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こんにちはESG法務研究会です

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ESG法務研究会は、合併再編等会社法手続の実績は最大級!

TOPICS


1.最近の出版は次のとおりです。いずれも実務書であり、アマゾン等で、
 ご確認ください。
 (1)『募集株式と種類株式の実務〔第2版〕』…………2014年5月発売
 (2)『改正会社法と商業登記の最新実務論点』…………2015年11月発売
 (3)『会社法務書式集〔第2版〕』………………………2016年3月発売
 (4)『論点解説/商業登記法コンメンタール』…………2017年2月発売
  (5) 『商業登記実務から見た中小企業の株主総会・取締役会』
                       …………2017年4月発売
  (6)『総務・法務担当者のための会社法入門』…………2017年10月発売
  (7) 『商業・法人登記360問』……‥‥‥‥‥………2018年5月発売
  (8)『事例で学ぶ会社の計算実務』………………………2018年9月発売
 (9)『商業登記実務から見た合同会社の運営と理論〔第2版〕』
                       …………2021年5月発売
 (10)『「株式交付」活用の手引き』………………………2021年7月発売
 (11)『親子兄弟会社の組織再編の実務〔第3版〕』……2022年9月発売
 (12)『組織再編の手続〔第3版〕』………………………2022年10月発売
  (13)『「会社法」法令集〔第14版〕』…………………2022年11月発売
 (14)『事例で学ぶ会社法実務【全訂第2版】』…………2023年2月発売

2.当事務所と親しい企業法務中心事務所が戦力となる人材を募集しています。
 下記に直接連絡してください。

(1)司法書士法人TOSグループ
 https://tos-group.co.jp/recruitment/

(2)東京共同司法書士法人
 http://corporate-legal-services-tokyo.com/

徒然日誌


2023.05.31(水)【設立状況再び②】(神奈川・酒井恒雄)

 株式会社の設立登記件数は、平成30年に前年比で約4,000件の減少が
あったようです。この背景には、おそらく働き方改革関連法案成立の影響があ
ったのではないかと推測しています。日本においても多様性のある働き方が推
進されることにより、現在の就業環境の改善にも期待が寄せられたのではない
でしょうか。

 ただし、この頃はまだ政府も副業・兼業について具体的な推奨はしていませ
んでしたので、起業を視野に入れていた人たちも、一旦は社内の就業環境がど
のように変わるか様子見をしたのかもしれません。

 そして、一番の注目すべき変化は、令和3年の設立登記件数です。約9万
5,000件の設立登記があり前年比約1万件の増加がありました。ここまで
急激な設立登記の件数増加があったのは、会社法施行後の数年間以来のようで
す。

 コロナ禍の影響で、仕事を見つめ直す機会が増えると共に、政府が積極的に
副業・兼業の後押しをはじめたことが影響したと推測しています。自分の人生
は自分で決めようという「自主的なキャリア選択」をする人が増えて、もとも
と高かったキャリアへの関心が、単に関心だけではなく、具体的な行動へと変
化したのかもしれません。

 ちなみに昨年も同じ数くらいの設立登記件数があったようですので、しばら
くは年間9万5,000件くらいの株式会社が誕生することになるかと予想し
ています。

 以前書いたことと重複しますが、今、日本は起業ブームで、その背景には
「キャリア」は大きく影響していると推測しています。この推測がまったくの
的外れでなければ、キャリアというキーワードも、休眠放置会社について考え
る場合の重要なポイントのひとつになるのではないか?と考えています。
                              (つづく)


2023.05.30(火)【日司連 副会長 立候補】(東京・鈴木龍介)

 現在、私は日本司法書士会連合会(日司連)の副会長を務めておりますが、
来る6月23日の定時総会をもって任期満了となります。次期どうするかにつ
いて、関係者とも相談した結果、ふたたび日司連の副会長に立候補することと
いたしました。

 この2年間の経験をもとに、取捨選択と優先順位を見極め、日司連として対
応すべき以下の課題を中心に、しっかりと歩みを進めていきたいと思っていま
す。

 1.デジタル化の推進
 コロナ禍が収束しつつある今、我が国全体として真のデジタル化が求められ
ています。そのような社会のニーズをとらえ、司法書士の具体的な業務のDX
(デジタルトランスフォーメーション)を主導し、支援することは日司連の責
務であると考えています。

 2.法改正の対応
 本年4月に原則施行された改正民法・不動産登記法や、来年にも施行が予定
されている改正犯罪収益移転防止法など、国民生活においても重要な改正が目
白押しです。そのような法改正を国民に対してナビゲートするのは司法書士の
重要な役割であり、それを業界全体の動きとして展開することは日司連の責務
であると考えています。

 3.連携・協働の強化
 司法書士を取り巻く環境も激変する中、政界・官界・財界・学会・他士業と
連携し、協働することは、制度を守り、発展させるために不可欠といえます。
そのような連携・協働を通して司法書士としてのあらたな展望を見出し、それ
をリードし、道すじをつけることは日司連の責務であると考えています。

 ちなみに副会長の立候補枠の定員は3人でして、投票日(電子投票)は6月
15日で、翌日には結果が判明します。

 以下は私の所信、経歴になりますので、ご高覧いただけますと幸いです。

  所信ページ
https://www.suzukijimusho.com/%e6%97%a5%e6%9c%ac%e5%8f%b8%e6%b3%95%e6%9b%b8%e5%a3%ab%e4%bc%9a%e9%80%a3%e5%90%88%e4%bc%9a%e3%80%80%e5%89%af%e4%bc%9a%e9%95%b7%e7%b%8b%e5%80%99%e8%a3%9c/
 (短縮 https://is.gd/sCSRj8 )

  所信動画
 https://www.youtube.com/@01-rc4tz
 関係各位のご支援のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。


2023.05.29(月)【現実社会の力関係】(金子登志雄)

 広島のG7サミットに米国大統領のバイデン氏だけは正規のルートである
広島空港に降りずに、米軍岩国基地経由でした。入国チェックもなされなか
ったわけで、日本を独立国とみていない証拠です。原爆記念館にも核のボタ
ンが入ったカバンを持ち込みましたが、原爆被災者に対する冒涜としか思え
ませんでした。

 これを黙って受け入れた広島出身の岸田政権もマスコミも情けないもので
すが、これが米国と日本の力関係の現実です。米国にちょっとでも逆らうと
田中政権や鳩山政権のように米国や日本の愚かなマスコミに潰され長期政権
になれないからです。

 しかし、こういう問題であれば、同盟国に敬意を示すように強く主張して
も、政権潰しまではなされないでしょうし、米国大使館も日本国民を刺激し
ないようにと本国に要請するはずです。また、日本国民は弱腰の岸田政権に
対しても怒るべきですが、このサミットで岸田政権の支持率が逆にアップし
ました。これもテレビに登場する回数が増えると頑張っているようにみえて
支持してしまう日本社会の現実があります。

 力関係といえば、合併や減資の催告先リストでも、これが如実に表れます。
会社のほうが債権者である銀行や取引先よりも優越的地位にあれば、異議を
出される心配も無効の訴えを出される心配もないため、催告先は少なくなり、
そうでない場合は安全のため多くなります。

 登記所に相談すると、債権者に限定はないので全ての債権者に催告しなけ
ればならないと教科書的な回答がなされますが、債権者には、①親会社など
催告側の債権者、②賃料や光熱費などの定期的に生じる債権者(従業員も給
与債権者です)、③買掛金などの取引上の債権者(下請けかどうかの差で、
この内部にも力関係があります)、④銀行など金銭消費貸借上の債権者など
さまざま存在しますので、どこかで線引きしないとキリがありません。

 この線引きが面倒なため、債権者が多い会社は中小企業であっても公告方
法を官報から日刊工業新聞に臨時に変更したりする例が増えました。余計な
費用がかかりますが、これが最も安全です。

 つい、米国株式会社は、どこかを併合する際も、蔑んでいる大口債権者の
日本には催告してこないだろうなと思ってしまいました。

 横道にそれますが、「サンドマン作戦」ってご存じですか。中東オペック
が石油取引でドルを使わないことにするなど、グローバルサウス諸国が一斉
に海外取引でドル決済をやめることです。一斉になされるとは思えませんが、
ドルが世界支配の武器になっているので、いまそれを見直そうという動きが
急速に進んでいます。人も国も現実を直視せず横柄では嫌われてしまうわけ
で、これはバイデン米国の自業自得です。

 ただ米国内も一枚岩ではなく、好戦的で非現実的なバイデン戦略に対する
批判も大きく米国の活力を感じさせてくれますが、一億総〇〇で進む日本は、
保険もかけずに丁半ばくちで国の行く末をかけているようにしか思えません。
これも我々が選挙で選んだのですから、我々国民の自業自得でしょうか。


2023.05.26(金)【司法書士業の多様化ほか】(金子登志雄)

 昨日は、当事務所に関西地方の企業法務中心司法書士法人の代表の方と、そ
こに勤務する私によく質問してくる若手司法書士のお二人が訪問してください
ました。メールでは連絡しあっていますが、直接お会いしたのは初めてであり、
虎ノ門に事務所を移転して1か月、最初のお客様でした。

 ここ数年、都市部では、企業法務専門を標榜する司法書士法人が急増しまし
た。多数の職員の生活を維持するには、採算のよい企業法務を重視せざるをえ
ないのでしょう。また、個人開業の司法書士も、不動産専門、企業法務専門、
成年後見中心・・・などと、ますます専門分化(多様化)が進みました。

 都市部限定ですが、「司法書士=街の法律家」から「企業社会の手続法務の
担い手」が抜け出した感じです。子会社を多数抱える大企業であれば頻繁なグ
ループ再編、IPOを目指す新興企業であれば度重なる資金調達の増資や新株
予約権の発行、種類株式の発行などがありますし、会計監査人設置会社になれ
ば毎年その変更登記が必要ですから、市場規模は大きいといえます。

 司法書士業の多様化で思い出しましたが、先般の広島G7サミットについて
はがっかりした方が少なくないようです。まるで反ロシア・アピールの会議で
あり、平和の町広島に相応しくない好戦的な会合だったからです。

 西側G7の白人国は、LGBTなど個人の多様性(個性)については寛大で
人権重視の尊敬すべき先進国ですが、国の多様性については実に偏狭で、他国
を独裁国家として非難し、成敗し、自分の色に染めようと、その国の戦闘員で
ない国民をも容赦なく空爆で殺戮する傾向にあり、この点では野蛮国家です。
他国民の生命、身体や財産に対する保護の意識は希薄のようです。イラクなど
いまだに破壊されたままで復興していません。

 なぜ国々の多様性を認めないのでしょうか。一神教のキリスト教の十字軍思
考でしょうか。それとも、よくいわれるように、戦争がないと軍需産業の在庫
が陳腐化し儲からないから在庫一掃の戦争が不可欠の産業構造になっているせ
いでしょうか。

 いずれにせよ、唯一のアジアの非白人国の日本はG7の白人国の好戦的な世
界観に巻き込まれないことを祈るばかりですが、もう遅いでしょうか。新たな
戦前の社会環境になってまいりました。

(追記)
 上記を記載後に、久々に遠藤誉さんの記事を読みました。日本の報道や専門
家のコメントが憶測や希望的観測に基づくフェイクに近いことがよく分かる内
容でした。土日に、いくつか目を通してみてください。

  https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare


2023.05.25(木)【ツイッターの功罪】(金子登志雄)

 最近、親しい司法書士がツイッターをはじめました。たちまち、知り合いの
司法書士の間にそれが伝わりました。私も広めた一人ですが、まるでねずみ算
式の伝染力でした。トランプさんがツイッターで支持者を増やしたことからも
お分かりのとおり、その発信力というか伝染力というかすごいものがあります。
まさに、SNSの時代です。

 私は、他人のツイッターをよくみますが、自分ではしていません。もともと
そういう方面の知識はありませんし、つぶやく内容もありません。また、それ
以前に、私の世代は目立つことが大の苦手です。そういうふうに育てられたの
です。私の顔写真がインターネット上に登場しないのも、何か恥ずかしいため、
意識的に避けているためです。

 つい先日、水道橋博士が他人のツイッターをリツイートしただけなのに、著
名人の発信力がアダとなり、維新の松井氏に名誉棄損の損害賠償請求裁判を起
こされ負けてしまいました。かつては、著名なジャーナリストだった岩上安身
さんも同じ目にあいました。訴えたのは橋下徹氏でした。スラップ訴訟じゃな
いかという意見もあります。

 橋下さんや維新の関係者、また旧NHK党は、新しい時代の宣伝の武器であ
るSNSの影響力や利用法を熟知しているので、急成長したのでしょう。立憲
民主党はこの点で最も下手であるのが凋落の一因だと思っています。連合など
関係先にどう評価されるかという自意識過剰の政党は今の時代は取り残される
のみです。

 ツイッターではありませんが、私が上場会社の常勤役員の頃は、ちょっとし
たことで私の言動がヤフーの株式掲示板で取り上げられ、褒められたり叩かれ
たりしましたので、私はSNSへの警戒心が強くなりました。著書が増え、そ
れなりに名前が知られるようになった司法書士としての私も、下手をしたら、
司法書士会や出版社に迷惑がかかると思い、目立たないようにしていますが、
私も新時代に着いて行けない自意識過剰なのかもしれません。

 ということで、これからの若い方には広報宣伝の強力な武器であるSNSの
活用を私もお勧めしますが、その一方で、その文章力や知識・能力・人柄まで
ウオッチされていますので、それを覚悟のうえで頑張ってくださいというしか
ありません。


2023.05.24(水)【設立状況再び①】(神奈川・酒井恒雄)

 以前に、株式会社の設立登記件数は、前年比でみると約1,000件の「増」
・「減」を繰り返していると書きました。こうした変化は、株式会社の設立件
数が社会環境に左右される傾向にあると見ることもできるかと思います。

 そこで、あくまで私的な推測に過ぎない部分もありますが、株式会社設立の
増減の背景について観察をしてみたいと思います。

 登記統計によりますと、まずは平成18年に前年比約5万件の増加がありま
した。この増加の原因は容易に想像がつくと思いますが、会社法施行により株
式会社設立の諸々要件が緩和され、起業のハードルが下がったためであると推
測されます。

 平成20年には、設立登記件数が一旦減少しました。これは会社法施行によ
る設立ラッシュが落ち着きを見せたと推測するのが素直かもしれません。ただ
し、ちょうどこの頃は、世の中はリーマンショックの影響で混乱が生じていた
時期でもあります。会社経営に危機感を覚えて、独立起業に躊躇する人も少な
くなかったと思いますので、それが新規設立の数字にあらわれた可能性もあり
ます。

 ちなみに、平成21年頃には、国内で空前のドラッカーブームが到来しまし
た。本屋に行くと、どこでもドラッカーの本が平積みになっていたのを覚えて
います。(「もしドラ」という言葉も流行ったりしました。)会社が生き残る
ためには、健全な会社組織の構築が必要だという認識が広まっていた時期でも
あったかと思います。

 次に、平成26年には前年比で約5,000件の増加があったようです。こ
の年は、消費税率が5%から8%に引き上げとなった年ですので、税金対策的
な視点で設立件数が増えたのではないかと推測しています。(つづく)


2023.05.23(火)【東京司法書士会 令和5年定時総会】
                          (東京・鈴木龍介)

 去る5月20日(土)午後1時から東京司法書士会(東京会)の令和5年定
時総会(本総会)」が新宿住友ビル・住友ホールで開催され、私も本総会の組
織員として出席いたしました。

 東京会の総会の場合、東京会所属の司法書士の中から所属する支部ごとで選
任された者が組織員となる代議員制を採用しています。

 本総会は、組織員総数447名であるところ委任状を含む402名が出席と
いうことでしたが、会場には250名程度の皆さんが参加されていました。

 まず、議事に入る前に日本司法書士会連合会(日司連)会長ほかの来賓から
の挨拶と、東京法務局表彰といったセレモニーが行われた後、2件の報告を経
て、17件の議案の審議がなされ、すべての議案が異議なく可決承認されまし
た。

 とりわけ、改正犯罪収益移転防止法に対応するための会則改正が無事、承認
され、本件を日司連で担当している身としては、安堵しました。

 最後に恒例の万歳三唱で、午後5時45分に盛会のうち閉会となりました。
執行部、事務局、組織員ほか、関係者のみなさん、お疲れさまでした。


2023.05.22(月)【株式の割当比率と剰余金の配当比率】(金子登志雄)

 最近、なぜか配当優先株式の質問が続いています。ほとんどが、1株10円
の優先配当額と定めた場合に、業績が悪いので、今期は1株8円にすることが
できるかなどといったものです。

 結論からいうと不足した2円につき翌年度に繰り越すなどの累積的定めがあ
るごとく肯定されると考えていますが、上場会社の例では、そもそも10円も
配当できないような会社は配当優先株式を定めていません。

 したがって、未公開中小企業にあっては、優先配当額を先取りする配当優先
株式ではなく、「1株当たりA種株式は普通株式の1.2倍の剰余金の配当を
受けることができる」などといった定めのほうが適しています。

 それでも、質問者は、1.2倍という確定額でなく、事業年度の業績次第で、
やむを得ず普通株式と同額配当にしたいということも、1.1倍にしたい場合
もあろうから、さらに融通の利く方法はないかと思うようです。

 そこで、種類株式であれば種類ごとに異なる定めも可能なはずだから、定款
で「①剰余金の配当については、株主総会の決議で、普通株式とA種株式につ
き、それぞれ異なる配当額を定めることができる。②前項の決定にあたっては、
配当額で不利益を受ける種類株式の種類株主総会の承認を要する」としたら、
便利ではないかと考えました。

 これなら、普通株式が基準にならず、A種の配当額が普通株式より少ない場
合も適用範囲になり、相対的内容とはいえ融通が利きますが、ここで障害が生
じました。この種類株主総会は法定の種類株主総会ではなく、種類株式間の格
差を是正する322条の列挙事由に掲載されていないためです。

 そこで、改めて、種類株式相互間の平等を考えた結果、剰余金の配当とか、
議決権などの差については株式の内容として定め、株式分割や募集株式の発行、
合併による割当てなど種類株式数の増加については322条で格差の是正を定
めていることに気づきました。

 322条の事由には限定列挙説と例示列挙説がありますが、株式の割当ても
剰余金配当の割当ても大差がないとはいえ、後者であっても、剰余金の配当に
ついては株式の内容にしないといけないでしょう。

 とすると、剰余金の配当額に差を設けることだけで足りるのか、1.2倍と
か確定した差にしないといけないのか、普通株式を基準にそれ以上多い額ある
いは少ない額のどちらかにしなければならないのか、また、定款の定めによる
種類株主総会では、あたかも拒否権条項として扱うのかなど、検討課題が多す
ぎました。

 最終的には、面倒になり検討するのをやめましたが、「種類株式であれば種
類ごとに異なる定めも可能なはず」というのは、株式の割当比率などにしか通
じず、剰余金の割当額や配当の割当比率には通じないことを明白に意識できた
ことで無駄な苦労ではありませんでした。


2023.05.19(金)【補正通知への対応】(金子登志雄)

 軽微な補正の場合は、電話もかかってこないことがあります。単純に「登記
の事由に『代表取締役の変更』が漏れている」などの指摘では、単に追記して
応じればよいだけです。

 この時、皆さんは、連絡事項に「登記の事由に、〇〇を追記しました」とか
記載しますか。私はケースバイケースです。それをしないと補正箇所がすぐに
伝わるのかが不明のためです。

 次に「株主リストに株主は2名とあるが、株主総会議事録からすると明らか
に1名の間違いないので差替えてくれ」などいという添付書面の差替えの補正
の場合は、どうしていらっしゃいますか。電話がない場合のことです。

 押印が必要な時代には、こちらから電話し「明らかな誤記ですから無視する
か、そちらで訂正していただけませんか」などと依頼したこともありましたが、
いまは、押印のない書面を作成し差替えれば済むため、だいぶ楽になりました。
この際に補正通知に対して「ただちに差替えます」とか返信するのか、返信せ
ずに黙って単に差替書面を送付するだけでよいのか、つい迷ってしまいます。

 他の司法書士数人に聞いてみましたら、私を含めて返信しない人が多いよう
ですが、前回は返信してみました。登記書類を郵送で顧客から受領しても「届
きました」と連絡しないと、「先日、送付したものは無事に着いているでしょ
うか」などのメールが来るので、登記所でも補正通知をちゃんとみてくれただ
ろうかなどと不安に思うかもしれないから、礼儀として返信したほうがよいの
かといまだ迷い中です。

 これに関連して「原本証明文が漏れている」という補正通知には、「こんな
ことでわざわざ登記所に行くのは辛いので何とかなりませんか」と電話したら、
「原本に相違ない。司法書士〇〇」と書いた紙を送ってくれればよい、いまは
押印も不要だからといわれました。

 なるほどです。こういう「ノウハウ?」は補正を経験してみないと分からな
いものですね。


2023.05.18(木)【労働者協同組合の理事会の決議・報告の省略】
                          
(仙台・立花宏)

 久しぶりに、労働者協同組合の話題です。厚生労働省のHPをみたところ、
5月1日時点の設立状況は、合計39法人(新規設立30、組織変更9)のよ
うで、まだまだ、利用数は進んでないようです。急増するような法人類型では
ないと思いますが、個人的には、この法人制度が社会認知されていけば、徐々
に利用が進んでいくだろうと思っています。その時に備えて、勉強を進めてい
ます。

 さて、今日は、労働者協同組合の理事会の関係です。労働者協同組合には、
必ず理事会という機関が置かれます。理事全員が構成員であり、監事が設置さ
れる場合は監事も出席権限・義務があります。しかし、組合員が少数(20人
以下)の場合には、監事を置かないことができ、この場合には、理事以外の組
合員で組合員監査会という組織を構成します。組合員監査会のメンバー(監査
会員)は、理事会に出席する権限があります。

 ところで、理事会は会議体ですから、構成員が実際に集まって、議論をして
様々なことを決定するのが原則です。しかし、理事が目的事項を提案した場合
において、提案につき、議決に加わることができる理事の全員が書面等で同意
の意思表示をしたときは、理事会の決議があったものとみなす旨を定款に定め
ることができます(労働者協同組合法40条4項)。ただし、監事が当該提案
について異議を述べた場合は、決議があったものとみなすことはできません。
決議の省略、いわゆる、みなし決議の制度です。監事を置かず、組合員監査会
が置かれた場合は、この監事の部分は、組合員監査会と読替えることになりま
す(労働者協同組合法57条)。

 そして、理事又は監事が理事及び監事の全員に対して理事会に報告すべき事
項を通知したときは、当該事項を理事会へ報告することを要しないものとされ
ています(労働者協同組合法40条5項)。いわゆる、報告の省略です。

 ここで悩ましいと思ったのは、決議の省略の場合と違い、労働者協同組合法
には、監事の部分を、組合員監査会や監査会員と読替える規定がないことです。
読替規定がないので、組合員監査会、あるいは監査会員には通知する必要がな
いのか、それとも、組合員監査会設置組合では、報告の省略の制度が利用でき
ないのか。

 個人的には、組合員監査会設置組合でも決議の省略ができますから、報告の
省略も当然に可能なように思えました。この点を、厚生労働省に問い合わせて
みたところ、やはり、可能だという回答でした。労働者協同組合法54条で
383条2項及び3項(監査役による理事会の招集の請求及び招集)を組合員
監査会について準用しているため、報告の内容により必要と考える場合は、組
合員監査会が理事会の招集の請求等をすることになるということのようです。
ただし、組合員監査会を置く労働者協同組合は、組合員が少数であることから、
理事会は省略せず、議論する機会を設けることが望ましい、という回答でした。

 つまり、決議の省略も報告の省略も、理事会の目的事項の提案や報告事項の
通知は、当然に構成員全員に対して行われることを前提に規定されているとい
うことなのだろうと思いました。

 労働者協同組合の利用が進むと、実務でこうした疑問が出てくるだろうと思
います。頭の中で、実務を想定しながら、そうした相談にも対応できるよう、
準備をしていこうと思っています。


2023.05.17(水)【自主的な行動を起こしてもらうには?】
                        
(神奈川・酒井恒雄)

 具体的に休眠放置会社を減少させるための対応策を考えてみますと、結構色
々なことが頭に浮かんできます。会社の種類や規模、そこに関わる人達の属性
など、会社の数だけ対応策があるといってもいいかもしれません。

 しかし、そうなりますと、様々なアイデアがある一方で、結果的に、「まぁ、
それぞれやりようはあるよね。」という煮え切らない答えに落ち着いてしまう
おそれもあります。

 それに、解散手続きをする場合、その決定は株主や社員等の意思に委ねられ
ることになるでしょうから、会社の外部の者があれこれ口出しをして、解散手
続きを行うよう促すことは困難にも思えます。

 しかし、よく考えてみますと、休眠放置会社の殆どは、事業活動を停止して
も、その影響を受ける利害関係人がいない会社のはずです。会社の内部や、会
社の外部に関する様々な調整に頭を悩ます状況にはないはずなので、実質的に
は経営者の意思次第ということになりそうです。そうなりますと、何が経営者
の「自主的な行動につながる動機」になるか?ということを考えてみることが、
一つの答えにたどり着ける足掛かりになるかと思います。

 自主的な行動につながる動機となり得るには、経営者に響く何かが必要です。
果たして、どんなことが響くでしょうか・・・。また、休眠放置会社となる会
社の多くは、「事業が軌道に乗る前に事業活動を停止せざるを得なかった会社」
であることが少なくないと推測しています。つまり、成功体験がないまま、事
業から撤退せざるを得なくなったケースが多いと思いますので、そういったこ
とも視点に入れる必要があるかと思います。(つづく)


2023.05.16(火)【副業・兼業】(東京・鈴木龍介)

 今回は、「働き方改革」の一環として、注目を集めている「副業・兼業」に
ついて取り上げたいと思います。

 副業・兼業とは、2つ以上の仕事を掛け持つことですが、「副業」は2つ以
上の仕事に主従の関係があり、「兼業」は2つ以上の仕事に主従の関係はない
ものと整理できます。

 副業・兼業には、企業に雇用されたかたちで行うもの、自ら起業して事業主
として行うもの、請負や委任といったかたちで行うものなど、さまざまな形態
があります。

 副業・兼業を行うことの労働者側のメリットとしては、現職を辞めずに別の
仕事に就くというなかで、あらたなスキルや経験をもとにキャリア形成につな
げることができたり、所得の増加も期待できます。デメリットとしては、就業
時間が長くなることによる健康への影響や、それぞれの仕事における競業や秘
密管理の問題があげられます。

 ただし、そもそも副業・兼業ができるかどうかは、現職である企業等の就業
規則や労働契約を確認する必要があります。司法書士事務所などは、そのあた
りはノーケアのような感じがしますが、どうなっているのでしょう?

 一方、企業サイドとしては、労働時間以外の時間をどのように利用するかは
基本的に労働者の自由ですので、副業・兼業を認める方向で検討するのが適当
とされていますし、副業・兼業による労働者のスキルアップは現職へも好影響
が期待できそうです。ただし、先ほどのデメリットを踏まえ、労務管理を適切
に行うために届出制など副業・兼業の有無・内容を確認するための仕組みを設
けておくことが望ましいとされています。

 さてさて、国としては副業・兼業を促進する方針のようですが、みなさんは
どうお考えでしょう(やるorやらない/認めるor認めない)?

~参考~
 厚生労働省:副業・兼業
  https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html


2023.05.15(月)【私は16周年】(金子登志雄)

 京都の内藤司法書士は「ブログ開設19年」で、新保さゆりさんは「14周
年」だとか。すごいなと思って、この徒然はどうかとみましたら、お二人の真
ん中の16周年でした(ブログ形式ではありませんが)。

 ESG法務研究会として会員の意見表明の場(宣伝の場)にするつもりでし
たが、原稿を寄せる方が少なく、結局、金子個人意見表明の場みたいな状態が
長く続いてしまいましたが、いまは、鈴木さん、酒井さんが毎週原稿を寄せて
協力してくださいますし、立花さんも2週間に1度程度のペース、古山さんも
たまに協力してくださいますので、だいぶ楽になっています。

 ブログを続けるのは大変ですが、最近はツイッターとかユーチューブのほう
が司法書士にとっては手っ取り早いようです。とくに、ユーチューブは収入に
もなるようで、ユーチューバーとして名をあげている司法書士もいます。

 世代の差でしょうか。最年長の私はブログを使えませんし、本徒然も弟が管
理しています。内藤さんや新保さんがツイッターやユーチューブに乗り出さな
いのも画像よりも文章のブログ世代のせいかもしれません。

 16周年もよく続いたものですが、新聞の漫画(昔のサザエさんとか)から
比べればずっと楽ですから、今後も、勉強不足で知識のない私は、興味がある
「ものの見方・考え方・捉え方」を中心に、発信して行きましょう。

 過去徒然の2012年の本欄では、次のようなことを書いていました。
----------------------------------------------------------------------- 
 皆様も、ぜひ、さまざまな視点からみる習慣をつけてください。想像力だけ
ですから、お金は一切かかりません。
 例えば、次のような裏側から視点も、たまにはいかがですか。
 1.忠臣蔵………真夜中に徒党を組み無関係な人にも残虐なことをした集団
 2.水戸黄門……最後には権威をかさにして威張り出すおじいちゃん
 3.桃太郎………異国に攻め入り、財産を奪った乱暴者
 4.牛若丸………京の五条の橋の上で弁慶おじさんに遊んでもらった幼児
 5.金太郎………動物しか遊び相手のいない孤独な子供
------------------------------------------------------------------------

 誠に勝手なことを書いているものですが、金太郎は、威張らない、残虐行為
をしない、他国に侵略しない点で、一番の平和主義者であり私の理想です。わ
が愛する日本国にも、あの好戦的な桃太郎国家に煽られて、東ヨーロッパの次
は東アジアの鬼退治をしようと戦争を煽るのではなく、平和で穏やかな金太郎
国家を維持し続けてほしいと思っています。


2023.05.12(金)【定款で定めた代表者の地位】(金子登志雄)

 党の規約で代表者はAと定めた某政党の内紛をヒントに、会社の場合はどう
かと次の問題を作ってみました。

 Q1:定款本文に「第X条/当会社の代表取締役はAとする」と定めた株式
会社、あるいは「第Y条/当会社の代表社員はBとする」と定めた合同会社に
おいて、ABを解任することができますか。

 Q2:設立定款の附則に「当会社の最初の代表取締役はAとする」と定めた
場合はいかがですか。

 Q3:何かのついでに、定款の附則に、例えば「当会社の取締役会設置後の
代表取締役はAとする」、あるいは「期首である令和5年6月1日からの代表
取締役はAとする」と定めた場合はいかがですか。

 定款の本文も附則も効果としては同じです。しばしば、定款で代表者を定め
た場合は定款を変更しない限り他の者に変更することはできないと説明されて
いますが、本文で定めようと附則で定めようと、その定めた趣旨あるいは意味
によって効果を考えなければなりません。

 Q1は、憲法で天皇を定めたのと同様に、原則として(定款に任期があるな
どを除く)未来永劫、当社の代表者は誰それと定めたのと同じですから、辞任
はできても解任はできず、定款を変更しない限り、その地位は安泰です。

 これに対してQ2やQ3は、「最初の」とか条件を設定しているので、限定
的なものであり、いわば株主総会や取締役会の選定の代用として定款で選定し
ただけですから、適正な手続で解任も可能です。

 代表者ではありませんが、先般、取締役の解任登記を経験しました。依頼者
に登記記録に「解任」とでると、内紛があったと誤解されかねませんがよいの
ですかと尋ねたところ、本人も納得づくだというので、そのまま申請しました。
というのは、解任は無色透明用語であり、不祥事があったので辞めさせたとい
う趣旨はないからです。取締役のリストラだったのでしょうか。


2023.05.11(木)【胡蝶蘭】(島根・根来川久充)

 私は、昨年1月に事務所を移転しました。その際、お祝いに胡蝶蘭の鉢植え
を頂戴しました。

 自分がお祝いに贈ることはあったのですが、頂戴したことがなく、ただ、高
価はお花というイメージしかありませんでした。

 しかし、実際、頂戴すると一月前後、観賞することができ、大変リーズナブ
ルなお花であることに気づかされました。

 お花が散った後、是非、自分で咲かせてみたいと思い、YouTubeや、
検索サイトで調べて、鉢替えに挑戦してみました。

 私は園芸をしたことが、まったくございません。園芸好きの母からは、「胡
蝶蘭を育てるのはとてもむずかしい。」(『やめときなさい』と受け取れる口
調で)と言われました。

 初挑戦なので、失敗して当然と思っていたのですが、3月ごろから芽が伸び
はじめ、いまでは、蕾がいくつかでてきております。支柱も立てていなかった
ので、少し不格好なのですが、無事に咲いてほしいと思います。


2023.05.10(水)【休眠届の制度廃止?】(神奈川・酒井恒雄)

 休眠放置会社を生み出さないようにするためには、どうしたらよいでしょう
か? 手っ取り早いのは休眠届の制度を無くしてしまう方法があろうかと思い
ます。とはいえ、必ずしも「休眠届=会社の放置」になるとは限りませんので、
制度の廃止は難しそうです。

 では、休眠届を提出しても法人住民税等の請求は止まらない運用にしたらど
うでしょうか?

 本来であれば、休眠中でも法人住民税等の支払い義務はあるようですから、
全額とは言わないまでも、半額や3分の1の金額にあたる法人住民税等の支払
いは免除されないという運用にしてはどうでしょうか?

 あるいは、課税が停止するのは休眠届提出後3年間に限るとか・・・。思い
つく案はありますけど、制度自体になんらかの変更を求めるというのも、現実
的ではないように思います。

 もっとも、今後はますます休眠放置会社や職権解散の対象となる会社が増え
るでしょうから、いずれは何らかの対応策が講じられる可能性もあるかもしれ
ません。

 ところで、いわゆる職権解散についてですが、法務省のホームページには、
休眠会社の整理を行う理由が記載されています。具体的には、事業活動をして
いない会社が放置されることで、「登記制度の信頼性が低下する」「休眠会社
が悪用される」といった説明がされています。

 休眠放置会社を減少させるためには、こうした情報の周知活動をもっと積極
的に行うという方法もありそうです。ほかにも、何かできそうなことないでし
ょうか? いざ考えてみると、結構いろいろなことが頭に浮かんできたりしま
す。(つづく)


2023.05.09(火)【消費税とは?~その2~】(東京・鈴木龍介)

 前回に続き「消費税」ですが、計算方法と納税を取り上げたいと思います。

 消費税(地方消費税を含む。)の納付税額の基本的な算式は、売上(課税売
上)に対する消費税額から仕入(課税仕入)に対する消費税額を控除した額が
納税額となります。

 シンプルな取引を例にしますと、文具店が消費税込みで110円で鉛筆を販
売した場合、うち10%である10円が消費税となりますが、その鉛筆を55
円で仕入れをしたとすると、うち10%である5円が消費税となり、その差額
(10円-5円)である5円を事業者である文具店が消費税として納付するこ
とになります。

 これが、いわゆる「一般課税」(または「原則課税」)といわれるものです。
ただし、消費税に関する取引には、「課税取引」のほか「不課税取引」(たと
えば、給与)、「非課税取引」(たとえば、土地の売買)、「免除取引」(た
とえば、輸出)というものがあり、単純な差し引き計算ですむものだけではあ
りません。

 そのような点を踏まえ、事業年度の1年分の課税売上が5,000万円以下
の事業者については、一般(原則)課税ではなく「簡易課税」という方式を選
択することができます。簡易課税とは、売上(課税売上)に対する消費税額か
ら売上(課税売上)に対する消費税額にみなし仕入率(業種によって40%~
90%)を乗じたものを控除した額を消費税の納付額とするものですから、経
理の事務作業としてはシンプルになります。ただし、一般(原則)課税より簡
易課税の方が必ずしも納税額が少ないとは限りません。なお、簡易課税の適用
を受けるために届出が必要になります。

 消費税の納税は、課税期間――一般的に、個人事業主の場合は毎年1月1日
から12月31日、法人の場合は事業年度――の末日から2か月以内に消費税
・地方消費税の確定申告書を提出し、納付することになります。なお、直前期
に一定の納税額がある場合には所定の中間申告・納付する必要があります。

 消費税については、課税事業者と免税事業者という区分があります。免税事
業者とは、政策的に消費税の納税が免除される事業者です。ザックリいうと、
前々期の上半期の売上が1,000万円以下の場合、免税事業者となります。
ですから、通常、新規に設立した会社は免税事業者ということになります。た
だし、課税仕入が多いケースなど、免税事業者ではなく課税事業者となる方が
有利になることがあります。そのようなケースでは、届出によって課税事業者
を選択することもできます。

 免税事業者の場合、消費税の納税義務がありません。一方、売上に消費税を
のせることは認められています。つまり、その差額が、いわゆる「益税」とい
うことになってしまうわけですが、それにメスを入れるのが「インボイス」制
度なのです。

~参考:国税庁~
■消費税のあらまし
  https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/aramashi/01.htm


2023.05.08(月)【政治はケンカだ! 明石市長の12年】(金子登志雄)

 政治に少しでも関心のある国民から、いま最も日本の総理大臣にしたい男と
思われている泉房穂(明石市長)氏へのインタビュー本が発売早々にアマゾン
でベストセラーになりました。私も、どういう人かを知るため、この連休に読
みました。
        https://is.gd/MctSSN

 父親は小卒、母親は中卒の極貧の漁師の子として生まれ、弟は障碍者という
悲惨な環境に育ったため、弟に冷たい明石市を憎み、市長になって住みよい街
作りをすると決意したのが10歳で、以後、闘いの連続のすごい人生でした。

 無党派の一匹狼で市長選に立候補し勝利したためか、市長になっても市役所
職員や議会の抵抗で四面楚歌状態でしたが、妥協するどころか、本書の53頁
では、『私、四字熟語でいちばん好きなのが「四面楚歌」。四面を敵に囲まれ
てしまつても、まだ空と地下が残つてる。そういう状況、ホンマに好き。「ま
だまだ行けるとこあるぞ」と、体中からエネルギーが湧いてくる』と述べてい
ました。恐れいりましたです。

 ぜひ、皆様にもお勧めしますが、勧める理由は、勇気をくれるその生き様の
ことよりも、日本社会の構造的な歪み、制度疲労がよく分かることと、その処
方箋(日本社会のバージョンアップ)についても触れているからです。
 
 例えば少子化対策でも、子供に給付金を渡すのだから親の年収は関係ない、
親に渡したり、業界団体経由にすると中抜きされ、政治家が関与し利権がはび
こるなどと、常に末端の当事者主義に立脚している点は、経営にも役立ちます。
明石市は日本で最も成功した市で住みやすい市の筆頭にしたのは、この泉氏で
すから実に説得力がありました。目次は以下です。

 第1章 闘いの日々
 第2章 議会論
 第3章 政党論
 第4章 役所論
 第5章 宗教・業界団体論
 第6章 マスコミ論
 第7章 リーダーシップ論
 
 末端の公務員に冷たい大阪維新の橋下徹氏とは対極の人物と思っていました
が、何と司法修習生の同期だそうです(泉氏は東大法学部卒の弁護士)。旧態
依然とした既成秩序の破壊者という点では共通点があります。

 明石市役所には雇用弁護士が10人程度いるようです。この人達が、不当な
政治的圧力の防波堤になっているのかもしれないと思い、よい方法だなと思い
ました。市営住宅の滞納もなくなったようです。市政での「法の支配」の徹底
ですが、こういう面では我々も行政に役立つ人材かなと思いました。

(追記)
 下記の紹介文も参考にしてください。ここに「おそらく全国でも、いまの明
石市民ほど、自分の1票の持つ力を信じている市民はいないのではないでしょ
うか。あの日私たちは、私たちの手で、私たちの未来を変えたのです」とあり
ましたが、私も日本の未来をよくしたい。
        https://is.gd/UzQ1jE


2023.05.02(火)【消費税とは?~その1~】(東京・鈴木龍介)

 以前、「インボイス」を取り上げましたが、その元となる「消費税」につい
て整理しておきたいと思います。

 消費税とは、日本国内で行われる、ほとんどの物の販売やサービスの提供と
いった取引にかかる間接税(=納める人と負担する人が異なる税金/⇔直接税
(ex.所得税))です。

 物の販売等の対価として消費者が支払う代金の中に消費税相当額が含まれて
いるので、消費者に広く、公平に課税できるのが特徴です。原則として、消費
税を負担するのは消費者ですが、納税するのは物の販売等をする事業者です。

 消費税は世界160か国で採用されている税制ですが(類似するものを含み、
付加価値税などと呼ばれています。)、日本では昭和63(1988)年に消費税
法が成立し、平成元(1989)年4月から3%の消費税が導入されました。平成
9(1997)年には5%、平成26(2014)年には8%と段階的に税率が引き上
げられ、令和元(2019)年からは標準税率が10%となっています。

 消費税には、標準税率と軽減税率というものがあります。軽減税率とは政策
的に負担軽減を図るというもので食料等が対象となっていて、現行では標準税
率が10%のところ8%となっています。また、国に納付する消費税と都道府
県に納付する地方消費税とがあり、現行の標準税率では前者が7.8%、後者
が2.2%です。くわえて、一般消費税と個別消費税というものがあり、個別
消費税とは、特定の物の販売等に課されるもので、酒(酒税)やたばこ(たば
こ税)などが対象となります。

 少々長くなりそうなので、消費税の計算と納税については、次回にしたいと
思います。

~参考:国税庁~
■消費税のあらまし
  https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/aramashi/01.htm


2023.05.01(月)【2種類の代表取締役の予選】(金子登志雄)

 代表取締役の予選につき取締役会で2か月以上前に予選したが、登記が無事
に通るか心配だという相談を受けました。確かに、ものの本やインターネット
検索によると、予選期間は1か月を超えると受理されるか不明だとあります。

 しかし、私は某上場会社で2月17日の取締役会で4月1日付の代表取締役
増員を決議したので、その登記を4月3日に申請しましたが、予選期間が1か
月を超えることには全く無頓着でした。受理されることに何の疑いも持ってい
なかったからです。東京法務局でしたが、案の定、無事に終わりました。

 勘がよい方はお気づきでしょうが、代表取締役の予選問題には2種類があり
ます。すなわち、株主総会を挟んだ予選(取締役としての任期切れを目の前に
した予選)と、上記のように挟まない予選です。

 前者は例えば、次のような事例です(昭41・1・20民事甲第271号民事局長回
答事案に類似した例です)。
----------------------------------------------------------------------
 ① 3月決算で取締役ABC(代表取締役A)の取締役会設置会社(甲)に
おいて、6月初旬の決算承認取締役会において、きたる6月下旬の定時株主総
会の終結時にABC全員が任期満了し退任するため、ABC全員を重任させる
こととし、同時に、取締役重任を条件に代表取締役としてAを予選。
 ② 3月決算で取締役の任期を3月31日までと定款に定める取締役ABC
(代表取締役A)の取締役会設置会社(乙)において、3月初旬の臨時株主総
会招集の取締役会決議において、3月下旬の臨時株主総会でABC全員を4月
1日付で重任させることを条件に、4月1日付で代表取締役としてAを予選。
----------------------------------------------------------------------

 このような場合は、まだ【次期の取締役にもなっていない者が次期の代表取
締役を予選】しているのですから、だれでも「こんなのいいのか」と思う例で
あるため、予選期間が1か月未満で構成メンバーに変更がないのならいいじゃ
ないかと私も思います(昭和41年先例に同意します)。

 これに対して上記上場会社事例は【現取締役】が1か月以上前の取締役会で
代表取締役を予選しただけです。私は何の問題もないし(さらに私見では構成
メンバーの事後の変更も問わないと思うのですが当局は否定)、登記所で却下
したら経済界で大騒ぎになるでしょう。弁護士会も黙っていないでしょう。

 次のように2か月以上も前の例もあります。もし、皆様が大阪法務局の登記
官だったとしたら、この事例(上場会社で監査等委員会設置会社)につき、こ
んなに予選期間が空いていたらだめだと却下しますか。却下の影響は甚大です
が、株主総会も必要としない会社の内部問題に口出しし、責任とれますか。

  https://www.nikkei.com/nkd/disclosure/tdnr/20230324535691/

 以上のとおり、同じ予選でも株主総会による予選となる取締役の予選と取締
役会による代表取締役の予選の合理的期間が異なるだけでなく、後者でも任期
切れの株主総会を挟んだ予選と任期中の取締役が行う予選とでは、それぞれ判
断に差が生じますので、一律に予選期間は1か月が限度などと主張する狼少年
風の見解には自重を求めたいと思っています。


2023.04.28(金)【印鑑証明書と住所】(金子登志雄)

 新社長は日本人だが中国に在留しているため、日本の印鑑証明書が取得でき
ないため、いわゆるサイン証明書を取得してもらいましたが、これでは住所の
証明にならないため在留証明書も必要だとするのが登記実務です。

 つい先日、この登記申請を担当しましたが、この実務は、外国居住者に明文
もないのに印鑑証明書と本人確認証明書を二重に要求しているのか、それとも、
日本における印鑑証明書は「印鑑及び住所」証明書だからだということでしょ
うか。

 しかし、日本の登記法では住所までの証明を要求していません。住所移転の
際に新住所につき何らの証明も要求されませんし、本人確認証明書も本人の実
在性と就任承諾者と本人確認証明書の人物が同一であることを証明するもので
あって、住所自体を証明するものではありません。

 印鑑証明書も本人の実在性と就任承諾者と印鑑証明書上の人物が同一である
ことを証明するためのものです。その証拠に印鑑証明書にも本人確認証明書に
も有効期限がありません。取締役会設置会社を廃止し各自代表会社に変更し、
代表権付与がなされる際は、住所は本人申告で足り、印鑑証明も本人確認証明
も不要です。

 登記における住所は本店所在場所と同様に申請会社が「ここの住所」のこの
人と申請した場所のことだというのが私見ですが、外国居住者になるとそうで
ない運用には疑問が尽きません。


2023.04.27(木)【職務執行者の選任機関】(仙台・立花宏)

 今さらながらではありますが、取締役会を設置している株式会社が100%
子会社である合同会社を設立し、代表社員(業務執行社員)となる場合、職務
執行者を選任する必要があります。さて、どの機関で選任する必要があるでし
ょうか。

 異なる見解もありますが(注1)、ご存じのとおり、登記実務上、取締役会
の決議で選任する必要があると解釈されています。「職務執行者は、法人たる
代表社員に代わり、持分会社の業務を執行することとなり(会社法第598条)、
職務執行者が職務を行い、又はその職務を懈怠すれば、それは法人たる代表社
員が自ら行ったものと評価されることになるところ、このような個別の委任な
しに包括的な権限を有する者は、会社の支配人に準ずる地位にあるといえる」
(注2)ことが理由だとされています。

 個人的には、異なる見解の立場です。しかし、登記実務は、添付書面として
取締役会議事録を求めており、実務上はそうすることになるでしょう。

 ところで、この株式会社が監査等委員会設置会社であって、取締役の過半数
が社外取締役である、あるいは定款に重要な業務執行の決定(会社法399条
の13第5項各号に掲げる事項を除く。)を取締役に委任できる旨の規定があ
るとします。この会社が、合同会社の設立を決定した取締役会において職務執
行者の選任は代表取締役に委任する旨の決議をしていた場合はどうでしょうか。

 通常の取締役会設置会社であれば、支配人の選任は取締役に委任することが
できないものとされていますので(会社法362条4項3号)、職務執行者も
同様に解釈されているのだろうと思います。しかし、監査当委員会設置会社に
おいては、前記の場合であれば、支配人の選任も取締役に委任することができ
るはずですので(会社法399条の13第5項、第6項)、職務執行者の選任
についても、可能だろうと思います。

 では、この場合に、職務執行者の選任を証する書面は、何を添付することに
なるでしょうか。

 まず、取締役の過半数が社外取締役の場合は、委任を決定した取締役会議事
録のほか、代表取締役の決定を証する書面が必要になります(商業登記法46
条4項)。社外取締役が過半数である必要がありますが、監査等委員会設置会
社では、社外取締役であることは登記事項ですので、この点については、特に
添付書面は不要だと思います。

 次に、重要な業務執行の決定を取締役に委任できる旨の規定を定款に置いた
場合です。代表取締役に決定権限が委任されたことを証する必要があるでしょ
うから、それを決定した取締役会議事録は必要になると思います。それに加え、
代表取締役の決定を証する書面が必要となります。

 次に、定款規定を証するために、定款の添付が必要かどうかです。この規定
については、登記されますから、定款の添付は不要なように思えます。

 しかし、登記されるのは、「定款に定めがあるときは、その旨」であって
(会社法911条3項22号ハ)であって、定款規定そのものではありません。
会社法399条の13第6項では、全部又は一部を委任することができる旨を
定めることができるとされており、会社が、定款に委任する範囲を定める可能
性も否定できません。この場合には、委任の範囲までは登記されないと思いま
す。よって、登記所から、代表取締役の権限を証する書面の一部として、定款
の添付を求められる可能性もあり得るかもしれません。そのため、定款も準備
しておくほうが安全だろうと思いました。

 私自身の考えは、以上のとおりですが、実務はどのように扱われているので
しょうか。

 注1)神﨑満治郎・金子登志雄・鈴木龍介編著『論点解説 商業登記法コン
   メンタール』(金融財政事情研究会)388頁以下
 注2)小川秀樹・相澤哲編著『通達準拠 会社法と商業登記』(金融財政事
   情研究会)291頁


2023.04.26(水)【休眠放置会社】(神奈川・酒井恒雄)

 いわゆる休眠届を提出した会社のうち、事業活動を再開することなく放置さ
れてしまう会社のことを「休眠放置会社」と呼んでみたいと思います。

 休眠放置会社が株式会社であれば、その殆どは職権解散の対象になるかと思
われます。

 では、実際に職権解散の対象となった株式会社の数はどれくらいでしょう?
公表されているデータを調べてみたところ、過去3年くらいは年間約3万社が
職権解散となっているようです。

 一方、申請による解散登記件数は年間約1万8,000件くらいなので、大
雑把に計算しますと、1年間の株式会社の解散数の約6割は職権解散によるも
のとうことになります。実務の肌感覚からして、それくらいだろうねと思った
方もいるかもしれませんが、想像以上に多くて驚いた方も少なくないかと思わ
れます。

 これに合同会社の数を加えたら、放置会社天国と言っていいような数字にな
るに違いありません。ご存じのとおり合同会社には職権解散の制度がありませ
んが、その設立登記件数は会社法施行以来ずっと上昇しています。株式会社の
設立登記件数は、「増」「減」を繰り返えしているのに対し、合同会社の設立
登記件数はずっと右肩上がりの増加です。

 休眠放置会社は、休眠届の制度を歪んだかたちで利用していることになりま
すが、当の本人は、そんな意識がないかもしれません。何故なら、「このまま
終わるのは不本意なので、いつかまたリベンジしてやる!」と思っている人も
少なくないと思うからです。しかし、そういった悔しい気持ちや野望も、年月
が経てば薄れていくものですよね・・・。そして、その「いつか」は来ないの
であって、結局は職権解散の対象になってしまうというストーリーが定番にな
っているのではないかと思われます。(つづく)


2023.04.25(火)【千代田支部総会】(東京・鈴木龍介)

 去る4月21日(金)18時から「東京司法書士会千代田支部」の令和5年定時
総会(本総会)が竹橋の「四季交楽 然」にて開催されました。私も千代田支
部会員として本総会に出席して参りました。

 そもそも司法書士会(単位会)の支部というのは、東京司法書士会(東京会)
等の各単位会で地域ごとでの活動等を行うために設けられた組織体です(ちな
みに支部を設けていない単位会もあります。)。なお、日本司法書士会連合会
は50の単位会の集合体組織ということになります。

 東京会は総会員数(個人の司法書士ベース)が4500名を超える大規模単位会で、
29の支部が設置されています(https://www.tokyokai.jp/about/chart.html)。
その中でも千代田支部は個人会員が661名、法人会員74からなる東京会で最大
の支部です。

 本総会は、新型コロナ感染症拡大に配慮しつつ、3年ぶりの時間短縮のない、
かつ組織員のリアル出席を抑制することないかたちでの開催となりましたが、
委任状出席を除く、リアル出席は60名でした。

 本総会の目的事項は、役員改選等もりだくさんでしたが、すべて満場一致で
可決承認されました。その後、同会場で立食形式による懇親会もあり、盛会の
うち20時に散会となりました。

 支部役員ほか関係者のみなさん、お疲れさまでした。そして、ありがとうご
ざいました。


2023.04.24(月)【新事務所で業務開始】(金子登志雄)

 22日土曜日に荷物を旧事務所から運び出し、23日日曜日に新事務所に運
び込み本日24日から業務開始です。会社の荷物量が多いためか、荷物はコン
テナ車両で1夜を過ごすのだとか。小さいながらも民族大移動を感じました。

 会社の本店移転で移転日は引っ越した日か、営業開始日かという小論点があ
りますが、通常は後者の日にします。ただし、業務執行機関が22日あるいは
23日と決定したのなら、その日になります。

 移転先につきビル名や階数あるいは部屋番号を記載すべきかについては、ま
ちまちで、郵便物が届くことを優先する会社は階数や部屋番号まで登記し、そ
れなりの会社は、登記上はビル名も記載せず、会社の封筒やゴム印にのみビル
名等を記載します。

 上場会社で本店所在場所にビル名まで記載しているところがほとんどないの
は、会社が大きく知名度があるため、郵便物が届くためでしょう。私が子供の
頃には「東京都 長嶋茂雄様」でもファンレターが届くと聞いたことがありま
すが、超有名人や会社は、これで十分なわけです。

 旧事務所につき、私は司法書士会に「野村不動産ビル4階」で登録しました
ところ、ビルが売却され「ユニゾ神田小川町三丁目ビル」に変わったため、登
録し直さなければならなくなり、ビル名を削除し登録したところ、一時的に郵
便物が不着になりました。この問題は郵便配達人が了知したため、すぐに解消
し、その後、またビルが売却されビル名が単に「神田小川町三丁目ビル」に変
わったため、ビル名を登録しない私の決定は正解でした。

 今度の移転先である「東急虎ノ門ビル8階」はビル名が変わる可能性が極め
て低いため登録先に加えます。私の名前では超有名人の長嶋茂雄さんのように
はなりませんから。

 東京司法書士会に「事務所移転」の登録を移転日以前に予約で通知してよい
かと尋ねましたら不可でした。移転登録の用紙の日付を移転日の24日にして
おくならよいではないかと申し上げましたが、事務処理上、無理なようです。

 登録変更が済まないのに新事務所の住所で登記申請してよいのかと思いまし
たが、登記と同じく登録変更も結果報告であって、登録が効力要件ではなさそ
うですから、登録前ですが、本日午前8時30分より気分を新たに新住所で登
記申請することにいたしました。


2023.04.21(金)【引っ越し準備】(金子登志雄)

 昨日の補足ですが、議事録は会社が作るもので、登記だけに使うものではな
いため、登記所に記載方法につき、とやかくいわれる筋合いはないとの反論も
可能だなと思いました。それなりの会社になると、議事録についても顧問弁護
士のチェックが入ったりしています。

 前にご紹介したと思うのですが、資本金の額の減少公告で減少額が確定額で
ない公告も事前相談すると登記所で不可といわれるのに、提出してみると受理
されるのは国立印刷局が合法的な公告だとして受け付けたものを登記所がこの
公告では不可だとはいえないのかもしれません。登記所も印刷局とは争いたく
はないでしょう。

 さて、今週は引っ越し準備でした。土日に引っ越し、24日月曜日から当事
務所は、「東京都港区虎ノ門一丁目21番19号東急虎ノ門ビル8階」に変わ
ります。東京司法書士会千代田支部の皆様、お世話になりましたですが、隣組
に移転するだけですので、今後もよろしくです。

 引っ越し作業では、荷物になるので、司法書士開業時に自分へのご褒美とし
て買い求めた「実務相談株式会社法」全5巻も内容をパソコンに取り込み廃棄
しました。

 旧商法時代に著作のために苦労して集めた実例資料多数も、廃棄しました。
大事な資料という意識はあるのですが、会社法になって1度もみていないので、
思い切って捨てました。

 この結果、意外だったのは、常日頃、申請書類を郵送する際に挟むファイル
が少ないなと思っていたのですが、資料の中身を廃棄し、ファイルだけ残した
ら、数えてはいませんが、間違いなく1000枚以上になりました。ダブルク
リップも300は残りました。

 ところで、日曜日は選挙ですね(神奈川県民の私は9日に終わっています)。
日本は民主主義国だ、ロシアと中国とは違うのだと叫んでいる愛国者の方々は、
ぜひ、その主張をホンモノにし、世襲議員とか、マスコミやユーチューバーで
有名になっただけの軽い候補者に投票しないようお願いします。日本の劣化の
原因ですから。


2023.04.20(木)【WEB会議の必要的記載事項】(金子登志雄)

 4月3日に登記申請したものの1つに、取締役会決議をWEB決議でしたも
のがありましたが、誰がWEB参加だったかも、「本会議システムは、出席者
が⼀堂に会するのと同等に適時・的確な意⾒表明が互いにできる状態となって
いることを確認した」の記載もありませんでした。

 会社法施行規則101条3項1号に議事録の記載事項として「取締役会が開
催された日時及び場所(当該場所に存しない取締役、・・・が取締役会に出席
をした場合における当該出席の方法を含む)」とあるため、誰がWEB参加か
は記載しないといけないと思うのですが、「本会議システムは、出席者が⼀堂
に会するのと同等に・・・」の記載については、必須でしょうか。

 2月24日千代田支部セミナーでの東京法務局登記官は次の質問(質問者は
私です)に対して、必要説でした。
----------------------------------------------------------------------
 質問:従来は「本会議システムは、出席者が⼀堂に会するのと同等に適時・
的確な意⾒表明が互いにできる状態となっていることを確認した後、議案の審
議に入った」などの記載がないと、登記所から記載を求められることもありま
したが、いまは、リモート会議システムが発展し、それができるのは当然視さ
れています。また、確認したから会議が開催され、仮に途中でそれが中断して
も、無事に再開したから会議が終了したわけですから、この記載のない議事録
も有効であり、登記申請に支障がないと考えますが、いかがですか。会社法施
⾏規則上も必要的記載事項とは思えません。
----------------------------------------------------------------------

 登記官が必要な根拠として挙げたのは、WEB会議が肯定された旧商法時代
の古い古い解説でした。

 当時は本社と支店との間でテレビ会議の設備があり、それで会議をしたもの
ですから、議事録にこのような記載をするのが自然でしたが、いまは、極端に
いえば、スマホのスピーカー機能で会議も可能ですし、ZOOM飲み会なども
頻繁に行われており、設備など問題にされない時代になっています。一人だけ
が自宅からWEB参加ということもありますが、この場合でも記載せよという
のでしょうか。 

 したがって、補正通知を受けたら「時代遅れもはなはだしい。法的根拠のな
い押印が不要になったのと同時に、法的根拠を示していただけなければ応じら
れない」と抵抗する予定でしたが、何の連絡もなく、あっさり受理でした。

 千代田支部セミナーでの回答には「東京法務局管内の商業登記所における統
⼀的な⾒解を⽰すものではありません」との断り書きがありましたが、東京法
務局(本局)管内でも統一的な見解ではないようで、安心しました。

 ちなみに、法務局の人事異動は頻繁であり、登記官といえども商業登記歴が
数年しかない方も多いようです。その関係か、従来はあっさり受理されていた
ものが急に補正にされた事例が増えました。商業登記歴20年、30年の司法
書士各位は、登記官によく説明してあげてください。


2023.04.19(水)【休眠会社の増加】(神奈川・酒井恒雄)

 日本は起業ブーム真っ只中ですが、起業した人の全員が事業に成功するわけ
ではありません。そんなことは私が言うまでもありませんが、成功する人より
失敗する人の方が多いというのが現実ですよね。

 だから、起業支援策には、失敗しても再チャレンジできる土壌の醸成も必須
となります。一応、再チャレンジできる社会に!という掛け声は聞こえてきま
すが、具体的な方策が追いついていない、つまり、失敗をした人に対するケア
は手薄のまま、どんどん起業を後押しする風潮が強まっていると感じます。そ
の結果、どのようなことが起きているかといえば、その際たる現象は、「休眠
会社の増加」ではないでしょうか。

 休眠会社とは開店休業状態の会社のことでが、そのような会社は、税務署等
に休業する旨を記載した異動届出書を提出すれば、多くの場合、本来は納付し
なければならない法人住民税等の支払いが停止します。この届出は、通称「休
眠届」といわれています。本来であれば、休眠届は一旦事業を停止する場合に
利用できるものなのですが、実際には、もう事業を再開する意思がない場合に
おいても利用されているようです。(つづく)


2023.04.18(火)【インボイスとは?】(東京・鈴木龍介)

 最近、耳にすることが多いインボイスとはどのようなものでしょうか?
正式には「適格請求書等保存方式」というようですが、令和5(2023)年10月
からスタートする、事業者が納付する消費税額の計算に関する新たな制度です。

 そもそも消費税の納税額の計算は、「売上時に預かった消費税」から「仕入
や経費で支払った消費税」を差し引きするのが原則ですので、預かった消費税
額と支払った消費税額を明確にする必要があるのですが、これまで取扱いがあ
いまいなところがありました。

 そこで、今般、事業者は「登録番号」や「税率ごとに区分した消費税額」な
どを記載したインボイス(適格請求書)を発行等することで、そのあたりをク
リアにするというのがこの制度の趣旨です。

 インボイスを発行するためには、税務署への事前の登録が必要でして、登録
された事業者が「適格請求書発行事業者」として発行した請求書等に基づき消
費税の計算上の差し引きができることになります。言い換えると、適格請求書
発行事業者でない事業者が発行する請求書等では差し引きの計算はできず、納
税額がその分増えるという整理です。

 司法書士事務所(司法書士法人)も対象ですし、実際の影響も少なくないと
思われますので、運用の開始までにもう少し勉強しておこうと思っています。

~参考:国税庁~
 ■適格請求書発行事業者 公表サイト
   https://www.invoice-kohyo.nta.go.jp/
 ■インボイス制度 特集サイト
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice.htm


2023.04.17(月)【なかった旨の証明書3点】(金子登志雄)

 商業登記における「ない旨の証明書」には、お上の証明書を要求する場合か
ら全く要求されない場合まで大きな差があります。この4月の登記申請で、全
部を経験しました。

1.合併認可を要し【ない旨】の証明書
 合併消滅会社の事業目的に貨物利用運送業などと記載されていれば、事業を
営んでいなくても、運輸局からこの証明書を発行してもらう必要があります。
添付を漏らした場合でも補正を受けた後に運輸局から発行してもらい提出すれ
ば足ります。

 一種の「認可が必要な登録業者ではありません」といった不思議な証明書で
すが、会社の代表者の自己証明では不十分なんでしょうか。

2.異議を述べた債権者がい【ない旨】の証明書
 商業登記法では、異議を述べた債権者が【ある】ときは。これこれを出せと
あるだけですから、なければ何もしなくてよいはずですが、異議を述べた債権
者があったのか・なかったのかは登記所には分かりません。そこで申請書の添
付書面の欄に「異議を述べた債権者はいない」と記載する慣例であり、最近は
申請書でなく上申書的な文書を添える例が増えました。

3.簡易合併の手続に株主の反対が【なかった旨】の証明書
 無対価合併の際は簡易要件を満たす旨の証明書は不要(合併契約書を援用)
とされています。ところが、商業登記法でいう簡易合併を証する書面としては、
「会社法796条3項の規定により吸収合併に反対する旨を通知した株主があ
る場合にあっては、同項の規定により株主総会の決議による承認を受けなけれ
ばならない場合に該当しないことを証する書面を含む」とされています。

 この関係で当局が認める「添付不要」とは、この書面をも不要という意味か、
無対価と株主の反対がなかったこととは連動しないので、この書面については
2の場合と同様に、申請書への記載を求めてくる場合(お願いベース)もあり
登記所の担当者次第です。今回は、補正でお願いされてしまいました。補正と
は大げさだなと思いましたが、単に電子申請書に書き込むだけで、新たな添付
書面を要求されたわけでなく、しかも「お願いします」とあったので、素直に
応じました。

 簡易合併要件の純資産額が減少しない合併である旨の証明を要求する見解は
ありません。これは簡易合併を申請しているということは純資産額が減少しな
い合併だと推定されるからでしょうが、必要数の株主の反対がなかったことは、
もっと推定が容易でしょうから、不要とは、この場合も含むという解釈も十分
に成り立つでしょう。外部の債権者の反対と内部の株主の反対という差も解釈
上大きい差になります。いずれにせよ、担当者次第と思っておくのが無難です。


2023.04.14(金)【事務所移転雑感】(金子登志雄)

 先般、メールで各所に事務所移転をお知らせしましたら、「下町からビジネ
スセンターへの移転ですね」といわれ、なるほどと思いました。

 現在の場所は神田本屋街の近くで明治大学や日大病院の近くですが、確かに
古くから栄えた場所ですが、移転先は虎ノ門ヒルズで有名なように最近急速に
ビジネス街になった地域です。

 そういうところなら、司法書士事務所は少ないだろうと日本司法書士連合会
のサイトで検索しましたところ、「虎ノ門」地域で56人、移転先の「虎ノ門
1丁目」では20人もいました。面識のある方はいませんでしたが、お一人だ
け質問メールを受けたことがありました。

 例の司法書士のオシゴトブログの新保さゆりさんの事務所は新橋ですが、歩
いて15分以内の距離です。渉外案件と電子申請にお強いので、よく質問させ
てもらっています。

 ところで、地方の皆様は神田本屋街とか虎ノ門といってもピンとこないでし
ょう。上州(群馬県)育ちの私も東京のことはほとんど知らなかったため、高
校2年生の冬休みに東京で下宿していた兄のところに転がりこみ東京見物しま
した。高田の馬場とか小伝馬町などという時代劇で知っていた名前の駅がある
ので、びっくりしたものです。

 私も大阪や京都には数回お伺いしているのですが、いまだに方向感覚があり
ません。札幌も仙台も福岡も同じです。これは地元の人に案内されているから
でしょう。高校2年生のときの私のように一人で右往左往していたら、感覚が
ついていたと思います。

 仕事でも勉強でも同じです。誰も教えてくれない独学は受験には非効率です
が、その試行錯誤がのちに大いに役立ちます。私の思考がユニークといわれる
のも独学オンリーだったためだと思っています。

 大先生の権威にも影響されない「我流」ですが、商業登記事務所の経営者に
いわせると、学校の勉強はでき司法書士試験にも簡単に合格したのに、パター
ン化されていない商業登記には、ついていけない方が少なくないそうです。

 もっとも、こういう方も好きなことには様々なアイデアを出したりしますか
ら、詰まるところ、商業登記に興味が湧かないのでしょう。人それぞれ能力も
適性も興味も相違しますから、早く自分にあった仕事を探すことです。

(土日を前に「弾薬のない第三次世界大戦がはじまる」)
 トランプの言だそうです。ウクライナ戦争は局地的には軍事紛争だが大局的
にはハイブリッド型で、平家の金融の西側G7対源氏の資源国のBRICSと
の経済戦争でもあり、虐げられていた源氏勢力が団結して対抗してきていると
の危機感からネオコン(戦争屋)のバイデンの統治能力を非難した発言です。
 大統領選に立候補予定のロバート・F・ケネディJrもネオコンのせいで米
国の威信と信頼を貶めたと批判していますし、フランス大統領のマクロンも、
これ以上米国に巻き沿いにされたくないと中立的スタンスに変えてきました。
 日本は総理もマスコミも世論も米国に従っていれば間違いないと信じ込んで
いるとしか思えませんが、欧州の独仏伊などのように本音は米国に巻き沿いに
されるのは真っ平だという危機感はないのでしょうか。


2023.04.13(木)【退社に伴う持分の払戻額について】(仙台・立花宏)

 先日、ある方から、合同会社の社員の退社に伴う持分の払戻額について、定
款に任意規定を設けることは可能か、という質問をいただきました。たとえば、
社員が退社する場合の持分払戻額は、定款に記載された出資額を限度とする、
という内容です。

 その方は、会社法611条2項では、「退社した社員と持分会社との間の計
算は、退社の時における持分会社の財産の状況に従ってしなければならない」
と規定されており、定款で別段の定めを可能とする規定がないので、消極とお
考えのようでした。

 これと比較するために、中小企業等協同組合法20条には、脱退者の持分の
払戻について、次のような規定があります。
 「組合員は、(略)脱退したときは、定款の定めるところにより、その持分
の全部又は一部の払戻を請求することができる。」

 この条文の定め方によれば、定款で規定すれば、たとえば、持分の時価が
100だとしても、払戻額はその一部である50を限度とすることができるこ
とになります。

 しかし、会社法は、そうした定め方をしていないため、定款で、前記のよう
な任意規定を設けることはできないのではないか、という疑問をお持ちになっ
たようです。

 これについては、会社法立案担当者の解説(注1)として、次のようなもの
があります。
 「退社に伴う払戻し財産の価額の計算方法については、規定が設けられてい
るが(611条)、各社員が払戻しを受ける額、すなわち当該社員の持分相当
分を算定する方法については、特に規定がない。これについては、定款に別段
の定めがなければ、出資の価額に応じることとなり、定款に定めがあればこれ
に従うことになる」

 つまり、会社法611条2項で規定しているのは、持分の払戻額の計算をす
るにあたり、会社の財産の算定をする場合には、退社の時を基準日として、時
価で算定するということであって、退社した社員が有する持分(払戻しを受け
る額)の計算方法は定めておらず、これについては、定款に自治に委ねられて
いるということです。

 社員の退社は、会社の一部解散といえます。会社が全部解散した場合は、原
則として出資の価額に応じて残余財産の分配をすることになりますが、この割
合は、定款で別段の定めが可能です(会社法666条)。一部解散の持分の払
戻しも、ある意味、一部解散の残余財産の分配だといえますから、定款に別段
の定めができない理由はない思います。
 その方にも、その旨を回答いたしました。
 
 ただ、この定款の定めがどこまで許容されるでしょうか。、除名された場合
は、持分の払戻請求権を失う旨の定款規定を有効だとした裁判例もあるようで
す(注2)。しかし、除名以外の場合にまでそうした定款規定を設けることが
できるかどうかについては、慎重に検討する必要があるのではないかと思いま
した。

 注1)相澤哲ほか『論点解説 新・会社法 千問の道標』(商事法務)
    590頁
 注2)昭和40年9月28日東京高裁


2023.04.12(水)【起業ブーム】(神奈川・酒井恒雄)

 日本は今、起業ブームの真っ只中であり、まだまだこの傾向は続くと思って
います。

 法務省公表の登記統計によれば、株式会社の設立登記件数は、ここ十数年間
では年間8万件くらいで、前年比でみると約1000件の「増」「減」を繰り返し
ていたようです。

 ところが、令和3年には前年比約1万件の増加が見られました。ここまで急
激に設立登記の件数が増加したのは、会社法が施行された直後の約2年間を除
いてありません。

 会社法施行時までとは言いませんが、かなり大きな起業ブームが到来してい
ると捉えていいかもしれません。ちなみに合同会社は、会社法施行後からずっ
と右肩上がりで設立登記件数が増加しています。

 こうした設立登記件数の増加は、キャリアに対する意識の変化を表している
のではないかと推測しています。政府が積極的に副業・兼業の推進をしていま
すし、コロナ禍における働き方の多様性が広まったことも大きく影響している
でしょう。

 起業という「自主的なキャリア選択」をして、起業に関心を持つたけでは留
まらず、具体的な行動へ移す人が増えているようです。


2023.04.11(火)【『株主総会ハンドブック(第5版)』】
                          (東京・鈴木龍介)

 前回に続き、新刊書籍のご案内となり恐縮ですが、このたび『株主総会ハン
ドブック(第5版)』が商事法務から刊行されました。
  https://www.shojihomu.co.jp/publication?publicationId=20092350

 本書の第4版の発刊が2016年でしたので7年ぶりの改訂です(初版から数え
ますと15年になります。)

 今般の改訂は、主に令和元年会社法改正、令和3年コーポレートガバナンス
・コード改訂ならびにデジタル化の進展を踏まえたものでして、あらたな章と
して、株主総会資料の電子提供とバーチャル総会が加わっています。ちなみに、
頁数も第4版の736頁から860頁と大幅増となっています。章立て目次は以下の
とおりですが、株主総会の主要な論点はおおよそ網羅されていると思います。

 第Ⅰ編  定時株主総会の流れ
   第 1 章 株主総会とは
   第 2 章 定時株主総会のスケジュール
   第 3 章 株主総会の準備
   第 4 章 株主総会の議題
   第 5 章 株主総会の招集の決定
   第 6 章 狭義の招集通知
   第 7 章 事業報告
   第 8 章 計算書類(含 連結計算書類)
   第 9 章 監査報告
   第10章 株主総会参考書類
   第11章 招集通知の発送
   第12章 株主総会資料の電子提供
   第13章 招集の撤回・延期、議案の修正・撤回等
   第14章 計算書類等の備置
   第15章 事前質問への対応
   第16章 議決権の事前行使等
   第17章 有価証券報告書の定時株主総会前提出
   第18章 直前の準備事項・緊急対応
   第19章 株主総会の受付
   第20章 議事の進行
   第21章 株主総会の議長
   第22章 株主の質問と説明義務
   第23章 延会・継続会
   第24章 採決
   第25章 株主総会後の手続
   第26章 株主総会と登記
   第27章 バーチャル株主総会
 第Ⅱ編  例外的手続
   第 1 章 書類の閲覧謄写請求
   第 2 章 株主提案権
   第 3 章 少数株主による招集
   第 4 章 株主総会検査役
   第 5 章 株主による委任状勧誘
   第 6 章 種類株主総会
 第Ⅲ編  株主総会をめぐる紛争
   第 1 章 株主総会と仮処分
   第 2 章 本訴
   第 3 章 株主総会と刑事事件

 ちなみに、私は、初版から引き続き「第Ⅰ編 第26章 株主総会と登記」
を担当しております。

 本書は株主総会に関する定番実務書として版を重ねて参りましたが、第5版
におきましても皆さまの実務の一助となれば幸いです。


2023.04.10(月)【事務所を移転します】(金子登志雄)

 2週間後の4月24日に、同居している当社(アクモス株式会社)の本社機
能の移転に伴い、当事務所も移転することにいたしました。最寄り駅は、地下
鉄日比谷線「虎ノ門ヒルズ」駅と銀座線「虎ノ門」駅であり、有名な虎ノ門ヒ
ルズ・タワーのすぐ近くです。

  (4月24日からの新事務所)
   〒105-0001 東京都港区虎ノ門一丁目21番19号
    東急虎ノ門ビル8階
    
 これで会社の移転に伴う事務所移転は3度目です。2度目は東京法務局に最
も近い事務所で実に便利でした。現事務所は徒歩20分程度、今後の場所は電
車と徒歩で40分程度でしょうか。港出張所へは徒歩で30分程度です。贅沢
はいってられませんね。車が必須の地方の司法書士と比べれば都内23区内の
司法書士は恵まれています。
 
 いまは非常勤ですから、会社と別行動をとることも可能でしたが、会社には、
一緒に苦労してきた仲間が大勢おり、この長年の腐れ縁を切りたくありません
し、社内には会計士、税理士、M&Aコンサル、英会話堪能者もおり、会社が
IT系のため、パソコン操作でも私の業務に大いに貢献してもらっています。

 なお、いまでは司法書士の金子が知り合いの会社の非常勤役員にもなったと
思われていますが、逆であり、取締役管理部長であった私が資格を取得し司法
書士業を兼任するようになったものです。会社の母体がM&Aコンサル会社で
したから、兼任も全く問題なしでした。ということで、私の現住所は司法書士
ですが、私の愛する故郷はM&A仲間がいる会社にあります。

 こういう経歴かつ執務姿勢ですから、金子事務所が大手事務所になる可能性
はありません。司法書士歴30年近くなのにいまだに一人事務所です。しかし、
私のように司法書士一本でもなく、さりとて組織内司法書士でもない、二股司
法書士がいてもよいのではないでしょうか。会社の実態が肌で分かり、相乗効
果もあります。


2023.04.07(金)【書き入れ時の余韻時期】(金子登志雄)

 4月3日は多忙でしたが、いまは、その日に登記書類が揃わなかった会社か
らの役員変更登記がぼちぼち入ってくる時期に変わりました。

 やはり3月31日に代表取締役が取締役を辞任し、4月1日から新代表取締
役にする上場会社の子会社は印鑑証明の準備に苦労していました。後任代表者
を決めた後の4月1日辞任にすれば何の問題もないのですが、事業年度末日を
超えた辞任は会社の方針に合わないようです。

 事業年度が12月31日までの会社の定時株主総会が3月にあり、その登記
もいくつかありました。その原本還付で「原本に相違ない」の記載を漏らして
しまい、昨日は補正通知をもらってしまいました。こんなことでわざわざ電車
に乗り登記所に行くのは面倒だなと思っていたら、「原本に相違ない。司法書
  士金子登志雄」と記載したものを送ってくれればよいとのことで助かりました。
契印不要の効果です。

 登記とは無関係ですが、また株式市場が乱高下しはじめました。米国の撤退
で平和になった中東地域の石油国が米国離れをし中露に接近してドル決済を止
めたため、ドルによる米国の世界支配が危うくなってきたためです。同時に、
米国の要求で中国貿易や資源、食料の輸入に支障が生じてきたためでしょう。
食糧危機に備え、コウロギなどの昆虫食の話題までネットに大きく出るように
なりました。

 これもウクライナ戦争の波及効果です。経済のグローバル化とは実は米国の
世界支配のことだと反発してきた反グローバルの国々が団結し、非ドル決済の
多極化を目指してきたため、西側の経済が混乱しはじめたためです。西側G7
対ブリックス(Bブラジル・Rロシア・Iインド・C中国・S南アフリカ)の
経済戦争の開始です。


2023.04.06(木)【灯台もと暗し】(島根・根来川弘充)

 私は、昨年、島根県司法書士会に対して、総会議事録開示請求権を根拠に訴
訟を行いました。(諸々の事情は省略させていただきます。)

 島根県司法書士会の会則(規則・規程も含む)においては、会員に対して明
確にこの議事録開示請求権を認めた規定はありません。

 しかし、私が、仮に、この規定がない規約や定款がある任意団体等で、相談
を受けた場合、間違いなく「当然開示請求できる。」とアドバイスしたことで
しょう。総会で議決権を有する以上、これに付随する権利と考えたためです。

 先月、この訴訟の判決がでました。結果、私の請求は残念ながら認められま
せんでした。

 しかし、私は悲観しておりません。司法の判断で無く、司法書士会のコンプ
ライアンスにより、早急に会則や規則の変更により、解決する問題だと考えて
いるためです。

 他県の司法書士会もおそらく同様だと思います。私の考えに賛同いただける
司法書士には、判決等情報提供させていただきますので、ご遠慮なく、御連絡
くださいませ(since2001matsue.yasugi@gmail.com)。


2023.04.05(水)【働き方】(神奈川・酒井恒雄)

 「自立性、主体性の生かされる働き方、自己決定、自己選択のできる働き方」
といって思い浮かぶのは、どのような働き方でしょうか?

 多くの方は、「起業」が思い浮かんだのではないかと推測します。実際、学
生や会社員の人達と話をしてみると、働き方の選択肢の一つとして、「起業も
ありだよね。」という言葉が当たり前のように出てきます。

 もちろん、それが単なる憧れである場合もありますが、真剣に考えている人
も少なくないようです。会社員の場合、転職か起業か迷っているという話もよ
く聞きます。

 転職といえば、今まではネガティブなイメージが強かったと思いますが、現
在はまったくそのようには捉えられていません。給与面に関しても、以前は転
職をすると収入が減少する傾向にあったようですが、今では転職をした場合の
方が収入が増加する傾向にあるようです。

 テレビをつけますと、転職のサポートをする会社のCMが頻繁に流れてきま
す。それだけサービスの利用者が多い、あるいは見込みがあるということなの
でしょう。そして、起業に対する意識も大きく変化し、カリスマ的な起業家の
イメージ像はどんどん薄れ、自分がその立場になるという場合も含めて、起業
がごく身近なものになっているようです。(つづく)


2023.04.04(火)【『渉外法務書式集』】(東京・鈴木龍介)

 このたび、私が編集に携わりました『渉外法務書式集』の追録版がリーガル
社から発行されました。

 https://www.legal.co.jp/products/shougaihoumu/shougaihoumu_1.html

 本書式集は書籍+CD-ROMで構成されていますが、2017年に初版の
発行後、渉外法務関連の書式集として、司法書士をはじめとする多くの方々の
支持を得て、ご利用いただいて参りました。あらためて御礼申し上げます。

 新型コロナウィルス感染症の拡大を受け、全世界的にグローバルな活動が差
し控えられていましたが、ここに来て、いわゆるWithコロナや円安を背景
とし、再度インバウンド需要が増加する傾向が見られます。

 一方、近時は民法や会社法などの法律改正のほか、デジタル化社会の進展を
受けての登記や外為法に関する実務の見直しが相次いでなされてきました。そ
のようなことから、今般、本書式集の追録版を発行するはこびとなりました。

 追録版の主な内容は、以下のとおりです。
 ・民法(債権法)の改正に伴う売買契約書や重要事項説明書の改訂
 ・定款認証に関する「実質的支配者となるべき者」の申告書の追加
 ・商業登記申請に添付する議事録等への押印規定の見直しへの対応
 ・外為法関連書式の改訂
 
 本書式集が引き続き、渉外法務の担い手である弁護士・司法書士・税理士・
行政書士といった専門家はもとより、外国人等の不動産売買に携わる不動産業
者の方々の業務の一助となれば幸いです。


2023.04.03(月)【原本と押印】(金子登志雄)

 登記の添付書面として必要だから議事録と官報を送ってくださいというと、
20件に1件程度の割合で、議事録や官報の写しが送られてくることがありま
す。これで登記が予定の日に申請することができなかったという例は皆様も何
度か経験なされていることでしょう。

 会社に連絡すると、まさかという対応をされてしまいます。きっと、原本は
会社が保管し門外不出のものであり、登記などは内容が分かればよいので、そ
の写しでよいはずだと思われているのでしょう。

 この意味で、株主総会議事録など押印が任意の書面は助かります。押印なし
のものを添付ファイルで送ってもらい、会社の承諾を得て私が印刷すれば原本
になるからです。

 私は、この押印なしの原本もコピーし原本還付していますが、皆様はどうさ
れていますか。押印書類だけ原本還付し、押印不要書類は原本提出だとするの
も当然に可能ですが、顧客に添付書面一式を返却するためには私のようにする
しかありません。

 上場会社やその子会社では取締役会議事録がへたをすると1センチ以上の厚
さになります。議案数が多いからです。そこで、必要な議案だけの抜粋議事録
を作成し原本にすることもありますが、各役員の押印があれば、登記所も何も
いいません。抄本という文字が明記されていても同じですが、抄本とか謄本と
いうのは「原本ではありません」と白状しているようなものですから、これは
顧客に避けるようにお願いしています。

 押印についても朱肉ではなく赤のスタンプを利用したもの、中にはシャチハ
タに間違いないと思えるものがありますが、これも、かつては正式な押印では
ないとされていましたが、最近はこだわらないようです。朱肉を使えば押印と
いうのも、そんな決まりはないでしょうから、これも自然な流れです。

 官報については、原本は組織再編の相手方が持っているという理由で、原本
の入手が予定した日に困難なこともありましたが、いまは電子官報で済むよう
になったので、この心配がなくなりました。登記実務も年々変化しています。

(金曜日の追加)
 金曜日に台湾世論調査を紹介しましたが、この3月にまた行われたようです。
台湾が米国の干渉を迷惑がっているのは明白でした。
  https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20230401-00343774
 ついですが、習近平がロシア訪問時にゼレンスキーと和平につきビデオ会議
するはずだったのに、その報道がないなと思っていましたら、岸田総理のウク
ライナ訪問でご破算でした。世界の日本をみる目も厳しいでしょう。
  https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20230330-00343432


2023.03.31(金)【書き入れ時準備】(金子登志雄)

 いよいよ3月決算会社の期首である4月1日が明日に迫りました。商業登記
の書き入れ時です。

 私も4月1日付け吸収合併、吸収分割、恒例の人事異動(3月31日付辞任
と4月1日付就任)の登記依頼を10件以上も抱えており、4月3日の月曜日
に申請します。そのため、平素は事務所にも行かないことも多いのに(身内が
留守番をしてくれているので仕事に支障はありません)、ここ数日は真面目に
出勤し、登記書類のチェックや原本還付の準備をしています。

 合併承認議事録ですが、私なら「別紙〇〇会社との合併契約を承認する」と
しか記載しませんが(添付書面の議事録は1枚だけ)、上場会社の子会社では、
登記のことなど考えませんから「参考書類のとおり〇〇会社との合併契約を承
認する」などと記載するため、参考書類、それも合併契約内容まで添付しない
と議事録として完成しないため、原本還付のためのコピーが面倒でなりません。

 中には私の負担を軽減するため会社でコピーして写しを一緒に持参してくだ
さるお客様もあります。ありがたいことです。ただ、先日受領したのはカラー
印刷の写しでした。高額なコピー機なのか、あまりに鮮明で、どちらが原本か
写しか区別しにくくて取扱い注意でした(印鑑証明書の場合はコピーという表
示が出るので安心です)。

 4月1日は土曜日のため、月曜の3日に一斉に申請しますが、ここでコロナ
感染ダウンでは元も子もありませんので、気をつけます(「元も子も」とは、
元金も利子もという意味だそうです)。

(土日を前に別の話題)
 ネットに、日本人は野球などスポーツには熱心なのに、政治や経済のことに
なると、とたんに無関心になる、これでは日本は落ちぶれるばかりだと嘆く投
稿がありました。私も反省しなければなりません。そこで、日本人の多くが認
識を改める必要があることを書いてみようと思いました。

 台湾有事問題に関する台湾の世論結果を遠藤誉氏が示していました。
  https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20230120-00333655

 この中の「Q10」を日本に置き換えると、「アメリカを信頼し、親米になっ
てこそ日本を防衛できると言う人がいますが、あなたはこの主張に賛成します
か」ですが、台湾では62%が反対でした。報道が偏っている日本では真逆で
しょう。

 ご近所の西側陣営である台湾と韓国ですが、一人当たりの実質GDPで台湾
は世界14位、韓国30位、日本35位、報道の自由度では台湾38位、韓国
43位、日本71位です(ネットでご確認ください)。意外に思うでしょうが、
これが現実であり、日本の急速な劣化は事実です。


2023.03.30(木)【相続承継のない会社における相続人の加入】
                          
(仙台・立花宏)

 社員がABCの3名、出資額は各100、合計300で、すべて資本金に計
上されています。この合同会社において、Cに相続が発生しました。なお、こ
の合同会社の定款には、社員が死亡した場合に、相続人がその持分を承継する
旨の定め(会社法608条1項)はありません。Cの唯一の相続人Dは、持分
を引き継ぎ、社員として加入したい意向です。AとBもこれに同意しています。
 さて、Dが社員となるためには、どのような手続が必要でしょうか。

 定款に相続承継の規定がないため、相続による加入はできません。そのため、
原則どおり、加入契約と、Cを社員に加える定款変更が必要となります。問題
は出資をどうするかです。Cの持分の払戻しを行い、そこから、あらためて、
100を出資する必要があるでしょうか。Dは、Cの持分を相続承継して社員
となったわけではないのですから、原則的に言えばそうなるのかもしれません。

 しかし、前回(令和5年3月17日)のコラムに記載したとおり、社員の退
社は、会社の一部解散であり、個人的には、Cの持分は、退社したからといっ
て、すぐに消滅するものではないと考えています。つまり、Cの持分は、実際
に払戻しが行われるまでは、清算の目的の範囲で存続するのだとイメージして
います。前記のようなケースでは、払戻しと現実の出資の履行が必要と考える
のではなく、清算中の持分の相続人の意思と他の社員の同意により、持分の継
続をすることができるような解釈ができないものかと考えていました。
 
 そのことを金子先生に相談したところ、それを可能としている判例(大判大
6・4・30)や文献(青山修『持分会社の登記実務』(民事法研究会))が
あることを教えていただきました。ちなみに、判例の大雑把な要旨は「被相続
人の持分は消滅し、相続人はその持分払戻請求権を出資として加入し、これに
より新たなる持分を取得する」というものです(注)。

 相続承継の規定によるものではないため、加入契約と定款変更のための社員
の同意が必要であり、社員となる日は相続発生日ではなく、それらの手続が完
了した日ということになります。
 
 ただ、疑問点が2つ出てきました。
 1つは、添付書面は何が必要かという点です。まず、新たな出資による加入
の場合と同様、加入契約と定款変更を証する書面(総社員の同意書)は必要と
なります。そして、前記の加入契約の内容として、持分払戻請求権を出資とす
る旨の内容が必要なのではないかと思います。また、持分払戻請求権を承継し
たことを証するために相続証明書が必要になるのではないかと思います。ただ、
加入契約から持分払戻請求権を出資したことが分かれば、相続証明書は不要と
いう可能性もあるかもしれません。

 もう1つは、計算の部分です。たとえば、被相続人の退社時の持分が、資本
金100、利益剰余金100の合計200だったとします。これをそのまま引
き継ぐことができるのかどうかです。判例のいう「新たなる出資」という言葉
からすると、出資払戻請求権を現物出資したと考え、200を資本金と資本剰
余金(出資勘定)に振り分けることになるようにも思えます。

 しかし、当事者の意思としては、被相続人の資本金や利益剰余金をそのまま
引き継ぐというものでしょうし、加入契約の内容として、当事者間でそのよう
な合意がなされたのであれば、あらたな出資ではなく、一部解散した会社を継
続したと考え、資本金、資本剰余金、利益剰余金の内訳は変わらないと考える
こともできるのではないかと考えました。

 以上はあくまでも私見であり、実務でこのような案件を受任した場合には、
法務局と相談しながら手続を進めた方がよいのだろうと思いました。

 注)民法の組合に関するものとして、「死亡組合員の相続人は、その持分払
戻請求権を相続するから、これを一括して-すなわち具体的に持分払戻手続を
とらずに-出資として、残存組合員と加入契約を締結することはさしつかえな
い。そして、その場合には、脱退と加入を生ずるが、組合の同一性は維持され
る。従って、相続人が組合員の持分を承継するのと結果においてはほとんど差
はない。」とするものがあります(我妻榮『債権各論中巻二(民法講義V8)』
(岩波書店)830頁)。


2023.03.29(水)【キャリアとは何か?再び】(神奈川・酒井恒雄)

 キャリアの定義には様々なものがあると前々回に書きましたが、学者や研究
者ごとに定義が違うといっても過言ではありません。

 ちなみに、日本では次のような定義が公表されています。
 ・「経歴・経験・発展さらには、関連した職務の連鎖等と表現され、時間的
  持続性ないし継続性を持った概念」(厚生労働省職業能力開発局・キャリ
  ア形成を支援する労働市場政策研究会の報告書)
 ・「個々人が生涯にわたって遂行するさまざまな立場や役割の連鎖およびそ
  の過程における自己と働くこととの関係付けや価値付けの累積」(文部科
  学省・キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議報告書)

 またもや乱暴な意訳をしてしまいますと、「生きることと仕事って密接に関
係しているよね。」「働き方は生き方であるともいえるよね。」という感じで
しょうか。

 日本でキャリアという言葉がポピュラーになったのは1990年頃からだっ
たようですが、日常の会話に溶け込むほど身近になったのは、ここ数年のこと
ではないかと思います。

 そして今、日本で使われているキャリアという言葉には、「自立性、主体性
の生かされる働き方、自己決定、自己選択のできる働き方」という意味あいが
強いようです。キャリアについて考えたいという場合には、このような意味で
キャリアという言葉が会話の中で使用されることが多いかと思います。
(つづく)


2023.03.28(火)【役員任期の変遷~その2~】(東京・鈴木龍介)

 祝日の関係もあり、間が空いてしまいましたが、株式会社の役員任期の変遷
の続きで、監査役と会計監査人を取り上げます。

 監査役の任期ですが、いわゆる旧商法では2年以内とされていたところ(旧
商法191条)、明治32年に制定された商法では1年の確定任期に短縮されました
が(同法180条)、明治44年の商法改正で再び2年以内とされたとともに(同改
正法180条)、取締役と同様に、いわゆる確定型の任期を原則としつつも、定款
の定めにより最終の決算期に関する定時株主総会の終結まで伸長することが許
容されました(同改正法189条/166条但書準用)。

 昭和25年の商法改正において、取締役の任期が3年以内から2年以内に短縮
されたことを踏まえ、監査役の任期も1年以内に短縮されました(同改正法273
条)。なお、引き続き、定款の定めによる伸長型の任期は維持されました(同
改正法280条/256条3項準用)。

 昭和49年の商法改正において、監査役の任期が1年から2年に伸長されると
ともに、いわゆる伸長型の任期に固定され、定款の定めによる短縮も伸長も認
めないこととされました(同改正法273条1項)。なお、設立後最初の監査役の
任期は、取締役と同様、1年とする特則が設けられました(昭和49年改正法
273条2項)。

 その後の平成5年の商法改正では3年に、さらに平成13年の商法改正では4
年に伸長されました。

 会社法においては、4年の伸長型の任期が維持されましたが(会社法336条1
項)、設立後最初の監査役の任期の特則は廃止されました。一方、非公開会社
に関しては、取締役と同様に、定款の定めにより10年まで任期を伸長すること
ができる特則が設けられ(会社法336条2項)、現在に至ります。

 昭和49年の商法改正に際して制定された「株式会社の監査等に関する商法の
特例に関する法律」(監査特例法)において会計監査人による監査が導入され
ましたが、その任期は適宜、監査契約で定めれば足り、格別の規定は設けられ
ませんでした。

 昭和56年の監査特例法の改正では、会計監査人の選任機関を株主総会とする
とともに、その任期を就任後1年以内の最終の決算期に関する定時総会の終結
の時までとしたうえで、当該定時総会で別段の決議がなされなかったときには
再任されたものとみなすこととされた(同改正法5条の2第1項・2項)。

 会社法では、他の役員と同様、任期の起算時を就任から選任に修正した点を
除き、従来の規定を踏襲し(会社法338条1項・2項)、現在に至ります。


2023.03.27(月)【台湾有事問題に思う】(金子登志雄)

 急に世の中がきな臭くなってまいりましたので、今回は表題に関する私の見
方、考え方にしました。残念ながら、同調圧力が強い日本では少数意見であり、
しょせん、力なき者の遠吠えですが、こういう視点もあるのかという意味では、
無関係な業務にも少しは役立つと思います。

 日本を含め自由主義国では、世論形勢に広告宣伝会社が関与し、マスコミ報
道でも報道機関やスポンサーあるいは時の権力の意向にそってコメンテーター
がシナリオどおりに語るだけのため、真実の報道ではなく広報報道になってお
り、それを信じた世論が一方に偏りやすいため、危機感を感じています。

 さて、岸田総理は池田・大平首相の流れを組む宏池会(ハト派)だと思って
いたら、ウクライナに「必勝しゃもじ」を持参し、累計約1兆円の支援を行い、
「ウクライナは明日の東アジア」と台湾有事を煽りました。

 台湾有事をバイデンは「台湾破壊計画」と発言したようです。ホワイトハウ
スは否定していますが、彼のニックネームは「失言(gaffe)マシーン」ですか
ら、思わず本音を漏らしてしまったのでしょう。

 「台湾破壊計画」とは、ウクライナと同様に米国が火を付け中国に武力侵攻
させ、大々的に反中国キャンペーンを行い中国潰しをする計画のことです。こ
ういう米国の手法は昔からなので(ベトナム戦争の契機のトンキン湾事件は米
国の陰謀で、イラク戦争の大量破壊兵器保有は虚偽だったなど)、ウクライナ
でも、世界世論の多数が「性懲りもなく、また米国がやらかしたか」と、ロシ
アも悪いが米国はもっと悪いと冷ややかにみているわけです。

 NATOは1ミリも東に拡大しないというゴルバチョフとの約束も、台湾は
中国の一部と認めたニクソンとの約束も反故にし、世界秩序の現状を決めるの
は米国だという傲慢さは相変わらずです(念のため、米国も日本も台湾との国
交はありません。台湾有事とは台湾独立という中国の内政問題です)。

 台湾有事(独立戦争)の際は、日本が内政干渉の前線基地になり、米国は兵
器を提供するだけです。この点、台湾の世論は、よく分かっているようで、中
国寄りの国民党(野党)の支持率が米国寄りの民進党(与党)を上回ってしま
いました。国民党は米国の煽りに感謝していることでしょう。また、民進党が
2016年に政権をとって以来、中国敵視策の加担を避けて国交を断絶した国
が9か国(22か国中)もあります(最近は中米ホンジュラス)。

 そもそも、当事者である台湾の世論が、米国に余計なお世話をしてくれるな、
迷惑だというもので、現状維持を望み、中国との紛争を望んでいません。中国
との経済交流や人事交流も活発で、台湾経済にとって中国はよい市場になって
います。なぜ、そっとしておかずに、ペロシ台湾訪問などで、紛争(独立)を
煽るのでしょうか。答えは米国の覇権維持であり、急成長中の中国封じ込めで
す。まるで、副社長の急成長を陰謀で妨害する社長のようなものです。

 中国経済の発展は日本にも有益ですし、台湾世論を踏まえて岸田総理には、
東アジアは東アジアに任せてくれと米国に要求すればよいのに、米国の覇権を
守る戦争に協力してよいことがあるのでしょうか。西側でも英米、ポーランド、
日本だけがウクライナ支援に積極的であり、他の欧州各国はそれほど乗り気で
もないこと(ウクライナ問題のもう1つの側面は、ドイツの急成長が米国に目
障りのため、ドイツ潰しも兼ねているといわれています)や、米国共和党も消
極的であり、バイデンは次の選挙で敗北見込みであることも考慮すべきです。

 もっとも、ごく少数ながら別の見方もあります。中国は安倍総理を毛嫌いし
ていましたが岸田総理には好意的です。ロシアとの取引もほそぼそと続いてい
ますから、表向きは米国に寄り添い、党内の右派勢力で最大派閥の安倍派から
妨害されないようにしており(国葬も同じ)、安倍派の力が弱まるまで右翼的
姿勢を意識的に採用し、じっと時を待っているという見方です。そうだとした
ら、岸田総理も曲者です。

 中曽根、安倍内閣が長期政権になれたのは米国に従属したためで、国益を重
視し独自の外交をした田中、鳩山内閣、総理直前の小澤氏がマスコミと検察を
利用されて大キャンペーンで潰されたので、おそらく岸田総理も前者を選んだ
のでしょうけど、日本の官僚のお家芸である面従腹背は岸田総理も得意そうで
すから、ぜひ、それで反戦平和の国是を守ってもらいたいものです。また、防
衛力増強なら日本のためにし、使い物にならない米国兵器を高額で買わされる
ためでないことを祈るしかありません。

 最後に、中国のことは、情報収集力と分析力に長けた次の遠藤誉氏のコメン
トが参考になります。中国要人にも電話取材するほど中国通であり、マスコミ
報道やコメンテーターがいかに無知でいい加減かが分かります。
  https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare


2023.03.24(金)【2021年度末確定決算額とは】(金子登志雄)

 3月決算会社を前提に「2021年度末確定決算額」というと、いつの決算
だと思いますか。

 先日、ある上場会社の最新の定時株主総会招集通知をみようと東京証券取引
所のサイトを開いたら、該当会社の最後の招集通知名が「2021年度定時株
主総会招集ご通知」とあったので、「何だ、昨年度の招集通知が開示漏れじゃ
ないか、困った会社だ」と一瞬思ってしまいましたが、そんな会社でないので、
よくよく確認したら、2022年6月開催の定時株主総会招集通知でした。

 紛らわしいことに「2021年度」定時株主総会とは、「2021年4月か
ら2022年3月末までの事業年度」における定時株主総会のことでした。ネ
ット検索したら、三菱商事や商船三井なども、この方式でした。

 したがって、「2021年度末」確定決算額というのは「2022年3月期」
の確定決算額のことです。根拠は「事業年度」を表す「年度」ですが、別の時
に、私は、2021年度「未確定決算額」と読んでしまい、話が通じないこと
がありました。老眼のせいで、「末」を「未」と読んでしまったわけです。

 昔は、三省堂の模範六法を愛用していましたが、いまでは老眼で全く読めま
せん。あんな小さい字が読めていたのかと不思議な気がします。通常は、この
後に「歳をとりたくないものだ」が続きますが、経験による判断力は増してき
ていますから、悪いことばかりではありません。


2023.03.23(木)【払込期日と払込期間】(金子登志雄)

 WBC優勝は実に誇らしいニュースでした。もう1つのネットの大きな話題
は、岸田総理の電撃的なウクライナ訪問でした。

 いま世界はウクライナとも友好関係にある中国の和平案の行方に注目してい
ます。和平が成立したら米国の面子が潰れるので、先手を打って戦争を終結さ
せるかもしれないとの観測もあります。こんな微妙な時期に、日本が一方に肩
入れし和平に水を差すような訪問は実にタイミングが悪く、世界の目にどう映
るかと私は気掛かりですが、岸田さんは気にならなかったのでしょうか。
  
  (ご参考:英国ケンブリッジ大学の昨年の世界世論調査)
   https://sputniknews.jp/20221102/13607569.html

 さて、会社法第915条によると、変更登記事項が生じたときは、2週間以
内に申請しなければならないが、払込期間を定めた募集株式の発行では期間の
末日から2週間以内にすれば足りるとあります。

 では、1株の払込金額11円(資本組入れ額6円)で払込期間を10日まで
とする募集株式の発行で、最初の6日に1件1株、7日に3件3株、8日に2
件2株の合計6件の払込みがあった際に、これを一括して申請する際の資本金
計上額の最低額は、どう計算すべきでしょうか。

 ① 行使の都度、変更登記事項が生じたのだから、資本金計上額は、6件分
の合計36円だ。
 ② 1日単位で計算すべきであり、資本金計上額は6日分6円、7日分17
円(33円÷2)、8日分11円(22円÷2)だから、合計34円だ。
 ③ 払込期間合計で1つの募集行為があったのだから、一括して計算してよ
く合計66円の払込みで資本金計上額は33円だ。

 現実には①はなく、②か③かで迷う方が多いようですが、募集株式の発行で
払込期日を定めた意味は、その期日に何度も払込みがなされても、一括するで
しょうから、同じく払込期間を定めた際も期間全部を払込期日1日と同視して
よいということだと考えます。よって③説に賛成ですが、②で計算しても登記
は受理されているようです。


2023.03.22(水)【無駄な出会いはない】(神奈川・酒井恒雄)

 私が仲良くさせて頂いている起業家支援拠点で、飲食可能なスペースを利用
して、支援者たる専門家が「飲み屋のママ」になるという企画があります。

 「ママ」といっても、女装するわけではなく、一応中心的な存在として交流
の場を仕切るような役目をするのですが、先日、私がママの担当になりました。

 参加者に自己紹介をしてもらうにあたり、コロナ禍で会合の機会もなかった
ことから、改めて2022年がどうたったか話すということになりました。口
火を切って、私が話をすることになりましたが、参加者は起業している人か、
起業を目指している人達ですので、仕事に関することを中心に振り返ってみま
した。

 そういった視点で振り返ってみますと、昨年は「捲いた種がついに花を咲か
せ始めた年」でした。昨年は開業(登録)23年目でした。司法書士の仕事は
様々な分野がありますが、開業10年目頃に商業登記分野に特化することを決
めました。

 そう決めて仕事の軸足を商業登記に移していく過程で売り上げが激減してし
まい、再びオールマイティーな業務に戻そうかと悩んだこともありました。そ
んな中で出会った様々な人達がいて、そのときは特に具体的な仕事関係の交流
には発展しなかったものの、今になってその出会いが仕事に繋がり、そして発
展していることを改めて認識しました。

 「無駄な出会いはひとつもない。」「無駄な経験などひとつもない。」とい
う言葉をいろいろなところで耳にしますが、「本当にそうだな・・・。」と、
しみじみ思った次第です。

 話をしているうちに何だか嬉しくなってしまい、以降、ママという立場をす
っかり忘れて、ただの酔っ払いオヤジになって交流の場に埋もれていきました
・・・。


2023.03.20(月)【どうする日本】(金子登志雄)

 先般、2つの国際的大ニュースがありました。親米だったサウジアラビアが
敵対するイランと中国の斡旋で国交正常化に合意したことと、米国で大きな銀
行破たんが生じたことです。証券市場も乱高下中です。

 世界各地で紛争を煽り、他国が力を付けないようにする米国流の統治術が限
界に達し、経済的にもドル一極支配が崩れ始めてきたということで、軍事中心
の米国の凋落と経済中心の中国の台頭の象徴的ニュースだと感じました。

 ウクライナ問題につき、西側では意図的に「善の小国と悪の大国」の図式で
報道されていますが、西側以外では、ロシア潰しを狙う米国主導のNATOと
ロシアとの代理戦争で、「ロシアも悪いが米国はもっと悪い」という見方のほ
うが多い印象です。東西問題というより南北問題に近く、驕る北の都の平家に
対し、南の田舎の源氏勢力(資源国)が団結し対抗してきたかのようです。

 ベトナムでもアフガンでも中東でも、皮肉なことに米国が撤退すると平和に
なり、その空白に中露の勢力が浸透してしまいますし、ロシアへの経済制裁も
結果的にドル支配を弱体化させていますから、英米流の他国の価値観を認めず
経済封鎖で庶民の生活にも影響させ、国内に混乱や反乱を起こさせるハイブリ
ッド戦略は成功しているとは思えません。

 古くはキューバのカストロも腐敗政府を革命で倒しただけで共産主義者でも
なく反米でもありませんでした。プーチンも当初はゴルバチョフと同じく西側
に親和的でした。開放時代の中国も同じです。ところが、米国がそれを受け入
れず、結果的に反米に追いやったようなものでした。独善的な米国外交はいま
だに変わりません。もっと相手にリスペクトを持って上手に付き合えばよいの
にと思うのですが、自分達だけが正義と思うその傲慢さはアングロサクソン民
族の特徴なのか、一神教のキリスト教の十字軍主義なのかと考えていますが、
まだ分かりません。

 西側が誇る選挙民主主義は偉大な制度であることは誰もが認めるところです
が、現実にはカネの力で報道を支配し情報操作を行える勢力が常に勝者になる
仕組みであるため、決して欠点のない制度とはいえません。

 また、民主国家では選挙で勝つことが支配の根源ですから、アフガン撤退が
未熟過ぎて支持率が急落したバイデンが起死回生のため中間選挙対策でウクラ
イナ紛争を煽ったように、選挙対策のために戦争が起こされるという負の側面
が選挙制度にはあります。
 
 中東の安定の次はウクライナですが、和平が成ろうとすると英米の高官がキ
ーウを訪問し和平に反対し、露軍が撤退した後の死者の真偽不明の放置写真が
世界中に流されたり、露独をつなぐ天然ガスのパイプラインが爆破されたりし
てきましたが、今回もウクライナとも友好的な中国首脳がモスクワに飛びウク
ライナ和平につき協議しようとしているタイミングを見計らったかのように、
国際刑事裁判所がプーチンに逮捕状を出す決定をするなど、国際情勢は我々の
想像を越える謀略や陰謀が渦巻いているとしか思えません。

 魑魅魍魎が跋扈する国際情勢ですが、岸田総理には、日本は驕らない平家で
ある点を強調し、日本国のかじ取りを誤らないよう願うしかありません。

 最後に、実に面白いツイッターがありましたので、ご紹介します、字幕だけ
お読みください。日本もこれをいえる独立国になれるのはいつでしょうか。
  https://twitter.com/sohbunshu/status/1635565085627412480


2023.03.17(金)【社員退社後の持分】(仙台・立花宏)

 社員がABC3名、出資額は各100、持分割合も各3分の1の合同会社で
あることを前提とします。この合同会社からCが退社し、持分の払戻しの請求
をしました。払戻額は100(会社財産の時価300)とします。出資額は全
額、資本金に計上されていたため、これから、資本金の額の減少手続を行いま
す。

 さて、この時点の持分はどうなっているでしょうか。

 これに関連する合名会社の裁判例として、昭和40年9月28日東京高裁判
決があります。除名された社員に対する持分の払戻しに関するものですが、そ
の理由中で、「合名会社のある社員が退社し、会社が他の社員を構成員として
存続するとき、合有の性質を有する会社財産についての残存社員の持分は当然
に拡張する。(略)(従って、退社の場合の退社員の持分が積極であるときに
行われることのあるべき払戻は、財産の分割の性質に出るものではない。)。」
としています。
 
 つまり、前記の例でいえば、残存社員であるAとBの持分は、各3分の1か
ら各2分の1に拡張し、持分の価額は各150になるということです。ただ、
これだと、CからAとBに各50の財産権が移転してしまうので、その清算が
必要で、これが持分の払戻しだということなのだろうと思います。持分の払戻
しの請求は、解散後もCの持分100が残っていて、Cが共有物の分割請求を
すると考えるのではないということになります。

 これについて、私は少し違った見方をしています。社員の退社は、会社の一
部解散であり、持分の払戻しは、その残余財産の分配のように考えることもで
きるのではないかと思っています。

 そのため、退社したと同時にAとBの持分が2分の1に拡張するのではなく、
会社が全部解散した場合と同様に、退社前にCが保有していた持分は、退社
(一部解散)後も、持分の払戻しが行われるまで、清算の目的の範囲で存続す
るというイメージすることもできるのではないかと思っています。 

 会計処理もそのような流れになっていると思います。社員が退社しても、貸
借対照表の数字はその時点では動きません。これは、退社社員Cに計上されて
いた、たとえば資本金100が、AとBに50ずつ移転したというわけではあ
りません(注)。

 Cへの払戻しが行われると、Cに計上されていた資本金(と資本剰余金)は
0となり、Cに計上されていた資本金、資本剰余金、利益剰余金の合計額と、
払戻額に差額がある場合は、会社の(つまり、他の社員の)利益剰余金で調整
されることになります。
 
 念のため、私は、持分の払戻しを財産(共有物)の分割請求だと考えている
わけではありません。あくまでも、持分の清算手続だと考えています。Cの持
分はすぐに消滅するのではなく、清算の目的の範囲で、手続が終わるまで存続
すると考えているだけです。

 仮に、財産(共有物)の分割だと考えるのだとすると、現物分割(会社分割)
が原則となってしまいそうです。それを会社法で、特則を設け、現物分割では
なく、代償分割(持分の払戻し)をすることにしたと考えることになるのでは
ないでしょうか。

 いろいろ考えると難しいものです。

注)Cが持分の払戻請求権を放棄するとそうなると思います(民法255条)。


2023.03.16(木)【「ひな形+リスト」処理の適用範囲】(金子登志雄)

 引き続き、2月21日の会社法講義レジュメからの題材です。

 さて、IT系の会社が従業員数十人にストックオプションとして新株予約権
を交付したが、従業員各自と締結した新株予約権割当契約は、他の権利者とと
もに総数を引き受けるという各人別の総数引受契約で、しかもIT系の会社ら
しく全部が電子契約でした。この場合に、先例に従い、この契約内容を紙に落
としたものを契約見本とし、割当先リストを付けて、代表者が証明したもので
も登記の添付書面として使えるでしょうか。

 論点1は、電子契約なのに、紙のひな形でも、先例が認めるひな型処理がで
きるかです。これでは電子署名の有効性がチェックできないからと、がんと否
定した大手法務局が存在しました。

 セミナーでの私の回答は、ひな形とは実物そのものではないこと、もしこれ
を否定したらEメールによる債権者保護手続もひな形処理が否定され不都合で
あること、株主総会の書面決議(会社法319条)では同意書が電磁的記録に
もかかわらず議事録は紙でよいことなどとのバランスから、ひな形処理は肯定
されるべきだというもので、念のため、東京法務局の相談コーナーに問い合わ
せたところ、肯定説でした。普通に考えれば肯定ですよね。
(『会社法実務〔全訂第2版〕』Q3-1-10に所蔵)。

 論点2は、元法務省商事課勤務の櫻庭氏の論文に「総数引受契約にはひな形
処理は認められない」とありますが、この事例でも否定でしょうか。
 
 私の回答は、櫻庭論文以前は肯定されていたし、櫻庭論文以降も固定する最
先端の都内登記所も複数あり、否定する対応は櫻庭論文を誤読したものと思わ
れるというものでした。現在は令和4年3月28日付法務省民商第122号が
発出され、全国的に肯定されています。
(『会社法実務〔全訂第2版〕』Q3-1-11に所蔵)。

 以上、いずれも私の実体験です。私に対して上から目線で「できないのは当
然だ」とおしゃっていた登記所職員様は、いまどうしているのでしょうか。忘
れられない体験でした。


2023.03.15(水)【キャリアの定義】(神奈川・酒井恒雄)

 「キャリア」の定義には、様々なものがあります。

 もともと、キャリアという概念は日本には無かったのですが、諸外国におい
てもそれは同じだったようです。アメリカでは、人間の働くという行動を概念
化し、測定しようとした研究は1950年代に始まりました。そして、その複
雑な人間の職業行動を統合して表現する概念として「キャリア」という言葉が
用いられるようになりました。

 単なる職業からキャリアという考え方への転換が始まるわけですが、その推
進者の1人がドナルド・E・スーパーという人でした。そのスーパー氏は、次
のようにキャリアを定義しています。

 「①人生を構成する一連の出来事。②自己発達の全体の中で、労働への個人
の関与として表現される職業と、人生の他の役割の連鎖。③青年期から引退期
にいたる報酬、無報酬の一連の地位。④それには学生、雇用者、年金生活者な
どの役割や、副業、家族、市民の役割も含まれる。」

 ちょっと難解な感じがしますので、私なりに乱暴な意訳をしてしまえば、
「人って生きていくには働かなきゃいけないけど、仕事をするにもやりがいが
なければ続かないし、そもそも働くってことは仕事だけしていればいいという
ことではないし、仕事をしていないときも生活しているんだから何かしらの社
会的な役割もあるし、結局、働くっていうことは相当深い意味があるよね。」
ということになるかと思います。

 皆さんなら、どのように説明しますか?(つづく)


2023.03.14(火)【熊本県司法書士会 研修】(東京・鈴木龍介)

 先週の3月11日(土)、熊本県司法書士会(熊本会)にお招きいただき、研
修の講師を務めて参りました。熊本会で研修講師としてお話しさせていただく
のは2007年以来、2度目となります(当時は会社法施行直後ということも
あり株式会社の増資・減資についてのお話をさせていただきました)。

 今回のテーマは「司法書士のための事業承継と中小M&A」というものでし
たが、熊本県県立劇場大会議室での参集とオンラインによるハイブリッド形式
で開催されました。会場には50名を超える先生方にご参加いただきました。

 具体的には、以下の2部構成で、あっという間の2時間でした(いつもなが
ら、話している方はですが・・・)。

 パート1:前提知識の整理~司法書士のための事業承継と中小M&A
 パート2:ケーススタディ~事業承継型M&A(株式譲渡スキーム)

 研修終了後、熊本会の執行部のみなさまに懇親会を催していただき、夜の熊
本も堪能いたしました。

 翌朝はすっきり目覚めることができ、老舗の中華料理店で、熊本名物の太平
燕(タイピーエン)を食し、修復を終えた熊本城をダッシュで見学しまして、
無事帰京いたしました。

 個人的には充実の二日間でしたが、本研修の運営に携われた先生方ならびに
参加された先生方にはこの場を借りて厚く御礼申し上げます。


2023.03.13(月)【4月1日代表取締役交代のテクニック】(金子登志雄)

 3月決算の上場会社の子会社から、親会社の指示による4月1日付人事異動
の相談が舞い込み始めました。

 例えば、現状は取締役ABC(代表取締役A)において、Aを3月31日付
で取締役についても辞任させ、後任として取締役Dを3月27日の臨時株主総
会で4月1日付で取締役に選任するが、同日付でDを代表取締役に選定したい
という恒例の人事異動です。

 例年は生真面目に4月1日に取締役会を開催しDを代表取締役に選定し、選
定議事録に出席役員の個人実印を押して対応する会社が多いのですが、本年の
4月1日は土曜日です。

 さて、「どうする家康」の場面ですが、例年は金子方式だと定款変更が必要
だからとして採用が躊躇されていましたが、今年は採用してくれる会社が増え
ると期待しています。

 株主1名ですから、臨時株主総会は書面決議にし、議案を次のようにします。
-----------------------------------------------------------------------
 第1号議案 臨時的措置として定款一部変更の件
 2023年4月1日をもって代表取締役を交代させるにあたり、同日は土曜
日であり、また、このコロナ禍において可能な限り会合を避けるため、臨時的
措置として、次のとおり定款に附則を定める。
 附則 1.2023年4月1日からの代表取締役は会社法第295条第2項
     に基づき、株主総会で選定することができる。
    2.本附則は前項の登記完了後に自動的に削除される。
 第2号議案 取締役1名選任の件
  2023年4月1日付で、Dを取締役として選任する。
 第3号議案 代表取締役選定の件
  前各号議案の可決及び前号議案の就任承諾があることを条件に、2023
 年4月1日付で、Dを代表取締役に選定する。
-----------------------------------------------------------------------

 議題に「臨時的措置として」とか、議案に「土曜日だ」とか「コロナ禍だか
ら」などは理由であって記載不要ですが、親会社で定款変更は稟議事項だと反
対する人がいるかもしれませんので、その対策です(私は議事録案は全て個別
対応にし、市販の書式どおりにしません。この創意工夫こそ商業登記事案の面
白さです)。

 以上については、拙著『会社法実務〔全訂第2版〕』Q4-10-3及び4、
4-16-14、1-1-9その他に記載していますので、ご確認ください。


2023.03.10(金)【代表権付与か就任か】(金子登志雄)

 会社法第349条第1項に「取締役は、株式会社を代表する。ただし、他に
代表取締役その他株式会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない」と
あります。

 では、当初は他に代表権を有する取締役を定めていたが、途中から、そうで
なくなった場合はどうなるのでしょうか。例えば、取締役がAB2名、代表取
締役Aとある会社でAが死亡や取締役を辞任したときです。

 通常は、いったん選定代表制を定めた限り、本件のBが自動的に代表者にな
ることはないと考えられています。代表者の器でないから、Bを代表者にして
いないのに、偶然の事情で代表者にするのは会社の意思に反するからです。と
いうことであれば、「他に代表取締役を定めた場合」とは現実に他に代表取締
役が存在する場合に限らず、選定代表制を採用した場合ということになります。

 では、定款に「①取締役が2名以上いるときは、代表取締役を1名置き、取
締役の互選によって定める。/②取締役1名のときは、当該取締役を代表取締
役とする」と定めていた場合はどうでしょうか。

 松井ハンドブックは、この第2項を「取締役1名のときは、会社法349条
1項本文を適用する」あるいは第1項の選定代表制が無理になったときは原則
どおりになると読み、定款の定めで選定されない代表取締役を認めたものとし
て「代表権付与」だとします。

 私は、この第2項を「取締役1名のときは、その者を本定款で代表取締役と
して定める」という定款での選定規定だと解釈し、登記原因は「就任」でよい
と主張しています(取締役1名のときに代表権付与を持ち出すことにも違和感
を持っています)。

 つまり、松井見解は、取締役が複数のときは選定代表制で単数のときは法定
代表制という二者択一を定款で定めているとみたのに対し、私は取締役が複数
でも単数でも選定代表制を定めたのであり、複数のときは互選代表制、単数の
ときは定款選定制だとみたわけです。ちょうど、取締役が1名になることを停
止条件にした補欠代表取締役みたいなものです。

 両説とも成り立ちますが、定款の定めが「取締役は代表取締役とする。ただ
し、取締役が2名以上いるときは、代表取締役を1名置き、取締役の互選によ
って定める」という内容であれば、法定代表制を原則として採用したわけです
から、代表権付与も理解することができますが、前記の定款は選定代表制を原
則にしているため、原則は互選代表制、互選の不可能を条件に定款選定制を定
めているとみるのが自然ではないでしょうか。

 登記実務上は就任で申請するとひと悶着はあっても受理されていると聞いて
いますが、中には代表権付与にしないと補正にする頑固な登記所もあるようで
す。しかし、松井ハンドブックは先例ではなく一見解なのですから、この補正
指示は明らかに行き過ぎた対応というべきです。権力の横暴です(6日本欄参
照)。皆さんも、商業登記のプロを自認するなら、権力に従順な素直なよい子
になってはいけません。


2023.03.09(木)【代表取締役と就任承諾】(金子登志雄)

 2月27日の本欄で、就任承諾には、①委任契約に基づく受任承諾に該当す
るものと、②登記上の要請に基づく委任によらず本人の意思確認に基づくもの
の2つがあると説明しながら、株式会社である代表取締役の就任承諾につき取
り上げなかったのは、どちらでも結果的に必要だからです。

 ご承知のとおり、旧商法時代は株式会社法(旧商法会社編)と有限会社法の
2つがあり、前者は取締役会設置会社のため、取締役と代表取締役の地位の2
つが意識されましたが、後者では各自代表が原則で、「取締役=代表取締役」
が原則でした。つまり、代表取締役には株式会社のそれと有限会社のそれとい
う2種類がありました。

 有限会社法では定款と社員総会による方法以外に、定款の定めに基づき取締
役の互選で代表取締役を定められましたが、これは互選の場合を含めて理論的
には代表権を制限するものでしたが、旧商法の株式会社である取締役会設置会
社との類似性から、定款で取締役の地位と代表取締役の地位を分離したものと
説明され、登記での考え方として今日に引き継がれています。

 会社法施行以前の旧商業登記法が商法時代の株式会社につき取締役・代表取
締役にそれぞれ就任承諾書を要求し、その規定を有限会社にも準用していたた
め、取締役の互選で有限会社の代表取締役を定める場合にも、互選で代表権を
制限したのではなく、取締役会設置会社と同じく、取締役の互選で代表権を追
加するのだと理論づけたためだと私は推測しています。

 しかし、会社法は旧商法会社編と有限会社法を統合し、2種類の代表取締役
ではなく、会社法349条でお分かりのように、各自代表制を原則にしました
から、定款で取締役会を任意設置した場合でも、定款で代表権を制限したもの
とみるのが正しいというべきです(詳細は商事法務1778号4頁以下の葉玉解説
参照)。

 したがって、この実体法である会社法重視の見解からは、取締役だけが上記
①の委任に基づく就任承諾であり、互選代表どころか取締役会設置会社の代表
の就任承諾ですら、上記②の就任承諾になります。

 ただ、商業登記法が会社法の原則どおりに改正されなかったので(非取締役
会設置会社の取締役の就任承諾に印鑑証明を要求しながら取締役会設置会社で
要求していない、登記記録が取締役と代表取締役の欄の2つに分離され代表取
締役だけに住所記載が必要など)、登記の面からは、いまだに取締役と代表取
締役の2つの地位で説明すると分かりやすいため、現在でも、それで説明され
ることが多いというだけです。

 互選代表の就任承諾書には印鑑証明が不要で、取締役会代表には必要だとい
うも会社法の面からは矛盾しているのですが、登記法の面からは何の疑問も持
たれていないのはこのためです。

 以上、2種類の就任承諾があっても持分会社と相違し、株式会社では①か②
いずれかの就任承諾が必要であるため、就任承諾の要否の点では議論する必要
がないので、実務では大きな問題になっていません。


2023.03.08(水)【キャリアとは何か?】(神奈川・酒井恒雄)

 ところで「キャリア」って何でしょう?

 キャリアという言葉から、真っ先に連想される言葉はどのようなものですか?
キャリア組、キャリアウーマン(あえて古い表現で。)、キャリア構築、人生
キャリア・・・。

 おそらく、前から2つ目までの言葉を思い浮かべた方が多いのではないでし
ょうか。

 それもそのはず、この言葉が日本に輸入された当時、欧米では競争に勝って
前進していく生活を指してキャリアと呼んでいたそうです。その典型例が高級
官僚とか専門職についた人だったので、日本ではキャリア組とかキャリアウー
マンというような言葉の使い方が定着したそうです。

 近年は、キャリアという用語は、職業だけではなく、広く生き方の全体を含
め、個人の生活の向上を意味するようになっていますが、職業上の勝ち組的な
イメージはまだ残っているかと思います。

 では、改めてキャリアの意味を考えてみますと、答えるのは非常に困難です。
「キャリア」の名詞・動詞としての意味には、「前進」「行程」「軌跡」「通
過点」「進行」「退行」「回帰」「漂流」「職業」「使命」「専門職」「生涯
の仕事」「猛進」「達成された状態」など、様々なものがあるそうです。

 こうしてみると、何となく「キャリアってそういうものだよねぇ。」という
イメージは沸いてきますが、それをまとめて説明するのは難しいですよね。そ
れゆえ、キャリアはキャリアとしか言いようがなく、キャリアという用語は使
う人によって全く違う意味になっていたりもするようです。(つづく)


2023.03.07(火)【役員任期の変遷~その1~】(東京・鈴木龍介)

 株式会社と役員の関係は、期限――任期――の定めのある委任契約であり、
明治期に商法が制定されて以来、その任期は法定されていますが、現行どおり
ではなく、幾度かの見直しがなされてきたという経緯があります。

 役員の任期については、登記実務上も非常に重要なところですので、今回は、
そのあたりを備忘的に徒然してみたいと思います。

 まず、取締役の任期ですが、いわゆる旧商法では3年以内とされ(旧商法
185条1項)、明治32年に制定された商法においても同様とされました。
明治44年の商法改正において、いわゆる確定型の任期を原則としつつも、定
款の定めにより定時株主総会の終結まで伸長することが許容されました(同改
正法166条)。

 また、任期との関係の深い「権利義務承継」役員の規定が新設されました
(同改正法167条ノ2)。

 昭和25年の商法改正において、その任期が3年以内から2年以内に短縮さ
れるとともに、設立後最初の取締役の任期を1年とする特則が設けられました
(同改正法256条1項)。なお、引き続き、定款の定めによる伸長型の任期
は維持されました(同改正法256条2項)。

 平成17年に制定された会社法において、2年の伸長型の任期が原則となる
とともに(会社法332条1項)、非公開会社に関しては、定款の定めにより
10年まで任期を伸長することができる特則が設けられ(会社法332条2項)、
現在に至ります。

 長くなりそうなので、監査役ほかについては別途、お届けしたいと思います。


2023.03.06(月)【当局の決定への要望】(金子登志雄)

 2月3日の本欄で、次のように記載しました。
---------------------------------------------------------------------- 
 株式会社が解散し事業株式会社から清算株式会社に移行したら「目的」のと
ころに「当会社は、会社法第2編第9章に定めるところにより清算することを
目的とする」との登記が可能かと新保先生のブログで問題にしていました。
           (中  略)
 これにつき、清算目的では営利事業でないから登記できないのだとの見解も
あるようですが、営利事業の後始末も営利事業です。そうでなければ、清算株
式会社は非営利法人になってしまいます。

 次に、意味のないことは登記できないとの見解がありますが、1株1議決権
が種類株式の内容で登記されている例は多いといえます。「適法な一切の事業」
とか「商行為」という事業会社の目的は意味がないのに登記されています。

 もっとも清算目的を登記しなくても、2週間以内の登記義務違反で過料とい
うことにはならないでしょう。清算人の登記の存在によって清算会社であるこ
とは十分に分かるためです。結論として登記すべき法的義務(拘束力)までは
ないが、申請すれば登記されるべきだというところが穏当な解釈でしょうか。
-----------------------------------------------------------------------

 ところが、先般の新保ブログによると、穏当な解釈はなされず、申請したと
ころ東京法務局管内では受理されず取下げせざるをえなかったとのことでした。

https://blog.goo.ne.jp/chararineko/e/8690836b42d94d1a7cdb9858ae7aad3e

 私には上記の清算目的のほうが「適法な一切の事業」とか「商行為」という
より明確性があると思えますし、債権者にとっては債権が回収できるかどうか
が関心ごとであって、目的変更に異議を出せる立場とはされていませんので、
受理できないという理由を理解することができませんでした。

 こういう硬直した取扱いですが、東京法務局(本局)内の登記官が協議して
多数決で決定するのでしょうが、上記の私のような考え方の登記官が多数のと
きに決定すれば、却下事由には該当しないので受理せざるをえないという結論
になるでしょう。要するに、人が変われば結論が異なる可能性もあることにつ
き、一方に断定して将来の変化を拘束してしまうことにも配慮してほしかった
と思います。 

 かつて東京法務局は本人確認証明書に関する商業登記規則の改正の際に、非
取締役会設置会社の取締役にも住所記載が必要になったと決定しましたが、私
はこの見解に当初から納得しておりません(『会社法実務〔全訂第2版〕』Q
4-17-9、テイハン『360問』Q130参照)。これも東京法務局のメ
ンバーが変われば、変更される可能性が大の内容ですし、私と同じ考え方の現
場の登記官も少なくなく、板挟みで苦労されています。

 法務省の決定でも同じです。組織再編の株主リストや資本金計上証明書の作
成者につき、債権者保護手続の証明書面と相違し、一方当事者に決める必要が
あったのか、いまだに疑問です。従来の運用に詳しくない方が担当になると、
おかしな運用に決定されてしまいます。

 かつて(昭和59年)、法務省の一担当者が商事法務に、いまでいう無対価
合併も合併当事者の資本金合算額よりも合併会社の資本金が少ないので減資に
もなるという論文を発表したため(いわゆる須藤論文)、従来の登記実務が変
更され、合併公告は「合併並びに資本減少公告」としなければならないとされ
てしまい、この信じがたい運用が平成9年の合併法制の改正まで続きました。

 旧商法時代は条文に会社法と同様に「総会は本法又は定款に定むる事項に限
り決議を為すことを得」とあったため、定款で定めれば代表取締役を株主総会
で定められると解釈されていましたが、登記では、がんとして認めませんでし
た。いったん不可と決定したものに縛られ変更することができなかったわけで
すが、会社法の制定という革命によって、やっと正常化されました(いまだに
正常な運用に戻っていないと私が思っているのは、期限付解散と代表取締役の
予選問題に関する登記実務の運用です)。

 公務員世界(行政行為)は前例踏襲の先例主義ですから仕方ない面もありま
すが、だからこそ先例の内容には、人が変われば、あるいは時代が変われば変
更されることもありそうなことについては、そのときの担当者が黒白を決する
ことなく(そういう問題は学者や裁判所に任せて)、慎重な対応をしてほしい
ものです。

 大袈裟な表現ですが、これも一種の権力行使ですから、抑制的であってほし
いということです。具体的には、見解の相違があるものにはあえて結論を出さ
ず、申請人の見解を尊重し、どちらでも受け付けるという穏当な対応を強く望
みます。


2023.03.03(金)【合同会社の合併と合併比率】(仙台・立花宏)

 先日、法務省の登記統計をみたところ、昨年の月ごとの集計が、12月分ま
で、掲載されていました(年度の合計は5月頃に公表だと思います)。

 手集計してみましたので、参考までに報告しますと、昨年の合同会社の設立
数は37,127件で、一昨年より55件増でした。ほぼ同数ということにな
ります。なお、株式会社の設立数は92,371件で、2,851件減少でし
た。

 さて、2月1日の本欄で、合同会社の合併と対価の割当てを取り上げました。
今日は合併比率について考えてみます。次のような事例を想定します(事案を
簡略化しています)。

想定事例
 合同会社Aと合同会社Bが吸収合併します(存続会社はA)。Aの社員は甲
社のみで、定款上の出資の価額は100です。Bの社員は乙社のみで、定款上
の出資の価額は100です。両社の社員資本の状況は次のとおりで、両社の会
社の時価評価は同じだとします。つまり、甲の持分と乙の持分の時価は同じと
いうことです。

  合同会社A            合同会社B
   資本金      100     資本金   100
   利益剰余金    100     利益剰余金 100
  (甲社の出資の価額 100)    (乙社の出資の価額 100)

 合併に際し、乙社はAの社員となり、持分以外の金銭等の交付はありません。
この場合、Aの社員となる乙社の名称及び住所並びに出資の価額を合併契約書
に記載する必要があります。乙社の出資の価額はいくらと記載するのが妥当で
しょうか。

 もちろん、正式な合併比率は、会計の専門家にお任せするべき内容だと思い
ますが、方向性としてどう考えるべきなのかという問題です。

 これが株式会社同士の合併だとします。甲社が100株のA株式を保有して
いると仮定して、他の要素を考えず、会社の時価だけを考えれば、A株式
100株を乙社に交付すると考えることになるのだろうと思います。

 ところで、これは合同会社同士の合併です。合併契約書に記載する乙社の出
資の価額をいくらにするかですが、株式会社と同じように考えると、出資の価
額は、甲社と同じ100にするのが妥当なように思えます。

 はたして、そう考えてよいでしょうか。
 私見は、原則として、出資の価額は200とするのが妥当なのだろうと考え
ています。というのは、この吸収合併を、乙社が、合同会社Bを現物出資した
行為だと考えれば、時価200の財産を現物出資したことになるからです。
 
 株式会社の場合と比較すると、なんとなく違和感があります。
 しかし、会社計算規則35条により、合併後の社員資本が次のようになった
と考えると、わかりやすいかもしれません。株主資本等変動額はすべて資本金
に計上したとの想定です。

 合同会社A            
   資本金      300   
   利益剰余金    100

  持分管理表は次のようになります。

         資本金    利益剰余金
   甲社    100     100
   乙社    200       0
 
 合併前に、Aに計上されていた利益剰余金100は、甲社に分配済です。そ
のため、合併により乙社が加入したとしても、乙社はこの利益剰余金には権利
がないため、0となっています。

 ただ、甲社と乙社には、共通の完全親会社があるとしたらどうでしょう。共
通支配下の取引として、会社計算規則36条1項により、引継ぐ処理が可能で、
合併後の社員資本を次のようにすることも可能なように思えます。

 合同会社A            
   資本金      200   
   利益剰余金    200

 そして、この場合は、乙社の出資の価額を100にし、持分管理表を次のよ
うにすることになるのだろうと思いました。合併は奥が深く、難しいですね。

         資本金    利益剰余金
   甲社    100     100
   乙社    100     100


2023.03.02(木)【年月日死亡】(島根・根来川久充)

 この言葉は、戸籍の身分事項の欄では、最後に記載される言葉です。

 淡々とした事実であり、冷たささえ感じる言葉ですが、「有名無名」や「老
若男女」にかかわらず、お亡くなりになられ方には、必ず記載される言葉であ
り、私には、この公平さに温かさを感じます。

 今月、私が大変お世話になった方が亡くなられました。

 私より、五つくらい年上の方でしたが、「インフルエンザにかかったことが
ない。」とお話されるくらいとてもお元気な方でしたが、残念ながら病魔に勝
てませんでした。

 戸籍に記載される事実だけでなく、大変お世話になった人間がいるという事
実も残したいという、私の勝手な思いから、この場を借りてお礼を申し上げた
いと思います。

 故人のご冥福を心よりお祈り申し上げます。


2023.03.01(水)【キャリアコンサルタント】(神奈川・酒井恒雄)

 キャリア相談の技法に興味を持つまでは、キャリアコンサルタントという専
門職の存在を知りませんでした。

 はじめは、「コンサルタント」という名称が持つイメージで、なんだか怪し
い資格だな・・・と思ったのですが、後に平成28年4月1日施行の改正職業
能力開発促進法により国家資格となった専門職であることを知りました。

 大学時代の同級生が、資格ホルダーであることも思い出し、アポイントをと
って、どのようなことを学ぶのか、どのような教育機関があるのか教えてもら
いました。

 そして、教えてもらった教育機関のうちの一つで、授業を受けることにしま
した。久しぶりにクラス形態で学んで、新鮮な気持ちになれたのも楽しかった
ですが、何より、様々なバックグラウンドを持つ人達と、垣根を取り払った交
流ができたことが一番の財産となりました。

 キャリア相談の練習で相談者役になるときは、包み隠さず自分の悩みや不安
について話しをしますので、お互いのリアルな悩みや不安を共有することにな
ります。

 授業では、「こんな話、誰にも言ったことがなかった。」とか、「自分がそ
んなこと思っているなんて初めて知った。」といった感想があちらこちらで聞
かれました。

 ちなみ、私は「語りの中に「責任」という言葉が頻出する。」と指摘されま
した。おそらく職業柄、知らないうちに「責任」を意識しているのでしょうね。

 司法書士は責任の割に報酬が安いとか、事前の相談なしに物事が進んでいた
としても、最終的に登記できないとなれば、登記の専門家である司法書士が何
とかしてくれと責任を負わされそうになるとか、責任というものについて、あ
まり良い意味付けをしていないことにも気づいたりして、ハッとさせられまし
た。(つづく)


2023.02.28(火)【夫婦財産契約登記】(東京・鈴木龍介)

 夫婦財産契約とは、夫婦となる者が婚姻の届出前に、その財産について法定
財産制(民法760条〜762条)と異なった定めをするというものです(民法755条)。

 夫婦財産契約については、婚姻の届出前に夫婦財産契約登記をしなければ、
夫婦の承継人や第三者に対抗することができません(民法756条)。

 夫婦財産契約登記は、「外国法人の登記及び夫婦財産契約の登記に関する法
律」に基本的な事項が規定され、その細則として「夫婦財産契約登記規則」が
設けられています。

 夫婦財産契約登記は夫または妻となる者の居住地を管轄する法務局が所管し、
夫婦財産登記簿には、
 ⅰ)契約者欄として夫婦となる契約当事者の氏名・住所、
 ⅱ)夫婦財産契約欄として登記の目的・原因と原因日付・契約の内容、
 ⅲ)登記記録欄として登記記録を起こした事由等とその年月日
を記録するものとされています(夫婦財産契約登記規則 1条・別表)。

 夫婦財産契約登記の登記簿はコンピュータ化されておらず、縦書きの紙ベー
スです。

 登記申請の添付書類は
 ⅰ)登記原因証明情報(夫婦財産契約書等)、
 ⅱ)戸籍謄本(婚姻前の夫婦のもの)、
 ⅲ)住民票(婚姻前の夫婦のもの)、
 ⅳ)印鑑証明書(婚姻前の夫婦のもの)
で、登録免許税は18,000円です。

 ちなみに夫婦財産契約登記はかなりレアな登記でして、どのくらいレアかと
いうと令和3年の全国での登記件数は21件でした(法務省・登記統計)。


2023.02.27(月)【代表社員と就任承諾の要否】(金子登志雄)

 21日の東京会セミナーが終わるまでは、そこで話す内容を本欄のネタにし
ては講義での新鮮さがなくなるため、別のネタ探しに苦労していましたが、や
っと解放されました。少しずつ講義で取り上げたネタを徒然いたしましょう。

 さて、セミナーで私が最も重視した論点は、他の書籍にはほとんど触れられ
ていないことで、就任承諾には、①委任契約に基づく受任承諾に該当するもの
と、②登記上の要請に基づく委任によらず本人の意思確認に基づくものの2つ
があるということでした。持分会社で要求されるものは全て②です。

 社員ABCの合同会社でいうと、社員の地位に業務執行権・代表権が含まれ
るため、定款で業務執行社員ABC、代表社員Aと定めても、Aに代表権を授
権したのではなく、BCの代表権を制限したものに過ぎないため、会社とAと
の間には委任契約関係がありません。非取締役会設置会社の株主総会で代表取
締役を選定した場合と同じく、就任承諾は不要です。そのため商業登記法には、
持分会社の代表社員の登記に就任承諾書の添付を要求する規定がありません。

 ただし、登記の基本通達(H18・3・31民商第782号)により、定款の定めに
基づく社員の互選で代表社員を定めたときに限り、例外としてAの意思確認の
ため上記②の就任承諾書を要求しています。社員の過半数で決定する互選書で
は本人の意思が不明確なこともあり、虚偽登記防止のためのものです(法務省
見解、登記情報701号29頁参照)。互選書の不十分さを補完するものです
から、商業登記法の規定に反するとまではいえません(以上につき、立花合同
会社本第2版Q4-1-2に詳しいのでご確認ください)。

 以上ですが、実務でしばしば問題になるのは、松井ハンドブック4版640
頁に「定款で代表社員を定めた場合には、……定款により代表社員が誰かを判
断することができ、各社員が定款に記名押印している以上、別途、代表社員の
就任承諾書は要しない」とあるため、これをどう解釈するかです。

 松井氏は基本通達の作成者ですから、基本通達を逸脱した見解を出すはずは
なく、私は、これを適正に作成された定款で代表社員を定めたときはという意
味だと善解していますが、一部の少数の登記官は、定款で定めた場合に就任承
諾書が不要なのは、各社員が記名押印しているからだと解釈してしまうようで
す。そのため、司法書士が代理作成した電子署名付原始定款では社員が押印し
ていないから定款で代表社員を定めたときは別途就任承諾がいるとし、補正に
された例もあると聞いています。

 しかし、押印を根拠にするのは、株主総会議事録や社員の同意に署名や押印
を求めていない会社法の原則に反しますし、現行の登記実務は法の規定に基づ
くもの以外の添付書面には押印を要求しておらず、押印主義は時代遅れです。

 この見解は、定款に押印が不要な変更定款で代表社員を定める際に暗礁に乗
り上げます。例えば、定款に「令和5年4月1日からの代表社員はBとする」
とあったとき、4月1日以降に、この登記を申請するには、代表社員Bの名で
原本証明付定款を添付することになりますが、この場合も原本証明は信用に値
しないとして、就任承諾書が必要になるのでしょうか。

 会社設立後に定款で新たに代表社員としてCを定める場合に、定款変更の同
意書にCが押印しないと、別途就任承諾書が必要になるとしても、この就任承
諾書にはCの押印が不要です。押印がないから別の押印がない書面を提出せよ
では、説得力がありませんし、これでは、非取締役会設置会社で定款の附則や
株主総会で代表取締役を定めた際に就任承諾書が要求されていないことと整合
性が取れません。

 以上のとおり、押印根拠説は、定款で代表社員を定めた際は就任承諾不要と
いう大原則を空文化するもので、商業登記法や基本通達に反し、到底採用する
ことができません。登記所内でも多数意見になっていないのはこのためです。

 最後に、商業登記法や通達の範囲を超えた運用をされては、われわれ申請人
側に予測できない不意打ちの運用となり、法に従った適正手続ともいえません
ので、本欄閲覧の司法書士の皆さんには、司法書士代理作成定款は信用できな
いといわれたのも同様の補正要求には、「何だ、押印のない就任承諾書を提出
すればよいのか、簡単なことだ」と素直に応じずに、司法書士の地位を守るた
めにも、登記官にご再考を求めるようお願いします。


2023.02.24(金)【講義の補足(総株主の範囲)】(金子登志雄)

 21日は東京会で久々の会社法講義(テーマは「商業登記実務の最近の諸問
題」)でした。研修委員の方、大変、お世話になりました。

 私の講義は、知識の啓蒙ではなく、知識があることを前提に、プロの皆さん
に、この課題をどう受け止め、どう対処するかという実戦が基本であり、先例
を踏襲する対応では進歩がないと批判することが多いので、初めて受講した方
は驚いたことでしょうが、1つでもお役に立つものがありましたら、講義した
甲斐がありました。

 講義後に、特例有限会社に関する整備法第14条第3項「総株主の半数以上
であって、当該株主の議決権の4分の3以上に当たる多数」の総株主に自己株
主を含むかという質問を受けました。質問者は含まないで計算したら、補正に
されてしまったのだそうです。

 私は質問者と同じで、会社法実務〔全訂第2版〕Q4-3-6でも含まない
と書きました。

 試行錯誤した結果、現時点は次です。

 1.総株主の同意(組織変更や責任免除)には、自社(自己株主)を含めて
も同意することが間違いないため、含めても含まなくても問題ない。

 もっとも、責任免除議案のときに自社に賛否を求めるのはいかがなものかと
いう気がしますが、自社だけが反対で組織変更も責任免除もできないときは解
任すればよいので、実務で支障は生じないでしょう。

 2.総株主の半数以上の同意の場合は多数決となり自社の1票で結論を左右
するのはいかがなものか。

 例えば株主が3名200株(A100株、B50株+自社50株)のとき、
A賛成、B反対又は棄権のとき、自社を含めると特別決議が可決しません。
(A50株、B100株+自社50株)のときは自社が賛成でも、当該株主の
議決権の4分の3以上にならないので、自社を含めても結論を左右しませんが、
(A100株、B50株+自社50株)のときは、会社の運営に大きな影響を
与えます。

 やはり私見は自社は総株主にカウントすべきではないというものですが、明
確な先例でも出ない限り、管轄登記所が文理を重視しカウントするのもやむを
えない面があります。拙著にも増刷の際に「実務では文理を優先し含めておく
ことが無難」と挿入しておきましょう。


2023.02.22(水)【答えは自分の中に】(神奈川・酒井恒雄)

 全ての相談者にフラットに接するということは、ともすると淡々と業務手続
きを進めることにも繋がります。時折、果たしてそれでいいのだろうか? 
というモヤモヤ感を覚えていました。

 そして、余計な口は挟まないと決めはしたものの、やはり何か言いたいとき
がありました。

 リーマンショックの影響下、学生たちが就職難になった時期があったのです
が、そのときに何回か受けた相談の中で出てきたのが「仕方ないから起業する」
という言葉。ひとつも内定が取れそうにないから、とりあえず起業するしかな
いという「後ろ向きの姿勢」での起業相談です。

 さすがに、そんな姿勢では成功するはずがないと考え、気乗りしないなら法
人は設立しない方がいいと助言したりしました。

 その助言が本人のためになっていたらいいのですが、「成功するはずがない」
と考えたことが、相談者の可能性を潰す結果になったかもしれません。

 「いったい、どう対応すればいいのだろう・・・」と、またモヤモヤしてい
たところ、偶然に何かの本(ネット記事だったかもしれません)で、キャリア
コンサルティングに触れている箇所を目にしました。

 「答えは必ず本人が持っているから、アドバイスするという姿勢ではなく、
その答えを本人に気づかせることを一番に考える。」といったことが書いてあ
ったと記憶しています。

 これを読んだとき「これだ!」と思い、キャリア相談の技法を学びたいと思
ったのでした。(つづく)


2023.02.21(火)【リスキリング+チャットGPT】(東京・鈴木龍介)

 最近、「リスキリング(Reskilling)」という言葉をよく耳にしますが、ど
のようなものでしょうか? これまた今、話題の「チャットGPT」に“リス
キリングについて教えて”と入力したところ、以下のような回答が返ってきま
した。

 ちなみに、チャットGPTとは OpenAI(EV自動車「テスラ」で有名な
イーロン・マスクが運営等に参画している人工知能研究所)がリリースした、
AI(人工知能)によって文書を生成するというサービスです。

===================================
 「リスキリング(Reskilling)」とは、従業員が現在の職務に必要なスキルに
加えて、新しいスキルや能力を習得することを指します。これは、新しい技術
の導入、ビジネスモデルの変化、市場環境の変化などの要因によって、従業員
が求められるスキルが変化する場合に役立ちます。
===================================

 なお、リスキリングについてのNHKの解説は次のとおりです。
 “リスキリング”とは ~これからの日本に必要な“リスキリング”のカタ
チ~ ―NHK みんなでプラス
   https://www.nhk.or.jp/gendai/comment/0020/topic057.html

 まあ意味内容としては、あたらずとも遠からずというところですが、文章
(少なくとも日本語の文章)としてはまだまだという感じがします。
なお、AIが常に学習を続けるので、同じ質問に対しても回答は異なってくる
ようです。

 関連して、このようなものも登場するようです。司法書士の業務にも影響が
でるかもしれません。

 「「チャットGPT」で法律相談 弁護士ドットコム、
 今春開始へ・Yahooニュース
   https://is.gd/OMoXgX


2023.02.20(月)【カーブアウトM&Aとは】(金子登志雄)

 拙著『会社法実務〔全訂第2版〕』は、改訂版にもかかわらず、アマゾンの
会社法部門の人気ランキングで、ここずっと、「時間」単位では1位でないこ
ともありましたが、「日」の単位では、第1位を維持し続け、司法書士の地位
向上(司法書士は会社法手続の専門家という広報)に私なりに寄与してきたつ
もりですが、連続20日程度の天下で終わりました。

 3月22日に商事法務が『カーブアウトM&A』という書籍を発刊するよう
で(編著者は長島・大野・常松法律事務所)、その予約販売がここ数日間、拙
著を抑えて第1位の地位を占めてしまったためです。

   (現時点ではどうでしょうか)
           https://is.gd/QhYD5G

 ところで、「カーブアウトM&A」という用語は、私がM&A業務に従事し
ていた昭和後半には聞いたことがありませんが、どういう意味だと思いますか。

 変化球(野球の curve)で相手をアウトにして乗っ取ることではなく、切り
離すという意味の carveでした。要するに、将来性のあるベンチャー事業部門
を会社分割や事業譲渡(や現物出資)で切り離し、ここに外部資本なども投入
し、成長を図ることのようです。

 しかし、M&Aとは経営支配権を他に渡すことなのに、これは子会社のまま
でもよく、その方が多いようですから、事業再編の手法であって本来のM&A
とは思えません。それに、採算事業部門を会社分割で切り離し、不採算部門を
清算する会社分割を「第2会社方式」といってきたのですから、ここも日本語
を使い「戦略型第2会社方式」とか「第3会社方式」といってほしかったなと
思いました。

 もっとも、『カーブアウトM&A』という題名だからこそ、目を引いたわけ
で、拙著も今度改訂する際は目立つように『異次元の会社法実務』とでも改題
しましょうか。


2023.02.17(金)【認知バイアス(少子化問題で)】(金子登志雄)

 13年前に野党自民党の女性議員が政権党である民主党の少子化対策につき、
「愚か者め!」と口汚く罵倒したのに、いまや岸田総理自身が「異次元の少子
化対策」を主張しています。前から分かっていたことですが、それほど少子化
は深刻な問題になっています。

 酒井さんの投稿に「認知バイアス」(思い違いといったような意味)が登場
しましたので、これの多い少子化問題を取り上げてみました。ものの見方・考
え方・捉え方は、私の最も関心のあるところです。

 まず、なぜ少子化が問題なのかです。人口の少ない方が競争もなく取り分が
多くなり、人々は幸せになるのではないかという認知バイアスに陥りやすいの
ですが、国力という面では、生産人口や消費人口が多いほど経済活動が活発に
なります。簡単にいえば、都市部の雑踏と過疎地のどちらを選ぶかということ
ですが、過疎地では司法書士は失業してしまいます。

 少子化対策には、
  ①教育費の無償化、
  ②女性の子育て負担の軽減、
  ③性差への寛大さ
の3つが必要だといわれています。

 もう1つ、成田悠輔とかいう若手論客の「高齢者は集団自殺すればよい」と
いう提言もありますが、これは成田君が高齢者になってから見本を示してもら
うことにいたしましょう。

 ①は先進国になるほど学歴が重視され、家庭における教育費負担が深刻にな
るためです。子供3人全員を塾に通わせ大学に進学させるのは無理だと思い、
子供を2人以内にし十分な教育を受けさせたいというのが親心です。よって、
文明国ほど少子化になるというのは認知バイアスであり、教育に対する国の政
策が原因だということです。高校の無償化などが必要です。

 ②は子供は親が育てるものではなく国や社会が育てるものという国の政策、
具体的には保育園や学童保育の充実等を図らないと達成することができません。
こうすれば女性も活躍でき家や子供に縛られません。

 女性の地位が向上すれば少子化になるというのは認知バイアスです。先進国
では女性の地位が高くなっても少子化になっていません。なっているのは、女
性の地位が比較的に低いドイツや日本、韓国です。ドイツでは移民受入れ策を
採用していますが、日本及び韓国では封建的な家父長制や家制度の文化(オン
ナ子供は黙っておれのオヤジ文化)があり、女性の地位の向上が不十分です。

 ③は、家制度文化の影響か、未婚の母や母子家庭に対する差別も少子化を招
きます。子供は国や社会の宝であるなら、未婚の母あるいは母子家庭がありふ
れた社会になってもいいはずですが、シングルマザーは派遣労働にしか就けず、
母子家庭の貧困率は世界でも日本は突出しています。

 関連して、LGBTや同性婚に対する性問題への不寛容社会は、逆に少子化
を招きます。親族以外から養子を迎えない文化も、この延長でしょうか。

 結論として、いまだに家父長制の価値観が色濃く残り、移民等に不寛容な社
会風土や政権党では日本は衰退一直線を避けられませんので、「異次元の少子
化対策」のためには、岸田総理にも女系天皇制さえ否定する党内の勢力と戦う
気骨でもみせると同時に、米国の言いなりになる軍事力中心の強化よりも国力
全体の向上に意を注いでほしいものです。

 蛇足ですが、国会議員の後継ぎの若い息子が公式サイトに家系図を掲示し、
家柄自慢をしたのには驚きました。同時に「他山の石」で、私も昭和オヤジの
価値観を自省しなければなりません。


2023.02.16(木)【合同会社の利益の配当の制限】(仙台・立花宏)

 今日は、合同会社の利益の配当の制限について考えてみたいと思います。

 Aが唯一の社員(出資100)として設立した合同会社において、最初の決
算で200の損益が発生しました。

 翌期に、Bが100を出資して加入しました。その期の決算の損益は100
の赤字(100の損失)でした。この赤字は、Aに50、Bに50が分配され
ました。この結果、現在の各社員の持分の状況は以下のようになっているもの
とします。

    社員    資本金   資本剰余金   利益剰余金
    A     100      0      150
    B     100      0      ▲50
     合計   200      0      100

 この状態の合同会社に対して、Aが150の利益の配当を請求しました。合
同会社はこの請求に応じることができるでしょうか。Aには150の利益が分
配されているのであり、可能なようにも思えます。

 結論としては、できないということになります。会社法628条に、配当を
する日の利益額を超える場合は、配当をすることができないとされているから
です。なお、この利益額は、意訳すると、会社全体の利益剰余金(①)と配当
請求をした社員に計上されている利益剰余金(②)のいずれか少ない額です
(会社計算規則163条)。

 上記の持分管理表から、①は100、②は150であり、いずれか少ない額
は①の100ということになります。配当請求額された額は150ですから、
これを超えているため、配当をすることができないということになります。

 ①と②の数字の意味ですが、①は会社債権者との関係での制限、②は他の社
員との関係での制限ということになります。

 もし、この制限に違反して配当をしてしまった場合、配当を受けた社員は、
合同会社に対して、配当額に相当する金銭を支払う義務を負います。

 配当の業務を執行した社員についても、原則として、合同会社に対して、配
当を受けた社員と連帯して、当該配当額に相当する金銭を支払う義務を負いま
す。ただし、この業務を執行した社員の責任は、①の額を超える部分について
は、総社員の同意があれば免除することができます(会社法629条2項、会
社計算規則163条)。

 ①の額を免除できないのは、会社債権者に対する関係での制限の部分だから
であり、②は、他の社員との関係での制限の部分であるため、総社員の同意が
あれば、その責任を免除することを可能としたのだと思われます。

 配当を受けた社員(A)が、合同会社に対し、前記の義務を履行した場合、
これにより合同会社の利益150が生じます。これにより増加する利益剰余金
150はどのように充当されるのでしょうか。

 原則通り、出資の価額に応じて分配されるのであれば、AとBに均等に分配
されることになります。これについて、会社法立案担当者の解説(注)によれ
ば社員全員に分配されるのではなく、義務を履行した社員、すわなち、配当を
受領した社員(A)の利益剰余金を増加させることになるそうです。利益の配
当の前の状態に戻すという意味なのだろうと思います。

 ただし、利益剰余金の増加原因(会社計算規則32条1項)ではないので、
損益計算書を通して、決算を経て計上されるのだと想像しますので、翌期の損
益の分配の際は注意が必要だと思います。それに、配当を行う際は、所得税の
源泉徴収をしていると思いますので、いろいろと悩ましい問題も出てくると思
います。

 こうした法令違反の配当をすることがないよう、十分、注意が必要だと思い
ました。
 
注)「立案担当者による新会社法関係法務省令の解説」(商事法務)167頁


2023.02.15(水)【認知バイアスとか】(神奈川・酒井恒雄)

 私が起業相談において犯していた大きな間違いは、「おそらく失敗するだろ
う」と考える判断基準が、根拠の乏しい基準、つまり自分が勝手に作りあげた
基準だったということです。

 いわゆる認知バイアスというやつです。緻密な事業計画を立て、プレゼンテ
ーションも上手な人は、「よく考えているな、この人は成功するに違いない。」
と思い、事業計画に甘さがあり、話の内容も今一つピンとこない人は、「ちょ
っと危険だな、おそらく失敗するな。」などと思っていました。

 前者には、「起業すべき!」と後押しし、後者には「もう少し考えた方がい
いかもね。」という感じの対応をしていたのです。しかし、実際どうだったか
と言いますと、結論としましては「やってみなければ分からない。」という一
言に尽きます。

 皆さんも経験があるかもしれませんが、実際に起業してみると、有望視して
いた人が全く駄目で、ノーマークだった人が成功するといったケースも珍しく
ないですよね。

 そして、「私には起業を勧める権利も、起業を思いとどまらせる権利も、ど
ちらもなし!」という考えに至りました。こうして書くと当たり前のことです
けど、相談者を前にすると、つい口出しやアドバイスをしたくなるものです。
(相手がアドバイスを求めている場合はいいですけど・・・。)何回か予想が
外れるケースを見て、以降、相談者には全てフラットに接するということにし
たのですが、そこでまた葛藤が起こりました。(つづく)


2023.02.14(火)【企業とプライバシー】(東京・鈴木龍介)

 前回に引き続き「プライバシー」関連を取り上げてみたいと思いますが(だ
いぶ徒然な感じですが・・・)、企業にはプライバシーというものがあるでし
ょうか。

 「他人の干渉を許さない、各個人の私生活上の自由」というプライバシーの
定義を踏まえると対象はあくまで自然人で、法人等の企業は対象とはならない
といえそうですが、少し見方を変えて“プライバシー≒秘密”というかたちで
広くとらえますと、企業にも当然、秘密はありますので、プライバシーもあり
ということになりそうです。ちなみに、企業が有する秘密(企業秘密)の一般
的な定義としては、「企業活動に関する公表されていない(公表を欲しない)
もので、経済的価値を持つ情報」とされ、英語ではtrade secretとなります。

 前述と異なり企業秘密を狭く解釈したとして、例えば企業の保有する顧客名
簿はおおよそ企業秘密に該当するわけで、そこには顧客のプライバシーを含む
ケースも少なくありません。仮にそれがプライバシーにあたらないとしても個
人情報であることは間違いありませんので、企業としては保護等することが求
められており、万が一、企業が顧客名簿――プライバシーを含む個人情報――
を流出させてしまったような場合には大きな打撃を受けることになります。

 なお、個人情報とは、本人の氏名・住所・生年月日等により特定の個人を識
別できる情報ということになりますが、日常生活においては、プライバシーと
区別せずに用いられているような気がします。

 個人情報を保護等することを目的とした法律は「個人情報(の)保護(に関
する)法(律)」ということになりますが、あくまで企業等が「個人情報」を
適切に取り扱う方法等を規律したものであり、プライバシーの保護を直接の目
的とはしていません。ただし、個人情報保護法が遵守されることによって、意
図しない「個人情報」の取扱いが抑制され、結果的にはプライバシーも保護さ
れるということにつながっていくわけです。

 また、Pマーク(プライバシーマーク)というものを耳にしたことがあると
思いますが、これは企業等が個人情報を取り扱うときの仕組みや手続、そして、
それを運用する体制が制度で求める基準を満たしているかを評価し、適合した
企業等にプライバシーマークの使用を認めるという制度です(付与された企業
等は約17,000社)。

 以上を踏まえると企業秘密とプライバシーはイコールの関係でないにせよ、
密接関連したものといってよさそうです。


2023.02.13(月)【事業承継、M&A、IPO】(金子登志雄)

 本欄で鈴木さんや酒井さんから表題が話題として出されましたので、私の感
覚と姿勢について書いてみます。

1.事業承継
 税理士中心の士業がこれを口にするのは、資産家の相続税対策の意味での事
業承継です。分割型分割で分社したり、属人的種類株式を定めたりです。司法
書士としては、その法務手続をお手伝いするだけです。税理士との付き合いの
広い方は、この仕事が多いことでしょう。税理士作成のスキームに、こうした
らどうかと提案することができるセンスがあるかどうかの勝負です。

2.M&A
 これも今や専門業者が多数存在し、司法書士が主導で動くことはありません。
業者が企画したスキーム(株式譲渡か株式交換か株式交付か)や手続日程につ
き、M&A当事者である顧客から、これに応じてよいかと相談を受けることが
ある程度です。

 M&A業者と人脈を築けば、この仕事が多いかというと、不動産屋と同じで
業者自体が業務知識を持っていますし、社内に弁護士などもいるため、これは
期待薄だと思います。また、登記事項の発生が少ないので、M&A後の状況に
対する見通し力が勝負です。

3.IPO(株式の上場)
 たび重なる増資や株式分割、定款変更、株主総会の運営などに関われるので、
もっともやりがいのある仕事だと思いますが、これは上場を目指すベンチャー
企業を顧客にしていないと相談を受けることはまずないでしょう。
 
 IPOもだいぶ楽になったとはいえ、狭き門であることに変わりがありませ
んし、それ以前に現在の事業が順調に成長するとは限りません。数社あった私
のベンチャー企業の顧客もすでに解散済みです。

4.結論
 結局のところ、上記のような案件に巡り合うには人脈が必要であり、営業力
が必要です。また、営業力があっても、専門能力が不十分では対応できません。
さらに、ビジネス社会は厳しい世界ですから、ぬるま湯にどっぷり浸かった司
法書士によいコンサルができるのかという「職種適性」の問題があります。

 以上、辛口コメントで、揚げ足をとるような内容になりましたが、企業法務
に従事するとはビジネス社会と接触することです。経験を積んで行けば上記の
ような仕事が舞い込むことでしょう。顧客を講師と思い大いに経験を積んでく
ださい。

5.ついでに、ビジネス社会「感度」チェック
 株主総会で取締役に選任され「席上就任」したら、出席役員に名前を載せる
べきだと思いますか。
 イエスと答えた方は登記世界の井の中の蛙です。現実の株主総会は、取締役
席(議長席を含む)と株主席の2つであり、取締役候補者は株主席の最前列に
座っています。そこで「席上就任」しても、壇上の取締役席に席を移動するわ
けではありません。取締役になったのだから議案の説明義務を負うのですか。
負うわけがありません。これでも株主総会議事録に記載する出席役員といえま
すか。
 ビジネス社会の常識を鍛えて公務員世界の登記所職員を説得するのも企業法
務従事司法書士の重要な役割です。


2023.02.10(金)【期限付解散事例】(金子登志雄)

 先週の金曜日にお知らせした。解散を決議し定款における目的を「当会社は、
会社法第2編第9章に定めるところにより清算することを目的とする」と変更
しながら登記まではしていない中部金融証券株式会社は、平成29年6月26
日の定時株主総会において、「平成29年9月30日を効力発生日として」解
散しています。

 https://fs2.magicalir.net/tdnet/2017/8513/20170606498088.pdf

 ぴんと来た方もいらっしゃるでしょうが、期限付解散です。登記実務では、
明文の根拠もないのに存続期間の定めの登記が必要です(株式併合で自動的に
発行可能株式数が減少しないとされたことからもお分かりのとおり、会社法下
での定款変更は明文の根拠が必要のはずです)。

 私は、「平成29年9月30日を効力発生日として」を3月決算会社が半期
終了をもって解散するというのだから、9月30日24時に解散と受けとめた
ため、存続期間は「平成29年9月30日まで」と登記したいところですが、
これでは登記実務上、翌日の「10月1日存続期間満了により解散」となって
しまうため、知恵者が「9月30日午前0時解散という意味だ」ということに
したのでしょうか、登記では存続期間「平成29年9月29日まで」とされ、
翌日の「9月30日存続期間満了により解散」となっていました。 

 念のため、拙著を読んでいる方はお分かりでしょうが、存続期間の満了日の
翌日付で登記せよという登記実務が間違いです。9月30日付株主総会で本日
の終了時に解散すると決議した場合と同様に、終わりを示す登記の場合は、存
続期間の満了日を解散の日にすべきだからです。

 それはともかく、この会社の登記記録をみると、存続期間「平成29年9月
29日まで」につき「平成29年7月4日設定」とありました。その日に臨時
株主総会を開催したとは思えませんので、これが何を意味するのか不明です。
設定日は、解散を決議した定時株主総会の平成29年6月26日ではないので
しょうか。

 司法書士仲間に、これは何だと思うかと質問しても、答えはありませんでし
た。予想どおりですが。たぶん、期限付解散は不可だと知り、あわてて7月4
日の取締役会で決議したのだろうと推測しますが、不思議な登記でした。


2023.02.09(木)【再登場】(神奈川・酒井恒雄)

 皆様大変ご無沙汰しております、神奈川の酒井です。久しぶりに投稿させて
いただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。

 徒然日誌を読まれている方は、おそらく会社法や商業登記分野に関心をお持
ちの方が多いと思います。より具体的には何について関心をお持ちでしょうか?
M&A?それとも事業承継?、起業支援?あるいはIPO支援?

 いずれの関心も、純粋な興味はさておき、執務環境に大きな影響を受けてい
るのではないでしょうか。私の大きな関心ごとは「キャリア」についてです。

 「それって司法書士業務と何の関係があるの?」と思われるかもしれません。
これを話すと長くなりますので割愛します・・・というのが流れかもしれませ
んが、この場を借りて、その長い話をさせていただこうかと思います。

 思い返せば、キャリアに関心を持ったきっかけは、学生の起業相談だったと
思います。以前、某大学の学生団体から、起業の際の相談者として紹介を受け
ていた時期がありました。残念ながらこの学生団体は解散してしまったのです
が、沢山の相談を受けて色々と勉強をさせてもらいました。始めのうちは、相
談者に対して、「学生なのだから、どんどんチャレンジしてごらん!」という
スタンスで臨んでいたのですが、徐々に意識が変わってきて、背中を押してあ
げたいと思う一方で、「安易に起業の後押しをするのは無責任なのでないか?」
という葛藤が起こり始めました。

 私が言うまでもありませんが、現実は厳しく、成功する人より失敗する人の
方が多いのです・・・。そこで、「このまま起業させたら失敗する確率が大き
いな・・」と思った相談者には、「もう少しよく考えてみたら?」などと言っ
て、起業を思いとどまらせるような助言をしたりもしました。しかし、これが
大きな間違いであることに間もなく気づきました。(つづく)


2023.02.08(水)【インターネット版官報が添付書面に】(金子登志雄)

 数年前に合併(だったか減資だったか)の登記を申請しようと準備していた
ら、官報がみつからず焦ってしまったことがありました。

 慌てて四方八方に電話し、持っていないかを確認し、あるところから余りが
あるともらい、その場を凌ぎましたが、もうこの心配をする必要がなくなりま
した。インターネット版官報の提出が認められたためです。

 では、どうやって添付するのかということですが、必要になったら、書式集
の共著者である司法書士ソフトのリーガル社の重松取締役を頼ればいいやとの
んびり構えていたところ、同社のHPに既に掲載されていることを知りました。
下記の「リーガル社員のここだけの話」です。

  http://legal.blogat.jp/legal_blog/2023/02/pdf-e476.html

 さっそく、4月1日合併で公告した1月6日の合併公告で試してみようと思
ったら、過去30日を過ぎており、使えませんでした。他社事例の公告をエッ
ジで開き、上書保存をして試してみました。上書保存というのは元の場所に保
存で上書きするものと思い込んでいましたが、無事にパソコンに保存すること
ができました。

 クロムとエッジで官報を開いた際の画面が相違するとか、国立印刷局のファ
イルなのに公文書ではないとか(設立時電子定款は公文書フォルダですから、
ファイルとフォルダの相違でしょうか)、こういうことに疎い私ですが、いま
だに電子申請さえしていない司法書士が多数のようなので、私は平均的司法書
士でしょう。沓脱司法書士のようにツイッターまで自在に使いこなす司法書士
とは世代の差を感じてしまいますが、環境ですね。日常生活でも電子化の進ん
だ中国では老人でもスマホを使いこなしています。

 しかし、登記の電子問題は気にしていません。なぜなら、電子文書を作成す
るのは顧客であり、我々はその認証方法だけ知っていれば済むからです。それ
で困ったら、リーガル社などに駆け込めば済みます。こういう人脈も持ってい
ることが重要で全ての専門家になる必要はないでしょう。会社法・商業登記の
駆け込み寺は当事務所で引き受けていますので、どうぞご安心ください。

(東京司法書士会の皆様へ)
 困ったときの駆け込み寺本の拙著「会社法実務〔全訂第2版〕」は東京司法
書士協同組合編なのに、組合のHPに出ないなと思っていましたら、「協力会
社・提携先からのお知らせ NEW」の2月3日付に出ていました。ここは誰もみ
ないので見過ごしてしまうところですが、ぜひ開いてみてください。
 また、東京司法書士会のHPに私を講師とする2月21日付セミナーの案内
が出ていますので、こちらもよろしくお願いします。
 なお、拙著は既に発売中です。アマゾンは人手不足なのかいまだに「予約受
付」の表示です。実売に影響はないと信じますが、登記なら補正ですね。


2023.02.07(火)【プライバシー】(東京・鈴木龍介)

 「プライバシー」は英語の privacyをカタカナ表記したものですが、すっか
り日本語として定着しています。日本においては比較的新しい概念で、アジャ
ストする和訳がなかったせいか、英語のまま用いられたのかもしれません。

 プライバシーについて、国語辞典を紐解いてみると「他人の干渉を許さない、
各個人の私生活上の自由」という説明がなされています(広辞苑[第7版])。
類似した用語として「プライベート」というのがあります。こちらも英語の
privateをカタカナ表記したものですが、私事とか非公開という和訳が充てられ
ています。プライベートの対義語としてはパブリック(public)ということで、
プライバシーとは少し意味内容が異なって使われていると思います。

 プライバシーとは“守られるもの”という見方ができるかと思いますが、法
律的に整理すると「プライバシー権」ということになります。具体的には、個
人の姿や情報などの私生活上の事柄を守るための権利として、日本国憲法13条
で保障される基本的人権の一内容であるとされていますが、民法等で明文化さ
れたものではなく、解釈や判例(たとえば“『石に泳ぐ魚』事件”)による権
利になります。

   https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=76093

 しばしば芸能人などが主張する「肖像権」(自分の顔や姿態をみだりに撮影
や公表されたりしない権利)は、プライバシー権の一種とされていますが、プ
ライバシー権の侵害にあたるかどうかの線引きは難しい面があります。最近で
はSNSでの書き込みがプライバシー権の侵害にあたるものとして、大きな社
会問題にもなっています。


2023.02.06(月)【元気な老人達】(金子登志雄)

 「会社法実務〔全訂2版〕」はアマゾンで、まだ予約販売になっていますが、
今週には書店に並ぶことでしょう。しばらくお待ちください。

 さて、ウクライナ問題に関する見解の相違で、デヴィ夫人(83歳)と鈴木
宗男氏(75歳)によるお互いを「老害」と罵りあうほどのバトルは、まだま
だ若いなと世間にアピールしているようで、ほほえましく感じてしまいます。

 デヴィ夫人といってもテレビにタレントとして登場するセレブの女性としか
若い人は思わないでしょうが、私の世代からは、苦労人であり、赤坂のクラブ
ホステス時代に、インドネシアの建国の父スカルノ大統領の第3夫人になった
ものの不幸にも政変でスカルノが失脚し、若くして海外生活を余儀なくされる
など苦労の絶えない人というイメージです。それでも、あの威厳と輝きは、り
っぱなものです。

 鈴木宗男氏も北海道の田舎で家の中まで雪が吹き込む貧困家庭に育ち、国会
議員にまでなった人ですから、りっぱなものです。

 お二人の偉いところは信念で行動するところでしょうか。もっとも、なぜ、
あの共産主義までも認めていたスカルノの夫人が超右翼的な立場や言動を繰り
返すのか、鈴木氏は、ブログでの発言は素晴らしいのに、維新の国会議員であ
るのはなぜか、自慢の一人娘が自民党に鞍替えしたのはなぜかと私には到底理
解することができませんが、彼女・彼の内部では矛盾がないのでしょうから、
支持はしていませんが、認めてはいます。

 デヴィ夫人と鈴木氏のバトルであるウクライナ問題も、ゼレンスキーが大統
領でなかったら、バイデンが米国大統領でなかったら、プーチンがロシア大統
領でなかったらの3つのうち、デヴィ夫人は西側諸国の多数派であるプーチン
に原因があるといい、鈴木氏は西側では少数意見(世界的には多数派)のゼレ
ンスキーやバイデンに原因があると主張しているわけですが、私が残念に思う
のは、米国内ですら鈴木意見がそれなりに主張されているのに、日本国内では
少数意見を非国民扱いする同調圧力がものすごいことです。多民族国家でない
ためでしょうが、もう少し異なるものに対して慣れてほしいものです。

 私個人としては、「馬鹿な大将、敵より怖い!」で、為政者のせいで戦争に
巻き込まれるのはまっぴらご免という意味で、岸田総理にも、ゼレンスキーの
ように隣国を挑発し戦争を呼び込んでほしくないですし、台湾有事という米国
だけが戦争特需で儲かる戦略(誘い)にも乗らずに、10年先、20年先をみ
て日本の安全のために行動してほしいというもので、日本では少数意見です。


2023.02.03(金)【解散、清算と空振り規定】(金子登志雄)

 株式会社が解散し事業株式会社から清算株式会社に移行したら「目的」のと
ころに「当会社は、会社法第2編第9章に定めるところにより清算することを
目的とする」との登記が可能かと新保先生のブログで問題にしていました。

 昔(平成20年頃)、解散したら取締役や取締役会は職権抹消されるのだか
ら(規則72条)、株式の譲渡制限規定に登記されている「株式の譲渡による
取得は【取締役会】の承認を受けなければならない」についても、定款変更の
義務があると当局の一部から主張され、我々は猛反発したものです。登録免許
税が3万円も余計にかかり、零細企業いじめの解釈だからです。私も責任免除
規定の取締役会も変更義務があるのか、そこまで主張するなら目的も「清算目
的」に変更義務があると主張すべきだと皮肉を込めて主張していたものです。

 この当局の一部の解釈は実務の多数派になれませんでした。定款変更決議し
ない限り、「譲渡制限承認機関である取締役会」は有効に存在するという前提
で思考しており、法解釈の原則である「目的達成不能の確定=無効」という思
考を欠いていたからです。

 つまり、解散決議というのは事業会社の閉店を決議したわけですから、その
効果として業務執行機関である取締役や取締役会は自動的に失職・閉鎖になる
のは当然のことであり、定款のその部分は、形式上存在しても無意味な「空振
り」文言になり、定款の文言を直す必要はあっても、そうすべき法的義務まで
はないというべきだからです。義務があるなら、失職した取締役は義務違反で
過料対象でしょうが、それでよいのでしょうか。

 この定款変更は清算株式会社の定款変更ですから、清算人がその定款変更義
務を負うかというと、清算人の職務である「現務の結了」に含まれるとも思え
ません。会社継続の可能性もあり、その定款文言は冬眠させておけば済むこと
です(会社法を根拠に株主総会と読み替えられるので支障はありません)。

 以上に対して、事業会社時代に解散決議すると同時に譲渡制限規定の取締役
会を「株主総会」や「清算人」に変更したら、定款の文面を有効に変更したわ
けですから、これは登記義務があり、清算人はその義務を負うと考えます。

 同様に、目的も「清算目的」に変更したのなら、登記義務があると私は思う
のですが、なぜか、銀行や証券など金融関係の会社の解散では、定款変更はし
たのに、登記まではしていません(例えば、中部証券金融株式会社)。私の推
測ですが、金融庁の指導があったのではないかと疑っています。

 これにつき、清算目的では営利事業でないから登記できないのだとの見解も
あるようですが、営利事業の後始末も営利事業です。そうでなければ、清算株
式会社は非営利法人になってしまいます。

 次に、意味のないことは登記できないとの見解がありますが、1株1議決権
が種類株式の内容で登記されている例は多いといえます。「適法な一切の事業」
とか「商行為」という事業会社の目的は意味がないのに登記されています。

 もっとも清算目的を登記しなくても、2週間以内の登記義務違反で過料とい
うことにはならないでしょう。清算人の登記の存在によって清算会社であるこ
とは十分に分かるためです。結論として登記すべき法的義務(拘束力)までは
ないが、申請すれば登記されるべきだというところが穏当な解釈でしょうか。


2023.02.02(木)【スポーツのTV観戦】(島根・根来川久充)

 昨年、サッカーのワールドカップでは日本の活躍で大変盛り上がりました。
しかし、放映権の関係で、テレビでの取扱いがいままで以上に少なくなってい
ました。

 一方でインターネットでは、他国の試合もすべて見ることができ、見る側の
利便性はよくなりました。

 ただ、今回の大会は無料で見ることができましたが、これからは、お金がか
かるだろうと思いました。

 サッカーだけでなく、あらゆるスポーツを視聴する度に、お金を気にする必
要があるかと思うと、いままでテレビで無料で視聴していた時代を生きた人間
としては、何か複雑な思いになります。

 大相撲の話になりますが、今年の1月場所で、島根県出身の唯一人の関取で
あった隠岐の海関が引退しました。テレビでスポーツを見る機会がまた少なく
なりそうです。


2023.02.01(水)【合同会社の合併と対価の割当て】(仙台・立花宏)

 先日、知り合いの司法書士から、株式会社と合同会社の合併について、次の
ようなご相談をいただきました(事案を簡略化しています)。皆様なら、どう
回答されるでしょうか。

相談内容
 株式会社Aと合同会社Bが吸収合併する(存続会社はA)。株式会社Aの株
主は甲と乙で、持株比率はそれぞれ8割と2割。合同会社Bの社員も甲と乙で、
出資額はそれぞれ80と20。両社の株主(社員)資本の状況は次のとおりだ
が、この合併で、株式10株を発行し、出資比率どおりに、甲と乙にそれぞれ
8株と2株を割り当てようと思うが、問題はないか。

 株式会社A            合同会社B
  資本金      100     資本金   100
  その他利益剰余金 100     利益剰余金 100
 
 特に問題はないようにも思えますが、いかがでしょうか。なお、関与してい
る会計事務所とは、後日、詳しく打ち合わせをする予定のようです。

 私は、ちょっと気になることがあり、その知り合いの司法書士に確認してい
ただいたことがありました。それは、利益剰余金の状況です。ご承知のとおり、
合同会社においては、利益剰余金は、社員ごとに管理する必要があります。決
算が行われ、損益が確定すると、社員に分配されます。分配された利益につい
ては、各社員が配当を請求することができます。つまり、分配された利益(剰
余金)は、各社員の持分の一部となっているのです。

 会社設立後、利益の配当はなされていないそうですが、登記の内容を確認し
たところ、合同会社Bの社員乙は、会社設立後に加入したことが読み取れたの
です。そのため、利益剰余金については、甲と乙がそれぞれ8割と2割の比率
で権利を持っているとは限らないと思えたのです。

 会社の担当者に確認してもらったところ、利益剰余金100は、乙の加入前
に生じたものだということがわかりました。そうすると、合同会社Bの社員資
本200のについて、それぞれの持分は、甲が180(資本金80+利益剰余
金100)、乙が20(資本金20)ということになります。

 個人的には、存続会社株式会社甲が割り当てる株式数は、あくまでも、帳簿
価額基準で考えれば、それぞれ、9株と1株とするのが妥当と考えることもで
きるように思えました。もっとも、実際にそれぞれの持分割合を計算する場合
は、合同会社乙の最終の決算期後の業績の変動も加味した時価基準で計算する
のが妥当とも考えられ、割当ての比率の検討は、もっと複雑なのだろうと思い
ます。

 私は、相談をくださった知り合いの司法書士に、以上のことを説明し、会計
事務所との打ち合わせでは、そうした点も考慮して、会計事務所に割当ての比
率を検討してもらったほうがよいのではないか、とアドバイスしました。
 
 なお、参考までに、乙が株式会社であれば、割り当てる株式数は、その有す
る株式数に応じて割り当てる必要があります(会社法749条3項)。しかし、
条文上は、合同会社については、そうした制約は規定されていません。そもそ
も、合同会社の場合は、原則として、総社員の同意が必要であり、割当ての比
率は、出資比率に応じる必要はないのだろうと思います。

【ご案内】
 司法書士の皆様向けのご案内になります。これまで、何度か、この徒然日誌
で、新しい法人類型である「労働者協同組合」について、ご紹介してきました。
このたび、日本司法書士会連合会が主宰する研修会(開催日:3月3日(金))
において、この労働者協同組合に関する研修会の講師を務めさせていただくこ
とになりました。同研修会では、日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連
合会のご担当者による制度創設の背景等のご講演もいただく予定です。今後、
登記関係のご相談も増えていくものと思います。日司連研修総合ポータルで募
集しておりますので、ご興味のある方は、ぜひ、お申込みください。


2023.01.31(火)【大阪司法書士会 研修】(東京・鈴木龍介)

 先週の1月28日(土)、大阪司法書士会(大阪会)にお招きいただき、研
修の講師を務めて参りました。大阪会は東京司法書士会に次ぐ大規模会(会員
数約2450名)ですが、研修講師としてお話しさせていただくのは2014
年以来です。

 今回のテーマは「司法書士のための事業承継とM&A+α」というもので、
旧知の大阪会の北詰健太郎さんにジョインいただきました。

 本研修会は、大阪会の会館とオンラインによるハイブリッドの形式で開催さ
れましたが、極寒の中(道中の米原あたりは完全に雪景色でした)、会場には
30名を超える先生方にご参加いただきました。ありがとうございました&お
疲れさまでございました。

 司法書士会での企業法務関係の研修の講師は久しぶりでして、具体的には、
以下の3部構成で、あっという間の4時間でした(話している方はですが)。

 パート1:前提知識の整理~中小企業の事業承継とM&A
 パート2:ケーススタディ~事業承継型M&A(株式譲渡スキーム)
 パート3:ディスカッション~中小企業法務のエッセンス

 研修終了後の懇親会では、大阪会の執行部をはじめ担当委員会の皆さまに過
分なおもてなしをいただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。


2023.01.30(月)【短時間の天下でしたが、拙著が快挙!】(金子登志雄)

 27日金曜日は生涯忘れられない記念の日になりました。夜中の8時半に、
アマゾンで会社法本の売行きランキングをみましたら、目を疑いました。
  第1位:会社法実務〔全訂第2版〕
  第2位:親子兄弟会社の組織再編の手続〔第3版〕
  第3位:株式交付活用の手引き
であり、拙著が金銀銅の独占でした。

 しかも、組織再編の手続〔第3版〕が従来どおり会社法カテゴリーに加わっ
ていたら、「第1位:組織再編の手続〔第3版〕」となり、第4位まで独占で
した。もちろん、奇跡であり、こんなことは2度とありえないことですので、
印刷して保存しました。案の定、短時間の天下でした。
     (現時点のランキング)
        https://is.gd/QhYD5G

 こんなこともあるのですね。きっと、どこかの大手法律務所や図書館などが
改正会社法施行後の書籍を備え置くためにまとめ買いしたのでしょうが(他書
は改訂が済んでいない可能性が高い)、詳細は不明です。それでも、快挙は快
挙です。ありがたく結果を受け入れさせていただきます。

 改めて20年前に私の出版を受け入れてくれた中央経済社に感謝です。当時
は司法書士の地位がまだまだ低く、受験参考書以外に司法書士が出版した本は
なく、権威を重んじる出版社は司法書士が実体法(当時は商法)の本を出して
も売れるわけがない、あるいは出版したら出版社の格が落ちるとでも考える傾
向が強く、司法書士による実体法解説の出版は容易ではありませんでした。

 そこで、会計税務中心の世界は開放的なので、思い切って、当事務所の近く
の中央経済社のHPの連絡先にメールしたら、法律編集部の編集長がわざわざ
訪ねてくれ、私の原稿をちらっとみただけで、これは面白いと一存で快く引き
受けてくださいました。このS編集長(定年退職済み)は私の恩人の一人です。
S編集長の社内の立場を悪くしては申し訳ないと、売れやすいように題名を挑
発的にしたり、縦書の対話調にしたりと練りに練った結果、数か月間連続増刷
という快挙でした。平成15年2月に出版した『これが新商法だ!これが新登
記だ!』のことでした。

 同社とはそれ以来の付き合いですが、アマゾン会社法カテゴリー上位100
位以内に、拙著が常時数冊入るようになりましたし、今回の快挙のようなこと
があると、私もS編集長や中央経済に恩返しができたような気持になれ、気が
休まります。見知らぬご注文主に深く厚く御礼申し上げます。


2023.01.27(金)【職務執行者変更登記の手法の差】(金子登志雄)

 昨日の続きですが、調べたら、平成25年に私が合同会社の設立登記をして
おり、当初から職務執行者はABの2名であり、Aの部分だけで5人も交代し
ていました。4人までの交代は無事に「代表社員変更」で済みましたが、5人
目で「職務執行者辞任・就任」だといわれたわけです。

 私の思考は、単なるAの辞任、C就任の場合は「職務執行者辞任・就任」で
あり、Aの辞任に伴い後任のC就任の場合は、A枠の代表社員変更だというも
ので、ずっとそれで通してきました。つまり、単なる減員、増員、減員と増員
の同時のほかに、交代という概念を持ち込んだわけです。

 私見によれば、ABが同時に辞任し、CDを追加した場合は、原則は、2名
減員(職務執行者辞任)と2名増員(職務執行者就任)だが、Aの後任(交代
要員)としてC、Bの後任としてDという場合は、A枠とB枠の代表社員変更
が妥当だというものです。

 もっとも登記原因が「職務執行者辞任・就任」であっても、それは「職務執
行者辞任・就任に伴う【代表社員変更】」の登記であることに変わりがありま
せん。職務執行者自身は独立の登記事項ではなく、代表社員の住所などと同じ
く代表社員の登記事項の部分でしかないからです。結局は、どう登記するかの
問題ですが、分かりやすさからいうと「職務執行者辞任・就任」、実体法理論
からいうと「代表社員変更」でしょう。

 代表社員変更のほうがA枠が残され、代表社員の就任日が残され、登記記録
上も有利だと思っていましたが、昨日、登記記録をみていたら、そうではない
ことに気づきました。

 例えば、代表取締役であれば、9年前の平成25年就任で任期10年であれ
ば、いままで何度も住所を移転しても「平成25年就任」は登記記録に残るの
に、代表社員の職務執行者の変更の場合は、それが消されてしまい、「年月日
変更」だけが残されていました。あたかも、代表社員が重任したかのように、
過去記録が履歴事項から閉鎖事項に移されていました。どうも、同じ代表社員
の登記事項の一部分でも住所の変更の場合と人物の変更の場合は登記システム
の取扱いが相違するようです。


2023.01.26(木)【職務執行者複数の一部変更登記】(金子登志雄)

 合同会社で「法人社員、職務執行者」といえば、外資系が中心でほとんどが
東京都港区に所在します。Apple Japan合同会社などです。法人社
員は外国に所在する会社です。

 千代田区に事務所のある当事務所では、こういう会社からの依頼はないので
すが、唯一、法人社員も日本法人である会社が顧客に1社あります。職務執行
者が交代するときだけ数年に1度程度の割で仕事が来ます。

 こういう会社の法人社員が甲株式会社だとすると、職務執行者はほとんどが
複数存在し、登記記録では、次の(1)と(2)の2つが登記されています。
 (1)代表社員甲
    職務執行者A
 (2)代表社員甲
    職務執行者B
 2つとも代表社員甲の登記であり、職務執行者自身の登記ではないのですが、
印鑑届などが職務執行者単位なので、取締役の登記のように職務執行者ごとに
登記されます。登記システム上の理由です。

 さて、この会社で職務執行者AをCに交代させる場合の登記はどうするかと
いうと、通常は(1)を「年月日職務執行者辞任」で抹消し、次の(3)を追
加します。ちょうど、取締役ABにおいてAが辞任したのでCを選任した登記
とほぼ同様です。
 (3)代表社員甲
    職務執行者C

 しかし、私は、職務執行者がAからCに交代したことを登記記録に表したい
し、職務執行者は代表社員の住所と同じく代表社員の属性にすぎないのだから、
(1)につき「年月日(代表社員)変更」で登記する方法を採用してきました。
過去2回これで何もいわれず受理されていました。

 ところが3度目の今回は、職務執行者が1名であれば代表社員変更でよいが、
複数の時は職務執行者辞任・就任で登記すべきだと補正を受けてしまいました。

 登記記録例をみる限り、そう思うのも自然ですから、普通の方法でないので
引っかかったようです。しかし、職務執行者ごとに登記するのは登記システム
上の都合にすぎず、本来は代表社員変更のはずだと、登記情報691号50頁
以下の「職務執行者複数の変更登記」を添付し説明しましたところ、あっさり
受理されました。

 たぶん、職務執行者辞任・就任でなく、代表社員変更で登記しているのは私
1人でしょうが、これは私が登記法よりも実体法を重視しているせいでしょう。
面白い経験でした。


2023.01.25(水)【分割型新設分割の構造】(金子登志雄)

 正月4日に申請した登記も全て終わり、退屈な日々が続いています。

 さて、4日には面白い登記をしました。分割型新設分割なのですが、新会社
には一切の債務を移転しないのです。分割型新設分割は会社法の下では、次の
構造を有します。

 「分割型新設分割=①分社型新設分割+②受領新会社株式の配当」

 この場合、①と②は別々に決議してかまいません(会規205条2号ロ)。
①が簡易分割なら取締役(会)の決定だけで済み、②の株主総会決議に合わせ
る必要もありません。

 ここで、ふといたずら心が生じ、新設分割計画を①と②に分断し、②は登記
事項ではないから、債務が移転しない新設分割として、①だけを債権者保護手
続が終わる前に登記してしまったら、登記が受理されるだろうと思いました。
新設分割ですから効力発生日もありません。

 ただ、①と②が完全に別個の行為であれば、そもそも分配可能額の枠内であ
れば、債権者保護手続が不要です。

 では、その場合にもなぜ債権者保護手続が必要だとされているかというと、
会社財産が減少するからですが、それなら、通常の配当でも同じじゃないかと
いいたくなります。

 結論として、①と②の2つの行為で決議は別々になされても、分割型新設分
割という1つの合成行為だから、以上の考え方は無理です。

 第1に、①も②も同じ条文に規定されています。
 第2に、旧商法の人的分割を合成行為に変更しただけです。
 第3に、完全に別個であれば、②について異時でもよく債権者保護も 不要
のはずだが、そうなっていない。これは分配可能額だけの問題とは思えない。
つまり、債権者保護は ②についてではなく、合成行為自体に必要になってい
る、という理由です。

 きっと税務問題にも影響するのでしょうが、こと法務問題としては、分配可
能額の枠内である限り、①が終わり、異時に②を単独で行ったほうが、債権者
保護手続が不要になる点で便利ではないかと考えました。


2023.01.24(火)【株式会社の区分の変遷】(東京・鈴木龍介)

 昭和49年の商法改正に際し、新たに制定された「株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律」(監査特例法)により「資本金」を基準として監査の観点から株式会社を以下のとおり3つに区分することとなりました。なお、当該区分については、登記事項とはされませんでした。

 

資本金

監査役の権限

会計監査人
監査

大会社

5億円以上

会計監査+業務監査

強制(※1)

中会社

1億円超5億円未満

会計監査+業務監査

任意(※2)

小会社

1億円以下

会計監査

不可

(※1)上場会社以外の会社については資本金10億円以上が対象とされました。
 (※2)会計監査人監査を任意で導入した中会社については「みなし大会社」と称されました。

 昭和56年の監査特例法の改正により、その区分の基準については「資本金」のほかに「負債」が加わり、負債総額200億円以上の会社は大会社とされました。 

平成17年に制定された会社法の制定により、同法の施行とともに監査特例法は廃止となり、それまで3つに区分していたものを以下のとおり2つに区分することになりました。あらたな区分では、監査の観点だけでなく、機関設計等多面的に株式会社を区分する指標となりましたが、引き続き登記事項とはなっていません。

 

資本金等

監査役の権限

会計監査人
監査

大会社

資本金5億円以上または
負債200億円以上

会計監査+業務監査

強制

非大会社

資本金5億円未満

公開会社

会計監査
+業務監査

任意

非公開会社

業務監査限定可

 

2023.01.23(月)【思い込み禁止】(金子登志雄)

 金曜日に「会社法実務〔全訂第2版〕」の予約販売がアマゾンに登場したと
書きましたら、一時的でしたがアマゾンで急に売上順位があがりました。本欄
の閲覧者が注文したものと思われ、厚く御礼申し上げます。

 本欄の閲覧者は大部分が司法書士だと想像していますが、企業法務専門事務
所かどうかは分かりません。試しに、ネットで「企業法務 専門 司法書士事
務所」と検索しましたら、多くの事務所がヒットしましたが、知らない事務所
ばかりでした。

 企業法務事務所でそれなりに知られている当事務所や鈴木龍介事務所、また、
電子署名に詳しい新保さゆりさん、渉外法務に詳しい草薙智和さん、合同会社
に詳しい立花宏さん、早くから企業法務に専念していた古山陽介さん、老舗の
〇〇事務所、新興の沓脱事務所など、お互いに面識があり、何かあると、これ
これについて経験者はいませんかとか、補正になったが他の法務局ではどうか
などといった情報及び意見交換していますが、そうでない事務所はどうなさっ
ているのでしょうか。テイハンの登記研究を仔細に調べても松井ハンドブック
をみても掲載されていない論点は大量にあります。

 勝手な想像で申し訳ありませんが、登記というのは知識がなくとも書式を真
似したり登記所と相談しながらすれば受理されてしまいます。したがって、難
解な種類株式や新株予約権を経験したと誇られても、少しも驚きません。

 雇用司法書士数の多い企業法務専門事務所が扱った案件に上場寸前にミスが
みつかり、証券代行経由で後始末をしたことが何度もあります。せめて、企業
法務専門事務所を名乗るなら、十分に理解してから申請し、同事務所の複数人
でチェックすることを怠らず、独りよがりの思い込みのまま申請することを避
け、単なる代行屋でないことを示してください。

 ところで、思い込み禁止につき、よい時事ネタがありました。日本国内では、
ウクライナの次は「台湾有事だ」などといわれていますが、台湾の民衆は米国
や日本の軍事支援をどの程度求めていると思いますか。100のうち、70で
すか、80ですか、90ですか。

 下記サイトの円グラフだけでもみてください。100のうち50にも達して
いませんでした。ペロシの訪台は逆に台湾を中国に近づけてしまったこと、米
国と距離をおいてこそ台湾の安全が保たれるという意識が多数でした。
  https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20230120-00333655


2023.01.20(金)【会社実務改訂版発売と東京会セミナー講師】
                            (金子登志雄)

 本日は表題の宣伝にさせてください。

 さて、昨日、私に質問メールを送ってくださった司法書士さんから「事例で
学ぶ会社法実務(全訂第2版)をアマゾンで予約しました!」と知らされ、び
っくりしてしまいました。かなり前からアマゾンに登場していたのだとか。
       
        https://is.gd/bUOEbU

 会社法ジャンルしかチェックしない著者の私は、全く気づきませんでした。
実は、従来は出版社がアマゾンに会社法と登記と〇〇のジャンルでも見られる
ようにと希望すればかなえられたのですが、最近はそれが通じなくなったよう
です。したがって、拙著の親子本改訂版は会社法の売れ筋ランキングに登場す
るのに、組織再編の手続は登場しません。どちらが売れ筋かは、全部のジャン
ルの順位で比較しないと分かりません。

 ひどいのは「会社法」法令集第14版です。「会社法」という名がつくのに、
会社法ジャンルに加わっていないのです。これだけで売行きに影響するのに、
アマゾンは商売っけがないのか、単なる担当者次第なのかは分かりません。

 親子本や組織再編の手続は組織再編に特化していますが、会社法実務(全訂
第2版)は株式会社限定ですが設立も、株式も、機関も全部を対象としており、
日常実務に役立つ内容ですが、この改訂で80問も追加しました。会社法実務
百科事典を目指しておりますので、私の著書の中では一番利用度が高いと思い
ますので、ぜひご購入をご検討ください。

 この中の新論点のいくつかは、2月21日開催の東京会の専門研修(ズーム
研修)で話しますので、東京会の司法書士はこちらの出席もご検討ください。

 募集定員は980名のようで、無理だと焦ってしまいました。他の研修だと
募集定員が480名程度であり、満杯の応募があったといわれてよい気持ちに
なっていましたが、980名では無理です。

 ということを研修担当に話したら、専門研修はテーマや講師と無関係にいつ
も定員を980名にしているだけだと説明され、ほっとしました。

 いずれにせよ、会社法の研修はブームが過ぎてしまったため、私がセミナー
講師を務めるのは2年ぶりです。他では味わえない会社法の切り口をテーマに
しますので、こちらもよろしくお願いします。


2023.01.19(木)【自由な発想】(金子登志雄)

 昨日ご紹介した沓脱司法書士のツイッターに「私の会社法の基礎と自由な思
考は金子先生に教わりました」とありました。

 私、根がものぐさなので勉強家ではありません。その代わり、いつも与えら
れた課題について、ああでもないこうでもないと自由な発想で様々な角度から
自問自答しており、そこで条文を確認したり、文献を調べたりしていますが、
分からないままでも、ふと何かの拍子に答えがでることがあります。ちょうど
数学の応用問題が解けなかったのに、あるときふとひらめくのと同じです。沓
脱さんは理工学部出身なので、私の思考方法に違和感がないのでしょう。

 沓脱さん達に「イギリスではバターはパンを食べるためにあるのではなく、
バターを食べるためにパンがある(=パンはバターの欠片を乗せる台にすぎな
い)という話を聞いたことがあるが、これと同様に、醤油をおいしく食べるた
めに寿司があると考えてみることも重要だ」と話したら、こういう思考方法を
面白がってくれました。風呂場でも私は、いま自分は体を洗濯台にしてタオル
を洗っているのだと意図的に思考してみたりします。

 この思考で、合併は合併して解散するのではなく、解散して合併するのだ、
現物出資説が正しい、100%子会社同士の合併は、株主割当と同じく合併比
率を問わないのだから、合併比率1対0でもいいじゃないかと思い、無対価合
併を旧商法時代に考案しました。いずれも、顧客から、こうすることができな
いかと聞かれたり、法務局の補正などがあったときに、必要により考え付いた
ものです。これが昨日の漫画の「顧客は最良の教師」の意味です。

 自由な発想といえば、れいわ新選組が鬱病で参院議員を辞職した水道橋博士
の後任として5人を1年ごとのローテーションにしたことに感心してしまいま
した。比例の当選で、党への支持ですから、違和感もありません。これで国会
議員の経験者が増えれば党の発展にも有利でしょう。いいことずくめです。
(注)いいこと「づ」くめは誤りのようです。「ずくめ」と「づくし」の相違
のようです。

 5人の1人である辻恵弁護士=機動隊と学生が1967年に衝突した羽田闘争で
死亡した山崎君の高校の同級生で彼の死亡にショックを受け政治家になった人
=のツイッターによると、ドイツの緑の党で実例があるそうですから、山本代
表が最初に発見したとはいえないようですが、それでもすごいことです。

 れいわの山本代表は高校中退で芸能界に入りましたから、自ら学歴は中卒だ
と説明しています。ユーチューブで彼の演説や質疑応答を視聴してみると、た
いへんな勉強家であるだけでなく、発想が自由です。特別枠で障碍者の方を国
会に送るなど誰が気づいたでしょうか。へたに高校や大学に進まなかったのが、
自由な発想のためにはよかったのかもしれません。


2023.01.18(水)【新時代の司法書士像のご紹介】(金子登志雄)

 いま、キンザイ登記情報誌の下記がじわじわと評判を呼んでいます。
        https://is.gd/CB66ei

 書き手は下記の方で私もよく知っている明日の司法書士業界のホープの一人
である沓脱司法書士です。
       https://tos-group.co.jp/company

 ツイッターもやっていますので、そちらから引用すると彼の言いたいことは、
次でしょう。彼の事務所に入社した司法書士への感想です。
-----------------------------------------------------------------------
 司法書士業界からの転職メンバーが入社して最初にぶつかる壁が「登記思考」
です。最適な選択肢かどうか検討せず依頼のまま処理しようとしてしまう。実
体法やビジネス視点の考察ができない。思考しない癖がついてしまっているの
だと思います。この壁を壊し本来の能力を発揮できる環境が弊社にはあります
-----------------------------------------------------------------------

 司法書士はこれまで苦労せずに生活できたため、創意工夫の訓練ができてい
ない、能力を発揮できず、実にもったいないといいたいようです。

 たぶん、同じ繰り返しの不動産登記のことだと思うのですが、商業登記でも
同じ繰り返ししかしない同業者も多く、そういうものだと思い込んでしまった
のでしょう。しかし、私は、たかが役員変更登記でも、全て個別対応で最も適
切な方法を考え、議事録案にも創意工夫を凝らし、毎回毎回楽しんでいます。

 M&A手続コンサルタントから27年前に司法書士を兼業した私は、当時に
おける新時代の司法書士でした。登記よりも、登記前の合併契約書の作り方、
議事録の作り方などを重視し、登記法よりも実体法を優先する司法書士でした。
実体法(商法)の実務書を出版したのも司法書士では、たぶん最初でした。
       
 あれから27年、後続が次々と増えてきたと思ったら、沓脱司法書士はさら
に業務範囲を拡大し、企業のIPO等の支援事業まで拡大しており、恐れいり
ましたというしかありません。登記知識だけではできない仕事です。そのチャ
レンジャー精神に感心してしまいます。

 難しい試験に合格し、司法書士になったのに、こんなはずではなかったと、
下記の漫画のように、がっかりしている方は、廃業して会社勤務になるよりは、
上記トピックスで募集していますので、沓脱事務所など企業法務専門事務所に
勤務してみてはいかがですか。いまや大都市には必ずあります。
    (顧客こそ最良の教師)      
       http://esg-hp.com/manga.pdf

 ただし、何事にも適性があります。上から指示されないと動けない人や、頭
の固い人は新環境に適合できず、自信を喪失しかねませんので、創意工夫を面
白い、楽しいと感じる方に限ります。
        

2023.01.17(火)【『調停等の条項例集―家事編―』】(東京・鈴木龍介)

 昨年、令和4(2022)年は調停制度が創設されてから100年を迎える
年でした。

「そのお悩み、裁判所の調停で解決しませんか?(調停制度発足100周年)」

 https://www.courts.go.jp/saiban/wadai/202201tyoutei100-1/index.html

 そのような中、『調停等の条項例集―家事編―』(本書)が司法協会から刊
行されました。
       http://www.jaj.or.jp/books/

 本書は、家事調停のメインともいえる離婚と相続に関する調停調書の条項記
載例集です。経験豊富な元裁判官で、弁護士である筆者による丹念な検証等が
なされた本書は、登記実務という観点においても有用有益であり、司法書士と
しても、いざという時に頼りになる一冊として手元に置いておいて損はないの
ではないかと思います。

 私自身、けっして得意とはいえない分野でしたが、ご縁があって微力ながら
監修というかたちで携わらせていただき、たいへん勉強になりました。

 本書は全179ページとコンパクトですが、内容的(以下、目次)にはさま
ざまケースを想定したものとなっています。

 第Ⅰ章 調停離婚等の条項例
  第1 管轄が問題となる事例の条項例
  第2 離婚調停条項例
  第3 離婚に関連する条項例
  第4 夫婦間の紛争に関する条項例
  第5 親子関係の紛争に関する条項例
  第6 扶養等に関する条項例
  第7 男女間の紛争に関する条項例
  第8 婚姻外の男女関係に関する条項例

 第Ⅱ章 相続の条項例
  第1 遺言に関する条項例
  第2 相続人に関する条項例
  第3 相続分に関する条項例
  第4 遺産の範囲等に関する条項例
  第5 遺産分割に関する条項例
  第6 遺産分割の方法に関する条項例
  第7 寄与分・特別の寄与に関する条項例
  第8 遺留分侵害に関する条項例
  第9 配偶者居住権に関する条項例


2023.01.16(月)【労働者協同組合への組織変更の添付書面】
                           (仙台・立花宏)

 皆様、今年はじめての投稿です。今年も時々ですが、投稿させていただくと
思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、新年の最初の投稿は、昨年、創設された労働者協同組合の話題です。
昨年10月27日の本欄で、企業組合とNPO法人が、労働者協同組合法施行
後3年間に限り、労働者協同組合に組織変更をすることができることを紹介し
ました。

 組織変更をするには、組織変更計画書を作成し、総会で承認を受けなければ
なりません。ところで、組織変更の登記をする際、この総会の議事録の添付は
必要でしょうか。

 実は、10月27日の投稿の注でもこの点に触れています。組織変更の登記
の根拠法である労働者協同組合法施行令では、組織変更計画等の添付について
は記載されているのですが、組織変更計画を承認した総会の議事録の添付につ
いては触れられていません。労働者協同組合の登記については、令和4年9月
21日法務省民商第439号通知が発出されていますが、その通知にも、“当
初は”触れられていませんでした。

 よって、添付は不要とも思えたのですが、他の組織変更の登記では添付が必
要であり、私見は、添付はした方がよいのだろうと前記投稿では記述していま
した。

 しかし、最近、法務省のHPの通達にある前記通知をみたところ、組織変更
の登記の代表理事の就任についての添付書面(通知の36ページ)について、
次のような記載がありました。

「組織変更計画において、定款に定める事項として代表理事の氏名を記載した
場合は、(略)、総会の議事録並びに代表理事が理事及び代表理事に就任を承
諾したことを証する書面の添付が必要となる。
 また、組織変更の効力発生日以降に開催する理事会で代表理事を選定する場
合は、総会の議事録、当該理事会の議事録並びに代表理事が理事及び代表理事
に就任を承諾したことを証する書面の添付が必要となる。」
(下線は筆者による)

組織変更計画を承認した総会の議事録とは書いてありませんが、代表理事が
理事に就任したことについての総会の議事録の添付が求められており、理事は
組織変更計画に記載され、それが承認されることにより選任されるのですから、
実質的に組織変更計画を承認した総会の議事録の添付が必要ということになり
ます。

 これを読むと、総会の議事録の添付が必要であることが明らだということに
なります。

ただ、当初の通知の記載とはちょっと違うように感じ、当初の通知の同じ個
所を確認してみたところ、次のようになっていました。

「組織変更計画において、定款に定める事項として代表理事の氏名を記載した
場合は、(略)、代表理事が理事及び代表理事に就任を承諾したことを証する
書面の添付が必要となる。
また、組織変更の効力発生日以降に開催する理事会で代表理事を選定する場
合は、理事を選任した総会の議事録、当該理事会の議事録並びに代表理事が理
事及び代表理事に就任を承諾したことを証する書面の添付が必要となる。」
(下線は筆者による)

 前記した通知の下線部と見比べてみていただければと存じます。少し、修正
になっているようです。

 当初の通知では、少なくとも前段部分では、総会議事録の添付を求めていま
せんでしたから、10月27日の投稿では、その添付が必要なのかどうかの疑
義を記述していました。それに対し、修正された通知では、添付が必要である
ことがはっきりしているということです。

 通知は法務省の内部文書でしょうから、内部では、修正の手続がとられたの
かもしません。登記の場合、誤った申請をして更正登記をした場合は、登記事
項証明書にもそれが記載されてきます。通知は、HPに掲載され、公示されて
いるのですから、修正があったのであれば、その旨がわかるようにしていただ
けたらありがたいと思いました。


2023.01.13(金)【押印規定の見直し】(金子登志雄)

 印鑑提出任意化に関する令和3年1月29日民商第10号通達に「法令等又
は慣行により,国民や事業者等に対して押印を求めている行政手続については、
「経済財政運営と改革の基本方針2020」(略)及び「規制改革実施計画」
(略)に基づき、各府省は,原則として全ての見直し対象手続について、令和
2年中に,順次必要な検討を行い,法令,告示,通達等の改正を行う(略)こ
ととされた」とありました。

 なるほど外からの圧力で変えたわけですね。前々から、法律を適用するのが
行政官庁のはずなのに、資本金計上証明書や株主リストに届出印を押さないと
受理しないなど、何のために委任状に届出印を押させているのか、二重ではな
いか、登記所が法律を作っているのと同じではないかと不思議な気がしてなり
ませんでした。これですっきりです。

 特に下記の組織再編の株主リストにつき違和感がありました。債権者保護の
催告したことを証する書面であれば、申請会社が非申請会社分まで証明しても
よいのに下記では作成者を指定しているのです。法律上の根拠があるのでしょう
か。
     https://www.moj.go.jp/content/001214713.pdf

 新保さんのブログで気づいたのですが、会社計算規則49条2項には「新設
分割設立会社の資本金及び資本剰余金の額は、株主資本等変動額の範囲内で、
【新設分割会社が】新設分割計画の定めに従いそれぞれ定めた額とし」とあり、
52条2項には、「当該株式移転設立完全親会社の設立時の資本金及び資本剰
余金の額は、株主資本変動額の範囲内で、【株式移転完全子会社が】株式移転
計画の定めに従い定めた額とし」とあるのに、基本通達(民商第782号)で
は、申請会社(新会社)の添付書面になっているのですね。

 これを根拠に小川・相澤編著『通達準拠/会社法と商業登記』などは申請会
社が証明者だと説明していますが、これは通達の勘違い読みだと思います。通
達には合併消滅会社の催告したことを証する書面も新設分割会社のそれも分割
会社の手続書面とされていますが、登記申請では申請会社に添付します。

 つまり、分割会社が作成しようが株式移転子会社が作成しようが申請会社の
申請の添付書面です。通達は作成者についてまで定めていません。法律上の根
拠のない運用は、押印と見直しと同様に見直すべきではないでしょうか。


2023.01.12(木)【謹賀新年】(金子登志雄)

 本年は、鈴木さんにトップバッターを引き受けていただきましたが、私から
も、新年おめでとうございます。

 さて、今年はどんな年になるのかと聞かれ、タモリさんが「新しい戦前」と
答えたことがネットで話題になっていますが、彼の着眼は鋭いですね。現在の
世相をみごとに捉えています。歴史は繰り返すのでしょうか。

 昔、日中国交回復などで米国の逆鱗に触れた田中角栄首相が「戦争を知って
いる世代が政治の中枢にいるうちは心配ない。平和について議論する必要もな
い。だが戦争を知らない世代が政治の中枢になった時はとても危ない」といっ
ていましたが、安倍さんという戦争を知らない世代が日本のトップになってか
ら、この傾向が急加速しました。

 いざ戦争になったら、きっと隣国の中国、北朝鮮、ロシアから、日本にある
原発と米軍基地にミサイルが飛んでくることでしょう。それで日本は終わりま
すが、中国やロシアは領土が広大なので、逆襲の効果は限定的でしょう。どう
みても日本に有利な面はないと思うのですが、こういうことを言い出すと叩か
れてしまう世相になってしまいました。

 国益重視の田中角栄氏なら北京に飛び外交努力に勢を出したことでしょう。
エネルギー問題でも国益を考え中東に飛びました。これらが米国の逆鱗に触れ
てしまい、その後の中曽根首相以降は、国益よりも米国の利益を優先しないと
長期安定政権になれないと学習してしまいました。これが残念ながら日本の戦
後史です。いや敗戦国の生きる道だったのかもしれません。

 正月には相応しくない内容になってしまいましたが、本年も、依頼者の利益
を優先し、法務局と見解の相違があっても上手な交渉を心掛け、自己主張して
まいりますので、よろしくお願い申し上げます。


2023.01.11(水)【東日本大震災から12年】(島根・根来川久充)

 皆様、あけましておめでとうございます。

 本年はうさぎ年ですが、12年前のうさぎ年の3月に東日本大震災がありま
した。

 私の感覚としかいいようがないのですが、東日本大震災とうさぎ年を結びつ
けて記憶をしています。

 当時、福島原発の事故は、チョルノービリ(チェルノブイリ)の事故以来の
大きな原発事故として取り上げられました。

 まさか、12年たたないうちに、チョルノービリをはじめとするウクライナ
の原発に世界が注目するとは、当時だれも予想しなかったでしょう。そして私
自身も、原発に対して否定的な考えが、今は肯定的な考えに変わりました。

 私の視野が広がったのか、人生経験がそうさせたのかは、わかりませんが、
考えることは年々増えてきている気がします。

 次のうさぎ年で、また考えが変わるかもしれませんが、いろいろ考えた結果
だとは思いますので、気にせずこれからの日々を大切にして生きていけたらと
思います。

 2023年のうさぎ年がみなさまにとって、良い年になりますようご祈念申
し上げます。


2023.01.10(火)【謹賀新年2023年】(東京・鈴木龍介)

 令和5(2023)年の最初の登場ということで、まずは
“明けましておめでとうございます。”

 今年のお正月は、地域差があるかもしれませんが天候にも恵まれ、なんとな
くゆっくり過ごすことができました。毎年、元旦から原稿書きに勤しんでいま
したが、この年末年始の12月31日から1月2日までの間はパソコンも開か
ず(iPadでメールチェックはしましたが・・・)、シゴトと全く関係のない読
書をしたり、映画(自宅でDVDですが)を見たりしていました。

 さて、今年はどうかというとマクロ的な観点としては、終わりのない(?)
コロナ禍に、これまた先の見えないウクライナ侵攻、くわえて円高や利上げと
いった感じで、あまり明るい兆しが見えません。そのような中で少しでも世界
がよい方向に向かうためにどう対処すべきかを1人1人が考える必要があると
思っています。

 個人的な関心としては、改正民法・不動産登記法が本年4月に施行になりま
すので(相続登記の義務化については令和6年4月1日施行)、司法書士とし
て具体的かつ本格的に取り組む必要があると思っています。また、担保法制の
見直しに関する法制審議会の議論も大詰めを迎え、目が離せないところです。
 
 私個人としては、例年のごとく夢はもとより格別の目標などもありませんが、
目の前のことを1つずつきちんと丁寧に対応し、少しでも皆さんのお役に立て
ればと思っています。

 最後になりますが、数年前より公私ともに年賀状を廃止しました関係で、年
賀状を頂戴いたしました方々には、この場を借りまして御礼と欠礼のお詫びを
申し上げます。

 本年も毎週火曜日を担当したいと思っておりますので(金子さん、よろしい
でしょうか?)、どうぞよろしくお願いいたします。

過去徒然

マンガ司法書士開業成功

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