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こんにちはESG法務研究会です

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ESG法務研究会は、合併再編等会社法手続の実績は最大級!

TOPICS


1.最近の出版は次のとおりです。いずれも実務書であり、画像は本HPの左
 側の回転板あるいはアマゾン等で、ご確認ください。
 (1)『募集株式と種類株式の実務〔第2版〕』…………2014年5月発売
 (2)『親子兄弟会社の組織再編の実務〔第2版〕』……2014年7月発売
 (3)『「会社法」法令集〔第11版〕』…………………2015年3月発売
 (4)『「会社法」法令集〔机上版〕』……………………2015年5月発売
 (5)『改正会社法と商業登記の最新実務論点』…………2015年11月発売
 (6)『会社法務書式集〔第2版〕』………………………2016年3月発売
 (7)『組織再編の手続〔第2版〕』………………………2016年7月発売
 (8)『論点解説/商業登記法コンメンタール』…………2017年2月発売
  (9) 『商業登記実務から見た中小企業の株主総会・取締役会』
                       …………2017年4月発売
  (10)『総務・法務担当者のための会社法入門』…………2017年10月発売
 (11)『事例で学ぶ会社法実務【全訂版】』………………2018年4月発売
  (12) 『商業・法人登記360問』……‥‥‥‥‥………2018年5月発売
  (13)『事例で学ぶ会社の計算実務』………………………2018年9月発売
  (14)『商業登記実務から見た合同会社の運営と理論』…2019年2月発売

徒然日誌


2020.04.03(金)【書き入れピーク日と一括申請の意味】(金子登志雄)

 コロナ感染者数ゼロの島根県の根来川さんまで危機感を感じているのですか
ら、他の都市部での生活者はどうしたらよいのでしょうか。

 のんびり屋の私もさすがに感染でもして4月1日の登記申請に支障が生じた
ら顧客に迷惑がかかると思い、結構、慎重に行動していました。無事にその日
が過ぎましたので、ほっとしたのもつかの間、前歯が1つ抜けてしまいました。

 院内感染が怖いので病院や医院(特に歯科医)には行きたくないと思ってい
たのに、そうも行かなくなりました。あとは居直るしかありません。都内でも
感染者がまだ1万人の1人の割合にもなっていないため、くじ運の悪い自分の
運勢を信じて、歯科医に行ってまいりました。私よりも、歯科医さんのほうが
怖いでしょうし………。

 4月1日申請の東京法務局の補正日は22日でした。それまでは10日以内
でしたから、いかに4月の申請が多くなると見込んでいたか分かります。ちな
みに高松法務局は6日、札幌・大阪・広島は10日、仙台・名古屋は13日、
福岡は15日でした。件数の多いはずの大阪は意外に早いですね。たぶん、東
京ももう少し早まるでしょうと思い、いま東京法務局のHPをみましら、4月
2日申請の補正日は、たった1日違いなのに28日になっていました。東京集
中が進んだのでしょうか。それとも関東では4月1日(期首)での人事異動の
意識が強いのでしょうか。

 さて、同一管内のAはBから吸収分割を受け、Bは同時に減資するという場
合、2分の2のBの申請で吸収分割と減資を一括申請することができます。で
は、Aを存続会社とするBの合併解散と減資は一括申請することができるでし
ょうか。商業登記倶楽部の実務相談室に質問がありました。

 私の回答はたぶんできるでしょうが、吸収分割と相違し登録免許税の節約に
ならないから、一括申請する意味がないため、減資を先行させたほうがよいと
いうものでした。


2020.04.02(木)【コロナその3】(島根・根来川弘充)

 今年に入って、このテーマでしか書けなくなることに、大変心苦しく思いま
す。

 前回より、余計に不安がおおきくなり、しかも、その大きさが、計り知れな
いものになってきています。

 この一月で、全世界の人々が、狂気に走り出していく様子を報道で何度か目
にしました。

 コロナの脅威もですが、人々の狂気も大変脅威です。たとえば、マスク不足
ですが、一人一日1枚必要としても、予備で1日分もとめれば、需要は2倍に
なります。

 それがふえればふえるほど、不足しやすくなるのは目に見えています。多く
の人の往来が盛んになり、高度情報化のインターネット社会で、全世界の人が
つながることが可能になったことが、この仕組みに拍車をかけていると思いま
す。

 今、人類はいままで経験したことがない危機に直面していると考えてもよい
のではないでしょうか。

 「どこまで、理性を保つことができるか。」
 私自身、肝に銘じて一日を大事に過ごしたいと思います。


2020.04.01(水)【書面決議の書式例】(金子登志雄)

 4月1日になりました。私にとっては久々の書き入れ時です。合併に吸収分
割に代表取締役の交代と、面倒な案件がいくつかありますので、外出自粛など
とのんびりしたことをいっていられません。

 さて、コロナ対策には一堂に集合しない書面決議が有効ですが、株主総会に
関する会社法319条の書面決議につき、私は、会社法施行規則に忠実に次の
ような書式で作成することが少なくありませんでした。しかし、重心が上に位
置するため、作成する都度、座り心地が悪いなと感じていました。
----------------------------------------------------------------------
            臨時株主総会議事録
 会社法第319条第1項により株主総会の決議があったものとみなされたの
で、会社法施行規則第72条第4項第1号に基づき、本議事録を作成する。
1.株主総会の決議があったものとみなされた事項の内容
2.上記1の提案者
3.株主総会の決議があったものとみなされた日
4.議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
  以上のとおりである。
---------------------------------------------------------------------

 金曜日にご紹介したビジネスロー・ジャーナルでは、次の配列でした。
----------------------------------------------------------------------
            臨時株主総会議事録
1.株主総会の決議があったものとみなされた日
2.株主総会の決議があったものとみなされた事項の提案者
3.議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
4.株主総会の決議があったものとみなされた事項の内容
 会社法第319条第1項により株主総会の決議があったものとみなされたの
で、会社法施行規則第72条第4項第1号に基づき、本議事録を作成する。
----------------------------------------------------------------------

 こちらのほうが安定感がありますね。株主総会を実際に開催した場合に似た
配列であり、「いつ、(どこで)、誰が、何を」の順序だからです。次回から
これにしようと思いました。


2020.03.31(火)【プライマリ・ケア】(東京・鈴木龍介)

 「プライマリ・ケア」というのをご存じでしょうか? 
 これは医療現場で用いられている言葉ですが、常々、医療業界の考え方や仕
組みは私たちの(法務)業界でも参考になるものが多いなと思っています。

 ということで、最近、この「プライマリ・ケア」の考え方(仕組み)に関心
を持っていまして、少し徒然してみたいと思います。

 まず、プライマリ・ケアの定義や意味合いは幅広く、用いられる場面や状況
によって若干ニュアンスが異なる場合があるそうです。本来、「プライマリ」
は「プリマ(主役)」に由来する語で、「初期・近接・基本」といった意味に
加え「重要な」という語義も含まれます。

 最近、何かと登場することの多い世界保健機構(WHO)の定義を若干、要
約しますと、“患者から最初の第一線としてアクセスされ、継続的かつ統合的
にケアを提供する保健制度の中核を担うものである。具体的な役割としては、
コンサルタント的な機能を果たし、短期的な処置のみならず長期的な視点での
ヘルスケアサービスである”としています。

 「一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会」によれば、プライマリ・ケ
アの特徴として“近接”・“包括”・“協調”・“継続”・“の5つの理念が
あげられています。

 “近接”とは、具体的には、ⅰ)地理的、ⅱ)経済的、ⅲ)時間的、ⅳ)精
神的な「かかりやすさ」、ということになります。

 “包括”とは、具体的には、ⅰ)予防から治療まで、ⅱ)全人的かつ全科的、
ⅲ)小児から老人まで、ということになります。

 “協調”とは、具体的には、ⅰ)専門医との密接な関係、ⅱ)チーム・メン
バーとの協働、ⅲ)住民との協力、ⅳ)社会的資源の活用、ということになり
ます。

 “継続”とは、ⅰ)ゆりかごから墓場まで、ⅱ)病気の時も健康な時も、ⅲ)
外来から入院まで、ということになります。

 “責任”とは、ⅰ)監査システム、ⅱ)生涯教育、ⅲ)十分な説明、という
ことになります。

 どうでしょう、法務の世界に相通じるところがかなり、あると思いませんか。
ということで、もう少し自分の中で整理をしてみて、近々、「月刊登記情報」
で連載中の“中止企業とともに歩む企業法務のピントとヒント」で取り上げて
みようかななんて思っています。


2020.03.30(月)【任期の起算日=選任後とは】(金子登志雄)

 東京では小池都知事の要請を受けて従業員を不要不急の出社には及ばずと自
宅待機させている会社もありますが、その影響で顧客が当事務所に来ることも
少なくなり、私もこの3月はテレワークが多かったといえます。商業登記はこ
れで済むので助かります。

 さて、役員の任期である「選任後〇年以内の……」の「選任」につき立法担
当者や登記実務は「選任決議という事実行為」と捉えているため、3月20日
に「4月1日付で選任」と決議しても3月20日起算だとします。

 これに対して、松井ハンドブック3版は、そういう解釈は硬直的であり「選
任という文言を法律行為とみて、これに条件や期限を付すこともできるとする
のが、一般的な法律用語の使用例である」(同書437頁)などとありますの
で、選任を法律行為と捉えているのでしょうか。

 しかし、選任を法律行為とみるのはごく少数説であり、通説は委任の申込み
の意思決定行為であり、その決定を踏まえて代表取締役が被選任者にするのが
申込みだ捉えています。私も同様です。

 条件は法律行為の附款であって法律行為でないものには付けられませんから、
松井説の真意は、選任や申込みという法律事実に条件を付けられるということ
ではなく、「条件付委任契約」の申込みの意思決定だというものでしょう。

 したがって、松井見解も十分に成り立ちますが、3月20日の選任決議で同
時にAを即座に、Bを4月1日付で、Cを5月1日付で選任することができる
かなどを考えると、登記実務の見解に親近感を覚えないわけではありません。

 任期というと、つい期間のように思ってしまいますが、正確には期日から期
日までであり任期満了日が休日であっても翌日に延長いたしません。その意味
では任期満了時を期限と定めたのも同様であり、立法担当者は被選任者が誰で
あっても、一律に「いま(選任決議時)からいつまで」と期限を設定したので
はないかという気がしてなりません。

 ところが、3月20日に定款の附則で「4月1日からAを取締役に」と定め
たら、定款変更決議は単独行為という法律行為だと思いますので、4月1日を
効力発生日に定められます。これは選任決議ではなく定款変更決議であり、A
を選任したのではなく「Aを取締役に」と規定したのだから、4月1日を任期
の起算日としてよいとの私見を他の司法書士に披露しましたら、賛成意見は少
数であり、株主総会の代わりに定款を使っただけだから無理でしょうと不同意
が多数派でした。

 確かに、理論的にはともかく、登記所がそういう解釈を受け入れる可能性は
現状では低いと私も思いますが、皆様のご意見はいかがですか。


2020.03.27(金)【株主総会による代表取締役の予選の認知】
                            (金子登志雄)

 文春砲(モリトモで自殺した赤木さんの実名告発遺書)は衝撃的内容でした
が、コロナとオリンピックにかき消されたのか、例によって「忖度」なのか、
テレビで大きく取り上げられなかったようです。検察もこの遺書を知りながら、
全員不起訴にしたわけです。下々の命の価値によって、その国の文明度が分か
りますが、日本の文明度は残念ながらまだまだのようです。

 さて、法律雑誌ビジネスロー・ジャーナル5月号に、著名大企業の法務部や
総務部の方が取締役会設置会社における表題の件について記載してくださいま
した。下記の「子会社機関業務の合理化の手法」の部分です。私も塚本英巨弁
護士とともにコメンテーターとして登場しています。
   https://www.businesslaw.jp/contents/202005.html

 平成29年2月11日の最高裁判決で定款の定めに基づく株主総会の決議に
よる代表取締役の選定が肯定されましたし、商事法務2211号(昨年10月
5日号)116頁の実務問答会社法でも上記の塚本弁護士が解説していました
ので、これで完全に世間に認知されたといってよいでしょう。顧客からの情報
によりますと、上場企業の株式担当者の集まりである東京株式懇話会でもこの
手法が紹介されたとか。

 平成26年の頃、取締役会における代表取締役の予選は予選時と効力発生時
の取締役メンバーが一致していなければならないという登記実務は変更される
可能性が薄いどころか強化されていることを知りました(先例は予選時と効力
発生時との間に任期満了退任が挟まっているものでした)。

 そこで、登記実務が変わらないのであれば、他の方法として株主総会で予選
すればよいと雑誌や著書に繰り返し私は記載してきたわけですが、単に山に登
る近道を紹介しただけなのに、当初は、まるで裏口入学の勧めかのように受け
止められてしまいました。そのためか、採用する会社が少なかったのですが、
やっと表舞台に登場し日陰の身でなくなったようです。実にうれしいことで、
ビジネスロー執筆者の方々に感謝いっぱいです。

 ちょうど今の時期が4月1日付で代表取締役となる取締役の予選時期ですが、
普及率という点ではまだまだ不十分です。方法は知っていても躊躇していると
ころがあるためです。それは定款変更が親会社への稟議事項になっているため
です。その場合は金子式定款附則方式があります。こんな便利な方法を使わな
いのは損ですから、皆様もぜひ普及にご協力ください。


2020.03.26(木)【解散後の資本金と電池の切れた時計】(仙台・立花宏)

 壁にかかっている時計をみると、時刻がまるで合っていませんでした。気に
なって、よく見ると、秒針が動いていません。

 「電池が切れてしまったようですね。最近、事務所にはあまり、出てこなか
ったので、気づきませんでした」、社長様は苦笑しながら、愛おしそうにその
時計を見ていました。

 私は、税理士の先生からの紹介で、ある会社の解散登記の打合せにその事務
所にお邪魔していました。会社といっても、社長様お1人で事業を営んでいた
そうで、実質的には個人事業といえる内容だったようです。しかし、数か月前、
体調を崩して入院し、さいわい、無事に退院したのですが、その後も体力が回
復せず、しばらく休業状態だったようです。少しずつ体調は戻りましたが、年
齢的なこともあり、廃業を決断したとのことでした。

 いろいろ、お話しを伺うと、壁の時計は、事業を始めるとき、友人達がプレ
ゼントしてくれた大切な時計なのだそうです。私には、その時計が、まるで事
業を休業するのにあわせて時を止めたように思えました。

 社長様には、解散から清算結了までの流れと必要な手続を説明し、今後の段
取り等を打合せいたしました。また、社長様の肩書が取締役ではなく、解散後
は清算人になることも説明し、登記上も、取締役の登記は抹消され(下線が引
かれ)、清算人として登記することになる旨も説明しました。また、解散する
と、清算会社としての財産目録と貸借対照表を作成しなければならない旨、そ
して、この貸借対照表は解散前の貸借対照表とは連続性がなく、資本金という
項目もないという説明させていただきました(会社法492条、会社法施行規
則145条)。

 すると、社長様は不思議そうな顔をして、おっしゃいました。「取締役の登
記は抹消されるのですよね。資本金の登記は抹消されないのですか。その項目
がなくなるのですよね」

 社長様の疑問は、私もずっと引っかかっていた点でした。解散後の貸借対照
表には資本金の項目はなくなるのに、なぜ、登記はそのままなのかという点で
す。どうお答えすべきかと考えながら、ふと顔をあげると、壁の時計が目に入
りました。

 「壁の時計と同じかもしれませんね。解散と同時に動きを止めただけで、存
在はしていて、その項目である資本金もなくならないということだと思います。
解散時につくる貸借対照表は清算目的のための別のものであって、解散前の貸
借対照表もなくなるわけではないということではないでしょうか。解散後は、
別の時計で別の時を刻んでいるというイメージでしょうかね。個人的な考えで
すけれど」

 たとえば、解散後も、清算に必要な資金の調達目的等のために募集株式の発
行を行うことができるとされています。しかし、新株を発行したとしても、資
本金の額は変動しません(注)。清算中の募集株式の発行は清算目的の貸借対
照表の中での動きであり、動きを止めた解散前の貸借対照表の項目を動かすこ
とはないということなのだと考えました。

 もし、将来、会社を継続することがあれば、解散前の貸借対照表は、電池を
入れ直した時計のように、清算中に過ぎ去った時(行った取引)を反映して、
現状にあわせ、再び動きだすのだと思いました。

 打合せのあとの帰り際に、社長様が「せっかく、仲間がくれた時計だから、
電池を入れ直そうかな」とおっしゃった言葉が印象に残りました。もしかした
ら、後日、解散前の貸借対照表をふたたび動かすためのご相談もあるかもしれ
ないと思いつつ、私はその事務所を後にしました。
 
 注)会社法509条1項2号、同法445条。参考として、亀崎絹子「外国
会社の日本における営業所・子会社足る株式会社の解散をめぐる実務上の留意
点」(「市民と法」(民事法研究会)N0.76 98頁以下)


2020.03.25(水 )【債権者異議なしの証明者】(金子登志雄)

 先日13日の商業登記専門事務所の集まりの際に、参加者のベテラン司法書
士から減資や合併の申請書に「債権者から異議がなかった」と添付書面欄に記
載したら、管轄登記所から「司法書士が申請書にその旨の記載をしても意味が
ないので、その旨の上申書を追完するか、委任状にその旨を追記せよ」といわ
れてしまうこともあると嘆きの発言がありました。

 これは嘆きたくなりますね。われわれ商業登記専門事務所は単に登記申請す
るだけでなく、合併のスケジュール作成の段階から関与し、合併契約案作成、
官報公告の手配、催告書の宛先についてまで相談を受けていますので、債権者
から異議があったかどうかも十分に把握していますし、登記申請の代理権まで
委任されているのに、あたかも登記申請の代行屋(申請書の配達人)みたいに
いわれてしまったわけですから………。

 さて、ベテランでない司法書士の皆さん、この管轄登記所の発言のどこがお
かしいのか、お分かりでしょうか。

 きっと最近は上申書をつける例が多いので、経験不足の管轄登記所の調査官
の方がそれが正しいと思い込んでしまったのでしょうが、旧商法時代は添付書
面欄に記載するのが通常でした。いまでも法務局のHPの書式例はそうなって
います。下記の3頁目です。
   http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001252683.pdf

 どこに勘違いがあるかというと、登記所は「異議がなかったとの証明は会社
がするもので、委任なくして司法書士がするものではないから、独断で申請書
に記載しても効力がない」と思ったらしいのです。しかし、そもそも異議がな
かった旨を証明せよという規定はどこにもありません。会社ですら証明する必
要がないのです。

 必要な添付書面として規定されているのは「異議を述べた債権者が【ある】
ときは、当該債権者に対し弁済し・・・又は当該吸収合併をしても当該債権者
を害するおそれがないことを証する書面」です。

 しかし、異議がなかった場合に何も書かないと登記所には異議があったのか、
なかったのかが判断することができないため、申請代理人である司法書士が添
付書面の欄に「異議はなかった(ので、異議を述べた債権者があるときの法定
の添付書面は添付する必要がありません)」と説明しただけのことです。決し
て、会社に変わって「異議がなかった」と司法書士が独断で積極的に証明した
わけではないのです。

 私は資本金の額を増やさない合併の申請の際に「資本金の計上を証する書面」
と添付書面に記載し、そこに「資本金は計上しない」と記載することがよくあ
ります。これと全く同じことです。同一管轄の合併の際に「消滅会社の登記事
項証明書」と添付書面欄に記載し、そこに「同一管内添付省略」と記載するの
も、これに近いといえます。

 もし、登記所から同じようなことをいわれましたら、以上のように説明して
ください。


2020.03.24(火)【戦後商法のあゆみ 平成9年改正~その4~】
                          (東京・鈴木龍介)

 引き続き、平成9年商法改正(4回目)ですが、これで最後です。

(3)株式会社と登記(平成9年(71号)改正商法)
 平成9年(71号)改正商法において、改正等された株式会社の登記と密接に
関係する主な規律は、次のとおりである。

① 合併当事会社に関する規制の見直し
a)合併可能な組み合わせの拡張
 株式会社同士の合併について、存続会社を有限会社とすることは認められて
いなかったところ、社債の償還が未了である場合を除き、存続会社を有限会社
とすることを認めるものとされた。また、有限会社同士の合併について、存続
会社を株式会社とすることは認められていなかったところ、存続会社を株式会
社とすることを認めるものとされた。

b)裁判所認可の廃止
 株式会社と有限会社の合併について、存続会社が株式会社となる場合には裁
判所の認可が効力要件であったところ、当該認可を要しないものとされた。

② 合併に関する手続の見直し
a)報告総会の廃止
 吸収合併の一連の手続の終了後、報告総会の開催を要するとされていたとこ
ろ、必要性が乏しいという理由から報告総会の開催を要しないものとされた。
あわせて、合併に関する登記期間について、報告総会の終結の日が起算であっ
たところ、単に「合併ヲ為シタルトキ」とされた。

b)債権者保護手続の合理化
 合併における債権者保護手続について、官報公告と知れたる債権者には個別
催告を要求していたところ、会社が定款で定める公告方法が時事を掲載する日
刊新聞紙であり、それに当該公告をしたときには知れたる債権者への個別催告
を要しないものとされた。
 当該合併に異議のある債権者に対しては弁済等を義務付けていたところ、合
併によって害されるおそれがない債権者には弁済等を要しないものとされた。

c)役員に関する規律の明確化
 合併前に就任した存続会社の取締役・監査役の任期について、明文の規定が
なかったところ、特則として合併後最初に到来する決算期に関する定時株主総
会の終結の時までとされた。
 合併に際して就職する取締役・監査役の選任について、これまでは報告総会
で選任することができたところ、前述のとおり報告総会が廃止されたことを踏
まえ、合併契約書に当該取締役・監査役の氏名を記載し、合併契約書が両当事
会社に承認されれば、別途、選任決議は要しないものとされた。なお、当該取
締役・監査役の任期については、前記の特則の適用はなく、通常どおりである
ものとされた。

d)株式分割の特則
 株式分割について、株価の零細化防止のために分割後の1株あたりの純資産
額が5万円未満となることを禁止しているところ、合併に伴う株式分割は合併
比率を単純化して合併新株の割当てを円滑に行うのを目的とするものであるこ
とから、特則として消滅会社における株式分割には当該規制を適用しないもの
とされた。

e)資本の限度額の規制
 合併後の存続会社の資本の増加額について、明文の規定がなかったところ、
以下の算式により計算される額を上限とするものとされた。
  消滅会社から承継する財産額 - 消滅会社から承継する債務額
  - 合併交付金 - 合併新株代用株式(自己株式)の帳簿価額
 加えて、合併に際して額面株式を発行する場合には、その1株の金額に発行
する株式総数を乗じた額を資本に組み入れなければならないものとされた。

f)簡易合併制度の創設
 合併契約書の承認について、例外なく株主総会の決議によるものとされてい
たところ、相対的に規模の小さい一定の会社を吸収合併する場合には株主総会
の決議を経ることなく取締役会の決議で足りるものとされた。

③ 合併に関する情報開示の見直し
a)事前開示の充実
 合併の事前開示書類について、当事会社の貸借対照表を備え置くとされてい
たところ、以下の書類を備え置くものとされた。
   ⅰ)合併契約書
   ⅱ)消滅会社株主への割当株式に関する理由書
   ⅲ)当事会社の貸借対照表・損益計算書

b)合併契約書の内容整備
 合併契約書が事前開示書類に追加されたことを踏まえ、以下の事項をあらた
に記載するものとされた。
   ⅰ)存続会社の定款変更事項
   ⅱ)合併期日
   ⅲ)利益配当・中間配当の限度額
   ⅳ)存続会社の就任取締役・監査役の氏名

c)事後開示の創設
 合併後の開示について、合併無効の訴えに関する資料を提供すべきことを考
慮し、存続会社は合併登記の日から6か月間、合併に関する事項を記載した書
面を備え置くものとされた。


2020.03.23(月)【株式又は持分の特別勘定】(金子登志雄)

 相変わらずニュースはコロナばかりです。いま最も安全なのは中国だという
見解がありますが、下記(中国南京市)の徹底ぶりには驚きました。いまは、
続々と帰国する留学生等からの2次感染の食い止めにやっきのようです(スマ
ホやネットの普及率にも驚きました。私のスマホ能力を超えています)。共産
国でなければできないことですね。この生活は、私には耐えられません。
   https://creators.yahoo.co.jp/takeuchiryo/0200056742

 さて、会社計算規則12条に「会社は、吸収分割、株式交換、新設分割、株
式移転又は事業の譲渡の対価として株式又は持分を取得する場合において、当
該株式又は持分に係る適正な額の特別勘定を負債として計上することができる」
とありますが、この「特別勘定」が何か分かる方は、商業登記の世界では一流
といえるでしょう。

 A社が債務超過事業(例えば「資産500万、負債800万」)を新設分割
してB社を設立し(資本金0円、その他利益剰余金△300万円になります)、
B社株式100株を発行されたとします。親子関係(共通支配下関係)のため、
B社株式も簿価基準で承継させた純資産額と同じく△300万円になります。
これをA社の資産の部に「△300万円」と計上するのではなく、資産の部で
はB社株式0円とし、負債の部に「特別勘定300万円」と計上します。

 計算規則12条の株式交換や株式移転は簿価純資産額で債務超過会社の株式
を評価した場合の話であり、「事業の譲渡」はたぶん債務超過事業の現物出資
のことだと思います。

 分割型だと、この「△300万円」の株式が剰余金として現物配当されます
から、A社では「その他利益剰余金」が300万円増加します。

 以上につき、株式価値でマイナスなどあり得ない、マイナスを配当すること
ができるわけがないと思うでしょうが、以上は計算上の技術です。簿価で計算
する限り、マイナスを認めないと辻褄が合わないためです。

 ここまでは私の著作にも書いてあることですが、商業登記倶楽部の相談室に、
新設分割の設立会社が合同会社である事例の質問がありました。株式ではなく
持分の特別勘定です。

 合同会社の資本金額を0円にすることまでは分かるが、定款に記載する「出
資の価額」も0円か、分割型で持分を現物配当するときはどうなるのかという
質問がありました。回答は皆様の推理にお任せしますが、とうとう新設分割で
合同会社を設立する例が登場したことに妙に時代の変化を感じてしまいました。


2020.03.19(木)【先例主義の硬直性】(金子登志雄)

 公演の自粛で舞台俳優さんも生活危機のようです。コロナの終息はいつまで
待たされるのでしょうか。

 さて、先月6日に私の所属する東京会千代田支部で東京法務局の登記官を講
師とするセミナーがありました。いつもながら有難いことです。

 そこで、控訴期間の判例を根拠に1月2日3日を民法142条の「その他の
休日(債権者異議申述期間の休日)」として扱う東京法務局の見解はローカル
ルールではなく、1999年12月15日の商事法務1546号の実務相談室
「株式交換の日を1月1日にすることの可否」の37頁にそう記載されている
からであり、この実務相談室は法務省民事局第4課長(当時)の監修によるも
のだから、上級庁見解であるため従わざるをえないとの説明がありました。

 その論文を久々に拝見しましたが、控訴期間の判例を根拠にしている点以外
でも、突っ込みどころ満載の内容でした。旧商法時代のものであるため、反論
の詳細は省略しますが、その当時の見解(認識)であって、しかも傍論部分で
すから、その後の変化への対応にもう少し柔軟であってほしいと思いました。

 いつも思うのですが、その当時の当局の声の大きい人が雑誌に見解を発表す
る。上司は「いいのじゃないの」とか適当に応じる。これが先例になって長い
間登記実務を拘束するということがよくあります。

 昭和59年当時、合併は資本金を合算するもので、それをしない場合は同時
に減資公告が必要だという声の大きい人の見解が商事法務に載り、従来の実務
が覆され、長期に登記実務を拘束してしまいました。学者の通説とも相違しま
す。その後の平成9年の合併法制の改正(外圧?)により正常に戻りました。

 定款に定めても株主総会で代表取締役を定められないという学者の少数説を
登記実務が採用し、これも会社法改正(外圧?)まで登記実務を拘束しました。
期限付き解散は不可という学者の少数説を採用した登記実務はいまだに悪先例
として現在の登記実務を支配しています。代表取締役の予選期間は1か月以内
という先例かどうか不明のものも民間からすれば余計なお世話というもので、
裁判官でもない当局からいわれる筋合いはありません。

 先例主義は柔軟性に欠けますが、行政の継続性という意味からは仕方ない面
もありますので、私のいいたいのは、声の大きい人は権力を持ったら、その影
響力を考え従来と相違する見解を出す場合は抑制せよということと、本件のよ
うに先例の主題部分でない個人的見解に等しい部分については、既判力(?)
がないのだから、柔軟に対応してほしいということです。

 余事記載ですが、私がまだ司法書士になる前の旧商法時代の昔(額面株式時
代)、商法解釈をつかさどる法務省参事官室の方(と記憶)が額面500円を
額面50円にする手法の株式分割で登記実務と相違する見解を商事法務で発表
しました。私は思わず電話して「登記実務では肯定していますよ」と話したの
ですが、「だとしたら、登記実務は違法だ」といわれてしまいました。しかし、
半年後あたりに、その論文を否定する法務省参事官室の方(と記憶)の論文が
商事法務に掲載されました。こういう柔軟性が登記当局でもほしいものです。


2020.03.18(水)【実務現場の声を】(金子登志雄)

 商業登記専門事務所であれば、みな経験済みですが、弁護士さんの作る種類
株式や新株予約権の内容については、登記のことを考えていないので、やたら
細かい内容になります。こんなことまで登記で公示する必要がないだろうと思
えることも、弁護士さんは内容に加えてきます。

 我々司法書士は登記というゴールを見据えて種類株式の内容等を考えますの
で、細かい点は細則に回したり必要の都度別途協議ということにしますので、
登記記録の1頁で収まる内容のことが少なくありません。

 何をいいたいかというと、現場を知っている実務家は当然のように出来上が
りの先を見据えてジャッジするが、そうでない方は、よかれと思い、とんでも
ないジャッジをするものだということをいいたいわけです。

 新型コロナで文科省の反対を押し切って学校を休校にしたのは、それだけみ
れば英断だったかもしれません。しかし、その結果、共働きの親が困る、給食
業者が困る、学童保育がパンクするなどは、それらの現場の関係者であれば容
易に想定することができました。これらの対策も考えずにしたのなら無謀とい
うしかありません。

 現在、医療現場ではマスクの、保育園の現場では哺乳瓶の消毒液が品薄で困
っているようです。これも現場の人であれば、今後こうなると容易に予想する
ことができたでしょう。

 私の通勤経路にはいくつか薬局がありますが、のきなみ「マスク売り切れ」
と表示されています。この程度は私でも想定することができましたが、先般、
買い物のためドン・キホーテによってみましたら、いつもなら山のように積ま
れていたトイレット・ペーパーがゼロでした。ここまでは私も想定外でしたが、
現場のお店なら、「コロナ→外出自粛→食品や生活用品の買いだめ」と容易に
予想することができたのではないでしょうか。

 何かを決断するときは、その道の現場の実務家の意見を聞いてからすべきで
はないかという教訓です。企業の皆様も、銀行や証券会社あるいは経営コンサ
ルタント会社や弁護士事務所に相談するのは一向にかまいませんが、登記事項
に影響するときは早いうちからその道の現場の専門家の意見を聞いてジャッジ
してほしいものです。さすれば、我々も、そういう外部専門家の尻ぬぐいをせ
ずに済み、円滑に役割分担が果たせます。


2020.03.17(火)【戦後商法のあゆみ 平成9年改正~その3~】
                          (東京・鈴木龍介)

 前回、前々回に引き続き、平成9年商法改正の3回目です(長文になってし
まい、すいません)。

3.商業登記に関する規律
(1)概説
 平成9年(56号)改正商法等に関連して、平成9年(56号)改正商法の附則
により商業登記法と登録免許税法の改正がなされ、ストックオプションに関す
る規定の整備がなされた。株式消却特例法に関する基本登記先例と位置付けら
れるものとして、「株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律の施行
に伴う登記事務の取扱いについて」が発出された。

 また、平成9年(56号)改正商法に関する基本登記先例と位置付けられるも
のとして、「商法の一部を改正する法律の施行に伴う登記事務の取扱いについ
て」が発出された。

 平成9年(71号)改正商法に関連して、「商法等の一部を改正する法律の施
行に伴う関係法律の整備に関する法律」により商業登記法の改正がなされ、合
併手続に関する規定の整備がなされた。平成9年(71号)改正商法に関する基
本登記先例と位置付けられるものとして、「商法等の一部を改正する法律等の
施行に伴う登記事務の取扱いについて」が発出された。

 平成9年(107号)改正商法は、罰則に特化したものであったことから、商業
登記制度自体の見直しや商業登記法の改正はなされていない。

(2)株式会社と登記
 平成9年(56号)改正商法等において、改正等された株式会社の登記と密接
に関係する主な規律は、次のとおりである。

① 自己株方式によるストックオプション
a)自己株式の取得事由の拡張
 会社が自己株式を取得する事由について、従業員に譲渡する場合が認められ
ていたところ、それを取締役に譲渡する場合にも拡張するものとされた。

b)自己株式の取得数量の拡張
 会社が自己株式を取得する数量について、発行済株式の総数の3%以内であ
ったところ、それを10%以内に拡張するものとされた。

c)自己株式の取得決議の特則
 会社がストックオプションのために自己株式を取得する場合には、定時株主
総会の普通決議によるものとされた。なお、新株引受権方式によるストックオ
プションにおける未行使の新株引受権がある場合には、当該自己株式の取得に
関する決議をすることができないものとされた。

 当該決議では、以下の事項を定めるものとされた。
 ⅰ)ストックオプションとして自己株式を譲渡する取締役・従業員の氏名
 ⅱ)ストックオプションの目的となる株式の種類・数・価額
 ⅲ)権利行使期間(決議の日から10年以内)
 ⅳ)権利行使条件

② 新株引受権方式によるストックオプション
a)新株引受権の付与
 会社は、定款に定めることによりストックオプションとして取締役・従業員
に新株引受権を付与することができるものとされた。

b)新株引受権付与の決議
 会社がストックオプションとして取締役・従業員に新株引受権を付与する場
合には、株主総会の特別決議によるものとされた。なお、自己株方式によるス
トックオプションにおける未譲渡の自己株式がある場合には、当該新株引受権
付与に関する決議をすることができないものとされた。

 当該決議では、以下の事項を定めるものとされた。
 ⅰ)新株引受権を付与する取締役・従業員の氏名
 ⅱ)新株引受権の目的となる株式の種類・数・価額
 ⅲ)権利行使期間(決議の日から10年以内)
 ⅳ)権利行使条件

c)新株引受権に関する登記
 会社が取締役・従業員に新株引受権を付与した場合には、新株引受権の行使
により発行する株式の種類・数等その内容を登記するものとされた。

 新株引受権の行使があった場合には、新株引受権の行使により発行する株式
の内容中その数の減少の登記を行うものとされた。なお、新株引受権の行使に
より新株が発行されることから発行済株式の総数・資本の額の増加の登記をす
ることとされた。

③ 株式消却手続の簡素化
 商法における株式の消却について、ⅰ)資本減少の手続による場合、ⅱ)定
款の定めに基づき配当可能利益をもって行う場合、ⅲ)定時株主総会の決議に
より配当可能利益の範囲内で自己株式を取得したうえで行う場合の3つに限定
されているところ、株式消却特例法により公開会社については定款の定めに基
づき取締役会の決議により自己株式を取得したうえで株式の消却を行うことが
できるものとされた。
 ~つづく


2020.03.16(月)【商業登記専門事務所のコロナ会議】(金子登志雄)

 13日は著名な鈴木龍介さんほか企業法務中心の司法書士10名相当で集ま
り、新型コロナの企業への影響と対策を中心に昨今(さっこん)の状況につき
意見交換しました。それほど企業経営への影響が深刻になってまいりました。

 上場会社で株主総会を中止したところはまだないようです。中止したら先に
進めないので当然でしょう。国会や県議会などもそうですし、米国でも大統領
選で大集会ですから、同じイベントでも娯楽やスポーツとは差があるものです。

 会合で私は、コロナの影響で上場会社の業績が悪化し、業績良好な子会社を
吸収合併するなどのグループ内の事業再編が増えるのではないか、業績悪化の
中小企業が増えM&Aの売り手は増えるが、買い手がM&Aに消極的になる可
能性もあり、M&A業務の行く末については、先が見えないと話しましたが、
この先のみえない点がコロナの困ったところです。

 ところで、事業再編は我々専門事務所の得意分野ですが、人手の多い大手事
務所はそうではありません。そこで、司法書士法人等に詳しい鈴木さんに「事
業再編、種類株式、新株予約権などのミス事例の相談をときどき受けるが、大
手事務所の司法書士が担当した例が少なくない。また、こういうことに得意な
司法書士はお互いに相談しあうことが多く、相互に面識があるものだが、大手
と私は面識がない。なぜか」と質問してみました。

 鈴木さんの回答はさすがにポイントを付いており、「大手事務所は繰り返し
の日常業務を多数扱わないと経営が維持できないため、合併などの非日常的な
特殊業務を主要業務にするには限界がある」というものでした。

 私は、大手の法律事務所が企業法務の花形である事業再編、種類株式、新株
予約権等の扱いを売りにしているため、大手司法書士事務所もそういう方向性
を目指すのかなと思っていたわけですが、同じスポット事件中心でも解決に長
引く紛争事件中心の弁護士仕事と、手離れのよい司法書士仕事とでは差があり、
後者では薄利でも多売を目指す傾向があるということでしょうか。いわば我々
専門事務所は少数精鋭の専門店だが、大手事務所は人手のいるスーパーマーケ
ットか、流れ作業の工場路線ということでしょうか。

 しかし、同じ専門店でも、今回の会合には、たまにしかない企業の冠婚葬祭
を中心に扱い、難易度の高い仕事が大好きなドクターX(外科医大門三千子)
を目指す当事務所と相違し、顧客の法務部門として経営の安定化を目指す新時
代の司法書士も参加していました。わが業界も都市部では徐々に多様な住み分
けがなされてきているわけですが、新型コロナに負けず持ちつ持たれつの関係
を築くにはよい会合でした。


2020.03.13(金)【悩ましい任期計算】(金子登志雄)

 毎年3月になると、3月決算会社、とくに上場会社の子会社が臨時株主総会
を開催し4月1日付で人事異動を行います。代表取締役の予選でよく問題にな
るとおりです。 

 さて、次の場合に補欠でも増員でもない取締役の任期はいつまでですか。
  ①2020年3月30日までの日の臨時株主総会で4月1日付けで選任
  ②2020年3月31日の臨時株主総会で4月1日付けで選任
  ③2020年4月 1日の臨時株主総会で選任

 念のため、定款は次で定時総会は毎年6月だとします。
----------------------------------------------------------------------
① 取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに
 関する定時株主総会の終結の時までとする。
② 任期満了前に退任した取締役の補欠として、又は増員により選任された取
 締役の任期は、前任者又は他の在任取締役の任期の残存期間と同一とする。
----------------------------------------------------------------------

 任期は選任決議時から計算しますから、①は2021年の6月定時総会終結
時まで、②③は2022年の6月定時総会終結時までです。②は民法により起
算日が翌日の2020年4月1日になるためです。

 定款第2項は現任取締役の任期を一斉に終了させるための技術ですが、頻繁
に取締役に異動のある会社では、補欠の補欠、増員の増員が繰り返され、任期
計算が実にややこしくなります。とくに困るのは補欠か増員かは登記記録では
判明しないだけでなく、現在事項の登記記録に前任者も増員の根拠になった既
存取締役も退任済みで表記されていないことがあることです。

 そこで、もっと簡単な任期の定め方はないものかと考えてみましたところ、
上記第1項の任期が1年であれば、1項と2項をまとめて、「取締役の任期は、
選任後最初の定時株主総会の終結の時までとする」という実例があるのをヒン
トに次の方法を考えてみました。
 
 「取締役の任期は、選任後最初に到来する西暦偶数(又は奇数)年の最初の
定時株主総会の終結の時までとする」。

 これであれば、補欠か、増員か、独自任期かを考えずに済みます。任期4年
なら、「選任後最初に到来する閏年の最初の定時株主総会の終結の時まで」、
5年なら「選任後最初に到来する5の整数倍となる西暦年の最初の定時株主総
会の終結の時まで」でしょうか。定時株主総会に「最初の」を冠したのは、年
2回決算や事業年度の変更で年2回行う場合を想定しました。

 きっと、そのうち採用する会社が現れるであろうと期待しています。なお、
「選任後2回目の定時株主総会の終結の時まで」あるいは「選任後2年後の日
の属する年の最初の定時株主総会の終結の時まで」は一斉退任になりません。
上記とどこが決定的に相違するのかは、皆様にお任せします。


2020.03.12(木)【持分会社の種類変更の登記】(仙台・立花宏)

 無限責任社員がA、有限責任社員がBとCの「合資会社甲」において、Aを
有限責任社員に変更し、合同会社に種類変更をすることにしました。種類変更
後の商号は「合同会社乙」です。種類変更と同時に本店を移転し、目的も変更
します。また、有限責任社員Cは総社員の同意により種類変更と同時に退社し、
「合同会社乙」の社員とはならないそうです。さて、どのような登記が必要で
しょうか。

 会社法638条2項2号により、「合資会社はその社員の全部を有限責任社
員とする定款の変更をすることにより、合同会社となる」旨が規定されていま
す。種類変更の登記は変更後の合同会社については設立登記、変更前の合資会
社については解散登記をすることになりますが、種類変更による設立登記の登
記すべき事項に直接変更(移転)後の商号、本店、目的を記載することはでき
るでしょうか。
 
 前記条文をみると、今回のケースでいえば、社員全員を有限責任社員とする
定款の変更をすることが合同会社への種類変更であり、他の定款変更等は種類
変更によるものではなく、別途、変更登記等が必要なようにも思えますがどう
でしょうか。

 まず、商号ですが、合同会社は、商号中に合同会社という文字を用いなけれ
ばなりませんが(会社法6条2項)、今回のケースでは、種類変更により「合
資会社甲」が「合同会社甲」となった後、定款(商号)変更により「合同会社
乙」となったと考えるべきでしょうか。会社の意思としては、「合資会社甲」
を種類変更により「合同会社乙」という商号の会社にしたというものでしょう。
登記実務でも、直接「合同会社乙」と登記しています。

 参考として、前記「合資会社甲」において唯一の無限責任社員Aが死亡した
場合、「合資会社甲」は合同会社となる定款変更をしたものとみなされます
(会社法639条)。この場合も、会社の意思と無関係に「合同会社甲」とし
て設立の登記をするわけではありません。「種類の変更に係る定款変更をした
と擬制される(法610条、639条)が、商号の変更まで擬制されるもので
はない(略)ため、別途、総社員の同意による定款変更によって、責任形態に
適合した商号を定める必要がある(相澤・論点解説565頁、609頁)」
(注1)とされています。

 次に、目的変更はどうでしょう。これについても、種類変更による設立の登
記の登記すべき事項として、直接、変更後の目的を記載することができると考
えます。誤解をおそれずに言えば、種類変更の条文の趣旨は、種類変更後の商
号、目的等も含めて、社員全員を有限責任社員とする定款の変更(変更後の種
類の持分会社のための定款を作成)をすることにより、種類変更をすることが
できるという趣旨だと考えるからです。ただし、社員の加入により資本金の額
が増加する場合の登録免許税については別の考慮が必要であり、特例有限会社
を商号変更により株式会社に移行する場合と同様に登録免許税法別表一24号
(一)ホが適用されるため、私見は同様の扱いがされるべきではないかと考え
ております。

 では、本店移転はどうでしょう。これは、種類変更による設立登記の登記す
べき事項に直接、移転後の本店を記載することはできないとされています。定
款に移転後の本店の具体的所在場所まで定めたとしても、業務執行機関におい
て、移転日等を定めなければならないとされており、定款の変更のみでは効力
が生じないからでしょうか。しかし、定款変更と同時に本店移転の効力を生じ
させることは可能であり、このことが理由とはいえないと思います。理由は登
記技術上の問題であり、種類変更後の合同会社の登記記録には、合資会社の商
号は登記されますが、本店は登記されず、合同会社の登記記録に移転後の本店
が直接記載されると、登記記録から種類変更前の登記記録を探索することがで
きなくなることが理由だと思われます(注2)。もっとも、金子先生は、種類
変更や組織変更は、場所の移動までは、その概念に含まれないという見解でし
た。
 
 ところで、ここまでの話とは少しずれますが、「合資会社甲」の解散登記に
あわせて、有限責任社員Cの退社の登記は必要でしょうか。私見は不要だと考
えます。有限責任社員AおよびBの「合同会社乙」とする種類変更だというの
が会社の意思だと思いますし、種類変更は「社員の責任変更や加入によって行
うが、設立の登記及び解散の登記のほかに、別途、社員の責任変更や加入の登
記は必要なく、社員の責任変更や加入があった後の状態で設立の登記をするこ
とを前提」(注3)としており、種類変更と同時に行われる他の社員の加入や
退社についても同様だと考えられるからです。ただし、社員の退社に伴い、種
類変更に係る定款の変更をしたものとみなされた場合(会社法639条)には、
当該社員の退社の登記は必要とされています。この場合の退社は、みなし種類
変更の効力の発生の原因であり、その事実を積極的に公示するためだと考えま
す(注4)。

注1)松井信憲著『商業登記ハンドブック第3版』(商事法務)695頁の
   注1
注2)参考として松井信憲著・前掲590頁
注3、4)松井信憲著・前掲696頁


2020.03.11(水)【合同会社の一人登記】(金子登志雄)

 忘れもしない3.11です。9年も経ましたが、いまだに被災で苦しんでい
る方もいらっしゃいますし、アンダーコントロールとは到底思えません。新型
コロナといい、3月のイメージが悪くなりました。

 気を取り直して、たまには、私も合同会社について取り上げてみましょう。

 さて、株式会社で取締役が東京在住のA一人のとき、合同会社で業務執行社
員が東京在住のB一人のときは、次のように登記されます。
----------------------------------------------------------------------
    取 締 役  A    |   業務執行社員 B 
   東京都・・・・      |  東京都・・・・
    代表取締役  A    |   代表社員   B
----------------------------------------------------------------------

 ところが、清算株式会社で清算人が大阪在住のP一人のとき、清算合同会社
で清算人が大阪市在住のQ一人のときは、次のように登記されます。  
----------------------------------------------------------------------
    清 算 人  P    |
   大阪市・・・・      |  大阪市・・・・
    代表清算人  P    |   清 算 人  Q
----------------------------------------------------------------------

 つまり、合同会社は事業会社である間は株式会社のように登記され、解散後
は合名会社などと同じく持分会社方式で登記されます。

 ご承知のとおり特例有限会社は取締役は住所付きで登記され、取締役が複数
で、その一部を代表取締役に定めたときだけ住所なしの代表取締役の登記がな
されますから、旧有限会社法と旧商法会社編を統合し旧有限会社型の非取締役
会設置会社を株式会社のベースに置いた会社法の下では、旧有限会社方式の登
記に一元化すべきだったのですが、取締役と代表取締役の地位を分離して扱っ
た株式会社の登記を維持する政策的配慮があったのか、株式会社では代表者に
住所が入るままになっています。

 合同会社は又裂き状態で、蝙蝠のように、事業会社は動物族に属し、解散す
ると鳥族に属します。これからみても、登記の世界は独特であり、誰でもでき
るものではないと思っていますが、外からみると、簡単な仕事にみえるのか、
本人申請を推奨する書籍も多いようです(こういう書籍に限って著者は司法書
士ではありません。元補助者でしょうか)。形はできても、その意味まで理解
していないと意味がないと思うのですが………。


2020.03.10(火)【戦後商法のあゆみ 平成9年改正~その2~】
                          
(東京・鈴木龍介)

 前回に引き続き、平成9年商法改正です。

2.概要
2-1.平成9年(56号)改正商法等
 商法におけるストックオプション制度の導入については、当初、商法部会で
審議のうえ立法化される予定であったところ、平成9(1997)年2月に自由民
主党の法務部会の商法に関する小委員会において、ストックオプション制度と
株式の消却手続の簡素化に関する立法化に向けての検討を開始した。それを受
け、政府はこれらを議員立法によることを決断し、法務省と大蔵省に対して協
力を指示した。

 その後、間を置かずに与党間ならびに与野党間の調整を経たうえで、当時の
政権与党であった自由民主党・社会民主党・新党さきがけ、政権野党であった
新進党・民主党・太陽党による超党派の共同提案のかたちで、平成9(1997)
年4月に2つの法案が国会(第140回通常国会)に提出された。両法案は同年5
月に原案どおり可決され、「株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法
律」(平成9年5月21日法律55号/以下、「株式消却特例法」という。)と
「商法の一部を改正する法律」(平成9年5月21日法律56号/以下、「平成9
年(56号)改正商法」といい、株式消却特例法とあわせて「平成9年(56号)
改正商法等」という。)が成立した。新株引受権(ワラント)方式によるスト
ックオプションに関する規定については平成9(1997)年10月1日から、その
他の規定については先行して同年6月1日から施行された。

 株式消却特例法は全9条と附則で構成され、その骨子は、資本市場の活性化
を図ることを目的に、いわゆる公開会社における自己株式の取得・消却の手続
を緩和する商法の特則として制定されたものであった。また、平成9年(56号)
改正商法の骨子は、ストックオプション制度を商法の一般的な規律として導入
し、自己株式方式と新株引受権方式の2つの手法をはじめとする規律を整備し
たものであった。

2-2.平成9年(71号)改正商法
 商法部会は、合併法制に関する審議を精力的に進め、平成9(1997)年1月
に「商法等の一部を改正する法律案要綱案」をとりまとめ、それを受けた法制
審議会は、同年2月に「商法等の一部を改正する法律案要綱」を決定し、法務
大臣に答申した。

 法務省民事局参事官室では、当該要綱に若干の修正を加えた法案を平成9
(1997)年3月に国会(第140回通常国会)に提出した。平成9年(56号)改正
商法と時を前後する同年5月に「商法の一部を改正する法律」(平成9年6月
6日法律71号)が原案どおり成立し、平成9(1997)年10月1日から施行され
た。

 なお、同じ140回国会において、いわゆる独禁法の改正(平成9年6月18日法
律87号)がなされ、第二次世界大戦後長らく認められなかった純粋持株会社が
一定の制約はあるものの解禁された。平成9年(71号)改正商法の骨子は、合
併手続の簡素化・合理化を図るとともに、合併に関する諸規律を整備したもの
であった。

2-3.平成9年(107号)改正商法
 昭和56年の商法改正において、利益供与・受供与罪が新設され、総会屋対策
として一定の効果はあったものの、総会屋を根絶するためには罰則の強化を含
む整備が急務ということとなった。

 この緊急課題に対し、法制審議会から一任を受けた法務省は検討を行い、平
成9(1997)年10月に法案を国会(第141回臨時国会)に提出し、同年11月に
「商法及び株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律の一部を改正す
る法律」(平成9年12月3日法律107号)が原案どおり成立し、同年12月23日か
ら施行された。

 平成9年(107号)改正商法の骨子は、利益供与・受供与罪の法定刑の引上げ
を含む会社経営を危うくする犯罪行為に関する罰則の規律を整備したものであ
った。
~つづく~


2020.03.09(月)【仕事の流儀】(金子登志雄)

 土日は、購入済みでしたが未読だった東京新聞(社会部)の望月衣朔子記者
のベストセラー『新聞記者』(角川新書)を読んでみました。それを原作とす
る映画『新聞記者』が日本アカデミー賞を受賞したためです。詳細は下記をど
うぞ。日本の女優がみな主役を逃げた話題の作品です。
   https://lite-ra.com/2020/03/post-5295.html

 さて、日本の優秀だといわれる政治部の新聞記者の多くが、政府要人や官僚
幹部の懐に入り、相手の信頼を得て、情報を漏らしてもらうことにエネルギー
の大半を注ぎます。これが政治ニュースのスクープの実態であり、自ら足を使
って取材した結果のスクープよりは多いのではないでしょうか。政治記者から
政治家になった方も少なくありません。

 取材先の信頼を得るためには、相手と親しくならねばなりませんから、会食
に誘われれば喜んで応じますし、お互いに貸し借りを作ることも厭いません。
いわゆる番記者制度ですが、これではコネによる取材あるいは裏口入学と同じ
で、褒められたものとはいえません。癒着を毛嫌いする欧米文化ではジャーナ
リストにあるまじき行為として報道倫理違反で解雇でしょう。
 
 望月記者は警察回りなどを主とする社会部の所属、いわゆる事件記者です。
真相追及のため相手かまわず直球で取材し、熱心に食い下がります。これで同
じ新聞記者の中でも政治部事件に加わると浮き上がってしまうようで、特権階
級の記者クラブから白眼視されてしまいます。「相手に食い下がったら、相手
が秘密の世界に閉じこもってしまい取材しにくくなるじゃないか。望月よ、我
々の邪魔をするのか」というわけです。

 この「相手と親しくなることが重要」という仕事の流儀は情を重んじる日本
の隅々まで蔓延しているのか、安倍首相のトランプさんとの交渉でも、会食し、
ゴルフをすることだと勘違いしているかのようです。その成果がどうかはここ
では書きませんが、成功しているとは到底思えません。少なくとも合理主義の
外国人には舐められるばかりで通じません。

 商業登記と相違して競争率の激しい不動産登記を専門とする事務所は、不動
産業者や金融機関と親しくなるよう努めていることでしょうが、成功している
のでしょうか。


2020.03.06(金)【報道の真偽】(金子登志雄)

 今週のネットは、新型コロナ一色でした。発症の原因として中国の細菌兵器
説から米国のある勢力が巻き散らかしたとの説までありました。武漢は中国の
中央にあり、中国全土に感染させるには絶好の位置にありますから陰謀説も分
からないではありませんが、兵器にしてはお粗末すぎます。

 面白いのは、フクシマ原発事故時代の首相であった管直人氏が再評価されて
きたことです。現政府の危機管理が行き当たりばったりなのに、菅氏は自ら率
先してヘリコプターで現地に乗り込んだり、危険なフクシマから即座に撤退し
ようとした東電の幹部に対して、「(逃げてはだめだ)60歳以上の幹部は現
地に行き死ぬ覚悟でやれ。俺も一緒に行くから」などと怒鳴りつけた指導力と
対比されているわけです。

 確かに、当時、東工大出身で原子力の知識もある菅氏以外の首相だったら、
おろおろするばかりで、当事者の東電任せにしてしまい、東日本全部が壊滅し
ていたことでしょう。関東に住む私も家族も、管氏に救われたわけです。

 ただし、当時から数年間は国内で管氏への批判があふれていました。やはり、
行き当たりばったりじゃないかとか、素人がヘリコプターで乗り込み邪魔をし
に行ったなどとの批判です。当時の民主党政権は何をしてもマスコミから叩か
れていました。そういう空気が蔓延あるいは風が吹いていたわけです。

 しかし、冷静になって過去を振り返ると、マスコミへ強い影響力を持つ原子
力村という日本の絶大な支配勢力と戦った菅氏は日本を救った首相と評価して
もよいと私も思っています。ちなみに、海外メディアは当時から菅氏の対応を
高く評価していました。

 菅氏だけでなく、鳩山元首相も今では沖縄問題等の国民に寄り添う首相だっ
たと評価されていますし、海外の評価とは真逆に天下の極悪人のようにマスコ
ミで扱われていた小澤氏も愛弟子の山本太郎効果か、最近は一般の方からも評
価されはじめました。小澤氏の恩師で、米国の言いなりにならず日中国交回復
を果たした田中角栄氏は、いまや歴史上の英雄扱いです。

 過去をみると、少なくとも日本のマスコミは、人の足を引っ張るのが大好き
な国民性に迎合したのか、スポンサーの原子力村に忖度したのかは不明ですが、
常に世論をミスリードしていた印象があります。ということは、今も誤ってい
るということでしょう。情報源として使っても情報の真偽の判断には気をつけ
たいものです。



2020.03.05(木)【定時株主総会の延期問題】(金子登志雄)

 新型コロナの影響で大相撲春場所も無観客開催だとか。中止された私を講師
とする会社法セミナーも無観客(?)で開催してもよかったのかなと思いまし
たが、観客の反応をみながら行き当たりばったりでしゃべる私には無理です。
マイペースでしゃべる立花さんなら大丈夫かもしれません。

 さて、その立花さんが、先般、取り上げた新型コロナの影響による定時株主
総会の延期問題につき、法務省のHPにも掲載されました。

 http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00021.html

 立花さんに相談した方はおそらく中小企業でしょうから、経理部長が感染し
計算書類がまとまっていない、議長となる社長が感染し株主総会で議案を説明
できる者がいないなど、会社側の事情が中心で延期になることを心配したのか
なと想像していました。中小企業では協同組合的な会社を除くと、株主が少数
で、定時株主総会に出席する株主も少人数のため、株主側の事情で株主総会が
延期になる例は想定しがたいためです。

 法務省HPをみた際は、各種のイベントの中止と同様に、株主が集まると感
染が拡大するから、延期せざるをえない事態を想定したのかと思ってしまいま
した。しかし、株主総会というものは株主が集まらないと困るものなのに、集
まったら困るから延期ということはちょっと考えられません。したがって、特
定の何かを想定して出したHPではないでしょう。

 ちなみに3月に定時株主総会を予定している上場会社は、定時株主総会は開
催するが、質問の際のマイクは回さない、看護士を待機させる、時間を短縮す
るなどさまざまな工夫を凝らしているようですが、さすがに延期はないようで
す。

 これで思ったのですが、新型コロナは風邪やインフルエンザに近い病気です
から、毎年、空気が乾燥している冬に年中行事のように登場する病気になる可
能性が低くありません。これを踏まえ、これから上場しようとする会社には、
12月決算を6月決算に変更するようアドバイスしたほうがよいのかなと考え
ました。

 6月決算のよいところは、会社法の改正等で定款変更等が必要になっても3
月決算会社の6月定時株主総会で先例を多数作ってくれますので、それを真似
すればよいので楽になります。


2020.03.04(水)【コロナウイルスの影響】(東京・古山陽介)

 コロナウイルスの影響で、お客様の勤務形態が、時間差勤務、在宅勤務など
で様変わりしていますが、3月という時期もあって、業務については、特に今
のところ大きく影響は受けておりません。

 ただ、プライベートでは大きく影響を受けてしまいました。東京マラソンの
一般参加の中止です。

 このような状況下で、不謹慎であることは重々承知ではありますが、自分は
この大会で記録更新を目指して、時間がないなりにもできる限りの準備をして
いました。なので、この中止発表の日はショックを隠せませんでした。

 周りのランニング仲間も、業種は異なりますが仕事をしながら一緒に練習し
て、それぞれの参加予定の大会での目標達成に向けて努力していたところでの
いきなりの中止。東京マラソンの中止を皮切りに、他の大会も右にならえで次
々と中止の発表。

 所詮趣味にすぎないと言えば、それまでですが、いい歳した大人が一生懸命
になっている姿は、業務外とはいえ刺激になるものです。にもかかわらず、報
道によって、一時マラソン大会が悪者扱いのようになってしまったことは、悲
しく切ないものがありました。報道をするのであれば、もう少し丁寧に情報を
流すことができないものかと改めて実感しました。
 
 東京マラソンの中止によって、自分の今季のマラソンシーズンは終わってし
まいましたが、来年は東京マラソン優先的に走れるそうなので、また次のシー
ズンに向けて、今は切り替えてオフシーズンのトレーニングに励んでいます。

 そして、何より、自分の身は自分で守らねばなりません。ですので、ニュー
スやデマに流されずに落ち着いて行動し、体調管理にも気をつけなければと思
う今日この頃であります。


2020.03.03(火)【戦後商法のあゆみ 平成9年改正~その1~】
                          (東京・鈴木龍介)

 ひさしぶりの「戦後商法のあゆみ」です。今回は、平成9年商法改正です。
この年は3つもの改正があり、ボリュウムもそれなりなので何回かに分けてア
ップしたいと思います。

1.背景等
 合併法制については、昭和50(1975)年に公表された「会社法改正に関する
問題点」に登場して以来たびたび見直しの俎上にあがっていたものの、緊急を
要する他の事項を優先したため、改正は先送りされていた。そのような中、平
成6年の商法改正を終えた法制審議会商法部会(以下、「商法部会」という。)
は、平成7(1995)年にこれまでの議論を踏まえつつ、合併手続の簡素化・合
理化を中心とする具体的な検討に着手することとなった。

 一方、役職員に対するインセンティブ報酬であるストックオプション制度に
ついて、経済界はその導入を要望していたところ、平成7(1995)年に「特定
新規事業実施円滑化臨時措置法」の改正がなされ(平成7年11月1日法律128号)、
特定の会社でその利用が可能となった。そのような中、政府は規制緩和政策の
一環として、商法へのストックオプション制度導入の早期実現を目指す方針を
打ち立てた。

 加えて、平成9(1997)年には、いわゆる総会屋への悪質・巧妙かつ重大な
利益供与事件が相次いで発覚した。そのような中、総会屋対策として商法にお
ける罰則の強化を緊急に行う必要に迫られた。

 この時代の日本は、平成7(1995)年1月には「阪神・淡路大震災」に見舞
われ、同年3月にはオウム真理教による「地下鉄サリン事件」が発生した。ま
た、バブル経済の負の象徴ともいえる「住専」については公的資金の投入によ
り処理を図ったものの、大手金融機関の破綻が相次ぎ、設備投資や消費も低迷
し、景気は急速に悪化した。そのような中、平成9(1997)年4月には消費税
の税率が3%から5%に引き上げられた。

 世界に目を転じると、1995年には世界貿易機関(World Trade Organization
/WTO)が発足した。また、1997年にはタイのバーツの大暴落を皮切りに、東南
アジア諸国を通貨危機が襲い、香港・韓国・台湾といった東アジアへと波及し
ていった。
 ~つづく


2020.03.02(月)【コロナその2】(島根・根来川弘充)

 2月末、安倍首相の会見に衝撃を受けました。まさか一夜にして、私の子供
(小学生)の3学期がおわりをむかえるという事態になるとは、思いもしなか
ったためです。

 首相の発言の2、3日後に、小学校がお休みになるということは、いままで
経験したことも聞いたこともないことです。

 「大混乱がおきても、それ以上のリスクがある。」という政治判断だったの
でしょう。

 ただ、翌日、わが県のわが市では、通常どおりの登校となりました。ここに
は、内閣の政治判断以上に、地元の学校関係者および経済会からの意見を集約
した上で、各地方自治体がリスクのより少ない方の選択を求められたのだと思
います。

 今回のウィルスは、感染力が高いことに恐怖がありますが、一方で、死亡率
がインフルより高くないという実情があります。だからこそ、このように各自
治体ごとに判断がわかれることになったのだろうと考えています。

 終息の目処がない以上、3月で、あるいは今週で、また違った決断が出るこ
とも予想しないといけなくなりました。ウィルス以上に、ストレスや疲労で倒
れる方も多いかもしれません。自分自身に無理をしないよう言い聞かせたいと
思います。


2020.02.28(金)【清算決算報告と債務免除益】(金子登志雄)

 昨日の延長ですが、新型コロナの影響がここまで大きくなるとは完全に想定
外でした。各地でイベントが中止に追い込まれていますが、司法書士会も同じ
です。私を講師とするセミナーも中止になりました。下げすぎの反動で上がる
かと思っていた株価が昨日も暴落でした(米国では上がったのですが、最後は
下げました)。

 小中学校を2週間休校にするところもでてきたと思ったら、公立の小中高を
一斉に休みにするとか。勉強嫌いな中高校生には大歓迎でしょう。くれぐれも
繁華街に遊びに出かけないようにというしかありません。

 こうなると会社はどうするのか、日給の労働者の生活はどうなるのか。中小
企業の経営はどうなるのかと、企業法務専門司法書士としては大いに気になり
ます。現在でさえ消費税を支払えない中小企業が多いのに、消費税アップに新
型コロナによる消費低迷で、日本経済の先行きが心配です。

 今後は赤字会社の解散が増えるかもしれませんので、その話題にしますが、
親会社やオーナー株主が債権放棄して通常清算の手続で清算結了に至ることが
多いのは周知のとおりです。

 その際に、債務免除益は会社法施行規則150条の決算報告の「債権の取立
て、資産の処分その他の行為によって得た収入の額」に含まれるのかという疑
問を寄せられることがあります。

 私も昨年、某法務局より該当するから決算報告書を差し替えよと指示された
ことがあります。そこで、まさかと思い、反論の理論武装をしましたので、今
では確信をもって該当しないと説明することができます。

 第1に、債務免除益は利益・損失の利益であり、収入・支出の収入は現金の
出入りのことです。解散後は税務申告を除き損益を出す意味がありません。残
余財産を出すのが目的ですから、収入とは現金入金のことのはずです。

 第2に、会社法481条に清算人の職務として「債権の取立て及び債務の弁
済」とありますが、上記の規則150条はこれを受けて、清算人の職務遂行の
経過と結果(残余財産額)を記載するものです。債務免除は債権者の行いであ
って、清算人の行為ではありません。清算人がお願いして債務の免除を得ても、
債務免除益は現金支出を免れた額であり、支出額でも収入額でもありません。


2020.02.27(木)【新型コロナ雑感】(金子登志雄)

 新型コロナが大変な問題になってきました。人々が外出を控え、経済活動に
参加しなくなったため、景気が急速に縮小し株価も大暴落です。消費税アップ
とのダブルパンチです。個人問題でも、うっかりと風邪も引けなくなりました。
区別がつかないため、人前に出るのが憚れるためです。

 こういう時に、日本では、「心を1つに」とか「絆」が叫ばれ、被害者への
連帯感が強調されるはずでしたが、さすがに相手が病原菌ウイルスだと途端に
メッキが剥げるようで、「我が家族以外は皆敵」かのような様相です。とくに
気の毒なのは最前線で治療に従事している専門医でしょう。周囲の素人からバ
イ菌扱いされて遠ざけられ、その家族も差別にあっています。

 専門医である神戸大学の岩田教授がダイヤモンド・プリンセス号に入り、そ
の悲惨な状況を告発したことに対しても、ネットでは、日本の評価を貶める風
評被害だと教授を非難する素人の意見が散見されました。

 これに限らず、ここ数年の日本では専門家への敬意がなくなり、反知性政治
が横行し、権力を持った素人がパーフォーマンス(やっているとの見せかけ)
による政治的ジャッジが多くなりました。厚生省が熱心に活動していることは
承知していますが、職員がプリンセス号に乗り込み、熱がないとそのまま職場
復帰させていたようで、プロの指導があったとは思えません。しかも、感染者
数が増えると内閣の評判に響くので、これらの職員は検査対象外だったとか。

 ということは日本の感染者数は政治的数字だということですね。どおりで、
お隣の韓国に比し日本の感染者数が少なすぎると思いました。隠ぺいはやめて
早急にプロ・チームに対策を委ね、正しい情報を発信してほしいものです。

 とはいえ、社会人は外に出て活動しなければなりません。幸いにも、感染者
数は人口比からすればまだ極小ですし、感染者の多くは軽症で子供の被害も極
めて少ないようです(下記参照)。司法書士は、駅員やコンビニ店員などと相
違して、不特定多数の人と交わることもないので、比較的安全な場所にいるほ
うでしょうが、当分の間は様子見しかなさそうです。
 https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/14/091100031/022100657/


2020.02.26(水)【定時株主総会開催の延期と役員の任期】
                           (仙台・立花宏)

 先日、ある株式会社の総務部長様が相談にお見えになりました。今年6月に
定時株主総会を予定しており、任期満了に伴う役員改選を議題とする予定だそ
うです。ご相談の内容は、もし、この定時株主総会の開催を数か月延期した場
合、役員の任期はどうなるのか、という内容でした。この会社は3月決算の会
社で、定款で、定時株主総会は事業年度終了後3か月以内に開催すると規定さ
れています。そうすると、定款の規定上は、開催を7月以降に延期することは
できないことになります。役員の任期もさることながら、この点の検討も必要
なのではないかと思われました。

 お話しを伺ったところ、実際には延期をすることが決まっているわけではな
く、諸事情で延期となった場合の対応を検討しておきたいということでした。
常々、先のことを見据えて、いろいろなことに配慮して職務を行っている方な
ので、なにか事情があるのかもしれないと思いました。そこで、差し支えなけ
ればという前提で、さらに事情をお伺いしたところ、次のようなことをおっし
ゃいました。

 「最近、新型肺炎と呼ばれる病気の感染が広がっているというニュースを聞
きます。まだ、心配するほどではないと思いますが、万が一、これから流行し
ていった場合に、当社としても定時株主総会の開催を延期せざるを得ない事態
も想定しなければならないと考えました。株主の皆様の安全が第一ですし、当
社の株主総会が感染を広める原因となっては社会全体にご迷惑をおかけするこ
とになりますから」。

 日本では、いろいろなイベントの中止などが決定されたりしていますが、8
月に開催される東京オリンピックのチケットの抽選が行われたりと、そこまで
先のことについての危機感はないように思います。定時株主総会の延期まで検
討している会社は多くはないのではないでしょうか。

 というのは、結婚式その他のイベントでは出席予定者ご本人が参加しなけれ
ばなりませんが、株主総会では双方向の電話等による参加もありますし、何よ
りも委任状参加が可能です。株主数が少なければ株主全員同意方式も検討でき
ます。したがって、合法的に延期するような事態は考えにくいためです。

 ただ、それをいうと総務部長様のご心配に水をかけるようで気が引けたため、
私は、延期して開催した株主総会を定時株主総会として扱えるのかどうか、ま
た、役員の任期がどうなるのかは判断が容易ではなく、役員の任期も、定款に
規定された開催期間の末日に満了と扱われる可能性が高いと説明し、そのうえ
で、東日本大震災の際の取扱いに言及して、今回の病気の流行が広まり、天災
等、きわめて特殊な事情と判断されるのであれば、定時株主総会の延期が許容
され、役員の任期もその定時株主総会の終了までとなるのではないかという趣
旨のお話を一般論でご説明するにとどめました。

 いずれにしましても、自分自身、ぼんやりとは考えていましたが、既に、ど
ういう対策をするかという点まで検討をはじめていらっしゃる会社があるのだ
と、自分の危機管理の甘さを指摘されたような気がしました。


2020.02.25(火)【「知財」の整理~その2~】(東京・鈴木龍介)

 前回に引き続き「知財」を取り上げます。

 意匠権の対象は「意匠」です。意匠とは物品のデザインということになりま
す。意匠権は登録により発生します。登録のための出願に対しては、出願書類
の不備等について審査(方式審査)後、以下の要件具備についての審査(実体
審査)が行われます。
 ① 工業上利用可能であること
 ② 新規性があること
 ③ 容易に創作できないこと
 ④ 先願のないこと
 ⑤ 不登録事由に該当していないこと

 実体審査の結果、拒絶理由がなければ、意匠登録がなされます。出願から登
録まではおおよそ半年から1年程度です。なお、意匠は、特許と異なり、出願
公開の制度はなく、意匠登録された際に「意匠公報」によって公開されます

 意匠権者は登録意匠を実施する権利を専有すると同時に、登録意匠と類似す
る意匠を実施する権利も専有します。また、専用権の範囲で、他人が勝手に意
匠を実施することを阻止する権利も有します。

 意匠権の存続期間は、原則として設定登録の日から20年です。ただし、デ
ザインは流行に影響を受けやすぐライフサイクルが短いことから、1年ごとに
登録継続の有無を判断することもできます。

 商標権の対象は「商標」です。商標とは自らの商品・サービスを他人のもの
と区別するためのマークやネーミングなどです。登録できる商標は、①文字、
②図形、③記号、④立体 ⑤結合、⑥色彩、⑦音、⑧動き、⑨位置、⑩ホログ
ラムがあります。

 商標権は登録により発生します。登録のための出願に対しては、出願書類の
不備等について審査(方式審査)後、以下の要件具備についての審査(実体審
査)が行われます。
 ① 使用の意思のあること
 ② 識別力があること
 ③ 先願のないこと
 ④ 不登録事由に該当しないこと

 実体審査の結果、拒絶理由がなければ、登録が完了します。なお、出願の内
容は、出願日から 1か月程度で出願公開されます。

 商標権者は、登録の際に指定した商品や役務について登録商標を使用する権
利を専有します。また、他人が勝手に当該登録商標を使用することを阻止する
こともできますが(禁止権)、加えて禁止権の効果は、類似(商標か商品・役
務が同一または類似)にも及びます。

 商標権の存続期間は、原則として設定登録の日から10年です。ただし、更
新を続けることにより、半永久的に存続させることができます。他の産業財産
権と異なり、商標制度は信頼保護を目的の1つとしているため、同じ商標を長
く使用し続けることにより信頼が蓄積されていくことを踏まえてのものといえ
ます。一方、保護の必要がない商標権については「不使用取消」という制度が
あり、継続して3年以上使用をしていない商標は、他からの申立てによって登
録を取り消されることがあります。また、当初登録商標であったものが、同様
の商品を指す名称として広く使われている等の事情により普通名称化したよう
な場合には、権利行使できなくなることがあります。


2020.02.21(金)【簡単にできないと言ってほしい】(金子登志雄)

 昨日の古山さんの投稿は実に面白い。「商業登記でご飯を食べている先生方
は、厄介な案件であっても、周りに相談したり、あれこれ調べて、考えて、想
像しながら書類を作成したり手続を進めることが好きな人種ですので、簡単に
はできないと言わないはず」・・・そのとおりです。厄介だからこそ面白く、
成功の達成感を味わえるのです。

 取締役会設置会社の代表取締役の予選につき「無理です」と答えずに、定款
や株主総会の決議で予選する方法を考え付いたわけです。いまではメジャーな
方法になりました。

 簡単にできないと応える司法書士がいるおかげで、我々「商業登記でご飯を
食べている」司法書士の評価が上がり、生計が成り立つのですから、私は感謝
いっぱいであり、もっともっと「できない」といってほしいと思っています。

 「できない」と答える司法書士には2種類があります。

1.経験不足
 上場会社の某社が定時株主総会で定款変更し、地元の司法書士に登記を依頼
したところ、初めての経験だったのか、登記所に相談したようで、登記所から
登記はできないといわれたそうです。某社は真っ青になりました。証券代行に
問い合わせ、証券代行から私に電話があり、私は「実例がいくつかある」と答
えました。この某社は、その後ずっと私の顧客です。

2.商業登記はしたくない
 不動産で十分に食えている先生は厄介な商業登記案件を面倒だと思うようで
す。ある設立案件で、私が作った定款案につき、担当した司法書士が「公証役
場でこの事業目的では認証できないといわれた」と会社に伝えてきました。私
の名誉にかかわることですので、私が引き受け、あっけなく認証を終わらせま
した。想像ですが、この先生はこの仕事をしたくなかったので、公証人に認証
不可といわせるように仕向けたのではないでしょうか。あるいは実際には公証
役場に問合せをしていないのかも。

 1ですが、登記所・登記官にも経験不足の方も多々いらっしゃいます。1の
登記所に私が申請した際は、実例を参考資料につけたので、あっさり受理され
ました。上場会社の実例は先例と同じくらい効果があります。インターネット
の検索で見つけられます。

 2の方は、ぜひ依頼者に「当事務所は不動産専門だから、商業登記に詳しい
人を紹介しましょうか」と丁寧に対応してください。私に不動産仕事が来ると、
そうしています。


2020.02.20(木)【簡単にできないと言わないでほしい】
                          (東京・古山陽介)

 最近、「依頼を受けた際、やったことがないこと、わからないこと、違和感
があること、一見誤りのように思えること等に対して、簡単にできないと言い
切ることは、避けてもらいたいし、司法書士の恥になるのでは。」と思うよう
な相談をクライアントから受けました。

 相談内容としましては、自分のクライアントである金融機関の担当がお客様
に提案し手続を進めていた案件(私は一切関わっていなかった案件)で、登記
するお客様側の司法書士から、「この手続はできない。」と否定されたため、
本当かどうかを自分に確認したいというものでありました。

 その手続というのが、いわゆる『擬似DES(現金払込型のDES)』であ
ります。商業登記を主たる業務として携わっていれば、どこかで遭遇したこと
のある手続かと思います。
 ※DES(デット・エクイティ・スワップ)がどういうものかは、ご自身で
お調べください。

 『擬似DES(現金払込型のDES)』とは、簡単に説明しますと、会社法
第207条第9項第5号に基づく会社に対する金銭債権そのものを現物出資す
るのではなく、金銭出資で一度、債権者が株式引受人として払込みをして、当
該払い込まれた金銭をもって、債務を返済する方法であったり、一旦、債務を
債権者に返済して、返済した金銭をそのまま株式引受人として出資してもらう
という手続です。(返済資金の用立てについては、会社に現金がある場合もあ
れば、銀行から一時的に借りて即座に返済する方法などがあります。)。

 なお、手続についての会計税務の問題については、税理士や会計士の判断に
なりますので、司法書士サイドとしては、この問題はクリアになっている前提
とします。

 そして、そのお客様の司法書士曰く、今回の擬似DESは、見せ金に該当し
会社法上問題があるから、できないということであります。

 この司法書士の先生は、案件の個別事情を把握し、DESや擬似DES、見
せ金の趣旨や問題点等きちんと調べた上で、NOと回答したのでしょうか。こ
のご時世、ネットで検索すればいくらでもこの手続に関する記事が出てきます。
私の想像としては、特に調べたりせずに、通帳やWEB明細に同日付で、同じ
金額がグルグル動いて、最終的に金銭が残っていないことをもって、見せ金だ
と判断したのでしょう。

 ただ、DESの手続や趣旨について出版物を読んで考えれば、本当の見せ金
との違いについて考えれば、簡単にできないとは言えないはずです。ちなみに、
擬似DESが見せ金と判断されるリスクはほとんどないです。DESが会社法
上認められていることを考えれば、税務会計の問題は別として、理由は明らか
になってきます。

 また、金融機関の担当からこの件の背景を聞きますと、このお客様(会社)
は、「一人株主=一人役員であるAのみ」で、債権者もこのAのみであるとい
うことなので、他の株主や債権者を害するリスクはないということであります。
つまり、A自身の財産のみで成り立っている会社なのです。

 目の前にあるお客様の手続を何とか無事に登記まで終わらせてあげたいとい
う気持ちがあれば、何かできる方法はないか考え、他の司法書士に相談して、
書類作成を工夫し、法務局からの質問にも対応できるように準備(あるいは質
問がこないように準備)するのではないでしょうか。

 もし、見せ金ではないかと法務局から質問されたら、事情を説明して見せ金
ではないことを理解してもらえれば、登記が却下されることはありません。

 考えたり調べる気もないのであれば、できないと答えるのではなく、やった
ことがなく、わからないので、別の司法書士に相談してくださいとお客様に伝
えてあげてほしいものです。

 商業登記でご飯を食べている先生方は、厄介な案件であっても、周りに相談
したり、あれこれ調べて、考えて、想像しながら書類を作成したり手続を進め
ることが好きな人種ですので、簡単にはできないと言わないはずです。

 明らかにできないことであったとしても、やり方次第ではできる可能性が出
てくることもあります。できないと言ってしまえば、それで終わってしまいま
すから。


2020.02.19(水)【「知財」の整理~その1~】(東京・鈴木龍介)

 前回、知的財産権(=知財)の1つである「商標」について取り上げました
が、自分自身の整理もかねて少し「知財」についてまとめてみました。少し長
くなりますので、2回に分けてお届けします。

 「知財」とは、「知的財産基本法」で特許権等々法令により定められた権利
または法律上保護される利益に関する権利と定義されています。ちなみに、知
財には経済産業省の外局である特許庁が所管する「産業財産権」(「工業所有
権」と呼ばれることもあります。)と文部科学省の外局である文化庁が所管す
る「著作権」に大別されます。さらに、産業財産権には「特許権」・「実用新
案権」・「意匠権」・「商標権」の4つがあります。

 それでは、ビジネスに直結する4つの産業財産権のアウトラインをもう少し
掘り下げてみたいとと思います。

 「特許権」の対象は「発明」です。発明とは自然法則を利用した技術的思想
の創作のうち高度なものという位置づけです。なお、発明には「物」、「方法」
「物を生産する方法」の3つがあります。

 特許権は、登録により発生します。登録のための出願に対しては、出願書類
の不備等についての審査(方式審査)後、以下の要件具備についての審査(実
体審査)が行われます。
  ① 産業上利用可能であること
  ② 新規性があること
  ③ 進歩性があること
  ④ 先願のないこと
  ⑤ 不特許事由に該当していないこと

 実体審査の結果、拒絶理由がなければ特許として登録がなされます。ちなみ
に、出願から登録までは、通常早くても1年半から2年を要します。

 特許権者は特許登録された発明を実施する権利を専有します。すなわち当該
発明について、自らが実施する権利を独占できると同時に、他人が勝手に実施
することを阻止することができます。特許権の存続期間は、原則として出願の
日から20年です。

 「実用新案権」の対象は「考案」です。考案とは自然法則を利用した技術的
思想の創作という位置づけで、特許における発明ほど高度であることは求めら
れておらず、「小発明」と言われる場合もあります。考案には、物品の形状、
構造またはその組合せであり、特許権とは異なり、方法の考案は含まれていま
せん。

 実用新案権は、登録により発生します。実用新案権の登録には、特許権とは
異なり、実体審査がなく、登録までに要する期間が短く4~6か月程度です。

 実用新案権者には、特許権者と同様、専用権と禁止権があります。ただし、
実用新案権は無審査で登録されますので、実際の権利行使にあたっては特許庁
の見解を得ることが求められています。実用新案権の存続期間は、原則として
出願の日から10年です。

 ~次回に続く~

 (注)本稿は昨日掲載すべきところ、金子の不注意で本日になってしまい
   ました。お詫び申し上げます。


2020.02.18(火)【取得条項付新株予約権】(金子登志雄)

 2月7日の千代田支部セミナーにおける事前質問で、要旨「取得条項付新株
予約権を取得し株式を発行する場合の資本金等増加限度額は,計算規則18条
に基づき算出されるが、そのうち資本金への計上額をどの機関が定めるかにつ
いての規定がないが、株主総会で発行を決議した場合は株主総会になるのか」
というものがありました。

 取得条項付新株予約権を取得し株式を発行するなどとは、極めて珍しい事例
ではないでしょうか。もちろん、私は経験したことがありません。しかし、著
作等では触れざるをえないため、だいたいのことは分かっているつもりです。

 回答すれば業務執行機関です。質問者は条文の「増加する資本金及び資本準
備金に関する事項」を2つに分解し「資本金計上額」と「資本準備金計上額」
と読み、発行機関が株主総会であれば株主総会が決めるのだと思い込んでいた
ようですが、発行機関で決めるのは「増加する資本金及び資本準備金に【関す
る事項】」であって、具体的資本金額とは限りません。関する事項については
既に決めているはずです。

 会社計算規則13条に「資本金等増加限度額」という用語が登場しますが、
これは資本金と資本準備金の合計額のことであって、資本金と資本準備金との
配分は発行時に定められていなければ、業務執行機関が決めれば済むことです。

 この計算規則13条に、資本金等増加限度額は「会社法445条1項に規定
する株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額」だ
とあります(念のため正味の出資額のことです)。ところが計算規則18条の
取得条項付新株予約権を取得したときにも資本金等増加限度額が登場しました。

 「取得条項」というのは会社が強制的に取得するもので、株主となる者が任
意に払込みや給付をしたわけではありませんが、これも「払込みや給付をした」
の概念に含まれるということでしょう。

 続いて、その後、この取得による「新株予約権の現物給付」がなされた際に
は、現物評価のために検査役の選任が必要かとの質問を別の方から受けました
が、募集株式の発行ではありませんから207条も適用されず、もとより新株
予約権の行使で現物出資がなされたわけでもないので、284条の適用もなく、
総額での評価か新株予約権1個当たりの評価かを考える必要もなく、規定がな
いため不要です。なお、以上は新株予約権付社債の取得でも同じです。


2020.02.17(月)【数字の影響力】(金子登志雄)

 中国発の新型コロナウイルスの死者数が1500名を超えている、大変なこ
とだと思った(思わされた?)方も多いでしょうが、中国の人口は14億人近
くです。100万人近くに1人の割合です。いまのところ、子供の死亡につい
ては情報がないので、高齢者以外は死亡までを心配する必要はなさそうです。

 これに対して、米国で猛威をふるっているインフルエンザの死者数は1万人
を超えています。米国の人口は3億人超ですから、3万人に1人です。子供の
死亡も多いようです。

 後者の方が圧倒的に脅威のはずですが、なぜか米国発インフルエンザの日本
における感染程度については調査もされていないのか、報道もされていません。
インフルエンザにも従来のコロナウイルスにも慣れているはずなのに、新型コ
ロナウイルスは、原因が不明で治療法が分からず必要以上に不安を感じてしま
うのでしょうけど、中国と米国に対する日本の報道姿勢も少しは影響している
かもしれません(幸い、新型コロナ効果で、手洗いやマスクが流行り、日本で
のインフルエンザは例年より減少しています)。

 数字といえば、司法書士業界で有名な京都の内藤先生のブログで紹介されて
いるサイトに、「野村総合研究所と英オックスフォード大学の共同調査による
と司法書士業務のAIによる代替可能性は78%」とありました。
 https://blog.goo.ne.jp/tks-naito/e/ffd7738f229c2e780b23d671385ed5e8

 この司法書士業務とは登記のことか、事務所の経理なども含まれるのか不明
のため、論評困難ですが、少々大袈裟ではないでしょうか。AIの宣伝に書面
中心の司法書士業務がターゲットにされたとしか私には思えませんでした。
 
 とくに最近の商業登記については、都市部の一部の人が専門的にする特殊な
仕事に近づいており、AIにより代替できるような仕事は少ないはずです。

 具体的な数字を出されると、説得力が増し信ぴょう性が高くなりますが、そ
れを判断する主体は我々自身です。情報過多の今日、冷静に判断し対応したい
ものです。


2020.02.14(金)【種類株式の誤った運用例②~配当の考え方~】
                          (東京・古山陽介)

 種類株式の誤った運用例シリーズ2回目の今回は、「優先配当」について、
曖昧な理解のまま配当を実施している例を取り上げます。

 今回の対象会社:Y社
 ・Y社の種類株式:①普通株式(100株) 
          ②甲種優先配当無議決権株式(100株)
 ・甲種優先配当無議決権株式の優先配当に関する内容:
   甲種優先配当無議決権株式については、普通株式に先立ち、1株につき
  年100円を上限として金銭による剰余金の配当をする。
   ※これ以外に規定はなく、累積・非累積の定めや参加・非参加型の定め
    はありません。
 ・Y社の株主:普通株式を有する株主・A、B 
       甲種優先配当無議決権株式の株主・C
   ※AはY社の代表取締役、BはAの子供で後継者の専務取締役、
    CはAの弟

 上記のような種類株式発行会社の定時総会関連の手続(定款変更・役員改選)
の依頼をスポットで受けたことがあります。

 まず、この会社の種類株式の定め方がおかしいことにお気づきでしょうか。
「年100円を上限として」という不確定金額が定款で定められているのです。
詳しく説明すると長くなり、金子先生・富田先生の著書「これが新増減資だ種
類株式だ」の86頁以降をご確認いただければ、解説がありますので、ここで
は割愛しますが、正しい定款の定め方は、「年100円を支払う」と確定した
金額で定めなければなりません。「上限として」という不確定な定め方は、会
社法では認められていません。

 ただ、Y社の優先配当の内容に「累積・非累積の定め」が設けられていれば、
「100円を上限として」という規定については、「原則100円支払うとも
のとし、満額支払われない場合には、不足額については、翌年度以降に累積さ
せる(させない)。」という趣旨として読むことができなくはないと考えます
が、Y社の定款には、「累積・非累積の定め」がなかったため、やはり、規定
としては不十分と言わざるをえない内容でした。

 そして、このY社の担当から送られてきた定時株主総会議事録の配当議案の
内容が次のとおりになっていました。
 ・甲種優先配当無議決権株式1株につき、50円、総額5000円
 ・普通株式1株につき、30円、総額3000円

 会社としては、「100円を上限として」と記載しているのであるから、
100円以下であっても構わないし、普通株式については、優先配当株式より
金額を少なく配当するので問題ないと認識しているとのことでした。

 しかし、Y社の定款には前述のとおり「累積・非累積の定め」が設けられて
おらず、さらに、優先配当額の定め方が明確ではないため、普通株式について
配当を行うのは不適切であります。

 そこで、過去数年間の配当実績を聞いてみると、甲種優先配当無議決権株式
については、50円~70円の間で配当し、普通株式については、数年に一度
の頻度で20円~30円を配当しているということでした。

 また、Y社の優先配当の目的としては、甲種優先配当無議決権株式の株主で
あるCは、Aの弟で、会社に直接関与していないので、経営には関与してほし
くはないものの、ある程度の配当は出してあげたいということ、そして、普通
株式についても、毎年ではないものの、必要なときに配当を出したいというこ
とでした。

 この会社は、幸いにして株主が上記のように少数でしたので、後日、臨時株
主総会や種類株主総会を開催(実際には書面決議)して、優先配当の内容を次
のとおり変更しました。
 ・甲種優先配当無議決権株式については、普通株式に先立ち、1株につき
  年50円の金銭による剰余金の配当をする。
 ・満額支払われない場合には、不足額については、翌年度以降に累積しない。
 ・優先配当の後に、普通株式に対して配当する場合には、優先配当金を超え
  て、普通株式と同額の支払いを受けることができる。

 こうすることで、例年通り、最低50円の優先配当金を支払うことができ、
普通株式に対して配当を行う年については、上乗せして支払うことができるよ
うな設計となり、会社のニーズを満たす内容となりました。

 種類株式の代表格である優先配当であっても、掘り起こせば、このY社のよ
うに定款での規定内容が不明確で、曖昧な理解のまま運用されている例が、そ
れなりにでてくるのではないかと思った事例でした。



2020.02.13(木)【立花セミナー受講】(金子登志雄)

 2月10日に東京会主催で本欄に登場する立花さんを講師とする「合同会社
の解散清算の登記手続」のセミナーがありました。相変わらず充実したレジュ
メ(33頁もあり)と、学校の先生のように羨ましいくらいよく通る声の分か
りやすい講義であり、さすがは東北大学「教育学部」ご出身だと思わせました
(後半は冗談で、この学部は教員養成とは直接の関係はなく、卒業生の進路も
一般企業への就職が多いそうです。)。

 私も出席しましたが、後半は、ここ数日の睡眠不足がたたり、やや居眠り状
態に陥り、講師には失礼してしまいました。

 さて、帰宅後レジュメをちらほらみていましたら、会社法647条3項には
「社員(業務を執行する社員を定款で定めた場合にあっては、その社員)の過
半数の同意」によって清算人を定められるのに、655条3項には「定款又は
定款の定めに基づく清算人(略)の互選によって、清算人の中から清算持分会
社を代表する清算人を定めることができる。」としかなく、社員は代表清算人
を選定することができないのかという論点についての解説がありました。

 回答は、書式精義や民商782号通達でも肯定しているので肯定説でよいと
いうものでしたが、私も賛成です。

 例えば、会社法349条3項に「株式会社(取締役会設置会社を除く。)は、
定款、定款の定めに基づく取締役の互選又は株主総会の決議によって、取締役
の中から代表取締役を定めることができる。」とありますが、この規定のうち、
「定款」がなくても一般規定である会社法29条で代表取締役を定められます。

 また、「株主総会の決議によって」がなくとも、取締役は、株主総会の決議
によって選任するとする329条1項と、取締役は、株式会社を代表すると規
定する349条1項があるので、支障ありません。349条3項で意味がある
のは、「定款の定めに基づく取締役の互選によって」の部分のみです。

 同様に、社員の同意で清算人を定められるとする647条3項と、清算人は
清算持分会社を代表すると定める655条1項があるので、立花解説のとおり
だと私も思っています。


2020.02.12(水)【「予選の予選」の可否】(金子登志雄)

 取締役会設置会社における代表取締役の予選に法律家の関心が集まっている
ようです。

 平成29年2月11日の最高裁判決で定款の定めに基づく株主総会の決議に
よる代表取締役の選定が肯定されましたし、商事法務2211号(昨年10月
5日号)116頁の実務問答会社法でも塚本英巨弁護士が解説していました。
先週6日の当・千代田支部セミナーでも、質疑応答の1つになっていました。

 私は、平成26年頃から声を大にして、取締役の構成メンバーが異なれば取
締役会による代表取締役の予選を認めない登記実務を批判するとともに、この
先例変更は困難のようだから、定款を変更して株主総会でも選定することがで
きるようにし株主総会で代表取締役を予選しようと叫んできましたが、やっと
努力が実を結び始めたようで、うれしく思っています(うぬぼれかもしれませ
んが、先駆者と一人と自負していたため、塚本論文の参考文献に登記情報の拙
稿や拙著が掲載されていないのには残念に思いました)。

 3月中旬の取締役がABCD(代表取締役A)の子会社において、親会社の
意向に基づき、Aが3月31日に取締役を辞任するので、取締役会でBを4月
1日付けで代表取締役に選定した場合、4月1日の取締役構成(BCD)と違
うので、この予選は認めないという登記実務の解釈は誰がみてもおかしいとい
えます。有効な決議がその後の事情でご破算になることなどあるはずがありま
せん。私は講演の際に、皮肉で4月1日付けで代表取締役を予選したら、それ
までは誰も死亡してはいけませんとか、先に代表取締役Bの登記をし、その後
にAの辞任登記をすれば登記が受理されてしまうなどと話したものでした。

 昔話はともなく、この事例で、3月中に株主総会を開催し、Aの後任取締役
として4月1日付けでDを選任し、3月の取締役会で4月1日付けでDを代表
取締役に予選することはできません。予選の予選だから不可なのではなく、取
締役会における代表取締役の予選決議に、いまだ取締役でないDが加われない
から不可になるわけです。

 株主総会の決議により、4月1日からDを取締役及び代表取締役に予選する
ことは、選定機関が株主総会ですから予選の予選も認められます。単にDが取
締役になることを条件にDを代表取締役に選定しただけです。取締役会設置会
社に移行する際に定款の附則で「4月1日から取締役にD、代表取締役にD」
と定めた場合も予選の予選ですが肯定されていることは周知のとおりであり、
株主総会決議による場合も同じことです。

 登記所から、たまに「まだ取締役になっていない者を条件付きとはいえ、代
表取締役として予選してよいのか」と疑問を提示されることもあるようですが、
上記を混乱したものですから、説明すれば納得していただけます。


2020.02.10(月)【事前割当てと申込条件】(金子登志雄)

 ご承知のとおり、契約は申込みと承諾という相対立する意思表示の合致で成
立します。通常は、申込みがあって、それに対して承諾するのですが、承諾を
先にすることもあります。

 いわゆる事前承諾ですが、事前承諾しても申込みがなければ契約が不成立に
なるだけで、何に対して承諾したのか前後の関係で明らかであれば、いちいち
「申込みがあれば」と明示する必要もありません。

 これは法律家にとっては常識ですが、残念ながら、非取締役会設置会社の株
主総会で「募集株式の発行及び割当ての件」という議題で、「Aに割り当てる」
と事前割当てを決議した議事録に、「Aの申込みがあることを条件に」という
記載がないので、株式引受けの効力が生じず補正だとする登記所がまだ一部に
残っているようです。

 平成28年に、ある登記所職員さんのブログが「補正になる」と断言して、
我々に注意喚起したことを契機にこれが問題となり、神崎先生が主宰する商業
登記倶楽部でも危機感を感じ、私は仲間とともに本欄や、「登記情報」誌への
投稿で反論を繰り返しました。

 その後この話はとんと聞かなかくなったため決着がついたものと思っていま
したが、この1か月の間に、補正だといわれた友人の司法書士がいましたし、
当の私もいわれてしまいました。いずれも優秀な都内の登記所でした。ただし、
説明しましたら、いともあっさり補正を撤回してもらえましたが、登記所内部
での浸透はまだまだ不十分かもしれませんので、お気をつけください。

 条件というのは停止条件と解除条件という用語でもお分かりのとおり、成立
した法律行為(契約もこれ)の「効力(発生又は消滅)要件」であって、法律
行為の「成立」要件ではないのです。

 【令和〇年〇月〇日開催予定の株主総会で取締役に選任された場合は】、そ
の就任を承諾しますという事前就任承諾における【 】部分を「選任されるこ
とを条件に」としても、これは就任承諾の対象を示しただけで、委任契約の成
立要件であって、停止条件にはなりません。

 法律行為の成立要件と効力要件の差は、法律学の基礎の基礎ですから、難し
い国家試験を受けて司法書士になった方は、補正に応じたら恥と認識してくだ
さい。登記所の運用が改められず、他の司法書士にも迷惑が及びます。


2020.02.07(金)【インフルエンザ】(東京・古山陽介)

 先月、人生初のインフルエンザにかかってしまいました。

 予防接種をしなくても、これまでは感染したことがなかったのですが、とう
とう自分の身にも襲いかかってきました。

 噂に違わず、寒気がすると感じてから一気に高熱になって、高熱が数日続く
という典型的な症状でした。

 妻と娘は予防接種をしているため、自分から感染することもなく、平然とし
ていることが、すごく羨ましかったです。

 ただ、インフルエンザ期間中も、基本的に熱とだるさだけでしたので、普段
とそんなに変わらずに過ごしていました。唯一、マラソン大会の欠場やトレー
ニングができなかったのが苦痛でした。

 それでも、時間に余裕ができたおかげで、ゆっくりと改正関係の資料や書籍
に目を通すことができたり、徒然のネタをいくつか書き留めたりと、腰を落ち
着けて物事を考えることができたという点では、貴重な時間でした。

 来年以降、予防接種を受けなければならないと実感しましたが、仕方ありま
せんね。
 
 皆様もインフルエンザ、新型肺炎、風邪など、体調管理にはお気を付け下さ
い。


2020.02.06(木)【コロナ】(島根・根来川弘充)

 年明け早々、怖いウィルスが猛威をふるっています。3月に子供と卒業旅行
で東京へと、思っていたのですが、見送ることも覚悟しなければならなくなり
ました。

 今、ワクチンが開発されているそうですが、東京五輪開催には、間に合うか
どうかわからないとのことで、五輪が無事開催できるかも大変心配になります。
指導者の判断が、大変重要になるでしょう。

 ところで、「コロナ」といえば、太陽に関係する言葉です。今年の島根(山
陰)の冬は大変あたたかく、コートがいらない日が多いです。

 山間部にいく機会がありましたが、山の木々は芽吹いているようにも見え、
桜は3月で散ってしまうかもしれません。

 また、海外では、大規模な森林火災も発生しています。天災が人災によって
拡大しないように、個人レベルでの注意が必要と思います。


2020.02.05(水)【電子申請で3行カッコ】(金子登志雄)

 昨年のことでしたが、種類株式のオンライン申請で、下記を含んだ計算式を
登記すべき事項に示す必要が生じました。しかし、3行分のカッコの作り方が
分からず、下記のように1行分のカッコでお茶を濁したところ、登記所で3行
分の長さに作り変えてくれました。ありがたいことです。
      〇〇〇〇〇
      〇〇〇〇〇   △△△△△      
     (〇〇〇〇〇 - △△△△△)

 次回から自分でしようと、どういうテクニックかとオンライン申請に詳しい
司法書士数人に尋ねましたが、誰も知りませんでした。

 そこで、プロの力を借りるため、私のパソコン操作をいつも助けてくれる株
式会社リーガルの重松先生(まさしく私にとっては先生です)に、ブログで取
り上げてよとお願いしましたところ、このたびブログで公表してくださいまし
た。3行カッコどころか、ブラックショールズ・モデルまで含んでくれました。
 
 http://legal.blogat.jp/legal_blog/2020/02/post-edb5.html

 3行カッコは、3文字の合成なんですね。ブログの下方に記載されています
が、面倒になったら計算式だけ紙で提出すればよいそうですが、上記の事例の
ように、カッコだけの問題では、何となく憚(はばか)られます。

 試しにやってみました。文字を先に記入し、その後にカッコを挿入する方法
でしたが、ほんとにこれでよいのかと、どうも落ち着きません。

 その過程で思ったのですが、漢字検索の部分に、例えば、3行分カッコや、
ブラックショールズ・モデルをまとめて掲載してくれ、一括して打ち出せるよ
うにはできないものでしょうか。さすれば、3行カッコ内に文字を入れるだけ、
あるいはブラックショールズ・モデルのアルファベットを変えるだけで済み効
率的だと思うのですが………。

 重松先生はリーガルの会員以外でも閲覧できるところに、ノウハウを無料で
公表するとは、りっぱですね。

 なお、改正会社法911条3項12号「ヘ」で「募集新株予約権の払込金額
の算定方法を定めた場合において、登記の申請の時までに募集新株予約権の払
込金額が確定していないときは、当該算定方法」を登記せよと改められます。
登記の申請の時までには募集新株予約権の払込金額が確定するはずですから、
あのブラックショールズ・モデルなどの登記をする機会は減少しますが、行使
価額の調整式などで3行カッコの作成方法は司法書士必修科目として残るでし
ょう。

 あのブログに助けられる司法書士は今後も続きますので、いずれは、「リー
ガル社員のここだけの話」から場所を移転し、常時閲覧できるようにお願いし
ておきましょう。


2020.02.04(火)【商号と商標】(東京・鈴木龍介)

 司法書士をやっていますと、会社設立や商号変更の登記をするにあたって、
商号選定の場に接することが少なくありません。商号は会社を含む商人の名称
で、一種のCI(Corporate identity)といえます。

 ご存じのように、会社法施行にあたり、いわゆる「類似商号登記規制」は廃
止されましたが、一定の条件の下、商法・会社法と不正競争防止法によって商
号(権)は保護されます。

 ということもあり、商号選定に際しては、国税庁が公表している法人番号
(いわゆる「法人マイナンバー」)や、インターネットの検索エンジンを使っ
て、同一もしくは類似する商号の有無を調査し、もし該当するものがあるよう
であれば、後日の紛争の可能性等をアドバイスするようにしています。

 一方、商号とは別に知的財産権の一つである「商標」(権)」というものが
あります。商号も商標法による一定の制約はあるものの、商標登録をすること
が可能です。商標(権)には独占的な使用と他を排除する効力が認められてい
ますので、商号(権)とは土俵が違いますが、かなり強力な権利といってよい
と思います。

 ということで、商号選定にあたっては、ケースとリクエストに応じて商標に
ついても調査することがあります。ちなみに、ざっくりとした調査でしたら、
自分で「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」を利用してやりますし、
しっかりとした調査が必要ということになれば、商標に明るい弁理士さんに依
頼するようにしています。
(参考)
 特許庁 商標を検索してみましょう
  https://www.jpo.go.jp/support/startup/shohyo_search.html


2020.02.03(月)【登記事件照会票】(金子登志雄)

 本日より東京法務局に資格者代理人(司法書士、土地家屋調査士、弁護士)
が質問する場合は、「登記事件照会票」に記載して提出することになりました
(FAXも認められました)。詳細は東京司法書士会スーパーネットにありま
すので、東京会以外の方は書式につき知人に送ってもらってください。

 そこに「照会内容、 結論、理由、 根拠条文及び関係資料を十分にお示しい
ただけない照会は、照会にそぐわない内容として,対応いたしかねます」とあ
りますが、当然だと思います。質問するには、まずは自分で十分に考え、調べ、
他の司法書士に問い合わせ、法務局の見解を知るために行うもので、「自分で
はこれこれの理由でこういう考えに至ったが、受理されるか」と聞くのが礼儀
であり、法曹の義務でもあります。

 私が本HPで相談は有料としているのも、ちょっと調べれば分かるような質
問内容を排除するのが主目的です。

 また、法律学は解釈学であり説得学でもありますから、必ず理由が必要です。
理由のない結論は説得力がありませんし、反論もできません。司法試験の論文
試験でも、理由付けがしっかりしていれば少数説でも高得点になります。

 先般、当局の方から、「照会の際に、金子先生の本にこう書いてあると著書
の抜粋を添付した質問が多い。そこに必ず理由が記載されているので、助かる
し、反論しにくい」といわれました。拙著は経験したことや自信があることし
か記載していませんので、どうぞ安心してご利用ください。


2020.01.31(金)【31日だが月末ではない?】(金子登志雄)

 令和2年1月最終日になりました。今週は新型肺炎が大きなニュースになり
ましたが、まだまだ日本では危機感を感じている人は少ないようです。しかし、
収束が長引くとオリンピックにも影響するでしょうし、すでに株式市場自体が
罹患したのか大暴落中です。なぜ、株式市場がこれほどまでに影響されるのか
は分かりません。今日あたりは3月決算会社の第3四半期の業績が発表される
日ですが、好業績の発表でも肺炎に勝てるかのどうか。

 さて、非取締役会設置会社の株主総会で今後1年間で募集株式を1万株発行
することにし、取引先に割り当てることを決定し、詳細を会社法200条で取
締役の決定に委ねたとします。

 便利な制度であり、第1回増資のときは簡単に済みますが、第2回目以降の
増資の際は割当先の決定で株主総会決議が必要になります(204条2項)。
これでは、200条で取締役の決定に委任した意味が半減してしまいます。

 204条2項は、なぜ株主総会決議を要求したかというと、会社の好まない
者が株主になることを拒否する譲渡制限の承認決議との平仄をはかったもので
すから、規定がおかしいわけではありません。

 募集株式の発行決議の株主総会で定款変更し、割当ても取締役の決定で済む
ようにしておかないと200条の効果が少ないということです。

 なお、日本のトップの方の国会答弁では、「募る」と「募集」は相違するよ
うですから、くれぐれも議事録に増資のため株式を「募る」とは書かないよう
にいたしましょう。こういう議論は疲れますが疲労はしないものです。
  https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200128-00010007-bfj-soci


2020.01.30(木)【種類株式の誤った運用例①
         ~種類株式と属人的株式の混同~】
(東京・古山陽介)

 昨年の記事で書きました種類株式の誤った運用例を不定期ではありますが、
紹介していきたいと思います。最初の今回は、種類株式と属人的株式を混同し
ていたという例を取り上げます。

 今回の対象会社をX社(非公開会社)とします。
----------------------------------------------------------------------
 代表取締役社長:A(創業社長)
 専務取締役:B(Aの息子)

 X社の株式状況
 登記簿上の発行済株式総数:1万株
 (内訳:普通株式8000株、配当優先無議決権株式2000株)

 ※1 配当優先無議決権株式の全てをX社の従業員持株会が保有しています。
 ※2 配当優先額は、普通株式に先立ち100円優先する内容です。
 ※3 株式数や配当額等の数字は、この例では簡単にしています。
---------------------------------------------------------------------

 従業員や役員が個人で保有している株式を持株会を設立して、当該持株会に
集約したいという相談も多いかと思います。持株会への株式の集約の際、持株
会が保有する株式については、配当優先無議決権株式にするようなケースはよ
くあります。このX社も3年前に上記のような内容の種類株式制度を導入した
ということでした。

 X社については、昨年、取締役について、定時総会の終結時の任期満了のタ
イミングで、社長をAからBへと世代交代をするための手続の依頼を金融機関
の紹介で受けたのがはじまりでした。

 会社の総務部が作成した株主総会議事録を確認したところ、まず、「議決権
を行使することができる株式の数・議決権数:7000株(個)」となってお
り、株主名簿や登記簿の数と一致していない点が引っかかりました。とりあえ
ず、この点については、自己株式や相互保有株式があるのかもしれないと目星
をつけました。

 確認を進めますと、次に、剰余金の配当議案のところで、配当優先無議決権
株式に対する配当額の総額が「配当優先無議決権株式1株につき100円、総
額30万円」とあり、「配当優先無議決権株式数×1株あたりの配当額」にな
っていない点に引っかかりました。これについても自己株式の有無であったり、
1株あたりの配当額の記載に誤りがあるのかと推測しました。なお、普通株式
については、配当は行っていません。

 この2点について、会社に確認したところ、総務の担当者からは、いずれも
議事録の記載に間違いはなく、自己株式や相互保有株式はないし、配当金額に
ついても前期と同じですという回答が返ってきました。 

 そして、Aと会話する中で、今回のテーマであります「種類株式と属人的株
式の混同」が生じていることが判明しました。
 
 Aの説明をまとめると次のとおりです。
 ・ 2年前に普通株式を個人名義で保有していた役員や従業員が退任、退職
  し、その方々から合計1000株を持株会が取得した。
 ・ 持株会が取得したので、取得した1000株も配当優先無議決権株式に
  変更した。ただ、実際には変更手続きをしておらず、持株会が追加で取得
  した。
   普通株式については、何ら手続を要せずに自動的に普通株式から配当優
  先無議決権株式に変更が生じると思っていた。
 ・ 前期や前々期も同じ議事録で配当や登記手続きをしたが、税理士、司法
  書士、法務局のどこからも指摘はなかった。

 これら誤認している点をAに説明し、理解してもらいましたが、Aの話を聞
いていると、X社の目的としては、「持株会にのみ配当し、その代わり持株会
には議決権を行使させない。」という趣旨ですので、本来は、種類株式ではな
く属人的株式の定めを設けることが正しい選択であると感じました。
 
 司法書士としては、種類株式の内容を設ける依頼を受ける際、特に会社や税
理士が作成した種類株式の内容を確認するようなケースでは、どんな目的で種
類株式を導入するのか、詳細をしっかりと確認し、この内容が目的に沿ったも
のであるかまで確認しなければ、後々、どこかで歪みが生じることがあること
を認識しておくべきであります。


2020.01.29(木)【存続するものとみなす】(仙台・立花宏)

 相変わらず、合同会社の解散について考えております。考えれば考えるほど
難しいと感じるのですが、そもそも、個人的には、合同会社に限らず、会社の
解散自体、理解するのがとても難しいと感じていますので、仕方がないのかも
しれません。

 先日、合同会社の解散関係の条文を読んでいて、ふと、気になる条文があり
ました。会社法645条(清算持分会社の能力)です。そこには、解散して清
算をする持分会社(以下、「清算持分会社」と記載します。)は、「清算の目
的の範囲内において、清算が結了するまではなお存続するものとみなす」と規
定されています。株式会社についての条文にも同様の規定(会社法476条)
があります。

 どの点が気になったかといえば、「存続するものとみなす」の中の“みなす”
の部分です。なぜ、「存続する」ではなく、「存続するものとみなす」なので
しょうか。コンメンタール(注1)を確認したところ、「清算持分会社」は、
解散前の持分会社と同一の会社であり、立法論的には、「存続するものとみな
す」ではなく、「存続する」と規定するのが妥当だろうという内容が記載され
ていました。

 「清算持分会社」は解散前の会社と同一の会社であり、その目的が清算の目
的の範囲内に減縮されるという考え方(同一性説)が通説だと思いますが、過
去には「法により存続が擬制されるにすぎない」という考え方(擬制説)もあ
ったようです(注2)。「存続するものとみなす」という条文は、この「擬制
説」の影響を受けているものと思います。

 この点について、なにか手掛かりはないかと、市内の大学の図書館に行って
文献を探してみたところ、「存続するものとみなす」としているのは、「擬制
説」の立場を採用しているのであり、それは理論的には誤りであるという趣旨
の記述をしている文献(注3)を見つけました。「昭和30年6月25日第1
刷発行」となっていますから、どうやら、かなり前から存在した指摘のようで
す。商法時代から指摘されていたのにもかかわらず、平成18年に施行された
「会社法」でも、「存続するものとみなす」と規定しているのには、なにか理
由があるのでしょうか。残念ながら、その理由まで調べきることはできません
でした。

 そこで、私なりに理由を考えてみました。以下は私見となります。
 たとえば、合同会社が、定款に定めた存続期間が満了したことにより解散し
たものとします。この場合、この合同会社が「清算持分会社」として「存続す
る」とすると、会社の「存続期間」は延長されたことになるでしょうか。「存
続期間」が満了して解散したのですから、存続期間が延長されたというのは個
人的には違和感があります。構成員の意思により定められた存続期間は満了し
ているけれども、清算手続のために、法律により存続しているものとみなすこ
とが必要ということなのではないかと考えました。なお、「存続期間」は「事
業会社」としての存続期間であり、「清算持分会社」も含めた存続期間を定め
たものではないという見解(反論)はありそうです。

 もうひとつ考えたのは、「社員が欠けたこと」による解散の場合です。合同
会社は社団法人です。社団法人は人(構成員)が一定の目的のために結合した
団体ですから、人(構成員)が不在ということは考えられません。人(構成員)
が不在となった社団法人は、本来、その時点で消滅するのだと思います。しか
し、清算手続のため、法人を存在させておく必要があり、社員不在となった合
同会社も、その時点で消滅させず、法律により存続しているものとみなす必要
があったのではないかと考えました。ただ、これについても、退社したとして
も、持分(財産関係)の清算が済むまでは、会社の所有者としての立場は完全
には消滅しておらず、その意味で、会社の構成員は不在ではない、という見解
(反論)がありそうです(注4)。

 そんなことを悶々と考えましたが、結果として理解できたのは、やはり、
「解散」は難しいということでした。

注1)落合誠一編『会社法コンメンタール15
   定款の変更/事業の譲渡等/解散/清算【1】』(有斐閣)168頁
注2)上柳克郎・鴻常夫・竹内昭夫編集代表『新版注釈会社法(1)』
  (有斐閣)466頁
注3)田中幸太朗著『改訂會社法概論上巻』(岩波書店)78頁以下
注4)相澤哲・葉玉匡美・郡谷大輔編著『論点解説 新・会社法 千問の道標』
  (商事法務)603頁以下でも、退社後、持分の清算前に会社が解散した
  場合は、退社員は、残余財産の分配を受ける旨の記載があり、持分の払戻
  しとしていないことから、持分の清算については、社員と同様の扱いであ
  ると考えていたと思われます。


2020.01.28(火)【法人協@大阪 勉強会】(東京・鈴木龍介)

 こちらのコーナーでも何度かとりあげていただいております一般社団法人全
国司法書士法人連絡協議会(法人協:http://houjinkyou.com/)のイベントの
ご案内です。

 今回、法人協ではじめて東京以外で開催する勉強会を以下のとおり行います。
今年は改正司法書士法の施行が予定されており、一人司法書士法人が認められ
ることになりますので、司法書士法人制度にご関心がある方は、以下までご連
絡をいただければと存じます。

 日 時 令和2(2020)年3月6日(金曜日)
      午後3時30分から午後5時30分/午後6時から懇親会
 場 所   TKPガーデンシティ新大阪(新大阪駅徒歩5分)
     (https://www.kashikaigishitsu.net/facilitys/gc-shinosaka/
 定 員 60名
     ※会員事務所のご推薦の非会員(個人事務所含む)も参加可
 参加費 1万円
     ※受講料及び懇親会費を含みます。
 テーマ  「AI時代に向けた経営参謀としての司法書士戦略と組織改革」
 講 師 藤田 耕司先生
      経営コンサルタント、公認会計士、税理士、心理カウンセラー
      一般社団法人日本経営心理士協会 代表理事
      FSGマネジメント株式会社 代表取締役
      FSG税理士事務所 代表
       https://keiei-shinri.or.jp/overview/greeting/
     ※藤田先生は、昨年開催されたAIサミットにも登壇されました。
      https://aisum.jp/ja/speakers/recpxt9Q3HHRGjUjA/profile/
      ~概要~
     1.AIの特性と士業の仕事
      ・AI時代のキャリア戦略
      ・顧客の経営の上流、人生の上流に関わる
     2.経営参謀としての司法書士戦略
      ・経営参謀に求められる質問の力
      ・課題を把握する会話の進め方
      ・深い話を引き出す聴き方
      ・提案力を高める話法
      ・経営参謀として継続的に関与する
     3.組織としての意識改革
      ・改革に向けた同志を作る
      ・意識を変える役割の力
      ・意識と行動を変える質問のスキル
      ・今後の時代に求められる3つの努力

【お問合せ等】
 全国司法書士法人連絡協議会 理事・事務局 星野 大記
 (司法書士法人・行政書士法人 星野合同事務所) 
   MAIL official.sihoshosi.hojin@gmail.com  


2020.01.27(月)【規制の緩和と強化】(金子登志雄)

 令和2年1月最終週に入りました。今月は、会社設立仕事がいくつか重なり、
日によっては、午後4時に定款認証し、その日に登記を申請してしまうなど、
ばたばたしたこともありました。常時携帯のノートPCの威力です。

 上場会社が子会社を設立する場合の実質支配者の申告も初体験いたしました。
この場合は実質支配者の申告が不要になるのだと思い込んでいましたが、上場
会社を自然人とみなすわけですから、実質支配者を上場会社とする申告は必要
でした。その場合の生年月日は空白でよいそうです。性別については、原稿で
は男に〇印がついていたので、そのままにしましたが、上場会社は男か女か、
いまも思案中です。フランス語だったら、男性名詞の「ル」でしょうか、女性
名詞の「ラ」でしょうか。

 この面倒な実質支配者の申告ですが、意味があるのでしょうか。ダミーを使
って会社を設立させれば、簡単に規制を回避することができてしまいます。そ
の程度のことに、手間をかける必要があるのかと疑問を持っています。

 会社法制定に至る過程が典型例でしたが、産業の活性化のため経産省側から
規制の緩和が強く求められてきたと同時に(会社法立案担当者の郡谷大輔氏は
旧通産省から法務省へ出向していた方です)、他方の勢力からは株主リストや
本人確認証明書、定款認証の実質支配者の申告など巻き返しの規制の強化が求
められ、法務省も板挟みでしょう。我々も右往左往です。今度の会社法改正案
の譲渡制限付株式も経産省のアイデアといってもよいでしょう。
 https://www.meti.go.jp/press/2018/03/20190308001/20190308001-1.pdf
 
 ところで、安倍政権下で、経産省の力が急拡大し、原発推進で東芝や日立を
苦境に追い込み、日産ゴーン問題でも経産省の影がちらついています。北方領
土問題でも外務省よりも経産省メンバーの動きが目立ちましたが、いずれも大
失敗、大損害に終わっています。 
 
 というわけで、どうぞ民間や法務省領域に必要以上に干渉するのはお手柔ら
かに、とお願いしておきましょう。


2020.01.24(金)【業務執行取締役と業務執行社員】(金子登志雄)

 株式会社には、代表取締役や代表清算人という用語が会社法に登場しますが、
持分会社には代表社員、代表清算人という用語が登場しません(ただし、商業
登記規則では使います)。持分会社を代表する社員、持分会社を代表する清算
人といいます。

 同じく業務執行社員も会社法では「業務を執行する社員」と使い、業務執行
社員は商業登記規則に登場します(ただし、会社法にも「対象業務執行社員」
という用語は登場します)。

 そうすると、業務を執行しない社員は、業務執行取締役と非業務執行取締役
等という用語の類推からすると、非業務執行社員といってもよさそうです。

 さて、社外取締役など非業務執行取締役は取締役会の構成員として会社の業
務執行の決定や代表取締役の選定に参加します(362条2項)。非取締役会
設置会社でも定款に定めを置けば非業務執行取締役を定められ、その者も業務
執行の決定に参加します(348条1項・2項)。

 これに対して、持分会社では定款で業務執行社員を定めた限り、業務の決定
は業務執行社員の権限だとされています(591条)。しかし、代表社員を定
めるのは「定款の定めに基づく社員の互選」であって業務執行社員の専権とは
されていません(599条3項)。業務執行者である会社の代表者を定めるの
は、業務(執行)の決定ではなく、会社の最重要人事問題だからです。会社法
362条2項が業務執行の決定と代表取締役の選定・解職を別号に規定してい
るのもこのためです。

 以上は立花合同会社本に全部書いてあることの繰り返しです。昨年3月の出
版時には、こういうユニークな視点がどう評価されるか心配でしたが、現時点
でもアマゾンの売行き順位で好調ですから、監修者としては一安心です。


2020.01.23(木)【敏腕弁護士ドラマ/スーツ】(金子登志雄)

 イトマン事件の許永中といえば、いかにも強面(こわもて)のおじさんでし
たが、いまやすっかり好々爺になっているのですね。ゴーン問題のインタビュ
ーで「日本人は、日本に非常にこだわる国民性がある」「日本には、外国人が
触ってはいけない世界、聖域がある」と述べていましたが、これもナルホドと
思いました。
  https://digital.asahi.com/articles/ASN1P433DN1NUPQJ00N.html

 さて、イギリスのヘンリー王子とメーガン夫妻が王室を離脱しました。執拗
にゴシップ紙に狙われている生活に辟易してしまったのでしょうか。

 ヘンリー王子のことは母親が故ダイアナ妃であることくらいしか知りません
が、メーガン妃については、スーツという敏腕弁護士ドラマで知り、私もドラ
マ上の彼女の魅力の虜になった一人です。下記中段のレイチェルです。

     https://natalie.mu/eiga/pp/suits
       
 スーツはとにかく面白いと会社の同僚から勧められ、Netflix で視聴しまし
たが、登場人物がそれぞれ魅力的で期待を裏切らないものでした。お勧めです。
  
 弁護士ドラマなのに「スーツ」という題名にしたのは主人公の高級スーツの
着こなしから来ているようで、確かにデバラの私と相違し、スマートでした。

 弁護士事務所の所長ジェシカは大柄ですが、いかにも有能そうな魅力的な黒
人女性でした。メーガン妃も半分は黒人であり、ドラマ上の父親も有能な黒人
弁護士です。他の米国ドラマでもそうですが、配役にあたり、人種問題に相当
気を使っていることが分かり、テレビやネットでヘイト発言が蔓延している日
本との差を感じさせます。

 メーガン妃の両親はメーガン妃が6歳の頃に離婚し、父親(白人)は破産者
でメーガン妃にたかるどうしようもない人物のようですが、母親(黒人)が立
派な人で、メーガン妃がボランティア活動に熱心なのは母親の影響によるもの
だとか。子供への影響力は父親よりも圧倒的に母親にあります。ダメな父親だ
った私としては、そうでないと困りますが。


2020.01.22(水)【ゴーン問題/それぞれの見解】(金子)

 ゴーン氏逃亡問題につき、『国家の罠』の著者である佐藤優氏の独特な見立
てがネットにありました。さすがに地検特捜部に取り調べられた「経験者は語
る」で、ナルホドという部分がありました。要旨は次です。

----------------------------------------------------------------------
1.ゴーン裁判は10年かかる。検察は12年の懲役を求め、裁判所は8年の
 判決を下す。7年以下だと検察に控訴され裁判官の出世に影響するからだ。
2.合計18年もかかるとゴーン氏は83歳になるから、異国で獄中死するだ
 ろう。日本から逃げようとするのは当然だ。
3.日産が雇った探偵のプロ集団に尾行されていることに通常は気づかないも
 のだが彼は気づいていた。彼にはそういうネットワークがある。そこで人権
 侵害だと抗議し、日産の尾行が終わった途端に逃亡した(用意周到だ)。
4.保釈金15億円や逃亡費22億円は、今後の手記で十分に元を取れる。
 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200117-00000008-nshaberu-int
----------------------------------------------------------------------

 3については半信半疑ですが、裁判が長期化しゴーン氏は異国で生涯を終え
るだろうという見立ては私も近いところがありました。私の見立ては、ゴーン
氏の一審における有価証券報告書の不実記載罪は、もらってもいない確定もし
ていない報酬の不記載であり、しかも有報の提出者は西川社長ですから、あま
りに無理筋過ぎて無罪となり検察が面子にかけて控訴し、また第2弾の背任も、
外国も絡んでおり証拠が不十分のため、ゴーン氏が自暴自棄になるまで裁判が
長引かせられるため、最終結審の前に、ゴーン氏の寿命が尽きるか、膠着状態
で困った検察を救済するため、どこかで特別恩赦があるかもしれないというも
のでした。

 いずれにしましても、「逃げるのは卑怯だ、正々堂々と日本で戦え」という
世間一般の多数意見は、特捜部事件の特質を知らない方の意見であり、ゴーン
氏が仮に強欲な経営者だとしても、中世並といわれる日本の司法制度の下で、
マスコミも検察のリーク記事しか出さない周囲が敵ばかりのアウエイ(敵地)
で一人で戦って死ねというのも同じですから、私はそこまで残酷にはなれませ
ん。フランスで逮捕されていたら彼はどうしたでしょうか。

 なお、ゴーン問題に関心のある方は下記もどうぞ。西川氏以前からゴーン氏
を調べていた勢力(経産省?)があるとかで、魑魅魍魎の話題がでてきます。
1.国外脱出直前にインタビューした郷原弁護士の見立て
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200120-00325265-toyo-soci&p=9
2.郷原弁護士へのインタビュー(ビデオニュース・ドットコム)
 (注)有罪か無罪か以前に長期裁判にゴーン氏が辟易していたことや、法律
 論以外の部分が参考になります。
 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200120-00010000-videonewsv-soci
3.企業法務の世界で有名な久保利弁護士の見立て
 (注)本件については全く詳しくないようで、普通のおじさんの見解と大差
 がありませんでしたが、司法改革の提言部分が参考になります。
  https://mainichi.jp/articles/20200120/dde/012/040/018000c?fm=mnm



2020.01.21(火)【戦後商法のあゆみ 平成6年改正~その2~】
                           (東京・鈴木龍介)

 前回につづき平成6年商法改正の後編です。

3.商業登記に関する規律
(1)概説
 平成6年改正商法については、自己株式関連の特化したものであったことか
ら商業登記制度自体の見直しや商業登記法の改正はなされていない。

 平成6年改正商法に関する基本先例と位置付けられるものとして、「商法及
び有限会社法の一部を改正する法律の施行に伴う登記事務の取扱いについて」
が発出された。

(2)株式会社と登記
 平成6年改正商法において、改正等された株式会社の登記と密接に関係する
主な規律は、次のとおりである。

① 定時株主総会の決議による株式消却
 株式の消却について、資本減少の手続による場合と定款の定めに基づき配当
可能利益をもって行う場合に限られていたところ、定時株主総会の決議に基づ
き配当可能利益の範囲内で自己株式を取得して消却することができるものとさ
れた(平成6年改正商法212条ノ2第1項)。
 当該定時株主総会決議においては、決議後最初に到来する決算期に関する定
時株主総会の終結の時までに買い受けるべき株式のⅰ)種類、ⅱ)総数、ⅲ)
取得価額の総額を定めなければならない
(平成6年改正商法212条ノ2第2項・210条ノ2第2項1号)。
 そのうえで、現実に自己株式の取得を行う場合には、取締役会でⅰ)取得す
る株式数、ⅱ)取得価格、ⅲ)取得時期を決議することになる。

② 配当可能利益の計算の見直し
 配当可能利益の資本組入れのベースとなる配当可能利益の計算について、貸
借対照表上の純資産額から自己株式を控除しないものとされていたところ、
ⅰ)使用人への譲渡(平成6年改正商法210条ノ2第1項)、ⅱ)譲渡制限会社で
の承認請求に対する売渡請求(平成6年改正商法210条5号)、ⅲ)譲渡制限会社
での相続時の売渡請求(平成6年改正商法210条ノ3第1項)を目的として取得し
た自己株式の合計額を控除するものとされた(平成6年改正商法290条1項5号)。


2020.01.20(月)【FAXと電子メール】(金子登志雄))

 たまに「取締役会設置会社だが、株主総会の招集通知を電子メールやFAX
でしてよいか」「会社法370条の取締役会書面決議における同意はどうか」
と質問されます。

 まず、総会招集通知ですが、取締役会設置会社では原則として書面に限定さ
れていますが(299条2項)、例外として、株主の承諾を得られれば、電磁
的方法により通知を発することができるとされています(299条3項)。

 この「電磁的方法」とは何かですが、インターネットで調べたところ、次の
3つのようです。 
 ①インターネット等を通じて電子メールを送信する方法、
 ②ウェブサイト(ホームページ)に情報を開示し、これを見読又はダウンロ
  ードできるようにする方法、
 ③当該情報を記録したDVD、ICカード等の記録媒体を交付する方法

 最も簡単なのが電子メールですが、FAXは含まれていません。ただ、本人
がFAXでOKといったのなら、総会招集手続の瑕疵を主張することはできな
いでしょうから、問題が生じることはないと思います。

 次に、370条の書面決議ですが、「書面又は電磁的記録により同意の意思
表示をしたとき」とされ、電磁的方法を含むのかという疑問も生じますが、葉
玉ブログによると、メールで送信した内容が会社のパソコンのハードディスク
に電子データとして記録されるので問題なしということです。

 電話とFAX世代の高齢者は、電磁的方法とは情報を送る手段である電子メ
ールのこと、電磁的記録とは電子情報(又は電子データ)のことと思っておけ
ばよさそうです。「磁」があるため、混乱してしまいますが。


2020.01.17(金)【勉強家のフォローに感謝】(金子登志雄)

 平成17年に革新的な新・会社法が公布された際は、プロの法律家ですら、
条文解釈に当たり、どういう意味かと百家争鳴状態でした。

 当時は、一部でも譲渡制限株式を発行する会社は公開会社とはいえないとい
う見解を商法学者ですら採用する人がいました。2条5号の公開会社の定義「
その発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得につ
いて株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社をいう」
を勘違いして読んでしまったためです。

 登記の世界でも、非取締役会設置会社で取締役1人のとき、登記事項を定め
る会社法911条3項には、「代表取締役の氏名及び住所」を登記せよとある
が「会社を代表する取締役の氏名及び住所」とされていないので、この会社で
は取締役の誰についても住所が登記されないのではないかと解釈する見解もあ
りました。

 幸い、私はこういうミスは少なく、何とか恥をかかずに無事に乗り越えてき
ましたが、常日頃から、他人(その道の権威を含む)の見解を鵜呑みにせず、
与えられた資料だけをもとに、自分の頭で、ああでもない、こうでもないと一
人で試行錯誤や推理を重ねてきたのがよかったのだと思っています。

 さて、皆様、昨年末に改正会社法が公布されたばかりで、解釈が固まらない
現時点も、解釈にあたり推理力が試される時期です。

 その改正会社法ですが、取締役報酬としての新株予約権に関して規定する
236条に「取締役(取締役であった者を含む)以外の者は、当該新株予約権
権を行使することができない」とあります。では、取締役の相続人は権利を行
使することができるでしょうか。
 
 私の推理の変遷は次でした。

 当初:相続人は取締役であった者とは別人格だから取締役であった者とはい
えない。しかし、株式報酬型新株予約権につき、相続を認める実例が少なくな
いから、この結論を採用するのは実にまずい(このように推理には実務経験も
重要です)。

 現在:取締役であった者には当然に死者も含まれる。死亡退職金も死者のも
のだ。したがって、相続人固有の権利ではなく死者の権利行使を相続人が死者
に代わって行使することは当然に肯定してよいはずだ。よって、相続は否定さ
れない。

 こんな推理を勉強家の立花さんに話したら、さっそく調べてくれ、法制審議
会の議事録にも、相続されるのかどうかという議論があったし、要綱の仮案の
補足説明は肯定説のようだが、明白な断定まではなされていないようだと教え
てくれました。

 法制審議会議事録まで目を通すのは老眼が進行したわが身には苦痛ですし、
立花さんをはじめ私の推理を補強してくれる勉強家が周囲に存在する現在は、
安心して推理だけに徹することができる環境にあり助かっています。


2020.01.16(木)【推定と登記】(金子登志雄)

 ゴーンさんが「日本の司法は人権無視の有罪推定だ」とレバノンで日本の司
法を批判したら、森法務大臣が「潔白だというのなら、司法の場で正々堂々と
無罪を証明すべきだ」と反論し世界に向けて大失言してしまいました。有罪か
どうかの証明責任は検察側にあるのに、被告人側に無罪証明を求めてしまった
からです。

 しかし、日本では法曹を含め森大臣の発言に違和感を感じた人は少ないこと
でしょう。権力者の水戸黄門や遠山の金さんがあがめられている日本では子供
の頃から、「お上は正しい」という感覚がしみ込んでいるためです。家や所属
組織という集団の価値を基準に行動する日本人が、欧米並みの「個」を重視し
た人権感覚を持った国になるにはいつになるのでしょうか。

 さて、この推定あるいは証明責任の所在につき考えるのは商業登記でも非常
に重要です。例えば、取締役の互選で代表取締役を定めた際に定款の添付が必
要だとされるのは、非取締役会設置会社の代表取締役は株主総会で選定すると
いう原則の例外だからです。原則については推定され証明は不要だが、例外に
ついては主張者が証明しなければならないのです。

 取締役の辞任につき任期中であることの証明が不要だとされているのは、登
記記録に取締役として記録され就任日から10年以内であれば、任期中だとい
う推定が働いているのだからと私は思っています。

 前に書きましたが、財産権は相続の対象になりますから、営利社団法人であ
る会社の持分も相続対象になるのが原則のはずですが、持分会社の社員たる地
位は定款に許容規定がない限り相続されません。これは持分会社の社員は相互
に信頼関係があることを前提としているため、相続といえどよそ者が加わって
は困るからでしょう。言い換えれば、持分会社の社員たる地位には、共同経営
権が加わっているため、純粋の財産権とはいえないということだと思います。


2020.01.15(水)【総数引受けの「総数」とは】(金子登志雄)

 水曜日ですが、酒井さんのご都合により、本日より水曜日は「専用指定席」
からオープンな「自由席」に変わりました。酒井さん、長い間、ありがとうご
ざいました。

 他の司法書士の方で、我こそはと思う方はぜひどうぞ。ただし、私の検閲が
入ることをあらかじめご了承ください。

 さて、1日で募集株式や募集新株予約権を発行するためには、申込人に対し
て事前の割当通知を必要としない総数引受契約方式が効果的ですが、例えば募
集株式の数が1000株で5人と各200株の内容の総数引受契約を計画して
いたが、決議後に1人が急に都合が悪くなったとき、残った4人との800株
の引受契約は総数引受契約といえるのかという問題があります。

 つまり、この総数は「募集総数」か、申込みのあった「申込総数」かという
問題ですが、総数引受けの際は、申込みと割当ての双方の手続が不要だという
意味からは単純に前者だと思えますし、割当自由(申込数より少ない数の割当
ても自由)の原則を排除している面からは後者のようでもあります。

 私は『会社法実務【全訂版】』Q2-16-1で、会社法199条1項で、
募集株式とは、「当該募集に応じてこれらの株式の引受けの申込みをした者に
対して割り当てる株式」と定義されているのだから、申込総数が正しく、同項
1項1号の「募集株式の数」とは「予定数あるいは上限」でしかないと主張し
ており申込総数説です。

 つまり、「申込み・割当て方式」でなく「契約方式」にして今回の募集行為
を終了させるのが総数引受契約であり、必ずしも、募集総数の引受けがあった
ことは要件ではないと思っています。会社法206条2号にも「契約により募
集株式の総数を引き受けた者は【その者が引き受けた】募集株式の数」につき
株主になるとあり、「その引き受けなかった募集株式の数」を除外しています。

 いずれにしましても、上記拙著に記載しましたとおり、「募集株式の数」の
ところに「ただし、申込みがこの数を下回った場合は申込数とする。」と記載
しておくことが安全策でしょう。


2020.01.14(火)【戦後商法のあゆみ 平成6年改正~その1~】
                          (東京・鈴木龍介)

 「戦後商法のあゆみ」は、平成6年商法改正(その1)です(総回数がわか
らなくなってしましたので回次はカットします。)。
 ちなみに、この改正当時、バリバリの若手司法書士(?)だったはずですが、
全く記憶にありません・・・(汗)

1.背景等
 経済団体連合会をはじめとする経済界は、かねてから自己株式の取得規制つ
いて、国際的な潮流を踏まえ、その緩和を強く求めていたところ、政府の経済
対策としてもとり上げられるようになっていた。

 そこで、法制審議会商法部会(以下、「商法部会」という。)は、平成5年
の改正作業と平行して、自己株式の取得・保有に関する規制の検討を開始した。

 その成果として、商法部会の中に設けられた会社法小委員会が取りまとめた
「自己株式の取得及び保有に関する問題点」を法務省民事局参事官室(以下、
「参事官室」という。)名で公表し、各界への意見照会がなされた。

 この時代の日本は、政界に大きな変動があり、平成5(1993)年7月の総選
挙の結果を踏まえ、非自民連立内閣が発足し、自民党の長期政権に幕が下ろさ
れた。平成6(1994)年3月には衆議院の小選挙区比例代表並立制の導入をは
じめとする政治改革関連4法案が成立した。さらに、同年6月には、自民党と
社会党が連立するかたちで社会党を首班とする内閣が発足した。

 また、世界に目を転じると、1994年5月に南アフリカ共和国でネルソン・マ
ンデラ(=Nelson Rolihlahla Mandela)を大統領とする政権が誕生し、非白人
に対する人種隔離政策であるアパルトヘイトは完全に消滅した。同年7月に朝
鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の初代国家主席である金日成が急死した。

2.概要
 商法部会は、前記の意見照会を参考にしたうえで、自己株式の取得規制の緩
和を内容とする要綱案を平成6(1994)年2月に確定し、それを受けた法制審
議会は、即座に「商法及び有限会社法の一部を改正する法律案要綱」を決定し、
法務大臣に答申した。

 参事官室では、当該要綱に若干の修正を加えた法案を作成し、平成6(1994)
年4月に同法案を国会(第129回通常国会)に提出した。同年6月に「商法及び
有限会社法の一部を改正する法律」(平成6年6月29日法律66号/以下、「平成
6年改正商法」という。)が原案どおりに成立し、平成6(1994)年10月1日
から施行された。

 平成6年改正商法では自己株式の取得の原則禁止を維持しつつ、取得事由を
緩和した。具体的には、
 ⅰ)使用人への譲渡(平成6年改正商法210条ノ2)、
 ⅱ)定時株主総会決議による株式消却(平成6年改正商法212条ノ2)、
 ⅲ)譲渡制限会社での承認請求に対する売渡請求
  (平成6年改正商法210条5号・204条ノ3~204条ノ5)、
 ⅳ)譲渡制限会社での相続時の売渡請求(平成6年改正商法210条ノ3)
を目的とする自己株式の取得を認めた。


2020.01.10(金)【2020年】(東京・古山陽介)

 本年もどうぞ宜しくお願いします。

 年末年始は、事務所の会計業務と、3歳の子供と遊んでいたら、あっという
間に休みが終わってしまいました。

 子供の底なしの体力であったり、物事を吸収する力というのは、本当に羨ま
しい限りです。今月末にハーフマラソン、3月にフルマラソンを走る予定です
が、子供のような無尽蔵の体力が欲しいと思ってしまいます。

 業務については、昨年はおかげさまで好調な一年でした。今年は、年始から
商業登記の申請が数件あり、オンラインシステムの障害もありましたが、とり
あえず幸先良いスタートダッシュを切れたような気がします。このままの勢い
で1年駆け抜けることができればと希望を抱きつつ、地に足をつけてクライア
ントの皆様に満足していただけるサービスを心がけていきたいと思っています。

 改正法が目白押しの昨今ですので、この改正の波にしっかり乗って、情報を
常にアップデートして錆びないようにしなければなりません。

 そして、自分次第ですが、今年は筆無精にならず積極的に、一本でも多く記
事を投稿できるよう頑張ります。

 それでは、皆様にとっても素敵な一年になりますように。


2020.01.09(木)【2019スポーツ観戦記録】(島根・根来川弘充)

 皆様あけましておめでとうございます。

 本年は、東京オリンピック・パラリンピックイヤー一色になるでしょう。残
念ながらチケットは手に入りそうにないのですが、昨年、個人的に大きな観戦
ができたので、忘れないよう、この場をお借りしたいと思います。

 まず、一番はイチロー選手の引退試合でした。オリックス時代は、数回見に
行けたのですが、大リーグ時代では、どこかで一回は渡米してと思っていまし
たが、結局見ることができず(主に財政的な理由です)、あきらめかけていた
とき、日本で開幕を迎えると知り、なんとか見に行きたいとスポーツ観戦好き
の親友にチケットを手配をしてもらい、無事、見ることができました。

 今ふりかえっても、野球の試合というより、イチロー選手のショーを見てい
るような、不思議な観戦でした。

 これ以上の観戦はないだろと思っていたところ、9月にまた大きな観戦機会
が待っていました。大相撲千秋楽に、地元の有志の方と観戦することになった
のですが、その日まで、郷土力士の隠岐の海関が幕内の優勝争いをするという、
願ってもない機会となりました。

 結果は残念ながら・・・では、ありましたが、たまに行った相撲観戦で、賜
杯を手にするかも知れないという、緊張感は、いままで味わったことのないも
のでした。

 その他でも、パブリックビューイングではありましたが、ラグビー観戦もで
きました。振り返ると、大変貴重な体験ができた一年だったと思います。

 オリンピック・パラリンピック選手の活躍ももちろんなのですが、何より、
大成功だったと思えるものであってほしいと思います。


2020.01.08(水)【ご挨拶】(藤沢・酒井恒雄)

 新年明けましておめでとうございます。2020年になって約1週間が経ち
ました。今年がどのような年になるかは、大晦日にならないと分かりませんが、
予想によれば、「変化が多い年」になるようです。

 これだけ変化が激しい時代において、更に変化が多い年になるのか、それと
も例年通りということなのか、その辺りはどう捉えたらいいのかは分かりませ
んが、個人的には前者となりそうな気配がしております。

 今のところ変化といえば、事務所のパソコンが Windows7から10になった
くらいですが、春辺りからは、自分の仕事の内容にも変化が起こりそうです。

 今年は、しばらく疎かになっていた、学生等の起業志望者に対する相談につ
いて、まとまった時間を確保して、積極的に関わることにしました。

 起業を後押ししたいという気持ちと、安易に起業を勧めてはいけないという
気持ちの葛藤があり、ずっとスッキリしない状態が続いていました。しかし、
やっと腑に落ちる整理ができましたので、手探りの部分もありますが、いろい
ろと実践してゆきたいと考えています。この取り組みについては、いずれ何ら
かの形でご報告ができたらと思っています。

 そして、今年から本徒然日誌への投稿を、毎週水曜日の定期的な投稿から、
不定期の投稿へと変更させていただきます。金子先生から「継続は力なり」と
激励を受け、雑多で勝手な内容ではありましたが、約3年間(約155回)、
続けて文章を作成するという貴重な経験をさせていただきました。

 水曜レギュラーから外れるのは、ちょっと寂しい気もしますが、前述の時間
の確保を優先すべきと考え、金子先生にもご了承を頂いた次第です。今後は、
不定期に投稿欄を汚しに登場しますので、引き続きよろしくお願いいたします。


2020.01.07(火)【謹賀新年 2020】(東京・鈴木龍介)

 令和2(2020)年、初投稿ということで、まずは“明けましておめでと
うございます”。

 昨年の一番のトピックスというと平成から令和への改元であったと思います
が、今年は「東京オリンピック・パラリンピック」でしょうか。スポーツ観戦
は嫌いではありませんが、さりとてウン十万を出して生でまで見たいかという
と・・・です。一方でビジネスという観点で、オリンピック・パラリンピック
期間中の交通の麻痺・停滞や、各種イベントの中止・延期については少し気に
なっています。

 法律の世界に目を転じますと、近時、目白押しの基本法の見直しの代表格で
ある民法の債権関係分野と、相続関係分野改正の最終ステージともいえる配偶
者居住権の創設が来る4月1日に施行になります。また、今般成立した会社法
の改正も施行までに時間はあるものの、見逃せないところです。何はともあれ、
法改正は私たち、司法書士にとって最大の飯種ですので、しっかりと取り組む
所存です。

 個人的には、月並みかも知れませんが、やらなくてはいけないこと、やるべ
きことを粛々とやっていこうと思っています。

 末筆になりますが、数年前より公私ともに年賀状を廃止いたしました。年賀
状を頂戴いたしました皆様には、この場を借りまして御礼と欠礼のお詫びを申
し上げます。

 締まりのない新年の挨拶となりましたが、本年もどうぞよろしくお願します。


2020.01.06(月)【謹賀新年】(金子登志雄)

 新年おめでとうございます。本年も前置きは時事ネタ、本題は会社法ネタで
本欄を続けたいと思っていますので、よろしくお願いします。

 年末の日産ゴーン氏のレバノン在報道には驚きました。日本では犯罪者の国
外逃亡と報道されていますが、外国では日本の悪名高き特捜検察に迫害されて
いる著名外国人が「脱出」に成功したとみているようです。

 いずれにせよ、ゴーン氏をそこまで追い詰めた日本の遅れた司法制度のほう
に、より問題が多いと私も思っています。ネット上の意見では言いたいことが
あったら、日本で堂々といえとの無責任な外野席からの意見が多いようですが、
それができる国だったら、こうはなりません。

 ゴーン氏に裏切られた形の髭の高野弁護人のブログはやや興奮気味の内容で
した。
   http://blog.livedoor.jp/plltakano/
 
 冷静で論理重視の理系出身の元特捜検事郷原氏の見立ては次でした。
 https://news.yahoo.co.jp/byline/goharanobuo/20200101-00157363/ 

 年始には米国によるイランの国民的英雄である司令官の殺害がありました。
それもイラクでイラク政府の許可なくです。トランプさんの暴走との見立てが
多く、子(ね)年の世界情勢を暗示しているかのようで、心配です。

 さて、平和ボケの日本国において、私の年末年始休暇は改正会社法と整備法
の勉強に費やされました。ぼちぼち問い合わせが寄せられはじめましたので、
「全く勉強していません」という返答をしにくくなったからです。
 
 その甲斐あって、改正会社法の全貌についてはだいぶ把握することができま
したが、整備法における商業登記の印鑑届の廃止については、今後どうなるの
か予想もつきませんでした。通達でもでない限り、その仕組みはみえてこない
でしょう。他の改正と相違し、これが一番早く施行されます。

 上場会社に株主総会資料の電子提供措置を義務付けるなど、「紙」全盛の昭
和の時代は徐々に遠くなり、「電子情報」全盛の令和時代がはじまりました。
「古紙」時代に生を得た私のような高齢者には辛い時代になりますが、周囲の
支援を得て新しい時代を生き抜くつもりです。



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