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こんにちはESG法務研究会です

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ESG法務研究会は、合併再編等会社法手続の実績は最大級!

TOPICS


1.最近の出版は次のとおりです。いずれも実務書であり、アマゾン等で、
 ご確認ください。
 (1)『募集株式と種類株式の実務〔第2版〕』…………2014年5月発売
 (2)『改正会社法と商業登記の最新実務論点』…………2015年11月発売
 (3)『論点解説/商業登記法コンメンタール』…………2017年2月発売
  (4) 『商業登記実務から見た中小企業の株主総会・取締役会』
                       …………2017年4月発売
  (5)『総務・法務担当者のための会社法入門』…………2017年10月発売
  (6)『事例で学ぶ会社の計算実務』………………………2018年9月発売
 (7)『商業登記実務から見た合同会社の運営と理論〔第2版〕』
                       …………2021年5月発売
 (8)『「株式交付」活用の手引き』………………………2021年7月発売
 (9)『親子兄弟会社の組織再編の実務〔第3版〕』……2022年9月発売
 (10)『組織再編の手続〔第3版〕』………………………2022年10月発売
  (11)『「会社法」法令集〔第14版〕』…………………2022年11月発売
 (12)『事例で学ぶ会社法実務【全訂第2版】』…………2023年2月発売
  (13) 『商業・法人登記500問』……‥‥‥‥‥………2023年7月発売
  (14) 『法人登記実務から見た労働者協同組合の運営』…2023年7月発売
 (15)『会社法務書式集〔第3版〕』………………………2023年7月発売

2.当事務所と親しい企業法務中心事務所が戦力となる人材を募集しています。
 下記に直接連絡してください。

(1)司法書士法人TOSグループ
 https://tos-group.co.jp/recruitment/

(2)東京共同司法書士法人
 http://corporate-legal-services-tokyo.com/

徒然日誌


2024.03.19(火)【弁理士とは】(東京・鈴木龍介)

 先般、国家資格者である中小企業診断士を取り上げましたが、今回は、「弁
理士」にフューチャーしてみたいと思います。

 弁理士は、弁理士法に基づく国家資格であり、知的財産の創出や知的財産権
の取得、活用をサポートする“知財”の専門家です。

 弁理士制度の沿革ですが、明治17(1884)年に商標条例、その翌年に
「専売特許条例」が制定され、明治23(1890)年に特許局事務官が神田
と築地に開設した「東京特許代言社」が弁理士のはじまりと言われています。

 明治32(1899)年に施行された特許法に基づく「特許代理業者登録規
則」により法律知識のある特許申請の代理人が誕生することとなりました。明
治42(1909)年には名称が「特許代理業者」から「特許弁理士」となり、
大正10(1921)年に制定された弁理士法により現行の「弁理士」に改称
されました。大正11(1922)年には弁理士会が設立され、第1回の弁理
士試験が実施されました。そして、平成12(2000)年に司法書士等より
早く、法人化(当時は「特許業務法人」という名称でした)が認められました。

 弁理士になるためには、弁理士試験に合格し、弁理士登録をする必要があり
ます。受験資格に制限はありません。試験は筆記試験と口述試験で構成され、
筆記試験のうち短答式試験(一次試験)の合格者が論文式試験(二次試験)を
受験することができ、さらにその合格者が口述試験(三次試験)に進むことが
できます。弁理士試験には試験科目免除制度があり、なんと司法書士について
も選択科目のうち法律(弁理士業務に関する法律)の論文試験が免除の対象と
なっています。令和5(2023)年度の弁理士試験の受験者は3,417人、
合格者は188人となっています(司法書士と比較すると受験者・合格者とも
に少ないですね)。

 弁理士試験に合格した後、日本弁理士会の実施する登録前研修に合格する必
要があります。そして、弁理士の場合も、司法書士等と同じように、日本弁理
士会に登録することが弁理士となる要件です。令和6(2024)年1月現在、
個人の弁理士は11,781人、弁理士法人は416を数えます。

 弁理士の主要業務は、特許・実用新案・意匠・商標などの知的財産権を取得
するための代理です。そのほかに知的財産全般についての助言・コンサルティ
ングや、知的財産権に関する訴訟に補佐人として、または一定要件のもとで弁
護士と共同で訴訟代理人として参加することもできます。

 司法書士と弁理士との業務上の関わりは、それほど多くはないと思われます
が、会社設立等における商号の選定に際し、商標の調査や登録をお願いするこ
とがあります。また、技術系のベンチャーを支援するケースでは、知財の関係
でアライアンスすることもあります。

~参考~
 日本弁理士会
  https://www.jpaa.or.jp/
 特許庁/弁理士試験
  https://www.jpo.go.jp/news/benrishi/shiken-gaiyo.html


2024.03.18(月)【定款チェックと実質的支配者】(金子登志雄)

 設立定款の認証で発起人会社から「顧問弁護士が作成したので、可能な限り
手直しなしで定款認証を済ませてほしい」といわれましたので、了解し、定款
チェックを公証役場にお願いしましたところ、次の定款の附則につき、ご意見
をいただきました。何が問題だったのでしょうか。この最低出資額では定款認
証手数料が5万円に確定しており、特段の問題はないと思いませんか。

----------------------------------------------------------------------
 第8章 附 則
第32条(設立に際して出資される財産の最低額)
 当会社の設立に際して出資される財産の最低額は金1000万円とする。
第33条(最初の事業年度) 略
第34条(発起人の名称及び住所)
 〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号株式会社Aとする。  
第35条(定款に定めのない事項) 略
-----------------------------------------------------------------------

 公証人さんのご指摘では、定款そのものではなく実質的支配者となるべき者
の申告書との関係でした。すなわち、出資の最低額が金1000万円ということは、
ひょっとして出資額合計は1億円になるかもしれず、その過半数につき発起人
のA社でない者が出資する可能性を否定することができない。そうすると、実
質的支配者はA社ではなくなるので、追加として、出資者が分かる資料(発起
人決定書)を求めざるを得ず、定款だけでは判明しないので困るということで
した。

 我々の実務感覚では、募集設立などないも等しいというものですが、理屈か
らいえば理解できるご指摘でした。面倒なので、32条の最低額を価額に変更し、
第34条に「発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数、それと引換えに払い
込む金銭の額」についても、発起人の許可を得て、挿入しておきました。


2024.03.15(金)【名誉棄損と下品な表現】(金子登志雄)

 れいわ新選組の大石あきこさんが、Xで、ジャーナリスト志望だった伊藤詩
織さんへの性加害者とされた元TBS記者の山口敬之氏に対して、「くそ野郎」
と表現したことが名誉棄損になるかどうかで、1審の東京地裁は「なる」、2
審の東京高裁は「ならない」でした。

 私は、仲間内の井戸端論議ではともかく、人前やXでは「くそ野郎」などと
恥ずかしくて表現できませんが、皆さんはいかがですか。地域性の問題か、世
代の問題かと考えても、高齢な米国の大統領ですら、他国の元首を平気で狂人
呼ばわりしますから、SNS時代は過激にしないとアピール力を問われるため
でしょうか。

 いずれにせよ、簡単にいうと、1審は内容とは無関係に表現が下品で行き過
ぎだと判断したようですが、2審は、「○○についてくそ野郎」と表現したの
だから、〇〇部分も吟味すべだということのようです。伊藤詩織さんに対して
計画的に性被害を与えたのに、訴えた伊藤さんに対して1億円超のスラップ訴
訟を起こすなど、とことんまで人を暴力で屈服させようとする思い上がった野
郎」だから「くそ野郎」と表現したまでで、名誉棄損にはならないということ
のようです。

 くそ野郎程度が名誉棄損になると、松本人志さん問題を取り上げているユー
チューブの多くは名誉棄損になりそうです。私はユーチューブで記者会見をみ
ましたが、「ものの見方、考え方、捉え方」の視点からは、なるほどと思わせ
る内容でした。

https://news.yahoo.co.jp/articles/d5e1a03060af420f78b515f1a2581f65a80e9f4d


2024.03.14(木)【解散登記で職権抹消される事項】(金子登志雄)

 ご承知のとおり、取締役会設置会社が解散すると、取締役会や取締役などが
職権抹消されます(商業登記規則72条)。

 会社法施行(=平成18年5月)後の平成20年頃でしたでしょうか。取締
役会がなくなるのだから、株式譲渡制限規定の「取締役会の承認を要す」も、
「株主総会の承認」と変更登記しなければならないとか、解散と同時である必
要はないが変更登記義務が課されているなどといわれていたものでした。

 当時、私は、そんなことを言うなら、取締役等の責任免除規定内の「取締役
会」も変更しなければおかしくなるし、目的だって清算目的に変更しなければ
ならないのかと反論していたものでした。

 しかし、当時はまだ勉強が足りなかったのか、資本金の額も放置でよいのか
という点までは意識もせず主張もしていませんでした。

 会社法施行規則145条や146条をみてください。清算会社の貸借対照表
の純資産の部は「純資産」のみであり、資本金や資本準備金などは意味がなく
なり記載しません。資本金や準備金は分配可能額の基準になるもので、残余財
産がいくらかにしか関心のない清算会社では意味がないためです。

 解散中に減資の登記が受理されないのも、資本金の額を減少させる意味がな
いためです。ただ、会社継続の可能性が少しでも残っている限り、登記記録に
資本金額等を残存させておく意味はあるでしょう。


2024.03.13(水)【取締役会廃止後の就任承諾と印鑑証明】(金子登志雄)

 一瞬迷いやすい事例を取り上げましょう。

 「第1号議案/定款一部変更の件」とし、取締役ABCD(代表取締役A)、
監査役Eの取締役会・監査役設置会社において、3月1日の臨時総会で、取締
役会・監査役を廃止、任期は6月までだが、定款の附則で現任取締役の任期を
一斉に3月1日の臨時総会終結時までと定めたとします。

 「第2号議案/取締役選任の件」では、「代表取締役である取締役に、B」、
「代表権を有しない取締役に、A、E」とし、席上就任がありました。総会議
事録作成者は前代表のAで、届出印を押してあるとします。

 登記は、次のようになります。
    取締役ABは、3月1日重任・・・再任のため印鑑証明不要
    取締役CDは、3月1日退任
    取締役Eは、 3月1日就任・・・新任のため印鑑証明必要
  代表取締役Aは、 3月1日退任
  代表取締役Bは、 3月1日就任・・・【新任代表者か?】
    監査役Eは、 3月1日退任

 さて、新代表のBは非取締役会設置会社の新任代表です。また、Bが取締役
に就任したのは取締役会設置会社時代であり、過去に印鑑証明書を提出したこ
とがありません。これでも、Bは印鑑証明書の準備が不要でしょうか(印鑑届
に必要なのは別問題です)。

 第2号議案で、「取締役にABE、代表取締役にB」と取締役と代表取締役
を別々の2つの地位かのように定めた場合はもっと迷うのでしょうか、互選規
定でも定款に定めない限り、「取締役=代表取締役」ですから、登記上は「就
任」と登記されても、理論的には「再任」であり、代表取締役としての就任承
諾も印鑑証明書も不要です。


2024.03.12(火)【老舗って?】(東京・鈴木龍介)

 日本は世界トップクラスの長寿大国ですが、実は企業についても長寿大国で
す。今回は長寿の企業すなわち「老舗(企業)」にフューチャーしてみたいと
思います。

 帝国データバンクの調査によりますと、創業100年を超える世界の老舗企
業約7万5000社のうち、日本企業はその約6割である約4万3000社を
占めており、トップ5はすべて日本企業(いずれも創業1300年超)となっ
ています。総論的な理由として、日本の企業は短期間の利益よりも長く存続す
ることに価値を置いている企業が多いことや、年功序列システムなどにより長
く勤務する労働者が多いことなどが考えられるとしています。

 業種別では、「貸事務所」(昔風に言うと「大家業」ですね)がもっとも多
く、次いで「清酒製造」(昔風に言うと「造り酒屋」ですね)、「旅館」(昔
風に言うと「旅籠屋」ですね)が続き(なんとなく納得)、「酒小売」や「土
木工事」も結構あります。

 地域別では、トップは京都府で、古くから都が置かれて繁栄したことと、第
二次世界大戦での被害が比較的小さかったことが理由としてあげられています
(納得)。そして、山形、新潟、福井と続きますが、これらの日本海側の地域
は江戸期から明治期にかけて北前船の寄港地として発展したことが理由として
あげられています。ちなみに、最も少ないのは、第二次世界大戦で甚大な被害
を受け、多くの企業が喪失してしまった沖縄となっています。

 一方で日本企業のいわゆる平均年齢は37.5年です。新しく設立した会社
や個人事業主が起業から1年後に存続している割合は約70%、3年後では約
50%、約5年後では40%、10年後では約25%というデータがあります。

 ところで、老舗と呼ばれる司法書士(事務所)というとどんな感じでしょう
? 三代にわたり100年続いている事務所の話を耳にすることがありますが、
このあたりの実態等を知りたいところです。

(参考)
・帝国データバンク 全国老舗企業分析調査(2023年)
   https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p231012.html

・中小企業白書
   https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/index.html


2024.03.11(月)【敷金の現物配当】(金子登志雄)

 金曜日に本欄で「事業の現物出資と負債計上」を投稿しましたら、さっそく
幸先Xで敷金の現物配当につき、ご意見が寄せられ感想を聞かれました。 

  https://twitter.com/hiroaki_kosaki/status/1766615525906682271

 私は幸先さんのように勉強家ではなく細かく条文をチェックしません。推理
で勝負する無精者です。

 民法605条の2第1項は、賃貸物件の所有者が変更すれば従たる権利の賃
貸権もその従たる権利の敷金も所有者に移転すると定め(ビル売買が頻繁に行
われていますがこれが通常のはずです)、2項は所有権だけを移転した場合で
あり旧賃貸人は転貸人に変わります。

 さて負債に関する現物出資や現物配当に関して私は次のように考えています。
第1原則・・・①負債も財産権だから譲渡できる→②負債も現物出資の対象に
  なるし組織再編の対象になる→③負債も現物配当の対象なる
第2原則・・・ただ①は一緒の保証ですから除外すると、②や③においては資
  産負債を一体として合計でプラスであれば、あるいは事業価値がプラスで
  あれば、あるいは当事者が納得ずくならという暗黙の制約が課さされてい
  ると思っています。

 郡谷計算詳解〔第2版〕207頁に「(2) 共通支配下の取引の場合 (出資者
における出資財産の帳簿価額がプラスの場合)
(前提)
  ・出資財産の内訳 土地 (簿価1,500 (時価2,000)), 借人金1,000」

 負債も同時に出資される現物出資は肯定されています。この借入金は抵当債
でしょうか。

 この土地の上にビルが建てられ、ビルの部屋に賃借人が多数なら、敷地付の
ビル売買で敷金等も承継されるのが通常でしょう。

 分割型会社分割では特別勘定という負債を引き継がざるを得ません。以上、
経験はありませが、敷金だけ除外するの会計処理は時代に合わないように思い
ます。


2024.03.08(金)【事業の現物出資と負債計上】(金子登志雄)

 商業登記倶楽部の実務相談室の質問によると、負債込みの事業の現物出資に
つき、登記所が「現物出資の対象は貸借対照表の資産に計上されるものに限ら
れるから、負債が含まれたものでもよいのかは只今検討中だ」といわれ、登記
の受理が遅れているが、どう説得すればよいかとの相談がありました。

 皆様もご存じのとおり、親会社が債務超過事業を現物出資することができ、
この場合は、資本金0円、その他利益剰余金がマイナスの会社が設立されます。

 ところが、現物出資の対象は貸借対照表の資産に計上されるものに限られる
というのもインターネットで検索したら通説と出ていました。

 この矛盾を説明できますか。おそらく会社法世代は気づかないでしょうが、
旧商法世代なら、資本充実の原則のことだろうと推測つくことでしょう。

 旧商法時代は、債務超過会社を合併で受け入れることは不可だが、時価でプ
ラスならよいとされていました。この場合に合併会社の受入れ仕訳がどうなる
のかは知りませんが、会社の計算につき会計基準を遵守する会社法下では、共
通支配下関係(同一企業グループ間)の合併なら、合併消滅会社の簿価で財産
を引き継ぎますから、マイナスを受け入れたのと同じです。

 また、債務超過会社であろうと株式価値は0円未満にはなりません。上記の
親会社が債務超過事業を現物出資し子会社設立の例でいうと、子会社株式の親
会社の資産の部に「株式0円」で計上されているのと同じで、会計処理の調整
のため、負債のところに「特別勘定〇〇円」と計上し、バランスを取ります。

 結局のところ、会社法は法と会計基準との整合性を求め事実上資本充実原則
を放棄したのです。債務超過でも磨けば玉になり将来性有望な事業もあります
し、Aからみれば無価値でも、Bからみれば宝物もあります。よって、会計処
理ではマイナスの計上になっても企業がそうしたいというのであれば、負債が
上回る債務超過事業も債務超過会社の受入れも認めるというのが会社法のスタ
ンスです。

 上記の登記所の言い分は、旧商法時代の古い頭で、もう通じません。こうい
う登記官に遭遇した司法書士は運が悪いというしかありません。


2024.03.07(木)【「相続登記義務化元年」(その3)】
                         (島根・根来川弘充)

 今月も同じテーマに触れたいと思います。

 先般、生活保護を受けている方を、支援している方から「生活保護を受けて
いる人に相続登記が必要になったのですが、費用を支援してくれるような制度
がありますでしょうか?」と、ご質問を受けました。

 相続登記は、不動産(財産)について行うものですので、「不動産を売却し
て、お金ができれば、費用は確保できるのでは?」と思う方がおられるかもし
れませんが、不動産を売却できるのは、生きている人であるため、必ず相続登
記をした後でなければ、売却ができません。

 また、わが島根県においては、土地が安価であっても、なかなか売れない状
況です。

 つまりは、生活保護を受給されている方も相続登記の義務を果たさなければ
ならないケースは、全国的に多数あるのではないかと思います。

 ちなみに、相続登記は、司法書士等の専門職に依頼せず、本人で申請をする
こともできるのですが、登録免許税や登記事項の確認作業に費用がかかるため、
まったく費用をかけず、行うことはおそらく不可能です。

 この度、国が国民に対して相続登記の義務を定めたのですから、この義務が
履行できない人々を放置する状況は、とても問題があると思います。

 早急に改善されることを望みたいと思います。


2024.03.06(水)【支店の登記と支配人の登記】(仙台・立花宏)

 先日、法務省の登記統計を確認したところ、昨年の月別の登記件数の集計が
出ておりましたので、合同会社の設立数を集計してみました。昨年1年で4万
751件だったようで一昨年から1割程度増えていました。株式会社の設立数
も増え、年間10万件を超えていましたから、会社設立数全体が増加していた
ようではありますが、あいかわらず、合同会社の利用は増えているようです。

 ところで、今日は、合同会社の支店の登記と支配人の登記について考えてみ
ます。社員がABCDEの5名で、そのうち、ABCが定款で業務執行社員と
定められている合同会社を想定します。

 まず、この会社で支店を置き、その支店に支配人を置く場合を考えます。支
店を設置する場合は、業務執行社員の過半数の一致で決定します。その支店に
置く支配人を選任する場合は、定款に別段の定めがない限り、業務執行社員で
はなく社員の過半数で決定します(会社法591条2項)。支配人の選任は業
務の決定だと思いますが、裁判上又は裁判外の代理権を有する重要な地位であ
ることが理由のようです。よって、この会社では、支店の設置はABCの過半
数で決定し、支配人の選任はABCDEの過半数で行います。

 ところで、この合同会社で、支配人を置いている支店を移転する場合はどの
ような手続が必要でしょうか。支店の移転は業務の決定として、業務執行社員
ABCの過半数で決定します。この場合、支配人を置いた営業所を移転するこ
とになりますが、これも業務執行社員ではなく、社員の過半数の決定が必要で
しょうか。この点を解説している文献等が見つけられませんでした。支配人の
選任・解任ではありませんから、前記会社法591条2項は適用がなく、業務
執行社員ABCの過半数で決定できるのではないかとも思います。しかし、支
店の場所が変わると、その権限の範囲が大きく変更になる場合もあるでしょう
から、社員ABCDEの過半数の決定による必要があるという考え方もありそ
うです。たとえば、仙台市内で支店が移転するのであれば、前者の考えが妥当
なような気がしますが、仙台から東京に支店が移転する場合は、業務内容が大
きく変更になる場合が多いでしょうし、後者が妥当なように思えます。

 では、この合同会社で、業務執行社員ABCの過半数の一致で支店を廃止し
た場合を考えてみます。この支店に置かれた支配人はどうなるのでしょうか。

 たとえば、ABは、その支配人の仕事ぶりに不満があり、解任したいと思っ
たのですが、CDEはその支配人を適任だと考えており、社員の過半数の一致
では解任できない状況だったとします。そこで、ABは業務執行社員の過半数
を占めていることから、その過半数の一致で、その支配人をおいた営業所を廃
止してしまおうと考えたのです。対象となる支店(営業所)を廃止してしまえ
ば、支配人の代理権は消滅するという考えです。

 しかし、支配人は、原則として社員の過半数で解任する必要があるのに、こ
れでは、業務執行社員の過半数で解任が可能なのと同様になってしまいます。
 
 これは教室事例で、実際には、こういうケースはほとんどないのだろうと思
いますが、前記の支店の移転の場合も含め、いろいろ考えてみると、定款で業
務執行社員を定めた場合に、支店と支配人についての様々な決定について、悩
ましいことが出てきそうだと思えました。

 業務執行社員を定めた場合は、業務の決定等は業務執行社員の過半数で決定
するものとされていますが、これは社員の過半数による決定権限を奪うものな
のでしょうか。むしろ、取締役会を設置していない株式会社の株主総会のよう
に、業務執行社員を定めても、社員の過半数の決定による権限はそのままで、
業務執行社員の過半数では、社員の過半数の決定に反する決定をすることがで
きないと解釈すれば、ここまで書いてきたような混乱は起こる可能性が少ない
ように思います。

 定款で業務執行社員を定めた場合の業務の決定については、定款で別段の定
めが可能ですし、こうした疑義を避けるため、支店の移転・廃止をする場合に
は社員の過半数の決定を要すると定款に定めたり、支店の所在場所を定款に規
定しておくことも一案だと思いました。そうすれば、その定款規定に反して業
務執行社員が支店の移転・廃止を決定することは定款違反の行為となるからで
す。

 実際にこうした案件を受任したわけではないのですが、頭の中で実務を想定
していろいろ考えていると、まだまだ、合同会社は難しいと思うことが多いで
す。


2024.03.05(火)【カンボジアという国】(東京・鈴木龍介)

 今回は、少々ご縁がありました関係で、意外と知らない(私だけ?)カンボ
ジアについて取り上げてみたいと思います。

 カンボジア(正式にはカンボジア王国/Kingdom of Cambodia)は、インド
シナ半島に位置し、ラオス・ベトナム・タイに国境を接する資本主義国家です。
人口は約1700万人で、90%はカンボジア人(クメール人)、言語はクメ
ール語、首都はプノンペン、宗教は一部の少数民族を除き、仏教です。

 1953年にフランスから独立後、1970年代のポル・ポト政権による、
いわゆる恐怖政治やその後の内戦を経て、1990年代の民主的な選挙の結果、
立憲君主制となりました。2000年代に入り急速な経済発展を遂げ、東南ア
ジア最後のフロンティアとして注目されています。

 主要な産業としては、工業(主に縫製業)、サービス業(主にアンコール遺
跡群に関連する観光業)、農業(主に米の生産・輸出)となっています。ポル
・ポト政権時代の大量虐殺の影響で40歳代以上の人口が少なく、平均年齢は
26.5歳となっており、これによる“人口ボーナス”も経済発展の要因とな
っているといわれています。

 法律関係分野に目を転じてみますと、ポル・ポト政権下での法律廃止、知識
人の大量虐殺等による基本法の未整備や、それらを適切に解釈・運用できる法
律家の欠乏状態から法整備と法律家の育成を含む司法制度の確立が国家的急務
であるとして、カンボジア政府から日本に対して法整備支援の要請がなされま
した。

 これを受け、1996年からJICA(独立行政法人国際協力機構)による
法整備支援が開始されました。1999年には民法・民事訴訟法の起草支援の
ための法制度整備プロジェクトがスタートし、その成果として2006年に民
事訴訟法が、2007年に民法がそれぞれ制定されました。

 また、並行して2005年からは民法・民事訴訟法の適切な解釈・運用のた
めの人材育成支援プロジェクトも開始されました。2017年からは不動産登
記法等の民事関係重要法令の起草や訴状等の書式例の作成等といったより実践
的な支援プロジェクトが開始し、裁判官・弁護士等の法律専門職を現地に派遣
し、指導等を継続的に行っています。
 
~参考~
・外務省_カンボジア王国
  https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/cambodia/data.html#section1
・法務省_カンボジア
  https://www.moj.go.jp/housouken/houso_houkoku_cambo.html
・『世界を変える日本式「法づくり」途上国とともに歩む法整備支援』
  独立行政法人国際協力機構(文藝春秋企画出版部)


2024.03.04(月)【改印して本店移転】(金子登志雄)

 3月1日は商号変更し改印して管轄外本店移転を申請しました。ここでは東
京都千代田区のA社が3月1日付けでB社に商号変更し、改印し、横浜市に移
転したとしましょう。

 私は次の印鑑届を準備しました
 ① 東京本店住所で改印届を東京法務局に届出。社長の個人実印押印
 ② 横浜地方法務局への転送用に横浜本店住所の印鑑届。社長の認印押印

 ほとんどの方が同じ方法を採用するでしょうが、登記の申請書は横浜本店の
住所であり登記委任状も同じです。改印届と整合しません。違和感があります。
また、改印したところで、即座に本店移転するわけですから、東京法務局とし
ては、あまり意味のない届出になります。

 そこで、司法書士の仲間内のメーリングリストで、②につき社長個人の印鑑
証明書付にすれば①を兼ねており①は不要にならないか、確か昔、それで対応
した司法書士がいたように記憶していると伝えたら、①の登記申請自体は旧印
で申請し、横浜地方法務局に新たに印鑑を届けるとみれば、可能ではないかと
いう意見が寄せられました。

 なるほどです。私の記憶案件も東京法務局への申請は旧印だったのかもしれ
ません。

 商号変更しても改印の必要がないことは誰でも知っていますし、本店移転し
ても同じです。よって東京法務局への申請は旧印でし、横浜地方法務局へ新た
に改印というよりも印鑑を届けるとみれば大丈夫そうですね。

 ただし、1つだけ小さな問題があります。印鑑届に添付した個人印鑑証明書
の原本還付権限は本店移転事項について審査権限のある東京法務局にあるのか、
申請先の横浜地方法務局にあるのかです。

 管轄外の吸収分割だと分割会社の委任状につき原本還付を吸収分割承継会社
管轄の法務局がしてくれることが多いので、本店移転でも同じように扱ってく
れると思いますが、どうでしょうか。還付してくれないのなら、横浜地方法務
局用の返信封筒も必要になり、これはちょっと面倒なので、やはり従来どおり
がいいかなと考え直しています。

 経験者の方は本HPの問い合わせ欄で情報をお寄せください。一番楽な方法
を模索中です。ついですが、②の場合の認印は押印せずにどこの法務局でも受
理されますか、これも知りたいです。


2024.03.01(金)【29日の官報公告】(金子登志雄)

 昨日29日の官報公告を朝1番で閲覧してみました。4月1日を効力発生日
とする合併公告や減資公告では、期間満了日である3月31日が日曜日である
ため、期間計算でミスした会社はないかと確認したかったわけです。

 あっけにとられました。下記しかないのです。

https://kanpou.npb.go.jp/20240229/20240229h01171/20240229h011710031f.html

 前日28日は10ページ以上も債権者保護公告で埋まっていたのに、29日
がこれほど少ないのは、期間計算を守ったためか、単に、うるう年の付け足し
の日で公告日としては不適切と判断したのかは不明です。

 期間計算をミスする会社は少なくありません。昔、某上場会社が2月最終日
の28日に合併公告していたのをみて、3月31日が日曜日なので、4月1日
合併は無理ですよと電話して注意喚起したこともありました。

 最初は「弁護士と相談のうえで公告した」などと、どこの馬の骨かもしれな
い司法書士の私に反論してきましたが、最後は納得してくれ、効力発生日延期
公告を指導し、無事に合併登記が終わり、菓子折りが送られてきました。

 公告ではありませんが、某上場会社が100%子会社を吸収合併することに
したという情報開示に、子会社は債務超過だが増資して簡易合併するとあった
ので、同社のホームページの問い合わせ欄を通じ、「通常は簡易合併できない
はずですが・・・」とメールしたら、全く返事がありませんでした。

 へんな会社だなと思っていたら、2週間後に「合併中止のお知らせ」を開示
していました。菓子折りはいらないが、ありがとうくらい電話寄越せと思った
ものでした。

 金子は意外におせっかいだなと思われたかもしれませんが、私も上場会社の
管理部長として情報開示に従事していた経験があるので、情報開示でミスする
と会社の恥になるので、担当者が困ると思い、事前に教えてあげたものです。
他人の不幸を喜ぶ人間にはなりたくありませんので。


2024.02.29(木)【簿価受入れと資本金】(金子登志雄)

 福島県司法書士会での組織再編の講義では、合併比率と株主資本等変動額は
基準が相違すると話しました。

 例えば、ある会社の子会社同士(ただし60%と55%所有で外部株主が存
在すると仮定)が合併する際の合併比率は企業価値比較ですが、同一企業グル
ー内(共通支配下関係)の合併のため、財産は合併消滅会社の簿価で引継ぎ、
株主資本等変動額も資本金等への計上額ですから、受け入れる消滅会社の簿価
株主資本額が基準になります。

 別の言い方をすると、合併比率は合併対価の数量を決める基準であるのに対
し、株主資本等変動額は受入れ財産を貸借対照表に計上する際の基準であり、
資本金等の計上額の基準のことです。

 これが理解できていれば、募集株式の発行に関する計算規則第14条第5項
の「現物出資財産について法第199条第1項第2号に掲げる額及び同項第3
号に掲げる価額と、当該現物出資財産の帳簿価額(当該出資に係る資本金及び
資本準備金の額を含む。)とが同一の額でなければならないと解してはならな
い」という意味が分かりやすくなります。

 すなわち、親会社が子会社に事業を現物出資する際などに、現物出資の評価
額は募集株式発行量の基準であり、これとは無関係に、出資財産は簿価で受入
れ、その簿価を基準に増加資本金額が決まるということです。

 簿価で純資産額△500万円の債務超過事業の現物出資でも、事業の価値が
400万円と評価できれば、それで募集株式の数量を決めるが、財産は簿価で
の受入れとなり、資金等増加限度額もこれを基準にするので、結局マイナス額
となり、利益剰余金を減少するしかないということになります。


2024.02.28(水)【バブルってほんと?】(金子登志雄)

 株式市場が34年ぶりに最高値を更新したのに、景気がよくなったという実
感は全くありませんが、皆様はいかがですか。

 34年前のバブル時代は、飲んで帰ろうとしても、深夜にもかかわらずタク
シー待ちで1時間も並ぶほどでした。みな晴れ晴れとした明るい顔でした。い
まは貧困層が急増し、子供食堂なども足りないくらいですから、バブルとはい
えないでしょう。

 私の登記の顧客に、今は廃業しましたが株式投資に関する投資顧問会社があ
りました。先日、たまたまその社長から別件の用事で電話がありましたので、
雑談でお尋ねしましたたところ、日経平均など指数が上がっているだけで、個
別銘柄では上昇していないものも多く、プロ投資家が儲かっているとは限らな
い状況だとのことでした。

 なるほどと思っていたところ、私の好きな政治評論家の田中良紹さんの有料
コラムが更新され、「世界は前進しているのに元に戻ったと喜ぶ特異な国ニッ
ポン」というコラムに次のようにありました。

 「日本の株価が34年前の水準に戻っただけの話で、他国はこの34年間に
軒並み株価を上げ、米国は14倍、ドイツも9倍であるのを見ると、『失われ
た時代』と呼ばれた34年間の日本がいかに駄目だったかを物語るニュースで
もある」。有料コラムで前半だけは下記でみられるでしょう。

        https://is.gd/sEmxo4

 日本が1倍しかないのに、米国が14倍・・・まさかと思いましたが、下記
でもそのとおりでした。

    https://kabu.com/item/foreign_stock/us_stock/column/5.html

 なぜ、日本はこんなに衰退したのかというと、田中コラムの最後に「34年
にわたる『失われた時代』の背後には米国の要求に従い続けてきた日本の姿が
ある」とありました。米ソ冷戦時代が終わり、米国の敵は経済的強者だった日
本やドイツになり、米国の圧力が増したわけです。ウクライナ問題の背景にも
EUを引っ張るドイツ潰しが含まれているといわれています。

 いまの米国の経済面の敵は中国で、中国潰しに日本を使おうとしているので
すから、米国の外交戦略が改まる日はいつになるのでしょうか。


2024.02.27(火)【中小企業診断士とは?】(東京・鈴木龍介)

 先日、毎年恒例となっていますが、某大学大学院に設けられている中小企業
診断士養成課程の講義を行ってまいりました(オムニバスで1コマだけ担当)。
そんなこともありまして、今回は中小企業診断士の概要を整理しておきたいと
思います。

 中小企業診断士は、「中小企業支援法」に基づく国家資格であり、中小企業
の経営課題に対応するための診断・助言を行う専門家です。

 中小企業診断士制度は、中小企業者が適切な経営の診断及び経営に関する助
言を受けるにあたり、経営の診断及び経営に関する助言を行う者の選定を容易
にするため、経済産業大臣が一定のレベル以上の能力を有した者を登録すると
いうものです。司法書士等の業務独占資格ではなく、名称独占資格という位置
づけとなります。

 中小企業診断士の沿革ですが、当初、国が経営の専門家を活用するために
「中小企業診断制度」が設けられ、国の中小企業政策や中小企業への診断・指
導の補助員として、「中小企業診断員」という名称で活動していました。

 昭和39(1964)年から、現在のような資格試験が実施されるようにな
り、昭和44(1969)年に「中小企業診断士」と改称されました。そして、
平成12年(2000年)に、それまでの行政による支援の専門家としての
「指導」から経営コンサルタントとしての「支援」へと転換が図られ、現在に
至っています。

 中小企業診断士の試験は、以下の3つのステップで行われ、それらをクリア
して登録申請をすることができます。

 ① 一次試験
  企業経営やコンサルティングに関する基本的な知識を問う択一式試験
 ② 二次試験
  一次試験合格者を対象に、中小企業の診断及び助言に関する実務の事例、
  助言に関する能力についての4科目の記述式の試験と、その合格者は個
  人面接による口述試験
 ③ 実務補習等
  二次試験合格後3年以内に実務補習の受講等

 現在、中小企業診断士は、日本全国で約27,000名(2019年4月1
日現在/5年毎の更新制)が登録されています。

 中小企業診断士の主な業務ですが、中小企業の経営計画の策定、財務分析、
経営課題の特定、業績向上の提案、資金調達の支援があります。

~参考~
 中小企業診断協会
   https://www.j-smeca.jp/contents/007_shiken.html
 中小企業庁/中小企業診断士情報
   https://www.chusho.meti.go.jp/shindanshi/index.html


2024.02.26(月)【1点集中5時間講義】(金子登志雄)

 土曜日は福島県司法書士会主催のセミナーで組織再編の講義をしてまいりま
した。Sさんはじめ研修スタッフの皆さん、ほんとにお世話になりました。

 福島県会での講義は8年ぶりで、会場は前回と同じ磐梯熱海という温泉地で
した。県内の全域から集まるのは、県庁所在地よりも、ここが便利なのだと前
に聞きました。

 何と5時間にも及ぶ講義時間で、それも組織再編のみの内容でした。事前に、
こういうことも含めてほしいとさまざま依頼されていたこともあり、私もこの
テーマに絞った長時間セミナー方式に妙に感心し、かつ研修スタッフの熱意に
感じ入り、詳細な内容のレジュメ(24頁)にして臨みました。

 土曜日の開催で、しかも組織再編がテーマでは、「俺には関係ない」と集ま
りが悪くなりがちなものですが、想像以上に多くの方が集まってくださいまし
た。また、東北地区の司法書士会の慣例なのか他の会からも参加可能であり、
仙台の立花さんはじめ宮城県会からも数人、遠方の岩手県からも参加がありま
した。1点にテーマを絞った5時間講義であれば、遠方からも参加してみたく
なるもので、企画の素晴らしさを表しています。

 企画は素晴らしいのに、これで「退屈だった」「眠い講義だった」といわれ
たら、講師の私の立つ瀬がありませんので、私も「絶対に居眠りさせないぞ」
と可能な限り分かり易い講義を心掛けましたが、組織再編の計算が含まれてい
たのに、熱心に聞いていただけました。

 吸収合併は、増資と減資と資本組入れの合成行為だ、同時に定款変更、役員
変更、本店移転も加わることが多く、商業登記の集大成だという方向から攻め
ましたので、合併は未経験でも増減資などは経験済みでしょうから、ご理解い
ただけたものと信じています。

 レジュメの最後に「参考書籍としては、拙著であれば、ESG法務研究会の
HPの表紙のトピックスから選んでください。商業登記全般であれば『会社法
実務〔全訂版〕』が最も好評です。会社の計算については、現在、中央経済社
から『事例で学ぶ会社の計算実務』を出版していますが、売れ行きは芳しくあ
りません。広島の幸先司法書士がXで、ほぼ絶版も等しい『目からうろこ!こ
れが増減資・組織再編の計算だ!』が対話調(話し言葉による解説)で、とっ
つきやすいと勧めてくれたので、近々に再刊します」と書いておきました。

 3月は教科書の印刷時期ですから再刊は4月になるでしょうが、昔の本が復
活するなどうれしいことで、幸先さんも、さっそくXで広報してくれており、
有難いことです。皆様のご期待に反しないよう、今後も頑張ります。


2024.02.22(木)【定款で定めた業務執行社員の解任】(仙台・立花宏)

 合同会社をはじめとした持分会社では、定款で業務執行社員を定めることが
できます。では、この業務執行社員の業務の執行が著しく不適切なため、他の
社員全員が、当該社員を業務執行社員から解任したいと考えた場合、解任する
ことはできるでしょうか。

 定款の変更は、原則として総社員の同意が必要です(会社法637条)。そ
の定款で定められているのですから、解任対象の社員が同意しない限り、解任
できないということになりそうです。しかし、そうした不都合を避けられるよ
うに、会社法591条5項では、正当な事由がある場合に限り、他の社員全員
の一致で解任できるものとされています。この解任により、定款変更の手続を
経ることなく、当該社員を業務執行社員と定める定款規定は効力を失うことに
なると考えます。

 ところで、特定の社員を業務執行社員と定める場合には定款で定める必要が
ありますが、この定款の定めには、業務執行社員とする社員を直接規定する方
法以外に、「総社員の同意により定める」、あるいは、「社員の互選により定
める」等の規定も許容されるものとされています。では、この定款の規定に基
づき、社員の互選により業務執行社員を定めた場合に、当該業務執行社員を解
任する場合には、正当な事由が必要でしょうか。

 この場合も、定款で定めた業務執行社員ということになるのでしょうから、
前記の会社法591条5項によれば、正当な事由が必要ということになりそう
です。しかし、定款で業務執行社員の選任を社員の互選とした場合は、解任も
社員の過半数の決定で行うものとする意図であるのが通常ではないかと思いま
す。そうすると、業務執行社員の人事権を行使するだけであり、正当な事由は
不要だともいえそうです。会社法591条5項の解任については、定款で別段
の定めをすることが可能ですから(会社法591条6項)、前記定款規定は、
解任について正当な事由を不要としたと解釈する余地もあるのかもしれません。

 ただ、こうした疑問が生じるのも、定款で定めることに、特定の社員を直接
定款に定める方法以外に、定款を経由してある社員の一致で定める方法も包含
されていると解釈していることに原因があるのではないでしょうか。

 以前も本欄に書いたことがあったと思いますが、代表社員の場合は、定款又
は定款の定め基づく社員の互選により代表社員を定めることができるとされ
(会社法599条3項)、こちらでは、定款に直接定めることと、定款を経由
して互選で定めることとは区別されています。


2024.02.21(水)【種類株式代用の属人的株式】(金子登志雄)

 会社法109条に「非公開の株式会社は、剰余金の配当を受ける権利、残余
財産の分配を受ける権利、株主総会における議決権に関する事項について、株
主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができる。この場合は、第
2編(株式会社)及び第5編(組織再編)の規定を適用する」とあります。

 これを属人的株式などといいますが、税理士事務所経由で事業承継対策など
に利用され、株主Aは1株100議決権とか、Aは総株主の議決権の80%の
議決権を有するなどと定めます。

 最近は、株主Aは1株10議決権、Bは1株5議決権、その他は1株1議決
権などという複数種類も登場しはじめたようです。

 ただ、何かを決定する際に種類株主総会は必要かなどの問題が生じ、中小企
業では使いこなせませんので、私は積極的には勧めてきませんでしたが、最近、
相談を受けた案件は従業員持株会が剰余金配当で有利で、議決権なしの属人的
株式でした。本来の種類株式でできることを属人的株式でする例があるとは驚
きでした。

 まるで脱法かのようですが、うまいことを考えるものですね。登記が不要な
ので登録免許税もかかりません。322条1項の定款の定めもしても、株式の
内容の問題ではないため、登記は不要です。これなら、経費節減で、私も定め
ることに反対しません。


2024.02.20(火)【農業経営・就農支援センター】(東京・鈴木龍介)

 前回に続き、農業関係の話題となりますが、「農業経営・就農支援センター」
を取り上げたいと思います。

 「農業経営・就農支援センター」とは、都道府県において農業の担い手を確
保・育成するため、市町村や農業関係団体と連携して、就農サポート(就農等
に関する相談対応、希望に応じた市町村等関係機関への紹介・調整等)と経営
サポート(農業経営の改善、法人化や円滑な継承等に必要な助言・指導等)を
実施する機関です。

 ちなみに、就農サポート・経営サポートの相談窓口を都道府県本庁に設置し
ている都道府県は23府県あり、8都県以外では地方振興事務所などの出先機
関にサテライト相談窓口が設置されています。

 経営サポートの方にフォーカスして見てみますと、農業経営者に対して専門
家による支援チームの派遣等が行われています。主な相談の内容としては、
「経営改善・診断」が最も多く、その他には「法人化」、「雇用・労務」、
「税務・財務」、「経営継承・相続」もあがっています。

 登録されている専門家は全国で2000名超を数え、資格別では税理士が最
も多数となっていますが、司法書士も120名ほどいます。登録専門家、とり
わけ司法書士がどのような活動等を行っているかについては、是非、知りたい
ところです。

~参考~
  農業経営・就農支援センターについて(農水省資料(未定稿))
  https://www.maff.go.jp/j/keiei/attach/pdf/soudanjyo-131.pdf


2024.02.19(月)【恐怖のアンケート結果と視点の構図】(金子登志雄)

 ネットでは、相変わらず松本人志さん問題が大きく取り上げられていますが、
なぜ「松ちゃん、頑張れ」の声が大きいのか不思議でなりませんでした。

 そこで気づいたのですが、どうも「個人松本VS権力の文春」という構図で、
文春に負けるなと応援しているのではないかという気がしてきました。多くの
方は、記事内容の「芸能界の権力者松本VS被害を主張する弱い女性達」とい
う構図で捉えていたでしょうから、意見がすれ違うわけです。

 さて、私が国際問題の分析力を高く評価し、常にウオッチしている中国問題
研究家遠藤誉さんの一昨日17日の投稿「『ミュンヘン安全保障指数2024』日
本以外の国は『中露は大きな脅威ではない』と回答」に西側先進国を中心とし
たアンケート結果が掲載されていました。下記の色刷りの表です。

          https://is.gd/9uJs8j

 いまのところ、嫌われ国の筆頭は、ロシア、中国、イラン、ベラルーシだと
いう分かりやすい結果でした。この4か国は、米国中心の世界支配に最も抵抗
している国々ですから、主として西側の国民を対象にしたアンケ―トなら、こ
ういう結果になるのも当然でしょう。

 これに対して、先般ご紹介したフランスの知識人エマニュエル・トッド氏が
「西洋はもはや世界の嫌われ者」「世界中の人々はアメリカを嫌っており、ロ
シアの勝利を心から望んでいる」と述べています。

 なぜこういう意見の相違が生じるかというと、西側国民の大多数がマスコミ
の作る「民主国家VS悪の専制国家」というプロパガンダの構図で思考するの
に対し、トッド氏は、いまは、そういう一面的な見方をするではなく、「西側
民主国家VS世界」という構図でみるべきだと主張しているためです。親米だ
ったサウジアラビアが親露・親中に鞍替えし、中東諸国だけでなく中南米やア
フリカ諸国などを含めた世界が急成長し、米国一極支配の西側の外交戦略に反
旗を翻したことに目を向けよと西側に警告しているわけです。

 上記アンケートによると、遠藤さんも指摘していましたが、日本の反中・反
露感情は中露と敵対し事実上の紛争当事国ともいえる英米を大きく上回ってい
ます。ネット検索すればすぐに分かりますが、日本の最大の貿易相手国は米国
ではなく中国であるにもかかわらずです。

 日本人は、個人よりも集団の規律を重んじ、礼儀正しいなどの長所を有する
反面で、対立しやすい調和を乱す政治問題には関心を持たないようにし、必要
な場合には、所属する集団の多数意見を自分の意見とする傾向が強いので、反
露や反中の空気(同調圧力)にそった意見で応えただけでしょうが、もし本心
だとすれば、いつか再び「1億火の玉」あるいは「1億総懺悔」に突き進みそ
うな恐怖のアンケート結果でもありました。

 いずれにせよ、日本でも、世界の潮流である「西側先進国VS急成長のブリ
ックスを含む世界」という構図で国際情勢を見ておかないと世界から取り残さ
れると思いました。兄は徳川側、弟は豊臣側についた真田一族のように、日本
が生き残るには、一方に偏せず、したたかに対応してほしいものです。これこ
そ「ジャパン・ファースト」です。


2024.02.16(金)【設立と解散登記での一瞬の迷い】(金子登志雄)

 なぜか、設立や解散登記の依頼が増えています。もうベテランといってもよ
いキャリアですが、一瞬、以下の点で迷うこともありますが、皆さんはいかが
ですか。

(設立について)
 1.発起人決定書(役員選任や本店所在場所など)に発起人の押印は?

 定款認証の委任状に発起人の実印を押すせいか、一瞬、迷いますが押印任意
の1つですね。設立後の株主総会議事録と同じ位置付けです。

 2.非取締役会設置会社の取締役の就任承諾書に住所が必要か。

 ずっと不要とされてきましたが、商業登記規則61条7項ただし書の解釈で
東京法務局は必要説です。すなわち、7項のただし書の「4項で印鑑証明書を
添付する場合は、この限りでない」を東京法務局は本人確認証明書を不要とし
ただけで住所の記載までは不要扱いしていないと解釈するのですが、通達は文
頭に「4項の場合を除き、住所を記載し………」と解釈するため従来どおり不
要にしています。もちろん、通達が正しいというべきです。

 先日もこれで補正になりました。ここだけなら戦うのですが、印鑑相違とい
う補正があったので、ついでと思い住所を記載しましたが、テイハン500問
のQ197の写しも送り、「通達どおりで対応してくださる登記所もあるので、
今後はご配慮を」と情報提供しておきました。

3.印鑑届の委任状の訂正と訂正印

 印鑑届内の委任状の代理人である私の住所が事務所移転前の千代田区になっ
ていたため、抹消線を引き現在の住所である港区に変更して提出したところ、
訂正印がないと補正になりました。

 登記申請の委任状に関しては、訂正印がないのに、旧住所を削除し、新住所
に修正したことが何度もありますが(誤った事実の訂正権限は代理権の範囲と
私も思っています)、何もいわれたことがないので、ここも同じだと思ってい
ましたが、杓子定規で頑なな調査官に当たってしまいました。

(解散について)
 1.清算人の就任承諾書に住所が必要か、実印が必要か。印鑑証明書は?

 つい迷いますが不要です。商登規則61条7項に清算人は加わっていません。
印鑑証明書が必要になるのは印鑑届のためです。

 2.清算結了の議事録に株主リストが必要か。

 必要ですが、先日の解散は一般社団でした。「株主」リストなどあるはずが
ありません。


2024.02.15(木)【非弁にならない企業法務手続への進出】(金子登志雄)

 当事務所と親しい東京の沓脱司法書士と広島の幸先司法書士がXで次のよう
に会話していましたので、この話題に便乗することにしました。

  https://twitter.com/tos_kutsunugi/status/1756163344031949281

 なぜ司法書士は弁護士や税理士と相違し独占業務以外に乗り出さないのかで
すが、これまでのところ、独占業務だけで、それなりに生活することができた
ため、わざわざ、面倒な新業務を開拓しようとは思わなかったからでしょう。
また、最近は独占業務で食えない司法書士も増えましたが、独占業務で仕事が
ないのに、独占業務以外に仕事はないかとは考えないものです。

 現在、司法書士は全国で2万3000人,弁護士は4万5000人、税理士は8万人
程度のようですが、いずれも東京など大都市に集中しており、経営側ではなく
勤務の方が多いことに変わりがありません。組織内士業も増えています。組織
内司法書士ではありませんが、私も会社役員と兼業中です。
 
 そこで、都市部の司法書士業界の進むべき道を考えると、気楽な個人開業で
生涯を全うしたい方々を横に置くと、大手法律事務所が法廷に立ったこともな
い弁護士ばかりの渉外事務所であり、安定した顧問料収入で維持しているのと
同様に、独占業務以外の非弁にならない企業法務手続、例えば、信託銀行等が
上場企業を対象に株式事務を主業務としていること、宝印刷やプロネクサスな
どが総会招集通知や有価証券報告書印刷を通じてセミナー活動や書籍販売にも
対応しているのと同様に、そこからこぼれた今後伸びる未上場会社相手の法務
手続全般を受託し、顧問料収入につなげる道があります。社外総務部機能です。

 そんなことは誰にでも分かり切っていることですが、司法書士業界は、まだ
追い詰められてはいないため、独占業務の顧客を増やしたほうがずっと楽だと
思ってしまいがちです。しかし、残りの人生が長い若い司法書士は追い詰めら
れていなくても将来に不安を感じています。司法書士試験の受験生が減少気味
なのも将来に不安があるからでしょう。

 こういう現状で、スタートアップ企業などのニーズに応えて、果敢に新業務
の開拓に努力し先鞭をつけた靴脱事務所は、大都会での開業だからできたこと
とはいえ、実に立派であり、私はパイオニアとして高く評価しています。渉外
法律事務所と同じく人手が必要ですから、いまは人集めに苦労なさっているで
しょうが、徒弟社会の個人事務所ではなく、社会保険も充実した大企業路線で
すから、いずれは応募者が殺到することでしょう。

 唯一心配なのは、新しいことを初め、それが成功しそうになると、必ず妨害
する守旧派が現れることです。かつて、報酬規程の廃止が問題になった際にも
「全国一律報酬の死守」を叫んでいた同業者がいらっしゃいましたが、都会の
一等地と田舎では事務所の賃料も相違しますし、プロ野球選手の報酬を一律に
したら大谷選手は生まれません。働く意欲にも影響します。

 都会で勤務司法書士や補助者の報酬が高い大規模司法書士法人が次から次へ
と出てきたら、司法書士の認知度も高まり、業界にとっては有利だと思いませ
んか。司法書士と行政書士の相違を説明しなくて済む時代が到来し、受験生も
増加するのです。

 なお、同じく若手の真下司法書士も(1月25日本欄参照)司法書士業界全
体の地位向上を目指していますし、若いのに日司連副会長の鈴木さんも業界内
で頑張っています。IT革命で産業構造ががらりと変わったのと同様に、これ
からは若い世代に司法書士業界の未来を委ねるしかありません。


2024.02.14(水)【冷静さを欠いてきた欧米政治】(金子登志雄)

 松本人志さん問題に関し、後輩やファンであれば松本氏を応援するのは当然
だとの言説がネットで堂々と行われています。こういうのは勇気といえるので
しょうか。7日付本欄のパオロ・マッツァリーノさんから「貴方の娘が性被害
を受けてもファンでいるのですか。被害を主張している女性に非情だとは思わ
ないのですか」と突っ込まれてしまうでしょう。

 こういう表に出すと憚れる言動が、最近は欧米のエリート層でも堂々と行わ
れるようになりました。イスラエルによる婦女子もお構いなしのジェノサイド
を人道的見地から非難した公務員やマスコミ人を平気で解雇したり、逮捕しま
したし、先般は、米国を代表する政治家・前下院議長のナンシー・ペロシ女史
が、ガザ問題で抗議した米国人に対し「中国に帰れ」と暴言をはきました。な
ぜ、中国が出てくるのか不明ですが、気に食わないことの全部を中国のせいに
するのがいまの米国流です。ペロシ様、ファンでしたが応援せずにファンをや
めますね。

 米国の著名な司会者で超保守的人物のタッカー・カールソン氏が、つい最近、
ロシアに乗り込みプーチン大統領にインタビューしたことさえも、欧米では利
敵行為で逮捕せよなどと猛バッシングがなされています。ジャーナリストとし
て快挙じゃないですか。立派なものです。

 いったい、少数意見や多様性を尊重する西洋文化はどこに行ってしまったの
でしょうか。意外に底が浅く、口では環境問題や性差別反対などを声高に主張
しながら、その裏には非西洋人を蔑む根強い優越思想が隠れていたのに、それ
を表に出すことに恥じらいがなくなったとしか思えません。高名なフランスの
知識人エマニュエル・トッド氏が「西洋はもはや世界の嫌われ者」と断言して
いましたが、嫌われて居直っているとしか思えません。

 この関係で「リベラル」は温厚で紳士的という私の中のイメージがすっかり
変わりました。伊藤貫氏によると、粗野な米国共和党は最初から喧嘩腰で来る
ので分かりやすいが、民主党はニコニコ近づいてきて、握手の代わりにブスリ
と刺してくるとプーチン氏がいっていたとのことですが、刃物を隠し持ちなが
ら穏健な平和主義者を気取るダブルスタンダードで大嘘つきなのがリベラルと
いうイメージになってしまいました。米国内でも、いままで知識人は民主党支
持でしたが、最近は変わってきたようです。

 そもそも、リベラルのバイデン政権の外交戦略で人類の未来に何かよい成果
が1つでもあったのでしょうか。ウクライナではロシアではなく欧州の弱体化
とドルを武器に使う経済封鎖で非西洋のドル離れを招き、ガザ問題では世界中
を反西洋・反米にし、技術の輸出を禁じた中国敵視政策では中国の自前の優れ
た技術開発の進展を後押ししただけで(これで日本の技術は売れなくなりまし
た)、逆効果ばかりです(米国の軍需産業だけは大儲け中ですが)。

 米国が単独でなすのではなく、子分の欧州勢や日本をも巻き沿いにしての対
応ですから、キッシンジャー氏の有名な警告「米国の敵になることは危険かも
しれないが、友人になることは致命的だ」そのものです。

 なお、前記プーチン氏へのインタビューは日本語字幕付のユーチューブでみ
られます。プーチン氏は冷静沈着で2時間のインタビューなのに資料なしに歴
史年号や人物名を次々にあげていました。大の読書好きで学究肌だといわれて
いますが、そのとおりでした。これで、欧米のプロパガンダのプーチン死亡説、
影武者説、狂人説が全部ウソだったことがばれてしまったことでしょう。

(ご参考)
 上記は10日土曜日に書いたものですが、偶然にも米国の元政府要人が同じ
ことを月曜日に語っていました。大統領候補のケネディ・ジュニアも過去に同
じようなことを述べています。良識派が少数派であることが米国の悲劇です。
https://news.yahoo.co.jp/articles/77626b33ed332dd5d84ff83a9f637f2887140836


2024.02.13(火)【アグリビジネス投資育成】(東京・鈴木龍介)

 最近、個人的に少し農業関係に関心を寄せている中で「アグリビジネス投資
育成株式会社」(アグリ社)というVC(ベンチャーキャピタル)の存在を知
りました。

 アグリ社は、2002年10月に「農業法人に対する投資の円滑化に関する
特別措置法」(下記)に基づき、日本政策金融公庫とJAグループの共同出資
により設立されました。農業法人の発展をサポートするための投資育成事業を
行う会社であり、農林水産省の承認・監督を受けるとともに、投資運用業者と
して金融庁の認可も受けています。

https://www.maff.go.jp/j/keiei/kinyu/toushiikusei/pdf/houkaiseigaiyou.pdf

 アグリ社から出資を受けるメリットとしては以下の点があげられています。

   https://www.agri-invest.co.jp/investment/investment-01/

 ただし、出資割合の上限規制(総議決権の50%以下)があります。ちなみ
に、2022年度の投資累計は174件、59億円で、うち農地所有適格法人
への投資は132件、44億円となっています。

~参考~
  アグリビジネス投資育成株式会社
   https://www.agri-invest.co.jp/corporate/corporate-01


2024.02.09(金)【終期(期間満了日)と効力発生日(始期)】
                            (金子登志雄)

 昨日の立花投稿で、説明の仕方に閃きました。終期か効力発生日(始期)か
を区別せよということでした。

 以下、比較し、まとめてみました。受験生や新人司法書士には役立つ内容に
なったと自負しています。

1.3月31日に任期満了し退任した。
 ・・・3月31日退任と登記します。つまり終期が原因年月日です。24時
 退任でも同じです。効力発生日の思考で翌日にしてはいけません。

2.合同会社に関する627条6項に「資本金の額の減少は、前各項の手続が
 終了した日に、その効力を生ずる」とありますが、終了日の翌日が効力発生
 日です。
 ・・・資本金500万円を300万円に減少する場合でいうと300万円の
 効力発生日は翌日午前0時だからです。つまり、この場合は始期が原因年月
 日になります。

3.法文で「経過した日」とは翌日です(例:228条に「株券喪失登録日の
 翌日から起算して一年を経過した日に無効となる」など)。
 ・・・株券喪失登録日が3月31日なら、翌日(午前0時)から起算し1年
 を経過した日は、1年の満了日が翌年3月31日ですから、3月31日を経
 過した日は翌年の4月1日です。つまり、株券が無効になる効力発生日です。

4.3月31日までの存続期間満了による解散日は3月31日です。
 ・・・解散は事業会社時代の満了日だからです。登記実務が4月1日にして
 いるのは、2や3と同様に「効力発生の日」で思考してしまったのでしょう。
 しかし、それは清算会社の効力の発生であり、解散は1と同じく満了日を登
 記しなければならないはずです。新株予約権の行使期間満了日を翌日にして
 いるのも同じ誤りです。

 以上のとおり、「終了した日」などという文理に惑わされず、ここは効力発
生日を問題にしているのか、そうではなく終わりの日でよいのかと解釈により
決定すべきです。

 4については、かなり前から私が主張し拙著にも記載しているため、当局も
勘違いにつき、すでにお気づきでしょう。しかし、いったん先例を出した限り、
容易に修正してくれません。単に当時の担当者の見解に過ぎないのにです。改
めないのは面子もあるでしょうし、巨象は動きが鈍いのです。したがって、と
うぶんは、4月1日午前0時に解散したのだから清算事務年度も4月1日から
と運用で調整するしかないと思っています。


2024.02.08(木)【会社を解散した場合の事業年度】(仙台・立花宏)

 今日は、会社を解散した場合の事業年度について考えてみました。

 解散後の清算事務年度については、解散した日の翌日(会社法494条1項、
475条1号)から始まるとされています。そのため、解散前の事業年度は解
散した日までということになるのだろうと思います。

 たとえば、1月31日に解散した場合は、同日までが解散前の事業年度で、
2月1日からが清算事務年度ということになります。

 では、定款に、存続期間を1月31日までと定めていた会社が解散した場合
はどうでしょうか。

 登記実務上は、解散日は2月1日として扱われています。よって、清算事務
年度は2月2日に開始します。そうすると、解散前の事業年度はいつまででし
ょうか。清算事務年度は2月2日からですので、2月1日までということにな
りそうです。

 しかし、1月31日までしか存続期間のない会社の事業年度が存続期間経過
後の2月1日まであるというのは、個人的には違和感があります。事業を行う
会社としては、1月31日までしか存続していないはずだからです。

 比較として、事業を行う会社の業務を行う役割を果たしていた取締役も、解
散により退任するのだと思いますが、登記実務上の解散日とされている2月1
日ではなく、存続期間の満了と同時に1月31日に退任すると考えるのが自然
だと思います。2月1日からは清算人が清算株式会社の清算事務を行うからで
す。2月1日が事業年度の末日だとすると、その1日は事業年度にもかかわら
ず、清算人のみが会社の業務を行うことになってしまいます。

 ところで、解散の事由はいくつかありますが、合併の消滅会社になった場合
はどうなのでしょうか。たとえば、2月1日に合併して解散した場合は、事業
年度はいつまでなのでしょうか。この場合は1月31日までなのだろうと思い
ます。

 この点については、会社法の規定からははっきりしませんが、法人税法14
条には事業年度について、次のように規定されています。
 ①通常の解散の場合   ・・・ 解散の日まで
 ②合併による解散の場合 ・・・ 合併の日の前日まで
 
 存続期間の満了による解散が2月1日に効力が発生するのだとすれば、本来
は②の合併と同様に考えた方が自然なのではないかと、個人的には思います。

 ちなみに、①の場合、法人税法には、解散の日の翌日からあらたな事業年度
がはじまる旨が規定されています。少なくとも、法人税法では、存続期間の満
了による解散の場合も、解散の日は存続期間の満了日であることを想定して規
定されているように思えてなりません。


2024.02.07(水)【M&A問題雑感+α】(金子登志雄)

 M&A業界出身の司法書士である私としては、鈴木さんの昨日の投稿は興味
深いものでした。一時代前のM&A業務経験者ですが、別の視点で情報提供し
ましょう。

 私がM&Aに関心の深い公認会計士らと日本初のM&Aコンサル会社を開業
したのは37年前の昭和62年ですが、当時はM&Aといっても通じなかった
り(事業目的としても使えませんでした)、乗っ取りと揶揄されたり、非弁活
動だと時代遅れの弁護士会から調査を受けたものでした。

 そんな状況だったため案件も少なく商売になりませんでした。いまはM&A
仲介専門の数社が上場している状況であり、我々は開業が早すぎたようです。

 一番大手の日本M&Aセンターのことも創業期からよく知っています。我々
より6、7年後の創業で、今から振り返ると一番タイミングがよい時期でした。
相続税対策の税理士ネットワークを母体にしていたので情報力が優れており、
我々はその点で劣っていたので、仲介ではなく自ら買収する路線を選択しまし
た。当社(アクモス)がM&Aで成長してきたのはそのためであり、株式交換
の実行も日本第1号でした。

 5年程度前からでしょうか。高齢化社会の到来で、後継者難M&Aがますま
す増えるであろうと上場しているM&Aの会社の株価をウオッチしていました
が、予想どおり急騰し続けていたのに、2年ほど前から急落してしまいました。

 業種からしてコロナの影響は大きくないどころが、廃業よりM&Aですから、
ますます増えてもよいはずなのに、同業者が増え競争が激化したせいでした。
ただし、仲介業ですから、商品仕入れなどが不要のため、いずれも高業績を維
持し、従業員の平均年収トップの会社もM&A業者です。従業員の平均年齢が
30歳前半なのに、平均年俸が2800万円を超えています。

 こうして、多くの方が流行のM&Aに関与したいと関心を持つわけですが、
現実は厳しいこともご承知ください。

 後継者難企業ばかりだといっても、中小企業の多くが経営者個人の力で持っ
ており、顧客は経営者個人に付いた客であり、その方がいなくなると、顧客も
離れてしまうため、M&Aの対象になりません。

 M&Aの対象であるためには経営者が変わっても、顧客が離れないことが前
提です。スーパーマーケットのように商品揃えで勝負するか、人手を要する製
造業、派遣業、あるいは人手の要らない不動産賃貸業やビル経営などはM&A
に適した業種でしょう。技術に優れた町工場などは魅力だと思うでしょうが、
その技術者がM&Aによる社風の急変で転職してしまったら、意味がありませ
ん。M&Aが成功したかどうかは実行から1、2年後に判断することです。

 また、各業種には独特のノウハウがあり、異業種が参入しても成功する確率
は低いといえます。

 というわけで、M&Aに関心を持つことや専門家として手続に関与すること
はお勧めですが、仲介やコンサルティングへの関与は企業経営に詳しくない司
法書士や弁護士には向いていないと私は思っています(公認会計士は様々な業
種を監査しているので、向いています)。

 ただ、M&A業務に関与していると、夜逃げした経営者、詐欺師経営者、あ
るいは経営者の孤独や悲哀を目の当たりにすることができ、社会経験の面では
よい経験になり、私の会社法・商業登記業務にも役立っています。

(論理構成のご参考)
 法律学は説得学です。弁護士は裁判官を説得すること、我々は登記官を説得
することが仕事です。そのためには、どう主張し反論するかが重要です。
 いま松本人志さんの性加害問題につき、ネット上、さまざまな意見が飛び交
っており、中には文春と吉本興業が裏でつるんでいるなどと陰謀論まがいの見
解まであります。そこで、さまざまな主張に対して、どう反論するかという点
で、よいXがあり(下記)、正論としていま話題になっています。スキャンダ
ルとしてではなく、社会問題に対する「ものの見方、考え方、捉え方」という
倫理構成という面で参考になります。書き手のパオロ・マッツァリーノさんの
ことは知りませんでしたが、日本人かどうも不明な方のようです。
    https://pmazzarino.blog.fc2.com/blog-entry-451.html


2024.02.06(火)【M&A支援機関登録制度】(東京・鈴木龍介)

 「M&A支援機関登録制度」というのをご存じでしょうか?

 日本の中小企業経営者の高齢化が進み、事業承継が日本経済にとって大きな
課題といわれて久しい中、親族承継ではなく、第三者承継であるM&Aが効果
的な解決策の一つとして注目されています。

 現状では、我が国の中小企業M&A市場はまだ成熟しているとはいえず、多
くの中小企業が後継者不足に直面しているにも関わらず、M&Aの機会は限ら
れており、情報の非対称性や交渉の複雑さが障壁となっているといわれていま
す。また、中小企業特有の地域密着型のビジネスモデルや企業文化の違いもM
&Aを難しくしている要因となっているようです。

 このような状況を踏まえ、政府(経済産業省/中小企業庁)は2021年8
月に「M&A支援機関登録制度」を創設し、M&Aの専門的な知識と経験を有
する支援機関を登録・公開することで、中小企業が信頼できる支援機関を容易
に見つけられるようにするとともに、登録された機関による支援に関する費用
を補助するという施策――事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)――を展
開しています。

 現在、登録機関データベース(https://ma-shienkikan.go.jp/search)によ
ると支援機関は約3000あり、M&A専門業者(668件)や金融機関
(155件)のほか、税理士・公認会計士(846件)や弁護士(48件)と
いった士業者が登録しています。ちなみに司法書士(法人含む)については
11件の登録がされています。

【参考】
 中小企業庁「M&A支援機関登録制度」
  https://ma-shienkikan.go.jp/


2024.02.05(月)【「相続登記義務化元年」(その2)】
                         (島根・根来川弘充)

 先月に引き続き同じテーマで触れたいと思います。

 今年に入り、相続登記の相談がさらに増えて来たことを実感しています。

 これらのご相談の中には、「今年の3月までにしなければならない。」と思
っておられる方が、多数おられます。

 少なくとも、「今年の4月から3年間は大丈夫です。」とまずは、お伝えし
たいと思います。

 一方で、このような相談を受けると、やはり心配になりますのが、悪質な消
費者被害です。

 「3月末までにしないと、土地建物がなくなりますよ。」
などと、電話がかかってきたら、信じてしまう方もいるかも知れないと思って
しまいます。

 今年は元旦早々、能登半島にて大きな震災がありました。被災された皆様だ
けでなく、日本の全国民が少なからず不安をもっています。加害者が、こうし
た不安を利用してくることも充分予想されますので、皆様、くれぐれもご注意
くださいませ。

 最後になりますが、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。


2024.02.02(金)【訂正公告と効力発生日】(金子登志雄)

 官報をみると毎日のように訂正公告が掲載されていますが、合併等の組織再
編では本店住所や代表取締役の氏名の誤記の訂正が中心ですが、資本金の額の
減少や決算公告になると金額の誤記が少なくありません。

 その結果、同じ訂正公告でも、組織再編では効力発生日を変更せずに済むの
に、減少額を誤記した資本金の額の減少では効力発生日を変更しなければなり
ません。

 というのは合併等の組織再編では誤記公告のままでも登記が受理されること
がほとんどであるのに対し、資本金の額の減少の金額相違は本質的部分の誤記
のため、訂正公告から1か月以上の間を空けなければならず、効力発生日を変
更する必要が生じるからです。ただ、組織再編と相違し、効力発生日の変更公
告は不要ですし、業務執行機関の延期決定で済むので、気は楽です。

 資本金の額の減少の登記には、減少額を誤記した当初の官報公告と訂正公告
の2つが必要ですが、電子公告の場合の訂正はどうするのかなと考えてしまい
ました。訂正公告後1か月公告するのなら、当初の公告をキャンセルし、やり
直したほうが早いからです。

 しかし、そうすると、官報は2つ提出されるのに電子公告は1つだけとなり
ますから、官報と同様に、当初の公告は公告期間を延長しそのままにし、訂正
公告もする例が多いそうです。

 先週から期間と期限の差や効力発生日の話題が続きましたが、いかがでした
か。基礎の基礎なのに、いや基礎の基礎だからこそ意外に難問でした。同時に
楽しませていただきました。来週からは新しいネタを探すしかありませんが、
今年で17年目です。よく続いているものですね。


2024.02.01(木)【始期と効力発生日の差】(金子登志雄)

 ここのところ、効力発生日とは何ぞやにこだわっていましたが、少しだけ分
かってきました。株主や債権者という契約当事者以外の方への影響が強く、そ
の方々への手続が必要になるときに「効力発生日」が登場するようです。

 取引契約といえば民法の売買契約が典型例ですが、2月1日に合意したら、
口頭であろうと即座に契約が成立し(諾成契約)、権利義務という効力が発生
します。2月5日から効力を発生すると合意したら「始期」付契約となります。
期限(始期と終期)は、効力の発生又は消滅要件で法律行為の付款です。

 これに対して、会社組織に関する契約の典型例である吸収合併契約でいえば、
単に契約するだけでなく、株主総会の決議の承認を有効要件とし、事前開示や
債権者保護手続なども必要ですから、全ての必要な手続が終了して効力発生日
に効力が生じます。この「効力発生日」は、会社の決定した目的を達成する日
として定めた日であり、始期とは相違します。

 取引行為は原則として相対立する取引の当事者自身が契約の当事者となり、
お互いに権利義務を生じさせるものですが、吸収合併契約は会社が契約当事者
になるのに、その効果や影響を受けるのは株主や取引先、債権者、従業員です。
株式併合も定款変更を要する株券の廃止も、株主に影響する点が大きいためか、
会社が株主総会の決議で決めた効力発生日に効力を生じます。これらからして、
効力発生日は、権利義務の発生日を意味する始期ではなく、会社の決定の目的
達成予定日というべきでしょう。

 始期と効力発生日の差は以上だと考えました。事業譲渡契約は取引行為です
が吸収分割にも似ており組織法的要素があるので、効力発生日という用語が登
場するのでしょうが、個別取引行為の集合であり、商品売買、不動産売買、契
約上の地位の移転、債権譲渡、債務の引受け………の全部が目的を達成した日
を効力発生日としても、既に終わった商品売買だけは有効ということも契約で
の取決め次第ですから、やはり、中間領域の特殊な効果といえましょう。

 ただし、以下の例からしても、始期と効力発生日の区別は厳密なものではな
く、複雑な手続のときに効力発生日、単純な決定のときに期限と使うと思った
ほうがよいかもしれません。

 ①2月5日付で選任する・・・予選であり期限付選任ともいいます。委任契
約(選任+就任承諾)の申込決議であり、法律行為の付款といえるのかはとも
かく、選任の効力に期限を付したので、「始期」でよいでしょう。

 ②商号変更である定款変更の効力発生日は3月1日とする・・・公告手続も
なく、この場合も①と同じく期限付決議ですから、「始期」のことを「効力発
生日」と表現しただけでしょう。

 ③3月31日をもって解散するという決議・・・期限付解散といいます。解散
公告なども必要ですが、解散の効力発生日を定めたというよりも、事業会社の
効力の終結日を決議したため、期限(終期)のほうがしっくりきます。


2024.01.31(水)【効力発生日は本質的部分でない理由】(金子登志雄)

 資本金の額の減少の決議事項は次です(449条参照)
 ①減少資本金額
 ②一部又は全部を資本準備金にする際はその旨
 ③効力発生日

 吸収合併契約の必須内容は次です(749条参照)
 ①契約当事者事項
 ②合併取引の対価内容とその割当事項(対象者に新株予約権者を含む)
 ③合併対価が株式の場合は資本金及び準備金事項
 ④効力発生日

 このうち、効力発生日だけは本質的事項ではないとして業務執行機関の決定
で変更することができます。

 では、どういう根拠で本質的事項でないというのかと問われたら、どうお答
えしますか。世の中には結論は分かるが、理由の説明はできないことも多いも
のです。徒然なるままに挑戦してみました。

 理由1:一般論ですが、5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どの
ように)のうちの中核部分は「どこの誰が何(内容)を」までです。例えば、
婚約の報告でも重要部分は、1に「婚約しました」、2に「どこの誰と」であ
り、「いつ、どこで、なぜ、どのように」は中心部分ではありません。

 理由2:売買などの譲渡契約は合意が成立した時、金銭消費貸借では合意と
金銭の引渡で効力が発生し、代金や債務の支払時期を定めずとも有効です。即
時に効力が発生し、履行はその後の問題のため、効力発生日を定める必要もあ
りません。

 これに関連して、同じ取引行為でも個別財産の集団譲渡である事業譲渡では、
会社法467条に「効力発生日の前日までに、株主総会の決議によって、事業
譲渡契約の承認を」と、469条3項に「効力発生日の20日前までに株主に
通知」とある程度のため、合併契約などの組織法上の契約に準じて効力発生日
も譲渡契約の一部に加えて株主総会決議の承認を求めているのか、取引法上の
行為だから単に当事者が合意した効力発生日までに、効力発生日の記載のない
譲渡契約を承認してもよいのかはっきりしません(定款一部変更の件では、変
更の効力発生日を定款内に記載不要で株主総会で決議するだけのことが多い)。

 組織再編では株主、債権者、従業員と多くの利害関係者との調整が必要であ
るため契約内容等についても強行法で規定する必要があるが、契約自由の原則
の下での取引行為としての事業譲渡は、そこまで会社法が干渉する必要がない
ため、契約内容の項目や株主総会の決議項目の規定を設けていないのでしょう
から、効力発生日についても、株主総会で決議することが多いというだけで、
決議せずに業務執行機関で決定し、当事者間で合意するかは自由だということ
だろうと考えました。

 事業譲渡と効力発生日については、広島の幸先さんから問題提起を受けたた
め、メールで意見交換し、上記の結論(目下の結論)に達しました。幸先さん、
鋭いご指摘ありがとうございました。

 理由3:いつから効力が発生するかの始期や、効力が消滅するかの終期は、
停止条件や解除条件と同じく法律行為の付款とされ、付け足しであり、本質部
分ではないため、契約内容とされても「いつ」というのは中心部分ではないこ
とが多い。
(注:新株予約権の行使条件や行使期間は内容そのもので、付け足しではあり
ません)。

 理由4:債権者異議の公告でも効力発生日や株主総会の決議日等の「いつ、
どのように」は含まれていないし、吸収合併の20日前の株主通知においても
同様です。

(参考)
 吸収合併で発行可能株式総数を超える新株式を発行する際に発行可能株式総
数を拡大する必要がありますが、旧商法時代は、必要的変更であり合併の一部
分と扱われ、登録免許税も合併に含まれていました。会社法になり、合併は合
併、定款変更は定款変更で3万円の登録免許税が必要になりました。


2024.01.30(火)【大相続時代②~相続税関連の見直し】
                         
(東京・鈴木龍介)

 今回は、今年の1月から適用が開始される相続税関連の見直しがありますが、
主なものをピックアップしまして、備忘的にアップさせていただきます。

1.マンションの相続税評価の見直し
 分譲マンションの相続税評価額と市場価格に大きな乖離があることから、相
続により承継したマンション(一室)については、従来の評価顎に一定の補正
率を乗じて“市場価格の6割程度”とする評価方法が適用されます。

2.暦年贈与の加算期間の延長
 相続により財産を承継した者が、被相続人から生前に贈与によって取得した
財産がある場合に、その贈与財産を相続財産に加算する期間が相続開始前3年
から“7年”となります。

3.相続時精算課税の基礎控除の創設
 60歳以上の父母・祖父母などから18歳以上の子・孫などが贈与を受ける
場合、暦年贈与に代えて適用できる相続時精算課税について、“年110万円
の基礎控除”を受けることができるようになり、基礎控除分の贈与財産は相続
財産に加算されません。
 
4.空き家譲渡特例の期間の延長
 相続により承継した被相続人の居住用家屋(空き家+底地)を譲渡する場合
に最大で3,000万円を控除する特例の適用期間が“4年”延長されます
(令和9年12月31日まで)。

~参考~
 国税庁:相続税・贈与税ページ
 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/sozoku-zoyo.htm

 税務署「令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし(令和5年6月)」
 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0023006-004.pdf


2024.01.29(月)【任期と存続期間と効力発生日】(金子登志雄)

 任期という用語は当然ながら期間を表します。任期は役員である期間のこと
ですから「就任時から退任時」までで「選任時から」ではありません。

 しかし、会社法の定め方は「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終
のものに関する定時株主総会の終結の時まで」であり、期間というよりは任期
の終期(期限)の定め方というべきでしょう。選任時は期限の計算基準に過ぎ
ません。もっとも、条文の見出しにも任期と明記されているのだから「いつま
で」という定め方でも「期間」に変わることがないともいえます。

 新株予約権の行使期間は「いつからいつまで」と定める例が多いのに対し、
存続期間は「成立後満50年」などが多いようですね。具体的に「2074年
3月31日まで」もよいでしょう。

 新株予約権の行使期間や存続期間の末日(満了日)が令和6年3月31日の
日曜日であったら、翌日に延びるのでしょうか。

 これは任期満了日が3月31日終了時になった場合と同様に、延長しないと
解されています。したがって、3月31日退任、3月31日行使期間満了(に
より第〇回新株予約権消滅)、3月31日存続期間満了により解散となるはず
ですが、周知のとおり、任期満了退任以外は、登記実務上、翌日の4月1日に
されています。

 これはおそらく、減資の債権者保護手続の期間満了日の翌日にした先例の影
響を受けたものと推測していますが、3億円の資本金を減資して1億にする場
合は、その効力発生日が資本金が1億円になった日ですから翌日付で正しいの
ですが、行使期間の満了の効力発生日は、新株予約権が消滅した日であり、解
散の効力発生日も事業会社の終了日ですから、私は明らかな間違いだと拙著で
主張しています。

 この存続期間の満了日の翌日が解散日だというのは休眠会社の期間満了でも
使われていますが、清算事務年度が4月2日開始になってしまい税理士さんも
困っています。こういう悪解釈は早期に改めてほしいものです。


2024.01.26(金)【期間と期限】(金子登志雄)

 資本金の額の減少の効力発生日を令和6年4月1日(月)にして、令和6年
2月29日に「1か月以内に異議を述べよ」と官報で債権者保護の公告をして
も、登記は受理されません。3月31日が日曜日であり、期間満了日が翌日に
延びるからです。

 では、官報公告は2月28日以前にしたが、催告については、2月29日に
Eメールで「3月31日までに異議を述べよ」としたら、やはり翌日に延びる
のでしょうか。

 これに関しては公告の場合と同様に延びると一般に解釈されていますが、確
定期限として定めたのだから、締切日の3月31日が延びるわけがないという
考え方があってもよさそうです。

 そこで、そもそも「3月1日から3月31日まで」というのは期間なのか、
始期と終期を定めた期限なのかと考え始めてしまいました。単に「3月31日
まで」だと期限だといわれていますが、「本日から」が省略されているだけで
すから、期間ではないといえないでしょう。

 典型例が事業年度です。「4月1日から翌年の3月31日まで」の事業年度
を始期と終期を表した確定期限だという人はいません。新株予約権の行使期間
は登記記録例で「平成25年3月31日まで」とのみなっているのに、これを
期間ではないと問題視する人もいません。結局、期間か期限かは個別事案の解
釈問題であり、「~日まで」とあるかどうかとは無関係だというべきでしょう。

 民法142条に「期間の末日が休日に当たるときは、その日に取引をしない
慣習がある場合に限り、期間は、その翌日に満了する」とありますが、事業年
度は、取引ではないので、末日が休日であっても翌日に延びません。

 募集株式の払込期間や新株予約権の行使期間も翌日には延長しないと私は考
えています。払込期日は日曜日でもよいのに、払込期間の末日が日曜日では不
可とはいえないからです。また、債務の弁済ではなく株主になるための出資の
時期が翌日に延びるという取引慣習もありません。

 債権者の異議の場合は、登記実務上は公告の「公告掲載日の翌日から1箇月
以内」にとのバランスもあるのか、一般に翌日に延びると解釈されていますが、
それは債務の履行と同様に異議の申述は、休日にはしないという慣習があると
されているためでしょう。

 しかし、出資行為と異議の申述で差を設ける理由につき疑問ですし、それ以
前に時代は大きく変化しました。2月29日にEメールやファクシミリあるい
は相手先のスマホに、「3月31日までに異議を述べよ。なお、同日は休日だ
が、その日における異議も受け付けております」とした場合にも、登記は受理
されないのでしょうか。

 個別事案ごとに対応する裁判所と相違し、登記所では判断困難ですね。実験
してみるのはやめておきますが、やむをえず、そうなった場合は主張してみる
価値はありそうです。

(追記)
 昨日の本欄で「株式併合や株券廃止、事業譲渡の効力発生日の変更について
は、債権者保護手続を前提に業務執行機関の決定でよいとする解釈も見当たら
ないので(あったら教えてください)」と書きましたが、広島の幸先さんから、
事業譲渡については本質的でない部分は業務執行機関の決定も可解だとした文
献等を示していただきました。

 それで気づいたのですが、合併契約などと同じく譲渡契約に「ただし、手続
の進行に応じ必要があるときは、当事者間で協議のうえ、期日を変更すること
ができる」と挿入するのが通常なので、実務では問題にならないでしょう。

 吸収分割でもそうですから、この見解に異議はありません。拙文は、こうい
う挿入分などがないと、第三者に通じにくいので、株主総会決議が無難だとい
う趣旨に過ぎません。


2024.01.25(木)【効力発生日の変更規定の存在理由】(金子登志雄)

 資本金の額の減少の効力発生日までに債権者保護手続が終了しないこともあ
ろうと、効力発生日につき「令和〇年〇月〇日とする。ただし、債権者保護手
続がその日までに終了しない場合は、終了日の翌日とする」と、ただし書を設
けることは可能でしょうか。

 会社法施行前は上記のようなことも考えましたが、効力発生日は確定期日に
限ると解釈されていますので(組織再編については相澤哲ほか編著『論点解説
新・会社法』Q945)、無理でしょう。昨日説明しましたとおり、効力発生
日は基準日の機能があり、その日が不確定では、さまざまな支障が生じかねな
いからです。効力発生日の変更を定めた趣旨にも反します。

 資本金の額の減少の効力発生日の変更は、業務執行機関の決定で済み、公告
も不要ですから(反対株主の買取請求もなく、株主等への影響が少ないためで
す)、ただし書を設けなくとも支障がないでしょう。

 ところで、資本金の額の減少も組織再編でも効力発生日の変更は業務執行機
関の決定で済むと解釈されているのに、株式併合や株券廃止の効力発生日の変
更については規定もありませんし、変更する場合に誰が決めるのかにつき全く
文献に記載されていないようです。事業譲渡についても規定がありません。

 ずっと、なぜだ、変更を株主総会で決めないといけないのかと思っていまし
たが、定められていない理由だけは、今回、気づきました。
 
 債権者保護手続だけは旧商法時代から「(今後)一箇月を下ることができな
い期間内に異議を述べよ」ですが、株式併合の株券提出は「株券提出日(注:
効力発生日のこと)の一箇月前までに、公告・通知せよ」(219条1項)で
すし、株券廃止は「効力発生日の二週間前までに通知・公告せよ」(218条
3項・4項)のため、所定時期に公告・通知した限り、効力発生日を延期する
必要がないためでした。また、事業譲渡は債権者保護手続制度がありません。

 言い換えれば、債権者保護手続だけは今後の「一箇月を下ることができない
期間」という不確定期間の定めのため、当初から変更の可能性を想定した規定
だったため、変更についても規定する必要があったわけです。

 もとに戻って、株式併合や株券廃止、事業譲渡の効力発生日の変更について
は、債権者保護手続を前提に業務執行機関の決定でよいとする解釈も見当たら
ないので(あったら教えてください)、株主総会の決議が必要だというのが無
難な解釈でしょうか。

(お知らせ:新時代の司法書士仲間)
 若手の沓脱司法書士の司法書士法人TOSグループが新時代の司法書士事務
所を目指して頑張っていますが、共通の知人で親しい若手の真下幸宏司法書士
も頑張っており、昨日から下記を始めました。ご参考まで。

 https://note.com/beed_start/n/n1792f35012b6?sub_rt=share_b

 沓脱事務所も真下事務所もWEBに強い事務所であり、まさしく令和時代に
相応しい事務所です。WEBに弱い昭和時代の私ほか他のメンバーは、強みの
経験と職人能力で彼らをバックアップしています。


2024.01.24(水)【会社法449条6項ただし書の解釈】(金子登志雄)

 会社法449条6項(資本金の額の減少は効力発生日に生じる。ただし、債
権者保護手続が終了していないときは、この限りでない)の解釈につき、立花
投稿(22日)は、実に新鮮で面白い内容でした。

 立花さんは、1月10日の【定款で代表者を定めた場合の添付書面】といい、
人が気づかない点に気づく能力を持った勉強家です。私は文献調べという意味
では不勉強家です。鉛筆1本で済む数学の応用問題を解くように、ただひたす
ら、ああでもない、こうでもないと考え続けるのが性に合っており、それで時
間を費やし文献を調べようともしない怠け者です(しかし、この方法は新発見
も多いですよ。末尾の宿題参照)。

 さっそく、立花さんが提起した応用問題を解くことに挑戦してみましたが、
思ったよりも短時間で「解」に達しました。残念ながら、学者見解は旧商法の
影響を受けた間違い解釈だと結論づけました。

 旧商法時代は、資本減少は、株主総会で決議し2週間以内に債権者保護手続
等を開始し、その期間満了の翌日に効力が生じるとされていましたが、会社法
は、この「これからの手続」方式を取り止めたのです。つまり、会社法では、
将来の効力発生日という基準となる日を定め、その立ち位置から過去を振り返
って、株主総会の決議や債権者保護手続など所定の手続の全部が順序を問わず
終了していればよいという「効力発生日主義」を採用したのです(拙著『会社
法実務〔全訂2版〕』Q1-1-1)。したがって、効力発生日を延期せずに、
「所定の手続が完了した時に効力が生ずる」方式は会社法下では通じません。

 449条6項ただし書の「ただし、この限りでない」は「この限り(範囲)
に在らず(「非ず」ではない)」で本文の適用除外を意味する用語ですから、
「適用しない」と同じ意味です(『会社法実務〔全訂2版〕』Q1-1-2参
照)。「ただし、この限りでない」の対象は本文で、750条6項等の「適用
しない」の対象が他の規定であるため、こういう表現の差が生じただけです。

 念のため、会社法立案者による相澤哲ほか編著『論点解説 新・会社法』に
何か書いてあるだろうと調べたところ、その545頁に「会社法では、あらか
じめ定められた『その効力を生ずる日』までに債権者保護手続を終了しなけれ
ば、資本金の額の減少の効力は生じず、その後に債権者保護手続が終了したと
しても、その終了をもってその効力が生ずるものではないこととされているた
め(446条6項ただし書)」と明記されていました。

 私の学者本への強い不満は、著作の出版後に、こういう立法担当者の明確な
反対意見が出ているにもかかわらず、増刷の際に何のコメントもしないことで
す。司法書士読者は登記実務との差に気づきますが、登記を知らない弁護士は、
学者見解を前提に顧問先企業を指導するので、学者を名乗るなら、もう少し著
作本の悪影響につき、ご配慮いただきたいものです。

 (宿題)株式併合、株券廃止、事業譲渡には効力発生日の変更につき規定が
ありません。この問題を考えている際に、その理由に気づきました。明日の本
欄のテーマにしますが、なぜだと思いますか。皆様もぜひお考え下さい。


2024.01.23(火)【『商業登記全書 第5巻 株式会社の機関 第2版』】
                          
(東京・鈴木龍介)

 このたび、私が編著に携わりました『商業登記全書 第5巻 株式会社の機
関 第2版』(本書)が中央経済社から発刊されました。

    https://www.biz-book.jp/isbn/978-4-502-46551-2

 本書は平成20(2008)年に初版が発刊されましたが、その後平成26
年改正会社法、令和元年改正会社法が施行され、株式会社の機関についても多
くの見直しがあったことから15年ぶりの全面改訂となります。

 他方、平成18(2007)年の会社法の施行時においては、その取扱いが
不明確なところも少なくなかった登記実務上の諸問題についても多くの事案の
集積と検討を経ることにより、実務の定着と安定が図られた感があります。

 ちなみに、商業登記の実務において、株式会社の機関に関する分野が重要か
つ頻出であることは、これまでと変わることはありません。

 本書は、商業登記全書シリーズとしての趣旨・目的を踏まえつつ、構成や執
筆者を一新のうえ、より登記実務に即したものとすることを目指しました。ま
た、トピックス的な問題をカバーするという観点から、あらたに「コラム」を
設けました。

 本書が司法書士をはじめとする専門家や企業の法務担当者といった方々の業
務の一助となれば幸いです。



2024.01.22(月)【資本金の額の減少の効力発生日】(仙台・立花宏)

 1月17日(水)の本欄で、金子先生が効力発生日変更の添付書面について
解説されていらっしゃいました。それを読んで勉強していたところ、資本金の
額の減少の効力発生日について気になる点が出てきたので、調べてみました。

 まず、合同会社が資本金の額の減少をする場合には、必要な手続が終了した
日に、その効力が生じます(会社法627条6項)。会社法施行前の商法では、
株式会社についても同様の規律でした(昭和39・9・5民事甲第2919号
「資本減少の効力の発生日は、期間満了の日の翌日である」)。

 会社法では、株式会社の資本金の額の減少については、効力発生日を定める
必要があります(会社法447条1項3号)。そして、資本金の額の減少は、
原則として、その効力発生日に効力が生じます(会社法449条6項)。

 では、効力発生日までに債権者保護手続等が完了してなかった場合はどうな
るでしょうか。会社法449条6項では、前記のとおり、原則として効力発生
日に効力が生ずることを規定し、ただし書で、そうした所定の手続が完了して
いないときは、この限りでないと規定しています。

 「この限りでない」とはどういう意味でしょうか。効力が発生しないという
ことでしょうか。それとも、効力発生日に効力が発生するのではないというこ
とでしょうか。

 登記実務は前者(効力が生じない)という見解だと思います。私も当然、そ
うだと思っていたのですが、いくつかの書籍をみたところ、後者(効力発生日
に効力が発生するのではない)という見解で解説しているものがありました
(注)。どういうことかというと、効力発生日後、所定の手続きが完了した時
に効力が生ずるということです。

 たしかに、たとえば、組織変更(会社法745条6項)や、合併等(会社法
750条6項)では、効力発生日までに所定の手続が終了していない場合は、
それらの効力発生の規定(会社法745条、750条1~5項各項)を適用し
ないと規定されていますが、資本金の額の減少については、そうした規定はあ
りません。

 そうしたことからすると、いくつかの書籍の見解である、所定の手続きが完
了した時に効力が生ずるという考え方も、一理あるように思えました。

 もちろん、登記実務においては、効力発生日までに所定の手続が完了してな
い場合には、すべて手続をやり直すことになると思いますので、この考え方は
取れませんが、会社法はまだまだ、わからないことが多いと考えさせられまし
た。

 注)江頭憲治郎『株式会社法第8版』(有斐閣)724頁、
   田中亘『会社法第3版』(東京大学出版会)465頁、
   前田庸『会社法入門第13版』(有斐閣)628頁


2024.01.19(金)【簡易合併の内容の決定権限】(金子登志雄)

 組織再編を吸収合併に代表させますが、吸収合併は一般に次の順序です。

 ① 取締役の過半数の一致又は取締役会で吸収合併の内容の決定と、
  代表取締役によるが吸収合併契約の締結
 ② 株主総会で吸収合併契約を承認

 簡易合併になると②の規定を「適用しない」とありますから(784条1項、
796条1項)、取締役の過半数の一致又は取締役会の決定で会社の意思決定
は完了です。

 ところが、監査等委員会設置会社(指名委員会等設置会社は省略)において
は、取締役の過半数が社外取締役である場合と定款で定めた場合の2つに限り、
重要な業務執行の決定である簡易合併の内容の決定であっても、取締役会で取
締役に委任することができます(399条の13第5項・6項)。

 この定款内容は登記事項であり、「重要な業務執行の決定の取締役への委任
についての定款の定めがある」と登記している例がほとんどです。

 この委任はその都度委任することも、もちろん可能ですが、多くの場合は、
取締役会規則を取締役会で定め委任できる事項の範囲を定めているため、登記
の添付書面としては「取締役会規則を定めた取締役会議事録+取締役会規則+
取締役の決定書」になります。

 監査役会設置会社の大企業(例えば、トヨタ自動車)については、このよう
な規定が存在しませんから、取締役会で簡易合併の決定を取締役に委任するこ
とはできないのでしょう。天下のトヨタが、年間1億円程度の売上しかない企
業を合併で吸収するのに、わざわざ取締役会の決議までしなければならないの
でしょうか。かねてからの疑問です。


2024.01.18(木)【敷金と現物出資】(金子登志雄)

 親会社が「所有不動産の賃貸業の一部」を子会社に現物出資する場合の法律
構成ですが、私の理解によると、「従物は、主物の処分に従う」ので(民87
条2項)、次になります。

  ①不動産所有権の移転
  ②不動産賃貸人たる地位の移転(民605条の2)
  ③敷金・保証金返還債務の移転

 ところが、ネットで検索したら、敷金は登記先例で現物出資の対象にならな
いとあるではありませんか。

 まさかと思い、ある先例集を調べたところ、掲載されていませんでしたが、
土日にさらに調べたところ、根拠は、1996年11月の商事法務1439号
38頁「実務相談室/敷金返還請求権を現物出資の目的とすることの可否」で
あり、設立時の現物出資問題につき、「現実に発生している敷金返還請求権を
現物出資の目的としているものであれば,設立の登記の申請は受理されるが、
不動産賃貸借契約が継続中であり、いまだ敷金返還請求権が現実に発生してい
ないものであるときは、設立の登記の申請は受理されない」とありました。

 な~んだ!です。賃借権の従たる権利である敷金返還請求権は独立して現物
出資することはできず、独立した具体的権利の金銭債権になったら可能だとい
う当然の内容であり、敷金返還債務のことではありませんでした。言い換えれ
ば、貸借対照表の資産項目への計上の可否のことであり、負債項目の話ではあ
りませんでした。

 この商事法務をみて、賃借権の現物出資なら、従たる権利の敷金返還請求権
も対象になるように感じましたが、いかがでしょうか。

 この商事法務見解には疑問を出す方が少なくなく、いずれ先例変更されるの
ではないでしょうか。

 https://x.gd/sUsV8

 https://blog.goo.ne.jp/tks-naito/e/517f6b0359f9f274f33bbee65d4f194a


2024.01.17(水)【効力発生日変更の添付書面】(金子登志雄)

 会社法362条4項に「取締役会は、次に掲げる事項(注:重要な財産の処
分及び譲受け、多額の借財など)その他の重要な業務執行の決定を取締役に委
任することができない」とありますから、重要でない業務執行は業務執行取締
役の決定に委任することができます。

 しかし、業務執行の決定でありながら、会社法440条3項の「貸借対照表
に係る情報の提供を受けるために必要な事項」の設定や変更、廃止については
委任状だけでよいとされていますし、電子公告のアドレスなども同様です。そ
の他として規定はありませんが、株式募集や合併等の対価の決定につき、新株
式を何株にし、自己株式を何株にするかなども、代表者の権限と考えられてい
ます。募集株式(公開株式)の割当権限も同じです。

 つまり、登記の添付書面でいうと、「委任した取締役会議事録+業務執行取
締役の決定書」を添付する場合と、代表取締役が一人で決定し、決定書さえ不
要だとされる場合があります(募集株式の総数引受契約の承認につき、定款で
代表取締役の決定と定めた場合も、定款のみで代表取締役の決定書は不要でよ
いとされています。商登法46条に代表取締役の決定が規定されていないため
です)。

 では、資本金等の額の減少の効力発生日の変更については、どうでしょうか。
会社法449条7項に「いつでも当該日を変更することができる」とあり、会
社法立案担当者によると「この決定をする機関についての定めはないので、株
主総会や取締役会の決議によらず、業務執行をする者が変更を行うことも可能
である」(旬刊商事法務1746号32頁)とあります。

 また、組織変更や吸収合併等の組織再編については、「会社法では、組織再
編行為の当事会社の代表者が単独で、または他の当事会社との合意により、効
力発生日を変更することができることを明らかにしている(会社法780条1
項、790条1項)」とあります(旬刊商事法務1753号50頁)。

 この解釈ですが、どうみても取締役会から委任されるまでもなく電子公告の
アドレスの決定などと同様に、代表取締役が決定してよいという意味だとしか
思えません。会社法790条1項は「消滅株式会社等は、存続会社等との合意
により、効力発生日を変更することができる」という内容ですが、組織変更で
は代表取締役が決定することができて(780条1項)、吸収合併等では、代
表取締役の決定では足りないとは読めません。

 ところが、松井ハンドブック4版(や会社法制定時の民商第782号通達)
では、資本金の額の減少でも組織変更・組織再編でも、「取締役の過半数の一
致を証する書面又は取締役会の議事録」を要求しています。会社法立案部門と
商業登記部門で見解が異なるのは我々としても困ります。

 上場会社等の大企業では、取締役会の開催も容易ではありませんし、押印に
関しては法令で要求されていない限り不要とされましたので、会社法の制定後
18年も経過した今日、そろそろ民商第782号通達を見直してもよい時期で
はないでしょうか。見直すなら、ぜひ司法書士会の代表も加えてほしいもので
す。私、立候補します。


2024.01.16(火)【大相続時代~相続税申告の概況】(東京・鈴木龍介)

 相続税は、亡くなった被相続人から相続等により取得した財産の課税価格が
基礎控除額「3千万円+600万円×法定相続人数」を超える場合に課税対象
となり、相続人は相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に申告をする
必要があります。

 先般、国税庁が公表した「令和4年分 相続税の申告事績」

    https://x.gd/dFIkN 

 によりますと、令和4年分における被相続人156万9050人(前年比
9.0%増)のうち課税対象となったのは15万858人(同12.4%増)
となり、課税割合は9.6%(同0.3ポイント増)でした。

 なお、課税対象となった被相続人1人当たりの課税価格は1億3711万円
(0.9%減)、税額は1855万円(同2.0%増)となっています。

 「大相続税時代」と言われている中、データを見ても相続が増えていること
がわかります。そして、今年の4月1日からは相続登記の申請義務化が開始さ
れますので、司法書士としても、気を引き締めて取り組む必要がありそうです。


2024.01.15(月)【定款認証での指摘項目】(金子登志雄)

 登記官には、違法で却下事由に該当しない限り受理する方と、却下事由には
該当しないのに自分の感覚(美学?)で不適切だということで補正にする方の
2種類が存在しますが、公証人も同じです。

 家族経営の中小企業や株主1名の完全子会社など外部株主が加わることが想
定されていない会社の設立に従事することの多い我々には、定款はいつでも変
更することができるものという感覚が大きいため、定款は会社の憲法ともいう
べきものだから、1字1句慎重に吟味しなければならないという検事や裁判官
上がりの公証人とは、平行線になることが少なくありません。

 これまでに定款認証で指摘されたことを記憶に基づいて、列挙してみました。

1.「及び、並びに、又は、若しくは」について
 目的の「衣料品並びに食品の販売」→「並びに」ではなく「及び」にせよ。
 「社長に事故若しくは支障が…」→「若しくは」ではなく「又は」にせよ。

 (私の感想)定款内容の問題であって法令の制定ではないのだから、細かす
 ぎる。上場会社の定款でも、こういう例が少なくないのを知らないのか。

2.会議の決定について
 取締役の選任は・・・株主が出席し、その議決権の過半数をもって行う。
 →その議決権の過半数「による決議」とせよ。
 代表取締役の選定は株主総会ですることができる。
 →株主総会の「決議により」とせよ。

 (私の感想)法令の制定ではないのに細かすぎる。「選任は」は「選任の決
 議は」と十分に解釈することができるじゃないか。

3.取締役の資格について
 株主の中から選任する。ただし、株主以外の者から選任することを妨げない。
 →ただしの後に「必要がある場合は」を挿入せよ。

 私の感想:どうでもいいじゃないか。

4.代理行使について
 株主又は親族を代理人として→株主1名とせよ(親族はトラブルの元だ)

 私の感想:家族経営の会社だから、どうでもいいじゃないか。決まり文句を
  挿入しただけなのに………。

5.取締役は1名以上とする内容について
 →「取締役のうち1名を代表取締役にする」も加筆せよ。

 私の感想:余計なお世話だ。取締役の全員を代表取締役にすることもある。

 何度かこういう経験をしましたので、いまは、より慎重に文章をチェックし
いますが、顧客の顧問弁護士が作成したものも多いため、定款チェック依頼の
際には「違法又は極めて不適切とお感じになる部分以外は、このままお認め下
さい」とお願いするようにしています。

 指摘されてよかったなと感じたのは、次でした。

6.設立に際して出資される財産の最低額について
 最低額は金40万円とする。
 →出資額が80万円なら、出資される財産の価額は金80万円とせよ(そう
 でないと、認証手数料は5万円になり軽減されないから)。
  https://www.koshonin.gr.jp/chg_teikanfee

(ご参考:気になっていた台湾選挙結果)
           総統選  議員選挙
  独立系の改進党  40%   51人
  統一系の国民党  33%   52人
  統一系の民衆党  27%    8人
 改進党は総統選では候補者の個人人気で勝利しましたが、統一系の合計割合
より少なく、議員選挙では11人減の過半数割れ敗北でした。もっとも、議員
選挙は内政重視、総統選は外交重視で投票する傾向があるようですし、民衆党
は、つい最近、国民党との連携を発表したのに米国の圧力で即座にご破算にし
た前科があり日和見のところがあるので、議会でどちらに付くか不明のため、
とりあえず台湾有事リスクが少し減少したといったところでしょうか。


2024.01.12(金)【当事者意識・現場主義のすすめ】(金子登志雄)

 下記の映像は廃墟のガザ地区かと思ってしまいますが、能登です。

 https://twitter.com/lynn5785/status/1743649565666869721

 3日間も食事にありつけなかった被災地も少なくなかったようで、これで文
明国といえるのでしょうか。陸路が渋滞なら海から空から救援物資を届けるこ
ともできるはずだと思うのですが、動きがあまりに遅すぎました。

 こういう緊急事態に接し、現地のNPOと相談し、政党の党首(れいわの山
本代表)が状況視察と支援が必要だと判断し現地入りし、歓迎されて炊き出し
のカレーを出されたので食したというだけで、東国原英夫さん、ひろゆきさん、
維新の音喜多駿さんなどの著名人から猛批判を受けています。

 一方で、ラサール石井、水道橋博士、ウーマンラッシュアワーの村本大輔さ
んらは、山本氏の行動を賞賛していますが、皆様はどちらに賛成ですか。

 私は後者です。政党の代表や報道機関は率先して現地に行くべきだと思って
いるためです。政府や行政機関の動きの監視も仕事ですし、政党の代表等は現
場を知らずして、よい政治ができるわけがありません。もっといえば、政府の
動きが不十分で、十分な救援活動がなされていないので、やむに已まれず山本
氏が現地を訪問したともいえます。英国のBBCですら特派員が現地から中継
していたのに、当該国の日本の政党の代表が現地入りして生の実情を知ろうと
しないのは怠慢そのものです。

 ましてや、山本氏は過去何度も被災地に飛んでいましたし、年末年始の炊き
出しなども毎年行っている被災者や弱者に寄り添う歴戦の勇士ですから、現地
の邪魔になるようなことはするわけがありません。ネットでは邪魔だと抽象的
に批判するだけで、どの部分がどう邪魔なのかという具体論がないのは現場を
知らない安全地帯の外野席からの発言だからです。勝手に訪問したわけでもな
く、現地のNPOとの連携プレーです。

 私が被災者であったら、安全な場所で傍観者に徹している政党に腹を立てる
と同時に、視察を超えた山本代表の積極的な行動や政府に対する提言には感謝
しかありません。カレーを出されたのも歓迎の証でしょう。ともにカレーを食
すことで、被災者は見捨てられていないと心も安らぐものです。

 もっとも、東北大震災の際は岩手県出身の政治家小澤氏が現地入りしないこ
とを強く批判する方々がいましたが、今度は現地入りを批判しているのですか
ら、前々から、山本代表やれいわ新選組の急成長を面白くない、何かあったら、
足を引っ張ってやれと思っていた方々が今回のカレー問題に飛びついただけで
しょう。野党で零細政党の山本代表を批判しても権力側からは歓迎され同調圧
力が来ないので、安心して批判することができます。東北大震災の際の小澤批
判も同じでした。

 こういう頑張っている方を冷笑する気風は新自由主義(貧乏や不幸は自己責
任?)の長期安倍政権時代に増殖しましたが、ちょうど同じ時期に、弱い者、
目下の者をいじめて喜ぶ吉本興業の芸人の下品なお笑いがテレビで流行りまし
た。「日本すごい」の番組も増えました。日本社会の劣化が急速に進んだ時期
でしたが、まだその延長線にあるようです。

 翻って、司法書士業務でも、中立な第三者として裁判官や外野席の学者と同
じ目線で判断し業務に従事し十分に検討もせずに「それは無理ですね」で終わ
らせるのか、当事者目線あるいは弁護士と同様に代理人目線で依頼者の課題を
解決してあげたいかの差が生じます。

 私は常に後者の立場であり、この課題を解決するにはどうすべきか、何とか
ならないかと思考し、解決法に気づいた経験が少なくありません。この現場主
義の実務家目線という強みがあるので、現場と遠い学者見解などの誤った問題
意識に気づくわけです。

 今回の山本氏の行動についても、現地の被災者がどう思っているか(歓迎か、
邪魔か)を基準に判断すべきであって、安全な外野席から無責任にあれこれ論
評するのはいかがなものかというのが私の意見です。


2024.01.11(木)【相続登記義務化元年】(島根・根来川弘充)

 新年あけましておめでとうございます。

 今年の4月より相続登記が義務化されます。昨年より、宣伝がなされていま
すが、本年に入り、ますます活発に宣伝されるものと思います。

 ところで、最近、私が受ける相談は、「相続したくない」というものが少な
からずあります。「義務化」があまり強く宣伝されますと、そのような思いを
もった方々が、間違った選択をせまられないかと心配します。

 特に「相続放棄」については、あまり良く知られていない気がしております。
「相続放棄」は「被相続人が亡くなった日から3ヶ月以内」と思われている方
が多いのですが、かならずしもそうではありません。

 ただ、ケースバイケースで、この場でわかりやすく説明をするということは
大変困難に感じています。そのような方こそ、お近くの司法書士に是非相談頂
きたいと思います。

 本年もどうぞよろしく御願い申し上げます。


2024.01.10(水)【定款で代表者を定めた場合の添付書面】
                          
(仙台・立花宏)

 皆様、今年の最初の投稿です。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、今年の1月1日に、石川県の能登地方を震源とするたいへん大きな地
震がございました。大きな被害も報道されております。被災された皆様には、
心よりお見舞い申し上げます。

 さて、本年の最初の投稿は、株式会社の代表者選定の添付書面の話題です。
取締役会を設置していないことを前提とすると、株式会社では、「定款」、
「株主総会の決議」、そして「定款の定めに基づく取締役の互選」により代表
取締役を定めることができます。では、設立後の事業継続中に定款で代表取締
役を定め、その登記を申請する場合は、どのような添付書面が必要でしょうか。

 この場合は、その定款の変更に係る株主総会の議事録を添付します。根拠規
定は、商登法46条2項(登記すべき事項につき株主総会の決議を要するとき)
です。変更定款で定めたとしても、この定款変更決議で、商登規61条1項の
「定款の定めがなければ、登記すべき事項につき無効又は取消の原因が存する
こととなるとき」に該当しなくなるため、同条項は不適用です。

 それでは、この株式会社が解散し、最初の清算人及び代表清算人を定款で定
めた場合は、どのような添付書面が必要でしょうか。

 この場合は、その定めのある定款(+清算人の就任承諾書)を添付するもの
とされています。松井・ハンドブックでは、添付根拠を明らかにしていません
が、平成18年3月31日782号通達では、商登規61条1項を根拠にして
います。

 代表取締役の場合と相違しますが、この差が生じるのは、清算人の登記を独
立して申請した場合だからでしょう。

 ところが、実務では、解散決議と同時に株主総会で定款変更し、代表清算人
を定め解散と解散の登記と清算人の登記を一括して申請することが多いため、
その際には、代表取締役の変更の場合と同様に扱っても差し支えないと考えま
す。整理すると次の関係です。

 (1)解散とは別に清算人の登記を独立で申請する場合
    ・・・・・商登規61条1項により定款全文を添付
 (2)解散と清算人登記の一括申請の場合
   ①解散決議前から、定款で直接、代表清算人が誰かを定めてある場合
    ・・・・・商登規61条1項により定款全文を添付
   ②解散決議と同時に株主総会で定款変更し、代表清算人を定めた場合
    ・・・・・同上以外に、定款変更した株主総会議事録も可

 ところで、商登法73条1項に「清算人の登記の申請書には、定款を添付し
なければならない」という条文があります。条文の見出しは「清算人の登記」
となっていますが、この規定が添付根拠ではないことにも注意が必要です。こ
の規定は、解散後最初の清算人の登記をする場合には、清算人会の設置の有無
を確認する必要があるために設けられた添付根拠規定だとされています(注)。
この定款は、解散と同時に定款を変更した場合は、変更後の定款になりますか
ら、上記(2)②の機能をも営みます。

 この2つの添付根拠の意味を考えてみると、商登法73条1項で定款を添付
するというのは、解散して清算人の登記を申請する際は、清算株式会社の原始
定款を添付せよというイメージであり、会社の設立登記でいえば、商登法47
条2項1号を根拠に、認証を受けた定款を添付するのと同様に考えられるので
はないかと思いました。

 そして、設立時の原始定款で最初の取締役・代表取締役を定めた場合の定款
の添付根拠が、その商登法47条2項1号ではなく、選任を証する書面(商登
法47条3項(発起人の過半数の一致を証する書面)として添付するのと同様
に、清算株式会社の清算人・代表清算人を定款で定めた場合は、商登法73条
1項ではなく、選任を証する書面として添付するとイメージなのではないかと
思いました。

 新年早々、ややこしい話題で申し訳ありませんでした。
 今年もいろいろと、商業・法人登記で気づいた点、悩んだ点等を徒然してい
きたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 注)宗野有美子「会社法施行後における商業登記実務の諸問題(2)」
  (「登記研究」(テイハン)708号26頁)。なお、この規定による定
   款添付の理由については、神﨑満治郎ほか『商業・法人登記500問』
  (テイハン)375頁に詳細な解説がある。


2024.01.09(火)【謹賀新年 2024年】(東京・鈴木龍介)

 令和6(2024)年の最初の登場ということで、まずは、
“明けましておめでとうございます。”

 今年のお正月ですが、不覚にも発熱してしまい、ある意味、寝正月となって
しまいました。1年の疲れがどっと出たのと長期休暇で気が緩んだのかもしれ
ませんが、予定していた執筆はほとんど手付かずの状態で・・・。

 そんな中、元旦の夕刻、地震警報アラートが鳴り響き、東京都内ですが結構
な揺れを感じました。テレビを着けてみると、能登半島を中心に強い地震とと
もに津波が発生し、繰り返し避難を呼びかけていました。いまだ被害等の全容
は明らかではありませんが、連日、被害の拡大が報道されている状況にありま
す。被災された方々には心よりお見舞い申し上げますとともに、一日も早い復
旧、復興を祈念してやみません。

~追記~
 数年前より公私ともに年賀状を廃止しました関係で、年賀状を頂戴いたしま
した方々には、この場を借りまして御礼と欠礼のお詫びを申し上げます。


2024.01.05(金)【謹賀新年】(金子登志雄)

 本年、最初の徒然です。今年はどんな年になるのかと書くつもりでしたが、
正月早々に、志賀原発のある能登で大震災・大津波発生で、思わず13年前の
3.11の恐怖を思い出してしまいました(その日は帰宅できず会社に寝泊ま
りしました)。

 避難民が救援物資の不十分さを下記のとおりXに投稿していました。過去の
災害の反省が全く活かされていないようです。海外には気前よくカネを配るの
に、国民はいつも我慢を強いられます。

  https://twitter.com/0x2x0x1/status/1742228683560222918

 さて、司法書士にとっては暦が重要ですが、皆様は、1年分が1枚に収まる
銀行のカレンダーを事務所やご自宅に貼りましたか。私はトイレにまで貼りま
した。今年は辰年ですが、もう干支を口にすることもほとんどなくなりました。
若い方は12支全部(ネ・ウシ・トラ・ウ・・・)をいえないでしょう。

 本年の特徴は、うるう年であることでしょうか。4年に1度ですから、夏季
オリンピックがある年でもあります。今年はパリが開催地のようです。

 司法書士業務の面からみると4月(及び7月)1日が月曜日になりますので、
3月(又は6月)決算会社が決算期の翌日を効力発生日とする合併等を実行す
る場合には、2月(又は5月)末日に官報で合併等の公告を掲載すると、1か
月の期間満了日の3月(又は6月)末日が日曜日になり、翌月1日の合併登記
が受理されませんので要注意です。この公告期間ミスは上場会社を含めて意外
に多いといえます。

 ところで、本年は令和6年でしょうか、2024年でしょうか。元号と西暦
では、期間計算で西暦の方が優れています。3月決算会社で平成26年6月就
任とあっても、今年が任期満了の10年目になるとは気づかないものですが、
2014年6月就任とあれば、すぐに気づきます。

 電子情報化の国策遂行のためには、登記記録も西暦表記のほうが合っていま
すので、日本文化を大事にすることとは別に、効率性からも、西暦一本にして
ほしいものですが、現時点では自民党右派が賛成しないでしょうから、まだま
だ先になりそうです。

 本年も相変わらず、世に多い権威(学者やマスコミ)の見解を鵜呑みにする
「裸の王様」見解に対して、子供の素直な目で感じたままに容赦なく批判して
いこうと思っていますので、本徒然をよろしくお願い申し上げます。


過去徒然

マンガ司法書士開業成功

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