務執行権を制限されたといえ、
定款の規定がそれを許容する内容でなければ、業務執行権を制限された取締役
を取締役の互選によって代表取締役に選定することはできないと考えました。

 そうすると、会社法第348条第3項の「定款の定めに基づく【取締役】の
互選(略)によって、【取締役】の中から代表取締役を定めることができる」
という規定の取締役は、同じ用語を使用していますが、前段の取締役は、業務
執行権のない取締役を含めた取締役全員を意味し、後段の取締役は、業務執行
権のある取締役を意味するのではないかと考えました。

 規定上、あきらかではありませんが、業務執行権のある取締役のみが被選挙
権を有する一方、選挙権を有するのは、すべての取締役であることを想定して
いるように思えたのです。業務執行権のある取締役による互選ではないと考え
ます。業務執行権がないとしても、代表取締役の監督権は有すると考えるべき
だと思います(注)。

 実は、持分会社の条文と比較していて、そんなことを考えました。非取締役
会設置会社である株式会社の取締役についての規定である会社法第348条、
第349条と、持分会社の社員の業務執行などに関する規定である第590条、
第599条は似ています。

 会社法第590条第1項では、持分会社の社員は原則として業務執行権を有
しますが、別段の定めを定款に設けることができます。社員を業務執行権のあ
る社員と業務執行権のない社員を設けることが典型例です。

 そして、会社法第599条第1項では、業務を執行する社員が原則として、
持分会社の代表権を有することを定め、同条第3項で、「定款の定めに基づく
【社員】の互選によって、【業務を執行する社員】の中から持分会社を代表す
る社員を定めることができる」としています。

 登記実務の考え方とは相違しますが、前段の社員は、前記取締役の互選の取
締役が業務を執行しない取締役を含んでいるのと同様、業務を執行しない社員
を含むと考えられるように思いました。「社員」の互選という条文の文言にも
素直な解釈です。一方、後段の社員は、前記取締役の互選の「取締役」が業務
執行権のある取締役であるのと同様、業務を執行する社員です。これは条文か
ら明らかです。

 今回、これらの条文を比較してみて、誤解を恐れずにいえば、持分会社の
「社員」は、非取締役会設置会社の株式会社の「株主」と「取締役」の立場を
併せ持っている立場に近いように感じました。

 注)取締役が2人以上ある場合の業務の決定も、業務執行権のない取締役を
  含めた取締役の過半数で決定します(参考:酒巻俊雄・龍田節編著『逐条
  解説会社法第4巻 機関1』365頁以下)。


2019.06.19(水)【クスリは怖い?】(藤沢・酒井恒雄)

 コンサートに行って、左耳を痛めたという話の続きです。

 炎症を起こした内耳を投薬で治療することになったのですが、数日後には、
かなり症状が改善されました。難聴にならなくて良かったと、気分よく過ごし
ていたところ、妻に「あなた大丈夫?」と、真剣な顔で言われてしまいました。

 「元気に過ごしているのに、大丈夫とは?」と尋ねたところ、ここ数日、体
力的にも精神的にも、かなり疲れている生活を送っているはずなのに、全く疲
れている様子がないというのです。普段なら睡魔に襲われて目を擦り出すよう
な時間帯になっても、目が爛々としているので心配だと言われました。

 そこで、ふと、処方箋を出してもらったときの、医師との会話を思い出しま
した。薬の作用で、人によっては眠れなくなる場合があるので、睡眠導入剤も
一緒に処方するかと聞かれ、自分は布団に入れば直ぐに眠ってしまう人なので
要らないと断ったのでした。

 確かに、ここ数日の生活を思い出すと、疲れを感じていないのは不自然でし
た。以降、意識して早めに布団に入るようにしました。

 そして予想どおり、約1週間の投薬期間が過ぎた途端、ドッと疲れが押し寄
せてきました。元気だと感じていたのは、やはりクスリの作用によるものでし
た。服用していたのは直径5ミリくらいの小さな薬でした。たったあれだけの
量で、しかも、医師の処方によって服用した薬で、このような影響が体にでる
のですから、非合法のクスリだったらと想像すると、非常に怖くなりました。


2019.06.18(火)【司法書士法の改正】(東京・鈴木龍介)

 令和元年6月6日、司法書士法の改正(土地家屋調査士法も同様の改正)が
成立し、6月12日に公布されました(令和元年法律29号)。

 改正の概要は以下のとおりです。
1.「使命」規定の新設
  「その他の法律の専門家として」という文言が入りしました。
2.「懲戒」手続の見直し
   懲戒権者が法務局長から法務大臣となり、懲戒処分に除斥期間(7年間)
  が設けられました。
3.「一人法人」の許容
   一人でも司法書士法人の設立ができるようになりました。
 ちなみに、公布の日から1年6か月以内の令和2年12月12日までに施行
されることになっています。

 あわせて、同改正に関しては次のような附帯決議(司法書士関連)がなされ
ています。
(1)司法書士の実務能力の向上のために実施される各種の研修制度について、
  その一層の充実に向けて協力すること
(2)司法書士法人について、設立の諸手続が円滑に進められ、司法書士会に
  よる指導が適切にされるよう努めること
(3)空き家や所有者不明土地問題等の諸課題の解決に当たっては、司法書士
  の有する専門的知見や財産管理、筆界確定等についてのこれまでの実績に
  鑑み、その積極的な活用を図ること
(4)司法書士の有する専門的知見を活用したADR手続により国民の権利擁
  護及び利便性の向上を図るため、引き続き、それらの手続の周知に努める
  こと
(5)総合法律支援法に基づく特定援助対象者法律相談援助事業に関して、司
  法書士の更なる活用を進めるなど、関係団体と連携しつつ、国民の権利擁
  護及び利便性の向上に資するよう努めること
(6)IT環境の急速な進展の下で、各種登記制度やこれを支える司法書士制
  度に対する国民の信頼を損なうことのないよう、非司法書士行為に対して
  引き続き厳正に対応すること
(7)国民の権利擁護の観点から、司法書士でない者が司法書士の業務につい
  て周旋することを禁止する規定の整備について、本法施行後の状況も踏ま
  えつつ、必要に応じ対応を検討すること
(8)司法書士の登録前の研修を義務化することなど、簡裁訴訟代理等関係業
  務を行うことができる司法書士の資質の向上のための施策について、本法
  施行後の状況も踏まえつつ、必要に応じ対応を検討すること

 詳細につきましては、法務省の「司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を
改正する法律について」をご参照ください。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00381.html


2019.06.17(月)【注意が必要な支店登記】(東京・古山陽介)

 支店の登記については、現在、行われている会社法制の見直しの中間試案に
「支店の所在地の登記廃止」が盛り込まれていて、おそらく近い将来、成立す
るであろうと思われます。

 このような現状において、支店登記は、馴染みが薄くなっている分、注意が
必要です。

 先日、初めて「支店変更申出書」の手続を行いました。内容としましては、
支店所在地の住所が、行政区画の設置に伴い変更しており、支店管轄の登記簿
は修正登記が職権で入っているのですが、本店の登記簿には職権で(自動的に)
修正登記が入るわけではないので、その修正登記を本店管轄の法務局に申出る
ための手続であります。

 そもそも行政区画の設置に伴い、市区町村名に変更があった場合であっても、
地番に変更がない場合には、商業登記法第26条によって、変更の登記があっ
たものとみなされるため、申請の義務はありません。

 ただ、クライアントとしては、登録免許税がかからず登記懈怠の問題にもな
らないのであれば、お願いしたいと依頼を受けましたので、手続を行いました。

 この申出は、現状、オンラインでは申請できないため、様式はほぼ登記申請
書と同じですが、書面申請で行うことになります。

 また、別の事例で、合併と商号変更の依頼を受けた案件がありました。当該
会社には、支店が5箇所(5管轄)登記されていましたので、本支店一括申請
で手続を進めようと考えていました。

 ところが、支店管轄の登記情報を取得してみると、会社の本店の住所表記が、
現在の住所とは異なる管轄が出てきました。この会社は約5年前に本店移転を
しているのですが、一部の管轄で、この本店移転に関して、支店管轄の登記を
申請していなかったのです。

 ですので、今回は、本支店一括申請ではなく、本店管轄における商号変更の
登記が完了した後に、支店の管轄ごとに「商号変更登記」または「商号変更・
本店移転登記」の申請を行いました。

 申請する手間はかかるのですが、本支店一括申請を行う場合に要する1管轄
ごとの登記手数料300円が、本店と分けて登記をする場合には、手数料がか
からないという利点があります。

 同じ内容の登記手続にもかかわらず、費用が異なるというのは、以前からど
うしても腑に落ちないのですが、支店の所在地の登記が廃止となれば、この疑
問はなくなるのでしょうし、支店管轄の登記について注意することもなくなる
のでしょうね。


2019.06.14(金)【「選定」を深堀り】(金子登志雄)

 取締役は「選任」されるものですが(329条)、代表取締役は「定める」
又は「選定」されるものです(349条3項、47条)。常勤監査役も指名委
員会等設置会社の委員も「選定」です(390条3項、400条2項)。

 「選任」は地位のない者(一般人)に一定の地位(取締役)を付与すること
ですが(ゼロ→有にする)、「選定」には、2種類があり、既に一定の地位に
ある者にさらに権限を追加するか(有→有+α)、逆に一部の権限を剥奪して
(有→有-β)、一定の者だけを権限者にすることです(相澤哲ほか編著『論
点解説 新・会社法』38頁参照)。

【(追加)付与型】
 定款で取締役の互選で代表取締役を定めるとした場合や取締役会を設置した
場合には、取締役には代表権がないとされたわけですから、代表取締役を定め
ることは、代表権を追加付与したことになります。

【代表権剥奪型】
 非取締役会設置会社において定款や株主総会で代表取締役を定めることは、
剥奪型であり、本来、各自代表権を有する取締役に対して、代表権を残す者と
剥奪する者とを選別することですから、剥奪型です。

 付与型の場合には代表取締役に就任承諾書が必要で、剥奪型では不要だとさ
れています。

 以上については、商業登記に詳しい人にとっては常識的知識ですが、合同会
社の場合は、どうでしょうか。定款で「業務執行社員の互選により代表社員を
定める」とした場合に、代表社員の就任承諾書が必要でしょうか(以下、月曜
日の本欄と同じ内容ですが、切り口が違います)。

 業務執行社員は取締役と違い選任される地位ではありません。合同会社の社
員は本来的に業務執行権・代表権を有しますから(590・595条)、定款
で業務執行社員を定めるのは剥奪型です。その剥奪型で選定された業務執行社
員が代表社員を定めることは、今度は代表権が剥奪されたことになります。

 つまり、取締役の互選で代表取締役を定めることは、
 【株主総会→(地位付与の選任)→取締役→(付与型選定)→代表取締役】
ですが、業務執行社員の互選で代表社員を定めることは
 【社員→(業務執行権剥奪)→業務執行社員→(代表権剥奪)→代表社員】
であり、選任行為も付与型選定も介在していません。

 ついでながら、同じ剥奪型でも月曜日の本欄で記載したとおり「社員権」の
制限型であり、「取締役権限」の制限型ではありません。

 取締役の互選で代表取締役を定める際は株主意思の介在がないのに対し、業
務執行社員は社員そのものです。代表社員も社員です。

 これが商業登記法に代表社員の就任承諾を要する旨の規定がない理由ですが、
登記実務は取締役の互選型と同視して付与型と勘違いしているとしか思えませ
ん。そろそろ見直す時期ではないでしょうか。


2019.06.13(木)【登録免許税の確認】(金子登志雄)

 3月決算会社の定時総会のピークの時期が近付いてきたためか、問い合わせ
メールが多く、当事務所も久々に活気づいてきました。今回は軽い話題にいた
しましょう。

 さて、商業登記につき慣れているかどうかの尺度として、登録免許税別表を
よく確認するかどうかの差があります。

 司法書士歴の長い私は、特殊な事例は別として登録免許税法別表はほとんど
みません。10個近く登記事由があっても同じです。

 ところが、1か月前に「支店3か所の廃止」の登記で、3万円としたのです
が、ふと別表をちら見しましたら、「1か所に3万円」とあるじゃないですか。
しまったと思い「9万円」にして、申請したのですが、申請後によくよくみる
と、1か所に3万円は支店の「移転」の場合でした。いつもどおり別表など確
認せずに自分を信じて申請すればよかった、あるいは、別表をよく見ればよか
ったと反省しました。

 先日は「監査役会の廃止」と「目的変更」その他の登記で、両者は別区分で
各3万円の合計6万円で申請し、無事に登記が終わったのですが、顧客への請
求書を作る段階で、ふと別表をみたら、監査役会の「変更」なら別途3万円と
あるじゃないですか。

 私の申請は「廃止」であり「変更」ではありません。しまった、支店の廃止
と同じく「その他」の区分で目的変更と併せて3万円じゃないか、還付請求し
なければと思ってしまいました。

 慌ててしまいましたが、この監査役会の「変更」には「設定」と「廃止」し
かないですね。登記原因では「設定」「廃止」「変更」を区別しても別表上は
全部を含む広義の「変更」でした。今回も別表など確認しなければよかった、
あるいは、よく見ればよかったと思いました。

 しかし、こういう経験を繰り返して知識が確実になるわけですから、こうい
う「迷い」は成長のためには必要ですね。高齢者の私も成長過程にいます。


2019.06.12(水)【耳栓】(藤沢・酒井恒雄)

 先日、ハードロック系のコンサートに行ったのですが、お恥ずかしいことに、
左耳を痛めてしまいました。

 若者たちに負けまい(こういう言い方をする時点でオジサンですが)と、ス
テージの近く、中央辺りで観ていたのですが、場内が「おしくらまんじゅう」
のような状況となり、どんどん隅っこの方に追いやられてしまいました。

 気が付けば、ステージの左側に設置されている、大音量のスピーカーの近く
に来ていました。良くない場所に流れて来てしまったとは思いつつ、そのまま
コンサートを楽しんだのですが、結果、左耳がひどい耳鳴りを起して、あまり
聞こえない状態になってしまいました。

 ハードロック系のコンサートには何度も行っているので、たびたび耳鳴りは
経験していましたが、いつも翌日には治っていました。ところが今回は、翌日
になっても耳鳴りが収まらず、気分が悪くなるほどヒドくなったので、すぐに
病院に行きました。

 診察の結果、いわゆる音響外傷と呼ばれる、内耳が炎症を起こしている状態
でした。鼓膜の損傷はなかったので、投薬のみの治療を行うことになり、約1
週間薬を飲んで、症状は改善されました。

 この出来事を音楽好きの友人に話したところ、「なんで耳栓をしなかったの
?」と言われてしまいました。「音楽を聴くのに耳栓?」と聞き返しましたが、
今や、コンサート(特に大音量のロック系など)では、難聴予防のために耳栓
をするのが当たり前になっているのだとか。耳栓といっても音楽専用の耳栓で、
音も会話も聞こえるけれど、有害な周波数の音はカットするというものだそう
です。

 この話を聞いて、すぐに「音楽用耳栓」と検索したところ、多くの種類の音
楽用耳栓がヒットしました。商品の評価やレビューもたくさん出ており、やは
り多くの人が使用しているということが伺われました。内耳が傷つき、友人に
ちょっと馬鹿にされて心も傷つきましたが、早速、音楽用耳栓を購入しました
ので、これからは安心してコンサートに行けそうです。


2019.06.11(火)【全国の司法書士法人の集い】(東京・鈴木龍介)

 今回は、「戦後商法のあゆみ」をお休みさせていただきまして、一般社団法
人全国司法書士法人連絡協議会(法人協)の「第9回 全国の司法書士法人の
集い」の告知をさせていただきます。

 法人協は、司法書士法人制度の健全な発展を主たる目的として、日本司法書
士会連合会(日司連)をはじめとする関係団体との協議や会員間の情報交換と
いった活動を展開しています。その中で、会員や関係者が一同に会する恒例の
「全国の司法書士法人の集い」を令和元年8月3日(土)に以下のとおり開催
することとなりました。

 9回目となる令和最初の集いでは、“士業法人の「これまで」と「これから」”
と題しまして、士業法人の法制・組織・運営課題を総ざらいし、法人制度の有
効な活用事例を一気にシェアしたいと思います。

 たとえば、全国展開や地域一番化。あるいは業務特化やフルライン化。まっ
たく逆のベクトルに組織全体を向けながら、それぞれ上手に士業法人の経営を
され、大きな成長を遂げていらっしゃる士業法人グループの代表者の方々に経
緯と展望について率直に語っていただきます。

 法人協・定時総会についても、法人協の現在の活動や今後の展開を広く知っ
ていただくという趣旨から法人協会員以外の方々にも公開しておりますので、
是非ご参加ください。また、終了後、会員・関係者間の交流を深め、自由に意
見を交換する場としての懇親会もございますので、あわせてご参加いただけれ
ば幸いです。
 
 日時   令和元(2019)年8月3日(土曜日)
      午後1時30分から午後4時30分(受付 午後1時~)
      午後5時から懇親会
 場所   日司連ホール
     (東京都新宿区四谷本塩町4番37号 司法書士会館地下1階)
 参加費  3,000円(資料代を含む。なお、法人協会員は無料)
     (懇親会:ホテルグランドヒル市ヶ谷/会費6,000円程度)
 概要  ・法人協・定時総会(事業報告・決算承認・事業計画等)
     ・第1部 基調講演「士業における合同事業のあり方」
      荻野 恭弘氏(法人協理事・司法書士法人名南経営 代表社員)
     ・第2部 パネルディスカッション
         「士業法人の”これまで“と”これから”」
       パネラー
        税理士法人レガシィ     代表社員 天野 隆氏
        行政書士法人きずな神戸   代表社員 森本 楽氏
        みらい社会保険労務士法人  代表社員 城 敏徳氏
        日本リーガル司法書士法人  代表社員 徳本好彦氏
        コーディネーター 荻野 恭弘氏

 法人協会員や司法書士法人の方以外の参加も歓迎です。ご参加を希望される
皆様は、法人協HP(http://houjinkyou.com/)をご参照のうえ、
    e-mail(official.sihoshosi.hojin@gmail.com)
または FAX(03-3837-1988)にて、7月19日(金)までに
お申し込みください。


2019.06.10(月)【企業所有権の発現形態】(金子登志雄)

 金曜日と相違し、今回は会社法解釈におけるモノの見方・考え方・捉え方を
ご披露します(以下、【 】は強調の意味です)。

 さて、所有権には使用・収益・処分という3つの権能があります。この使用
権は所有物を自由に使う権利ですが、株主権(株式会社に対する共同所有権)
でいえば、株主総会に参加して議決権を行使したり、経営を委託する取締役を
選任したり、代表訴訟など取締役の行動を監視する監督是正権に変貌します。
いわゆる共益権です。業務執行の決定も株主総会の決議を通じて可能ですが、
業務の執行自体や対外的代表権は取締役に属し、株主権には含まれません。

 では、社員権(持分会社に対する共同所有権)の使用権は、どのように変貌
しているかというと、持分会社は、所有者が直営する会社であり、経営を外部
に委託しませんから、所有物である会社を運営する権利である業務執行権や代
表権にも変貌しています。持分会社の社員は株主と相違し、各自執行社員社員
であり各自代表社員です。

 定款で業務執行社員や代表社員を定めたとしても、それは経営を外部に委託
したわけではなく、社員間で役割決めをし、社員権の全部を行使することので
きる社員(代表社員)と一部しか行使することのできない社員とに分けただけ
です。【社員権の制限】ですから、種類株式などと同じく【定款でしかできま
せん】。総社員の同意でも定款の定めを根拠にしない限り業務執行社員を定め
られないのはこのためです。

 業務執行社員の互選で代表社員を定めると定款で規定した場合も同様であり、
業務執行社員間で役割決めをしただけで、【社員権の制限であり代表権を付与
したわけではありません】。これが商業登記法に代表社員に就任承諾書を要求
する規定が存在しない理由ですが、残念ながら登記実務は取締役の互選で代表
取締役を選定する場合と同視したのか、必要説です。

 この社員権からの切り口によると、持分会社の定款で業務執行権や代表権の
所在を定めておらず、持分の相続を認めていると、相続人は業務執行権も代表
権も相続することが素直に理解することができるはずです。相続人が幼児であ
っても企業の共同所有者ですから同じです(印鑑証明を準備できないので、印
鑑登録する(代表)社員にはなれませんが)。

 学説の中には、社員たる地位は相続できるが、業務執行社員や代表社員の地
位まで相続させるは行き過ぎじゃないかというものもありますが、業務執行権
や代表権まで含んだ全部の権利を相続させないことこそ不公平です。もちろん、
通説・判例は全部相続説です。

 さらに、持分会社の社員権は原則として相続されず定款に定めがあれば例外
的に相続されるのだから、例外は狭く解釈すべきかどうかとの論点があります。

 先日、今や合同会社の権威である立花さんから、これにつき意見を求められ
ました。私の返答は、第1に、営利社団法人の社員権は財産権的要素が強いた
め、株主権などと同じく【相続されるのが原則である】。第2に、内部は社員
間の組合契約だとしても、契約上の地位も相続されるのが原則である。第3に、
会社法が相続を禁止しているのは、よそ者は入れないという譲渡禁止特約や相
続禁止特約が持分会社制度に内在しているためである(所有権の処分権問題)。

 したがって、相続することができないという【例外】規定を会社法に定めて
(原則どおり相続可能なら規定は設けられていないはずです)、その【例外の
例外】として定款に定めれば原則どおり相続可能だとしたのだから、何が原則
で、何が例外かは捉え方次第だと答えましたが、皆様はいかがお考えですか。


2019.06.07(金)【経済戦争】(金子登志雄)

 私も、たまには会社法以外の話題にしましょう。法律解釈と同様に、知識よ
りもモノの見方・考え方・捉え方を重視する私の最近のニュースへの感想です。

 さて、ロシアと戦争しましょうといった愚かな国会議員がいましたが、東大
まで卒業した割に、核時代の戦争がどういうものか予測する能力もないのでし
ょうか。本気で戦ったら、日本全土がロシアの核で沈みます。

 もう1つ、気になったのは、あの若さで、未だに東西冷戦時代の思考から抜
け切れず、ロシアや中国は敵だという発想を感じたことです。私より若い中国
包囲網論者の安倍さんにもこれを感じています。

 いまや局地戦を除き戦争は経済戦争が中心です。東西冷戦が終わった後は、
米国の敵は日本やドイツの経済力になり日米半導体摩擦や自動車摩擦になり、
日本はまたもや敗戦国になりました。ジャパン・アズ・ナンバーワンで米国の
ビルを買いあさっていた30数年前が、はるか昔のように感じます。

 これに対して経済貧国だった中国や韓国の経済成長は驚異的であり、日本に
おける反中・反韓感情はそれに対する嫉妬が多分に存在していると私はみてい
ます。あの貧乏国の連中が偉そうに………と思っても、いまの中国・韓国は、
国民服や軍事政権時代のあの連中ではありません。文化も著しく発達しました。
貿易では日本の最重要なお客様です。ここにヘイトしている方々は、お客様を
蔑視し排斥しているのですから、信じられません。
  http://www.jftc.or.jp/kids/kids_news/japan/country.html

 中国の経済急成長は米国の地位をも脅かすようにもなり(いずれは追い越す
でしょう。米帝国も永久ではありません)、焦ったトランプさんが経済戦争を
しかけました。武器は関税でありお得意の恫喝外交です。中国の高官が「頭に
拳銃を突き付けている相手と交渉せよというのは無理だ」と語ったようですが、
これが米国流(いや国際標準かも)の外交であり経済戦争の仕方です。

 日本でも中国でも経済成長のため国が産業を育成する政策を実行してきまし
た。どの国でも行っていることですが、米国ではこれが不公平で自由競争に反
するとみているようです。銃規制が自由に反すると考える米国らしい発想です
が、要は、交渉技術の1つである難癖であり、自国優先策です。

 しかし、自国の優先になるのでしょうか。戦争は勝っても負けてもよいこと
は何もありません。たった一人の男のツイッターで世界中の株式は暴落してお
り、経済秩序が破壊されていますが、あの広大な中国市場を失い米国企業にも
悪影響が出はじめているはずです。どちらが先に折れるかの我慢比べです。

 今後、日本には農業分野と円安誘導に圧力がかかってくるでしょうから、設
備投資も研究開発も行わず為替と労働者賃金の抑制、派遣労働者使用で内部留
保しか行わなかった日本企業は、これで国際競争に勝てるわけがありません。

 それにもかかわらず、どの国でも大衆は冷静な判断をしません。敵か味方か
を選別して煽るトランプ流や安倍流に喝采して欲求不満を解消する傾向があり
ます。また末端まで利権社会の日本では権力者に近づいておかないと、いい目
をみられませんので、ますます権力者に有利な社会になって行きます。すでに
権力を監視すべき日本のマスコミもすっかり政権寄りになりました。

 真に自由主義者であるためには、権力のバランスと相互抑制を求めるべきな
のに、日本国民はそれを求めているようにみえないのが残念ですが、幸い米国
では議会やマスコミが為政者に対して牽制機能を働かせていますし、排外主義
者が増えたといってもEUではまだ健全な政治が行われています。

 この先はみえませんが、政治家のレベルの低さは民度に比例していることを
もっと我々自身も考え直さなければならないと思っていますが、糠に釘で少々
あきらめ気味の私です。島国で農耕民族の日本人は、悪政に対して怒りもせず、
天災と同じように感じているのかもしれません。



2019.06.06(木)【一人の消防団員として】(島根・根来川弘充)

 私は、6年前から地元の消防団に入っています。田舎の自治会の慣習法とい
うのでしょうか、ある程度順番というものがあって回ってきました。

 消防団員なら分かっていただけると思いますが、この時期、消防団の操法大
会というものがあり、みなさん練習に力をいれておられると思います。

 先般、依頼者の方とお話をしていたら、とても日焼けをされておられたので、
世間話の中で、「消防団に入っておられますか?」とお聞きしたところ、その
通りということで、そこから親近感をもっていただけました。

 近年は、団員のなり手が少なく、どこの団も、その維持に大変こまられてい
るそうです。このままもし、消防団がなくなってしまったら、警備や防災のた
めに、税金がますます増えるのではないかと大変不安になります。

 つい先日は、平穏に暮らしていた子供や保護者が、たった一人の狂気により、
犠牲になってしまいました。災害や犯罪には、地域の大人が関心をもつという
ことが、重要な対策だと思います。

 そのためにも、活動の都度、考えさせてくれる消防団の存在は大変有益だと
思っています。

 一人の消防団員として、全国の消防団員の皆様に、感謝を申し上げたいと思
います。


2019.06.05(水)【ワインは悪者?】(藤沢・酒井恒雄)

 先日、ある会社さんが主催する飲み会に参加してきました。あまりに楽しい
会でしたので、ついついお酒が進んでしまい、帰宅後から翌日に掛けて、大変
つらい思いをすることになってしまいました。

 経験のある方も少なくないかと思いますが、もう酒は飲むまいと心の中で何
度も誓う、あの状況です。数日後にはそんな誓いは何処かに行ってしまうのも、
いつものことですが、どうも私の場合、ワインを飲むと、辛い朝を迎える傾向
があるようです。

 そこで、ワインを悪者と決めつけていいのか、少し調べてみましたところ、
わりと納得の行く答えが見つかりました。

・ワインは、焼酎などの「蒸留酒」などとは異なり、「醸造酒」に分類される。

・「蒸留酒」はアルコールの種類が単一になるのに対して、「醸造酒」は含ま
 れるアルコールの種類が複数である。(複数なので独特の風味が出る。)

・アルコールは、対内で分解される途中でアセトアルデビドと呼ばれる物質に
 変化する。

・アセトアルデビドが非常に強い毒性を持っている。

・アセトアルデビドを分解して体外に排出するのは肝臓の役目である。

・人の肝臓は、単一成分のアルコールは効率よく分解できるが、複数のアルコ
 ール成分になると、アルコールの分解効率が落ちる。

・分解しきれなかったアセトアルデビドはが吐き気や頭痛の原因となる。

 このほか、酸化防止剤が原因だという説、ヒスタミンとチラミンという物資
が原因だという説もあるようですが、私はこの説明が一番しっくり来ました。
もっとも、肝臓のアルコール分解効率云々の前に、飲酒の量が多ければ分解機
能が追い付きません。結局、ワインだけが悪者であったとは言い切れなく、い
つものように、次は酒量に気を付けようと思ったのでした。



201.06.04(火)【戦後商法のあゆみ⑬ 昭和49年改正~その3~】
                          (東京・鈴木龍介)

 今回は、「戦後商法のあゆみ」の13回目として、昭和49年商法改正の続
き(その3・完)です(長くなってしまい、すいません)。

3.商業登記に関する規律等
(2)株式会社と登記
 昭和49年改正商法において、改正等された株式会社の登記と密接に関係す
る主な規律は、次のとおりである。

① 監査制度の見直し
a)監査役の権限等
 監査役の職務権限について、昭和25年改正商法により取締役会制度が導入
されことに伴い業務監査権限は有しないこととなっていたところ、取締役の職
務の執行を監査することとされ(昭和49年改正商法274条1項)、監査の
範囲が業務監査と会計監査の両面に及ぶこととなった。あわせて、監査役の取
締役会への出席権限が規定され(昭和49年改正商法260条ノ3)、取締役
会議事録には出席取締役とともに出席監査役にも署名義務が課せられた(昭和
49年改正商法260条ノ4第2項)。

b)監査役の資格
 監査役の資格について、当該会社の取締役または支配人その他の使用人との
兼任の禁止から、それを子会社まで拡張することされた(昭和49年改正商法
276条)。これは、監査役の監査の対象が子会社にも及ぶことされたことに
伴うものである(昭和49年改正商法274条の3第1項)。

c)監査役の任期
 監査役の原則的な任期について、2年以内とされていたところ、安定的かつ
適正な監査の実現に資するため、就任後2年以内の最終の決算期に関する定時
株主総会の終結の時までとされた(昭和49年改正商法273条1項)。なお、
当該任期は定款の定めによっても短縮または伸長は許されない。

d)監査役の選任決議
 監査役の選任決議について、いわゆる通常の株主総会普通決議であったとこ
ろ、取締役と同様に、定款の定めによっても定足数を発行済株式総数の3分の
1未満にすることはできないとされた(昭和49年改正商法280条/256
条ノ2準用)。

e)大会社・中会社・小会社の区分
 監査の観点から株式会社の区分について、監査特例法により以下のとおりと
された。
 大会社とは資本金5億円以上の会社であり、監査役の監査の範囲は業務監査
と会計監査の両面に及び、会計監査人監査が強制された(監査特例法2条)。
 中会社とは資本金が1億円超5億円未満の会社であり、監査役の監査の範囲
は業務監査と会計監査の両面に及ぶとされた。
 小会社とは資本金1億円以下の会社であり、監査役の監査の範囲は商法の特
例として会計監査に限定し(監査特例法22条1項)、監査の手続は簡便なも
のとされた。

f)会計監査人に関する規律
 会計監査人の選・解任について、監査役の過半数の同意のうえ、取締役会の
決議のよるものとされた(監査特例法3条1項・6条1項)。なお、この時点
では会計監査人の任期については、格別の規定は設けられていない。
 会計監査人の資格について、公認会計士または監査法人でなければならない
とされた(監査特例法4条1項)。なお、この時点では会計監査人については、
登記事項とされていない。

② 累積投票の絶対的排除
 取締役選任にかかる累積投票について、定款の定めによる排除を認めつつも
発行済株式総数の4分の1を有する株主が請求した場合には累積投票を採用し
なければならないとされていたところ、これを定款の定めにより完全に排除す
ることが認められることとされた(昭和49年改正前商法256条ノ4の削除)。

③ 抱合わせ増資の制度化
 一種の臨時的措置であった資産再評価法(昭和25年4月25日法律110
号)および株式会社の再評価積立金の資本組入に関する法律(昭和26年4月
10日法律143号)に基づき再評価積立金を資本に組み入れることを認めて
いたところ、これらの二法が昭和48(1973)年3月31日をもって失効
した。

 その代替的な措置として、額面株式の発行に際し、それまで認められてこな
かった法定準備金を資本に組入れ、その不足分を払い込ませる、いわゆる有償
無償抱合せ増資を商法に取り込み、一般制度化した(平成13年改正商法によ
り額面株式廃止に伴い廃止)。

④ 転換社債発行決議の緩和
登記事項である転換社債の発行について、定款の定めまたは株主総会の特別
決議により転換条件等を定めなければならないとされていたところ、機動的な
資金調達を図るという趣旨から通常の新株発行や普通社債の発行と同様に、取
締役会の決議によることもできるとされた(昭和49年改正商法341条ノ2
第2項)。 
 
~参考文献等~
・中東正文=松井秀正編著『会社法の選択―新しい社会の会社法を求めて』
(商事法務、2010年)67頁~81頁
・秋坂朝則『商法改正の変遷とその要点(新訂版)』
(一橋出版、2006年)66頁~80頁
・上田純子「日本的機関構成への決断―昭和49年の改正、商法特例法の制定
 ―」浜田道代編『日本会社法の歴史的展開』
(商事法務、1999年)369頁~425頁
・大和正史「昭和49年商法改正」倉沢庸一郎=奥島孝康編『昭和商法学史』
(日本評論社、1996年)45頁~64頁
・法務省民事局民事法務研究会編『商業登記法等改正経過法令集』
 (商事法務、1994年)153頁・154頁
・味村治ほか「座談会 戦後の会社法改正事情(中)」
  商事法務No.1230(1990年)6頁~20頁
・鈴木竹雄=竹内昭夫『商法ととともに歩む』
 (商事法務、1977年)479頁~504頁


2019.06.03(月)【商号変更の請求(後編)】(仙台・立花宏)

 先週5月31日金曜日の本欄では、旧商法では、持分会社のうち合名会社に
ついては、特に社員の個人事業的な性質が強いという発想から、設立時には商
号にその個人名を用いることを義務付けたのに対し、株式会社は株主が多数に
なり、また、株式が譲渡されることを想定したため、異なる規律にしたのでは
ないかと想像したことを書きました。今日はそのつづきです。

 商法第11条 商人(会社及び外国会社を除く。(略))は、その氏、氏名
  その他の名称をもってその商号とすることができる(2項は省略)。
(旧商法第24条 商号は従来屋号と称するものを以てするを通例とすと雖も
 営業者の氏又は氏名を以てするも妨なし)

 これは個人商人に関する規定です(明治32年成立当時は第16条でした)。
この規定をみると、個人商人は、氏、氏名のほか、「その他の名称」、たとえ
ば屋号等も使用できるという規定です。資料を探したところ、この条文は、商
人が自由に商号を選定することができること、すなわち商号自由主義を規定し
た条文であることがわかりました。

 このほかにも、商号選定についてはいくつかの立場があるようです。たとえ
ば、商号真実主義といわれるもので、「商人自身の氏名または営業の実態と商
号を一致せること」を要求する考え方です(注1)。しかし、商法(旧商法も
含め)では、少なくとも、個人商人についてはこの考え方はではなく商号自由
主義が採用されたのだと思われます。それは、「わが国では江戸時代、町人は
姓氏をつけることは許されず、屋号で自らを表してい」たため(注2)、個人
商人が継続してその屋号を用いることができるようにということが理由だと思
われます。

 一方、旧商法に基づいて設立される合名会社については、設立前に使用して
いた屋号は想定されないとして商業真実主義の考え方が採用され、旧商法に基
づいて合名会社を設立する場合には、無限の責任を負う者として、社員の氏を
商号に使用しなければならないという規定をつくったのだろうと想像しました。

 しかし、合名会社を設立する場合も、個人事業の法人なりのようなケースも
あったでしょうから、従来から個人で使用していた屋号を使用したいというニ
ーズは存在したと思います。また、あらたに事業をはじめるために合名会社を
設立する場合にも、氏名以外の屋号等を使用したいというニーズもあったので
はないでしょうか。そこで、旧商法から商法へとかわるタイミングで、社員の
氏名の使用義務や退社後の続用の規定が削除され、商号自由主義を採用するこ
とになったのではないでしょうか(注3)。

 ただし、合名会社(を含む持分会社)は、実質的に個人事業的な性質が強く、
個人の氏名を会社の商号に使用するニーズは株式会社と比べて相対的に大きい
と思われます(注4)。そのため、前回ご紹介したコンメンタールに記載して
ある通説等の見解に基づき、社員が退社した場合は、持分会社に対して、自分
の氏若しくは氏名又は名称の使用をやめることを請求することができるように
しておく規定が置かれ、それが現在の会社法まで引き継がれているのではない
だろうか。そんなことを考えました。 

 注1)山下眞弘『やさしい商法総則・商行為法第三版補訂版』(法学書院)
  30頁
 注2)遠藤喜佳・松田和久『商法総則・商行為法【改訂版】』(税務経理協
  会) 28頁。なお、同書によれば、個人商人が江戸時代から使用してい
  たその屋号がそのまま商号に引き継がれたものもあるそうです。「松坂屋」
  や「大丸」等が例としてあげられていました。
 注3)「明治維新後、人々がすべて姓氏を称することが可能となってからは、
  商人は自己の氏名をもって商号とすることもでき、この屋号を用いる習慣
  は、しだいにその氏名やその他の名称と共に商号の地位を獲得するように
  なったのです」(遠藤喜佳・松田和久 前掲28頁)
 注4)参考までに、旧商法では当初、合名会社の社員の人数は2人以上7人
  以下とされ(旧商法第74条)、一方、株式会社の株主は7人以上(旧商
  法第156条、230条)とされていました。合名会社の社員の人数の上
  限は明治26年の改正で削除されましたが、株式会社の株主の人数の下限
  は、そのまま商法に引き継がれ、株主が7人未満となることは解散事由と
  されていました(明治32年商法第221条3号、昭和13年改正で削除)。
  持分会社は実質的には個人事業等であることを想定し、株式会社は個人か
  らは独立したひとつの事業体であることを想定していたのだろうと考えま
  す。

(お知らせ)
 株式会社が合同会社を作り代表社員に就任する例が増えています。その際に
職務執行者を複数にすることも多く、その就任・辞任登記は実に複雑です。商
業登記倶楽部の名前で金子先生を中心にして「登記情報」6月号に「職務執行
者複数の変更登記」という論文を投稿していますので、ぜひ、ご参照ください。


2019.05.31(金)【商号変更の請求(前編)】(仙台・立花宏)

 あいかわらず、合同会社について調べており、その関連の投稿です。といっ
ても、今回は雑感というか、漠然とした疑問点のお話しで、とりとめのない内
容になると思います。また、すこし長くなりますので、前編と後日の後編に分
けさせていただきます。どうかご容赦ください。

 会社法第613条に、以下の条文があります。
「持分会社がその商号中に退社した社員の氏若しくは氏名又は名称を用いてい
るときは、当該退社した社員は、当該持分会社に対し、その氏若しくは氏名又
は名称の使用をやめることを請求することができる」

 たとえば、私が他の方と共同して、「合同会社立花」という商号の合同会社
を設立したとします。後日、事情があり、私がその合同会社を脱退(退社)し
た場合に、商号に立花を使用するのはやめてくださいと請求することができる
という内容です。

 この条文の趣旨について、手元のコンメンタール(注1)の解説を見ると
「会社の商号中に退社した社員の氏等が使用されている場合に商号を変更しな
いで放任しておくときには、退社した社員には不作為による自称行為があると
して自称社員の責任(略)を負わされるおそれがあるため」というのが通説と
のことでした。なお、同書によれば、その他に「退社した社員が自己の氏等を
使用して同様の事業を営もうとする場合に、類似の商号として逆に会社から使
用の差し止めを受ける(略)おそれがあること」も本条が設けられた趣旨であ
るという見解もあるようです。
 
 ただ、それが本条の趣旨であれば、株式会社についても同様の条文が設けら
れてもよいのではないかと思えました。それを意図したのかどうかはわかりま
せんが、同書によれば、「合名会社における社員の地位の特殊性を考慮して、
特別の規定を置いたもの」という見解もあるそうです。
 
 過去の条文を調べてみると、会社法の前の商法にもこれに相当する規定(商
法第92条)があり、条文番号には変更がありましたが、会社法の前の商法の
成立時(明治32年)から存在する規定でした。

 そこまで調べてみたのですが、結局、なぜ持分会社にだけそうした規定があ
るのかがはっきりせず、すっきりしません。そこで、参考までに、明治32年
成立の商法の前の商法(以下、「旧商法」という。)も確認してみました。こ
のあたりの商法改正等の歴史については、本欄で「戦後商法のあゆみ」を連載
されている鈴木龍介先生が「登記研究」(テイハン)に「商業登記の変遷」を
連載されており、旧商法から商法への時期については、851、852号にわ
かりやすい解説がありますので、ぜひ、ご参照いただければと存じます。

 条文を調べてみると、旧商法に、以下のような規定があるのを見つけました。
なお、以下の条文は、明治26年改正前のものです。

合名会社関連
 第75条 商号には総社員又は其1人若くは数人の氏を用いこれに会社なる
  文字を附す可し(2項は省略)
 第76条 社員の退社したる後と雖も従前の社名を続用することを得但退社
  員の氏を商号中に続用せんとするときは本人の承諾を受くることを要す

合資会社関連
 第139条 商号には社員の氏を用ゆることを得す但無限責任社員の氏はこ
  の限りに在らす(以下、略)

 一方、同じ旧商法には、株式会社について、次に条文がありました。
 第173条 商号には株主の氏を用ゆることをえす又商号には株式会社なる
  文字を附す可し
 
 おそらく、旧商法では、持分会社のうち合名会社については、特に社員の個
人事業的な性質が強いという発想から、少なくとも設立時においては、商号に
その責任を負うべき個人名を用いることを義務付けたのに対し(注2)、株式
会社は株主が多数になり、また、株式が譲渡されることを想定したため、異な
る規律にしたのだろうと思いました。しかし、条文をみていくと、さらに気に
なることが出てきました(つづく)。

 注1)神田秀樹編『会社法コンメンタール14 持分会社〔1〕』(商事法務)
   276頁以下
 注2)そもそも、「合名」という言葉は、「責任を共同で負うために名を書
   き連ねること」という意味なのだそうです。本コラムの執筆にあたり、
   金子先生から教えていただきました。「合名会社」という名称は、そこ
   からきているのでしょう。


2019.05.30(木)【会社の構造(所有と経営の関係)】(金子登志雄)

 報道のトランプ祭りは私には異様な光景に映りました。ある落語家が「政策
と弁舌で渡り合い、煙たがられ、ゴルフさえ一緒にしたくないと言わせてこそ、
我が国の代表ではないのか」と述べていましたが、これが政治家を評価する世
界標準の見方でしょう。

 日本では相手と親しくなることが外交だと思う人が多いようです。日本の国
益を守ろうとしたため米国に敬遠された鳩山さんは、日本のマスコミにバッシ
ングされました。しかし、親しくなるということは相手からみて「いい子」に
なることに通じますから、参院選後の日本の農業が心配です。トランプさんの
「8月には大きな発表がある」との説明は、そういうことでしょう。

 さて、いつもの会社法の話題に戻りますが、合同会社の理解で勘違いしやす
いのは、つい慣れている株式会社の仕組みを前提に思考してしまうことです。
株式会社は所有(株主)と経営(取締役等役員)が分離しており、合同会社は
分離していないという決定的かつ本質的差があります。

 会社の条文でいうと次です。
----------------------------------------------------------------------
(株式会社)
326条1項:株式会社には、一人又は二人以上の取締役を置かなければなら
 ない。
329条:役員(取締役、会計参与及び監査役をいう)及び会計監査人は、株
 主総会の決議によって選任する。
(合同会社)
590条1項:社員は、定款に別段の定めがある場合を除き、持分会社の業務
 を執行する。
591条1項:業務を執行する社員を定款で定めた場合において、………
----------------------------------------------------------------------

 つまり、株式会社では企業所有者によって構成される株主総会が取締役等を
選任する経営委託型であるのに対し、合同会社では社員直営型で、しかも社員
は当然に業務執行権を有しますので、社員のうち一部に委ねるには、社員権限
の制約になりますので、定款でしかできません。

 会社の代表の決め方は次です。
----------------------------------------------------------------------
349条3項:株式会社(取締役会設置会社を除く。)は、定款、定款の定め
 に基づく取締役の互選又は株主総会の決議によって、取締役の中から代表取
 締役を定めることができる。
599条3項:持分会社は、定款又は定款の定めに基づく社員の互選によって、
 業務を執行する社員の中から持分会社を代表する社員を定めることができる。
----------------------------------------------------------------------

 持分会社には社員総会というものがありませんし、そもそも代表社員は選任
するものではないので、株主総会に対応した規定が存在しません。

 上記の規定の特徴は、株式会社にあっては定款で定めれば非所有者の互選で
代表取締役を定められること、合同会社にあっては定款で定めれば社員の過半
数の同意で代表社員を定められることです。定款で定めるには原則として総社
員の同意を要しますから、本規定は実質的には多数決によることを認めたとい
う効果があります。

 合同会社の定款で「業務執行社員の互選によって代表社員を定める」と規定
しても、業務執行社員という社員の一部に代表社員を定める権限を持たせただ
けで社員と離れた経営側の互選に委ねたわけではありません。


2019.05.29(水)【引き続き報酬雑感】(藤沢・酒井恒雄)

 私も、報酬について少し書いてみたいと思います。

 古山先生が、新設分割で別の先生の見積もりが3万円だった件について書か
れていましたが、結局、その先生は計画書の確認は一切せず、登記申請のみと
いうオチがありました。

 これとは逆と言いますか、同僚に聞いたちょっと可哀想なM&A絡みの報酬
に関するお話しをご紹介します。

 依頼人は弁護士だったそうで、先生は登記だけでいいから見積もりを出して
と言われ、その言葉を信じて見積もりを出して受託したそうです。ところが、
いざM&Aの手続がスタートしたところ、この弁護士はM&A初経験であるこ
とが発覚して、スケジューリングもメチャクチャ、具体的な債権者保護手続の
方法を知らない、当然事前の備え置き書類も作成していないということで、結
局、その同僚が全面的にフォローする形で進めることになってしまったそうで
す。

 その苦い経験から、登記だけと言われても、一旦は司法書士として想定しう
る手続は具体的に見積もりを出し、そこから先方で手続するものを明確に決め
た後に、その作業分の報酬等を引いて最終的な見積もりを出すという方法に変
えたそうです。

 私も、そこまで悲惨な経験ではありませんが、当初、依頼人側で行うと言っ
ていた官報公告に関して、「登記の添付書類なので、先生がやってください。」
などと急に言われ、スケジュールもギリギリだったことから、想定外の無料サ
ービスをしたことがあります。以来、知れている債権者への個別通知の書面を
封筒にセットする状態まで準備することも想定して、見積もりを出しています。

 結構費用がかかるのですね・・・と言われることもありますが、具体的にど
のような作業のお手伝いをするのか説明すると、殆どの方は理解してくれます。

 たしかに、あの先生は高額な報酬を要求してくるといった噂が流れてしまわ
ないか、とか、他の人に仕事をとられて二度と依頼が来ないのではないかと、
不安な気持ちになることもあると思います。しかし、そこは踏ん張りどころ。
自分を含め、他にも頑張って商業登記の分野で活躍している人達がいることを
思い出して、真の専門家として提供するサービスの価値は、このくらいだとい
う姿勢を貫くことも必要かと思います。


2019.05.28(火)【戦後商法のあゆみ⑫ 昭和49年改正~その2~】
                          (東京・鈴木龍介)

 今回は「戦後商法のあゆみ」の12回目として、昭和49年商法改正の続き
です。

2.概要
 日本税理士会連合会等による改正反対運動も時間の経過とともに鎮静化の方
向に向かったこともあり、昭和48(1973)年3月に改正法案が国会(第
71回・特別会)に提出されたものの審議が難航し継続審議となり、同年12
月に召集された国会(第72回・常会)の中で昭和49(1974)年3月に
ようやく可決・成立をみた(昭和49年4月2日法律21号/以下、
「昭和49年改正商法」という。)。

 昭和49年改正商法の骨子は監査制度の大幅な見直し―監査役の権限の強化
―であったわけだが、その他の主な改正項目としては、
 ⅰ)商業帳簿の整備(昭和49年改正商法23条・32条・34条・281
  条・419条)、
 ⅱ)累積投票の絶対的排除の許容(昭和49年改正商法256条ノ5)、
 ⅲ)中間配当の許容(昭和49年改正商法293条ノ5)、ⅳ)休眠会社の
  整理の新設(昭和49年改正商法406条ノ3)
などがあげられる。

 昭和49年改正商法と同時に株式会社を監査の観点から区分した「株式会社
の監査等に関する商法の特例法」が制定された(昭和49年4月2日法律22
号/以下、「監査特例法」という。)。その背景としては、本来、大企業の利
用が想定されている株式会社を日本では中小・零細企業も用いており、とりわ
け監査制度の仕組みをすべての株式会社を一律に取り扱うことは合理的とはい
えず、中小・零細企業の負担を考慮したものであるとされる。

 昭和49年改正商法は、監査制度とそれに密接に関わる前述ⅰ)商業帳簿お
よびⅲ)中間配当に関する改正部分を除き、公布日である昭和49(1974)
年4月2日から施行され、監査特例法を含む監査制度等の改正は同年10月1
日から施行された。

3.商業登記に関する規律等
(1)概説
 昭和49年改正商法における商業登記制度の大きな見直しとしては、休眠会
社の整理に関する規定の新設があげられる(昭和49年改正商法406条ノ3)。
これは、最後の登記をしてから5年を経過している株式会社(休眠会社)につ
いて、法務大臣が職権で解散させるというものである。ただし、職権解散とな
ってから3年以内であれば会社を継続することができるとされた。

 当該規定が導入されたのには、長年事業活動を行っていないにもかかわらず、
解散登記を行うことなく放置されている休眠会社が相当数あり、商号選定の際
に支障をきたすとともに、登記行政事務の効率化を阻害しているという法務省
からの要請が背景にあったとされる。また、昭和25年改正商法により額面株
式の一株の金額が500円となったものの、同改正前に設立された株式会社は
一株の金額を50円とすることが認められていたことから、休眠会社を被合併
会社として、いわゆる50円株式の発行を可能とするといった脱法的な行為を
抑止するという側面もあったとされる。

 昭和49年10月1日時点で、最後の登記をしてから10年が経過している
株式会社は同日に解散したものみなされ(昭和49年改正商法附則13条)、
当時、約100万社の株式会社のうち約96,000社が休眠会社に該当し、
最終的に約68,000社が職権解散となったことから、本規定は一定の成果
をあげたと評価できよう。
(もう1回続く)


2019.05.27(月)【司法書士報酬雑感】(金子登志雄)

 新設分割(設立と変更)で司法書士報酬が3万円……(金曜日の本欄)、私
もその司法書士さんに依頼したくなりました。信じがたい破格の報酬額です。

 こういうところは、増減資でも組織再編でも「何でも3万円」にして顧客を
呼び込んでいるのではないでしょうか。聞くところによると問い合わせや質問
は一切禁止のようですが、要するに聞かれても答える能力がないのでしょう。

 私の経験ですが、親子合併の際に、私は子会社側の司法書士、親会社には親
会社の司法書士A事務所がついており、親会社が双方に見積もりを求めたよう
で(私は知りませんでした)、私は都会地の商業登記専門司法書士事務所の相
場金額(うん十万円)にしたところ、会社から「A事務所は6万円(合併3万
円、合併解散3万円)だから、先生のことろは高すぎるのではないか」といわ
れてしまいました。

 推測ですが、A事務所は合併登記の経験がなく、報酬の相場も知らなかった
ので、昔の報酬規定(合併で増加する資本金額次第で報酬が計算されるひどい
内容のもの)を基準に、親子の無増資の合併だから、どう計算しても3万円程
度と計算したのでしょう。また、経験がないほど安い報酬額にします。無意識
に責任回避をしているのです。それにしても、合併の報酬を会社設立のそれよ
り低く設定するなどという非常識な報酬設定に腹が立ちました。

 私も古山さんと同じく、少々ムカッとして「どうぞA事務所にご依頼くださ
い。私はこの仕事にプライドを持っており適正な報酬額と思っていますので値
下げはいたしません」と申し上げましたところ、「この先生はちょっと違う」
とでも思ったのか、上司の判断で最終的には私のところに来ました。

 報酬はほんとに難しいです。タレントの場合は講演を頼むと、その方の知名
度次第で10万から300万円程度の幅がありますし、アメリカの元大統領ク
ラスになると、1000万円を超えます。弁護士の場合も「格」によって大き
く報酬額が異なります。

 司法書士の場合はベテランも新人も大差ありません。司法書士会もそれを当
然だと感じている雰囲気があります。確かに出来上がりだけみれば、ベテラン
も新人も同じですが、顧客の安心感・信頼感には相当な差があるはずですから、
そのうち司法書士報酬も徐々に変化していくことでしょう。

 ネットでも高額収入者が仕事量と年収は比例し、多忙で旅行もできないと嘆
いていましたが、少なくとも企業法務の世界では、そのような比例関係はあり
ません。仕事の質(登記というゴールに無事に達することができるかという課
題の解決能力)が問われ、誰でもできる仕事ではないからです。

 これに関連して、大昔に読んだある本にこんなことが書いてありました(記
憶に基づくものであるため、勝手に脚色しています)。

 ――ある裕福な家庭で高価な電気機器が壊れたので、著名な業者に修理を依
頼したところ、何とあっさり5分で不具合の原因をみつけて直してしまいまし
た。修理代として5万円を請求されたその家の主は「たったの5分で5万円、
ふざけるな」と反応しましたが、修理屋さんは「お客様、不具合の原因を5分
でみつける専門能力は評価していただけないのでしょうか。普通の修理屋さん
では1日かかってもみつけられず修理の日当が嵩んできますが……」――。


2019.05.24(金)【これからの司法書士を考えてみる】(東京・古山陽介)

 最近、自分の仕事について整理する機会がありました。また、本欄「企業法
務司法書士(5/17)」や「本物を目指そう(5/23)」で金子先生が「司法書士」
について、書かれた記事を拝見して、自分なりにあれこれ考えてみました。

 私の業務の中心はもちろん商業法人登記関係手続についてでございます。日
々、様々な相談や依頼があります。一般的な設立や役員変更もあれば、IPO、
M&Aや事業承継に関連した手続の相談など幅広くあります。

 相談や依頼を受けるに際して、いくつか自分の中での決めごとのようなもの
があります。決めごとの例として、次の2つについて触れたいと思います。

 ・価格競争をしかけてきた依頼は断る(他の先生にお譲りする)こと。
 ・IPO、M&Aや事業承継等、複雑な事案については、自分はあくまでも
  手続面での分野のみサポートすること。

 まず価格競争ですが、これに巻き込まれると、依頼主の満足は「安い」の一
点のみで、業務の中身はほとんど見てくれませんし、ただ徒労で終わります。
おそらく「下請け」と感じる司法書士の方は、この価格競争に巻き込まれてし
まっているように思います。

 また、安価な案件に限って、思わぬところで、依頼主とトラブルになること
もあります。

 以前あった例としまして、新設分割の案件で、価格競争があり、依頼主が私
の他にも見積もりをとっていて、別の先生が3万円の見積もりを提案してきた
ので、その先生にお願いすると断られたことがありました。

 ところが、後日、その依頼主から電話がかかってきて、その先生は計画書の
確認は一切せず、登記申請しかしないと言われて、困っているから、なんとか
してくれとのことで、結局、当初自分が提案した見積金額で受託し、そのクラ
イアントからは現在も定期的に依頼を受けています。当時のクライアントの担
当には、安いとはそういうことですよと、こちらから注意しました。

 次に、複雑事案についての線引きですが、これは重要です。若手の司法書士
にとって、IPO、M&Aや事業承継の分野は輝いて見えるようで、案件のコ
ーディネートや仲介等までもやれてしまうのではと考えてしまう人もいるみた
いです。

 ただ、金子先生も書いているとおり、司法書士が手当できる分野・持ってい
る情報はかなり限定的で、迂闊になんでもやると言ってしまいますと、痛い目
に遭うでしょう。

 自分もM&Aの事案では、基本合意書の作成であったり、リーガルDD(デ
ューデリジェンス)の一部であったり、クロージングの立会いに出向いたりす
るケースもありますが、クライアントに対しては、やれること(責任分野)を
明確に示して、クライアントが理解をした上で携わるようにしています。

 安い仕事もしない、M&A等も手続のサポートだけだと、仕事の幅は狭くな
るのでは? と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。

 はじめてのクライアントの会社の定款、謄本、株主名簿を読み込んで、登記
漏れ、定款の誤り、別表2と株主名簿で保有株式数が違っていることを指摘し
たりすること、会社法の手続(例えば定時総会)のスケジュールを作成してあ
げること、合併手続のサポートをすること、種類株式の設計、導入後の総会等
の実用サポートをすること、他にもあげるときりがありませんが、一つひとつ
の依頼や相談をコツコツとやることの積み重ねで、幅はいつの間にか広がって
いるものです。

 最近は、AIによって司法書士の仕事がなくなるかもしれないと怖がってい
る人、焦っている人、煽っている人をけっこう見かけますが、むしろ、人を雇
わなくても済むようになり、個人事務所にとっては追い風の時代になるのでは
と思います。

 何より、普段の積み重ねができていれば、どんな時代になったとしても、そ
の時代に適合して生きていけるのではないでしょうか。私もいつでも必要とさ
れる司法書士になるべく日々奮闘中です。


2019.05.23(木)【本物を目指そう】(金子登志雄)

 ネットサーフィンで、司法書士数十名がアンケートに答えて本音でその生活
ぶりを語るサイトに出会いました(あえてアドレスは書きません)。

 気になったのは、司法書士業は下請け仕事が多いと嘆いている人が意外に多
いことでした。これが理由で誇りも生きがいもないという人もいましたが、執
務姿勢につき、とんでもない勘違いをしているのではないかと思いました。

 少なくとも収入の多寡にかかわらず私の周囲にはそういう嘆きを口にする人
は一人もいません(いたら、私とは付き合っていないでしょうけど)。みな、
専門家として顧客の相談を受けている立場で使われている意識は持っていない
はずです。

 不動産登記を意識して不動産屋や銀行の下請け仕事と表現したのかもしれま
せんが、てきぱきと仕事し、電話相談でも即答し、この人は本物だ、役立つ人
だと評価されれば、接待で飲みに連れて行かずとも必ず仕事が来るものです。

 顧客は本物を求めているのです。たまには報酬の安い司法書士やフットワー
クのよい若くて元気な司法書士に浮気することもありますが、いざ勝負という
重要な仕事の場合には確実性と安心を求めて本物のところに来ます。

 下請けの代書業の作業仕事から頭を使う代文業あるいはコンサル業に変えま
しょう。私は文章を工夫するのが好きですから、単なる重任の役員変更でも各
社ごとに、その時々に応じてオリジナルを作成しています。議事録のひな形に
穴埋めするなど情けないことは過去に1度もしたことがありません。これが私
のプロとしての矜持(きょうじ)です。

 高齢になると分かりますが、人の幸せ・生きがいは、自分が社会から必要と
されている存在だと思えることです(定年退職後に仕事を失い急に老いるのは
このためです)。幸い、司法書士業は人相手であり、さまざま相談され、頼り
にされることの多い仕事です。

 営業下手でいいのです。相性の合わない客は1回限りでしょうが、知識と能
力と人柄で信頼を勝ち得れば時間はかかっても、顧客が顧客を紹介してくれて
リピーター客(常連客)が増えてきます。また、同業者も不得手な仕事を回し
てくれます。

 偉そうなことを書きましたが、司法書士業はつまらないと嘆く前に、まずは
心構えを変えてみると、みえる景色も変わってくることを知ってほしかっただ
けです。とりあえずは、嘆く司法書士とは縁を切り、元気はつらつな司法書士
と友達になりましょう。


2019.05.21(水)【反省】(藤沢・酒井恒雄)

 前回、雑な文章での連絡には気を付けるとか、時間がないときでも文章の見
直しはすべき等と、自分自身への言い聞かせを兼ねた投稿をしたにも関わらず、
早速、反省する事態となってしまいました。

 メールではなくFAXの文章だったのですが、法務局に相談したいことがあ
ったため相談票を送ったところ、回答に困ると苦言を受けてしまいました。

 医療法人の解散についての相談だったのですが、解散事由が、医療法55条
1項1号の「定款をもって定めた解散事由の発生」であるにもかかわらず、そ
の法人の具体的な解散事由が何であるか、すっかり抜け落ちている文章を送っ
ていました。

 お詫びをすると共に、具体的な定款条項を口頭で補足して、相談は完了しま
した。ちなみに、医療法55条1項1号の解散事由は登記事項であるため、謄
本を見れば一目瞭然なのですが、その謄本も添付していませんでした。一体何
をやっていたのやら?

 余談ですが、私は、この55条1項1号による解散の登記原因は、「年月日
定款をもって定めた解散事由の発生による解散」等と書くものと思っていまし
た。

 しかしこれは、定款の解散事由を具体的に書き、例えば、「診療所のすべて
を廃止したとき」が解散事由であれば、登記原因は、「年月日診療所のすべて
を廃止したことにより解散」等となるそうです。

 これを聞いたとき、ふと、余計なことが頭に浮かんできました。仮に定款の
解散事由として、「社員の数が5名を下回った場合で、かつ、理事の全員が同
意し、監事が異議を述べなかったとき」とあった場合には、やはり登記原因も
定款規定に忠実に書くことになるのでしょうか?

 ちょっとクドイ謄本が出来上がってきそうです。もっとも、このような規定
を見たわけではなく、都道府県知事の認可が出るかも甚だ疑問ですが、もしも、
と考えるとモヤモヤ感が消えなくて困っております・・・・・。


2019.05.21(火)【戦後商法のあゆみ⑪ 昭和49年改正~その1~】
                          (東京・鈴木龍介)

 3回ほどお休みした「戦後商法のあゆみ」ですが、今回は11回目として昭
和49年商法改正を取り上げます。なお、少し長くなってしまったので2回に
分けて投稿させていただきます。

1.背景等
 いわゆる、昭和40年不況による大型倒産の背後には粉飾決算が潜んでいた
ことから大きな社会問題となった。そこで、大蔵省は昭和40(1965)年
9月から有価証券報告書を重点的に審査したところ、相当数の粉飾決算が明ら
かとなった。その結果を重く受け止めた大蔵省は当該監査を担当した公認会計
士を処分するとともに、公認会計士法の改正を行い(昭和41年6月23日法
律85号)、日本公認会計士協会を強制加入の特殊法人化し、監査法人制度
(第1号は太田哲三事務所)を創設した。

 一方、法務省でも商法における監査制度の見直しの必要性を認識し、昭和
41(1966)年11月から法制審議会商法部会(商法部会)での監査制度
の検討を開始した。

 なお、昭和42(1967)年3月の商法部会で配布された「監査役制度の
問題点」の中では以下の4つの指針案が示された。
 A案 監査役の権限を会計監査限定としたまま権限強化
 B案 監査役に業務監査権限を付加
 C案 取締役の選解任権を有するドイツ型の監査役会制度の導入
 D案 監査役を廃止してアメリカ型の取締役会での業務監査権限の強化

 その後、商法部会では、東京商工会議所・大阪商工会議所のアンケートの結
果等を踏まえ、前述のB案を採択することとし、それに基づく見直しの検討が
進められた。法制審議会は商法部会で取りまとめた案を踏まえ、昭和45
(1970)年3月に「商法の一部を改正する法律案要綱」を法務大臣に答申
した。

 当該要綱に基づく法案は国会(第63回特別国会)に提出されなかったこと
から、あらためて法制審議会では昭和46(1971)年3月に従前のものに
4項目を追加した要綱を法務大臣に答申した。しかしながら、日本税理士会連
合会を中心とする改正反対運動を受けてか、その後も改正法案は国会に提出さ
れなかった。

 監査役のための調査研究団体である「日本監査役協会」が昭和49
(1974)年5月に法務大臣の許可を受け、当時の民法法人として設立され
た(平成23(2011)年9月公益社団法人に移行)。なお、初代会長には
当時の商法部会の部会長である商法学者の鈴木竹雄が就いた。

 この時代の日本は、昭和45(1970)年に大阪万国博覧会、昭和47
(1972)年に札幌冬季オリンピックの開催等高度経済成長の中に身を置い
ていたものの、そのひずみともいえる公害が大きな社会問題となっていた。

 世界に目を転じると、1971年に米国のニクソン大統領がドルの金兌換を
停止することを発表し、いわゆるドル・ショックとして世界各国に影響を与え、
その後、各国の貨幣と米ドルとの固定為替レートは変動為替レートへと移行し
ていった。

 1973年には第4次中東戦争を背景に中東産油国の石油生産削減戦略を起
因とする、いわゆるオイル・ショックにより米国や日本をはじめとする先進工
業国に大きな打撃を与えた。また、ベトナム戦争の泥沼に陥っていた米国は、
国内外での反戦運動が高まる中、1973年にパリ和平会議での協定が成立し、
ベトナム戦争は終結することとなった。


2019.05.20(月)【定時株主総会招集通知】(金子登志雄)

 まだ5月だというのに、3月決算の上場会社では6月下旬の定時株主総会の
招集通知状の作成で多忙のようです。議案内容のチェック依頼が先週から増え
てまいりました。

 招集通知は総会日の2週間前までに発送すればよいのですが、情報開示の重
要性が高まってきている今はできるだけ早く発送しようとする会社が多いので
す。

 書式も若干変化してきました。
1.従来は「表紙→事業報告書→参考書類(議案の説明書)」の順序が圧倒的
 多数でしたが、今は「表紙→参考書類→事業報告書」の順序がだんぶ増えて
 きま した。株主に関心のある部分を前に置いたのでしょう。

2.取締役7名選任議案でいうと、従来は候補者ABCDEFGの略歴が順序
 どおり掲載されているだけでしたが、最近は、その前に候補者一覧表が追加
 され、再任か新任か、社外である旨などが記載されるようになりました。登
 記の面からは一目瞭然で助かります。候補者数の少ない監査役については一
 覧表までは 作られていないようです。

3.カラー印刷が増えてきました。2色刷り程度ならともかく、多色刷りだと
 費用も嵩むため、株主側は「費用を節約せよ」という気持ちなのか、「分か
 りやすくて歓迎」というのか興味のあるところですが、儲かっている会社の
 証として歓迎してよいのでしょう。

 株主の立場からいえば至れり尽くせりですが、候補者の略歴部分が写真付き
にするところまで増えてきたのには、顔の公表につき候補者はどんな気持ちで
いるのだろうかと気になっています。さすがに登記では旧姓併記でも、結婚し
ているかどうかは株主には無関係ですから、招集通知では戸籍上の氏の記載ま
ではしていません。ビジネスネーム優先です。

 招集通知発送後には各社のホームページに招集通知が掲載されますので、ぜ
ひご覧ください。特に、定款変更部分が勉強になります。来年の4月の商号変
更なのにもう決議しているじゃないか、目的変更の旧新対照表はこうやって作
るのか、監査等委員会設置会社に移行するには、こういう定款変更が必要なの
かなど、登記の先例と同じように役立ちます。監査役選任議案で、任期が短縮
される補欠の場合には必ずその旨を記載していることもご確認ください。


2019.05.17(金)【企業法務司法書士】(金子登志雄)

 きんざい「登記情報」最新号(5月号)で、鈴木龍介さんの「中小企業とと
もに歩む企業法務のピントとヒント」という連載が始まりました。これが結構
面白いのです。登記官の息子で会社勤務経験のない鈴木さんがいかに企業法務
対応の司法書士になったかの体験が告白されています。

 この面では私も先駆者の一人ですから(M&Aコンサルタント会社の法務担
当歴20年、同時にベンチャー企業の管理部長、同社の上場を経験等)、少々、
企業法務について説明しておきましょう。雑感にすぎませんが………。

1.大会社には「法務部」がありますが、この仕事の中心は取引契約のチェッ
クであり、登記などはほんの一部に過ぎません。また、株主総会の運営につい
ては別部門にしているところが多いようです。したがって、会社とはこういう
ところかとサラリーマン生活の悲哀を経験しておくことは会社相手の業務では
役立つでしょうが、法務部勤務の知識が司法書士独立開業後に役立つとは必ず
しもいえません。

 法務部勤務よりも法人相手の営業部経験のほうが社会勉強には役立ちます。
数年ですが信託銀行でこれを経験させてもらったことは今の私の財産です。

 法務部の存在しない中小企業を顧客にして、そこの法務部代わりを目指すこ
とは賛成ですが、取引契約のチェックなどは、業界ごとに独特なルールや用語
があり、そのマスターに時間がかかりますので、困難だと考えます。やるなら、
業種を選ぶべきです。

 売掛金の回収のため内容証明作成や簡裁への訴状提出など裁判事務がお得意
な方は、その部分では活躍することができるでしょうが、金融関係でない限り
仕事量がどの程度あるのかは不明です。

2.司法書士が使う企業法務は、おそらくM&Aや事業承継、IPO(上場)
のことでしょうが、株主総会の運営や登記等に関与することを超えて、何でも
屋の法務アドバイザーを目指すことは私は勧めしません。荷が重すぎます。

 私が事業承継をテーマとするセミナー講師を断っている理由でもありますが、
成功確率が非常に低く、へたをすれば恨みを買うことになります。M&Aでは
最終段階で家族や役員の猛反対でどんでん返しがよくありますし(業者は着手
金や企業評価料を得ることでリスクを軽減しています)、事業承継も親より子
が先に死亡したり税制改正など不確定要素が多すぎます。IPOもだいぶ緩和
されたといっても依然として狭き門です。

 したがって、これらの株主総会の運営や登記等の「手続」に関与し、顧客か
ら「手続の専門家」として評価を受けることを目指すのは大賛成ですが、その
一線を越えると、高収入を得られるかもしれませんが(上場しているM&A仲
介会社3社の社員平均年収は全社とも1000万円を超えます)、いつか責任
問題に発展しかねませんので、ご注意ください。

 M&Aや事業承継はともかく、都会にはIPO(上場)を目指す企業を顧客
にし、度重なる株式の発行や新株予約権の発行、大企業との資本提携等の手続
を主業務とする新世代の司法書士も最近はぼちぼち現れてきました。企業法務
だけで十分に生計を成り立たせているのですから、りっぱなものです。

 企業法務司法書士を目指すなら、こういう司法書士事務所に勤務し、経験を
積んでおくか、私のように、上場を目指すベンチャー企業の管理部長を経験し
てみるのもよいでしょう(役員なら司法書士とも兼任できます)。この業務は
机の上の勉強よりも課題解決のための実戦経験こそ重要です。


2019.05.16(木)【組織変更と同時の増資の可否その2】(金子登志雄)

 表題に関する月曜日の立花投稿ですが、2009年11月1日の「登記イン
ターネット」119号の相談事例で東京法務局が否定説で答えており、これが
現状の実務の運用になっていると、ある権威者の方から教えてもらった」と、
立花さんから連絡がありました。情報提供につき、立花さんともども御礼申し
上げます。

 これでは実務家としては従わざるを得ませんが、納得はしていません。否定
説採用の根拠は、会社計算規則37条が組織変更後の株式会社の資本金の額は
「組織変更の直前の持分会社の資本金の額」と規定していること、特例有限が
株式会社に移行する場合と相違し、組織変更でも同様に取り扱ってよいとの通
達も発出されていないことだそうです。

 しかし、前段については、会社計算規則は会計処理の方法についての規定で
あり、組織変更と同時の増資の登記を認めるかどうかとは無関係です。何より
も登録免許税法別表第1第24号(一)ホ及び同法施行規則第12条が、会社
計算規則の規定を前提の上で「組織変更をする会社の当該組織変更の直前にお
ける資本金の額」は1000分の1.5、これを超える部分は1000分の7」
と規定していることを無視するものです。

 後段については立花投稿にあるように、平成18年3月31日民商782号
通達に「組織変更による設立の登記と同様に」とあることを無視するものです。

 そもそも、この基本通達からも、東京法務局の「通達も発出されていない」
との説明(通達があれば肯定してよい読めます)からも推測することができる
ように、特例有限で認められたのは、組織変更で認められているので特例有限
でも認めるという思考の流れであり、組織変更で認められていなかったのなら、
特例有限でも認められなかったはずです。つまり、特例有限は当然の帰結であ
り例外ではありません。

 特例有限であえて肯定されているのは、登記が効力要件とされているため、
移行と同時の増資は困難だと思われかねないので肯定の説明がなされたのであ
り、登記を効力要件としない組織変更では当然に肯定されるから、文献にも触
れられていないのだと私は思っています。
 
 ・・・と主張したいのですが、合同会社時代に出資し出資額の全額を資本剰
余金にし、その後直ちに組織変更すれば増資の登録免許税を節約することがで
きるだけでなく、この議論を回避することができますから、私個人としては積
極的に東京法務局見解に異議を唱える気力が半減しています。

 ただ、中には資本金を大きくしたいという場合もあるでしょうから、何か機
会がありましたら、2009年当時と見解が変わっていないか、課税問題にも
影響するので再検討してほしいと質問してみるつもりです。


2019.05.15(水)【メールの文章】(藤沢・酒井恒雄)

 メールの文章は、なかなか難しいものです。決して相手を不快にさせる意図
がなくとも、読んだ側としては失礼だと感じることもあります。

 先日、ネットショッピングでエレキギターを買ったのですが、内蔵電池と接
続する部分のコードが断線している状態で商品が届きました。これでは音が出
ないことが明らかなので、断線している旨と商品の交換、もしくは返品をした
いという旨をメールで連絡したところ、こんな返事が返ってきました。

 「ギター出荷時には音出し検品を実施しており、異常がないことを確認した
うえで発送しております。ご指摘の件につきまして、外観から断線、破損があ
る状況でしょうか?
 ご確認の上ご返信お願い申し上げます。」

 この文章を読んで、みなさんはどう思われるでしょうか。

 私は、いきなり、お店側には落ち度がないという主張をされたように思いま
したので、一瞬、おでこにタコマークが浮かび上がりました。

 ここで返信をすると、感情的になってしまいますので、一旦心を落ち着かせ
ることにしました。冷静になったところでもう一度メールを読み返したところ、
ほかの文章から推測するに、単に文章を書くのが下手なだけのように思えてき
ました。

 淡々と状況の補足を返信し、返ってきたメールを読んだところ、やはりお店
側には保身の意図はなかったようです。「出荷時に検品を実施しており、異常
がないことを確認したうえで発送している。」という文章は、正規のルートで
販売・発送しているということを伝えたかったようでした。この下りが必要だ
ったのかという疑問もありますが、一番よくなかったのは文章の順番です。前
後を置き換えだけでも、印象が変わってきます。

 「ご指摘の件につきまして、外観から断線、破損がある状況でしょうか?ギ
ター出荷時には音出し検品を実施しており、異常がないことを確認したうえで
発送しております。
 ご確認の上ご返信お願い申し上げます。」

 ただ、これではまだ失礼な感じを受けますので、次のように書いたらよかっ
たのではないかと思いました。

 「ご指摘の件につきまして、外観から断線、破損がある状況でしょうか?ギ
ター出荷時には音出し検品を実施しており、異常がないことを確認したうえで
発送しておりますが、確認が不十分であったことも考えられます。状況につい
てもう少し詳しくお知らせ頂けますでしょうか。お手数ですがご確認の上ご返
信お願い申し上げます。」

 いかがでしょうか? これでかなり読む側の気持ちが変わってくると思いま
す。

 なんだか、文章作成・クレーム対策講座のようになってしまいましたが、こ
んな経験も反面教師ですよね。メールは手紙と違い、迅速に連絡がとれるので
便利ですが、つい時間をかけずに文章を書いてしまい、見直しもじっくりしな
いうちに送信してしまうこともあります。特に、予定の合間に返信するときは、
ついつい雑な返信メールを送ってしまう場合があります。改めてメールの文章
には気を付けたいと思いました。


2019.05.14(火)【組合と登記名義】(東京・鈴木龍介)

 前回は「認可地縁団体」をとり上げましたが、その派生的な感じで組合と登
記名義について、整理しておきたいと思います。

 町内会をはじめとする地縁団体等の権利能力なき社団は、原則として不動産
等の登記名義人になることはできませんが、同様に民法上の組合も法人格を有
していないということから、組合名での登記をすることは許されません(ちな
みに生協(生活協同組合)などは名称に“組合”という文言が入っていますが、
法人格を有するれっきとした法人ですので登記名義人となることができます。)。

 では、どのように登記をするかというと、組合財産は組合員の共有というこ
とで(民法668条)、組合員全員の共有登記名義となり、権利能力なき社団
のように代表者の名義とすることは許されないと解されています。

 一方で、民法上の組合の特例である有限責任事業組合(Limited Liability
Partnership=LLP)の場合、一部の組合員に業務執行の権限を集中させるこ
とはできないため、上記のとおり全組合員の共有登記名義ということになりま
す(平成17・7・26民二1665号通達(登記研究693号(2005年)
165頁~169頁)。

 同じく民法組合の特例である投資事業有限責任組合(Limited Partnership
=LPS)はどうでしょう。LPSの場合、無限責任組合員(=GP)と有限
責任組合員(=LP)で構成され、業務執行の権限はGPに専属し、LPが業
務執行をすることはないため、GP名義で登記することが許されてもよいよう
に思いますが、それについては否定的な見解があります(「カウンター相談
228 投資事業有限責任組合である不動産の登記について」登記研究765
号(2011年)155頁)。本来的には影の存在ともいえるLPも登記名義
人としなければならず、LPが多数いる場合には、その変動も含め実務的には
問題のある解釈だと考えます。

 ところで、LLPをLPSも通常の民法組合とは異なり、会社と類似した登
記が義務付けられています。法人格と登記名義という関係では一種の発想の転
換と一定の手当は必要ではありますが、LLPやLPS自体での登記名義を認
めることについて、不動産登記の公示の観点では一考してもよいのではないで
しょうか。


2019.05.13(月)【組織変更と同時の増資の可否】(仙台・立花宏)

 先日まで、10連休という長期のお休みが続きましたが、皆様はどうお過ご
しになられましたでしょうか。趣味といえるほどのものがない私は、相変わら
ず合同会社について考えていました。今は合同会社が趣味ということになるの
かもしれません。

 ところで、皆様は以下の設問をどうお考えになりますか。

【設問】--------------------------------------------------------------
 資本金の額が100万円の合同会社を株式会社に組織変更することにした。
社員があらたに出資し、組織変更と同時に増資の効力を発生させ、組織変更後
の株式会社の資本金の額を200万円とすることは可能か。また、可能である
場合、組織変更による株式会社の設立登記申請の登記事項に増資後の資本金の
額を記載することは可能か。
----------------------------------------------------------------------

 インターネット等で検索すると、否定する見解がほとんどのようでした。似
たようなケースとして、特例有限会社が株式会社に移行する場合があげられる
でしょう。この場合は株式会社への移行を条件として増資することは可能で、
増資後の資本金の額等を直接株式会社の設立登記の登記事項として記載するこ
とも可能とされています(注1)。登記手続上は、特例有限会社の解散と株式
会社の設立登記の形式をとりますが、特例有限会社も株式会社であり、実体法
上は株式会社の商号(定款)変更にすぎないことが理由と思われます。

 組織変更と同時の増資を否定する見解は、組織変更はこれと異なり、持分会
社である合同会社から株式会社へと会社の形態を変更することであり、単なる
商号(定款)変更とは異なることを理由としていると思います。

 また、会社計算規則第34条第1号で、組織変更後の株式会社の資本金の額
は、組織変更直前の持分会社の資本金の額としていることも、組織変更と同時
の増資を否定する見解を補強するものといえるのかもしれません。
 
 私自身は経験がなかったため、どうなのだろうかと最初は迷いました。しか
し、いろいろ考えているうちに、特例有限会社と同様に可能とする見解もあり
えるのではないだろうかと思いはじめました。というのは、組織変更も会社法
上の位置づけは定款変更の一種と考えられるからです(注2)。

 また、組織変更の効力が発生するのと同時に、増資という別の法律行為の効
力を発生させることができないと考える必然性もないように思えました。前記
会社計算規則第34条第1号の規定も【組織変更を原因として】と貸借対照表
上の財産の評価や純資産の内部の変更をすることができないことを定めている
だけで、組織変更の効力発生と同時に他の法律行為の効力を発生させることま
でを否定するものではないのではないでしょうか。
 
 そうしているうちに、平成18年3月31日民商782号通達第3部第3、
2(2)に次の記載があることを見つけました。

 「1の定款の変更(特例有限会社の株式会社への商号変更)と同時に、資本
金の額の増加その他の登記事項の変更が生じた場合において、移行による設立
の登記の申請書に当該変更後の登記事項が記載されたときは、【組織変更によ
る設立の登記と同様に】、これを受理して差し支えない」(()内及び【 】
は筆者による)。

 すくなくとも、これを読む限りでは、前記通達も組織変更と同時の増資、そ
して、組織変更による株式会社の設立登記申請の登記事項として、直接、増資
後の資本金の額を記載することを肯定されるように思えます。

 実際の登記手続ではどのように扱われているのでしょうか。まだまだ、私の
合同会社への興味は尽きそうにありません。 

注1)平成18年3月31日民商782号通達
注2)神﨑ほか・360問 475頁以下

(金子追記)
 一般的見解を鵜呑みにせずに自分の頭で考えた立花さんに敬意を表します。
私もネット検索してみましたが、当局でも否定的な対応が多いようでした。た
だし、それは当局の公式見解ではありません。
 登録免許税法別表第1第24号(一)ホには、組織変更による設立登記の登
録免許税は、資本金の額の「1000分の1.5(組織変更をした会社の当該
組織変更の直前における資本金の額として財務省令で定めるものを超える資本
金の額に対応する部分については、1000分の7)。これによつて計算した
税額が3万円に満たないときは、申請件数1件につき3万円」とありますので、
法律論としては肯定説が正しいと私も思います。肯定説のほうが登録免許税が
安くなることが多いので、交渉してみることをお勧めします。


2019.05.10(金)【会社の揺り籠から墓場まで】(金子登志雄)

 きんざい「登記情報」直近号(5月号)の「登記実務からの考察」は、ここ
で時どき名前の出てくる広島の幸先(こうさき)さんの投稿でした。

 内容は、「会社設立段階では、会社成立後に無議決権株主になる発起人には
設立時役員の選解任権限がないことは会社法40条3項等で明らかだが、それ
以外については明文の規定がないのだから、本店所在場所の決定などには、こ
の発起人も参加することができる」との見解が一部の登記所にあることを紹介
し、それに対する論評でした。流れが非常によく読ませる内容でした。

 立花さんの合同会社の清算人への問題意識を含め、会社の揺り籠から墓場ま
での関係は意外に分かりにくいようですが、私は設立段階、事業会社段階、清
算会社段階の3つに分けて考えるように勧めています。業務執行機関も株式会
社でいえば、「発起人」→「取締役」→「清算人」と変化します。

 最初の清算人は就任年月日が登記されません。「清算株式会社」の設立だと
考えれば容易に納得することができます。

 事業会社が解散して清算会社になるときは、機関構成等もリセットされて別
会社になるごとくですが、設立段階から事業会社に移行する際は、胎児が晴れ
て人間になるごとく、設立目的に限定された権利能力なき営利社団に権利能力
が備わり、事業会社としてスタートし、発起人が株主に、設立時取締役が取締
役にと呼称が変わるとみるべきで、リセットとまではいえません。

 したがって、無議決権株主に移行する発起人は会社設立段階であっても業務
執行権限がないとみるべきで、幸先さんの意見に私も賛成です。

 ところで、権利能力なき営利社団になる時期ですが、これは出資後です。そ
の時から決定方法が頭数の多数決から資本多数決の世界に変わります。民法上
の組合の規律ではなくなる時期でもあります。

 ここで、では、出資前に本店所在場所等を決定するのなら頭数の多数決でよ
いはずだというのが理論的ですが、役員の選解任と同様に社団の所在場所の決
定などについては、出資後に決定せよというのが会社法の趣旨でしょう。定款
で本店所在場所や役員を決定する場合も、出資を条件に定めたと解釈するのが
穏当だと思います(38条4項参照)。

 定款内で定めるなら発起人全員の同意が必要ですから、無議決権株主に移行
する発起人が加わっていても、特段の支障は生じません。


2019.05.09(木)【引き際】(島根・根来川弘充)

 私の父は、土地家屋調査士をしておりました。

 私が小学生時代、建物の表題登記のために、新築建物の測量のお手伝い(と
いっても、巻き尺の0を合わせるだけの簡単なものです)を良くしたのですが、
畳や柱の新鮮な臭いが、私はとても好きでした。

 その父は、平成の終わりとともに、廃業をいたしました。特に時代にこだわ
っていたわけではありません。

 70才をこえて、体力的に自信がなくなったということが一番の理由でした。
やめる数日前に突然決めたことであり、母にも特に相談はなかったようです。

 私の仕事は、退職といったものはなく、自分で辞め時を考えなければなりま
せん。今回の父の決断に、無論反対するなど思うこともなく、子供時代、手伝
いをしたことをいろいろと思い出し、ただ、懐かしい記憶がよみがえってきま
した。

 父のおかげで、私が司法書士という資格と縁があったことは、まちがいあり
ません。感謝とともにお疲れ様でしたと声をかけたいと思います。


2019.05.08(水)【10連休】(藤沢・酒井恒雄)

 10連休の長いゴールデンウィークが終わりました。みなさんは、どのよう
に過ごされたでしょうか。

 私は、子供の少年野球の応援で終わってしまいました。ゴールデンウィーク
中に試合が組まれていたのですが、トーナメント戦だったので、一回戦で負け
たら、その後の試合はありませんでした。

 子供に言ったら怒られますが、弱小チームなので、初戦で敗退するだろう予
想し、試合が終わったら、いろいろ出掛けようと考えていました。

 ところが、一回戦、二回戦と勝ち進み、決勝戦まで行った結果、なんと優勝
してしまいました。

 連日のように球場(校庭での試合もありましたが)に足を運ぶこととなり、
ハラハラする日々を送るうち、気付けば休みは殆ど残っていませんでした。休
暇という感じはしなかったのですが、

 「連休中は、売り上げの減少という影に怯えずに、仕事のことは忘れて過ご
すこと!」という目標は、図らずして達成できました。

 休みが終わり、なかなか仕事モードになれず、一生懸命、仕掛り中だった仕
事の内容を思い出している方も多いかと思います。自分へのエールも含め、「
さぁ、がんばって仕事しましょう!」という言葉で終わりたいと思います・・
・・・。


2019.05.07(火)【認可地縁団体と不動産登記】(東京・鈴木龍介)

 今回もゴールデンウィーク直後ということで(?)「戦後商法のあゆみ」を
お休みにしまして、ひょんなことから勉強を迫られた「認可地縁団体」につい
て、自分の備忘的な観点も含め、とり上げてみたいと思います。

 町内会や自治会等といった地縁団体は権利能力なき社団であって、不動産等
の登記名義人になることはできません。では、どのように登記をするかという
と、構成員全員もしくは代表者等の名義でということになります。したがって
構成員の異動や代表者等の変更があった場合には、移転登記が必要ということ
になります。これは手続的に煩雑であるし、所有者不明不動産の温床にもなる
といえます。

 そこで、平成3(1991)年の地方自治法の改正により、以下の要件を備
えた地縁団体について、市町村長の認可を受けたときには法人格を取得するこ
とができるとされました(地方自治法260条の2)。これを一般に「認可地
縁団体」と称しまして、不動産等の登記名義人になることができます。ちなみ
に、総地縁団体数は約30万あり、そのうち44,008が認可地縁団体とな
っています(平成25(2013)年4月現在/総務省調べ)。

 ①区域が明確な地縁による団体であること
 ②社団としての規約等が整備されていること
 ③区域の住民の全員が構成員になることができ、その相当数が現に構成員に
  なっていること
 ④不動産の権利等を保有している、もしくは近将来的に保有する見込みがあ
  ること

 また、認可地縁団体が保有する不動産の登記名義がかつての代表者等になっ
ていて、その所在等が不明の場合、公告等の手続を経て、当該代表者等(その
相続人を含む。)が関与することなく認可地縁団体のみの申請により当該認可
地縁団体名義への所有権移転登記をすることができるとされています(地方自
治法260条の38・260条の39)。この措置は平成27(2015年)
の地方自治法の改正によるもので、所有者不明不動産の解消の一助となる制度
といえます。

~参考~
 ・平成3・4・2民三2246号通達
  (登記研究521号(1991年)161頁~169頁)
 ・平成27・2・26民二124号通達
  (登記研究808号(2015年)73頁~76頁)
 ・平成30・11・27民二649号依命通知
  (登記情報690号(2019年)57頁)
 ・山野目章夫『不動産登記法(増補)』(商事法務、2014年)92頁
 ・江口幹太「地方自治法の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務
   の取り扱いについて」登記研究809号(2015年)1頁~29頁
 ・小野瀬厚「認可地縁団体の創設」
   登記研究527号(1991年)21頁~41頁


2019.04.26(金)【2種類の会社の代表】(金子登志雄)

 昨日の立花投稿に関連して、会社の代表の規定について比較してみました。
10連休前なので、立花さんと同じく長文にしてみました。

1.株式会社の代表について
 代表取締役の定め方について、349条は次のように規定しています。取締
役を清算人に置き換えると483条になります。
----------------------------------------------------------------------
1項:取締役は、株式会社を代表する。ただし、他に代表取締役………。
2項:前項本文の取締役が二人以上ある場合には、取締役は、各自、………。
3項:株式会社(…)は、定款、定款の定めに基づく取締役の互選又は株主総
 会の決議によって、取締役の中から代表取締役を定めることができる。
----------------------------------------------------------------------

 代表権を有する取締役は株主総会で選任されること(329条)、定款には
公序良俗に反しない限り何でも定められること(29条)からして、上記3項
は、ある意味では二重の注意的規定です。規定の存在意義は、定款で定めれば
取締役の互選でも定められることを明白にしたことです。

 このことは、本規定の母体である旧有限会社法27条3項に「【前項の規定
は】定款若は社員総会の決議を以て会社を代表すべき取締役を定め、……定款
の規定に基き取締役の互選を以て会社を代表すべき取締役を定むることを【妨
げず】」だったことからも明らかです。

2.持分会社の代表について
 持分会社の代表は代表社員と代表清算人です。上記3項に対応する部分の抜
粋は次です。 
-----------------------------------------------------------------------
599条3項:持分会社は、…【定款の定めに基づく社員の互選】によって、
 業務を執行する社員の中から持分会社を代表する社員を定める………。
655条3項:清算持分会社は、…【定款の定めに基づく清算人…の互選】に
 よって、清算人の中から清算持分会社を代表する清算人を定める………。
----------------------------------------------------------------------- 

 持分会社では、社員自身が生来的に各自代表権(業務執行権)を有するのを
原則とし、選任されるものではありません。この社員権の制限は定款(原則は
総社員の同意)で定めることになりますが(591条)、代表権の制限なら、
要件を軽減してもよいとするのが599条3項です。

 一方、持分会社の代表権を持つ清算人は社員でなく株式会社の取締役や清算
人と同様に外部役員です。ただし、持分会社には社員総会がありませんから、
社員の過半数の同意で定められます(647条1項3号)。その代表権の制限
なら定款で定めることを条件に社員でない清算人の過半数でもよいとしたのが
655条3項です。

 599条3項は同意の個数問題(株式会社でいえば、特別決議か普通決議か
などの決議要件)の緩和規定ですが、655条3項は清算人にも選任権限を持
たせるかという選任権者の問題です(株式会社でいえば、総株主の同意か、株
主総会か、取締役会かなど)。これが前者に「互選」とあっても業務執行社員
に限定されていない理由であり、後者に当然に決定権のある社員の同意が省略
されている理由だと私はみています。

3.その他
 「代表社員」「職務執行者」「代表清算人」という用語が会社法にも商業登
記法にも存在しないことにお気づきでしょうか。商業登記規則で初めて登場し
ますから、単なる登記用語に過ぎません。

 代表清算人は株式会社では使います。会社法483条で「代表清算人(清算
株式会社を代表する清算人をいう)」と定義し、株式会社が先手を打って商標
登録(?)していますので、持分会社では使えません。

 代表清算人は清算人とは別の地位ではなく、代表権という権限や役割を持っ
た清算人のことですから、本来であれば代表清算人などという誤解を招く用語
を使うべきではないが、機関が分化し、取締役会や清算人会も認められる株式
会社では旧商法時代からの沿革もあり、代表取締役や代表清算人を使うことに
したのでしょう。また、公示機能を営む登記では文字数を少なくするためだと
考えます。

 いかがでしょうか。株式会社と合同会社は似て非なる存在であることが少し
は通じたでしょうか。株式会社とは異質の合同会社の規定の解明はやっと緒に
就いたばかりです。今後もこの解明にがんばります。

※お知らせ
 明日から10連休のため、本欄はお休みにさせていただきます。メールと携
帯電話は年中無休ですので、いつでもどうぞ。


2019.04.25(木)【合同会社の代表清算人の定め方】(仙台・立花宏)

 相変わらず、合同会社について勉強しています。疑問に突き当たることも多
く、難問ばかりです。今回は代表清算人の定め方に対する疑問です。

 会社法第655条第1項から第3項までは、次の内容です。
1 清算人は、清算持分会社を代表する。ただし、他に清算持分会社を代表す
 る清算人……を定めた場合は、この限りでない。
2 前項本文の清算人が2人以上ある場合には、清算人は、各自、清算持分会
 社を代表する。
3 清算持分会社は、定款又は定款の定めに基づく清算人(……)の互選によ
 って、清算人の中から清算持分会社を代表する清算人を定めることができる。

 一方、会社法第647条第1項第3号で「業務を執行する社員を定款で定め
た場合にあっては、その社員の過半数の同意によって」清算人を定めることが
できます。

 以上を前提に、次の問いにどうお答えになりますか。

≪設問≫
 社員がA、B、C3名の合同会社において、解散にあたり、定款で業務執行
社員と定められたA、Bの同意により、社員ではない甲及び乙を清算人と定め
ただけでなく、甲を代表清算人に定めました。認められるでしょうか(社員以
外の者を清算人と定めることも可能とされています(松井信憲著『商業登記ハ
ンドブック第3版』(商事法務)706頁))。

≪解説≫
 論点は代表清算人は上記2項の各自代表と3項のものに限定され、本件の甲
は認められないかです。

 文献を調べた限り(前掲松井713頁など)、代表清算人の登記をする場合
には、定款又は定款の定めに基づく清算人の互選書の添付を要するといった記
載しかありませんでした。法務局HPにある下記の添付書類の部分でもそうで
した。それらを読む限り、設問は否定されるようにも思えました。

         https://is.gd/ZUjmTR

 しかし、はたして、そのように解釈してよいでしょうか。甲を代表清算人に
定めなければ、各自代表の原則に従い(上記会社法655条1項本文・2項)、
甲も乙も代表権のある清算人となりますが、乙の代表権を制限し甲だけを代表
清算人にすることはできないという解釈には疑問を感じました。金子先生流に
いうと「大は小を含まない」という特異な解釈に思えたからです。

 社員はいつでも清算人を解任することができるのに(会社法648条)、よ
り軽い代表権の制限ができないわけがなく、設問でいえば、代表権を有する清
算人の選任権限のあるA及びBは、当然に、乙の代表権を制限する権限(注1)
も有し、これを通じて甲を代表清算人と定めることができると考えるべきでは
ないでしょうか。

 また、株式会社の条文(会社法第483条)には、代表清算人を定める方法
として株主総会の決議による方法が定められていますし、旧商法の合名会社の
条文(旧商法第129条で第76条準用)でも総社員の同意による方法が定め
られていましたから、会社法の下でも、社員の過半数の同意で定められないと
するのは、これらの規定とのバランスを欠くことにもなると思います。

 当初、私は規定漏れだと解釈しました。すなわち会社法第483条第3項と
同様に第655条第3項を「清算持分会社は、定款、定款の定めに基づく清算
人(…)の互選【又は社員(業務を執行する社員を定款で定めた場合にあって
は、その社員)の過半数の同意】によって……」とすべきだったのに、【 】
部分を漏らしたのだと思っていました。

 この点を金子先生に相談したところ、「私も最初はそう思ったが、今は意図
的だと思っている。各自代表の清算人を株式会社では株主総会で、持分会社で
は社員の過半数の同意で定められるため、わざわざ二重に代表清算人を定めら
れるなどと規定を置く必要はないはずだが、株主総会は会社の機関だから、そ
の権限の範囲を明確にしておく要請があるのに対し、社員は機関ではなく会社
の所有者で本来は万能で、規定を置くなら、総社員でなく過半数の同意で足り
るということ程度であり、それは規定済みなので、二重の規定を置くのは不自
然だという配慮ではないか」というものでした。
 
 そして、第655条第3項には「定めることができる」とあり、「定めなけ
ればならない」ではないため、同条第1項ただし書の「他に清算持分会社を代
表する清算人を定めた場合」には、原則である社員により代表権を有する清算
人を定めた場合が当然に含まれており、それ以外に第3項が2つの場合を特に
認めたと解釈すればよいのではないかとのご意見でした。 

 説得力のあるご説明をいただき、私は、結論として、設問は肯定されると考
えました。そうしたところ、金子先生から、商業登記書式精義第5版(テイハ
ン)1149頁に、社員の過半数の一致で代表清算人を定めている決議書が掲
載されている旨をお知らせいただきました。

 私自身も、平成18年3月31日民商第782号通達の該当箇所に「代表清
算人の選任には、必ずしも総社員の同意を要しない」(下線は筆者による)と
あることに気づきました。

 おそらく、法務省も金子先生や私と同様の見解なのではないかと思いました。
改めて、この視点で、否定説と思っていた上記法務局HPの該当箇所をみます
と、「特に清算人を代表する清算人がいる場合には」とありました。「特別に
会社法第655条第3項に基づき選定された代表清算人がいる場合には」と肯
定説に読めてしまいましたが、皆様はいかがですか。

注1)乙を代表権のない清算人として選任する権限(松井信憲著『商業登記ハ
   ンドブック第3版』(商事法務)706頁)。



2019.04.24(水)【仕事観】(藤沢・酒井恒雄)

 先日、とあるベンチャー企業さんの、新入社員歓迎会に行ってきました。ま
だまだ、成長過程なので、多くの社員を雇える会社ではないのですが、学生時
代にインターンとして働いていた優秀な人材が複数名、他の企業への就職を蹴
って、この会社に入社しました。もはや大手企業に就職できれば安泰という時
代ではないとはいえ、リスクの高い選択であったと思います。おそらく給料の
面においても、十分とは言えないと思います。

 それにも関わらず、彼らは何故、この道を選んだのでしょうか。新入社員の
人たちに聞いてみたところ、やはり迷いはあったそうです。しかし、最終的に
は、何処に行けば自分らしく働けるのか、ということを判断基準にして就職先
を決めたようです。

 働くということの意識の変化を肌で感じましたが、この変化を再確認する出
来事もありました。この会社には、事業関連先である大手企業の担当者が複数
名出入りしているのですが、そのうちの一人が退社して、この会社に就職する
ことが決まったのです。誰もが知っているような有名企業なので、就職するの
にも大変だったのではないかと想像します。つい「もったいない。」と言って
しまいそうですが、本人曰く、ずっと事業提携先として関与してきたが、この
ベンチャー企業の職場に来る度に、楽しそうに仕事をしている社員達を見て、
羨ましく思っていたそうです。

 つい最近、後継者難倒産の数が過去最悪の水準になったという報告を目にし
ました。昨年の調査によれば、日本企業の後継者不足率は66.4%だそうで
す。並行して人材難倒産の数も上昇しているようです。

 後継者不足の理由について、中小企業は先行きが不安なので敬遠されるとい
う分析結果も目にしますが、これについては、どうもそうではないような気が
して来ました。

 仕事観の変化に対応し、自分らしく働くことの出来る職場というキーワード
を再認識する必要がありそうです。関連して思ったことなのですが、後継者と
いう言葉も使わない方がいいかもしれません。一子相伝のようなイメージを払
拭すべく、空席になる可能性があるポジションを、分業して複数の人材が引き
継ぐという考えも必要な気がします。

 色々な意識改革が必要になりそうです・・・・・。


2019.04.23(火)【自衛隊と法務】(東京・鈴木龍介)

 今回は「戦後商法のあゆみ」をお休みにしまして、自衛隊と法務についてと
り上げてみたいと思います。

 ちなみに、いわゆる憲法9条と自衛隊というような根本的な話ではなく、現
場の自衛隊の業務と法務との関係についての、ちょっとした考察です(少し勉
強する必要がありまして・・・)。

 自衛隊の諸活動は、当然のことながら法令により規定されています。その本
来的な任務の1つに、災害における派遣がありますが、これは、公共の秩序の
維持として国民の人命や財産の保護を目的とするものです。具体的には、地震
や台風といった災害の発生時に自衛隊が出動し、被災者の救助・避難・捜索、
生活物資等の搬送・配布、被害の拡大を防ぐための工作やライフラインの確保
などがあげられます。

 そのような活動は緊急を要するものであることから、その活動においてはさ
まざまな特別な状況下での法律問題が生じることが考えられます。たとえば、
被災者を救助するために他人の所有地に立ち入ったり、建物を破壊しなければ
ならないケースがありますが、通常では違法であるそれらの行為が法律的にど
こまで、そして、どのようかたちであれば許容されるかや、その後に講ずべき
措置などを速やかに判断する必要があります。その判断には、法務の素養と知
見が必要であり、それなくしては実際の作業に従事することとなる自衛隊員の
活動に大きな支障が生じかねません。

 他方で、災害の被災者が直面する法律問題も少なくない中、派遣された自衛
隊員に応急的にせよ対応を求められるケースも考えられます。たとえば、親族
の死亡や通帳などの重要書類の不明となった場合の相談が寄せられた際に、法
的に適切な回答なり支援を行うことは被災者の不安を和らげるという意味でも
目的に叶うものであるとともに、必要な支援であるといえます。

 一応のまとめとして、企業には「企業法務」があるように、あまり注目はさ
れないかも知れませんが、自衛隊には「自衛隊法務」というものが存在し、一
定のニーズがあるものと考えます。


2019.04.22(月)【伝える力】(東京・古山陽介)

 少し間が空いてしまいましたが、前回の投稿記事が、閲覧者目線になってお
らず、定款認証手続きに対する不安を煽ってしまうような内容になってしまい、
申し訳なく思うと同時に、人に伝えることの大切さ難しさを公私において実感
しています。

 業務では、最近、クライアント企業が一般社団法人を設立する依頼が数件あ
りまして、定款のドラフト作成依頼時に、各条文について、簡単なコメントを
つけて欲しいという要望が多く、クライアントが理解できるようなコメントを
考えることに悪戦苦闘しています。

 またプライベートでは、3歳の子供が理解できる言葉で、注意をしたり、遊
びを教えたりすることに四苦八苦しています。

 どちらにも共通して言えるのは、当たり前ではありますが、相手の立場に立
って表現しなければ伝わらないということです

 頭では分かっていても、なかなか難しいもので、一つ一つ試行錯誤しながら
経験を積み重ねていくしかありません。

 そういった意味で、この徒然で記事を投稿する機会をいただけることに改め
て感謝しています。

 また、金子先生をはじめとして、徒然の皆様の記事や書籍は本当に勉強にな
ります。


2019.04.19(金)【補正日と完了通知】(金子登志雄)

 昔の登記申請は、支店での登記申請以外は、必ず登記所に行かなければなら
ず(遠方の場合は現地の司法書士を復代理人にしました)、たいへんでした。
私が一番遠方の登記所に出かけたのは、正確には忘れましたが、北海道の山奥
の登記所で、顧客の費用で旅行させてもらいました。重要な合併案件だったた
め、復代理人任せを顧客が不安がったためです。

 この方式だったから、補助者がいないと回らなかった部分もあり、雇用関係
の面からは有益なシステムでした。

 一人事務所の私にとっては、ダイエットに最適でした。当時は午前は埼玉地
方法務局、午後は千葉地方法務局〇〇出張所などと私も飛び回っており、今よ
りはずっとスマートでいられました。電子申請主流の現在はご近所の郵便局に
たまに行く程度であり、パソコンだけが友達の孤独な出腹でいます。

 その当時、補正日というのは、補正がなければ前日中に登記が完了している
という意味合いがありました。申請と同時に登記後謄本何通請求などの用紙を
出しておくと、訪問した補正日に待たされずに取得することができました。い
わゆる謄本同時申請です。そうしないと、補正日に申請代理人が訪問してくる
ため、登記が完了していないと約束違反を責められるためでしょう。

 ところが、電子申請の今日、インターネットで補正日が公開されているにも
かかわらず、その日までに完了通知が来ないことが増えました。電話すると、
「ただいま〇〇中なので本日中には」と返事がありますが、そのうちの1割は
「しまった。簡単な内容だったので、後回しにして、まだ何も手をつけていな
い」という蕎麦屋の出前も含まれていることでしょう。それを気づかせ、催促
することになりますので、電話は無駄ではありません。

 なお、書き入れ時は別として、登記申請書類が揃うと調査官の審査が始まる
わけですが、これは3日もあれば終わっています。だから、補正があると3日
めあたりに電話がかかってくるのです。なぜ、完了までに1週間もかかるかと
いうと、上司のチェックや登記記録への記入が順番待ちで時間がかかるための
ようです。4日経っても補正電話がなければ、7、8割の確率で、あとは完了
通知を待つだけだと安心してよいでしょう。


2019.04.18(木)【久々の職務執行者変更登記】(金子登志雄)

 3年間に1度程度の割合で合同会社の職務執行者変更登記の仕事が来ます。
顧客の子会社に合同会社があるためです。

 今回も突然に舞い込みましたが、登記の仕方を忘れていても、前回の自作の
議事録等がPCに残っているので、そのまま踏襲すればよく楽なものです。

 代表社員が甲株式会社で唯一の職務執行者がAのとき、文献をみますと、後
任の選任議事録見本に「Aが職務執行者を辞任したので、後任としてBを」な
どとありますが、このようなことは現実には少ないと思っています。

 というのは、このAは甲株式会社の従業員であることが多く、会社の命令で
子会社である合同会社の職務執行者を勤めているのに、「辞任」など勝手に言
い出せるわけがありません。したがって、金子案の職務執行者選任議事録は次
のようになっています。

----------------------------------------------------------------------
 第〇号議案 X合同会社の職務執行者1名選任の件

 議長は、当社は、子会社であるX合同会社の代表社員であるが、きたる〇月
〇日をもって、職務執行者をAから次のBに交代させることをはかったところ、
出席取締役全員が賛成した。
----------------------------------------------------------------------

 法律的にはAにつき解任になるのでしょうが、現実は恒例の人事異動です。
こういう議事録であれば、Aが職務執行者を辞任した証明を出せなどといわれ
ることもなく、本議事録だけで済んでしまいます。

 ところで、インターネットで著名合同会社を検索すると、ほとんどが外資系
でした。Apple Japan合同会社など、いくつか登記情報を取得して
みましたが、東京都港区所在ばかりでした。1つくらい東京法務局菅内(千代
田区や中央区)の合同会社があってもよいだろうと探し始めましたら、10社
にもなりましたが、ありませんでしたので、あきらめました。浪費でした。

 語学が堪能で外資系を顧客に持ちたいなら港区で開業するのがよさそうだと
分かりましたが、日本語ですら堪能でない私は、「ああ千代田区でよかった」
です。 



2019.04.17(水)【令和と商号】(藤沢・酒井恒雄)

 新元号が発表されて約半月が経ちました。世間では、商号に令和という文字
を使用する会社が続々登場しているようです。

 商号に令和が含まれる会社は、既存の会社が商号変更をしたケースと、新規
設立の会社が商号の中に令和の文字を使用したケースがあります。

 新規設立の場合は理解できるとして、既存の会社が商号変更する場合、あま
り良い印象を受けないのは私だけでしょうか。

 商号に、平成という文字が含まれていたため、令和に変更した会社もあった
ようです。平成や昭和の文字があった方が、社歴を感じさせて良いと思うのは、
古い感覚なのでしょうか。比較的歴史のある会社が商号変更したケースもあっ
たようで、ちょっと驚いています。

 4月1日はエイプリルフールであったため、とある会社が商号を令和に変更
するというプレスリリースをし、後に、冗談であったことを明かしました。

 そんなこともありましたので、どうも話題作りやネタといった印象が拭えま
せん。もし令和の文字を冠した商号変更の相談があった場合には、本当にいい
のですか? と言ってしまいそうです。みなさんは、どういった印象を持たれ
ますか?


2019.04.16(火)【戦後商法のあゆみ⑩ 昭和41年改正~その2~】
                          (東京・鈴木龍介)

 「戦後商法のあゆみ」の10回目は、昭和41年商法改正の続きです。

3.商業登記に関する規律等
(1)概説
 昭和41年改正商法は経済界の緊急要請に応えるものであったことから、商業
登記に関する通則的規律の見直しはなされていない。

(2)株式会社と登記
 昭和41年改正商法において、改正等された株式会社の登記と密接に関係する
主な規律は、次のとおりである。

① 株式の譲渡制限規定の復活
 昭和25年改正商法により株式の譲渡制限が認められなくなっていたところ、
定款に株式譲渡について取締役会の承認を要する旨(株式譲渡制限規定)を定
めることができるものとされた(昭和41年改正商法204条但書)。株式譲渡制限
規定については株式申込証・株券の記載事項とされるとともに(昭和41年改正
商法175条2項4号ノ2・225条8号)、登記事項とされた(昭和41年改正商法188条
2項3号/同法175条2項4号参照)。

 なお、株式譲渡制限規定を設けることは、株主の投下資本の回収の手段を狭
めるものとして、通常の定款変更にかかる、いわゆる特別決議より要件の重い、
総株主の過半数かつ発行済株式総数の3分の2以上の多数によることとされた
(昭和41年改正商法348条1項/会社法309条3項参照)。あわせて、当該株式譲
渡承認の一連の手続が規定された(昭和41年改正商法204条ノ2~204条ノ5)。

② 額面・無額面株式の相互転換の許容
 株主の請求により額面株式と無額面株式の相互に転換することができるもの
とされた(昭和41年改正商法213条1項/なお、会社からの転換請求が認められ
るようになったのは昭和56年商法改正による。)。ただし、無額面株式を額面
株式に転換するにあたり、資本の額が転換した額面株式1株の金額に発行済株
式の総数を乗じた額に満たないようになる場合には認められないものとされた
(昭和41年改正商法213条2項)。

 あわせて、これまで登記事項とされていた株式の額面・無額面の別について
は、登記事項から除外された(昭和41年改正商法188条2項5号)。

③ 新株発行の手続の明確化
 前述のとおり、上場会社の新株発行の手法として一般化していた、証券会社
による“買取引受け”が問題となったことを受けて、株主以外の第三者に新株
引受権を与える場合には、株主総会の、いわゆる特別決議を要する旨の規定
(昭和41年改正前商法280条ノ2第2項)を株主以外の第三者に有利な価額で新株
発行をする場合には、特別決議を要するものとあらためられた(昭和41年改正
商法280条ノ2第2項)。

 なお、当該決議にかかる株主総会の議事録については、新株発行における変
更登記申請の添付書面とはならない(現行の取扱いと同様)。

 あわせて、株主不知の間に不公正な新株発行がなされることを防止するため
に、新株発行にかかる一定の事項を公示する制度が設けられた(昭和41年改正
商法280条ノ3ノ3)。

④ 転換社債の転換請求期間の柔軟化
 転換社債は株主名簿の閉鎖期間中は転換請求ができないという不都合を解消
するため、当該期間でも転換請求を認める一方で、転換請求により発行された
株式には議決権は認めないこととされた(昭和41年改正商法341条ノ6)。

 なお、転換社債については引き続き登記事項とされており(昭和41年改正商
法341条ノ4)、転換請求がなされ新株式が発行された場合には、毎月末日現在
を起算として変更登記を要するものとされていた(昭和41年改正商法341条ノ7
/同法222条ノ7準用)。
 
~参考文献等~
・中東正文・松井秀正編著『会社法の選択―新しい社会の会社法を求めて』
(商事法務、2010年)62頁~67頁
・秋坂朝則『商法改正の変遷とその要点(新訂版)』
(一橋出版、2006年)56頁~63頁
・戸川成弘「高度経済成長と開放経済体制への移行―昭和41年の改正―」
浜田道代編『日本会社法の歴史的展開』
(商事法務、1999年)334頁~368頁
・鈴木竹雄=竹内昭夫『商法ととともに歩む』
(商事法務、1977年)375頁~405頁
・味村治ほか「座談会 戦後の会社法改正事情(上)」
商事法務No.1229(1990年)30頁~33頁


2019.04.15(月)【清算人の登記】(金子登志雄)

 4月1日をピークにした商業登記書き入れ週間も終わってしまいましたが、
8日の朝7時38分に東京法務局事案、11日には夜7時55分に千葉地方法
務局事案の登記完了通知が来たのには驚きました。こんな時間帯は初めてです。
登記所も多忙で早朝出勤や残業で頑張っていたのでしょう。

 ただ、千葉での事案は単なる商号変更で4月1日に申請したものです。それ
が11日までかかったのは、登記が完了の都度、完了通知を出す運用をしてい
ないようにみえました。「遅い千葉」という評価が関東地方の司法書士に浸透
していますので、改善をお願いしたいものです。

 さて、4月1日には3月31日解散の登記を複数件申請しましたが、清算人
の登記に関して、次の点につき、どうお考えですか。

Q1.清算人の就任承諾書に住所の記載は必要か。
A1.記載した方が望ましいとはいえますが、法律的には不要です。

 登記における住所は本人を特定する手段に過ぎず、登記申請人が申請した場
所が住所です。代表権付与のときに印鑑証明書を付けずに登記することができ
ること、住所の変更登記には証明が不要であること(商登法132条2項ただ
し書参照)、印鑑証明書の添付は印鑑照合のためで本人確認証明書(清算人に
は不要ですが)も本人の実在性を証明するためのものであり住所を証明するも
のではないことなどの理由です。

Q2.添付書面に清算人の住所がないと不自然だから、印鑑届用の印鑑証明書
 を任意の添付書面にし、印鑑届では印鑑証明書の添付省略が可能か。
A2.現実には受理されていますが、登記官次第でしょうか。

 私はよくこれをやっていました。何もいわれたことがないのですが、1か月
ほど前に、他の補正とともに「印鑑届に貼ってください」という通知がありま
した。こんなことでわざわざ訪問せよというのは厳しすぎると思い、いままで
何もいわれたことがないと電話で説明しましたら、「分かった。上司が止めな
ければこのままにする」といわれ、最終的に何もありませんでした。

 それ以降、印鑑届に貼るようにしていますが、コンビニ発行の印鑑証明書は
裏も必要なので、原本還付が面倒ですね。

Q3.印鑑届の印鑑証明書の原本還付の根拠は何か。
A3.平11・2・24民四379号通知で印鑑届に添付した印鑑証明書も原本還
 付が可能です(商業登記だけの内容ではないため先例集には掲載されていな
 いようです)。

 これにつき、登記申請の委任状に「原本還付申請及び受領の件」とあっても、
それは登記申請の添付書面についての原本還付ですから、厳密には本件の還付
の根拠にはなりません。印鑑は代表者個人が提出するものです。

 印鑑届書の委任状欄に印刷文字として「印鑑(改印)の届出の権限を委任し
ます」とありますから、この届出の権限に原本還付の権限が含まれるという解
釈だと思います。このように解釈しなければ、登記申請の添付書面として印鑑
証明書を付け、それを援用する場合とのバランスを欠きます(Q2の金子式は
この面でも安全でした)。

 ただ、法務局の人事異動が頻繁なため、杓子定規で頑なな調査官が出てくる
可能性がありますから、今後のことを考えると、「届出【に関する一切】の権
限を委任します」とか、「届出の権限【(原本還付の権限を含む。)】を委任
します」といった自作の書式を作っておくことをお勧めします。


2019.04.12(金)【休眠会社のみなし解散・継続と印鑑の届出・印鑑カード】
                           (仙台・立花宏)

 最近、何人かの司法書士の方から、会社法第472条の休眠会社のみなし解
散や解散したものとみなされた会社の継続(会社法第473条)に関与してい
るとのお話しを伺いました。

 これまで、あまりそうしたお話しをお聞きしたことがなかったので、個人的
にはそれほど身近に感じてはいなかったのですが、平成26年から毎年、休眠
会社の整理作業が行われている関係からか、司法書士がお客様からご相談をい
ただくケースが増えているのかもしれません。

 個人的には、会務(注1)でその関係の講師をさせていただいた関係で、そ
の分野について、知識を確認し直す機会をいただきました。おかげさまで、自
分自身、根拠等があやふやだったところを再確認でき、皆様に感謝している次
第です。

 そのうちのひとつは、印鑑の提出と印鑑カードの取扱いの件です。たとえば、
次のケースはどう考えればよいでしょう。

 株式会社が会社法第472条により解散したものとみなされました。ただ、
その株式会社は事業を廃止していたわけではなく、登記を失念していただけの
ようです。その会社が会社を継続し、みなし解散前の状態に戻すことになりま
した。役員も変更はなく、解散前の代表取締役であるAさんが会社継続後も代
表取締役を務めます。

 Aさんは会社継続後も、みなし解散前の登記所届出印をそのまま使用するの
ですが、会社継続の登記に際し、①あらためて印鑑の提出をし直す必要がある
でしょうか。また、②印鑑カードはなんの処理もしなくても、そのまま使える
でしょうか。
 
 結論としては、以下のとおりです。
①あらためて印鑑の提出が必要です。
②印鑑カードについては、(同一人物が使用するのですが)承継の処理が必要
 になります。

 平成26年7月9日民商第60号民事局長通達「休眠会社及び休眠一般法人
の整理等について」には、要約すると、以下のような記載があります。

 「解散の登記をした休眠会社の代表取締役の印鑑記録について、所要の整理
を行う。なお、印鑑カードについては、何らの処理も要しない」

 このうち、所要の整理とは、商業登記規則第9条の2第1項に規定される、
印鑑の提出をした者がその資格を喪失したときの処理と思われます。会社が解
散したものとみなされ、清算会社となるため、代表取締役の資格を喪失し、印
鑑記録にその旨が記録されることになるのでしょう(注2)。

 また、前記通達によれば、みなし解散の登記がされても、印鑑カードについ
ては何らの処理も行われませんが、Aさんは代表取締役の資格を喪失し、印鑑
提出者ではなくなりましたので、Aさんは、その印鑑カードは使用することが
できなくなります。そのため、そのカードを継続して使用するためには、会社
の継続の登記をする前提として、印鑑の提出をする際に承継の処理をすること
になると考えます(商業登記規則第9条の3第3項)。この場合にあらたな印
鑑カードの交付を受けることもできると思いますが、その場合は、従前の印鑑
カードは法務局に返納することになります(商業登記規則第9条の5第5項で
すが、現実には「建前」で運用されているようです)。

 法務省の登記統計によれば、会社継続の登記は、平成27年から29年まで、
毎年約1000件程度の申請がなされたようです(ただし、みなし解散した会
社の継続とは限らない)。件数としては多くはありませんが、今後も休眠会社
・法人の整理作業は毎年実施されると思いますので、一度、知識整理できたこ
とは、とてもありがたいことだと思いました。
 
注1)日本司法書士会連合会や所属している司法書士会の関係の仕事
注2)そのため、当然のことながら、みなし解散の登記がなされると、代表取
 締役についての印鑑証明書の取得ができなくなります。
参考)「月刊登記情報」第448号61頁以下 藤原信義著「会社・法人等の
 カード式印鑑間接照明方式による印鑑届出、証明申請等について」


2019.04.11(木)【合同会社の業務執行社員の権限】(金子登志雄)

 3月29日付本欄【会社の業務(の執行)とは】で、次のように書きました。

----------------------------------------------------------------------
 現在の私の理解は、業務又は業務執行とは会社の目的を達成するために行う
行為だというものです。次のようになります。

 ① 事業会社中は、定款記載の事業目的を達成するために行う行為であって、
  株式会社では取締役、合同会社では業務執行社員の担当。
 ② 会社設立段階では、会社成立目的を達成するために行う行為であって、
  株式会社では発起人、合同会社では社員の担当。
   (例)本店所在場所や株主名簿管理人の選任などの業務執行は発起人の
     役割(頭数基準か議決権基準かの議論はあります)。
 ③ 会社清算段階では、会社の清算目的を達成するために行う行為であって、
  株式会社でも合同会社でも清算人の担当。
-----------------------------------------------------------------------

 上記に追加ですが、神崎満治郎先生主宰の実務相談室をみていたら、法務局
のホームページの下記掲載の定款(第3条)に赤字で、本店所在場所は業務執
行社員の過半数で決定すると明記されていることを知りました。合同会社設立
段階の業務執行は正確には「社員」のうち「業務執行社員」の権限だというわ
けです。

  http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001252889.pdf

 株式会社の発起人は設立段階でしか登場しませんが、「発起人=株主」とみ
れば設立当初から清算結了時まで登場します。合同会社の業務執行社員も同じ
です(清算段階でも清算人の選任は業務執行社員の権限)。取締役は事業会社
時代にしか登場しません。

 合同会社の業務執行社員は社員のうち業務執行につき決定し執行することの
できる「社員」であって、取締役のような事業会社時代だけの業務執行を担当
する独自の地位ではないことが明白です。

 この業務執行社員が法人のときの職務執行者は会社に対して忠実義務を負い
ますから(598条2項)、事業会社段階の支配人的地位で、設立段階の業務
執行の決定である本店所在場所については法人社員の代表者が決定することだ
と思います。

 やはり、法人である業務執行社員だからといって、全てを職務執行者の権限
とみる登記実務はそろそろ修正すべき時期が到来したようです。それを指摘し
た初の出版物・立花著『商業登記実務から見た合同会社の運営と実務』は売行
き好調です。御礼申し上げます。



2019.04.10(水)【ソロウェディング】(藤沢・酒井恒雄)

 最近、一体なんのことか分からないという言葉が多いです。そのひとつが、
ソロウェディング。

 この言葉を初めて聞いたとき、思わず、は? と聞き返してしまいました。
ソロ(一人)でウエディング(結婚式)は、成り立たない筈ですよね。

 そうなると、ソロウェディングとは、結婚式の直前に結婚相手に逃げられて
しまい、せっかく準備をしたのだから、とりあえず一人でも式を挙げておくと
いった感じのものなのだろうと想像しました。

 数年前から流行っていると聞いたので、こんな映画やドラマのような話も、
ちょくちょく起こる世の中になったのかと思ったのでした。

 もちろん、これは正解ではありません。正解は、一人で行う結婚式であるこ
とは合っていますが、女性だけでウェディングドレスを着て、結婚式用のメイ
クをし、その様子を写真に残したり、友達と一緒に食事会をして楽しんだりす
るイベントなのだそうです。

 未婚率が上昇する中、結婚産業に関わる会社が生み出したビジネスでのよう
です。たしかに、結婚ではなく、結婚式自体に憧れを持つ人も少なくないはず
です。

 また、結婚式が人生の一大イベントであるが故に、式を挙げることにピーク
を持って行ってしまい、実際の結婚生活が始まると、下り坂を行くような感覚
になってしまうことも珍しくないと聞きます。ソロウェディングを経験してお
けば、そんなシナリオを回避できる効果があるかもしれません。

 そのほか、結婚式は「一生に一度」の晴れ舞台という意識を薄める効果もあ
りそうです。

 どのみち、結婚産業に関わる会社としては利益獲得の機会が増える可能性が
あるわけで、なかなかよく考えられたビジネスだなと感心しました・・・・・。


2019.04.09(火)【戦後商法のあゆみ⑨ 昭和41年改正~その1~】
                          (東京・鈴木龍介)

 「戦後商法のあゆみ」の9回目は、昭和41年商法改正ですが、長くなってし
まったので2回に分けたいと思います。

1.背景等
 株式会社の計算についての一定の整備を行った昭和37年商法改正を終えると、
法制審議会商法部会(現在の諮問に答申して部会がクローズするのではなく、
一種の継続した形態であった)は、経済界から要請のあった緊急対応事項につ
いて検討に入ることとなった。

 大別すると株式会社法制にかかる外国資本の導入との関係と昭和25年商法改
正の見直しということで、具体的には、ⅰ)額面株式と無額面株式の相互転換、
ⅱ)記名株式の譲渡の方法、ⅲ)株券不所持制度、ⅳ)新株引受権の譲渡、
ⅴ)転換社債の転換請求期間、ⅵ)株式の譲渡制限、ⅶ)議決権の不統一行使
があげられていたところ、買受引受に関する判決(横浜地判昭和37・12・17下
民13巻12号2473頁)とそれに追随する判決(東京高判昭和39年5月6日高民17巻
3号201頁,大阪高判昭和39年6月11日高民17巻4号248頁)が登場したことにより
経済界に衝撃が走り、ⅷ)新株発行の手続に関する事項がその対象に加えられ
た。

 この時代、日本では、東京オリンピックが終了し、新幹線や高速道路の整備
などの公共事業も一段落したことの影響から企業の業績の悪化が顕在化した。
昭和39(1964)年にはサンウェーブと日本特殊鋼が倒産し、昭和40(1965)年
には山陽特殊製鋼が負債総額400億円超を抱え会社更生法の適用を受けた(山陽
特殊鋼倒産事件)。また、そのような状況下での証券市場の低迷を背景に深刻
な経営危機に陥った山一證券に対し、昭和40(1965)年5月に日本銀行が特別融
資を行った。

 世界に目を転じると1965年に米国によるベトナムへの北爆が開始され、ベト
ナム戦争が激化の一途をたどっていった。1966年には中国で文化大革命が開始
した。1967年には現在の欧州連合(European Union)につながるヨーロッパ共
同体(European Community)が発足した。

2.概要
 昭和37(1962)年7月に法制審議会商法部会で審議を開始し、昭和39(1964)
年2月に前述のⅰ)からⅴ)にかかる事項についての「商法の一部を改正する法
律案要綱」(その1)が法務大臣に答申された。政府は当該要綱に基づく法案
を同年3月に国会に提出したものの最終的には審議未了により廃案となった。

 その後、法制審議会商法部会では残された検討課題についての審議を行い、
昭和40(1965)年2月に前述のⅵ)からⅷ)にかかる事項についての「商法の一
部を改正する法律案要綱」(その2)が法務大臣に答申された。東京商工会議
所をはじめとする経済界の早期改正の声が高まる中、政府は前述の要綱(その
1)と要綱(その2)に基づく法案を昭和41(1966)年3月に国会に提出し、同
年6月に可決・成立した(昭和41年6月18日法律83号/以下、「昭和41年改正商
法」という。)。

 昭和41年商法改正はおおむね経済界の要請に応えたものであったが、その緊
急度と準備の関係等から施行は3段階となった。具体的には、前述のⅴ)転換社
債の転換請求期間にかかる規定ついては公布日である昭和41(1966)年6月18日
から施行され、前述のⅳ)新株引受権の譲渡、ⅵ)株式の譲渡制限、ⅶ)議決
権の不統一行使、ⅷ)新株発行手続にかかる規定ほかについては昭和41(1966)
7月1日施行され、前述のⅰ)額面株式と無額面株式との転換、ⅱ)記名株式の
譲渡方法、ⅲ)株券不所持制度にかかる規定は昭和42(1967)年4月1日に施行
された。


2019.04.08(月)【仕事の多い顧客ベスト4】(金子登志雄)

 先週の登記申請の仕事では、上場会社の登記が3つありました。こういうと、
さすがは東京、上場会社数も多く仕事が多くて羨ましいと思われがちですので、
今回は、仕事量の面からありがたい顧客ベスト4について考えてみました。も
ちろん、商業登記限定での話です。

 第1位は、何といってもベンチャー企業です。頻繁に株式や新株予約権を発
行し、株式分割も役員変更も目的変更も、監査役会の設置などの機関変更の仕
事もあります。相談も頻繁にあります。ベンチャーキャピタルなどとお付き合
いのある司法書士は一番恵まれているといえます。一緒に成長しているような
気持ちにもなれることでしょう。

 第2位は、上場会社の子会社のうち大会社です。定時株主総会時以外に事業
年度の期首などに親会社からの定例の人事異動の指示で役員変更がありますし、
子会社間の再編にもかかわることが多いといえます。

 第3位は、仕事を回してくれる会計事務所や行政書士事務所です。彼らの背
後にいる中小企業の役員変更や本店移転の登記に関わることができます。

 第4位は、小さな子会社を数個持つ会社です。上場会社ということもありま
す。本体だけでなく子会社の役員変更も全部が回ってきます。

 子会社を持たない小規模の上場会社は年1回の役員変更(会計監査人の変更
登記が必ずあります)だけです。大規模の上場会社も同じです。この場合は子
会社自身も大会社であり、数多い全国の子会社それぞれに担当司法書士がいま
すので、親会社を顧客にしたからといって、グループ企業の登記を独占するこ
とができるわけではありません。上場会社自身はベスト4に入らない理由です。

 親会社である上場会社よりも上記第2位のように子会社を顧客に持つ方が仕
事量は多いわけですが、先週の金曜日も私の電子申請した登記につき完了通知
がきたので、確認のため登記情報提供サービスでネット謄本を取得しようとし
たら、登記中エラーになりました。登記所が完了通知を忘れているのだと思い、
電話しましたら、別の登記が入っていたようです。他の子会社との再編がある
と聞いていたので、そちらの司法書士さんが登記を出したのでしょう。

 こうして、都心の司法書士はビルの片隅に事務所を持ち、お互いに持ちつ持
たれつで何とかやりくりしているわけで、地方のように地域独占ということは
ありません。当事務所のあるビルに入居している会社ですら、私に依頼があり
ません。面識もありません。

 いかがですか。設立や役員変更以外の面白い仕事が多いという意味では都会
は恵まれていますが、仕事量という意味では決して楽なわけではありません。
そのため、故郷(田舎)で開業し、その地域の仕事を独占し、3台は車を置け
る駐車場付の大きな事務所を持ち、市会議員や町会議員にもなれる名士を目指
したほうがよかったかもしれないと思う方もいることでしょう。

 どう生きるかは何に人生の価値を置くかによって異なりますので、どちらが
よいとはいえませんが、会社法オタクの私にとっては都会しか居場所がありま
せん。


2019.04.05(金)【重圧の日々】(金子登志雄)

 新元号に対するお祭り騒ぎ、マスコミの過熱ぶりには怖いものを感じました。
日本社会は国民が一斉に同じ方向を向きますので、外国人に限らず自分の意見
で動く少数派には生きにくい部分があります。

 このお祭りで、モリカケも辺野古も伊藤詩織も選挙も全部がすっ飛んでしま
い、何かしたわけでもないのに安倍政権の支持率が10%近くもアップしたな
ど尋常な社会とは思えません。

 平成に変わった時は静かでした。元号の政治利用は憲法上の疑義があると当
時の竹下首相は一切を小渕官房長官に任せ、淡々と手続が進みました。目立ち
たがり屋で頑張っているフリがお得意な安倍さんは、官房長官に任せていられ
なかったのでしょう。いまや犬HKと揶揄されているNHKも大協力でした。

 世間の目が新元号に向いている間に、きっと何か出てくるはずだと予想して
いましたら、予想もしなかったゴーンさんが再逮捕されました。11日の記者
会見での反論の機会を奪ってしまいました。あの保釈金10億円は何だったの
でしょうか(すぐに返してくれるのかは知りません)。

 事前に再逮捕の可能性が報道されたということは、特捜部のリークがあった
わけで、これもマスコミ操作です。我々、名もなき庶民はこうして日々洗脳さ
れていくのでしょうか。

 さて、今週は商業登記の書き入れ時で、季節労務者の私も久々に多忙を満喫
させていただきました。とくに今年は、4月1日付での組織再編、商号変更、
代表者の交代など会社にとって重要な登記が多かったため、登記内容のことよ
りも、もしパソコンが壊れたら、もし電車が動かなかったら、もし急に倒れた
ら……などという不安と重圧を感じていましたが(もちろん、対策は取ってい
ました)、今は、とりあえずは無事に申請することができて安堵しています。

 お金の動かない商業登記でもこの重圧ですから、億単位のお金が動く、不動
産登記はもっとプレッシャーが大きいでしょう。世間からは単なる書類作成の
代書屋にみえるかもしれませんが、この責任の重さと重圧をもっともっと広報
しなければならないと思いました。

 よく補助者のときは責任はボスが負うので重圧を感じなかったが、独立した
ら強く感じるようになったという話を聞きますが、一身で責任を負うわけです
から、当然でしょう。こればかりは、いくら経験を積んでも慣れないものです。
毎回、試験の合格発表を待つ心境です。


2019.04.04(木)【イチロー選手】(島根・根来川弘充)

 この原稿を書いている3月に、大リーガーのイチロー選手が引退されました。
私と同じ昭和48年生まれ、いわゆる団塊ジュニア世代のスーパースターです。

 今の若い人は知らないかもしれませんが、小学生のときは、ブラウン管テレ
ビで、毎日のようにプロ野球が放送され、同世代のほとんどが野球選手にあこ
がれる時代でした。

 イチロー選手の凄さを考えると、当時は、セリーグの球団が注目される中、
パリーグに関心を持たせ、ホームランが注目される中、ヒットを注目させ、サ
ッカーが注目されつつある中、大リーグに注目させ、新しい価値観というもの
を絶えず、同年代にあたえてきたということではないかと思います。

 東京ドームで行われた3月21日の最終公式戦、発表があった時に、「引退」
を予感させるものを感じ、知人にチケットを頼んだところ、運良く取れて、見
にいくことができました。

 異様な雰囲気ではじまった試合は、延長戦にもなり4時間もの長い試合にな
りましたが、私の中では、何か映画を見ているような感覚で、本当に感無量で
した。

 選手としては引退されましたが、まだまだ、何か新しいことを見せてくれる
だろうと思います。自分ももっと頑張らねばという気になりました。


2019.04.03(水)【新元号】(藤沢・酒井恒雄)

 月曜日に、新元号が「令和」と発表されました。

 新元号には、「人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つ」という意
味があり、「厳しい寒さの後に春の訪れを告げ、見事に咲き誇る梅の花のよう
に、一人一人の日本人が明日への希望とともにそれぞれの花を大きく咲かせる
ことができる、そうした日本でありたい」との願いが込められているそうです。
元号のとおり、優雅で平和な時代が訪れることを願います。

 とはいえ、この元号、ご存じのとおり元号法によって閣議決定されたものな
ので、民意は反映されておりません。個人的には良い元号だと思っていますが、
もっと違う願いを込めた元号を望んでいた人達もいるかと思います。

 過去の時代には、公式な元号とは別に、非公式な元号が使用された時期や地
域もあったようです。元号の持つ意味とはかけ離れた時代になってしまったと
きに、世の中の流れを変えたいという願いを込めて、民間で元号を変えて使用
したことがあったのだとか。

 では、仮に公式な元号と非公式な元号があるとして、もし我々司法書士が、
業界での元号を付けるとしたら、どのようなものがいいでしょうか。
 
 「司進」「司楽」「登栄」?

 新元号を予想する楽しみは終わってしまいましたが、施行までの約1ヵ月、
業界の繁栄を願いつつ、独自の元号について考えてみるのも面白そうです。


2019.04.02(火)【戦後商法のあゆみ⑧ 昭和37年改正~その2~】
                          (東京・鈴木龍介)

 「戦後商法のあゆみ」の8回目は、昭和37年商法改正の続きです。

3.商業登記に関する規律
(1)概説
 昭和37年改正商法は主に計算に関する規律の見直しがなされたわけで、商
業登記に関する通則的規律の改正はなされていない。ただし、後述のとおり株
式会社の登記に関連する改正は少なくない。

 一方、昭和37年改正商法の施行直後に、それまで非訟事件手続法
(明治31年6月21日法律14号)の中に規定されていた商業登記に関する
規律が、商業登記法(昭和38年7月9日法律125号)という単独法として
制定されたことは特筆すべきであろう。
 なお、商業登記法は、昭和39(1964)年4月1日に施行された。 

(2)株式会社と登記
 昭和37年改正商法において、改正等された株式会社の登記と密接に関係す
る主な規律は、次のとおりである。

① 債権者異議申述期間の短縮
 合併(昭和37年改正商法100条但書)ならびに資本の減少(昭和37年
改正商法376条2項/100条但書準用)にかかる債権者異議申述期間につ
いて、3か月から1か月に短縮された。

② 支店の設置等の位置づけの見直し
 支店の所在地について、定款の絶対的記載事項から除外され(昭和37年改
正商法166条1項8号/昭和37年改正前商法166条1項5号参照)、支
店の設置・移転・廃止については、取締役会の決議事項とされた(昭和37年
改正商法260条)。

③ 代表取締役の住所登記の新設
 代表取締役の住所が登記事項とされ、取締役・監査役の住所については登記
事項から除外された(昭和37年改正商法188条2項8号/昭和37年改正
前商法188条2項9号参照)。

④ 新株発行の効力発生時の明確化
 新株発行において株主となる時期について、その払込期日から株主となると
されていたところ、払込期日の翌日から株主になると改められた(昭和37年
改正商法288条ノ9第1項)。

⑤ 社債の登記事項からの削除
 社債について、転換社債を除き、登記事項から除外された(昭和37年改正
商法341条ノ4/昭和37年改正前商法305条参照)。

⑥ 株券提出期間の短縮
 株式併合にかかる株券提出期間について、3か月から1か月に短縮された
(昭和37年改正商法377条1項但書)。

~参考文献等~
 ・三和良一『概説日本経済史 近現代(第3版)』
 (東京大学出版会、2012年)185頁~200頁
・秋坂朝則『商法改正の変遷とその要点(新訂版)』
 (一橋出版、2006年)50頁~56頁
・森光雄「高度経済成長と計算規定の近代化―昭和37年の改正、昭和38年
 計算書類規則制定―」浜田道代編『日本会社法の歴史的展開』(商事法務、
 1999年)301頁~333頁
・鈴木竹雄=竹内昭夫『商法ととともに歩む』
 (商事法務、1977年)349頁~375頁
・味村治ほか「座談会 戦後の会社法改正事情(上)」
 商事法務No.1229(1990年)19頁~30頁


2019.04.01(月)【期首の代表者交代】(金子登志雄)

 3月決算会社にとって今日は新年度の開始(期首)です。新入社員の入社式
を行うところも多いことでしょう(これは決算期に関係ありませんが)。

 さて、案の定、上場会社の子会社で、年度末の3月31日に代表取締役であ
る取締役Aが辞任し、4月1日から後任の代表取締役Bが就任する事例がいく
つかありました。恒例の人事異動です。

 顧客からメールの添付ファイルで送付された取締役会議事録をみると、予想
どおり3月に代表取締役の予選を行っていました。これでは登記が受理されま
せん。登記実務は、4月1日からの代表取締役は4月1日の取締役が選定すべ
きであり、それを前もって行ったと評価される場合にのみ、すなわち、取締役
会の構成メンバーが取締役会決議時と4月1日時点で一致した場合しか代表取
締役の予選を認めないからです(私は大反対)。

 会社の担当者が困った様子でしたので、株主1名であることを幸いに、金子
方式(定款の附則に平成31年4月1日からの代表取締役は株主総会で定める
ことができる。本附則はその登記が完了したら自動的に削除されるとし、株主
総会で代表取締役を定める方式)を実行してもらいました。定款変更には抵抗
があったようですが、緊急避難です。

 こういう事例でも定款変更に抵抗のある会社は、再度4月1日に取締役会を
開催し、出席役員全員の印鑑証明を準備して新代表取締役を選定するでしょう
が、取締役に出席の都合がつくか不明ですし、午後遅い時間での開催では4月
1日登記申請に間に合いません。

 非取締役会設置会社でも、代表取締役は取締役の互選で定めると定款にあっ
た場合は、同じ問題が生じます。株主が1名や同族ばかりの会社には互選規定
を廃止するよう進言し、緊急の場合は金子方式にしています。

 効力発生後2週間以内に登記すればよいのだから4月1日登記にこだわる必
要がないじゃないかと思われた方も多いでしょうが、組織再編や商号変更等の
効力発生日が4月1日だと、それを登記した登記記録を早期に入手して届けな
ければならない先が多いようで、登記を急がねばなりません。

 今日は私の常連顧客3社が商号変更、組織再編を行いますので、私にとって
は数年ぶりに多忙かつ充実した日になりそうです。たった1日で終わるのが残
念ですが………。


2019.03.29(金)【会社の業務(の執行)とは】(金子登志雄)

 平日でいうと3月最後の日になりました。今日は4月1日登記申請の間違い
探しを予定していますが、他人の作った書類の間違い探しは得意でも、自分の
作ったものは、見落としが出てきそうです。

 さて、先週金曜日の立花さんの投稿に、「解散すると合同会社は清算持分会
社となり、会社の業務を執行するのは清算人となります(会社法650条)」
とありましたが、この表現に「あれ?」と感じませんでしたか。

 私は、昔、会社法650条をみて感じました。「業務」とは事業会社にしか
使わないと思い込んでいたからです。

 現在の私の理解は、業務又は業務執行とは会社の目的を達成するために行う
行為だというものです。次のようになります。

 ① 事業会社中は、定款記載の事業目的を達成するために行う行為であって、
  株式会社では取締役、合同会社では業務執行社員の担当。
 ② 会社設立段階では、会社成立目的を達成するために行う行為であって、
  株式会社では発起人、合同会社では社員の担当。
   (例)本店所在場所や株主名簿管理人の選任などの業務執行は発起人の
     役割(頭数基準か議決権基準かの議論はあります)。
 ③ 会社清算段階では、会社の清算目的を達成するために行う行為であって、
  株式会社でも合同会社でも清算人の担当。

 上記で業務執行行為を「目的達成のために行う行為」としたのは、取締役や
業務執行社員、清算人の選任行為は業務執行担当者を定める行為であって業務
執行行為そのものとはされていないことを意識したためです。

 立花さんの説明は、合同会社が解散すると業務執行社員は①の業務執行がで
きなくなるので登記記録からも抹消されるが、清算人選任行為の権限は社員権
のうち会社の運営に参加する権利(議決権など)の問題であって、これは解散
によっても奪われるものではないということです。

 定款で、業務執行社員の互選で代表社員を定めるとした場合も、「創業社員
の互選で代表社員を定める」とした場合と同様に、社員の一部の権限にしただ
けで(総社員の同意の要件を緩和しただけで)、業務執行行為だからではない
ため、業務執行社員が法人の場合は法人の代表者が権利行使すべきであり、職
務執行者ではないとの立花見解につながっていくわけです(立花著『商業登記
実務から見た合同会社の運営と理論』120頁)。
 
 登記実務とは相違しますが、いつの日か、これが定説になると信じています
が、少なくとも今後に出版される合同会社の本は立花見解を避けて通ることが
できないでしょう。その意味で価値ある出版であり、監修に関与することがで
き、立花さんに感謝しています。


2019.03.27(水)【まちがい探し】(藤沢・酒井恒雄)

 登記申請情報や登記すべき事項について、何度も見直しをして、万全と思っ
て申請したところ、法務局から補正の連絡が来て、がっかりすることがありま
すよね?

 あんなに見直しをしたのに、添付書面に誤字があったとか、登記すべき事項
の漢字に誤りがあったとか、なんでここに気づかなかったのだろう? と後で
不思議に思ったりします。大きなミスではないといえ、小さなミスが何度も続
くと、司法書士に向いていないのでは?と落ち込んでしまいます。

 たびたび、落ち込んでいた私ですが、最近になって、このような小さなミス
がめっきり減ったことに気づきました。

 つい先日も、商号変更と同時に改印をする案件で、印鑑届等に押印された印
鑑の商号と、変更後の商号が少し違うことに気づきました。依頼人に確認した
ところ、印鑑の発注ミスだったことが分かり、改めて印鑑届に再発注した会社
印を押印し、登記申請することとなりました。我ながら冴えているな?と思い、
何故だろうかと原因を考えたところ、ふと、思いあたることがありました。

 それは、まちがい探しの本です。最近、子供と一緒に、まちがい探しの本で
遊んでいます。本を開くと左右に絵があって、互いの絵のまちがいを探すので
すが、子供用とはいえ、これがなかなか難しいのです。

 このページには5カ所のまちがい、このページには10カ所のまちがいと、
様々な出題があるのですが、必ずと言っていいほど、最後の一つが見つかりま
せん。つい、ムキになって探してしまいます。そんな遊びにつきあっているう
ち、違和感を覚える部分を発見する感覚が鋭くなったのではないかと勝手に思
っております。

 もしかしたら、司法書士の業務の精度を上げるのに非常に効果がある遊びか
もしれません。大人用のまちがい探しの本ですと、おそらく高度過ぎて目や頭
が疲れてしまうと思うので、子供用が丁度いいかもしれません。効果の保証は
出来ませんが、頭の切り替えにもなりますので、試す価値があるのではないで
しょうか。


2019.03.26(火)【戦後商法のあゆみ⑦ 昭和37年改正~その1~】

                          (東京・鈴木龍介)

 「戦後商法のあゆみ」の7回目は、昭和37年商法改正を取り上げます(少
々、長くなりますので2回に分けることにします。)。

1.背景等
 昭和30年商法改正は、いわゆる新株引受権問題の緊急措置的な側面があっ
たわけだが、その前後に商法、とりわけ株式会社法制の根本問題が議論されて
いた。

 具体的には、ⅰ)最低資本金制度、ⅱ)監査のあり方(重複監査)、ⅲ)株
式額面額の引き上げ、ⅳ)会社の規模区分等があげられるが、それとともに、
商法の計算に関する規定は、ほぼ明治32年商法制定時のままであり、昭和
24(1949)年に公表された企業会計原則や、昭和25(1950)年に
制定された財務諸表規則との矛盾やかい離が多く、その実効性が失われていた。

 そこで、法制審議会では、昭和33(1958)年3月から商法部会におい
て株式会社の計算に関する規定の見直しの検討を開始した。この商法部会には
会計学者も交えて審議が進められたところ、当初の予想に反し審議は難航した。

 そのような中、東京商工会議所、全国株式懇話会等の経済団体から改正に関
する意見が発表された。また、法務省民事局は、昭和35(1960)年8月
に「株式会社の計算の内容に関する商法改正要綱(法務省民事局試案)」を公
表し、大学や経済団体に意見照会を行った。

 この時代は、日本は世界に類をみない高度経済成長を遂げることとなり、そ
の象徴的な出来事として昭和39(1964)年の東海道新幹線開業(東京・
新大阪間)と東京オリンピックの開催があげられよう。

 この経済成長においては、神武景気・岩戸景気・いざなぎ景気という比較的
長期に渡る好景気が下支えをし、重化学工業化の進行に伴う設備投資が急拡大
し、企業の資金需要も増大した。その影響等から、大手銀行を中心とする企業
グループが形成され、グループ内でのⅰ)系列融資、ⅱ)株式の相互持合い、
ⅲ)系列商社を媒介とする取引などが活発に行われ、企業の安定的成長に寄与
したといわれている。世界に目を転じると、キューバ革命による社会主義国家
の成立(1959年)や、東ドイツによるベルリンの壁の建設(1961年)
など東西対立構造が先鋭化した頃である。

2.概要
 法制審議会は、昭和37(1962)年1月に商法部会において「商法の一
部を改正する法律案要綱案」を決定し、同年2月の総会において「商法の一部
を改正する法律案要綱」を決定した。

 当該要綱に基づく改正法案は同年3月に国会に提出され、4月に「商法の一
部を改正する法律」(昭和37年4月20日法律148号/以下、「昭和37
年改正商法」という。)が成立、昭和37年4月20日に公布され、昭和38
(1963)年に制定された「株式会社の貸借対照表及び損益計算書に関する
規則」(昭和38年3月30日法務省令31号)とともに、昭和38
(1963)年4月1日に施行された。

 なお、法制審議会の要綱に含まれていた計算書類の登記所での公開について
は、実施のための法務省の予算措置の関係から改正法案から除外された。これ
は、これまで法制審議会が答申した要綱を忠実に法案としていたことを踏まえ
ると特筆すべき点であったといえよう。
 ~続く~


2019.03.25(月)【イチロー現役引退】(金子登志雄)

 プロ野球のイチロー選手が現役を引退しました。スポーツには全く関心のな
い私も、体の重さを少しも感じさせずカモシカのように走るイチロー選手の姿
には神々しささえ感じてしまったものでした。

 45歳だそうですが、野球選手としては年齢的にもピークを過ぎていたこと
があきらかです。先般、引退した横綱の稀勢の里は32歳でしたから、相撲の
世界よりは寿命が長いとはいえ、45歳で定年退職とは(?)、寿命の長いわ
れわれ自由業の世界からは、申し訳ない気がしてしまいます。

 前に書きましたが、昨年の司法書士試験合格者の平均年齢は、38.77歳
でした。
   http://www.moj.go.jp/content/001272183.pdf

 つまり、学歴一切不問でインターンも不要なわが司法書士の世界は、転職に
最適な資格であり、受験生も年齢を重ねた人が多いということです。こうして、
司法書士の世界では、40代でも若手、50代は中堅、60代以上がベテラン、
70代でも80代でも健康であれば現役でいられるという年齢的には実にあり
がたい世界です。

 このありがたさは60代を超えると分かります。定年退職者(年金生活者)
の参加が多い平日における海外旅行のツアーに参加したりすると、同世代の私
がノートパソコンを持参している姿をみて、「あれ、まだ現役ですか」と羨望
の目でみられることが多いからです(私の錯覚で「まだ働かないと生活できな
いの? お気の毒に」とみられている可能性も否定できませんが………)。

 まだまだ若いイチロー選手は今後どう生きるのでしょうか。頭のよい人です
から、狭い野球界だけにとどまる方とは思えません。貴乃花同様に政治家への
勧誘も出てくるでしょうが、組織人よりもNPO法人を設立し何かなさるほう
が向いているでしょう。米国生活が長かったので、イチローの英会話教材でも
売り出せば爆発的に売れるかななどと馬鹿なことも想像してしまいました。

 今後の新しい人生におけるご活躍に期待しましょう。


2019.03.22(金)【解散した合同会社の継続後の業務執行社員】
                           (仙台・立花宏)

 2月に出版した拙著『商業登記実務から見た合同会社の運営と理論』(中央
経済社)ですが、おかげ様で、販売は順調のようです。ところで、今回の本の
内容は、おもに社員の変更の場面に焦点をあてましたが、他の部分についても、
引き続き研究を進めております。

 たとえば、合同会社の「業務執行社員」の登記は、解散の登記をしたときは
登記官の職権で抹消する処理がとられます(商業登記規則91条1項)。これ
にはどのような意味があるのでしょうか。

 株式会社(取締役会設置会社とする。以下、同じ)においても、解散した場
合には「取締役会設置会社」や「取締役」の登記は、登記官の職権で抹消する
処理がとられます(商業登記規則72条1項1号)。これと同じと考えてよい
でしょうか。

 株式会社が解散した場合に「取締役会設置会社」の登記が抹消されるのは、
定款に定めた取締役会に関する規定の効力が停止され(注1)、それを公示す
るためといえます。「取締役会設置会社」の定めを廃止する定款変更がなされ
たわけではないことに注意が必要です。

 一方、「取締役」の登記が抹消されるのは、在任していた「取締役」が解散
により退任するため、それを公示するためといえるでしょう。

 そのため、解散した株式会社が会社を継続した場合、定款の「取締役会設置
会社」の規定は効力の停止が解かれ、「取締役会設置会社」として事業株式会
社に復帰することになりますが、「取締役」については解散により退任済のた
め、継続にあたり、あらためて選任の手続が必要となります。

 では、「業務執行社員」を定款で定めている合同会社についてはどのように
考えることになるでしょうか。定款で定めた「業務執行社員」は、株式会社の
「取締役」と同じように解散により退任し、「業務執行社員」についての定款
規定は効力を失うことになり、会社を継続する場合は、同一人が「業務執行社
員」になる場合でも、あらためて定款に「業務執行社員」として定める必要が
あるのでしょうか。登記実務はそのように扱われているものと思われます(注
2)。

 しかし、定款で「業務執行社員」を定めている合同会社が解散した場合には、
清算人は「業務執行社員」の過半数の同意によって定めることができます(会
社法647条1項3号かっこ書)。これは、解散後、清算人を変更する場合で
も同様です(注3)。

 清算人の選任権限などは業務執行行為そのものではないため、清算持分会社
になってもその権限は存在し、行使することができるということだと思います。
つまり、定款の「業務執行社員」の定めは効力を失いませんし、解散した株式
会社の「取締役会設置会社」の定款規定のように効力停止状態となるわけでも
ないということです。

 解散すると合同会社は清算持分会社となり、会社の業務を執行するのは清算
人となります(会社法650条)。定款で「業務執行社員」と定められた社員
は会社の業務を執行する立場ではなくなります。「業務執行社員」の業務を執
行する権利・義務を行使・履行することができない状態になるので、取引の安
全の観点から、その状態を公示するために職権で抹消する処理がなされるとい
えるでしょう。

 そのため、解散した合同会社が会社を継続した場合は、定款の「業務執行社
員」の規定は引き続き有効であり、解散中に行使・履行することができない状
態となっていた「業務執行社員」の業務を執行する権利・義務が履行可能な状
態に復すると考えます。

 よって、登記実務の見解とは異なりますが、清算持分会社から事業持分会社
への復帰にあたり、あらためて、別の社員を「業務執行社員」として定めたい
という(総)社員の希望があるのであれば別ですが、会社の継続を決定しても、
(総)社員が特に「業務執行社員」の変更を望んでいないのであれば、あらた
めて「業務執行社員」を定める定款変更は不要と考えました。

 今回の本には掲載しませんでしたが、いつの日か、こうした社員の変更以外
の部分もなんらかの形でまとめてみたいと思っております。

 注1)金子登志雄ほか『事例で学ぶ会社法実務全訂版』(中央経済社)
   295頁以下
 注2)松井信憲著『商業登記ハンドブック第3版』(商事法務)
   720頁の注1
 注3)松井信憲著『商業登記ハンドブック第3版』(商事法務)713頁


2019.03.20(水)【ハラスメント】(藤沢・酒井恒雄)

 先日、労働法関連のセミナーに参加してきました。寝不足気味でしたので、
後方の席でゆったりと講義を聴こうと会場に入ったのですが、少人数のグルー
プに分かれてワークをする形式のセミナーであることが判明し、一気に眠気が
飛んでしまいました。

 おかげさまで、ほどよい緊張感の中、「仕事とは何か?」といった、法律の
範疇に収まらない、労働の本質に関する議論もできて、とても良い勉強になり
ました。その中でハラスメントの話しになったのですが、セクハラ、パワハラ
等、ハラスメントという名がついている問題行為の種類は、今や40種類以上
あるらしいです。

 そんなハラスメントの一つの類型として、「ブラハラ」というのがあるそう
ですが、皆さん、ご存じでしたか?

 ブラック・ハラスメント? ブライダル・ハラスメント? 同僚とのお酒の
席で、このクイズを出したときは、「ブラ」という言葉のせいで変な方向に連
想が進んでしまい、危うく別のハラスメントになるところでした。

 正解は「ブラッド・タイプ・ハラスメント」です。血液型で人の性格等を決
めつけてしまうハラスメントです。あなたO型でしょ?大雑把な感じだもんね。
やっぱりA型か。どうりで話しが細かいと思った。AB型の人って、二重人格
だよね。酒井さんB型でしょ?人の話し聞いてないもん・・・。

 といった感じで、確かに、悪意のある言い方をすれば、相手が不快になる可
能性があります。ちなみに私はB型なので、前述のように言われてもハラスメ
ントとは感じません。それがB型なのです。しかし、こういう言い方も、私以
外のB型の人に対するハラスメントになるのかもしれません。なかなか難しい
ですね。

 ただ、セミナーの講師も、なんでもハラスメントとして捉えることの危険性
を説いていました。当たり障りのない会話だけでは、良い人間関係は作れませ
んよね。

 あれはダメ、これはダメと、タブーが増えることに比例して、コミュニケー
ションが希薄になって行く危険性も増えるかと思います。委縮してコミュニケ
ーションが取れなくなる方が、より深刻な問題になると思うのですが、どうな
のでしょうか・・・・・。


2019.03.19(火)【戦後商法のあゆみ⑥ 昭和30年改正】
                         
(東京・鈴木龍介)

 2回ほどお休みをしましたが、今回は「戦後商法のあゆみ」の6回目として、
昭和30年商法改正を取り上げます。

1.背景等
 昭和26(1951)年9月に調印されたサンフランシスコ平和条約が翌年
の4月に発効したことで、日本は連合国軍最高司令官司令部(GHQ)の占領
下から主権を回復した。また、昭和25(1950)年に勃発した朝鮮戦争に
おいて、日本はその物資の補給基地となったことから、いわゆる「朝鮮特需」
という好景気が訪れ、戦後復興の大きな足がかりとなった。

 昭和27(1952)年8月の行政機構改革により、法務府は法務省と改称
され、機構の大幅な整理が行われた。具体的には総裁・長官制は廃止され、他
の省と同様に法務大臣を長とし、その下に事務次官が置かれ、法制に関する事
務を所掌した法制意見各局を内閣に移管し、大臣官房のほか民事局・刑事局・
矯正局・保護局・訟務局・人権擁護局・入国管理局の7局体制となった。

2.概要
 昭和25年商法改正の審議では、株主の新株引受権の取扱いについて紛糾し
たが、一種の妥協ともいうべきかたちで、原始定款の定めにより株主の新株引
受権を付与・制限・排除をすることとし(昭和30年改正前商法166条1項
5号)、あわせてそれを登記事項とした(昭和30年改正前商法188条2項
1号)。ただし、当該定款の定め方については多くの疑義が生じ、実務は相当
に混乱をきたすこととなった。

 その手当として、法務府は登記の面から定款の定め方、すなわち登記事項の
取扱いにかかる通達を発出した(昭和26年7月5日民甲1435号通達(法
務省民事局編『登記関係先例集 下』(テイハン、1955年)2407頁~
2408頁))。当該通達により実務における混乱は収束するかに見えたが、
示された定め方の内容等の不備の指摘とともに、行政権による法形成であると
いう批判が噴出した。

 そこで、法務省は昭和27(1947)年12月に各方面に新株引受権問題
を含む商法の改正にかかる照会を行い、そのうえで昭和29(1949)年7
月に法務大臣から法制審議会に商法改正の諮問がなされ、法制審議会の商法部
会で検討が開始され、昭和30(1950)年1月には法律案要綱仮案を公表
した。

 なお、その直後に電気化学工業事件(東京地判昭和30・2・28下民集6
巻2号361頁)において、当該通達で有効なもの、かつ実務でも多用されて
いた定めを無効とする判決が出され、実務に大きな衝撃を与えることとなった。

 対応を急いだ法制審議会は、昭和30(1950)年3月に改正法律案要綱
を答申し、同年5月に国会に法案が提出され、新株引受権問題に対応する改正
である「商法の一部を改正する法律」(昭和30年6月30日法律28号/以
下、「昭和30年改正商法」という。)が成立、同年6月30日に公布、翌日
の7月1日に施行された。

3.商業登記に関する規律
 昭和30年改正商法では、問題の新株引受権に関する事項を定款の絶対的記
載事項からはずし、登記事項からも除外(昭和30年改正法前166条1項5
号・188条2項1号参照)するとともに、新株引受権に関する事項の決定に
ついては、別段の定めがない限り、取締役会で行うこととされた(昭和30年
改正商法280条ノ2第1項5号)。

 また、株主以外の第三者に対し新株引受権を与える場合には、既存株主の保
護の観点から株主総会の特別決議を要することとされた(昭和30年改正商法
280条ノ2第2項)。

 一方で、この新株引受権問題の影響を最小限にとどめるため、昭和30年改
正商法施行前に定めた新株引受権に関する定款の不備については、会社の成立
や新株の発行等の効力を妨げないという措置が講じられたこと(昭和30年改
正商法附則3項)は特筆すべきであろう。

~参考文献等~
・秋坂朝則『商法改正の変遷とその要点(新訂版)』(一橋出版、2006年)
 47頁~50頁
・浜田道代「新株引受権騒動への緊急対策―昭和30年改正―」浜田道代編
 『日本会社法の歴史的展開』(商事法務、1999年)292頁~300頁
・鈴木竹雄=竹内昭夫『商法ととともに歩む』(商事法務、1977年)
 197頁~211頁
・味村治ほか「座談会 戦後の会社法改正事情(上)」
 商事法務No.1229(1990年)12頁~19頁


2019.03.18(月)【合同会社と株式交換】(金子登志雄)

 立花著『商業登記実務から見た合同会社の運営と理論』は発売後1か月経過
したため、そろそろ売行きが減少するかと心配でしたが、おかげさまで、まだ
順調でした。法律実務書ですから、売れているといっても、数百冊レベルにす
ぎませんが、これで出版社にも顔向けすることができますので、著者の立花さ
んも監修者の私もやれやれといったところです。 

 ちょうど、新日本法規や商事法務からも合同会社本がほぼ同時期に出版され
ましたので、相互に宣伝しあう関係になっているのがよい結果を産んでいるの
かもしれません。決して相互につぶしあう関係ではなく、それぞれ読者ターゲ
ットも特徴も違いますので、中には3冊とも購入したという方もいらっしゃる
のではないでしょうか。

 これらの結果、今後ますます合同会社のニーズが高まるかと思いますが、本
欄2月8日(金)古山さんの「合同会社を完全親会社とする株式交換」は衝撃
でした。そこにある原典の司法書士ブログとは、外国会社に強いことで司法書
士の間で著名な草薙司法書士による下記です。
 http://shoshi-kusanagi.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/post-8c64.html

 この規定は直ちに改めるべきでしょう(法務省令ですから改正は難しくあり
ません)。第1に、第三者間の株式交換では高額な資本金になります。第2に、
同一企業グループ間では効力発生日の子会社の簿価純資産額が正確に把握でき
ないため、即座の登記申請に支障が生じます。そのため、せっかく制度があっ
ても、現実には合同会社が完全親会社になる株式交換は無理だからです。

 株式会社同士の株式交換でも、税法では無対価株式交換の存在を認めながら、
会計処理に関する会社計算規則には規定を欠くなどの問題があり、株式交換の
会計処理の規定の整備は焦眉の課題だと思っています。


2019.03.15(金)【取締役会への出席権】(金子登志雄)

 またもや、ゴーン問題で恐縮ですが、本日の内容は、会社法実務に関連した
ものですので、ご了承ください。

 さて、日産ゴーン氏は弁護士を同行させるとまで提案して取締役会への出席
を求めましたが、西川社長の日産(と検察)が強硬に反対したためか、地裁は
出席を認めませんでした。他の取締役に圧力をかけて証言を拒絶させたりする
恐れがあるとでも判断したのでしょうか。弁護士が同行するのに………。

 日産の経営執行部の対応には情けない思いでした。国際的大企業の役員であ
るにもかかわらず、鶏小屋に狼を入れないでといったようなことを裁判所に求
めることは、日産には、鶏並みのひ弱な取締役ばかりだと世間に公表したのと
同じことになるという感覚はなかったのでしょうか。

 また、株主から選任された取締役の出席権を現経営執行部に反対する権限は
ないはずです。会社は株主のもので、一部の経営者のものではありませんし、
これが可能なら、取締役会決議が一方に偏ってしまいます。

 現状では孤軍奮闘のゴーン氏のほうが、下手に出席して袋叩きにあわないか、
議長に発言中止を命じられないか、警護の者につまみ出されないかなどの不安
が大きいことでしょう。それにもかかわらず、株主から委託された取締役の責
務として取締役会に出席したいという正々堂々とした彼の態度の方を私は評価
してしまいます。

 それにしても、取締役の取締役会への出席権というのは、この程度で否定さ
れるほど脆弱なものなのでしょうか。この問題、会社法や商業登記の論点にも
なります。

1.議案の特別利害関係人とされたわけではないため、例えば、取締役が3名
 又は4名の会社で、1人が病欠、1人がゴーン氏だったら、取締役会自体が
 不成立になりますが、それでよいのでしょうか。地裁が出席禁止にしたら、
 定足数からも除外するような法改正は不要でしょうか。

2.取締役が5人で、ある議案につき、ゴーン氏が出席すると3対2で可決す
 る場合も2対2で可決しないことになり、やはり裁判所がここまで会社の経
 営に口出ししてよいのでしょうか。

 そこで私は、保釈条件の監視カメラをヒントに、妥協点として、電話又はテ
レビ会議出席なら裁判所も認めてくれるかと考えましたが、以下のとおり、こ
れも難題が多々ありました。

 登記で認められている電話会議などは既に取締役会がそれでなされた後に、
この会議は有効だと認めたものであって、これから取締役会を開催する際に、
取締役の1人が電話参加にしたいと要求すれば認められるものかについては、
どこかに解説はあるのでしょうか。

 取締役会の招集通知に、その旨の肯定が記載されていないと不可なのか、会
議参加者の過半数が賛成すれば、それによることができるのか、あるいは、そ
れによらねばならなくなるのか、単に議長の議事進行権の問題であって、議長
1人の判断に委ねられるのか。

 病気の取締役が病院にいたままで電話会議方式で出席したいといった場合に、
議長は不可といえるのか、不可とした場合に取締役の出席権妨害として決議無
効にならないのか……等々、検討課題がたっぷりありそうですが、現段階では、
学者さんも、そこまで検討していないでしょう。ゴーン事件の派生効果として、
ぜひ、活発な議論や論文をお願いしたいところです。


2019.03.14(木)【新たな制度による定款認証】(東京・古山陽介)

 公証人法施行規則の改正後、株式会社や一般法人の設立登記の依頼がなく、
改正から4か月がたって、ようやく新たな定款認証制度による定款認証手続き
を利用しました。

 昨年の11月15日(改正前)に投稿したものの、実際に手続きを行ってい
ないので、どのような運用がなされているのか気になっていました。

 昨年の11月15日の記事でも書かせていただきましたが、一見、そんなに
手間が増えるようには感じないのですが、やっぱり実際のところそうでもない
という感じを受けました。

 公証人によって取り扱いが異なるのでしょうが、定款の内容を事前に確認し
てもらうタイミングで申告書を提出したところ、従来よりも回答に時間がかか
るようになったように思います。

 また、定款に記載する発起人の住所氏名については、本人確認書類の住所氏
名にマンション名が入っていた場合、その通りに定款に書くよう求められたり、
でも印鑑証明書にマンション名が入っていなければ、印鑑証明書と同じでもよ
いとか、以前よりも発起人の住所氏名については、注意を払う必要があるよう
な気がします。

 そして、認証手続きの場面でも、これまでよりも時間がかかりました。おそ
らく定款認証時に発行される「申告受理証明書」の作成が増えたことによるも
のだと思います。(嘱託人からの希望があった場合とされておりますが、要否
を確認されることなく発行されると思います。)

 この証明書には、確認時に提出した申告書、本人確認証明書(免許証の写し)、
認証時に持参した発起人の印鑑証明書の写しが綴られて交付されます。

 また、公証人による定款の認証文言にも実質的支配者の氏名とその者が非該
当であることを申告した旨が記載されています。

 個人的には、定款の認証文にもこのような文言が記載されるのであれば、電
子認証の場合には、わざわざ紙で証明書を発行するのではなくデータで入れて
もらえたほうが一体性があるようにも思ったりもします。

 設立手続きの迅速化を掲げながら、手間や時間が以前よりもかかっているよ
うに感じるのは私だけでしょうか。


2019.03.13(水)【狼少年の話】(藤沢・酒井恒雄)

 狼少年の話をご存じでしょうか? 狼が来たぞと、村人たちに繰り返し嘘を
ついていた少年が、ある日、本当の狼が来たときに信じて貰えず、痛い思いを
するという話です。嘘ばかりついていると、誰も信用してくれなくなるという
教訓が示されている、代表的な童話です。

 この狼少年が辿る結末なのですが、私は、少年が狼に食べられてしまったと
記憶していました。しかし、原作は、少年が飼っていた羊が、全部狼に食べら
れてしまったという結末なのだそうです。

 自分が間違えて覚えていたのかと思いきや、日本で翻訳された本の多くが、
少年自身が食べられてしまうという結末になっていることが分かりました。し
かし、最近は、ほとんどの本が、原作どおりの結末になっているようです。原
作とは結末を変えて訳した意図は、子供達の心に響くようにと工夫した結果な
のではないかと思います。

 自分の羊が食べられてしまったという、財産的な痛みよりも、自分が食べら
れてしまうという、身体的な痛みの方が想像しやすいですよね。

 閻魔大王様しかり、嘘をつくと舌を抜かれてしまうと聞いたほうが、子供と
しては、嘘はつくまいと強く思うのではないでしょうか。

 もっとも、そういった話しで教えられなくても、人生において嘘をつくこと
のデメリットを理解できる子には、普通に説明すればいいことなのかもしれま
せん。ただ、自分には効果があったことは確かです。

 恐怖心を煽って子供を律することは、時代錯誤になってしまいますが、私は、
フィクションの恐怖と、ノンフィクションの恐怖とでは、恐怖の質が違うと思
っています。

 悪く言えば、脅しということになるのですが、脅しにも良質なものと悪質な
ものがあるように思うのです。

 もちろん、体罰や虐待、ハラスメントの問題が大きく影響していることは理
解しています。また、子供に危害を加える事件を起こした親が、決まって「し
つけのつもりだった。」と言い訳しますが、その考え方と紙一重になってしま
うのかもしれません。

 とはいえ、読み聞かされた童話の結末が原作どおりだったら、狼少年の話を
知っているかと聞かれたとき、なんとなく覚えているけど、どんな話しだった
かな?と今の自分は答えているではないかと思っています。


2019.03.12(火)【新刊『商業登記実務から見た合同会社の運営と理論』】
                         
(東京・鈴木龍介)

 本コーナーでも何度か取り上げられていますが、遅ればせながら立花宏さん
著による『商業登記実務から見た合同会社の運営と理論』を入手いたしました
ので、解説者的?に紹介したいと思います。

 まず、本書の構成は、以下のとおり全7章で、Q&A+解説(全139問)
という形式をとっています。
 第1章 合同会社とは
 第2章 社員の変更
 第3章 業務執行社員
 第4章 代表社員
 第5章 職務執行者
 第6章 計算
 第7章 資本金の額の減少・債権者保護手続

 次に、本書の特徴として、1つ目は、“はしがき”にもあるとおり、合同会
社の運営に着目した点です。合同会社の運営に関しては、株式会社と異なり、
法令の規定は少なく、実務の蓄積もほとんどないのが実情です。また、持分会
社の特色である、組合的な自由な運営の許容といっても、果たしてどこまで認
められるのかという点はいつも、ひっかかります。そこで必要になってくるの
は、もう1つのキーワドともいえる「理論」です。理論に裏打ちされた指針は
大変、実務を展開するうえでは有用であるといえます。

 2つ目は、合同会社の計算にかなり注力されている点です。これまでの合同
会社本では、この部分に目をそらしていたような気がします。そこに切り込ん
だ勇気に拍手です。合同会社の実務に携わるうえでは、この計算にプラス税務
面がしっかりカバーできれば合同会社の利用への不安がかなり低減されるよう
に思います。

 3つ目は、立花さんらしく、しっかりと過去の文献等を踏まえたうえで(凡
例ベースで、私が執筆等に携わった書籍も4冊掲示いただいております。感謝
です。)、おそらく監修者の金子さんや協力者の幸先さんとの激しいやりとり
を交え、一定の結論を導き出されたものと思われます。

 本書では、あえて組織再編(含む解散・清算)には触れられていませんが、
実務でも登場してくるケースがポツポツでできておりますので、続編として、
そのあたりにチャレンジいただければと思っております。

 以上、お奨めの1冊ということで、ご紹介させていただきました。

『商業登記実務から見た合同会社の運営と理論』 
  https://is.gd/4EQQuk



2019.03.11(月)【武器対等の原則】(金子登志雄)

 ゴーン事件につき、証拠隠滅などいくらでもできることになるので保釈すべ
きではなかったという意見もあるようですが、それは有罪を前提とした取調べ
側の論理であり、検察対被告人が対等に戦うにはゴーン氏側にも十分に防衛の
準備をさせなければ不公平だというのが近代法の基本ルールです。

 民事訴訟では当事者平等主義とか、武器対等の原則といいますが、刑事訴訟
でも同じでしょう。そもそも、捜査は警察の役割で、法廷で検察官と被告人が
対等に戦うのが刑事訴訟の基本ルールですが、地検特捜部は、検察が直に捜査
しますので、この点でも平等とはいえない部分があります。

 念のため、用語の使い方を確認するためネット検索しましたら、武器対等の
原則は、いまでは刑法の正当防衛の相当性を判定する概念として用いられるこ
とのほうが多いことを知りました。素手で攻撃されたのにバットで応戦したら
正当防衛になるのかなどといった際に使うようですが、昭和の時代には、この
概念は使われていなかったと思いますので(?)、勉強になりました。

 ゴーン氏側からいわせれば、突然、相手陣営に監禁されただけでなく、マス
コミで盛んに人格攻撃や有罪確定の機運を盛り上げられているのに、何の反論
(正当防衛)の機会も与えられていなかったわけですから、ボクシングに例え
れば、リングに上がる前に手足を縛られたまま相手方から執拗に弱点を調べら
れ、審判や観客にもゴーンは悪い奴だから、決して応援してはならないという
印象操作をされているわけです。

 少なくとも、今後の報道や法廷においては、公正なガチンコ勝負をみせてほ
しいものです。

 なお、先週金曜日の本欄で「ゴーン氏保釈は弘中弁護士の功績」のように書
きましたが、保釈に関しては高野隆という弁護士のアイデアだったようで、訂
正いたします。一般的には聞きなれない名前ですが、刑事事件の弁護人として
は、3本指にも入るほど有能かつ著名な方のようです。映画の宮崎駿監督に似
た風貌でしたので、私も、しっかりインプットいたしました。
          https://is.gd/w9nHwf


2019.03.08(金)【ゴーン事件新展開】(金子登志雄)

 気掛かりだった日産のゴーン氏がやっと保釈されました。国際的には信じが
たい108日間の長期拘束でしたが、よく耐えたものです。保釈については、
大鶴弁護士から弘中弁護士に代わったのが、よい結果を産んだのだとか。

 大鶴氏は、あの総理大臣一歩手前だった小澤氏を狙い撃ちし、民主党政権に
大打撃を与えた当時の東京地検特捜部の幹部の方でしたから、私には徹底して
権力側の人という印象しかないため、なぜ、無罪を主張するゴーン氏が大鶴氏
を弁護人に選んだのか理解することができませんでした。

 特捜部の手の内をよく知り、現特捜検事の先輩格の人を弁護士にしたほうが
有利だという計算だったのかもしれませんが、情状酌量を認めさせて量刑で交
渉するなどでは能力を発揮してくれるでしょうが、白か黒かという古巣との徹
底抗戦には限界があろうと思っていたからです。

 大鶴氏もゴーン氏のために最大限の努力をはらったであろうこと私も認めま
すが、検事の中の検事さんでしたから「慣例からして保釈になるはずはない」
と思い込んで保釈を請求した部分もあろうと推測してしまいます。

 この点、検事経験のない弘中弁護士は、こんなことで保釈されないのは常識
的におかしい、そんなに疑念があるなら監視カメラ付きでもよいから認めたら
どうかという世間一般の目線で臨んだのではないでしょうか。これでは裁判所
もノーとはいえません。

 弘中氏は、前記の小澤事件やロス疑惑の三浦事件のほか、大阪地検特捜部が
証拠を改ざんしてまで有罪にこだわった郵便不正事件の厚労省の村木厚子さん
冤罪事件(当時の民主党石井一氏を最終目的にした前座の事件とみられていま
した)など、困難な事件を常識的な目でひっくり返すのが得意な方ですから、
今後の活躍に期待してしまいます。

 ネットでの検索によると、相変わらず、特捜部か日産によるリークと思える
ゴーン氏への人格攻撃が激しいですが、やっとゴーン氏も反論の機会を与えら
れることになりました。米国で入院予定だったのに「重要な役員会だから必ず
出席してほしい」と懇願され、仕方なく病気を押して来日した途端に騙し撃ち
逮捕されたケリー前代表取締役も反撃を始めることでしょう。2人とも、さぞ、
日本及び日本人に対して恨みを覚えているでしょうが、遠慮なく、思いの丈を
語ってほしいものです。

 有価証券報告書不実記載という罪ですが、最近のものは社長の西川(さいか
わ)氏が提出者なのに、彼は罪に問われていないだけでなく、ゴーン批判はと
どまるところをしりません。ゴーン氏に認められて年棒5億円の社長になった
のですから、もう少し控えたらいかがかと思えてしまいます。
 
 今のところ、私の印象は、本件は、単なる役員間の内紛なのに、社内で解決
せずに特捜部や経産省まで巻き込んでしまい大火事に発展した事件というもの
ですが、ゴーン氏とケリー氏の反撃で、真相が明らかになるでしょう。

 そのために被る日産やルノーの信用棄損による損害額はゴーン氏らの報酬額
の何倍にもなるでしょうが、中世並といわれる日本の司法制度が少しでも改善
され、フェア(公平)であることが重視される普通の社会になるためには必要
なコストとして負担してもらうしかありません。


2019.03.07(木)【成年後見制度】(仙台・立花宏)

 春らしい陽射しのある、暖かく穏やかなある日の午後のことでした。私は、
事務所の近くの公園のベンチに腰かけ、仕事の合間の息抜きをしていました。

 その時、ある女性が遠慮がちに声をかけてきました。その女性は、毎日のよ
うに、高齢の女性に寄り添い、その公園を散歩していらっしゃる方でした。公
園でよく顔を合わせるため、何度か挨拶を交わしたことがあり、顔見知りとな
っていました。高齢の女性はその女性の母親で、いつも穏やかな笑顔をされ、
母娘で公園を散歩するのを幸せそうに楽しんでいらっしゃいました。

 女性は、誰からか、私が司法書士であることを聞いたらしく、話をしてみよ
うと思ったようです。女性はかつて、関東の方で会社勤めをしていましたが、
高齢となった母親が一人で生活するのが心配なため、勤めていた会社をやめて、
現在は公園の近くの実家で母親と同居しているとのことでした。

 母親の配偶者は数年前に亡くなり、身寄りはその女性のみだそうです。ご相
談の内容は、母親の所有する不動産の売却のことでした。その不動産は母親の
実家で、その母親が、亡くなった父(女性から見たら祖父)から相続したもの
だそうです。

 所在地は仙台から車で1時間ほどの町です。相続後、特に利用する予定もな
かったため、売却しようとしたこともあったそうです。しかし、人口流出の進
んでいたその町では買い手もつかず、年に何度か手入れをしに行くことはあっ
たようですが、結局、何の利用もしないままになっていたそうです。

 しかし、最近、その町も再開発が進み、周りに農地が広がっていた母親の実
家のあたりも住宅地になりつつあるようです。そうした状況からか、ある不動
産会社が、母親の実家を売ってほしいと依頼してきたそうです。女性は、会社
勤めしていた際にためた貯金がある程度あり、現時点で金銭的に困っているわ
けではないそうですが、今後の母親との同居費用のことを考えると、ありがた
いことだと思ったこと、また、手入れに行くことも負担に感じていたことなど
から、話を進めたいと思ったそうです。

 ただ、問題が生じました。話を進めるための打ち合わせのために、その不動
産会社の担当者が女性の自宅に来られた際、母親の状況を見て、不動産の売買
をするためには成年後見制度を利用を検討してほしいと依頼してきたのだそう
です。そして、次回の打ち合わせの際、専門家を連れてくると言って帰ったと
いうのです。

 女性は、成年後見制度がどういうものか、まったくわからないため、どのよ
うな制度なのかを教えてほしいと私に言いました。具体的なご相談というより
は、成年後見制度について知りたかったこと、そして、今度、専門家を連れて
くると言われて不安になり、誰かに話を聞いてみたいと思ったのでしょう。

 私は簡単に制度の概略を説明し、もし、不動産会社の対応等に不安があれば、
いつでも連絡をください、とお伝えしました。

 その女性は、少し安心したのか、私に感謝の言葉を告げ、お礼(報酬)の支
払いをしたいとおっしゃいました。私は、「とんでもない」と丁重にお断りし
ました。一般論をお話しただけですし、なにもお役に立ったわけではないから
です。女性は恐縮しながらも、母親と一緒にあらためて感謝の言葉をかけてく
ださいました。別れ際の母親の穏やかで、幸せそうな笑顔が印象的でした。

 二人が去ったあと、私には迷いが生じていました。女性の母親の様子をそれ
ほど良く見たわけではないので、成年後見制度を利用しなければならない状態
なのかどうかも判断がつかなかったこともあります。そして、二人を見た印象
にすぎませんが、現時点では特に生活に支障があるわけではないように思いま
した。にもかかわらず、不動産を売却するために成年後見制度を利用すること
になった場合、おそらく、今後、ずっと制度を利用し続けることになるでしょ
う。はたして、それが二人にとって幸せなことなのだろうかと。

 日本は今後、ますます、高齢化社会になるといわれています。成年後見制度
もニーズが高まっていくことでしょう。司法書士として、この制度をもっとも
っと理解していかなければならないと思った出来事でした。


2019.03.06(水)【解散と設立日】(藤沢・酒井恒雄)

 解散登記の依頼があると、会社の設立日はいつだったのかが気になってしま
います。事前の調査で、登記事項証明書、あるいは登記情報を取得しますが、
つい設立の年月日に目が行ってしまいます。

 先日、解散登記の依頼があった会社の登記情報を見たところ、設立日が、自
分の誕生日の3日後でした。ふと、自分が重ねてきた約50年間の日々と重ね
合わせて見てしまい、様々な思いを巡らせてしまいました。

 もっとも、会社(法人)は誕生から直ぐに事業活動をしますから、設立時は
もう大人なのだと考えると、自然人であれば70歳くらいの人生だったという
ことになるでしょうか。会社勤務であれば、定年退職後の再雇用の期間も終わ
ったくらいの時期でしょう。

 自然人の人生なら、社会貢献活動をしたり、好きなことをして過ごすなど、
いわゆる第二の人生が始まるときです。その点、自然人と違って、法人は酷で
すね。営利会社が、そのまま非営利の組織にシフトする訳には行きませんから、
会社自体は消滅せざるを得なくなります。

「存在しているだけ、それだけでいい。」なんて言って貰えません。

 自然人と違い存在目的が決められているのだから当然のこととはいえ、冷酷
な話しのようにも思えます。会社の生存率は、設立から10年後には5~6%
になっているようですから、数十年間も生きてきた会社には逞しさを感じます。
果たしてきた役目や、その存在感も大きかったでしょうから、そんな会社が消
滅してしまうとなると、なんとなく寂しい気持ちになってしまいます。



2019.03.05(火)【登記のAI化?会社の登記業務参入?】(東京・鈴木龍介)

 今回は「戦後商法のあゆみ」をお休みにしまして、産業競争力強化法の、い
わゆるグレーゾーン解消制度による照会・回答―「利用者が本店移転登記手続
に必要な書類を生成できるWEBサイトを通じたサービス等の提供について」
―を取り上げたいと思います。もともとの情報開示は結構前ですが、最近知っ
たもので・・・(みなさんはご存知でしたか?)

      https://is.gd/fXmNNh

 その概要としては、会社がWEBサイトを通じたサービス上で、利用者に本
店移転登記手続に必要な書類を洗い出すための質問に対し、利用者の判断で回
答させ、一義的な結果を表示し、利用者が入力した情報を自動的に本店移転登
記の書類として生成すること、加えて生成した書類を代行印刷し、登録免許税
として本店移転登記に必要な額の収入印紙を同封し、利用者に送付することは
司法書士法3条2項2号(注)の業務に該当するかどうかの照会に対し、所管
官庁である法務省は個別の事案において利用者からの依頼に基づき個別具体的
なアドバイスをするようなものでない限り、可能であるとの回答をしたという
ものです。なお、照会と回答の詳細は以下をご参照ください。

 「法務省―産業競争力強化法第7条第3項の規定に基づく回答について」
   http://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00354.html

 最近はいろんな分野でAIですとか、○〇テックというのが流行っている感
じですが、いよいよ登記にも登場ということになるのでしょうか?

 みなさん(特に司法書士の方々)は、この件についてどう、お考えになりま
すでしょうか?

(注)
司法書士法 第3条(業務)
 司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、次に掲
げる事務を行うことを業とする。
 一 登記又は供託に関する手続について代理すること。
 二 法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録(電
  子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない
  方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供される
  ものをいう。第四号において同じ。)を作成すること。ただし、同号に掲
  げる事務を除く。
          ~以下、略~


2019.03.04(月)【2月22日】(島根・根来川弘充)

 島根県では、2月22日を竹島の日と定めており、県内では、大分定着して
きた感がでています。

 しかし、残念ながら式典が行われる松江市内では、物々しい警備で、近くの
官公署にいくのもかなり大変です。

 ところで、県内では物々しいのですが、全国のニュースではあまり取り上げ
られないような気がします。

 尖閣や北方領土の問題が、つい最近まで取り上げられ、レーダー照射の問題
など、国防の問題がつい最近まで、頻繁にとりあげられていたと思うのですが、
一体この差は何なのだろうと、ふと思いました。

 この文章を書いている当日、米朝首脳会談があまり成果がなかったというニ
ュースを見ました。

 つい最近までミサイルの驚異を感じていたことを考えると、いつでもまた、
あのような時に戻るのではないかと思います。

 外交問題を武力なく解決することができる時代が一日でもはやく来ることを
願いたいと思います。


2019.03.01(金)【設立時代表取締役の選定根拠規定】(金子登志雄)

 会社法で役員とは「取締役、会計参与、監査役」のことで役員等という場合
は会計監査人も加わります(329条)。役員を選任するときは株主総会の定
足数の緩和に限度がありますが(341条)、会計監査人にはありません。

 では、代表取締役は役員ではないのでしょうか。会計監査人と同様に定足数
に制限なく株主総会で代表取締役を定めてよいのでしょうか(念のため、後段
の問題意識は私のオリジナルではなく、広島の幸先さんです)。

 そんなことはあり得ないと思うでしょうが、理由を説明せよといわれると困
る方も多いことでしょう。理由は、代表取締役は取締役の一種だからです。代
表取締役の定義は「株式会社を代表する取締役」ですが(47条1項)、会社
を代表する役割を持った取締役が代表取締役という意味で、代表取締役も取締
役として役員であることに変わりがありません(注)。

 したがって、株主総会の決議で代表取締役を選定する際の原則的根拠規定は、
「役員は株主総会の決議によって選任する」という329条1項になります。

 349条3項にも「株式会社(取締役会設置会社を除く。)は、定款、定款
の定めに基づく取締役の互選又は【株主総会の決議によって】、取締役の中か
ら代表取締役を定めることができる」とありますが、確認規定だといえます。

 以上は前書きでして、同じことは設立時代表取締役にもいえ、非取締役会設
置会社の発起設立における設立時代表取締役の選定根拠規定は「設立時役員等
の選任は、発起人の議決権の過半数をもって決定する」とある41条1項です。
定款や、定款の定めに基づく設立時取締役の互選で選定することができるのは、
定款に任意規定を認める29条です。

 ところが、松井ハンドブック3版70頁には「取締役会を置かない会社にお
いて、各自代表とせず、設立時取締役の中から設立時代表取締役を選定する方
法については、明文の規定がない(法47条1項参照)」とあります。相澤哲
ほか編著『論点解説 新・会社法』39頁を前提としたものと思われ、いわば
定説化されています。しかし、設立時取締役がAとBで、2人とも各自代表な
ら41条1項だが、AとBのうちAだけを代表取締役と定める(Bから代表権
剥奪する)のは41条1項ではないとでもいうのでしょうか。

 定説は、会社成立前は発起人が設立事務一切を取り仕切る権限を持っている
のだから、定款に定めがない限り発起人が選定することになるという流れで説
明するのですが、これでは、40条1項の設立時取締役以外からも設立時代表
取締役を選ぶこともできてしまいそうですし、発起人の頭数の過半数で設立時
代表取締役を定めるべきだという信じがたい解釈も生じてしまいます。

 やはり、権威者の解説だからといって鵜呑みにするのは危険です。原典であ
る会社法条文にあたって自分の頭で考えましょう。

(注)合同会社の代表社員も会社を代表する役割を持った(業務執行)社員で
 あり、業務執行社員も業務執行権限を持った社員の一種です。


2019.02.28(木)【御礼】(仙台・立花宏)

 先週の23日(土曜日)は、岩手県司法書士会県南支部様からお招きをいた
だき、研修会の講師を務めさせていただきました。支部長様にお聞きしたとこ
ろ、数年前に「月報司法書士」という日本司法書士会連合会が発行する雑誌に
寄稿した記事のことを覚えていてくださり、今回、ご依頼をくださったとおっ
しゃっていました。

 本当にありがたいことだと感謝申し上げると同時に、発表した内容はずっと
残り続けるのであり、著作を発表するということの影響力の大きさを感じさせ
られた出来事でした。

 研修会・懇親会ではとても有意義で楽しい時間を過ごせていただきました。
岩手県司法書士会県南支部の皆さま、本当にありがとうございました。

 さて、著作といえば、2週間前に出版した新著『商業登記実務から見た合同
会社の運営と理論』は、インターネットでみるアマゾンや出版社からの情報に
よれば、いまのところ好調なすべり出しのようで、ほっとしております。出版
経験の多い監修者の金子先生から、売れないと2度と出版の声がかからなくな
るという話を聞いていましたので、気が気ではありませんでした。

 おかげさまで、知り合いの司法書士や税理士だけでなく、勉強熱心な全国の
読者の方々からの感想も直接・間接に耳に入ってきておりますが、おおむね好
意的な感想が多く、うれしく思うと同時に、直接お会いしたことのない方々ま
でが、自分の執筆した著作に熱心に目を通してくださっていることをあらため
て実感し身が引き締まる思いでした。

 直接、御礼をお伝え出来ずに、心苦しくはあるのですが、この場をお借りい
たしまして、皆様に心より御礼を申し上げます。ありがとうございました。


2019.02.27(水)【花粉情報】(藤沢・酒井恒雄)

 皆さんは、どのような時に春の訪れを感じるでしょうか。

 私は、外に干していた洗濯物を畳んでくしゃみが出たときに、春の訪れを感
じます。空中を漂う、ほんの僅かなスギの花粉を、濡れた衣服は見事にキャッ
チしてしまうのでしょうか。まだ本格的な花粉症のシーズンになる前でも、洗
濯物を畳めば、もう花粉が飛散していると分かります。ですので、毎年かなり
早い時期に、春を感じているのはないかと思います。

 私は、花粉症に関しては大ベテランです。幼稚園の時(1970年代)に発
症しました。その頃は、アレルギー性鼻炎という病名しかなかったのですが、
その後に患者数が増えて、1980年頃に「花粉症」という言葉が登場し、定
着したようです。

 病名の変遷からも分かるとおり、私が発症した頃はマイナーな病気でした。
ゆえに、春先約一ヶ月間も、鼻水を垂らして目を腫れさせている子は、周囲か
ら特異な目で見られており、まさに時代を先取りした異端児といった感じでし
た・・・・・。

 冗談は別として、あの頃は、まさか、天気予報と一緒に花粉情報が報道され
る時代がやってこようとは思ってもいませんでした。初めてテレビで花粉情報
を見たときは、やっと市民権を得たかといった感じで、ちょっと嬉しかったで
す。

 しかし、花粉情報は、すでに患者である私からすると、あまり必要のない情
報なのです。花粉の飛散量が多かろうが少なかろうが、事前に薬を服用する等、
採る対策は同じです。降雨予報や、紫外線情報等と違い、花粉の飛散量が多い
からといって予定を変更したり、外出を控えたりもしません。花粉症ではない
人には関係のない情報、花粉症である人には意味のない情報のような気がして、
どうもモヤモヤしております。やはり、あると便利な情報なのでしょうか?
皆さんが、花粉情報をどのように役立ていらっしゃるか気になるところです。


2019.02.26(火)【戦後商法のあゆみ⑤ 昭和25年改正~その3~】
                          (東京・鈴木龍介)

「戦後商法のあゆみ」の5回目は、昭和25年商法改正の続きの続きです(結
構な大改正なので…最後です。)。

3.商業登記に関する規律
(2)株式会社と登記
⑤ 株主総会の決議要件
 株主総会のいわゆる普通決議については、これまで定めのなかった定足数―
発行済株式総数の過半数(定款の定めによる排除可)―が設けられた(昭和25
年改正商法239条1項/会社法309条1項と同旨)。また、いわゆる特別決議につ
いては、定足数を発行済株式総数の過半数とし、決議要件は出席株主の議決権
の3分の2以上とすることとされた(昭和25年改正商法343条/会社法309条2項
と同旨)。

⑥ 取締役の任期・選解任の修正
 取締役の任期については、3年以内から2年以内に短縮された(昭和25年改
正商法256条/会社法332条1項と同旨)。
 取締役の選任決議については、普通決議によるものの、定足数は定款の定め
をもってしても3分の1未満にすることはできないこととされた(昭和25年改
正商法256条ノ2/会社法341条と同様)。また、取締役の選任については、累
積投票制度が認められた(昭和25年改正商法256条ノ3/会社法342条と同様)。
 取締役の解任決議については、普通決議から特別決議によることとされた
(昭和25年改正商法257条2項)。
 
⑦ 取締役会の必置
 株式会社は取締役会の設置が義務付けられ、取締役会に関する詳細な規律が
新設された(昭和25年改正商法259条以下)。なお、株主総会の位置づけとして
は、万能意思決定機関から法律または定款に定められた事項のみを決議するこ
とができるものとされた(昭和25年改正商法250条ノ2/会社法295条2項と同旨)。

⑧ 代表取締役の創設
 会社の代表権については、取締役の各自代表を原則としていたところ、取締
役会で選ばれる代表取締役に専属することとされた(昭和25年改正商法261条1
項)。あわせて、代表取締役の氏名が必須の登記事項とされた(昭和25年改正
商法188条2項8号)。ちなみに、この時点では代表取締役ではなく取締役の住所
が登記事項とされていた(昭和25年改正商法188条2項7号)。

⑨ 監査役の任期・権限の修正
 監査役の任期については、2年以内から1年以内に短縮された(昭和25年改
正商法273条)。
 監査役の権限については、業務・会計監査から会計監査限定に縮小された
(昭和25年改正商法274条)。

⑩ 準備金の資本組入れの創設
 法定準備金については、資本準備金と利益準備金とに区分され(昭和25年改
正商法288条・288条の2)、当該準備金の全部または一部を取締役会決議により
資本金に組み入れることができることとされた(昭和25年改正商法293条ノ3)。

~参考文献等~
・秋坂朝則『商法改正の変遷とその要点(新訂版)』
 (一橋出版、2006年)29頁~41頁
・倉沢康一郎・奥島孝康編『昭和商法学史』
 (日本評論社、1996年)31頁~43頁
・浜田道代編『日本会社法の歴史的展開』
 (商事法務、1999年)218頁~286頁
・法務省民事局民事法務研究会編『商業登記法等改正経過法令集』
 (商事法務、1994年)122頁~124頁
・中東正文=松井秀正『会社法の選択―新しい社会の会社法を求めて』
 (商事法務、2010年)


2019.02.25(月)【合同会社は平屋】(金子登志雄)

 立花著『合同会社の運営と理論』がやっと市場に出回りだしたようで、アマ
ゾンでも会社法のジャンルに加えられ、好調なすべり出しです。御礼申し上げ
ます。休日明けは実務書の売行きの順位がよくないものですが、今は何番に位
置しているでしょうか。
https://www.amazon.co.jp/gp/bestsellers/books/500196/ref=pd_zg_hrsr_books_1_1_last

 愛娘を嫁がせた父親と同様に、出版後も合同会社のことが頭から離れません。
本には、ああ書いたが、今ではもっと上手に説明して送り出せたのになどとい
った思いは、著者・監修者であれば、みな同じでしょう。

 法務や登記の視点で、合同会社と株式会社の本質的相違は何かといえば、所
有と経営が分離しているかどうかです。これを今は、平屋建てと、2・3階建
ての例え話で説明すれば、もっと通じやすかったかなと思っています。その欲
求不満をここで解消しましょう。

 株式会社は所有(株主)と経営(取締役)が分離した構造を有し、家屋に例
えれば、1階が株主、2階が取締役・代表取締役の住居という2階建て、ある
いは2階が取締役、3階が代表取締役という3階建ての構造になっています。
つまり、経営側は2階以上に住んでおり、2階と3階の間には行き来すること
のできる階段がありますが、1階と2階との間には所有と経営の壁があって往
来することができません。

 合同会社は所有(社員)と経営(業務執行社員)が分離しておらず、平屋建
ての構造で、お父さんが代表社員、お母さんが代表権のない業務執行社員、お
じいさんは、両親の見張り役である非業務執行社員といった構造です。居間に
は社員全員が入れますが、業務執行室には業務執行社員しか入れません。

 平屋ですから、社員あるいは業務執行社員の互選で代表社員を定めても存在
しない2階以上に代表社員が住むことは絶対にできません。社員である家族の
間で部屋決め(役割分担)を定めただけで(代表権や業務執行権を剥奪しただ
けで)、代表社員に就任承諾などが必要であるはずがありません。これを必要
だとする登記実務は、2・3階建ての株式会社と平屋建ての合同会社を混乱し
ていると批判されても仕方ないでしょう。

 いかがでしょうか。なお、立花本にも書いてありましたが、登記実務を非難
しているわけではありません。会社法施行直後は、株式会社の理解で精一杯で
あり、新しく作られた合同会社の解釈にあたり、株式会社を参考にしたとして
も誰も責められません。ただ、そろそろ軌道修正する頃ではないかと登記実務
にいいたいだけです。日本社会では、国民と行政機関が分離しており、辺野古
の埋立てをみても、国民の要望が行政機関に全く届きませんが、皆様のご支援
を得て、繰り返し主張してまいりましょう。


2019.02.22(金)【論評する人、解説する人】(金子登志雄)

 経済評論家の森永卓郎さんの言葉に「私は論評しかしないけれど、池上(彰)
さんは解説をするのです」というのがあります。要するに、名解説者の池上さ
んは、こうなっている、ああなっているということを上手に説明するのが得意
な人だが、森永さん自身は「私は、こう思う」という意見を前面に出すタイプ
だということです。

 これに照らすと、鈴木龍介さんは池上タイプで、私は典型的な森永タイプの
ようです。鈴木さんの講義や著作はどなたにも好評ですが、私のは司法書士・
弁護士・大学教授など法律のプロの方にしか評価されません。勉強初期の人に
は、何じゃこれは、参考文献の紹介も少ないし、何々と思うとか、だろうとか
が多く自信がないのかとまで思われてしまいます。鈴木さんは大学教授に向い
ていても、私は不向きです。

 なぜ、こうなるのかは、私が好きなことにしか興味を示さない職人タイプだ
からでしょうけど、若い頃、法律論文をよく書かされたことも影響していると
思っています。当時、指導者から、論文なんだから自分の意見を書かなければ
だめだ、少数説でもいいから筋の通った内容にしなければ評価されないといわ
れたものでした。たぶん、今も「論文」では、同じだと思います。

 思い出しましたが、簡裁代理権取得の本番の試験で、私は知識不足がたたり、
結論をほとんど誤ってしまいました。合格率の高い試験とはいえ、確率7割で
不合格かと不安でなりませんでしたが、結果は合格でした。これに対して、裁
判事務に詳しい方が不合格でした。そのとき、結論は間違ったが、一応は筋の
通った内容の解答だったので、裁判の弁論には向いているという採点をされた
のだろうと思ったものでした。

 こういう私ですから、ここ数年、執筆協力や共著をお願いしてきた立花さん
や幸先さんにも、「江頭本にこう書いてある、松井ハンドブックには」で終わ
りにしてはダメだ、「私はこう思う」を前面に出さないと面白くもなく自分の
勉強にならないと話してきましたが、だいぶ金子流に慣れてきたようで、今度
の立花本は、(解説+論文)÷2のバランスのよい立花流になっていました。
自分の流儀を深めることが最も重要ですが、皆様の流儀はいかがですか。受売
り流は恥ですよ。


2019.02.21(木)【会社の業務と業務執行者】
(金子登志雄)

 拙著『最新実務論点』でご紹介しましたが、下記の葉玉ブログに株主総会の
招集は業務執行ではなく職務の執行だといった内容がありますが、いまは疑問
に思っています(相澤哲ほか編著『論点解説/新・会社法』468頁も非業務
執行説になっていますが、通説でも判例でもありません)。

  http://blog.livedoor.jp/masami_hadama/archives/50055524.html

 非取締役会設置会社に関する会社法348条(要約)
----------------------------------------------------------------------
1項:取締役は、定款に別段の定めがある場合を除き、株式会社の業務を執行
  する。
2項:株式会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、取締役の過半
  数をもって決定する。
3項:前項の場合には、取締役は、次に掲げる事項についての決定を各取締役
  に委任することができない。
  三 第298条第1項各号に掲げる事項(注:総会招集の決定)
----------------------------------------------------------------------
 上記2項・3項より、総会の招集の決定は株式会社の業務であり、1項によ
り取締役がその業務を執行します。

 これからすると、取締役が招集の決定に参加することは社外取締役も同じこ
とをするので職務の執行だが、招集の決定は会社の業務だから、それの実行で
ある招集は会社の業務を執行する業務執行担当の取締役に限られます。

 さらに、監査等委員会設置会社の取締役会に関する399条の13第5項や
指名委員会等設置会社に関する416条4項をみると、総会招集議案の決定や
合併契約の内容などを決定することも取締役会設置会社の業務執行の決定に属
すことが分かりますし、363条1項には業務執行取締役が取締役会設置会社
の業務を執行するとあります。

 念のため、取締役会設置会社に関する362条2項は、次の内容です。
----------------------------------------------------------------------
  取締役会は、次に掲げる職務を行う。
   一 取締役会設置会社の業務執行の決定
   二 取締役の職務の執行の監督
   三 代表取締役の選定及び解職
----------------------------------------------------------------------
 本項から、取締役の職務の執行の監督や代表取締役の選定及び解職は業務執
行に属さず職務の執行だが(ただし、監査等委員会設置会社に関する399条
の13第1項の規定ぶりは微妙です)、株主総会の招集は業務執行になります。
葉玉見解は、株主総会ではなく取締役会の招集を意識した勇み足でしょう。

 実質的にみても、取締役会の招集は自分で気づいた議案を審議するため声を
かけることが中心ですが、株主総会の招集は取締役会で決めた議案につき招集
通知を作成し、印刷し、発送しと、業務執行部門で約1か月程度も時間を要し、
費用も発生します。監督がメインの社外取締役にできることとは思えません。

 ところで、持分会社に目を向けますと、591条1項に「持分会社の業務は、
定款に別段の定めがある場合を除き、業務を執行する社員の過半数をもって決
定する」とあります。

 株式会社の規定からして、持分会社の業務に属さないものとしては、代表社
員の選定・解職のほか、定款の変更、定款の変更を伴う社員の変更、業務執行
社員が決定した合併契約の同意等が考えられます。

 社員の変更のうち、585条2項には、非業務執行社員の持分譲渡は業務執
行社員全員の承諾で足るとありますが、これは持分会社の業務でしょうか。

 一見、業務執行社員の権限とされていることから、そう思いがちですが、持
分会社の業務を業務執行社員が執行するからといって、業務執行社員がするこ
とは必ずしも持分会社の業務とはいえません。585条2項も「全員」の承諾
であって、業務執行に必要な「過半数」の決定ではありません(この承諾につ
いては「職務」の執行だといってよいのかは自信がありません。会社がするこ
とではなく、社員がすることだからです)。

 そのため、業務執行社員が法人の場合は、職務執行者の承諾ではなく、代表
者の承諾が必要だと考えます。ついでに、合併の場合には、内容の決定や契約
の締結は職務執行者の権限だが、契約の同意は代表者の権限になると考えます。

 発売中の立花本には、代表社員の選定は業務執行じゃない、585条2項の
承諾も職務執行者でなく代表者がなすべきだとありますが、私も大賛成です。


2019.02.20(水)【想像する】(藤沢・酒井恒雄)

 昨年、某有名作曲家が亡くなりましたが、その遺産相続で揉めているという
報道がありました。相続問題は被相続人が経営していた株式会社を巻き込み、
取締役の職務執行停止の仮処分の申立てがなされる等、大きな騒動に発展して
いるようです。

 いくつかのニュース記事には、渦中の相続人(申立人)の主張が書いてあり
ました。その中に、「昨年、株主総会を開催して被相続人の妻を代表取締役に
選任したが、株主である私に招集通知を出さなかった。」といったことがあり
ました。

 推測するに、代表取締役であった被相続人が死亡し、後任の代表取締役を選
任した株主総会について、適法な総会の招集手続きがされていなかったという
主張のようです。

 もしそうだとすれば、我々が業務を行う上でも、かなりの頻度で遭遇する可
能性があるシチュエーションです。ずっと書面上総会(書面決議ではありませ
ん。)で済ませてきた会社が、株主間の揉め事が発生した途端に、会社法の規
定に従っていない等と主張してくる、典型的な同族会社の炎上パターンかもし
れません。今までもきちんと株主総会の招集手続きを踏んで株主総会を開催し
ていた会社が、相続に絡む準共有株式等の対処を誤ったのかもしれません。

 そもそも申立人の主張が正しいのかも不明です。いろいろ想像が膨らみます。
いずれ株主総会決議取消し、無効、もしかしたら不存在の確認の訴えで、細か
い事情も分かると思いますが、あえて、いろいろ想像をしてみるのもいいと思
います。これが結構頭の体操になり、依頼人との雑談や警鐘のネタにもなった
りもします。


2019.02.19(火)【戦後商法のあゆみ④ 昭和25年改正~その2~】
                           (東京・鈴木龍介)

「戦後商法のあゆみ」の4回目は、前回の昭和25年商法改正の続きです。

3.商業登記に関する規律
(1)総説
 昭和25年改正商法は、基本的に株式会社法制の見直しであったことから商
業登記に関する通則的規律の改正事項は見当たらない。
 株式会社以外の会社に関する改正として、株式合資会社が廃止されたことは
会社類型が1つ消滅したわけで、登記という観点でも特筆すべきものであると
いえよう(昭和25年改正前商法457条~478条参照)。また、外国会社
については、登記をはじめとする所要の整備がなされた(昭和25年改正商法
479条~485条ノ2、鈴木龍介ほか『外国会社のインバウンド法務』(商
事法務、2016年)44頁)。

(2)株式会社と登記
 昭和25年改正商法において、改正等された株式会社の登記と密接に関係す
る主な規律は、次のとおりである。

① 授権資本
 昭和23年改正商法により株金の分割払込制が廃止されたことを受け、授権
資本制度―会社の発行する株式の総数(現行の発行可能株式総数(会社法
911条3項6号))―が導入された。
 「会社の発行する株式の総数」は定款の絶対的記載事項とされ(昭和25年
改正商法166条1項3号)、一方で資本金は定款の絶対的記載事項から除外
された(昭和25年改正前商法166条1項3号参照)。それにより株式の発
行にかかる資金調達には定款変更を要しないこととなった。
 「会社の発行する株式の総数」は登記事項に加えられた(昭和25年改正商
法188条2項1号)。 

② 無額面株式
 それまで株式は額面株式に限定されていたところ、額面株式とともに無額面
株式も許容されることとなり(昭和25年改正商法199条)、発行済株式の
額面・無額面の別は登記事項とされた(昭和25年改正商法188条2項5号)。
設立時において無額面株式を発行する場合には、その最低発行価額が定款の絶
対的記載事項とされた(昭和25年改正商法166条1項7号)。
 無額面株式を発行した場合の資本金は発行価額の総額とすることを原則とし
つつ(昭和25年改正商法284条ノ2第1項)、その発行価額の4分の1ま
では資本金に組み入れず資本準備金にできることとされた(昭和25年改正商
法284条ノ2第2項)。ただし、設立時においては定款で定めた無額面株式
の最低発行価額を超過する額または発行価額の4分の1を超過する額のいずれ
か少ない額は資本金に組み入れず資本準備金にできることとされた(昭和25
年改正商法284条ノ2第2項但書)。

③ 株式名義書換代理人
 定款で定めることにより株式名義管理人(おおむね現行の株主名簿管理人
(会社法123条)と株券登録機関(株券についての番号等の記録の作成・保
存し、株券発行が適法になされたことを審査する機関)を設けることができる
こととなり(昭和25年改正商法206条2項・3項)、それらは登記事項と
された(昭和25年改正商法188条2項3号(175条2項12号))。

④ 株式分割
 取締役会の決議により株式分割ができることとされた(昭和25年改正商法
293条ノ4)。 ~続く~


2019.02.18(月)【定款自治の方向】(金子登志雄)

 金曜日の投稿に関連して、典型的な株式会社である取締役会設置会社と合同
会社における定款自治との差を考えてみました。方向が逆だからです。

 取締役会設置会社は所有(株主)と経営(取締役)が分離され、会社の運営
はプロの経営者に委託し、会社所有者はその経営を監視し、経営の成果をもら
う仕組みです。代表取締役も取締役会で定め、所有者の会議である株主総会は
「法定事項及び定款で定めた事項」に限り決議し(会295条2項)、業務執
行の決定には及びません。

 しかし、定款で定めれば、取締役会の決議事項を株主総会で決議するように
することができます。この場合は、非取締役会設置会社同様に業務執行につき
取締役会も株主総会も決定できることになります。株式会社には様々な規模・
形態がありますから、その会社に相応しいように、定款自治で経営問題につい
て所有者たる株主の権限に移すこともできるわけです。

 これに対して、合同会社では、定款に定めれば、定款変更も組織再編・組織
変更も総社員の同意ではなく、業務執行社員の同意にすることができますから、
株式会社と逆に、会社所有者の権限を狭める方向での定款自治のように感じら
れてしまいます。

 しかし、合同会社は所有と経営が未分離ですから、業務執行社員は純粋の経
営側ではありません。所有者兼経営者である社員のうちの業務執行専任担当の
社員に過ぎません。したがって、この定款自治は株式会社の株主でいえば、決
議事項につき無議決権株主と議決権株主に分けただけで、会社所有者の権限を
狭めて経営側に丸投げしたわけではありません。

 この場合の業務執行社員の定款変更や組織再編等の同意は、業務執行社員が
同意したといっても、同意権限を与えられた社員の同意であり、純然たる社員
権限の行使に変わりがないのです。

 会社法591条1項によると、合同会社の「業務」は業務執行社員の過半数
で決定することになっていますが、定款変更や組織再編の同意等は「業務」と
はいえないので、業務執行社員が法人の場合には職務執行者ではなく法人の代
表者が意思表示すべきだというのが16日に発売された立花本の主張です。

 登記実務は業務執行法人社員の決定や同意を全て職務執行者の決定としてい
るようですが、合同会社の業務とはいえない事項まで職務執行者に委ねてよい
ものでしょうか。会社法の意図に反しないのでしょうか。


2019.02.15(金)【代表者選定行為の性質】(金子登志雄)

 立花本の監修に関与するまでは、取締役会設置会社の代表取締役の選定行為
は業務執行行為の1つだと思い込んでいましたが、業務執行の決定機関である
取締役会が決定するからといって必ずしも業務執行行為とは限らないことに今
更ながら気づきました。

 取締役による互選の場合も同様でしょう。その他の例としては、新株の発行
があります。明らかに業務執行行為ではないのに、資金調達手段として社債の
発行(業務執行行為)と同様な機能を有するため、また、決定の機動性を目的
に、公開会社の取締役会の権限になっています。これは鈴木さんが紹介する昭
和25年商法改正の結果です。

 では、合同会社の定款で「業務執行社員の互選で代表社員を定める」と規定
した場合に、株式会社同様に、業務執行決定機関の決定に委ねたといえるでし
ょうか。

 登記実務は肯定説ですが、株式会社と合同会社とでは、所有と経営が分離し
ているかどうかという構造的差異あるいは本質的な差異があります。株式会社
では所有側(株主)と経営側(取締役)の間に明白な境界線又は壁があり、取
締役は社員とは別の独立した「役員」たる地位です。これに対して、業務執行
社員は業務執行を担当する「社員」であって役員ではありません。代表社員も
役員ではありません。

 したがって、取締役の互選で代表取締役を定めることは定款の定めにより選
任された者がまた選任する2段階の間接選定方式だといえても、業務執行社員
の互選で代表社員を定めるのは、選定権限を持った社員による直接選定であり、
間接選定ではないというのが私及び立花本の主張です。

(株式会社)
             互選又は取締役会      
             選定代表取締役     
               ↑(間接選定)      
         経営者=取 締 役(非業務執行取締役を含む)   
               ↑(選任)        
         所有者= 株 主          

(合同会社)
         所有者(社員)で経営者
          =社員の1部である業務執行社員が代表社員を選定

 本欄閲覧の方は、きっと、これだけでは、どちらともいえそうだなという感
触でしょうが、1月31日付け本欄の【合同会社の清算人の選任】をご覧くだ
さい。清算会社になり業務執行の決定機関は存在しないのに、定款で業務執行
社員を定めてあるときは、業務執行社員が清算人を選ぶことになっています。
明らかに、業務執行の決定機関が清算人を定めているとはいえないでしょう。
事業会社時代の代表社員も同じことです。


2019.02.14(木)【株主リストの申請者】(金子登志雄)
 
 取締役ABC(代表取締役A)の取締役会設置会社甲において、1月25日
の取締役会で、Aは1月31日付けで代表取締役のみを辞任し、2月1日から
Bを代表取締役にする決議を行いました。代表取締役の予選ですが予選時と効
力発生時の取締役構成に変化がありません。Aの押印は届出印でした。

 甲は、同時に1月25日の臨時株主総会で2月1日から乙と商号変更するこ
とを決議しました。

 さて、この場合の株主リストですが、次のいずれでもよいでしょうか。
 ①総会日の1月25日付けでAが旧商号の代表取締役として作成したもの
 ②2月1日以降の日付でBが新商号の代表取締役として作成したもの

 平成28年6月23日付け民商第99号衣命通知には「(商業登記)規則第
61条第3項に規定する書面としては,代表取締役の作成に係る同項に規定す
る事項を証明する書面であって,登記所に提出された印鑑が押印されたものが
これに該当する」とあります。

 これに照らすと、①で何の問題もないように思えます。代表取締役の交代の
際の前代表取締役の届出印の照合でも利用されているとおり(商登規61条6
項)、Aの届出印は登記所に残存していますから、印鑑照合にも支障がありま
せん。株主リストの証明力についても、株主総会開催時点の代表取締役が証明
していますから、②より①のほうが証明力が高いといえます。

 たまたま顧客が①で作成してきたので、大丈夫だと思い、提出しましたら、
登記申請人である代表取締役による証明による②以外は受理できないと補正に
されました(きっと複数代表で全員が印鑑を届けている場合も申請人代表者以
外は認めないのでしょう)。

 上記衣命通知の代表取締役とは登記申請人たる代表取締役を前提としたもの
であることは分かりますが、必ずしも衣命通知の明文に反するものではありま
せんし、いわゆる自己証明となる②よりも、他者による証明による①の方が②
よりも証明力が高いのに、これを認めない登記実務はどう考えても理屈に合わ
ないと思っています。

 上記衣命通知の真意は、適当な証明方法がない場合の便法として、他の場合
と同様に自己証明でも受理するという証明の緩和策を示したものだと私は理解
していますが、「自己証明に限る、ネバナラナイ」と法務省の担当者が解釈し
全国の登記所に指示したため、上記①が補正にされてしまったわけです。

 誤解を招く衣命通知の表現(とくに組織再編で不明確)、それを実務の伝統
に反して「ネバナラナイ」と解釈した点につき、いまだに理解することができ
ません。


2019.02.13(水)【注目の合同会社】(藤沢・酒井恒雄)

 株式会社、一般社団法人及び一般財団法人の定款認証につき、公証人に対し
て実質的支配者となるべき者の申告が必要となり、その運用がなされて約3ヶ
月が経過しました。

 正直、形式的な書類が一つだけ増えたといった感覚で、殆ど設立手続に影響
は出ないだろうと思っていたのですが、設立のスケジュールに影響が出たケー
スに遭遇しました。

 上場会社ではない会社で形成している企業グループ内の一社が、新たに株式
会社を設立するというものでした。実質的支配者となるべき者の申告の際に、
関係する会社の謄本の添付を要求されたのですが、そのうちの一社が登記中で
あり、謄本が取得できない状態になっていました。

 従前では、登記手続に関係しない会社が、定款認証の手続に影響を与えるな
んて考えもしなかったことです。結局、登記が完了するまで定款認証が出来な
くなり、余裕をもって組んだはずのスケジュールを組み直すことになってしま
いました。そんな経験をし、思ったより実質的支配者となるべき者の申告は面
倒だと感じるとともに、ちょっと嫌なことが頭をよぎりました。

 一時期、会社を設立するなら、合同会社の方が「設立費用が安い」からお勧
めだという、安易な考えに基づく情報がインターネット上に蔓延したことがあ
りました。

 徐々にそういった偏った考えによる情報は減ってきた感があったのですが、
ここに来て、実質的支配者となるべき者の申告が面倒だということで、合同会
社の方が費用も安くて「面倒なく」設立できるというような情報が、再びイン
ターネット上を駆け回りそうな気がしています。歓迎されるものではありませ
んが、理由はどうであれ、合同会社にスポットが当たることになりそうな気が
しています。

 しかし、合同会社はプロ向きのハコです。専門家の力を借りずに運営して行
くのは、なかなか難しいかと思います。古山先生も徒然日誌で言及されている
ように、合同会社の法務は未成熟であり、設立したものの、その後の運営で混
乱が生じることが予想されます。また、すでに様々な問題に直面し、相談を受
けている先生方も多いかと思います。私も、社員の退社に関し、持分の払戻し
で頭を悩ませたことがあります。

 そんな状況の中、立花先生が合同会社に関する未知の領域に足を踏み込んで
くださったようです。その成果がそろそろ書籍となってお披露目されるようで、
私も今からワクワクしております。きっと霧の向こうに見えなかった景色が、
目の前に現れることになるでしょう。


2019.02.12(火)【戦後商法のあゆみ③ 昭和25年改正~その1~】
                          (東京・鈴木龍介)

 「戦後商法のあゆみ」の3回目は、戦後初の大改正で米国法への転換といわ
れる昭和25年商法改正を取り上げます。なお、少々長くなりますので、2回
に分けたいと思います。

1.背景等
 昭和24(1949)年6月1日に実施された行政機構改革により法務庁は
法務府に、裁判所から独立して登記事務等を所管していた「司法事務局」は
「法務局・地方法務局」に改称された。

 また、同時に法務総裁(後に法務大臣)の諮問機関として「法制審議会」が
創設された。一方で、間接統治を続ける連合国軍最高司令官司令部(GHQ)
は、各種法令の改正にも大きな影響を及ぼす存在であった。

 戦後初の商法改正であった昭和23年商法改正(昭和23年7月12日法律
148号)は、株金分割払込制は廃止したものの、本来、それとともに導入す
べき授権資本制度をはじめとする株式会社法制の見直しは、ある意味、先送り
されたことから、同法施行直後から法務庁に設置された「商法改正準備調査会」
で改正の検討が始まった。

 同年の10月には早くも一定の成果である「株式会社法改正の根本方針」が
公表されたが、その頃から商法の改正にGHQの関与が始まり、いわゆるシッ
クスポインツと呼ばれる改正に関する要請事項―ⅰ)株式の譲渡性、ⅱ)議決
権、ⅲ)新株引受権、ⅳ)書類閲覧権、ⅴ)少数株主の権利と保護、ⅵ)外国
会社―が示された。

 その後、法務庁とGHQの協議・調整が進められ、昭和24(1949)年
7月には法制審議会商法部会による「商法の一部を改正する法律案要綱」が公
表された。それを受けて法制審議会で修正を加えた「商法の一部を改正する法
律案要綱の修正案」が法務総裁に答申された。

 この時代、日本はまさに戦後の混乱期にあり、昭和24(1949)年には
「下山事件」、「三鷹事件」、「松川事件」という社会を揺るがす事件が頻発
した。また、同年には、その後の我が国の税制の大きな柱となる「シャウプ勧
告」がなされた。世界に目を転じてみると、1949年には中華人民共和国が
成立し、1950年には朝鮮戦争が勃発した。

2.概要
 前述の要綱の修正案に基づく法案が昭和25(1950)年1月に閣議決定
のうえ、国会に提出されたものに一部の修正を加え、「商法の一部を改正する
法律」(昭和25年5月10日法律167号/以下、「昭和25年改正商法」
という。)が同年5月に成立し、昭和26(1951)年7月1日に施行され
た。

 昭和25年改正商法の主眼としては、ⅰ)資金調達の便宜を図ること、ⅱ)
機関設計を見直し、運営を合理化を図ること、ⅲ)株主の地位の強化を図るこ
とがあげられる。また、これまでの日本の商法がドイツ法的立法であったとこ
ろ、GHQの多大な影響を受け、アメリカ法に倣う改正であったと評価されて
いる。  ~続く~


2019.02.08(金)【合同会社を完全親会社とする株式交換】
                         
(東京・古山陽介)

 最近、株式交換に悩まされることが多くなっています。株式交換は登記が発
生しない案件もあり、その場合には余計に気を揉んだりします。

 中でも立て続けに2件、合同会社を完全親会社とする株式交換の相談があり
まして、いずれも論点となったのが「資本金の計上方法」についてであります。
これがけっこう曲者で、金子先生にもお力添えを頂きました。

 まず、合同会社において、社員が追加出資する際、全額その他資本剰余金に
組み入れることができます。合同会社には、資本準備金の項目がなく、出資金
の1/2以上を資本金に組み入れなければならない制約はありませんので、出
資額全額をその他資本剰余金に組み入れることが可能というわけです。

 また、株式会社同士の株式交換の場合、全額を資本準備金に組み入れること
で、資本金の増加を回避することができます。ちなみに、株式会社同士の株式
交換については、株式の現物出資に近い会計処理がなされます。

 これらを組み合わせて考えていきますと、合同会社を完全親会社とする株式
交換については、資本金を増加させることなく、全額その他資本剰余金に組み
入れることで、登記をしなくても手続きが可能となるという考えに至ります。

 この考えで間違いないだろなと思いつつも、一つだけ引っかかりました。株
式会社同士の株式交換では、原則として必ず資本金か資本準備金に組み入れな
ければならないのに、合同会社は資本準備金の項目がないからといって、全額
その他資本剰余金に組み入れることが出来るのだろうか、沸々と疑問が湧いて
きました。

 調べていくと次の条文にたどり着きます。
 会社計算規則第39条第2項を読み進めていきますと最後のほうに「(株式
交換完全親会社が持分会社である場合にあっては、株主資本等変動額)」と規
定があります。

 全文を載せると長くなりますので、簡単に読み替えますと、こうなります。
『(債権者保護手続をとっていない場合は、)株式交換完全親会社(合同会社)
の増加する資本金及び資本準備金の額は、株主資本変動額とする。』つまり、
資本準備金がない合同会社は、「株主資本変動額=増加する資本金の額」、と
いうこになると読めます。

 それでも自分の条文解釈が間違えていて、資本金に組み入れる必要はないと
いう結論に至るはずだと、書籍のみならず、ネットでも検索かけましたら、司
法書士の先生のブログが出てきまして、金子先生にもご確認していただいたと
ころ、ブログの先生は、当時の立法担当者から「全額資本金に計上しなければ
ならない」との回答を受けたということでありました。

 結論としては、条文の解釈どおり、「株主資本変動額=増加する資本金の額」
となるということです。多くの株式交換の事例では、株主資本変動額はそれな
りに大きな額になりますので、登録免許税等のことを考慮すると、合同会社を
親会社とする株式交換スキームはハードルが高いことがわかりました。

 何故に合同会社が完全親会社となると、資本金計上が義務付けられてしまう
のか、納得はいきませんが、合同会社の社員資本は、各社員ごとに振り分けら
れ、減資ができる場合も株式会社より厳格で限定的であることを考えると、株
式交換の際にその他資本剰余金に組み入れることは、減資に類似すると考えら
れるので、全額資本金計上せよという理屈になるのかもしれません。

 合同会社の数が増えていますが、設立後の法務についてはまだまだ未成熟で
あり、今後クライアントからの相談も増えてくるでしょう。ですので、立花先
生の新刊がバイブルになりそうで、発売が待ち遠しいです。
     https://is.gd/MRnDYx


2019.02.07(木)【冒険】(仙台・立花宏)

 再び、“冒険”のお誘いをいただいたのは、昨年の今頃、東京での会食の席
でした。前回の“冒険”の成果になにがしかのご評価いただいたのでしょう。

 お酒が入り、少し気分がよくなっていた私でしたが、前回の“冒険”では、
大変苦労した記憶があり、お誘いに対して即答ができませんでした。ただ、無
名だった私に声をかけてくださり、“冒険”に送り出してくださった恩人とも
いえるその方に背中を押されると、再び冒険に行きたい、いや、行かなければ
という気持ちも湧いてきました。

 「行くとしても、どこに“冒険”に行くか、少し考えてみます」。
 そうお答えし、恩人と別れ、私は仙台に向かう最終の新幹線を待ち、東京駅
のベンチで“冒険”について考えていました。私の隣には、ある方がいました。
金子先生でした。恩人との会食に同席してくださったうえに、私が“冒険”の
前に“迷子”にならないようにというご配慮だったのでしょう。最終の新幹線
までいろいろなお話をしてくださり、改札まで見送ってくださいました。いつ
の間にか、私は“冒険”に行こうと決意していました。

 恩人というのは、中央経済社の担当の方です。ふたたび、単独での著書とい
う“冒険”へのお誘いをしてくださったのでした。何週間後だったでしょうか。
私は“冒険”の行先の案をいくつか考え、中央経済社の担当者の方に提案いた
しました。担当の方は、社内で検討し、後日、回答を下さるとおっしゃってく
ださいました。

 “冒険”の行先の案は何か所かあったのですが、私には、そのうち、1か所、
とても気になる場所がありました。ただ、そこはまだ未開の地のように思え、
とても私のような駆け出しの司法書士に行けるような場所ではないようにも感
じていました。いつしか、「今回は無理かもしれないが、いつか、行ってみた
い」そんな思いを抱きながら、中央経済社様のご判断を待つことにしました。
 
 数日後、中央経済社様からメールで回答をいただきました。すると、なんと、
中央経済社様が指定してくださった“冒険”の行先は、その、とても気になっ
ていた場所でした。私の様子から、私の気持ちを察し、リスクを承知でそこを
指定してくださったのかもしれません。私は事務所のパソコンの前で、その恩
人の方に深々と御礼のお辞儀をしたのでした。

 “冒険”の行先は「合同会社」です。しかも、その社員の変更とそれに伴う
計算関係に焦点をあて、深く掘り進んでみることにしました。そして、金子先
生と広島の幸先先生に、その“冒険”に、監修と執筆協力という形で同行して
いただくことにしました。お二人がいなかったら、私は、きっとどこか変な方
向に迷い込んでしまっていたことでしょう。二人のお力添えのおかげで、私は
1年近い“冒険”から、無事に帰ってくることができました。お二人だけでは
ありません。前回の“冒険”以上に、中央経済社の皆様からたくさんのご支援
をいただき、また、いろいろなご迷惑をおかけしたと思います。

 そうしたたくさんの方たちのご助力のおかげで成し遂げた冒険の成果をもう
間もなく皆さまにお披露目できます。

       https://is.gd/MRnDYx   


2019.02.06(水)【冬眠】(藤沢・酒井恒雄)

 子供を連れて、近所の公園に遊びに行ったときのことです。木の枝の上に、
ちょろちょろと動く黒いものがあり、それをすかさず見つけた子供に、「あれ
は何?」と質問をされました。

 大きさや動きからして、リスだと思いましたので、「多分、リスだよ。」と
答えました。すると「そうなんだ。リスは冬眠しないんだね。」と返され、あ
れ? そういえばリスは冬眠する動物では?と自信がなくなりました。

 もう一度よく観察してみましたが、やはり、その黒い物体はリスでした。私
の家の近くで見かけるリスは、ほとんどがタイワンリスという外来種です。

 「日本のリスは冬眠するけど、あのリスは外国のリスだから冬眠しないんだ
よ。」と根拠のない返事をしてしまったのですが、気になって後で調べてみた
ところ、それは間違いでした。日本には3種類のリスが生息しているそうです
が、その中で冬眠するのはエゾシマリスという1種のみなのだそうです。外来
種だけ冬眠しないということではありませんでした。

 ひょっとして、クマも冬眠しない種類があるのではと思い、ついでに調べて
みたところ、やはり冬眠するクマと冬眠しないクマがいるそうです。意外だっ
たのはホッキョクグマ(シロクマ)です。

 真っ白い毛に覆われて、氷のうえを悠々と歩く姿が思い浮かび、極寒の気候
でも常に活動していると思いきや、なんと冬眠をするのだそうです。ただ、そ
の冬眠の方法が特殊なようで、冬眠中も歩いたり、普通に行動したりと、一見
いつもと何ら変わらないように見えて、体の機能は代謝を抑えた冬眠状態にな
っているのだそうです。

 この状態、何か身に覚えがあります。私は、冬生まれのくせに、寒さが苦手
です。気温が低く、寒さが身にしみるような日は、極力、消費カロリーを抑え
ているせいか、えらく生気がないと自分でも思います。もしかしたら、人間に
も冬眠する人と、冬眠しない人がいるのかもしれませんね・・・・・。


2019.02.05(火)【戦後商法のあゆみ② 昭和23年改正】
                          (東京・鈴木龍介)

 「戦後商法のあゆみ」の2回目は、戦後最初の昭和23年商法改正を取り上
げます。

1.背景等

 連合国軍最高司令官司令部(GHQ)は、三井や三菱といった、いわゆる財
閥が軍国化を推進した1つの要因であるとして、財閥解体を日本政府に指示し、
複数の会社に財閥を分割された。

 裁判所の監督など法務・司法全般を所管していた司法省については、昭和
22(1947)年5月3日の日本国憲法とともに施行された裁判所法(昭和
22年4月16日法律59号)により裁判関係事務が最高裁判所に移管された。

 次いで昭和23(1948)年2月15日に施行された法務庁設置法(昭和
22年12月17日法律193号)に基づき法務庁が設置され、司法省は廃止
となった。法務庁は、政府の最高法律顧問府と位置付けられ、司法省の所管事
務のほか、内閣法制局の所管事務である法令案等の審議、司法制度・内外の法
制等の調査研究を加え、民事行政に関する争訟、人権擁護などを所管すること
とされた。

 この時代は世界の歴史から見ると、米国とソ連の対立に代表される東西冷戦
体制が始まった頃である。

2.概要

 株式会社の株式発行時の払込について、株金分割払込制―4分の1以上の払
込―が認められていたところ、GHQはそれを財閥による会社支配を可能にす
る手法であると考え、前述の財閥解体施策の一環として、株金分割払込制を廃
止し、株金全額払込制に一本化する改正である「商法の一部を改正する法律」
(昭和23年7月12日法律148号/以下、「昭和23年改正法」という。)
が成立、昭和23年7月12日に公布、同日施行された。

 あわせて、昭和23年改正法では株券の最低券面額を50円から20円への
引下げを行ったものの、授権資本制度等多くの改正は先送りした。

3.商業登記に関する規律

 株金分割払込制の廃止により株式会社の登記事項であった“各株ニ付キ払込
ミタル株金額”は削除された(昭和23年改正法前188条2項5号参照)。

~参考文献等~
・秋坂朝則『商法改正の変遷とその要点(新訂版)』(一橋出版、2006年)
 26頁~28頁
・岩崎稜『戦後日本商法学史所感』(新青出版、1996年)29頁~30頁
・浜田道代編『日本会社法の歴史的展開』(商事法務、1999年)212頁
 ~219頁
・法務省WEBページ「法務省の沿革」
  http://www.moj.go.jp/hisho/soshiki/enkaku.html


2019.02.04(月)【中学校での講演依頼】(島根・根来川弘充)

 ここ数年、この時期になると、地元の中学校から、「職業人(社会人)に学
ぶ」というテーマで、講演の依頼をいただいています。

 私以外に、15名程度、地元で働いておられる方がおられ、一人がそれぞれ
10名前後の生徒にお話をするのですが、私の場合は、毎年、すこしずつ変え
ながら、法律に関心をもってもらうよう、また、少しでも働きたいという意欲
をかきたてるよう、意識しながら内容を考えています。

 その中でも、年々、比重が重くなるのが、インターネットについてのお話で
す。

 法律は、私達が生きていく社会の中の事実から、生まれていくので、どうし
ても最先端のものには、弱く、問題がおきてからでないと被害が防げないとい
う弱さがあります。

 私のように、それがない時代で生きてきた人間は、インターネットの怖さに
少なからず、気付くのですが、それが当たり前だと思って過ごしている今の子
供たちは、気がついたときには、大きな被害をうけるのではないかと、心配に
なってしまいます。

 インターネットは、結局のところ、道具にすぎないので、それを使う人間の
モラルの問題です。どのようにモラルをつくるか、考えてもらえるような内容
にしたいと思います。


2019.02.01(金)【立花新著のお勧め】(金子登志雄)

 昨日の本欄に追記しましたが、立花さんの本がいよいよ2月16日に発売さ
れます(書店では17日頃になるかもしれません)。
       https://is.gd/MRnDYx 

 最初に立花さんが下書きを書き終わったのが昨年の夏、出版社に完成原稿を
送ったのが昨年12月初旬でしたから、原稿の整備だけで4か月も要しました。

 これは監修を依頼された私の責任です。「Q&A方式に全面的に書き直した
らどうか」とか、「ここに図表を入れたら」などと勧めただけでなく、立花さ
んがQ&A方式に変えてきたら、この項目の分量だとQが2頁に分割されてし
まうから、追記か削除で形を整えよなどと内容以外にも口を出し、何度も何度
も書き直してもらったからです。立花さんもよく耐え頑張りました。

 内容面では彼の問題意識は素晴らしいものでした。私や広島の幸先さんが口
を出したのは、客観的な第三者の目で、その問題意識をどう分かりやすく表現
し、結論に導くかという技術的側面でしたが、この点ではお役に立てたと思っ
ています。立花さんも、もやもやしたものを我々の関与で、頭を整理すること
ができたことでしょう。

 いくつか問題意識をご紹介しましょう。

1.1持分100万円(出資の価額は50万円)の価値があるのに、金50万
 円で加入した社員を同じ1人1票の同意権限にしてよいのか。損益分配比率
 は1:1でよいのか。
2.定款で持分の相続を認めた場合に、相続人の一部だけにも相続させること
 ができるか。
3.定款に「業務執行社員の互選で代表社員を定める」とあった場合に、業務
 執行社員が法人であれば職務執行者に選任権限があるのか。
4.持分の一部譲渡ができるのだから、持分の一部払戻しも可能か。
5.資本金の額の減少と持分の払戻しに関する債権者保護との関係はどうなっ
 ているのか。

 いかがですか。ほとんどの本に十分には記載されていないことを彼は果敢に
挑戦していました。無謀(?)にも、計算本の著書がある私も躊躇してしまう
難解な合同会社の計算に対しても挑戦しており、社員別(持分)管理表などと
いう便利なもので分かりやすく説明していました。

 立花さんの代表的な著作になることは間違いなく、息の長い本になることで
しょう。そのお手伝いをできて幸せでした。あえて、組織変更などの論点を省
略し、社員の変更と計算に特化したため、価格も3000円程度に収まりまし
た。ぜひ、ご購読をご検討ください。


2019.01.31(木)【合同会社の清算人の選任】(仙台・立花宏)

 会社法第647条第1項(1号・2号省略)
 次に掲げる者は、清算持分会社の清算人となる。
 ③ 社員(業務を執行する社員を定款で定めた場合にあっては、その社員
  の過半数の同意によって定める者

 上記のかっこ書を前提に、次のQにつき、どうお考えですか(当然ながら、
定款には清算人についての定めはないとします)。

----------------------------------------------------------------------
Q:社員がA、B、Cの3名(いずれも“法人”とする)。そのうち、A、B
 が定款で業務執行社員と定められている。
  この合同会社が解散し、清算人に第三者を選任する際、その選任の意思表
 示をするのは法人社員の職務執行者か、代表者か。
-----------------------------------------------------------------------

 登記実務上は、業務執行社員による意思表示であるため、職務執行者が行う
ものと扱われているようですが(商事法務刊・松井信憲著『商業登記ハンドブ
ック3版』706頁)、この取扱いに疑問を感じています。

 原則は清算人の選任は業務執行行為ではないから社員で選任し(代表者が意
思表示)、定款で業務執行社員を定めた場合には、突然、業務執行行為に変化
するなどということがあるのでしょうか。

 そこで、私は、清算人の選任は株式会社の規定からしても重要な人事問題と
して業務執行行為ではないとされているから、定款で業務執行社員を定めた場
合も同様であり、上記のかっこ書は、業務執行を担当していた“社員”の権限
にしただけだと考えました。業務を執行しない“社員”を、清算人を選任する
メンバーから外した(株式会社でいえば、清算人の選任についての議決権を制
限した)と考えたわけです。

 金子先生も会社が解散したら事業会社としての業務執行はあり得ず、業務執
行社員は登記記録からも削除されるのだから(商業登記規則91条1項)、清
算人は定款で業務執行社員とされた“社員”の権限にしただけだとし、私の意
見に同意してくれました。

 よって、登記実務の取扱いとは異なりますが、この場合も法人の意思表示は
職務執行者ではなく、その代表者が意思表示を行うと考えるべきではないかと
結論づけました。

 最後に宣伝になりますが、上記のような問題意識で合同会社の運営に関する
本を執筆してみました。昨日からアマゾンで下記のとおり予約販売を開始して
おります。悩ましい論点がたくさんあり苦労しましたが、金子先生に監修をお
願いし、広島の幸先先生からもご意見や感想をいただき、やっと考えを整理す
ることができ出版にまで至りました。ご活用いただけましたら、幸いです。

       https://is.gd/MRnDYx

(金子追記)
 上記のような悩ましい論点(計算を含む)に果敢に挑戦した意欲的な内容で
す。具体的な想定事例をもとにQ&A方式で説明していますので、実に分かり
やすい内容になっています。自信をもってお勧めします。


2019.01.30(水)【アメフトと法人化】(藤沢・酒井恒雄)

 アメフトの本場では、プロのアメフト・チームのナンバーワンが決まる、ス
ーパーボウルの開催日が迫っています。今年はコカコーラの本社がある、ジョ
ージア州のアトランタで決勝戦が開催されます。

 ソワソワし始めると同時に、つい、「アメフト」の四文字に、敏感に反応し
てしまうのですが、そんな中、東京大学のアメフト部の法人化に関するニュー
スが目に飛び込んできました。

 昨年の春頃から話題になっていたようですが、まったく知りませんでした。
さらには、京都大学のアメフト部が3年前に法人化していたことを知って驚き
ました。

 つい、高校の部活を想像してしまって、部活が法人化?と驚いたのですが、
有名大学の強豪部ともなりますと、運営費、寄付金、スポンサー等、実質はプ
ロのチームと変わりない部もあるようです。

 東大アメフト部が採用した組織形態は、一般社団法人です。法人化した目的
はいくつかあるようですが、その中の一つとして、日本大学アメフト部の悪質
タックル問題で浮き彫りになった、組織のガバナンス強化もあったようです。

 あのとき、誰がどのような権限を持っているのか、意思決定はどのようにさ
れていたのか、責任の所在はどこなのか等、大学全体をも巻き込んで、組織と
しての多くの不明確な点が浮き彫りになりました。

 そういった問題に対応すべく、監督の選任権、予算計画等の部の運営方針を
決める「代議委員会」というものも作ったそうなのですが、詳しい仕組みまで
は分かりませんでした。おそらく、同じく一般社団法人であるJAF(日本自
動車連盟)の仕組みに近いのかなと推測しています。

 JAFの場合は、社員候補者選考委員会という独立機関が、会員の中から法
人法上の社員を選任し、選任された社員が社員総会で議決権を行使するという
仕組みをとっているようです。ちなみにJAFの定款はネット上で見ることが
できますので、大所帯の一般社団法人には参考になることが多いかと思います。


2019.01.29(火)【戦後商法のあゆみ① 昭和22年民法改正】
                           (東京・鈴木龍介)

 少々、個人的な事情で、第2次世界大戦後~現在に至る商法・会社法(その
他の関係法を含む。)のあゆみについて調査等をする必要がありまして、この
コーナーを使い勉強させていただければと思っています。私の場合、文献等を
読むだけではうまく整理や理解ができず、やはり書いてみてということでお許
しいただくととともに、お読みになられた皆さんの何か気づきになることがあ
れば等と勝手に考えています。なお、必ずしも連載ではなく、そのときどきの
話題等があれば、それらをはさんでいくつもりです。

 1回目は、商法自体の改正ではなく、いわゆる戦後民法―家族法―の改正に
伴う商法の一部改正です。

1.背景等
 1945(昭和20)年8月14日に日本はポツダム宣言を受諾し、翌15
日に第2次世界大戦が終結した。日本は連合国の占領下におかれることとなり、
連合国軍最高司令官司令部により日本政府を通じての間接統治が行われた。

 法制面においては、まず「日本帝国憲法」を廃止し、あらたに「日本国憲法」
(以下、単に「憲法」という。)が制定された。憲法は前文と103箇条で構
成され、1946(昭和21)年11月3日に公布、1947(昭和22)年
5月3日に施行された。

 憲法の下で地方自治法(昭和22年4月17日法律67号)をはじめとする
法律が次々と制定される中、民法の親族・相続関係分野についての大改正がな
された(昭和22年12月22日法律222号/以下、「昭和22年改正民法」
という。)。昭和22年改正民法では、憲法14条に定められた“法の下の平
等”に基づき、戸主制度の廃止や男女同権等が規定され、1948(昭和23)
年1月1日施行された。

2.概要
 昭和22年民法改正のいわゆる現行の整備法に相当する「民法の改正に伴う
関係法律の整理に関する法律」(昭和22年12月22日法律223号)によ
り、当時の商法において、妻が営業を行うに際しては登記を要する旨の規定
(商法5条/明治32年商法の制定時からの規定)が削除された。すなわち、
妻も自由に営業をすることができることとなったわけである。また、法定代理
人が無能力者のために営業を行うには親族会の同意を得る必要があったが(商
法7条1項/明治44年改正商法により規定)、“親族会の同意”が削除され
た。すなわち、商業においても“家主義”から“個人主義”への転換がなされ
たというわけである。


2019.01.28(月)【司法書士のM&A・事業承継仲介業務】(金子登志雄)

 先週の金曜日に、司法書士事務所を対象としたM&Aに関するチラシが当事
務所のFAXに入りました。一斉に司法書士事務所に送ったようでしたが、皆
様のところにはいかがでしたか(地域限定だったかもしれません)。

 とうとうこういう時代になったかと感無量です。というのは、日本で最初に
本格的にM&Aの仲介が事業としてはじまったのは32年ほど前の昭和60年
代で、会社としては東京の赤坂で設立された「日本M&A研究所」が最初でし
た(私は創業メンバーの一人であり、取締役事務局長でした。司法書士資格を
とる10年前のことです)。

 当時はまさしくM&A業務の黎明期であり、写真週刊誌に「乗っ取り屋」の
ように揶揄されて会社の設立を紹介される始末で、商売としては、まだ成り立
たず、登記の事業目的でも「企業提携の仲介」などとしなければなりませんで
した。仕方なく、私どもは下記の『実戦M&A事典』などを出版しM&Aの啓
蒙に努めておりました(下記は初版です)。
        https://is.gd/3CMlJy

 前書きが長くなりましたが、若い司法書士達が、格好いいM&Aに従事した
い、これからは事業承継の時代だと前のめりになっている傾向がありますので、
先駆者の一人として、これに警鐘を鳴らしたいのです。私が事業承継をテーマ
にした講演を断っている理由でもあり、以下、列挙します。

1.M&A仲介で最も重要なのは情報です。これを集める能力は平均的司法書
士にはありません。日本最大の仲介機関である上場会社の日本M&Aセンター
については、平成3年の創業時期がよかっただけでなく(創業メンバーは知り
合いです)、事業承継を中心とした会計事務所の全国的ネットワークを持って
いたことが成功の最大の理由です(当社にはこれがないので、自社でM&Aを
実行する方向に進みました)。

2.不動産業界に千三(せんみつ。千に3つも成功すればよい)という格言が
ありますが、カネだけの問題で終わらないM&Aは万三(まんみつ)です。極
秘裏に話を進めオーナーが合意しても、最後の段階で家族や取締役会の反対で
ちゃぶ台返しにあうのは日常茶飯事です。そのため、仲介業者は調査費、企業
評価報酬などの収入でリスク回避をはかっているのであり、仲介成功報酬だけ
で事業を維持しているわけではありません。

3.中小企業などは社長の個人事業も同じであり、M&A対象になりがたいと
いえます。顧客は社長個人の人脈であり、経営者が変われば、顧客も去って行
きます。司法書士事務所のM&Aもこれに近いでしょう。

4.M&Aの成功は買い手からすれば、M&A後半年、1年経て分かることで、
高く買いすぎたとか、シナジー効果が出なかったなどの失敗事例が多数ありま
す。だからといって、容易に離婚はできません。

5.事業承継も、その大多数は相続税対策であり、M&Aではありません。相
続税対策をしたのに、後継者が先に死亡したとか、税法が変わり従来の対策の
意味がなくなったなどの例も多数あります。

 まだまだありますが、私のいいたいのは、司法書士は上記の点で素人ですか
ら、情報収集や仲介能力に自信がない限り、深入りせず、依頼されたM&A法
務や事業承継法務に専門家としてかかわるだけにせよということです。
 
 FAXを送ってきた方の業務妨害の意図は全くありません。情報収集や仲介
能力に自信がないであろう大多数の職人事務所に警告を発しただけです。情報
提供者になるのは問題ありません。当事務所も後継者に悩んでいますので、ぜ
ひ後継者を紹介してほしいものです。


2019.01.25(金)【有限会社の定款と社員】(仙台・立花宏)

 先日、税理士の先生からのご紹介で、ある特例有限会社の目的変更登記のご
依頼をいただきました。お預かりした資料に目を通していて、ふと気になった
ことがありました。それは、その会社様の定款の記載でした。

 その特例有限会社様は、会社法施行後も定款の見直しをしておらず、会社法
施行前の定款のままでした。というよりも、会社設立後、1度も定款の見直し
はしていなかったと思われます。

 定款の記載で私が気になったのは、社員の氏名及び住所のことでした。会社
法施行前の有限会社の定款には、社員の氏名及び住所が絶対的記載事項となっ
ていました(有限会社法6条1項6号)。会社法施行により、この記載はない
ものとみなされています(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律
(以下、「整備法」という。)第5条)。そのため、社員についての記載は効
力がないものとして扱えば済むのだろうと思いますが、私が気になったのは、
有限会社法時代の社員名簿と定款の社員の記載との関係はどのようなものだっ
たのだろうか、ということでした。

 有限会社法時代、社員以外に持分を譲渡するには、社員総会の承認が必要と
されていました(有限会社法19条)。そして、社員名簿への記載が持分移転
の対抗要件とされていました。これらの手続が適法に行われていたにもかかわ
らず、定款の社員の記載を変更していなかった場合はどうなるのでしょうか。

 インターネットで検索すると、古い研究論文を見つけることができました。
出典は札幌大学経済・経営学会が発行している「経済と経営」という雑誌のよ
うで、「有限会社における持分移転と定款変更」(土井勝久)という論文でし
た。その論文によると、社員の記載は設立時の絶対的記載事項であるが、設立
後の社員の変動は定款変更に該当しないという見解を紹介しつつ、ご自身は定
款変更に該当すると考えるという見解を述べておられました。

 合同会社をはじめ持分会社には法定の社員名簿がなく、定款が社員名簿の代
用になっています。同様に、土井先生のご指摘のように、有限会社においても
設立後の社員の変動が定款変更に該当すると考えると、有限会社については、
社員について定款と社員名簿の二重の管理を法が要求していることになります
が、その必要性があるのでしょうか。

 内部的には民法の組合といえる持分会社の定款は組合契約としての性質もあ
り、構成メンバーである社員の変動を記載する必要があるでしょう。しかし、
制限があるとはいえ、持分(株式)の譲渡が自由である有限会社は純粋の社団
とされています。社団の定款と社員の変動は別の問題というべきでしょう。

 よって、有限会社の定款の社員の記載は、持分会社における定款の記載事項
である社員とは意味が異なり、株式会社でいう発起人のことを意味すると考え
るのが素直なように思えました。

 ただ、そう考えると、整備法で、社員の記載がないものとみなされたことが
妥当なのかという疑問も生じるかもしれません。株式会社の定款の発起人の記
載については、設立後に削除できるのかどうかについて、議論があるからです
(神﨑ほか『論点解説商業登記法コンメンタール』(金融財政事情研究会)
154頁)。しかし、有限会社はもう設立できません。定款の記載事項とされ
た社員が現状の社員ではないことを明らかにするため、整備法が廃止をみなし
たともいえるのではないでしょうか。
 
 私の疑問点は今回の手続に直接影響のある部分ではありませんでしたので、
その特例有限会社様には、これを機会に、会社法に適合させるため、全面的に
定款を見直すご提案をさせていただき、ご了承をいただきました。


2019.01.24(木)【権利の発生、行使、効果】(金子登志雄)

 月曜日の古山さんの「剰余金が実際に支払われる日は基準日後3か月以内に
限られないのではないか」との見解に私も賛成です。

 権利には発生、行使、効果の発生、消滅などといった各段階がありますが、
基準日後3か月以内に行使すれば、手続の関係で、実際に支払われる日はそれ
を超えてもよいと思います。

 これと類似する事例を考えてみました。
1.株主になる日と株券保有者になれる日は相違する。
2.金銭対価の合併でも効力発生日に金銭が支払われるとは限らない。対価は
 金銭交付請求権とみるべきだ(テイハン360問384頁)。
3.基準日後3か月以内に定時株主総会が開催されたが、継続会になり、3か
 月後に議決権の行使があった。

 ところで、上場会社において、この基準日が事業年度末日の3月31日でも、
事務手続の関係で3月29日以降(本年は土日の関係で27日以降)に株主に
なっても、定時株主総会の議決権も剰余金の配当も権利がありません。いわゆ
る権利落ちです。

 では、会社法282条に、新株予約権を行使した日に株主になるとあるのに、
3月31日に行使し自己株式を交付されたら、議決権等の権利がないのかと疑
問に思い、某証券代行に聞いてみましたら、「確かに、新株の交付なら権利落
ちは無関係だが、自己株式はどうなんだろう。たぶん、新株と同様に扱うのだ
ろうと思う。ただ、実務の運用上、権利落ちとは関係なく、四半期末日近辺の
新株予約権の行使については、権利行使を避けてもらっており、やむなく行使
されても、翌月の行使として扱うことの了解を得ている」といったような話で
した。上場会社の場合は四半期ごとに発行済株式総数や自己株式保有数を開示
しなければならないため、四半期末日近辺の新株予約権の行使は事務処理上困
るわけです。

 以上、会社法の規定は通常の場合を想定したもので、全てが会社法の規定ど
おりには行かないため、そこは解釈で補わなければならないという結論でした。


2019.01.23(水)【話し手の姿勢】(藤沢・酒井恒雄)

 1月17日の金子先生の投稿、「挨拶の仕方」を読んでドキッとしました。
幸いにも今まで、挨拶をしてから礼をするという流れで登壇していましたが、
それが正しい挨拶の仕方であるかどうかは、意識したことがありませんでした。
礼儀やマナーは、知らないことや、勘違いも多いです。

 以前、こんなことがありました。司法書士会の研修会の冒頭で、スタンド・
マイクの前に立って話しをする機会がありました。両手をブラブラさせていて
は良くないし、直立不動というのもどうかと思い、手を後ろに組んで、休めの
姿勢のような感じで話しをしました。

 確か、消防署の式典(出初式か公開の消防訓練だったと思います。)で、隊
員達が休めの姿勢で整列していたと記憶していましたので、手を後ろに組むこ
とは、決して非礼な姿勢ではないと思っていました。

 しかし、研修会の終了後に、私の姿勢について、先輩司法書士の方に注意を
されてしまいました。後ろに手を組んで話しをすると、偉そうに見えたり、手
を隠す(手の内を隠す)ということで、マナーに反するということでした。

 なるほどと思った反面、偉そうに踏ん反り返って話しをした訳でもなく、当
然何の隠しごともなかったので(笑)、休めの姿勢がそんなに悪いものかと、
ちょっと反抗的な気分にもなりました。

 そこで後日、調べてみたところ、消防組織法というものにたどりつきました。
こんな法律があるのかと思いつつ、さらに進むと消防訓練礼式の基準というも
のがあり、その中に休めの姿勢のとり方について書かれている条項を発見しま
した。

 礼式の基準に規定されているのだから、休めの姿勢は、決して非礼な姿勢で
はなさそうです。勝ち誇った気分になったのも束の間、その先を読むと「この
姿勢では、話をしたり動いたりしてはならない」と規定されていました・・・。
恥の上塗りをしたような気持ちになり、一人で顔を赤らめたことを思い出しま
した。


2019.01.22(火)【特別養子制度の見直し】(東京・鈴木龍介)

 このところ民法は、債権関係、相続関係、成年年齢関係と抜本的な改正が立
て続けに行われてきました。そんな中、特別養子制度の利用を促進するための
見直しについて、平成30(2018)年6月から法制審議会で検討が開始さ
れました。その背景には、近時、社会問題化されている児童虐待の法的救済の
1つとして特別養子制度を活用しようというのがあるようです。

 特別養子制度は、1987(昭和62)年に法制化された比較的あたらしい
制度です。その契機は「菊田医師事件」といわれていますが、事件の概要とし
ては、「菊田医師は中絶手術を求める女性を説得して思いとどまらせる一方、
生まれた赤ちゃんを子宝に恵まれない夫婦に無報酬で斡旋するというものであ
り、その際、やむを得ず偽の出生証明書を作成して引き取り手の実子とした」
というものです。

 特別養子とは、法的には実方の血族との親族関係が終了する養子縁組であっ
て、家庭裁判所の審判により成立させるものです。その大枠は変わりませんが、
今回は特別養子縁組の成立に関する規律を見直すとともに、現行法では養子と
なる者の年齢を原則として6歳未満としているところ、15歳未満と大幅に引
き上げる提案がなされる見込みです。このあたりを見ても、そもそも養子の福
祉を尊重していることが見受けられます。

 法制審議会での検討については、中間試案とパブリックコメントを経て、要
綱案のたたき台の起案という段階まできていますので、比較的早期に法案とし
て上程されるかもしれません。


2019.01.21(月)【剰余金の配当決議と効力発生日】(東京・古山陽介)

 先日、12月決算で3月に定時総会を開催するクライアントから受けた質問
です。

 定時株主総会を3月29日(金)に開催して、剰余金の配当決議を行うので
すが、土日を挟む関係で、支払日である効力発生日を4月1日(月)にしよう
としたところ、株主名簿管理人である信託銀行から、効力発生日は、基準日の
3ヶ月以内(つまり3月31日まで)でなければならないと言われたのですが、
どうでしょうか(前提としまして、期末配当については、事業年度末日の株主
に配当する旨の基準日に関する定めが定款にあります)。

 確かに、別冊商事法務であったり、信託銀行が編著となっている書籍には、
会社法第124条第2項を根拠に、効力発生日は基準日の3ヶ月以内にしなけ
ればならないと書かれています。

 上場企業ですと、安全に確実にということもあって、効力発生日が3ヶ月以
内であることが当たり前で、自分も頭もそれに慣れてしまっていますが、条文
を改めて読んでみると、はて、本当に効力発生日(支払日)が4月になっては
いけないのだろうかと疑問が湧いてきました。

会社法第124条第2項には、
「基準日株主が行使することができる権利(基準日から三箇月以内に行使する
ものに限る。)の内容を定めなければならない。」
 とあります。

 「権利の内容を定める」ということは、「配当の内容を決議する」に読み替
えることができます。そう考えると、権利の内容となる配当請求権の詳細を確
定するための「決議」は、確かに3ヶ月以内になされなければなりませんが、
支払日(効力発生日)まで3ヶ月以内である必要はないのではという方向に傾
いてきました。

 さらに調べていくと、コンメンタール会社法3でこの論点について解説がさ
れていました。やはり、解釈が分かれているようであります。

 ではでは、実際に効力発生日が3ヶ月を超えた事例はないのかと、ネットで
検索かけたところ、ありました!
  
  http://ke.kabupro.jp/tsp/20180510/140120180508429102.pdf

 ということで、効力発生日が3ヶ月を超えることについては、会社の判断に
ついて、説明を加えることで大丈夫でしょうという回答に至りました。念のた
め顧問弁護士等にも確認はしてくださいと伝えましたが。

 株式実務のプロが書いている本だから、実務では一般的だからと言った、長
いものには巻かれろの感覚を解きほぐしてくれる質問でした。


2019.01.18(金)【手続の順序】(金子登志雄)

 昨年から新進気鋭の若い司法書士から相談を受ける機会が増えました。会社
法の質問であれば、だいたいのことは応えられるという自信がありましたが、
こういう若い人の質問はいままで考えたこともない新鮮な内容が少なくなく、
勉強になります。

 例えば、取得条項付株式につき会社が別に定める日が到来することをもって
取得事由にした場合、取得する日を取締役会で定めたときは、取得条項付株式
の株主に当該日の2週間前までに、当該日を通知しなければならないと会社法
168条2項にあるが、先に通知をしておき、当該日までに取締役会で取得日
を決定してもよいかという質問をされたことがあります。

 合併等の組織再編であれば、会議の決定や公告等の手続の順序を問わないの
ですが、ここではどうなのでしょうか。条文に「取締役会で定めたときは」と
明記されていますので、だめなようにも思えますし、先に取締役会で定めよと
は規定されていないので、大丈夫のようにも思えます。

 これに関連して、株主総会は会日の2週間前に総会招集通知を発しなければ
なりませんが、発した後に取締役会で、その招集通知に記載された議案を決定
した場合はどうなのでしょうか。

 以上については、もともと手続の順序を問わないのか、順序を問うが瑕疵が
治癒されたと考えるのか、全く議論もされていなかった問題ですので、私も確
信をもった回答ができませんでした。

 従来はこういう場合に、期間短縮の同意書を付けなければ登記が受理されな
いという運用でしたが、「いや通知は合法的期間をおいてしています。単に取
締役会の決定が通知期間内になっただけです。どこがいけないのですか」と反
論した場合には、当局も困ってしまい、「上に問い合わせるから待っていて」
となることでしょう。

 そもそも、こういうことは学者が研究すべきなのに、日本の学者は怠慢です。
日本登記法学会にご参加の学者さんあたりに検討してもらいましょうか。


2019.01.17(木)【挨拶の仕方】(金子登志雄)

 稀勢の里は8連敗で引退とは、気の毒ですね。まだ32歳です。横綱でなけ
れば、もっと頑張れたのに………。これに対して、同じ勝負の世界でも外交と
なると実際には明らかな連敗続きでも、成果を上げたフリをしていれば、御用
マスコミが宣伝してくれ、それを無批判に信じてしまう国民の多いどこかの国
の政治の世界の横綱は楽なものです。

 さて、戦前への復古調の社会環境を反映してか、学校での道徳教育が強化さ
れていますが、昨年の日刊ゲンダイに、どこかの大学教授が面白い随筆を書い
ていました。小学校2年生の道徳の教科書に礼儀作法に関連して、次のように
あるのだそうです(記憶に基づく内容であることをお断りします)。

-----------------------------------------------------------------------
 あいさつをするときには、おじぎもしますが、つぎのどれがただしいですか。
  ①あいさつしながらおじぎをする。
  ②あいさつしてからおじぎをする。
  ③おじぎをしてからあいさつする。
-----------------------------------------------------------------------

 この大学教授さんもどれが正しいのか分からないといっていましたが、皆様
はいかがですか。正解は②で、これを「語先後礼」というのだそうです(「語
先礼後」あるいは「先語後礼」となぜいわないのかは不明です)。

 まるで茶道などの流派みたいで、笑ってしまいます。目の前の人が横を向い
ていたら、「こんにちは」などと声をかけ、こちらを向かせてからお辞儀をす
るのが普通だと思いますが、その他の場合は時と場合によるのであり、どれと
は決められないのではないでしょうか。挨拶にも個性があってよいでしょうし、
重要なことは心を込めた挨拶かどうかだと私は思います。

 講義の時、私は、まず深々とお辞儀をし、その後「皆さん、はじめまして」
と自己紹介からはじめていましたが、非礼だったのでしょうか。鈴木講師も、
酒井講師も、立花講師も気をつけてね。小学校2年生に笑われますよ。


2019.01.16(水)【目の衰え】(藤沢・酒井恒雄)

 最近、老眼の症状が進んで、小さい字が見づらいです。
 
 眼鏡を掛けた状態だと小さい字が読めず、眼鏡を外して紙に顔を近づけると
字が読めます。先日、司法書士仲間にそんなことを話したところ、流れで司法
書士手帳の話しになりました。

 司法書士手帳を愛用している方も多いと思いますが、手帳には予定を記入す
るページのほか、法務局の管轄や電話番号、登録免許税や印紙税の一覧等がギ
ッシリと(しかし細かい字で)載っており、とても便利な作りになっています。

 そして手帳にはルーペが付属品として付いています。私と同様に老眼の症状
がある人曰く、以前は、手帳の使い始めにルーペは捨てていたが、今はありが
たみを感じ、必需品になっているとのこのこと。その話を聞いて、私も、手帳
のポケットに入れたまま触ることもなかったルーペを、初めて使ってみました。
当たり前ですが字がよく見えて便利でした。

 それからは、手帳を利用するときにルーペを使うようになったのですが、ふ
と、女性から見て、眼鏡を外して頭の上に引っ掛けている姿と、ルーペを使っ
て手帳を見ている姿では、どちらがいいのか気になったので、事務所のスタッ
フに意見を聞いてみました。

 スタッフ曰く、例えば仕事中に長袖のワイシャツの腕をまくっている姿や、
ネクタイを緩めて作業に集中している姿等であれば、どれが良いか答えること
ができる。しかし、私が質問をした姿の良し悪しは、答えようがないとのこと。
何故なら、どちらの姿も老いを感じさせるものなので、どっちでいい(興味な
い)からだそうです・・・。

 ごもっともです。ちょっと凹んでいる私は、テレビで、お尻で踏んでも壊れ
ない眼鏡型のルーペのCMが流れると、食い入るように見てしまいます。役者
さんが格好いいからだと分かってはいますが、これはイケるのではないかと、
店頭に試用品を置いている眼鏡店に吸い込まれそうになっている今日この頃で
す。


2019.01.15(火)【地面師】(東京・鈴木龍介)

 最近、新聞紙面等を賑わせている「地面師」というのをご存知でしょうか。

 「地面師」というのは、一種の詐欺を働く犯罪者で、細かな手口は様々です
が、他人の土地について、あたかも自分のもののように振る舞い、売買代金等
を詐取するというものです。

 たとえば、今、話題の大手住宅メーカーの事件ですと(新聞報道ベースです
が)、山手線の駅から至近のいわゆる一等地(約600坪)の地主に成りすま
す、いわゆる替え玉を用意のうえ、虚偽の書類により同社から売買代金60数
億円を騙し取ったというもので、支払われた売買代金は雲散霧消状態とのこと
のようです。 

 こういった「地面師」犯罪は、日本の不動産取取引と不動産登記制度を悪用
したものと言え、登記に必要な売主の書類が整い、それを買主に交付したとこ
ろで、代金を決済するという一般的な不動産の売買取引において、偽造した書
類等により、そのような状況を作り出すわけです。

 そんなこともあって、タイムリーに発刊された『地面師 他人の土地を売り
飛ばす闇の詐欺集団』(森功、講談社)をこの正月休みを利用して読んでみま
した(amazon売れ筋ランキングでも1位(事件一般関連書籍部門)になったよ
うです)。 
  
  http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000313459

 なかなか面白かった半面、司法書士としては、いかにこのような事件に巻き
込まれないようにするかを真剣に考えさせられました。


2019.01.11(金)【2019年】(東京・古山陽介)

 新年明けましておめでとう。本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

 今年はどのような年になるのか、今まで以上に予想不可能で、金子先生も書
かれておりましたが、私も新しい時代が幕を開ける予感をしています。

 そのせいか、2020年の東京オリンピックが来年開催されるとは実感でき
ず、本当に開催されるのでしょうかと思ってしまうほどです。

 私の事務所(といっても完全な個人事務所ですが)は、今年の6月で10年
目に突入する年でもありますので、この大変革が起こりそうな1年も笑って振
り返ることができるように、業務スキルを更に磨いて、クライアントにより信
頼される司法書士であるべしと自分に言い聞かせています。

 また、今年は元号が変わる関係で、昨年暮れあたりから、クライアントから
確認依頼を受ける書類であったり、自分で作成する書類については、基本的に
西暦表記にしています。

 後々、書類やデータを引っ張ってくるときに、西暦で作成しておいたほうが、
クライアントも平成31年なのか新元号の元年なのか混乱しなくて済むだろう
と、個人的に考えています。意外とこういう些細なことであっても、クライア
ントによっては大変喜んでいただけたりするものです。

 それでは、健康第一に今年も一年駆け抜けたいと思います。


2019.01.10(木)【長期相続登記未了土地解消作業】(島根・根来川弘充)

 新年おめでとうございます。

 さて、題名を見て、「?」と思われる方は、多数おられると思います。

 昨年11月に法律が施行されてはじまった事業ですが、法律の内容は、「国
で長期間相続登記がされていない不動産について、相続人を探して相続登記を
促す」というものです。

 そして、その大きな実務である戸籍調査作業が、民間に委託されたのですが、
島根では、私が代表(二人います)を務めている青年司法書士会が、受託する
ことになりました。

 11月末から大量の戸籍等を見ることになり、改めて、発見することがたく
さんあることに、業務とは別に、とてもやりがいを感じております。

 戸籍の制度は、もちろんのこと、島根県内の地域性も、戸籍で年代をおいか
けていくと、当時の情景が浮かぶようで、歴史小説でもかけるのではないかと
さえ、思えてしまいます。

 本年の3月までで、私達が委託を受けた業務は終了するのですが、まだまだ
しばらく続くものと思います。

 不動産は、私達の財産権の象徴でもあります。相続されない土地がふえると
いうことは、財産価値の低下をまねくのではないかと、一司法書士としては、
近年不安に思っていました。この事業によって、一つ一つの土地が、流通性の
ある価値ある不動産に、生まれ変わることを期待したいと思います。


2019.01.09(水)【謹賀新年】(藤沢・酒井恒雄)

 明けましておめでとうございます。

 天気予報では、年始は厳しい寒さに見舞われるとアナウンスされていました
が、正月三が日は日差しがあったせいか、ポカポカと暖かく感じられました。
1月4日も穏やかな天気で、この日に休みをとれば絶好の長期連休になるとこ
ろでしたが、設立登記の申請がありましたので、やむを得ず・・・いや、喜ん
で出勤しました。

 毎年、年始の設立登記の依頼がある度に「予約申請」をしてみようかという
考えが頭をよぎります。予約申請とは勝手に名付けたものですが、要は、年末
の法務局の休暇中に予めオンライン申請をしておけば、年始に法務局が稼働し
たときに自動的に受付がなされるはずなので、そのシステムを利用すれば予約
したかのように申請できるのでは?ということです。今年のように年明け一日
だけ稼働して、翌日から再び休暇となるような場合には、休み明けに登録免許
税の納付と、オンライン添付書面も持参なり送付なりをすれば、問題なく申請
が出来るのではと考えます。

 もっとも、旅先や出先の通信環境が保証されていれば、ノートPC等を持参
して申請するのも方法ですよね。しかし、いずれにせよ「設立登記」ですと、
万が一に申請データが届かなかった場合のことも考えないといけません(紙申
請に切り替える等)。ですので、未だにいずれの方法もとったことがありませ
ん。

 そんなことを書いているうち(1月7日午後)に、もう設立登記完了のメー
ルが来ました。さすがファストトラック化ですね、助かります。

 今年も雑多な内容の投稿になるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいた
します。


2019.01.08(火)【謹賀新年】(東京・鈴木龍介)

 平成31(2019)年、初投稿ということで、まずは“明けましておめで
とうございます”。

 さて、今年の一番のトピックスというと、以前このコーナーでもとりあげま
した改元でしょうか。先ごろの報道では4月1日に新元号が発表されるようで
す(もしかすると商号変更登記が殺到したりして・・・)。登記については、
これまでどおり西暦ではなく和暦の表記のままでしょうから、過渡期は要注意
です。

 次に法令関係に目を転じますと、「民法」の相続分野の改正が施行になりま
す(段階的にですが)。第一弾として、この1月13日には自筆証書遺言の方
式緩和が、さらに今年の7月1日には創設される配偶者居住権を除く部分が施
行されます。

 詳細は把握しきれていませんが、「司法書士法」について、本年の通常国会
に改正法案が提出される模様です(情報をキャッチしましたら本コーナーにア
ップしたいと思います)。

 そして、「会社法」ですが、法制審議会での検討もおおむね終了し、まもな
く要綱が答申されるものと思われます。そのうえで、こちらについても本年の
通常国会に改正法案が提出されるのが濃厚のようです。この会社法改正が成立
するのを想定して、ボチボチと準備をはじめようかと思っています(こちらも
追々取り上げられればと・・・)。

 個人的には、夢はもとより格別に目標などもありませんが、目の前のことを
きちんと丁寧に対応できればと思っています。

 あと最後になりますが、数年前より公私ともに年賀状を廃止いたしまして、
年賀状を頂戴いたしました皆様には、この場を借りまして御礼と欠礼のお詫び
を申し上げます。

 ともあれ、今年もどうぞよろしくお願します。


2019.01.07(月)【新しい時代のはじまり】(金子登志雄)

 新年おめでとうございます。

 年末年始休暇はいかがお過ごしでしたか。無趣味で仕事大好き人間の私には
長い休暇は退屈で辛いのですが、今回は、旅行好きの妻がこの時期にしては格
安の海外ツアーをみつけて来たので、そのお供で地中海沿岸の南ヨーロッパ近
辺(ミラノ、ジェノバ、ニース、モナコ、バルセロナなど)を旅行しており、
退屈さからは解放されました。

 ただし、例によって何の下調べもしない修学旅行生と同じで人の後ろを歩い
ていただけなので、旅の感想は語ることができません。いつもどおり、西洋の
石の文化(城壁や勇壮な建築物)と色彩感覚に圧倒されてきました。西洋の屋
根はオレンジ系が多いので、町全体が1つの絵になってみえます。

 風景や建築物よりも人の動きに関心のある私は、国が変わったのに入国審査
も両替えも不要なEUの素晴らしさや、EU諸国でさえ「物乞い」も少なくな
い貧富の差の大きい自由主義を見ながら、明日の日本の姿を想像していました。
 
 小泉政権以来、米国資本の喜ぶ金持ち及び大企業優遇策が進められ、雇用さ
れて働く従業員の富は減る一方ですし、今年は消費税がアップされる年になり
ますから、勤労者にはますます厳しい時代に突入することでしょう。

 零細な個人事業主である我々も、中小企業と同様に世の荒波に無縁というわ
けにはまいりませんが、ある事業が廃れても別の事業が成長すれば、そこが顧
客になるため、その点は恵まれています。また、団塊の世代が70歳を超えつ
つありますので、成年後見も市場として拡大するでしょう。

 我々の資本は健康と業務スキルだけです。経済力は成長しませんでしたが、
それなりに平和を維持した平成の30年は終わり、本年は波乱の時代の幕開け
ですが、健康に留意し、顧客の要望に十分に応えられるよう業務スキルを磨い
て生き残りましょう。



過去徒然

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